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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】多液充填袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/22 20060101AFI20220104BHJP
   B65D 81/32 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B65D30/22 G
B65D81/32 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017172499
(22)【出願日】2017-09-07
(65)【公開番号】P2019048646
(43)【公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】307028493
【氏名又は名称】株式会社悠心
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二瀬 克規
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-057766(JP,A)
【文献】特開2008-247420(JP,A)
【文献】特開2017-007696(JP,A)
【文献】特開2001-294244(JP,A)
【文献】国際公開第2004/099028(WO,A1)
【文献】特表2008-543683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/22
B65D 81/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1の弱シール仕切り壁によって2つの収容室に区画され、種類の異なる内容物をそれぞれの該収容室に独立して収容可能にした袋本体を備え、該弱シール仕切り壁の一部もしくは全部の剥離によって該収容室を相互に連通させることで各収容室内の内容物を予混合する多液充填袋であって、
前記袋本体は、一枚の積層フィルムを折り返すか、または二枚の積層フィルムを重ね合わせ、その重ね合わせ縁部をヒートシールすることで形成された接合部を有し、
前記弱シール仕切り壁は、前記重なり合う二枚の積層フィルムどうしを、前記接合部のいずれか1つに沿う方向にヒートシールして形成されるものであって、該弱シール仕切り壁と交差する方向に袋本体を2つに折畳み、かつその折畳み状態で、該袋本体に外力を付加することにより、内容物で膨らんだ前記2つの収容室どうしによる押圧力によって剥離されるようにしてなるものであることを特徴とする多液充填袋。
【請求項2】
前記弱シール仕切り壁は、前記袋体の接合部よりも剥離し易い接合強度を有することを特徴とする請求項1に記載の多液充填袋。
【請求項3】
前記弱シール仕切り壁は、少なくとも一部の幅が0.01mm以上、1.0mm未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の多液充填袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の飲食物、医薬品、化学品等の各種の液状や粘稠状の液状被包装物を使用開始まで1つの袋内に独立して収容することができると共に、使用開始に先立ってその袋内で予め混合させた後に注出することのできるようにして用いる多液充填袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接着剤や塗料、薬剤などの液状物については、これらの使用開始までは互いに別個に保存(別々の容器内に収容)しておき、使用開始の際に初めて複数種類の液状物を混合して使用に供するようにしたものが広く利用されている。例えば、特許文献1には、塗料について、水酸基含有樹脂と防錆顔料組成物とを含む主剤成分と、ポリイソシアネート化合物を含む硬化剤成分とを別個の容器に保存しておき、塗装の前に混合して用いる2液型のポリウレタン塗料組成物が提案されている。このように2液型の塗料では、主剤となる塗料と、硬化剤とを塗装する直前に混ぜ合わせることで硬化反応が生じ、しっかりと固まって強固な塗膜を作ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-203952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような2液型の塗料等は、各液体が別個の容器(缶やチューブ容器等)に保管され、使用時に両者から適量ずつ取り出して混合し、攪拌しているが、その作業に手間がかかると共に、混合時に周囲を汚したり、手指に付着する等の種々の問題があった。
【0005】
また、2液混合タイプのシリコ-ンなどからなるシーリング材や接着剤(瞬間接着剤等)の場合、シリコーン等が空気中の水分と反応して硬化する性質があるため、混合作業中に硬化してしまい、2液を十分均一に混合することができず、品質にムラが発生してしまうことがあった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、従来の2液混合タイプの接着剤や塗料等を収容する容器に関して、上述した課題を解決するために開発したものであり、とくに複数の種類の異なる内容物を、1つの容器(袋)内に使用開始まではそれらが混合することなく隔離された状態で独立して収容することができ、一方、使用開始に当たっては、複数の内容物を手指等の弱い力でも簡単かつ素早く均一に混合することのできる多液充填袋について提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため鋭意検討した結果、発明者らは、下記に述べる要旨構成に係る本発明に想到した。
即ち、本発明は、1の弱シール仕切り壁によって2つの収容室に区画され、種類の異なる内容物をそれぞれの該収容室に独立して収容可能にした袋本体を備え、該弱シール仕切り壁の一部もしくは全部の剥離によって該収容室を相互に連通させることで各収容室内の内容物を予混合する多液充填袋であって、
前記袋本体は、一枚の積層フィルムを折り返すか、または二枚の積層フィルムを重ね合わせ、その重ね合わせ縁部をヒートシールすることで形成された接合部を有し、
前記弱シール仕切り壁は、前記重なり合う二枚の積層フィルムどうしを、前記接合部のいずれか1つに沿う方向にヒートシールして形成されるものであって、該弱シール仕切り壁と交差する方向に袋本体を2つに折畳み、かつその折畳み状態で、該袋本体に外力を付加することにより、内容物で膨らんだ前記2つの収容室どうしによる押圧力によって剥離されるようにしてなるものであることを特徴とする。
【0008】
なお、本発明の多液充填袋においては、
(1)前記弱シール仕切り壁は、前記袋体の接合部よりも剥離し易い接合強度を有すること、
(2)前記弱シール仕切り壁は、少なくとも一部の幅が0.01mm以上、1.0mm未満であること、
がより好ましい解決手段となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る多液充填袋によれば、使用の前までは、複数の種類の異なる内容物が弱シール仕切り壁によってそれぞれ独立して収容されると共に、使用開始に当たって該弱シール仕切り壁を手指等による小さな力によって剥離させることで該内容物を袋内において予め混合し、均一に混ぜ合わせることができるため、常に同じ品質の混合液を提供することができる。しかも、本発明の多液充填袋によれば、使用開始にあたり、手指等による押圧力だけで複数種類の内容物を袋内にて混合および攪拌させることができるため、容器の数を減らすことができ、しかも混合作業を簡素化することができるだけでなく、周囲を汚損等することもない。
【0010】
しかも、本発明では、前記弱シール仕切り壁が、該弱シール仕切り壁と交差する方向に、袋本体を折り畳み、その折畳み状態で該袋本体に外力を付加することによって少なくとも一部が剥離するように構成されているため、袋本体が平坦な姿勢に保持されている限り、外部から不測の押圧力がかかったとしても、前記弱シール仕切り壁が剥離するようなことがなく、商品の流通過程など、使用開始前に誤って複数の内容物が混合されるおそれがない。
【0011】
これは、前記袋本体を、前記弱シール仕切り壁と交差するように折畳むと、厚みが平坦時の2倍となり、さらに前記袋本体内は前記弱シール仕切り壁によって区画されているために、前記折畳み状態において、例えば1の弱シール仕切り壁を設けて2つの収容室を形成した袋本体は、袋内が4つの区画に分画されることになる。そのため、前記折畳み状態の袋本体に外力を加えると、押圧された内容物によって前記弱シール仕切り壁にかかる力が高まり(平坦時の4倍となる)、小さな押圧力によって簡単に弱シール仕切り壁を剥離させることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の多液充填袋の一実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図2】本発明の多液充填袋の使用方法を説明する図であり、(a)は多液充填袋を二つに折り畳んだ状態を示す平面図であり、(b)は左側面図である。
図3】本発明の多液充填袋の使用方法を説明する図であり、(a)は二つ折りの多液充填袋を押圧する方法を示す図であり、(b)は内容物αと内容物βが混合した状態を示す図である。
図4】本発明の多液充填袋の他の実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を図面に示すところに基づいて説明する。
図1は、本発明に係る多液充填袋の一実施形態を示す図である。
【0014】
図1に示す多液充填袋1は、例えばベースフィルム層とシーラント層とを備える1枚の積層フィルムを幅方向中央位置で半折りした後、重なり合う該積層フィルムを縦方向および上下横方向にヒートシールして、縦シール部2、上部横シール部3および下部横シール部4に囲繞されてなる収容スペース5を具えると共に、図1(b)の正面図に示すように、収容スペース5が1の弱シール仕切り壁6によって2つの収容室7a、7bに区画され、各収容室7a、7b内には異なる種類の内容物αとβがそれぞれ充填されている。なお、内容物α、βは、液状、粘稠状等の各種の液状物とすることができる。
【0015】
なお、本実施形態では、収容スペース5に1の弱シール仕切り壁6を設けて2つの収容室7a、7bに区画しているが、これに限定されるものではなく、弱シール仕切り壁6を複数設けて、複数の収容室に区画形成してもよい。
【0016】
また、図1では、弱シール仕切り壁6が縦シール部2と平行な方向に設けられているが、これに限定されるものではなく、上・下部横シール部4と平行な方向等、収容スペース5を複数室に区画することができれば、どのような方向に設けても良い。
【0017】
収容室7a内の内容物αと収容室7b内の内容物βの混合に当たっては、まず多液充填袋1を点線で示す折畳み位置8で、例えば図に矢印で示す方向に二つに折り畳む。この折畳み状態の多液充填袋1の平面図を図2(a)に示し、折り畳んだ状態を側面から見た図を図2(b)に示す。
【0018】
なお、折り畳み位置8には、その位置を示すため、折畳み線を積層フィルムに予め印刷等することによって表示しておくことが好ましい。なお、折畳み位置8は、弱シール仕切り壁6と交差する位置であればよく、図1のように該弱シール仕切り壁6と直交する方向の他、該弱シール仕切り壁6に対して斜めに交差する方向等とすることができる。また、大容量の多液充填袋1については、折畳み位置8を複数とすることが好ましい。
【0019】
弱シール仕切り壁6は、重なり合う二枚の積層フィルムを、ヒートシール等の従来より公知の方法で相互に接合させて形成した剥離しやすい弱シール部によって形成することができる。このようにして形成した弱シール部は、どのような形態であっても、縦シール部2および上・下部横シール部3、4の30~70%の接合強度を有する、即ち容易に剥離するヒートシール部であり、例えば、指で収容室7a、7bを前記折畳み状態で押圧した際の、加圧された内容物α、βによる力によって剥離可能なものである。
【0020】
図1(b)および図2(b)から明らかなように、多液充填袋1は折畳み位置8で二つに折り畳むことで、厚みが図1(b)に示す平坦姿勢における厚みの約2倍となる。また、多液充填袋1はそもそも弱シール仕切り壁6によって2つの収容室7a、7bに区画されているため、上記のように二つに折り畳むことにより、袋内は4つのスペースに分画されることになる。
【0021】
そのため、使用に際して、図3(a)に示すように折畳み姿勢の多液充填袋1の収容室7a、7bを手指で押圧すると、それと同じ力で平坦姿勢の多液充填袋1(図1の多液充填袋1)を押圧した場合の、約4倍の力(加圧された内容物による押圧力)が弱シール仕切り壁6に作用することとなり、図1における平坦時の訳1/4の小さな力で簡単に弱シール仕切り壁6を剥離させることができる。
【0022】
言い換えれば、弱シール仕切り壁6は、多液充填袋1の平坦姿勢(図1)では、上記したように該弱シール仕切り壁6に交差する方向に折り畳んだ姿勢で押圧した際の破袋強度の約4倍の強度を有するため、平坦な姿勢で輸送等された際に、意図しない外力が加わったとしても、弱シール仕切り壁6が簡単に剥離するようなことがなく、内容物α、βが不測に混合してしまうおそれがない。
【0023】
なお、弱シール仕切り壁6を剥離させるのに必要な荷重(剥離荷重(F))は、下記の式に従って算出することができ、多液充填袋1の厚み(Z)が増大することによって、弱シール仕切り壁6の剥離荷重(F)が小さくなることがわかる。
F=T×X×Y/Z
F:弱シール仕切り壁の剥離荷重 (kg)
T:弱シール仕切り壁の接合力 (kg/cm)
X:多液充填袋の縦長さ (cm)
Y:多液充填袋の横長さ (cm)
Z:多液充填袋の(押圧姿勢における)厚み (cm)
なお、弱シール仕切り壁6の剥離荷重は、5kg以上、好ましくは5~25kgの範囲とすること好ましく、この範囲とすることで図1に示す平坦姿勢で輸送や作業等した際にも、不測に剥離することを防止することができる一方、他の縦シール部2および上・下部横シール部3、4に影響(破袋)を及ぼすことなく弱シール仕切り壁6の剥離を行うことができる。
【0024】
多液充填袋1を折畳み状態で収容室7aを押圧すると、弱シール仕切り壁6が容易に剥離し、図3(b)に示すように収容室7a内の内容物αが、収容室7b内の内容物βに向かって高速で噴射されることになり、内容物αと内容物βとが、該噴射に伴って短時間で混合することになる。なお、内容物αと内容物βの粘度が高い場合には、上記のように混合した後、さらに収容スペース5を外から手指で揉む等することで均一混合を早めることができる。また、内容物α、βに異なる色を付けたり、混合によって変色するような色素等を添加すれば、混合状態の視認が容易で均一混合を確実なものとすることができる。
【0025】
このように本発明の多液充填袋1では、複数の内容物を袋内で予め均一に混合させた後に注出させることができるため、内容物が、たとえシリコーンのような空気中の水分によって硬化するような性質を有するものであっても、混合中に硬化するおそれがなく、常に一定の品質を有する混合液を供給することができる。
【0026】
上記のようにして混合させた内容物(α+β)は、例えば、多液充填袋1の外周縁シール部(縦シール部2、上・下部横シール部3、4)に設けたノッチ等を介して開封して注出する他、図4の他の実施形態として示したように、上部横シール部3の積層プラスチックフィルムの折返し辺側に注出通路9を設け、上部横シール部3上端縁から注出通路9の側端縁に向かう引裂き誘導線10に沿った引裂きによって開封して注出することや、積層プラスチックフィルムからなる注出ノズルを、前記外周縁シール部から突出するように設けてもよい。
【0027】
なお、折畳み位置8は、上記したように複数個所設けることもでき、この場合には、弱シール仕切り壁6を、該折畳み位置8における複数回の折り畳みによって剥離できるような高い接合強度に設定することができるため(折畳みによる多液充填袋1の厚みの増大に伴って、弱シール仕切り壁6への内容物による押圧力も高くなるため、弱シール仕切り壁6の接合強度を高めることができる)、取り扱い時等における不測の剥離をさらに効果的に防止することができる。
【0028】
前記弱シール仕切り壁6は、接合部(ヒートシール部)により形成する場合、その接合強度は、例えばヒートシール時の圧力や温度を調整することによって制御する場合の他、接合幅を工夫することによって制御することができる。即ち、接合幅によって調整する場合には、ヒートシール時の細かい圧力や温度を調整する必要がない点で優れており、この場合、弱シール仕切り壁6の接合幅は、少なくとも一部が0.01mm以上、1.0mm未満とすることが好ましい。それは、前記範囲内とすることで、小さな押圧力で剥離させることが容易になると共に、剥離に伴って内容物(α,β)が高速で噴射され、両者を速やかに均一混合、攪拌させることができるためである。
【符号の説明】
【0029】
1 多液充填袋
2 縦シール部
3 上部横シール部
4 下部横シール部
5 収容スペース
6 弱シール仕切り壁
7a、7b 収容室
8 折畳み位置
9 注出通路
10 引裂き誘導線
図1
図2
図3
図4