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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20220104BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20220104BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20220104BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20220104BHJP
   C08K 5/57 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C08L71/02
C08K5/29
C08K5/05
C08K5/06
C08K5/57
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017220663
(22)【出願日】2017-11-16
(65)【公開番号】P2019006971
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2017122809
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】阪上 祥平
(72)【発明者】
【氏名】河田 円
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/020560(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/084651(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 71/02
C08K 5/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シリル基を1分子当たり平均で1.5個以上有し且つ数平均分子量が15000以上であるポリアルキレンオキサイド100質量部と、アミジン化合物1~10質量部と、錫系シラノール縮合触媒と、アルコール及びグリコールエーテルのうち少なくとも一方を含む有機溶剤とを含み、
上記アミジン化合物の含有量と上記錫系シラノール縮合触媒の含有量との比(上記アミジン化合物の含有量/上記錫系シラノール縮合触媒の含有量)が、1~10であり、且つ
上記有機溶剤の含有量が、上記アミジン化合物1質量部に対して、2.0質量部以上且つ30質量部以下であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
アミジン化合物がフェニルビグアニドを含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
アミジン化合物が1-トリルビグアニドを含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
アミジン化合物が1-(o-トリル)ビグアニドを含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
有機溶剤がエチルアルコールを含むことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、架橋性シリル基を有する重合体を主成分として含有する硬化性組成物が知られている。硬化性組成物は、塗料、コーティング剤、接着剤、感圧接着剤、シーラント及びシーリング材などとして様々な用途に用いられている。
【0003】
雰囲気中又は被着体中に含まれている水分により、重合体が有している架橋性シリル基が、加水分解及び脱水縮合してシロキサン結合を形成することによって、硬化性組成物が硬化し、これにより接着力に優れた硬化物を与える。
【0004】
しかしながら、硬化性組成物の接着性は、被着体との相性に大きく依存し、被着体によっては、硬化性組成物が接着しない場合がある。硬化性組成物の被着体に対する接着性を改善するために、被着体をコロナ放電、プラズマ放電又は直火などで処理し、被着体の表面を改質したり、被着体の表面にプライマー処理を施すなどの表面改質処理が施される。
【0005】
一方、コロナ放電処理及びプラズマ放電処理には大規模な設備が必要であり、直火処理は、被着体の耐熱性が低い場合には用いることができないという問題点を有する。また、プライマー処理は、乾燥工程を必要とし、効率が悪いという問題点を有する。
【0006】
そこで、特許文献1には、特定の反応性ケイ素基を含有する2種類の有機重合体及び特定のアミジン化合物を含有してなる硬化性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2007/094274
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の上記硬化性組成物の接着性が依然として不十分であるという問題点を有している。
【0009】
本発明は、被着体に表面処理及びプライマー処理などの表面改質処理を施すことなく、被着体に対して優れた接着性を有する硬化性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の硬化性組成物は、加水分解性シリル基を1分子当たり平均で1.5個以上有し且つ数平均分子量が15000以上であるポリアルキレンオキサイドと、アミジン化合物と、錫系シラノール縮合触媒と、有機溶剤とを含むことを特徴とする。
【0011】
[ポリアルキレンオキサイド]
硬化性組成物に含まれているポリアルキレンオキサイドは、加水分解性シリル基を有している。加水分解性シリル基とは、珪素原子に1~3個の加水分解性基が結合してなる基である。
【0012】
加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。
【0013】
なかでも、加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;プロピルジメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、ジアルコキシシリル基がより好ましく、ジメトキシシリル基が特に好ましく、メチルジメトキシシリル基が最も好ましい。
【0014】
ポリアルキレンオキサイドは、1分子中に平均して、1.5個以上の加水分解性シリル基を有しており、1.5~4個の加水分解性シリル基を有していることが好ましい。ポリアルキレンオキサイドにおける加水分解性シリル基の数が上記範囲内にあると、ゴム弾性に優れている硬化物を形成することが可能な硬化性組成物を提供することができる。ポリアルキレンオキサイドは、その分子鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0015】
なお、ポリアルキレンオキサイド中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、1H-NMRにより求められるポリアルキレンオキサイド中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるポリアルキレンオキサイドの数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0016】
ポリアルキレンオキサイドとしては、主鎖が、一般式:-(R-O)n-(式中、Rは炭素数が1~14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリアルキレンオキサイドの主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0017】
ポリアルキレンオキサイドの主鎖骨格としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド-ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリプロピレンオキサイドが好ましい。ポリプロピレンオキサイドによれば、硬化性組成物の接着性に優れ且つ硬化性組成物を硬化して得られる硬化物のゴム弾性に優れている。
【0018】
ポリアルキレンオキサイドの数平均分子量は、15000以上であり、15000~50000が好ましく、15000~40000がより好ましく、21000~35000が特に好ましい。ポリアルキレンオキサイドの数平均分子量が15000以上であると、硬化性組成物の硬化物のゴム弾性に優れている。ポリアルキレンオキサイドの数平均分子量が50000以下であると、硬化性組成物の塗工性が向上する。
【0019】
なお、ポリアルキレンオキサイドの数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて、ポリスチレンにより換算された値である。例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
【0020】
<測定装置>
Waters社製 製品名「Waters 2690」
<測定条件>
カラム :Shodex GPC KF800D
(4.6mm ID250mm)×2本
カラム温度 :40℃
移動相 :テトラヒドロフラン(0.3mL/分)
サンプル濃度:0.2質量%
検出器 :RI WATERS社製 製品名「2414」
【0021】
加水分解性シリル基を含有しているポリアルキレンオキサイドは、市販されているものを用いることができる。例えば、主鎖骨格がポリプロピレンオキサイドであり且つ主鎖骨格の末端にメチルジメトキシシリル基を有しているポリアルキレンオキサイドとしては、旭硝子株式会社製 製品名「エクセスター S3430」、及びカネカ社製 製品名「SAT-350」「HS-2」「SAX-750」などが挙げられる。
【0022】
[アミジン化合物]
硬化性組成物は、アミジン化合物を含有している。アミジン化合物は錯体を形成していてもよい。アミジン化合物としては、ポリ塩化ビニル系樹脂及びモルタル板への接着性が向上するので、フェニルビグアニドが好ましく、1-トリルビグアニドが好ましく、1-(o-トリル)ビグアニドがより好ましい。
【0023】
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニルモノマーの単独重合体、塩化ビニルモノマーとこれと共重合可能な他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。なお、塩化ビニルモノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、特に限定されず、例えば、酢酸ビニル、エチレンなどが挙げられる。
【0024】
硬化性組成物中にアミジン化合物が含有されていると、ポリアルキレンオキサイドの硬化を促進させ、接着性の高い硬化物を生成することができる。更に、アミジン化合物が硬化性組成物の表面にブリードアウトし、被着体との接着性を改善し、硬化性組成物の接着性を向上させる。
【0025】
アミジン化合物は、硬化性組成物の接着性を向上させるために、有機溶剤に溶解させた後にポリアルキレンオキサイドと混合させることが好ましい。
【0026】
硬化性組成物中において、アミジン化合物の含有量は、ポリアルキレンオキサイド100質量部に対して1~10質量部が好ましく、1~6質量部がより好ましく、1~4質量部が特に好ましい。
【0027】
アミジン化合物の含有量が1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化物は、被着体に表面改質処理を施すことなく被着体に対して優れた接着性を有する。アミジン化合物の含有量が10質量部以下であると、硬化物の表面へのアミジン化合物のブリードアウトを抑制し、被着体の汚染を防止することができる。
【0028】
[錫系シラノール縮合触媒]
硬化性組成物は、錫系シラノール縮合触媒を含有している。錫系シラノール縮合触媒は、ポリアルキレンオキサイドが含有する加水分解性シリル基などが加水分解することにより形成されたシラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。なお、シラノール基とは、ケイ素原子に直接結合しているヒドロキシ基(≡Si-OH)を意味する。
【0029】
錫系シラノール縮合触媒としては、分子中に錫原子を含有しておれば、特に限定されず、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ビス(ノニルフェノキサイド)、ジブチル錫アセテート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫(2-エチルヘキサノエート)、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(エチルアセトアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、ジブチル錫オクトレート、ジブチル錫ジラウレート、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケート、ジブチル錫オキシビスエトキシシリケート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ビス(エチルマレート)などが挙げられる。錫系シラノール縮合触媒としては、ジブチル錫ジアセチルアセトナートが好ましい。なお、錫系シラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0030】
硬化性組成物中における錫系シラノール縮合触媒の含有量は、ポリアルキレンオキサイド100質量部に対して0.05~5.0質量部が好ましく、0.2~5.0質量部がより好ましく、0.3~4.0質量部が特に好ましい。錫系シラノール縮合触媒の含有量を上記範囲内とすることによって、被着体に対する硬化性組成物の接着性を向上させることができる。
【0031】
硬化性組成物中にアミジン化合物及び錫系シラノール縮合触媒が含有されていると、アミジン化合物又は錫系シラノール縮合触媒を単独で含有している場合に比してポリアルキレンオキサイドの硬化速度が飛躍的に速くなり、硬化性組成物の硬化物が粘稠な固体となって硬化性組成物の被着体に対する接着性が向上する。これは、アミジン化合物が、ポリアルキレンオキサイド及び錫系シラノール縮合触媒の活性を高め、ポリアルキレンオキサイドの架橋反応を促進するためであると考えられる。
【0032】
硬化性組成物中において、アミジン化合物の含有量と錫系シラノール縮合触媒の含有量との比(アミジン化合物の含有量/錫系シラノール縮合触媒の含有量)は1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~5が特に好ましく、1~3.5が最も好ましい。アミジン化合物の含有量と錫系シラノール縮合触媒の含有量との比が上記範囲内であると、硬化性組成物の被着体に対する接着性が向上する。
【0033】
[有機溶剤]
硬化性組成物は、有機溶剤を含有している。有機溶剤は、アミジン化合物を溶解させてアミジン化合物を硬化性組成物中に分子レベルで均一に含有させることによって硬化性組成物の被着体に対する接着性を向上させることができる。
【0034】
有機溶剤としては、例えば、エチルアルコール、メチルアルコール、プロピルアルコールなどのアルコール、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルエーテルなどのグリコールエーテル、酢酸エチルなどのエステル、アセトンなどのケトンなどが挙げられる。なお、有機溶媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0035】
有機溶剤としては、ポリアルキレンオキサイドの加水分解性シリル基とのアルコキシド交換により、硬化性組成物のオープンタイムを長くすることができるので、アルコールが好ましく、エチルアルコールがより好ましい。硬化性組成物の被着体に対する接着性が向上するので、グリコールエーテルが好ましく、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテルがより好ましい。
【0036】
有機溶媒が水酸基(-OH基)を有している場合、水酸基が結合している炭素原子に結合している炭素原子は1個であることが好ましい。有機溶媒が水酸基(-OH基)を有している場合、有機溶媒は、-CH2OHを有していることが好ましい。これは、硬化性組成物の硬化速度が向上し、更に、有機溶媒の含有量を減少させることができ、硬化性組成物の使用環境を向上させることができるからである。
【0037】
硬化性組成物中における有機溶剤の含有量は、アミジン化合物1質量部に対して3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、6質量部以上が特に好ましく、6.5質量部以上が最も好ましい。硬化性組成物中における有機溶剤の含有量は、アミジン化合物1質量部に対して30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が特に好ましい。硬化性組成物中における有機溶剤の含有量が3質量部以上であると、硬化性組成物の被着体に対する接着性を向上させることができる。硬化性組成物中における有機溶剤の含有量が30質量部以下であると、硬化性組成物の被着体に対する接着性を向上させることができる。
【0038】
[充填材]
硬化性組成物は、充填材を更に含有していることが好ましい。硬化性組成物が充填材を含有していることによって、硬化性組成物の硬化物に優れたゴム弾性を付与することができると共に、硬化性組成物の接着性が向上する。
【0039】
充填材としては、無機系充填材が好ましく挙げられる。無機系充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化二鉄、酸化カリウム、石英、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムなどが挙げられる。なかでも、炭酸カルシウムが好ましい。充填材は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0040】
充填材は表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、ロジン酸、樹脂酸等の有機化合物による表面処理、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤等の金属又は半金属を用いた表面処理などが挙げられる。
【0041】
硬化組成物中における充填材の含有量は、ポリアルキレンオキサイド100質量部に対して100~300質量部が好ましく、130~210質量部がより好ましい。充填材の含有量が上記範囲内であれば、硬化性組成物の硬化物に優れたゴム弾性を付与することができると共に、硬化性組成物の接着性が向上する。
【0042】
[シランカップリング剤]
硬化性組成物は、シランカップリング剤を更に含有していることが好ましい。シランカップリング剤をポリアルキレンオキサイドと組み合わせて用いることにより、硬化性組成物の接着性をより向上させることができる。
【0043】
シランカップリング剤としては、アミノシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、イソシアネートシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤、カルボキシシランカップリング剤、ハロゲンシランカップリング剤、カルバメートシランカップリング剤、アルコキシシランカップリング剤、及び酸無水物シランカップリング剤などが挙げられる。なかでも、ポリアルキレンオキサイドとの相乗効果によって、硬化性組成物の接着性が向上するので、アミノシランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0044】
アミノシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’-ビス-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’-ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’-ビス-[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’-ビス-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ビス-[3-(トリエトキシリル)プロピル]ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
【0045】
なかでも、アミノシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN-(2-アミノエチル)-3-プロピルトリエトキシシランが好ましく挙げられ、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランがより好ましく挙げられる。
【0046】
硬化性組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、ポリアルキレンオキサイド100質量部に対して0.5~10質量部が好ましく、1~5質量部がより好ましい。シランカップリング剤の含有量を0.5質量部以上とすることによって、硬化性組成物の接着性を向上させることができる。シランカップリング剤の含有量を10質量部以下とすることによって、硬化性組成物の貯蔵安定性や取扱性の低下を抑制することができる。
【0047】
[可塑剤]
硬化性組成物は、可塑剤を更に含んでいることが好ましい。可塑剤を用いることによって、硬化性組成物の硬化物に優れたゴム弾性を付与することができると共に、硬化性組成物の作業性が向上する。
【0048】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、アクリル骨格ポリマー、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキサイドなどが挙げられる。可塑剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0049】
硬化性組成物中における可塑剤の含有量は、ポリアルキレンオキサイド100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、1~70質量部が特に好ましい。硬化性組成物中における可塑剤の含有量が多すぎると、可塑剤がブリードを起こす恐れがあり、強度が低下する傾向がある。
【0050】
[脱水剤]
本発明の硬化性組成物は、脱水剤を更に含んでいることが好ましい。脱水剤によれば、硬化性組成物を保存している際に、空気中に含まれている水分によって硬化性組成物が硬化することを抑制することができる。
【0051】
脱水剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチルなどのエステル化合物などを挙げることができる。これらの脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、脱水剤としてはビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0052】
硬化性組成物中における脱水剤の含有量は、ポリアルキレンオキサイド100質量部に対して0.5~30質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましい。
【0053】
[他の添加剤]
硬化性組成物は、チキソ性付与剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料、染料、沈降防止剤、溶媒などの他の添加剤を含んでいても良い。
【0054】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ビスヒンダードフェノール系酸化防止剤、レスヒンダードフェノール系酸化防止剤及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及びビスヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく挙げられる。硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、ポリアルキレンオキサイド100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、0.3~10質量部がより好ましい。
【0055】
光安定剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びヒンダードアミン系光安定剤が好ましく挙げられる。硬化性組成物中における光安定剤の含有量は、ポリアルキレンオキサイド100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0056】
硬化性組成物は、空気中の湿気や、被着体に含まれている湿気によって、表面から内部まで迅速に硬化することができる。そして、硬化性組成物は、被着体に、コロナ放電処理、プラズマ放電処理及び直火処理などの処理並びにプライマー処理などの表面改質処理を施すことなく、被着体に対して優れた接着性を有する。更に、硬化性組成物は、硬化初期から高い引張強度及びゴム硬度を発揮する硬化物を形成する。
【0057】
このような硬化性組成物は、土木用、建築用、車両用、電気製品用、電子部品用、雑貨用の接着剤、シーリング材、コーティング剤、シーラント及び目止め剤や、土木用又は建築用基材の被覆剤及びプライマー剤などとして、様々な用途に用いることができる。
【発明の効果】
【0058】
本発明の硬化性組成物は、被着体に表面処理及びプライマー処理などの表面改質処理を施すことなく、被着体に対して優れた接着性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例
【0060】
実施例及び比較例の硬化性組成物の製造において下記の原料を使用した。
【0061】
[ポリアルキレンオキサイド]
・主鎖がポリプロピレンオキサイドであり且つ主鎖の末端にメチルジメトキシシリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A1)(1分子当たりのメチルジメトキシシリル基の平均個数:2.1個、数平均分子量:22000、カネカ社製 製品名「SAT-350」)
・主鎖がポリプロピレンオキサイドであり且つ主鎖の末端にメチルジメトキシシリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A2)(1分子当たりのメチルジメトキシシリル基の平均個数:2.0個、数平均分子量:20000、旭硝子社製 製品名「S-3430」)
【0062】
[アミジン化合物]
・1-(o-トリル)ビグアニド(B1)(大内新興化学工業社製 製品名「ノクセラーBG」)
・フェニルビグアニド(B2)(東京化成工業社製)
【0063】
[錫系シラノール縮合触媒]
・錫系シラノール縮合触媒(C)(ジブチル錫ジアセチルアセトナート、日東化成社製 製品名「U-220H」)
【0064】
[有機溶剤]
・エチルアルコール
・アセトン
・メチルアルコール
・エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル(丸善石油化学社製 商品名「スワソルブETB」)
【0065】
・充填材(炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製 製品名「カルファイン200M」)
・シランカップリング剤(N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製 製品名「KBM603」]
・可塑剤(アクリル骨格ポリマー、東亞合成社製 製品名「UP1110」)
・脱水剤(ビニルトリメトキシシラン、信越化学工業社製 製品名「KBM-1003」)
【0066】
(実施例1~及び比較例1~
ポリアルキレンオキサイド、錫系シラノール縮合触媒、充填材、シランカップリング剤、可塑剤及び脱水剤をそれぞれ表1に示した所定量となるようにして密閉された攪拌機中で減圧しながら均一に混練した。
【0067】
次に、アミジン化合物と有機溶剤とを23℃にて混合して、液状のアミジン化合物を有機溶剤に溶解させて混合溶液を作製した。この混合溶液を上記攪拌機中に供給して均一に混練して硬化性組成物を作製した。
【0068】
得られた硬化性組成物について、接着性を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0069】
(接着性)
硬化性組成物を23℃及び相対湿度50%の環境下にて基材上に500g/m2となるように平坦に塗布した。
【0070】
次に、硬化性組成物を60分静置した後、硬化性組成物上に同一素材の基材を載置して基材同士を硬化性組成物を介して貼り合わせた。基材同士を貼り合わせてから1週間に亘って養生して硬化性組成物を硬化させて硬化物とした後に、万能引張試験機(インストロン社製)を用いて、3mm/分の速度で引張試験又は50mm/分の速度で180°剥離試験を行った。基材の破壊状態を目視観察し、下記基準に基づいて評価した。
【0071】
5・・硬化性組成物の硬化物が100%破壊したか、又は、基材の一部が破壊した。
4・・硬化性組成物の硬化物が接着面積の75%以上で且つ100%未満にて破壊した。
3・・硬化性組成物の硬化物が接着面積の50%以上で且つ75%未満にて破壊した。
2・・硬化性組成物の硬化物が接着面積の50%未満にて破壊した。
1・・硬化性組成物の硬化物と基材との界面にて100%破壊した。
【0072】
基材として、塩ビ鋼板(日鐵住金建材社製 商品名「ユニボンド」)、ポリ塩化ビニルシート、ABS樹脂シート及びモルタル板を用意した。
【0073】
塩ビ鋼板(日鐵住金建材社製 商品名「ユニボンド」)、ABS樹脂シート及びモルタル板を用いた場合には、引張試験を行った。ポリ塩化ビニルシートを用いた場合には、180°剥離試験を行った。
【0074】
【表1】