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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】接合用組成物
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20220104BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20220104BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20220104BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
H01B1/22 D
B22F7/08 C
B22F1/00 K
B22F1/00 L
H01B1/00 K
H01B1/00 E
H01B1/22 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018221890
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2020087766
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2020-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】川名 泰仁
(72)【発明者】
【氏名】小山 優
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-111800(JP,A)
【文献】特開2017-095780(JP,A)
【文献】特開2013-082967(JP,A)
【文献】国際公開第2007/034833(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
B22F 7/08
B22F 1/00
H01B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉と、
前記金属粉よりも粒子径の小さい金属核粒子の表面に複数の脂肪族カルボン酸(A1)及び脂肪族アルデヒド(A2)から選択される1種以上の被覆分子が2.5~5.2分子/nmの密度で被覆した被覆金属粒子(A)と、
点が160℃以上300℃以下の脂肪族アルデヒド系溶媒(B2)から選択される1種以上の溶媒(B)と、を含有する、
接合用組成物。
【請求項2】
金属粉と、
前記金属粉よりも粒子径の小さい金属核粒子の表面に複数の脂肪族カルボン酸(A1)及び脂肪族アルデヒド(A2)から選択される1種以上の被覆分子が2.5~5.2分子/nmの密度で被覆した被覆金属粒子(A)と、
沸点が160℃以上300℃以下の脂肪族カルボン酸系溶媒(B1)及び沸点が160℃以上300℃以下の脂肪族アルデヒド系溶媒(B2)から選択される1種以上の溶媒(B)と、
流動パラフィンと、を含有する、
接合用組成物。
【請求項3】
前記脂肪族アルデヒド系溶媒(B2)がデカナールを含む、
請求項1又は2に記載の接合用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粒子を含有する分散液を、インクジェットなど各種の印刷法により、配線パターン状に直接印刷することで、露光によるパターニングを必要としない、プリンタブルエレクトロニクスが注目されている。
また、数十nm以下の金属粒子は、粒子径が小さくなるにつれて、バルクの金属とは異なる種々の物理的、化学的特性を示すことが知られている。例えば、金属粒子の融点は、粒子径が小さくなると、バルクの金属の融点よりも低くなることが知られている。そのため、焼結時の温度を低温化する点から、粒子径の小さい金属粒子を用いることが検討されている。印刷法としては、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、およびディスペンス印刷法等が挙げられる。
【0003】
本発明者らは特許文献1において、銅核粒子と、当該銅核粒子の表面に1nm当り2.5~5.2分子の密度で配置された複数の脂肪族カルボン酸分子と、を含む、被覆銅粒子を開示している。また、本発明者らは特許文献2において、銀核粒子と、当該銀核粒子の表面に1nm当り2.5~5.2分子の密度で配置された複数の脂肪族カルボン酸分子と、を含む、被覆銀粒子を開示している。
これらの被覆銅粒子及び被覆銀粒子は、優れた耐酸化性と焼結性を有するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-069716号公報
【文献】特開2017-179403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、被覆金属粒子を含む接合用組成物は、昇温させて被覆金属粒子を焼結させることによって接合体を形成する。しかしながら、焼結過程において被覆分子が脱離することなどによって、当該金属粒子が酸化することがあった。このような場合には、当該接合体の接合強度が低下することがあった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、接合強度に優れた接合体を形成する接合用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る接合用組成物の一実施形態は、金属粉と、前記金属粉よりも粒子径の小さい金属核粒子の表面に複数の脂肪族カルボン酸(A1)及び脂肪族アルデヒド(A2)から選択される1種以上の被覆分子が2.5~5.2分子/nmの密度で被覆した被覆金属粒子(A)と、沸点が160℃以上300℃以下の脂肪族カルボン酸系溶媒(B1)及び沸点が160℃以上300℃以下の脂肪族アルデヒド系溶媒(B2)から選択される1種以上の溶媒(B)と、を含有する。
【0008】
本発明に係る接合用組成物の一実施形態は、前記脂肪族アルデヒド系溶媒(B2)がデカナールを含む。
【0009】
本発明に係る接合用組成物の一実施形態は、前記脂肪族カルボン酸系溶媒(B1)がオクタン酸を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、接合強度に優れた接合体を形成する接合用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[接合用組成物]
本実施形態の接合用組成物は、金属粉と、前記金属粉よりも粒子径の小さい金属核粒子の表面に複数の脂肪族カルボン酸(A1)及び脂肪族アルデヒド(A2)から選択される1種以上の被覆分子が2.5~5.2分子/nmの密度で被覆した被覆金属粒子(A)と、沸点が160℃以上300℃以下の脂肪族カルボン酸系溶媒(B1)及び沸点が160℃以上300℃以下の脂肪族アルデヒド系溶媒(B2)から選択される1種以上の溶媒(B)と、を含有する。
【0012】
すなわち、本実施形態の接合用組成物は、金属粉と、脂肪族基を有する被覆分子で被覆された被覆金属粒子(A)と、沸点が160℃以上300℃以下の溶媒(B)と、を含有する。このような構成においては、溶媒(B)の沸点が160℃以上300℃以下であるために揮発しにくく、焼結過程においても被覆金属粒子(A)及び金属粉を保護し、耐酸化性を向上させるものと推定される。
以上のことから、本実施形態の接合用組成物は、接合強度に優れる接合体を形成することができる。
【0013】
<金属粉>
本実施形態で用いられる金属粉には、接合用組成物に用いられる公知の金属粉を用いることができる。当該金属粉における金属の種類は特に限定されるものではなく、後述する金属核粒子に用いられうる金属の中から1種以上を適宜選択して用いることができる。中でも、導電性の観点から、銅または銀を用いることが好ましい。金属粉と被覆金属粒子(A)との質量比は、特に制限されないが、接合強度を高める観点から、20:80~80:20が好ましく、30:70~70:30がより好ましく、40:60~60:40が更により好ましい。
【0014】
本実施形態で用いられる金属粉の粒径は特に制限されないが、金属粉の平均一次粒径は、好ましくは0.3以上10μm以下、より好ましくは0.4以上5μm以下、更により好ましくは0.5以上1.0μm以下とすることができる。平均一次粒径が10μm以下の金属粉を用いることで、接合用組成物中の金属粉の密度をより均一にすることができ、接合強度を向上することができる。また、本実施形態において、平均一次粒径の異なる複数種の金属粉を混合して用いてもよい。平均一次粒径の異なる複数種の金属粉を混合して用いた場合、平均一次粒径の比較的大きな金属粉の間に平均一次粒径の比較的小さな金属粉が入り込み、全体としての充填密度を向上させることができる。
【0015】
<被覆金属粒子>
本実施形態で用いられる被覆金属粒子(A)は、上述した金属粉よりも粒子径の小さい金属核粒子の表面に複数の脂肪族カルボン酸(A1)及び脂肪族アルデヒド(A2)から選択される1種以上の被覆分子が2.5~5.2分子/nmの密度で被覆した粒子である。被覆分子は、カルボキシ基側が金属核粒子表面に吸着して単分子膜を形成している。このため、金属核粒子の表面は、被覆分子によって保護されて酸化が抑制され、高い耐酸化性を有するものと推定される。例えば、前記金属核粒子として銀核粒子を用いた被覆銀粒子においては、製造後2ヶ月経過後における酸化銀及び水酸化銀の含有割合を、被覆銀粒子中の銀核粒子100質量%に対して5質量%以下に抑制することも可能である。なお、被覆金属粒子(A)中における金属酸化物の生成は、被覆金属粒子(A)のX線回折(XRD)測定により確認することができる。
【0016】
また、被覆分子は金属核粒子と物理吸着等によって結合しているため、比較的低温で拡散・脱離すると考えられる。したがって、各金属核粒子の表面は加熱によって容易に露出され、金属核粒子の表面同士の接触が可能になるため、当該被覆金属粒子(A)は低温での焼結性に優れている。
【0017】
(金属核粒子)
本実施形態で用いられる金属核粒子の平均一次粒径は、前記金属粉の平均一次粒径よりも小さければ特に限定されないが、低温焼結性及び分散性の観点から、300nm未満であることが好ましく、250nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが更により好ましい。また、金属核粒子の平均一次粒径は、通常、1nm以上であり、5nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。なお、当該金属核粒子の平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察された任意の20個の金属核粒子の一次粒子径の算術平均値である。
【0018】
金属核粒子の材質は、焼結後に十分な接合強度を示す金属であればよく、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、鉄、クロム、スズ、ニッケル、亜鉛、鉛、インジウム、ビスマス、ゲルマニウム、アンチモン、コバルト、パラジウム、ロジウム、モリブデン、タングステン、チタン、ジルコニウム、ガリウム、ヒ素、ホウ素、ケイ素、及び、これらの合金が挙げられる。また、金属核粒子の材質は、焼結後に導電性を示す金属であることが好ましく、中でも、金、銀、又は銅であることがより好ましく、銀、又は銅であることが更により好ましい。これらの金属を用いることで、例えば電子回路の印刷等に本実施形態の接合用組成物を適用することができる。また、本実施形態で用いられる被覆金属粒子(A)は、耐酸化性に優れていることから、金属核粒子として銅を好適に用いることができる。被覆金属粒子(A)が複数ある場合、含まれる各金属核粒子は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0019】
金属核粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、金属酸化物、金属水酸化物、及びその他の不純物を含んでいてもよい。金属酸化物及び金属水酸化物の含有割合は、導電性の点から、金属核粒子に対して5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更により好ましい。また、導電性の点から、金属核粒子中の金属の含有割合は、95質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更により好ましい。
【0020】
金属核粒子の形状は、用途等に応じて適宜選択することができる。当該形状は、真球状を含む略球状、板状、棒状などが挙げられ、中でも、略球状であることが好ましい。なお、後述する被覆金属粒子(A)の製造方法によれば、おおよそ球状に近似可能な略球状の金属核粒子が得られる。なお、被覆金属粒子(A)の粒径は、SEM観察により決定できる。
【0021】
(被覆分子)
本実施形態における被覆分子には、脂肪族カルボン酸(A1)又は脂肪族アルデヒド(A2)から選択される1種以上の分子が、単独又は組み合わせて用いられる。当該被覆分子は、前記金属核粒子の表面を1nm当り2.5~5.2分子の密度で被覆し、前記金属核粒子の分散性および酸化抑制効果を有する。また、焼結時においては、当該被覆分子は容易に金属核粒子表面から除去され、または分解あるいは揮発するため、接合体中の残留が抑制される。これにより、電気伝導性に優れた導電体が得られる。
【0022】
本実施形態における被覆分子の沸点は、150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが更により好ましい。被覆分子の沸点が上記の条件を満たす場合には、被覆分子が焼結過程においても金属核粒子を十分に保護するため、金属核粒子の耐酸化性を向上し、接合強度を高めることができる。一方、接合強度を高める観点から、当該被覆分子の沸点は300℃以下であることが好ましい。
【0023】
<<脂肪族カルボン酸>>
脂肪族カルボン酸(A1)は、脂肪族化合物に1個又は2個以上のカルボキシ基が置換された構造を有する化合物であり、本実施形態においては、通常、金属核粒子表面に、脂肪族カルボン酸(A1)のカルボキシ基が配置される。本実施形態においては、脂肪族化合物に1個のカルボキシ基が置換された構造、即ち、脂肪族炭化水素基と、1個のカルボキシ基を有する化合物が好ましい。
【0024】
脂肪族カルボン酸(A1)を構成する脂肪族炭化水素基は、直鎖、分枝、又は環状構造を有する炭化水素基であって、不飽和結合を有していてもよい。本実施形態においては、金属核粒子表面に所定の密度で単分子膜を形成しやすい点から、分枝及び環状構造を有しない、直鎖脂肪族炭化水素基を用いることが好ましい。不飽和結合は、二重結合であっても三重結合であってもよいが、二重結合であることが好ましい。また、脂肪族炭化水素基が不飽和結合を有する場合、その個数は、1分子中に1~3個有することが好ましく、1~2個有することがより好ましく、1個であることが更により好ましい。
【0025】
本実施形態において脂肪族カルボン酸(A1)は、中でも、直鎖脂肪族炭化水素基の末端にカルボキシ基を有することが好ましい。脂肪族炭化水素基を直鎖構造とすることで、被覆金属粒子(A)と後述する溶媒(B)との親和性を高め、被覆金属粒子(A)の分散性を向上することができる。また、当該脂肪族カルボン酸(A1)において、脂肪族基の炭素原子数は3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、7以上であることが更により好ましい。炭素原子数が3以上であることにより、被覆金属粒子(A)の分散性や耐酸化性を向上することができる。一方、脂肪族基の炭素原子数が17以下であることが好ましく、16以下であることがより好ましく、11以下であることが更により好ましい。炭素原子数が17以下であることにより、被覆金属粒子(A)の焼結時に除去されやすく、電気伝導性に優れた導電体を得ることができる。なお、本実施形態において、脂肪族基の炭素原子数は、カルボキシ基を構成する炭素原子は含まないものとする。
【0026】
好ましい脂肪族カルボン酸(A1)の具体例としては、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。脂肪族カルボン酸(A1)は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
<<脂肪族アルデヒド>>
本実施形態においては、前記脂肪族カルボン酸(A1)の代わりに、又は、前記脂肪族カルボン酸(A1)と組み合わせて、前記金属核粒子表面に脂肪族アルデヒド(A2)を配置することができる。この場合であっても、脂肪族カルボン酸(A1)と同様に、電気伝導性に優れた導電体を形成可能な被覆金属粒子(A)が得られる。
【0028】
脂肪族アルデヒド(A2)は、脂肪族化合物に1個又は2個以上のアルデヒド基が置換された構造を有する化合物である。本実施形態に用いられる脂肪族アルデヒド(A2)は、脂肪族化合物に1個のアルデヒド基が置換された構造、即ち、脂肪族炭化水素基と1個のアルデヒド基とを有する化合物が好ましい。本実施形態においては、通常、金属核粒子表面に、脂肪族アルデヒド(A2)のアルデヒド基が配置される。金属核粒子表面にアルデヒド基が配置されることにより、脂肪族アルデヒド(A2)の還元作用による、金属核粒子表面の酸化抑制や、汚染物質の洗浄効果が得られる。また、金属核粒子表面にアルデヒド基が配置されることにより、基材表面の異物や酸化物を除去する効果を有するものと推定される。
【0029】
脂肪族アルデヒド(A2)を構成する脂肪族炭化水素基は、前記脂肪族カルボン酸(A1)と同様のものを選択することができる。
好ましい脂肪族アルデヒド(A2)の具体例としては、ブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、オクタデシルアルデヒド、ヘキサデセニルアルデヒドなどが挙げられる。脂肪族アルデヒド(A2)は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
金属核粒子の表面は、複数の脂肪族カルボン酸(A1)及び脂肪族アルデヒド(A2)から選択される1種以上の被覆分子が2.5~5.2分子/nmの密度で被覆している。すなわち、金属核粒子の表面は、被覆分子を含む被覆層で被覆され、その被覆密度が2.5~5.2分子/nmである。分散性及び耐酸化性の点から、当該被覆密度は3.0~5.2分子/nmであることが好ましく、3.5~5.2分子/nmであることがより好ましい。
【0031】
金属核粒子表面における被覆分子の被覆密度は以下のようにして算出することができる。被覆金属粒子(A)について、特開2012-88242号公報に記載される方法に従って、液体クロマトグラフィー(LC)を用いて表面に付着している有機成分を抽出し、成分分析を行う。また、TG-DTA測定(熱重量測定・示差熱分析)を行い、被覆金属粒子(A)に含まれる有機成分量を測定する。次いでLCの分析結果と合わせて被覆金属粒子(A)に含まれる被覆分子の量を算出する。また、SEM画像観察により金属核粒子の平均一次粒子径を測定する。
以上の分析結果から、被覆金属粒子(A)1gに含まれる被覆分子の分子数は下記式(a)で表される。
[被覆分子の分子数]=M/(M/N) ・・・(a)
ここで、Mは被覆金属粒子(A)1gに含まれる被覆分子の質量(g)であり、Mは被覆分子の分子量であり、Nはアボガドロ定数である。2種以上の被覆分子が含まれる場合には、各成分ごとに分子数を算出し、合計する。
金属核粒子の形状を球体と近似して、被覆金属粒子(A)の質量から有機成分量を差し引いて金属核粒子の質量M(g)を求める。被覆金属粒子(A)1g中の金属核粒子数は下式(b)で表される。
[金属核粒子数]=M/[(4πr/3)×d×10-21] ・・・(b)
ここで、Mは被覆金属粒子(A)1gに含まれる金属粒子の質量(g)であり、rはSEM画像観察により算出した一次粒子径の半径(nm)であり、dは金属の密度(g/cm)である(銅の場合d=8.94)。被覆金属粒子(A)1gに含まれる金属核粒子の表面積は式(b)から、下式(c)で表される。
[金属核粒子の表面積(nm)]=[金属核粒子数]×4πr ・・・(c)
以上から、被覆分子による金属粒子の被覆密度(分子/nm)は、(a)式及び(c)式を用いて、下記式(d)で算出される。
[被覆密度]=[被覆分子の分子数]/[金属核粒子の表面積]・・・(d)
【0032】
被覆金属粒子(A)における被覆分子と金属核粒子との結合状態は、イオン性結合であっても物理吸着であってもよい。被覆分子は、被覆金属粒子(A)の焼結性の観点から、金属核粒子の表面に物理吸着していることが好ましく、金属核粒子の表面にカルボキシ基、又はアルデヒド基で物理吸着していることが好ましい。
【0033】
被覆分子が金属核粒子へ物理吸着していることは、被覆金属粒子(A)の表面組成を分析することで確認できる。具体的には、被覆金属粒子(A)について飛行時間型二次イオン質量分析法(ToF-SIMS)表面分析を行い、実質的に遊離の被覆分子のみが検出され、金属原子と結合している被覆分子が実質的に検出されないことで確認することができる。ここで、金属原子と結合している被覆分子が実質的に検出されないとは、金属核粒子に付着している被覆分子のシグナル量が、遊離の被覆分子のシグナル量に対して5%以下であること意味し、1%以下であることが好ましい。
【0034】
また、被覆分子が、カルボキシ基、又はアルデヒド基で金属粒子の表面に物理吸着していることは、被覆金属粒子(A)について、赤外吸収スペクトル測定を行い、実質的にC-O-金属塩由来の伸縮振動ピークのみが観測され、遊離のカルボン酸等に由来する伸縮振動ピークが実質的に観測されないことで確認することができる。
【0035】
被覆金属粒子(A)の粒子径は、用途等に応じて適宜選択することができる。被覆金属粒子(A)の平均一次粒子径は、分散性、導電性、及びひび割れ抑制の観点から、0.02μm以上5μm以下であることが好ましく、0.05μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.07μm以上2.5μm以下であることが更により好ましい。
被覆金属粒子(A)の平均一次粒子径は、SEM観察による任意の20個の被覆金属粒子(A)の一次粒子径の算術平均値DSEMとして算出される。
また、被覆金属粒子(A)の粒度分布の変動係数(標準偏差SD/平均一次粒子径DSEM)の値は例えば、0.01~0.5であり、0.05~0.3が好ましい。特に、後述する被覆金属粒子(A)の製造方法で製造されていることで、粒度分布の変動係数が小さく、粒子径の揃った状態とすることができる。被覆金属粒子(A)の粒度分布の変動係数が小さいことで、分散性に優れ、高濃度の分散物を得ることが可能となる。
【0036】
本実施形態で用いられる被覆金属粒子(A)は、耐酸化性と焼結性に優れ、得られる接合体は高い接合強度及び電気伝導性を示す。そのため、基材上に印刷して配線パターン等を形成する接合用組成物に好適に用いることができる。
【0037】
本実施形態の接合用組成物に含まれる被覆金属粒子(A)の割合は、特に限定されないが、用途によって適宜変更することができる。例えば、スクリーン印刷用の場合は、接合用組成物の全量に対する被覆金属粒子(A)の割合を5~95質量%とすることができ、インクジェット印刷用の場合は、全量に対する被覆金属粒子(A)の割合を40~90質量%とすることができる。
【0038】
<被覆金属粒子の製造方法>
本実施形態で用いられる被覆金属粒子(A)は、上記特定の金属核粒子となる金属を含む金属カルボン酸塩と、上記特定の脂肪族カルボン酸(A1)及び脂肪族アルデヒド(A2)から選択される1種以上の分子を用いて製造される。例えば、前記特許文献1の段落0031から段落0066まで、及び段落0085等の記載を参考にして製造することができる。あるいは、前記特許文献2の段落0052から段落0101、及び、段落0110~0114等の記載を参考にして製造することができる。
被覆金属粒子(A)の好ましい製造方法においては、金属カルボン酸塩と、被覆分子と、媒体を含む反応液を準備し、当該反応液中で生成する錯化合物を熱分解処理して、金属核粒子の表面が被覆分子によって1nm当り2.5~5.2分子の密度で被覆された被覆金属粒子(A)を得ることができる。
【0039】
前記金属カルボン酸塩におけるカルボン酸は、金属の種類や金属カルボン酸塩の製造容易性などの観点から適宜選択することができる。用いられるカルボン酸としては、ギ酸、シュウ酸、クエン酸等が挙げられる。また金属の種類に応じて、カルボン酸の代わりに炭酸を用いてもよい。金属として銅を用いる場合には、金属カルボン酸塩としてギ酸銅を用いることが好ましい。また、金属として銀を用いる場合には、金属カルボン酸塩として、ギ酸銀、シュウ酸銀、炭酸銀、クエン酸銀などを用いることができ、中でも熱分解温度が高いことから、シュウ酸銀を用いることが好ましい。金属カルボン酸塩を構成する金属については、前記金属核粒子と同様とすることができる。
【0040】
上記反応液中に、金属カルボン酸塩と錯形成可能なアミノアルコールを含有することが好ましい。金属カルボン酸塩とアミノアルコールとが錯形成することで、後述する媒体への溶解性が向上する。
アミノアルコールは、少なくとも1つのアミノ基を有するアルコール化合物であればよい。アミノアルコールは、モノアミノモノアルコール化合物であることが好ましく、アミノ基が無置換のモノアミノモノアルコール化合物であることがより好ましい。またアミノアルコールは、単座配位性のモノアミノモノアルコール化合物であることも好ましい。好ましいアミノアルコールの具体例としては、2-アミノエタノール、3-アミノ-1-プロパノール、5-アミノ-1-ペンタノール、DL-1-アミノ-2-プロパノール、N-メチルジエタノールアミン等が挙げられる。
【0041】
反応液を構成する媒体は、金属カルボン酸塩の金属の還元を阻害しないものの中から、適宜選択して用いることができる。当該媒体は、通常、有機溶媒である。媒体は、少なくともアミノアルコールと相溶性の低い主媒体を有し、必要に応じて、アミノアルコールと相溶可能な補助媒体を有していてもよい。
【0042】
好ましい主媒体としては、エチルシクロへキサン、C9系シクロへキサン[丸善石油製、商品名:スワクリーン#150]、n-オクタン等が挙げられる。媒体は、1種単独で、又は2種以上を組合せて用いることができる。
好ましい補助媒体としては、EO(エチレンオキサイド)系グリコールエーテル、PO(プロピレンオキサイド)系グリコールエーテル、ジアルキルグリコールエーテルなどのグリコールエーテルを挙げることができる。
主媒体、及び、補助媒体は、各々独立に、1種単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0043】
反応液中に生成する錯化合物としては、金属イオンと、配位子としてカルボン酸及びアミノアルコールを含むことが好ましい。配位子としてアミノアルコールを含むことで、錯化合物の熱分解温度が低下する。
反応液中に生成した錯化合物は、熱分解処理によって還元された金属を生成する。熱分解処理の温度は、上述の通りアミノアルコールが配位した錯化合物の熱分解温度を考慮して適宜調整すればよい。熱分解処理の温度を低く設定することにより、被覆分子とアミノアルコールとの脱水反応による酸アミドの生成が抑制され、得られる被覆金属粒子(A)の洗浄性が向上する傾向がある。
【0044】
錯化合物の熱分解処理により還元された金属が生成して成長し、得られた金属核粒子の表面に反応液中に存在する被覆分子が吸着することで、被覆分子で表面が被覆された被覆金属粒子(A)が得られる。金属核粒子の表面への被覆分子の吸着は、物理吸着であることが好ましい。これにより被覆金属粒子(A)の焼結性が向上する。錯化合物の熱分解処理において金属酸化物の生成を抑制することで、被覆分子の物理吸着が促進される。
【0045】
被覆金属粒子(A)の製造方法において、生成する被覆金属粒子(A)の粒度分布を制御する因子としては、例えば、被覆分子の種類と添加量、金属カルボン酸塩の濃度及び媒体の比率(主媒体/補助媒体)等で決定される。被覆金属粒子(A)の大きさを制御する因子は、金属核発生数を支配する昇温速度、すなわち反応系への投入熱量とミクロ反応場の大きさと関係する攪拌速度を適切に保つことで揃えることができる。
【0046】
<溶媒>
本実施形態で用いられる溶媒(B)は、沸点が160℃以上300℃以下の脂肪族カルボン酸系溶媒(B1)及び沸点が160℃以上300℃以下の脂肪族アルデヒド系溶媒(B2)から選択される1種以上を含む。溶媒(B)は、25℃、1気圧のもとで液体である。
【0047】
溶媒(B)の沸点は160℃以上であればよいが、焼結過程において接合用組成物内に残留して被覆金属粒子(A)を保護する観点から、200℃以上であることが好ましい。また、溶媒(B)の沸点は300℃以下であればよいが、焼結後の残留を抑制して接合体の接合強度及び導電性を高める観点から、280℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましい。
【0048】
溶媒(B)の脂肪族基は、直鎖、分枝、又は環状構造を有することが好ましい。本実施形態においては、被覆金属粒子(A)の被覆分子と相互作用しやすい点から、溶媒(B)の脂肪族基は、分枝及び環状構造を有しない、直鎖脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、溶媒(B)は、不飽和結合として二重結合又は三重結合を有していてもよいが、被覆金属粒子(A)の被覆分子と相互作用しやすい点から、不飽和結合を有していないことが好ましい。脂肪族炭化水素基が不飽和結合を有する場合、当該不飽和結合は二重結合であることが好ましい。また、その個数は、1分子中に1~3個であることが好ましく、1~2個であることがより好ましく、1個であることが更により好ましい。
【0049】
溶媒(B)の脂肪族基の炭素原子数は特に限定されないが、3以上であることが好ましく、5以上であることが好ましく、6以上であることが更により好ましい。溶媒(B)の脂肪族基の炭素原子数が上記の条件を満たす場合、被覆金属粒子(A)の被覆分子との相溶性に優れる。したがって、被覆金属粒子(A)の保護をより高めることができる。また後述するように、溶媒(B)の脂肪族基の炭素原子数が上記の条件を満たす場合、相溶性の高い炭化水素系溶媒を他の溶媒として含めることで、被覆金属粒子(A)の耐酸化性を更に高めることができる。
【0050】
溶媒(B)は、上述の脂肪族カルボン酸系溶媒(B1)及び脂肪族アルデヒド系溶媒(B2)から選択される1種以上を含むが、中でも、脂肪族アルデヒド系溶媒(B2)から選択される1種以上を含むことが好ましい。還元性を有する脂肪族アルデヒド系溶媒(B2)を接合用組成物に含有させることで、空気中の酸素等による被覆金属粒子の酸化を抑制し、被覆金属粒子の化学的安定性をより高めることができる。
【0051】
溶媒(B)として脂肪族アルデヒド系溶媒(B2)を用いる場合、例えば、オクタナール、デカナール、ドデカナール、トリデカナール、及びこれらの混合物から選択されることが好ましく、特に、被覆金属粒子(A)の耐酸化性を向上させる点から、デカナール、ドデカナール及びこれらの混合物から選択されることが好ましく、デカナールを用いることがより好ましい。
【0052】
また、溶媒(B)として脂肪族カルボン酸系溶媒(B1)を用いる場合、例えば、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、及びこれらの混合物から選択されることが好ましく、特に、被覆金属粒子(A)との相溶性の観点から、オクタン酸、ノナン酸、及びこれらの混合物から選択されることが好ましく、オクタン酸を用いることがより好ましい。
【0053】
本実施形態の接合用組成物に含まれる溶媒(B)の割合は、特に限定されないが、例えば、0.1質量%以上95質量%以下とすることができ、0.2質量%以上90質量%以下とすることが好ましく、0.4質量%以上80質量%以下とすることが更により好ましい。
【0054】
<他の成分>
本発明に係る接合用組成物は、上述した金属粉と、被覆金属粒子(A)と、溶媒(B)と、を含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に他の成分を含有してもよいものである。他の成分としては例えば、溶媒(B)とは異なる他の溶媒や、酸化防止剤、分散剤、増粘剤、ゲル化剤等が挙げられる。溶媒や分散剤、及び増粘剤を組み合わせることにより、例えば接合用組成物のレオロジー特性等を調整することができる。
【0055】
他の溶媒、酸化防止剤、分散剤、増粘剤、ゲル化剤の混合物の粘度は、印刷手段等に応じて適宜調整すればよい。例えば、25℃、10rpmにおける粘度を0.01Pa・s以上500Pa・s以下の範囲で適宜調整することができ、0.01Pa・s以上50Pa・s以下であることが好ましい。
【0056】
(他の溶媒)
本実施形態に係る接合用組成物に含有できる他の溶媒としては、前記溶媒(B)と相溶性の高い溶媒が用いられる。当該他の溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、スルホン酸系溶媒、及び、炭素数が8未満若しくは炭素数が12より大きい若しくは芳香族系のカルボン酸系溶媒若しくはアルデヒド系溶媒が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上の混合物を用いることができる。中でも、金属粉及び被覆金属粒子(A)の分散性を向上させる点から、炭化水素系溶媒から選択される1種または2種以上の混合物を用いることが好ましく、中でも流動パラフィンを用いることが好ましい。
本実施形態に係る接合用組成物が他の溶媒を含有する場合、当該他の溶媒の割合は、特に限定されないが、例えば、0.1質量%以上95質量%以下とすることができる。
【0057】
<<流動パラフィン>>
本実施形態の接合用組成物に流動パラフィンを用いる場合、当該流動パラフィンは、直鎖、分枝、又は環状構造を有する脂肪族炭化水素の混合物であって、室温において液体であることが好ましい。
被覆金属粒子(A)の表面は疎水基に覆われているため、流動パラフィンと相溶性に優れる。したがって、被覆金属粒子(A)を流動パラフィン内に長時間安定した状態で分散させることができる。また、流動パラフィンは化学的に安定であるため、被覆金属粒子(A)や金属粉と反応しづらい。このため、接合用組成物中の被覆金属粒子(A)及び金属粉の酸化が抑制される。
なお、流動パラフィンは、前記金属粉に対しても良好な分散性を示す。
【0058】
また、流動パラフィンは異なる分子量の脂肪族炭化水素の混合物であり、気化する温度に幅がある。すなわち、本実施形態における流動パラフィンを加熱させた場合、ある温度を超えてから徐々に揮発し始め、さらに昇温させることでほぼ全てを揮発させることができる。流動パラフィンが揮発し始める温度は、常温よりも高く、前記被覆金属粒子(A)の焼結温度よりも低いことが好ましい。また、流動パラフィンが全て揮発する温度は、前記被覆金属粒子(A)の焼結温度及び溶媒(B)の沸点よりも高いことが好ましい。例えば、気化する温度が50℃~350℃の範囲内であるような流動パラフィンを用いることができる。
このような条件においては、本発明に係る接合用組成物を加熱すると、徐々に流動パラフィンが気化するため、被覆金属粒子(A)及び金属粉の濃度が徐々に高くなる。また、溶媒(B)が揮発した後にも当該流動パラフィンが残留することによって、より被覆金属粒子(A)の耐酸化性を向上し、焼結体の接合強度を高めることができる。したがって、被覆金属粒子(A)を高い密度にした状態で焼結させることができ、より強固な接合体を形成することができる。
【0059】
流動パラフィンの密度は、特に限定されないが、15℃で0.80g/cm以上であることが好ましく、0.82g/cm以上であることがより好ましく、0.83g/cm以上であることが更により好ましい。上記の密度を有する流動パラフィンは、分子量が大きく揮発しづらい傾向を示す。このような流動パラフィンは、例えば基板に塗布した状態で長時間放置されても、乾燥せず残留することができる。したがって、スクリーン印刷等の工程において扱いやすく、導電性インク用の材料としては好適に用いることができる。また、流動パラフィンの密度は、15℃で0.90g/cm以下であることが好ましく、0.88g/cm以下であることがより好ましく、0.87g/cm以下であることが更により好ましい。上記の密度を有する流動パラフィンは、比較的低い温度で揮発する傾向にあるため、接合体内に残留しづらい傾向にある。したがって、当該流動パラフィンを用いた接合用組成物は、高い接合強度を有するとともに、熱伝導性及び電気伝導性の高い接合体を形成することができる。
【0060】
流動パラフィンの動粘度は、特に限定されないが、37.8℃で4mm/s以上であることが好ましく、5mm/s以上であることがより好ましく、10mm/s以上であることが更により好ましい。上記の動粘度を有する流動パラフィンにおいては、被覆金属粒子や金属粉が沈殿しづらいため、良好な分散性を示す傾向にある。また、流動パラフィンの動粘度は、37.8℃で100mm/s以下であることが好ましく、90mm/s以下であることがより好ましく、40mm/s以下であることが更により好ましい。上記の動粘度を有する流動パラフィンは、比較的低い温度で揮発する傾向にあるため、接合体内に残留しづらい傾向にある。したがって、当該流動パラフィンを用いた接合用組成物は、高い接合強度を有するとともに、熱伝導性及び電気伝導性の高い接合体を形成することができる。
【0061】
以上の条件を満たす流動パラフィンとしては、例えば、ハイコールK(カネダ株式会社製)シリーズの流動パラフィンが挙げられる。中でも、ハイコールK-160、ハイコールK-230、ハイコールK-290、ハイコールK-350(いずれもカネダ株式会社製)を用いることが好ましく、ハイコールK-230、ハイコールK-290(いずれもカネダ株式会社製)を用いることが特に好ましい。
【0062】
流動パラフィンの種類は、分散させる被覆金属粒子(A)との組み合わせにより適宜選択することができる。例えば、被覆金属粒子(A)の脂肪族炭化水素基が比較的長く、当該被覆金属粒子(A)の焼結温度が比較的高い場合は、比較的高い動粘度を有する流動パラフィンを用いると好ましい。このような流動パラフィンを用いた場合、被覆金属粒子(A)が流動パラフィンに分散された状態のまま焼結されるため、より均一で強度の高い接合体を形成することができる。一方、被覆金属粒子(A)の脂肪族炭化水素基が比較的短く、当該被覆金属粒子(A)の焼結温度が比較的短い場合は、比較的短い動粘度を有する流動パラフィンを用いると好ましい。このような流動パラフィンを用いたときは、比較的低温で流動パラフィンを揮発させることができるため、より効率よく接合体を形成させることができる。
【0063】
本実施形態の接合用組成物が流動パラフィンを含む場合、被覆金属粒子(A)に対する流動パラフィンの含有割合は、特に制限されないが、0.1質量%以上とすることが好ましく、1質量%以上とすることがより好ましい。このような条件においては、流動パラフィンによって被覆金属粒子(A)がよく分散される。また、被覆金属粒子(A)に対する流動パラフィンの含有割合は、50質量%以下とすることが好ましく、30質量%以下とすることがより好ましい。このような条件においては、被覆金属粒子(A)の濃度が十分に保たれるため、高い接合強度を実現することができる。
【0064】
(酸化防止剤)
本実施形態に係る接合用組成物は、被覆金属粒子(A)の酸化を抑制する目的で、酸化防止剤を含有してもよい。当該酸化防止剤には、例えば、トコフェロールやヒドロキノン類等のようなフェノール系酸化防止剤や、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上の混合物を用いることが好ましく、中でも溶媒(B)との相溶性の観点からフェノール系酸化防止剤を用いることがより好ましく、トコフェロールを用いることが更により好ましい。
【0065】
本実施形態の接合用組成物に含まれる酸化防止剤の割合は、特に限定されないが、例えば、流動パラフィン100質量%に対し、0.0001質量%~20質量%とすることが好ましく、0.0005質量%~20質量%とすることがより好ましく、0.0005質量%~10質量%とすることが更により好ましい。
【0066】
(分散剤)
本実施形態に係る接合用組成物は、ポリエステル系分散剤やポリアクリル酸系分散剤等の、公知の分散剤を含有してもよい。ただし、接合強度を保つ観点から、接合用組成物に含まれる分散剤の含有量は全量の0.3質量%以下であることが好ましく、全量の0.1質量%以下であることがより好ましく、分散剤を実質的に含有しないことが更により好ましい。なお、分散剤を実質的に含有しないとは、例えば、分散剤が全量の0.01質量%以下であることをいい、好ましくはゲル浸透クロマトグラフィー測定において検出限界以下であることをいう。
【0067】
(増粘剤・ゲル化剤)
本実施形態に係る接合用組成物は、ポリメタクリル酸系増粘剤等の、公知の増粘剤を含有してもよい。
また、本実施形態に係る接合用組成物は、流動パラフィンを含有する場合、焼結前における塗膜のパターン形状を保持する性能(以下、「パターン保持性」ということがある)を向上させる目的で、当該流動パラフィンをゲル化させるゲル化剤を含有してもよい。当該ゲル化剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィンが挙げられ、これらから選択される1種または2種以上の混合物を用いることが好ましく、中でもポリエチレンを用いることがより好ましい。ポリオレフィンの重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、10,000以上のものの中から適宜選択することができ、10,000~5,000,000のものが好ましく、20,000~3,000,000がより好ましい。
【0068】
接合用組成物がゲル化剤を含有する場合、パターン保持性を高める観点から、流動パラフィンとゲル化剤の混合物がチキソトロピー性を有していると好ましい。流動パラフィンとゲル化剤の混合物の25℃におけるチキソ比は1.2以上であると好ましく、1.5以上であるとより好ましく、2.0以上であると更に好ましい。
なお、流動パラフィンとゲル化剤の混合物のチキソ比は、E型粘度計において異なる回転数で測定された粘度の比であり、(10rpmにおける粘度)/(100rpmにおける粘度)として算出される。
また、流動パラフィンとゲル化剤との配合比率は、所望の物性が得られる範囲で適宜調整すればよい。接合用組成物がゲル化剤を含有する場合、パターン保持性を向上する観点から、接合用組成物中に含まれる流動パラフィンとゲル化剤の合計100質量%に対し、ゲル化剤が0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以上12質量%以下であることが更により好ましい。
【0069】
[接合用組成物の用途]
本発明の接合用組成物は接合強度に優れる接合体を形成するため、複数の被接合物同士を接合するために用いることができる。また、当該接合体は導電性にも優れるため、例えば基材と素子とを電気的に接合する用途にも用いることができる。さらに、本発明の接合用組成物は、常温において非揮発性を示すため、例えば基材上に塗布された状態で放置されても乾燥が抑制される。すなわち、本発明の接合用組成物は、スクリーン印刷等の工程において扱いやすく、導電性インクとしても好適に用いることができる。
【実施例
【0070】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
<SEM画像観察>
測定装置:日本電子製FE-EPMA JXA-8500F
測定条件:加速電圧 15~20kV
観察倍率 ×1,500~×30,000
【0072】
<平均一次粒子径及び変動率の計算>
測定装置:日本電子製FE-EPMA JXA-8500F
平均一次粒子径:サンプル20点の平均値
変動率:サンプル20点の標準偏差/平均値で計算される値
【0073】
<熱重量・示差熱(TG-DTA)分析>
測定装置:リガク社製TG8120
昇温速度:10℃/min
測定温度範囲:25~500℃
測定雰囲気:窒素(250ml/min)
【0074】
<粉末X線回折(XRD)分析>
測定装置:リガク社製Smartlab
管電圧:45kV
管電流:200mA
【0075】
[被覆金属粒子及び接合用組成物の製造]
(製造例1)被覆銅粒子Cu1の製造
攪拌機、温度計、還流冷却管、および窒素導入管を備えた3000mLガラス製四ツ口フラスコを150℃のオイルバス内に設置した。
上記フラスコ内に、ギ酸銅無水物484g(3.1モル)と、カプリル酸(関東化学株式会社製)98g(0.2当量/ギ酸銅無水物)と、媒体(補助媒体)としてのトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業株式会社製)150g(0.2当量/ギ酸銅無水物)と、媒体(主媒体)としての石油系炭化水素(C9アルキルシクロヘキサン混合物)(ゴードー社製「スワクリーン150」)562g(1.4当量/ギ酸銅無水物)とを仕込んだ。窒素雰囲気下、上記フラスコ内の内容物をオイルバスで加温しながら、液温度が50℃になるまで、攪拌しながら、混合した。
上記混合物に対して、錯化剤として3-アミノ-1-プロパノール(東京化成工業株式会社製)712g(3.0当量/ギ酸銅無水物)をゆっくり滴下した。滴下終了後、フラスコの内容物をオイルバスで加温して、液温度が120℃付近になるまで、攪拌しながら、混合した。液温度の上昇に伴って、反応液は濃青色から茶褐色に変化し、炭酸ガスの発泡が生じた。炭酸ガスの発泡が収まった時点を反応終点として、オイルバス温調を停止し、室温まで自然冷却した。
室温まで冷却した上記反応液に対して、メタノール(関東化学株式会社製)1200gを添加し、混合した。得られた混合液を30分間以上静置した後、上澄み液をデカンテーションして、沈殿物を得た。上記沈殿物に対して、メタノール(関東化学株式会社製)1200gと、アセトン(関東化学株式会社製)390gとを添加し、混合した。得られた混合液を30分間以上静置した後、上澄み液をデカンテーションして、沈殿物を得た。これらの操作(メタノールおよびアセトンの添加とデカンテーション)をさらにもう一回繰り返した。
得られた沈殿物を、メタノール(関東化学株式会社製)400gを用いて500mLナスフラスコに移した。これを30分間以上静置した後、上澄み液をデカンテーションした。
得られた沈殿物に対して、イソ酪酸3-ヒドロキシ-2,2,4-トリメチルペンチル18gを添加し、混合した。その後、ナスフラスコを回転式エバポレータに設置し、内容物を減圧乾燥(真空乾燥)した。減圧乾燥(真空乾燥)後、室温まで自然冷却した後、ナスフラスコ内を窒素置換しながら減圧解除した。以上のようにして、200gの茶褐色粘稠体の被覆銅粒子Cu1を得た。
【0076】
(製造例2)被覆銅粒子Cu2の製造
製造例1において、カプリル酸をラウリン酸(関東化学株式会社製)68g(ギ酸銅無水物に対して0.1当量)に変更した以外は、製造例1と同様にして、200gの茶褐色粘稠体の被覆銅粒子Cu2を得た。
【0077】
(製造例3)被覆銅粒子Cu3の製造
製造例1において、カプリル酸の量を31.8gに、石油系炭化水素(スワクリーン150)の量を279gに、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルの量を74.3gに、3-アミノ-1-プロパノールの量を354gに変更した以外は、製造例1と同様にして、200gの茶褐色粘稠体の被覆銅粒子Cu3を得た。
【0078】
(製造例4)被覆銀粒子Ag1の製造
スターラーバー、温度計、および還流冷却管を備えた300mLガラス製ナスフラスコを100℃のオイルバス内に設置した。
上記フラスコ内に、シュウ酸銀無水物30g(0.1モル)と、ウンデカン酸(関東化学株式会社製)6g(0.3当量/シュウ酸銀無水物)と、媒体(補助媒体)としてのトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業株式会社製)10g(0.5当量/シュウ酸銀無水物)と、媒体(主媒体)としての石油系炭化水素(C9アルキルシクロヘキサン混合物)(ゴードー社製「スワクリーン150」)54g(4.3当量/シュウ酸銀無水物)とを仕込んだ。窒素雰囲気下、上記フラスコ内の内容物をオイルバスで加温しながら、液温度が50℃になるまで、攪拌しながら混合した。
上記混合物に対して、錯化剤として3-アミノ-1-プロパノール(東京化成工業株式会社製)52g(7.0当量/シュウ酸銀無水物)をゆっくり滴下した。滴下終了後、フラスコの内容物をオイルバスで加温して、液温度が85℃付近になるまで、攪拌しながら混合し、さらにこの温度での加熱攪拌を続けた。滴下終了後から3時間後にオイルバスの加熱を停止して反応を終了し、反応液を室温まで自然冷却した。
室温まで冷却した上記反応液に対して、メタノール(関東化学株式会社製)160gを添加し、混合した。得られた混合液を30分間以上静置した後、上澄み液をデカンテーションして、沈殿物を得た。上記沈殿物に対して、メタノール(関東化学株式会社製)80gと、アセトン(関東化学株式会社製)80gとを添加し、混合した。得られた混合液を30分間以上静置した後、上澄み液をデカンテーションして、沈殿物を得た。これらの操作(メタノールおよびアセトンの添加とデカンテーション)をさらにもう一回繰り返した。
得られた沈殿物に対して、メタノール(関東化学株式会社製)80gとイソ酪酸3-ヒドロキシ-2,2,4-トリメチルペンチル1.7gとを添加し、混合した。これをナスフラスコに入れ、回転式エバポレータに設置し、内容物を減圧乾燥(真空乾燥)した。減圧乾燥(真空乾燥)後、室温まで自然冷却した後、ナスフラスコ内を窒素置換しながら減圧解除した。以上のようにして、18gの銀色の被覆銀粒子Ag1を得た。
【0079】
(被覆金属粒子の評価)
被覆金属粒子の物性評価は、TG-DTA分析、XRD分析、SEM画像観察によって実施した。
【0080】
(実施例1)
まず、流動パラフィン(ハイコールK-230:カネダ株式会社製)0.4質量部と、n-デカナール(東京化成株式会社製)0.05質量部と、を配合して、攪拌機(あわとり練太郎(ARE-310):シンキー社製)を用いて2000rpmの回転速度で30秒撹拌した。
次いで、平均粒子径が0.5μmの銅粉(1050Y:三井金属鉱業株式会社製)4質量部を配合して、上記攪拌機を用いて2000rpmの回転速度で30秒の撹拌を2回行った。
次いで、被覆金属粒子(製造例1で得られた被覆銅粒子Cu1)を5.4質量部と、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(キョーワノールM:KHネオケム株式会社製)0.6質量部と、を配合して、上記攪拌機を用いて2000rpmの回転速度で30秒の撹拌を3回行った。
次いで、容器(なんこう黒160ml:近畿容器株式会社製)上に見開き15μmのナイロンメッシュを張り、撹拌された混合物を当該メッシュ上に乗せたのちに、上記攪拌機を用いて2000rpmの回転速度で15秒撹拌し、メッシュ濾過を行った。以上のようにして、実施例1の接合用組成物を得た。得られた接合用組成物は分散性に優れていた。
【0081】
(実施例2~4)
各成分及び配合量を下表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4の接合用組成物を得た。得られた接合用組成物は分散性に優れていた。
なお、表1中の「銅粉(0.2μm)」は、平均粒子径が0.2μmの銅粉(1020Y:三井金属鉱業株式会社製)である。
また、表1中のハイコールK-230、ハイコールK-290(いずれもカネダ株式会社製)は、それぞれ流動パラフィンを99.9995質量%とトコフェロールを0.0005質量%とを含んでいる。ハイコールK-230の密度は、15℃で0.835~0.855g/cmであり、動粘度は37.8℃で11.7~15.7mm/sである。また、ハイコールK-290の密度は、15℃で0.850~0.865g/cmであり、動粘度は37.8℃で159.2~175mm/sである。
【0082】
(実施例5、9)
2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート0.6質量部を配合する際に、n-デカノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.25質量部をともに配合した以外は、実施例1と同様の手順にて、実施例5、9の接合用組成物を得た。得られた接合用組成物は分散性に優れていた。
【0083】
(実施例6)
n-デカナール0.05質量部の代わりにn-ドデカナール(東京化成株式会社製)0.05質量部を配合した以外は、実施例5と同様の手順にて、実施例6の接合用組成物を得た。得られた接合用組成物は分散性に優れていた。
【0084】
(実施例7)
n-デカナール0.05質量部の代わりにオクタン酸(ルナック 8-98:花王株式会社製)0.05質量部を配合した以外は、実施例5と同様の手順にて、実施例7の接合用組成物を得た。得られた接合用組成物は分散性に優れていた。
【0085】
(実施例8)
流動パラフィンを配合せず、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート0.6質量部を配合する際にブチルカルビトール(株式会社ゴードー製)0.5質量部を更に配合した以外は、実施例5と同様の手順にて、実施例8の接合用組成物を得た。得られた接合用組成物は分散性に優れていた。
【0086】
(実施例10)
被覆銅粒子Cu1の代わりに被覆銀粒子Ag1を用い、銅粉の代わりに平均粒子径が1μmの銀粉(SL01:三井金属鉱業株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様の手順にて、実施例10の接合用組成物を得た。得られた接合用組成物は分散性に優れていた。
【0087】
(実施例11)
被覆銅粒子Cu1の代わりに被覆銀粒子Ag1を用い、銅粉の代わりに平均粒子径が1μmの銀粉を用いた以外は、実施例8と同様の手順にて、実施例11の接合用組成物を得た。得られた接合用組成物は分散性に優れていた。
【0088】
【表1】
【0089】
(比較例1~6)
実施例1において、各成分及び配合量を下表2のように変更した以外は、実施例1と同様の手順にて、比較例1~6の接合用組成物を得た。なお、表2中のn-ヘプタナールは東京化成株式会社製、イソフタルアルデヒドは東京化成株式会社製である。また、SC-0708Aは、日油株式会社製の分散剤である。
【0090】
【表2】
【0091】
<放置安定性評価>
実施例1~11及び比較例1~6の接合用組成物を、それぞれシリンジ(3ccのクリアシリンジと3cc用のプランジャー(イエロー)を使用:いずれも武蔵エンジニアリング株式会社製)に充填し、ニードル(20~22G:武蔵エンジニアリング株式会社製)を用いて、エアディスペンサー(ML5000XII:武蔵エンジニアリング株式会社製)で、5mm×5mm×500μmのシリコン基板(Ti/Ni/Auメッキ)のAuメッキ面上に2~4mg塗布した。次いで、当該接合用組成物上に2mm×2mm×500μmのシリコンチップ(Ti/Ni/Auメッキ)を、Auメッキ面が接触するように乗せ、シリコン基板とシリコンチップとの距離が50μmになるように圧着した。
その後、当該シリコン基板及びシリコンチップを、電気炉(KDF900GL:デンケンハイデンタル株式会社製)を用いて、100℃で60分加熱した。その後、さらに10℃/分の速度で所定の焼結温度になるまで昇温し、当該焼結温度で60分間加熱して接合体を得た。
焼結温度は、実施例1~8、及び比較例2~4の接合用組成物については350℃とし、実施例11、比較例1、5~6の接合用組成物については250℃とした。また、実施例9、10の接合用組成物については、250℃、350℃の両方の焼結温度において焼結させた。なお、塗膜の加熱を開始する時点から、電気炉内を50℃まで冷却する時点までの間、窒素ガスを5L/minの流量で供給し続けた。
【0092】
実施例1~11及び比較例1~6の接合用組成物を用いて形成した接合体について、それぞれボンドテスター(Condor Sigma:オランダXYZTEC社製)を用いてダイシェアテストを行い、接合強度を測定した。その結果を表3及び表4に示す。表3、表4において、接合強度が特に高い場合は「◎」、接合強度が高い場合は「○」、接合強度が低い場合は「×」として示している。
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
[結果のまとめ]
表3に示されるように、前記接合強度評価の結果から、本発明に係る接合用組成物は、それぞれ十分な接合強度を示すことが分かった。これは、本発明に係る接合用組成物が、接合強度に優れていたことを示すものである。
【0096】
また、実施例5及び6を比較すると、n-デカナールを含む接合用組成物(実施例5)を用いた接合体は、n-ドデカナールを含む接合用組成物(実施例6)を用いた接合体に比べて特に高い接合強度を示していた。これは、脂肪族アルデヒド系溶媒の中でも特にn-デカナールを用いることによって接合体の接合強度が向上することを示すものである。
【0097】
さらに、実施例1~11の中でも、流動パラフィンを用いた実施例(実施例1~5、7、9、10)は、流動パラフィンを用いなかった実施例(実施例8、11)と比べて特に高い接合強度を示していた。これは、当該流動パラフィンによって被覆金属粒子や金属粉の分散性が向上したためであると考えられる。
【0098】
以上の結果から、金属粉と、前記金属粉よりも粒子径の小さい金属核粒子の表面に複数の脂肪族カルボン酸(A1)及び脂肪族アルデヒド(A2)から選択される1種以上の被覆分子が2.5~5.2分子/nmの密度で被覆した被覆金属粒子(A)と、沸点が160℃以上300℃以下の脂肪族カルボン酸系溶媒(B1)及び沸点が160℃以上300℃以下の脂肪族アルデヒド系溶媒(B2)から選択される1種以上の溶媒(B)と、を含有する接合用組成物は、接合強度に優れる接合体を形成することが示された。