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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】分散質分析方法、および分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/76 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
G01N27/76
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017525447
(86)(22)【出願日】2016-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2016068849
(87)【国際公開番号】W WO2016208723
(87)【国際公開日】2016-12-29
【審査請求日】2019-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2015127825
(32)【優先日】2015-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515295968
【氏名又は名称】株式会社カワノラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】河野 誠
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/030184(WO,A1)
【文献】特開2002-022704(JP,A)
【文献】国際公開第2013/021910(WO,A1)
【文献】特開2002-071645(JP,A)
【文献】河野誠,磁化率測定による新しい微粒子分析法,コンバーテック,2013年12月15日,Vol.41 No.12,pp. 98-101
【文献】河野誠,世界初の微粒子磁化率計の研究開発と製品化,ケミカルエンジニヤリング,2014年,Vol.59 No.11,pp.35-41
【文献】河野 誠 他,機能性マテリアルズ&コンバーティング 磁化率測定による新しい微粒子分析法,コンバーテック,2013年12月15日,Vol. 41, No. 12,pp. 98-101
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72-G01N 27/90
G01N 15/00-G01N 15/14
JSTPlus(JDreamIII)
JMEDPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気泳動法により、分散媒中における分散質の体積磁化率を取得する工程と、
前記分散質の体積磁化率と前記分散媒の体積磁化率との差である体積磁化率差の分布を示す画像データを生成する工程と
前記体積磁化率差が0に近いか否かに基づいて、前記分散媒に対する前記分散質の親和性を分析する工程と
を包含する分散質分析方法。
【請求項2】
分散媒中における分散質の粒子径を取得する工程と、
磁気泳動法により、前記分散媒中における前記分散質の体積磁化率を取得する工程と、
前記粒子径と前記分散質の体積磁化率の分布との関係を示す回帰線を取得する工程と、
前記粒子径ごとにプロットされた前記分散質の体積磁化率の分布と、前記回帰線とを含む画像データを生成する工程と、
前記回帰線に対する前記分散質の体積磁化率の分布の拡がりが狭いか否かに基づいて、前記分散媒に対する前記分散質の親和性を分析する工程と
を包含する分散質分析方法。
【請求項3】
分散媒中における分散質の粒子径を取得する工程と、
磁気泳動法により、前記分散媒中における前記分散質の体積磁化率を取得する工程と、
前記粒子径ごとにプロットされた前記分散質の体積磁化率の分布を含む画像データを生成する工程と、
前記分散質の粒子径の分布の拡がりが広いか否かに基づいて、前記分散媒に対する前記分散質の親和性を分析する工程と
を包含する、分散質分析方法。
【請求項4】
磁場生成部と、
前記磁場生成部によって磁場が生成されている状態で、分散媒に分散された分散質の動きを測定する測定部と、
前記測定部の測定結果に基づいて前記分散質の体積磁化率を取得する演算部と
を備え、
前記演算部は、前記分散質の体積磁化率と前記分散媒の体積磁化率との差である体積磁化率差の分布を示す画像データを生成
前記演算部は、前記体積磁化率差が0に近いか否かに基づいて、前記分散媒に対する前記分散質の親和性を分析する、分析装置。
【請求項5】
磁場生成部と、
前記磁場生成部によって磁場が生成されている状態で、分散媒に分散された分散質の動きを測定する測定部と、
前記測定部の測定結果に基づいて前記分散質の体積磁化率を取得する演算部と
を備え、
前記演算部は、
前記分散媒中における前記分散質の粒子径と、前記粒子径と前記分散質の体積磁化率の分布との関係を示す回帰線とを取得し、
前記粒子径ごとにプロットされた前記分散質の体積磁化率の分布と、前記回帰線とを含む画像データを生成し、
前記回帰線に対する前記分散質の体積磁化率の分布の拡がりが狭いか否かに基づいて、前記分散媒に対する前記分散質の親和性を分析する、分析装置。
【請求項6】
磁場生成部と、
前記磁場生成部によって磁場が生成されている状態で、分散媒に分散された分散質の動きを測定する測定部と、
前記測定部の測定結果に基づいて前記分散質の体積磁化率を取得する演算部と
を備え、
前記演算部は、
前記分散媒中における前記分散質の粒子径を取得し、
前記粒子径ごとにプロットされた前記分散質の体積磁化率の分布を含む画像データを生成し、
前記分散質の粒子径の分布の拡がりが広いか否かに基づいて、前記分散媒に対する前記分散質の親和性を分析する、分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散質の体積磁化率(単位体積当たりの磁化率)を用いて、分散質(例えば、粒子)を分析する分散質分析方法、および分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者等は過去に、分散質の体積磁化率を用いて、分散質の空隙率を測定する方法を提案した(特許文献1)。また、本発明者等は過去に、分散質の体積磁化率を用いて、分散質の表面積、分散質に形成されている各細孔の直径の平均値、各細孔の深さの平均値、各細孔の体積の平均値、および細孔の個数を測定する方法を提案した(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/021910号
【文献】国際公開第2015/030184号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、分散質を分析する方法について鋭意研究を続け、その結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、分散媒に対する分散質の親和性を、分散質の体積磁化率を用いて定量的に評価するための分散質分析方法、および分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の分散質分析方法は、磁気泳動法により、分散媒中における分散質の体積磁化率を取得する工程と、前記分散質の体積磁化率と前記分散媒の体積磁化率とにより、前記分散媒に対する前記分散質の親和性を分析する工程とを包含する。
【0006】
ある実施形態では、前記親和性を分析する工程において、前記分散質の体積磁化率と前記分散媒の体積磁化率との比較により、前記分散媒に対する前記分散質の親和性を分析する。
【0007】
ある実施形態では、前記親和性を分析する工程において、前記分散質の体積磁化率と前記分散媒の体積磁化率との差により、前記分散媒に対する前記分散質の親和性を分析する。
【0008】
本発明の第2の分散質分析方法は、分散媒中における分散質の粒子径を取得する工程と、磁気泳動法により、前記分散媒中における前記分散質の体積磁化率を取得する工程と、前記粒子径、前記分散質の体積磁化率の分布、その分布の拡がり、および前記分散媒の体積磁化率に基づいて、前記分散媒に対する前記分散質の親和性を分析する工程とを包含する。
【0009】
ある実施形態では、前記親和性を分析する工程において、前記粒子径と前記分散質の体積磁化率の分布との関係を示す回帰線を取得する。次に、前記回帰線に対する前記分散質の体積磁化率の分布の拡がりに基づき、前記分散媒に対する前記分散質の親和性を分析する。
【0010】
ある実施形態では、前記親和性を分析する工程において、前記分散質の粒子径の分布の拡がりに基づき、前記分散媒に対する前記分散質の親和性を分析する。
【0011】
本発明の第1の分析装置は、磁場生成部と、測定部と、演算部とを備える。前記測定部は、前記磁場生成部によって磁場が生成されている状態で、分散媒に分散された分散質の動きを測定する。前記演算部は、前記測定部の測定結果に基づいて前記分散質の体積磁化率を取得する。また前記演算部は、前記分散質の体積磁化率の分布を示す画像データを生成する。
【0012】
ある実施形態において、前記演算部は、前記分散質の体積磁化率と前記分散媒の体積磁化率との差を示す画像データを生成する。
【0013】
ある実施形態において、前記演算部は、前記分散媒中における前記分散質の粒子径を取得する。また前記演算部は、前記粒子径ごとにプロットされた前記分散質の体積磁化率の分布を示す画像データを生成する。
【0014】
ある実施形態において、前記演算部は、前記粒子径と前記分散質の体積磁化率の分布との関係を示す回帰線を取得する。また前記演算部は、前記回帰線を含む前記画像データを生成する。
【0015】
本発明の第2の分析装置は、磁場生成部と、測定部と、演算部とを備える。前記測定部は、前記磁場生成部によって磁場が生成されている状態で、分散媒に分散された分散質の動きを測定する。前記演算部は、前記測定部の測定結果に基づいて前記分散質の体積磁化率を取得する。また前記演算部は、前記分散質の体積磁化率の分布を解析して、前記分散媒に対する前記分散質の親和性を分析する。
【0016】
ある実施形態において、前記演算部は、前記分散質の体積磁化率と前記分散媒の体積磁化率との差の分布を解析して、前記分散媒に対する前記分散質の親和性を分析する。
【0017】
ある実施形態において、前記演算部は、前記分散媒中における前記分散質の粒子径を取得する。また前記演算部は、前記粒子径に対する前記分散質の体積磁化率の分布を解析する。
【0018】
ある実施形態において、前記演算部は、前記粒子径と前記分散質の体積磁化率との関係を示す近似関数を取得する。また前記演算部は、前記近似関数を用いて、前記粒子径に対する前記分散質の体積磁化率の分布を解析する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、分散媒に対する分散質の親和性を、分散質の体積磁化率を用いて定量的に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る分析装置を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る測定部の構成を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る分散質体積磁化率の第1の分布および第2の分布を示すグラフである。
図4】本発明の実施形態に係る分散質体積磁化率の第3の分布および第4の分布を示すグラフである。
図5】本発明の実施形態に係る分散質体積磁化率の第5の分布および第6の分布を示すグラフである。
図6】本発明の実施形態に係る分散質体積磁化率の第7の分布および第8の分布を示すグラフである。
図7】本発明の実施形態に係る分散質体積磁化率の第9の分布および第10の分布を示すグラフである。
図8】本発明の実施形態に係る分散質体積磁化率の第11の分布を示すグラフである。
図9】本発明の実施形態に係る分散質体積磁化率の第12の分布を示すグラフである。
図10】本発明の実施形態に係る分散質体積磁化率の第13の分布を示すグラフである。
図11】本発明の実施形態に係る分散質体積磁化率の第14の分布を示すグラフである。
図12】本発明の実施形態に係る分散質体積磁化率の第15の分布を示すグラフである。
図13】本発明の実施形態に係る分散質体積磁化率の第16の分布を示すグラフである。
図14】本発明の実施形態に係る分散質体積磁化率の第17の分布を示すグラフである。
図15】本発明の実施形態に係る分散質体積磁化率の第18の分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、図中、同一または相当部分については、同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、本発明は、以下で説明する実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。
【0022】
[実施形態1]
実施形態1の分散質分析方法は、磁気泳動法により、分散媒m中における分散質sの体積磁化率χs(以下、分散質体積磁化率χsと記載する場合がある。)を取得する工程を包含する。また、実施形態1の分散質分析方法は、分散質体積磁化率χsと分散媒mの体積磁化率χm(以下、分散媒体積磁化率χmと記載する場合がある。)とにより、分散媒mに対する分散質sの親和性を分析する工程を包含する。実施形態1では、分散媒mに対する分散質sの親和性を分析する工程において、分散質体積磁化率χsと分散媒体積磁化率χmとの比較または差により、分散媒mに対する分散質sの親和性が分析される。
【0023】
分散媒mは、例えば水である。あるいは、分散媒mは、メタノールや、エタノール、1-プロパノール、アセトニトリル、アセトン等のうちから選択され得る。または、分散媒mは、水や、メタノール、エタノール、1-プロパノール、アセトニトリル、アセトン等のうちの2つ以上を混合した混合物であってもよい。分散質sは、例えば、多孔質シリカゲル粒子、またはセルロースである。あるいは、分散質sは、ポリエチレンやポリスチレンのような樹脂であり得る。あるいは、分散質sは、液晶パネルにおいてスペーサ―として使用されるシリカ粒子であり得る。あるいは、分散質sは、インクやトナーのような有機物と無機物とが混在する有機/無機ハイブリッド粒子であり得る。あるいは、分散質sは、カーボンや酸化タングステン等の電極材料であり得る。あるいは、分散質sは、ホイップクリームやでんぷん、スクロース等の食品材料であり得る。あるいは、分散質sは、ヘキサンやベンゼン、トルエン、オリーブオイル等の液滴であり得る。
【0024】
以下、図1および図2を参照して、分散質体積磁化率χsを磁気泳動法により取得する方法について説明する。図1は、本実施形態の分析装置10を示す模式図である。分析装置10は、本実施形態の分散質分析方法に使用される。
【0025】
分析装置10は、磁場生成部20と、測定部30と、演算部40とを備える。磁場生成部20の近傍には分散媒mに分散質sが分散された分散系Dが配置される。分散系Dは、例えば、管状部材に入れられる。具体的には、分散系Dの入れられたキャピラリCが磁場生成部20の近傍に配置される。キャピラリCは、例えば、ガラス製である。また、キャピラリCは、その軸方向に直交する断面が約100μmのほぼ正方形状に構成され得る。分散質sは、分散媒mに分散した状態で、毛細管現象またはポンプによりキャピラリC内に導入される。ただし、キャピラリCは正方形状の断面を有するガラス製品に限定されない。キャピラリCの形状は、分散質sの磁気泳動挙動の観察が可能な形状であればよい。また、キャピラリCは、分散質sの磁気泳動挙動の観察が可能な材料で構成されていればよい。
【0026】
磁場生成部20は、超電導磁石、磁気回路、または永久磁石などを含む。例えば、磁場生成部20はポールピースによって強い磁場、および大きな磁場勾配を生成することが好ましい。なお、図1には1つの分散質sが示されているが、分散媒m中に複数の分散質sが存在していてもよい。
【0027】
磁場生成部20によって分散系Dに磁場が生成されると、分散質sは分散媒m中で磁気泳動する。測定部30は、磁場生成部20によって磁場が生成された状態で、分散媒m中(分散系D)における分散質sの動き(磁気泳動)を測定する。
【0028】
演算部40は、例えば、パーソナルコンピュータである。演算部40は、測定部30の測定結果から分散質sの磁気泳動速度vを取得する。例えば、演算部40は、測定部30によって測定された分散質sの位置の時間的な変化から、磁気泳動速度vを取得してもよい。具体的には、測定部30が、所定の時間間隔ごとに分散質sを撮像し、演算部40が、それらの撮像結果から磁気泳動速度vを取得してもよい。
【0029】
演算部40は、磁気泳動速度vから、分散質体積磁化率χsを取得する。具体的には、演算部40は、以下の式(1)を参照して、分散質体積磁化率χsを求める。
v=2(χs-χm)r2(1/9ημ0)B(dB/dx) (1)
【0030】
式(1)において、rは分散質sの半径であり、ηは分散媒mの粘性率であり、μoは真空の透磁率であり、B(dB/dx)は磁場勾配である。
【0031】
分散質sの半径rには、文献値を使用し得る。あるいは、分散質sの半径rは、測定により求めてもよい。例えば、測定部30が撮像した分散質sの画像から、分散質sの半径rを測定し得る。分散媒mの粘性率ηおよび真空の透磁率μoは定数であり、分散媒体積磁化率χmには文献値を使用し得る。あるいは、分散媒体積磁化率χmは、SQUID素子または磁気天秤を用いて測定してもよい。磁場勾配B(dB/dx)は装置定数であり、測定可能である。
【0032】
続いて図2を参照して、測定部30の構成について説明する。図2は、測定部30の構成を示す模式図である。図2に示すように、測定部30は、拡大部32および撮像部34を有する。キャピラリC内に導入された分散質sは、拡大部32によって適当な倍率で拡大されて、撮像部34で撮像される。例えば、拡大部32は対物レンズを含み、撮像部34は電荷結合素子(Charge Coupled Device:CCD)を含む。なお、測定部30が撮像部34を有することにより、分散質sの位置だけでなく、分散質sの粒子径も併せて測定可能となる。測定部30を用いて分散質sの半径rを測定する場合、分析装置10は、キャピラリCを照らす光源50を有することが好ましい。光源50は特に限定されず、例えば、光源50としてレーザー光源を使用し得る。なお、光源50としてレーザー光源を使用する場合、レーザードップラー法によって分散質sの磁気泳動速度vを解析することが可能となる。レーザードップラー法によって磁気泳動速度vを解析する場合、撮像部34は、光電子増倍管を含む。また、光源50としてレーザー光源を使用する場合、動的光散乱法によって分散質sの粒子径を解析することが可能となる。動的光散乱法によって粒子径を解析する場合、撮像部34は、光電子増倍管を含む。
【0033】
続いて図3図5を参照して、分散質体積磁化率χsと分散媒体積磁化率χmとの比較により、分散媒mに対する分散質sの親和性を分析する方法について説明する。
【0034】
図3は、分散質体積磁化率χsの第1の分布(破線)および第2の分布(実線)を示すグラフである。具体的には、分散質体積磁化率χsの第1の分布(破線)は、分散質sであるオクタデシル基結合シリカゲル(ODS)粒子を分散媒mであるアセトンに分散させて取得される。また、分散質体積磁化率χsの第2の分布(実線)は、エンドキャッピング処理されたODS粒子(分散質s)をアセトン(分散媒m)に分散させて取得される。
【0035】
図3において、横軸は分散質体積磁化率χsを示し、縦軸は粒子数の割合を示す。図1を参照して説明した演算部40は、分散系D(分散媒m)内の分散質sの個々の体積磁化率χsの情報を取得することにより、図3に示すグラフの画像データを生成する。演算部40が生成した画像データに基づく画像は、ディスプレイまたはプリンター等の出力装置により出力される。
【0036】
ODS粒子は、多孔質シリカゲル粒子表面のシラノール基にオクタデシルシラン化合物を反応させて生成される。シラノール基は水酸基(OH)を含み、シラノール基をオクタデシルシラン化合物と反応させることにより、多孔質シリカゲル粒子が疎水化される。但し、多孔質シリカゲル粒子表面の全てのシラノール基をオクタデシルシラン化合物と反応させることはできないため、より疎水的にする場合にエンドキャッピング処理が施される。エンドキャッピング処理は、トリメチルモノクロルシランのようなシラン化合物を残存シラノール基に反応させる処理である。なお、エンドキャッピング処理によっても、全ての残存シラノール基を取り除くことは困難である。
【0037】
図3に示すように、分散質体積磁化率χsの第1の分布(破線)および第2の分布(実線)をアセトンの体積磁化率χm(-5.77×10-6)と比較すると、第1の分布(破線)よりも第2の分布(実線)の方がアセトンの体積磁化率χmに近い。つまり、エンドキャップ処理が施されていないODS粒子の体積磁化率χs(破線)よりも、エンドキャッピング処理が施されたODS粒子の体積磁化率χs(実線)の方が、アセトンの体積磁化率χmに近い。換言すると、ODS粒子にエンドキャッピング処理を施して、より疎水的にすることにより、分散質体積磁化率χsがアセトンの体積磁化率χmに近くなる。このことは、エンドキャッピング処理により、アセトン(分散媒m)に対するODS粒子(分散質s)の親和性が高くなることを示す。
【0038】
即ち、分散質体積磁化率χsが分散媒体積磁化率χmに近いことは、分散質sの表面に吸着している分散媒mの量が多いことを示す。そして、分散媒mが多く吸着していることは、分散媒mに対する分散質sの親和性が高いことを示す。
【0039】
なお、分散質sの表面に吸着している分散媒mの量が多いほど、分散質体積磁化率χsが分散媒体積磁化率χmに近づくのは、体積磁化率に加成性が成り立つためである。例えば、ODS粒子のように、表面が修飾分子によって修飾された多孔質材(分散質s)の体積磁化率χsは、以下の式(2)によって示される。
χs=χB(VB/Vs)+χM(VM/Vs)+χm(Vm/Vs) (2)
【0040】
式(2)において、Vsは分散質sの体積であり、VBは分散質sの骨格部分の体積であり、VMは分散質sの表面を修飾する修飾分子が占める体積であり、Vmは分散質sに吸着した分散媒mが占める体積である。また、χBは分散質sの骨格部分の体積磁化率であり、χMは分散質sの表面を修飾する修飾分子の体積磁化率であり、χmは分散質sに吸着した分散媒mの体積磁化率である。
【0041】
式(2)から明らかなように、分散質sの体積Vsに占める分散媒mの体積Vmの割合が大きくなるほど、換言すると、分散質sに吸着する分散媒mの量が多いほど、分散質sの体積磁化率χsは分散媒mの体積磁化率χmに近くなる。
【0042】
したがって、分散媒mがアセトンの場合、エンドキャッピング処理を施したODS粒子は、エンドキャッピング処理が施されていないODS粒子に比べて、分散媒mに対する親和性が高いと評価することができる。
【0043】
なお、演算部40が、分散質sの体積磁化率の分布を解析して、分散媒mに対する分散質sの親和性を分析してもよい。例えば、演算部40が、分散系D(分散媒m)内の分散質sの個々の体積磁化率χsと、分散媒mの体積磁化率χmとに基づき、分散媒mに対する分散質sの親和性を示す値(パラメータ)を演算(数値解析)により求めてもよい。
【0044】
図4は、分散質体積磁化率χsの第3の分布および第4の分布を示すグラフ(ヒストグラム)である。具体的には、分散質体積磁化率χsの第3の分布は、アセトンにODS粒子を分散させて取得される。また、分散質体積磁化率χsの第4の分布は、アセトンに界面活性剤TritonX-100を0.1質量%混合させた溶液にODS粒子を分散させて取得される。第3の分布において、分散媒mはアセトンであり、分散質sはODS粒子である。一方、界面活性剤TritonX-100を混合したアセトンにODS粒子を分散させると、ODS粒子表面に界面活性剤TritonX-100が吸着する。したがって、第4の分布において、分散媒mはアセトンであり、分散質sは、界面活性剤TritonX-100が表面に吸着したODS粒子である。
【0045】
図4において、横軸は分散質体積磁化率χsを示し、縦軸は粒子数を示す。図1を参照して説明した演算部40は、分散系D(分散媒m)内の分散質sの個々の体積磁化率χsの情報を取得することにより、図4に示すグラフの画像データを生成する。演算部40が生成した画像データに基づく画像は、ディスプレイまたはプリンター等の出力装置により出力される。
【0046】
図4に示すように、分散質体積磁化率χsの第3の分布および第4の分布をアセトンの体積磁化率χm(-5.77×10-6)と比較すると、第3の分布よりも第4の分布の方がアセトンの体積磁化率χmに近い。つまり、ODS粒子の体積磁化率χsよりも、界面活性剤TritonX-100が表面に吸着したODS粒子の体積磁化率χsの方が、アセトンの体積磁化率χmに近い。換言すると、ODS粒子の表面に界面活性剤TritonX-100が吸着することにより、分散質体積磁化率χsが分散媒体積磁化率χmに近くなる。このことは、界面活性剤TritonX-100がODS粒子(分散質s)の表面に吸着すると、アセトン(分散媒m)に対するODS粒子(分散質s)の親和性が高くなることを示す。
【0047】
したがって、分散媒mがアセトンの場合、界面活性剤TritonX-100が表面に吸着したODS粒子は、界面活性剤TritonX-100が表面に吸着していないODS粒子に比べて、分散媒mに対する親和性が高いと評価することができる。
【0048】
図5は、分散質体積磁化率χsの第5の分布および第6の分布を示すグラフ(散布図)である。詳しくは、図5は、粒子径ごとにプロットされた分散質体積磁化率χsの2つの分布を示す。図5において、横軸は粒子径を示し、縦軸は分散質体積磁化率χsを示す。図1を参照して説明した演算部40は、分散系D(分散媒m)内の分散質sの個々の粒子径の情報および体積磁化率χsの情報を取得することにより、図5に示すグラフの画像データを生成する。即ち、演算部40は、粒子径ごとにプロットされた分散質sの体積磁化率χsの分布を示す画像データを生成する。演算部40が生成した画像データに基づく画像は、ディスプレイまたはプリンター等の出力装置により出力される。
【0049】
具体的には、分散質体積磁化率χsの第5の分布は、抗てんかん薬カルバマゼピンI型(分散質s)を水(分散媒m)に分散させて取得した粒子径と分散質体積磁化率χsとの関係を示す。また、分散質体積磁化率χsの第6の分布は、抗てんかん薬カルバマゼピンIV型(分散質s)を水(分散媒m)に分散させて取得した粒子径と分散質体積磁化率χsとの関係を示す。
【0050】
図5に示すように、体積磁化率χsの第5の分布(I型)および第6の分布(IV型)を水の体積磁化率χm(-9.01×10-6)と比較すると、第5の分布(I型)よりも、第6の分布(IV型)の方が水の体積磁化率χmに近い。つまり、抗てんかん薬カルバマゼピンI型の体積磁化率χsよりも、抗てんかん薬カルバマゼピンIV型の体積磁化率χsの方が、水の体積磁化率χmに近い。したがって、抗てんかん薬カルバマゼピンIV型は、抗てんかん薬カルバマゼピンI型よりも水に対する親和性が高いと評価することができる。
【0051】
続いて図6および図7を参照して、分散質体積磁化率χsと分散媒体積磁化率χmとの差により、分散媒mに対する分散質sの親和性を分析する方法について説明する。
【0052】
図6は、分散質体積磁化率χsの第7の分布および第8の分布を示すグラフ(ヒストグラム)である。詳しくは、図6は、分散媒体積磁化率χmと分散質体積磁化率χsとの差(以下、体積磁化率差と記載する場合がある。)の2つの分布を示す。図6において、横軸は体積磁化率差を示し、縦軸は粒子数の割合を示す。図1を参照して説明した演算部40は、分散系D(分散媒m)内の分散質sの個々の体積磁化率χsの情報と、分散媒mの体積磁化率χmの情報とを取得することにより、図6に示すグラフの画像データを生成する。即ち、演算部40は、体積磁化率差を示す画像データを生成する。演算部40が生成した画像データに基づく画像は、ディスプレイまたはプリンター等の出力装置により出力される。
【0053】
具体的には、図6は、分散媒mであるメタノールの体積磁化率χm(-6.65×10-6)と、分散質sである多孔質シリカゲル粒子をメタノール(分散媒m)に分散させて取得した分散質体積磁化率χsとの差の分布(第7の分布)を示す。また、図6は、分散媒mであるアセトンの体積磁化率χmと、分散質sである多孔質シリカゲル粒子をアセトン(分散媒m)に分散させて取得した分散質体積磁化率χsとの差の分布(第8の分布)を示す。
【0054】
図6に示すように、アセトンに多孔質シリカゲル粒子を分散させる場合(第8の分布)よりも、メタノールに多孔質シリカゲル粒子を分散させる場合(第7の分布)の方が、体積磁化率差が0に近い。このことは、多孔質シリカゲル粒子の体積磁化率χsが、アセトンの体積磁化率χmよりもメタノールの体積磁化率χmに近いことを示す。したがって、多孔質シリカゲル粒子はアセトンよりもエタノールに対して親和性が高いと評価することができる。
【0055】
なお、演算部40が、分散系D(分散媒m)内の分散質sの個々の体積磁化率χsと、分散媒mの体積磁化率χmとの差を求め、その差の分布(体積磁化率差の分布)を解析して、分散媒mに対する分散質sの親和性を示す値(パラメータ)を演算(数値解析)により求めてもよい。
【0056】
図7は、分散質体積磁化率χsの第9の分布および第10の分布を示すグラフ(ヒストグラム)である。詳しくは、図7は、体積磁化率差の2つの分布を示す。図7において、横軸は体積磁化率差を示し、縦軸は粒子数の割合を示す。図1を参照して説明した演算部40は、分散系D(分散媒m)内の分散質sの個々の体積磁化率χsの情報と、分散媒mの体積磁化率χmの情報とを取得することにより、図7に示すグラフの画像データを生成する。即ち、演算部40は、体積磁化率差を示す画像データを生成する。演算部40が生成した画像データに基づく画像は、ディスプレイまたはプリンター等の出力装置により出力される。
【0057】
具体的には、図7は、分散媒mであるメタノールの体積磁化率χmと、分散質sである多孔質シリカゲル粒子をメタノールに分散させて取得した分散質体積磁化率χsとの差の分布(第9の分布)を示す。また、図7は、分散媒mである1-プロパノールの体積磁化率χm(-7.48×10-6)と、分散質sである多孔質シリカゲル粒子を1-プロパノールに分散させて取得した分散質体積磁化率χsとの差の分布(第10の分布)を示す。
【0058】
図7に示すように、多孔質シリカゲル粒子をメタノールに分散させた場合に得られる体積磁化率差の分布(第9の分布)と、多孔質シリカゲル粒子を1-プロパノールに分散させた場合に得られる体積磁化率差の分布(第10の分布)との差は小さい。このことは、多孔質シリカゲル粒子のメタノールと1-プロパノールとに対する親和性の差が小さいことを示す。
【0059】
以上のように、実施形態1によれば、分散媒mに対する分散質sの親和性を、分散媒mの体積磁化率χmと、分散媒m中における分散質sの体積磁化率χsとを用いて定量的に評価することができる。また、分散媒mに対する分散質sの親和性が高いほど、分散媒mに対する分散質sの分散性も良好となる。したがって、実施形態1によれば、分散質sの分散性の定量的な評価も可能となる。
【0060】
[実施形態2]
続いて図8図15を参照して、実施形態2の分散質分析方法を説明する。但し、実施形態1と異なる事項を中心に説明し、実施形態1で説明した事項と重複する事項の説明については適宜割愛する。実施形態2の分散質分析方法は、分散媒mに対する分散質sの親和性を分析する工程が実施形態1と異なる。具体的には、実施形態2の分散質分析方法は、分散媒m中における分散質sの粒子径を取得する工程を包含する。また、実施形態2の分散質分析方法は、磁気泳動法により、分散媒m中における分散質sの体積磁化率χsを取得する工程を包含する。さらに、実施形態2の分散質分析方法は、粒子径と、分散質sの体積磁化率χsの分布と、その分布の拡がりと、分散媒mの体積磁化率χmとに基づいて、分散媒mに対する分散質sの親和性を分析する工程を包含する。実施形態2では、分散媒mに対する分散質sの親和性を分析する工程において、粒子径と分散質sの体積磁化率χsの分布との関係を示す回帰線を取得する。そして、その回帰線に対する分散質sの体積磁化率χsの分布の拡がりに基づき、分散媒mに対する分散質sの親和性を分析する。または、分散媒mに対する分散質sの親和性を分析する工程において、分散質sの粒子径の分布の拡がりに基づき、分散媒mに対する分散質sの親和性を分析する。
【0061】
図8図11は、分散質体積磁化率χsの第11の分布~第14の分布を示すグラフ(散布図)である。詳しくは、図8図11は、粒子径ごとにプロットされた分散質体積磁化率χsの分布を示す。図8図11において、横軸は粒子径を示し、縦軸は分散質体積磁化率χsを示す。また、図8図11は、回帰線とその式(近似関数)を示す。近似関数(回帰線の式)は、例えば最小二乗法により求められる。図1を参照して説明した演算部40は、分散系D(分散媒m)内の分散質sの個々の粒子径の情報および体積磁化率χsの情報を取得することにより、図8図11に示すグラフおよび回帰線の画像データを生成する。即ち、演算部40は、粒子径と分散質sの体積磁化率χsの分布との関係を示す近似関数(回帰線)を演算により取得する。また、演算部40は、粒子径ごとにプロットされた分散質sの体積磁化率χsの分布と、回帰線とを含む画像データを生成する。演算部40が生成した画像データに基づく画像は、ディスプレイまたはプリンター等の出力装置により出力される。
【0062】
具体的には、図8図11は、分散質sである多孔質シリカゲル粒子を各種分散媒mに分散させて取得した粒子径と体積磁化率χsとの関係を示す。即ち、図8は、多孔質シリカゲル粒子をメタノール(分散媒m)に分散させて取得した粒子径と分散質体積磁化率χsとの関係(第11の分布)を示す。図9は、多孔質シリカゲル粒子をエタノール(分散媒m)に分散させて取得した粒子径と分散質体積磁化率χsとの関係(第12の分布)を示す。図10は、多孔質シリカゲル粒子をアセトニトリル(分散媒m)に分散させて取得した粒子径と分散質体積磁化率χsとの関係(第13の分布)を示す。図11は、多孔質シリカゲル粒子をアセトン(分散媒m)に分散させて取得した粒子径と分散質体積磁化率χsとの関係(第14の分布)を示す。
【0063】
図8図11に示すように、分散質sが多孔質粒子である場合、粒子径が大きくなるほど、分散質体積磁化率χsが分散媒体積磁化率χmに近づく。これは、粒子径が大きくなるほど、分散質sに形成されている細孔の合計体積が増加するためである。即ち、細孔の合計体積が増加して、分散質sに吸着される分散媒mの量が増加するためである。なお、メタノールの体積磁化率χmは-6.65×10-6であり、エタノールの体積磁化率χmは-7.11×10-6であり、アセトニトリルの体積磁化率χmは-6.74×10-6であり、アセトンの体積磁化率χmは-5.77×10-6である。
【0064】
一方、回帰線に対する分散質体積磁化率χsの分布の拡がりには、分散媒mによって違いが生じた。具体的には、回帰線に対する分散質体積磁化率χsの分布の拡がり(バラツキ)は、分散媒mがアセトンの場合に、分散媒mがメタノール、エタノール、またはアセトニトリルの場合よりも大きくなる。これは、アセトンが、メタノール、エタノール、およびアセトニトリルに比べて多孔質シリカゲル粒子の表面に吸着し難いことを示している。換言すると、多孔質シリカゲル粒子のメタノール、エタノール、およびアセトニトリルに対する親和性が、アセトンに対する親和性に比べて高いことを示している。即ち、多孔質シリカゲル粒子は、アセトンよりも、メタノール、エタノール、およびアセトニトリルに分散し易いことを示している。
【0065】
図12は、分散質体積磁化率χsの第15の分布を示すグラフ(散布図)である。詳しくは、図12は、粒子径ごとにプロットされた分散質体積磁化率χsの分布を示す。図12において、横軸は粒子径を示し、縦軸は分散質体積磁化率χsを示す。また、図12は、回帰線とその式(近似関数)を示す。近似関数(回帰線の式)は、例えば最小二乗法により求められる。図1を参照して説明した演算部40は、分散系D(分散媒m)内の分散質sの個々の粒子径の情報および体積磁化率χsの情報を取得することにより、図12に示すグラフおよび回帰線の画像データを生成する。演算部40が生成した画像データに基づく画像は、ディスプレイまたはプリンター等の出力装置により出力される。
【0066】
具体的には、分散質体積磁化率χsの第15の分布は、アセトンに界面活性剤TritonX-100を0.1質量%混合させた溶液に多孔質シリカゲル粒子を分散させて取得した粒子径と分散質体積磁化率χsとの関係を示す。図11および図12に示すように、アセトンに界面活性剤TritonX-100を混合することにより、回帰線に対する分散質体積磁化率χsの分布の拡がりが狭くなる。これは、多孔質シリカゲル粒子の表面に界面活性剤TritonX-100が吸着して、多孔質シリカゲル粒子のアセトンに対する親和性が高くなることを示している。
【0067】
図13は、分散質体積磁化率χsの第16の分布を示すグラフ(散布図)である。詳しくは、図13は、粒子径ごとにプロットされた分散質体積磁化率χsの分布を示す。図13において、横軸は粒子径を示し、縦軸は分散質体積磁化率χsを示す。また、図13は、回帰線とその式(近似関数)を示す。近似関数(回帰線の式)は、例えば最小二乗法により求められる。図1を参照して説明した演算部40は、分散系D(分散媒m)内の分散質sの個々の粒子径の情報および体積磁化率χsの情報を取得することにより、図13に示すグラフおよび回帰線の画像データを生成する。演算部40が生成した画像データに基づく画像は、ディスプレイまたはプリンター等の出力装置により出力される。
【0068】
具体的には、分散質体積磁化率χsの第16の分布は、アセトン(分散媒m)にODS粒子(分散質s)を分散させて取得した粒子径と分散質体積磁化率χsとの関係を示す。図11および図13に示すように、分散媒mが同じアセトンであっても、多孔質シリカゲル粒子を疎水化したODS粒子の体積磁化率χsの分布は、多孔質シリカゲル粒子の体積磁化率χsの分布に比べて狭くなる。これは、多孔質シリカゲル粒子の表面を疎水化することにより、多孔質シリカゲル粒子のアセトンに対する親和性が高くなることを示している。
【0069】
図14および図15は、分散質体積磁化率χsの第17の分布および第18の分布を示すグラフ(散布図)である。詳しくは、図14および図15は、粒子径ごとにプロットされた分散質体積磁化率χsの2つの分布を示す。図14および図15において、横軸は粒子径を示し、縦軸は分散質体積磁化率χsを示す。また、図14および図15は、回帰線とその式(近似関数)を示す。近似関数(回帰線の式)は、例えば最小二乗法により求められる。図1を参照して説明した演算部40は、分散系D(分散媒m)内の分散質sの個々の粒子径の情報および体積磁化率χsの情報を取得することにより、図14および図15に示すグラフおよび回帰線の画像データを生成する。演算部40が生成した画像データに基づく画像は、ディスプレイまたはプリンター等の出力装置により出力される。
【0070】
具体的には、分散質体積磁化率χsの第17の分布は、ポリエチレン粒子(分散質s)をメタノール(分散媒m)に分散させて取得した粒子径と分散質体積磁化率χsとの関係を示す。また、分散質体積磁化率χsの第18の分布は、ポリエチレン粒子(分散質s)をアセトン(分散媒m)に分散させて取得した粒子径と分散質体積磁化率χsとの関係を示す。
【0071】
図14および図15に示すように、ポリエチレン粒子も多孔質であるため、粒子径が大きくなるほど、分散質体積磁化率χsが分散媒体積磁化率χmに近づく。一方、粒子径の分布の拡がりには、分散媒mによって違いが生じた。具体的には、ポリエチレン粒子をアセトンに分散させた場合、メタノールに分散させた場合に比べて、粒子径の分布が広くなる。これは、ポリエチレン粒子がアセトンによって膨潤したためである。したがって、図14および図15に示す測定結果は、アセトンがメタノールに比べてポリエチレン粒子の内部に侵入し易いことを示している。即ち、ポリエチレン粒子のアセトンに対する親和性が、メタノールに対する親和性よりも高いことを示している。
【0072】
なお、演算部40が、粒子径に対する分散質sの体積磁化率χsの分布を解析して、分散媒mに対する分散質sの親和性を分析してもよい。例えば、演算部40が、粒子径に対する分散質sの体積磁化率χsの分布を、近似関数(回帰線の式)を用いて解析して、分散媒mに対する分散質sの親和性を示す値(パラメータ)を演算(数値解析)により求めてもよい。より具体的には、例えば演算部40が、回帰線に対する分散質体積磁化率χsの分布の拡がりを数値解析して、分散媒mに対する分散質sの親和性を示す値(パラメータ)を求めてもよい。また例えば、演算部40が、分散質sの粒子径の分布の拡がりを数値解析して、分散媒mに対する分散質sの親和性を示す値(パラメータ)を求めてもよい。
【0073】
以上のように、実施形態2によれば、実施形態1と同様に、分散媒mに対する分散質sの親和性を、分散媒mの体積磁化率χmと、分散媒m中における分散質sの体積磁化率χsとを用いて定量的に評価することができる。また、実施形態1と同様に、分散質sの分散性の定量的な評価も可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、例えば粒子や結晶、液滴の分析に適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 分析装置
20 磁場生成部
30 測定部
40 演算部
50 光源
m 分散媒
s 分散質
C キャピラリ
D 分散系
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15