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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】米を主材料とする麺の製造方法及び米麺
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20220104BHJP
【FI】
A23L7/109 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019014087
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2020120595
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2020-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】519034945
【氏名又は名称】株式会社いたこ
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】特許業務法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 禧雄
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-138657(JP,A)
【文献】特開昭54-076850(JP,A)
【文献】特開平09-028331(JP,A)
【文献】特開2010-279307(JP,A)
【文献】特開2018-068256(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0081852(KR,A)
【文献】特開2011-177160(JP,A)
【文献】特開2012-090530(JP,A)
【文献】特開2012-044981(JP,A)
【文献】特開2006-304674(JP,A)
【文献】国際公開第2016/153033(WO,A1)
【文献】福永淑子,日本うるち米純麺の製造およびこしの強さの制御法に関する調理学的検討,科学研究費補助金研究成果報告書,日本,2011年,p.1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米を水に漬けて糊状にし、これを延ばしてから麺を製造する、米を主材料とする麺の製造方法であって、
原材料となる米を水に浸漬する第1浸漬工程(S1)と、
前記第1浸漬工程(S1)において浸漬した米を浸漬水と共に冷却する原材料冷却工程(S2)と、
前記原材料冷却工程(S2)において浸漬水と共に冷却した米を、水と共に所定の粒径の第1米粉水に磨砕する水挽き(みずびき)工程(S3)と、
前記水挽き工程(S3)において磨砕した第1米粉水に、「つなぎ効果」を高めるために製粉機で製粉した粉状の乾燥したアルファ型の米粉から成る糊化剤を、第1米粉水の全体量の5~15重量%の割合で加えて第2米粉水を生成する米粉水生成工程(S4)と、
前記米粉水生成工程(S4)において生成された第2米粉水を、水に浸漬させた状態で糊化する第2浸漬工程(S5)と、
前記第2浸漬工程(S5)において糊化した第2米粉水をコンベアに流して帯状の生地に形成する延伸工程(S6)と、
前記延伸工程(S6)において帯状に形成した生地を蒸し機で蒸して、帯状の生地を加熱凝固して麺帯を形成する加熱麺帯生成工程(S7)と、
前記加熱麺帯生成工程(S7)において形成した麺帯を細断しやすくするために、この麺帯を冷却する生地冷却工程(S9)と、
前記生地冷却工程(S9)において冷却形成した麺帯を、フォーとして食しやすいように所定の幅と長さに細断する細断工程(S8)と、から成る、ことを特徴とする米を主材料とする麺の製造方法。
【請求項2】
米を水に漬けて糊状にし、これを延ばしてから麺を製造する、米を主材料とする麺の製造方法であって、
原材料となる米を、水と共に所定の粒径に磨砕する水挽き(みずびき)工程(S3)と、
前記水挽き工程(S3)において磨砕した米粉水を、「つなぎ効果」を高めるために製粉機で製粉した粉状の乾燥したアルファ型の米粉から成る糊化剤を、第1米粉水の全体量の5~15重量%の割合になるように水に浸漬して混合する混合米粉水を生成する混合米粉水生成工程(S21)と、
前記混合米粉水生成工程(S21)において生成された混合米粉水を、浸漬した状態で一晩維持して糊化する浸漬工程(S22)と、
前記浸漬工程(S22)において浸漬した米を浸漬水と共に冷却する原材料冷却工程(S2)と、
前記浸漬工程(S22)において生成された混合米粉水を、コンベアに流して帯状の生地に形成する延伸工程(S6)と、
前記延伸工程(S6)において帯状に形成した生地を蒸し機で蒸して、帯状の生地を加熱凝固して麺帯を形成する加熱麺帯生成工程(S7)と、
前記加熱麺帯生成工程(S7)において形成した麺帯を細断しやすくするために、この麺帯を冷却する生地冷却工程(S9)と、
前記生地冷却工程(S9)において冷却形成した麺帯を、フォーとして食しやすいように所定の幅と長さに細断する細断工程(S8)と、から成る、ことを特徴とする米を主材料とする麺の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米を主材料とする麺の製造技術に係り、特に円滑に製造できると共に、その米麺特有の食感を維持した米を主材料とする麺の製造方法及び米麺に関する。
【背景技術】
【0002】
麺類には、小麦を主材とするうどん、ラーメン、スパゲッティ(パスタ)、蕎麦を主材とする蕎麦麺がある。最近はこれら以外に米を材料とするフォー、ビーフンが知られるようになった。これらの麺は、茹で上げてスープに入れ、たれに付け又は炒めて食されている。
【0003】
<うどんの一般的な製造方法>
一般的な小麦を主材とするうどん、ラーメン、スパゲッティ(パスタ)は、図5の作業フロー図に示すような方法により製造される場合が多い。
先ず、原材料の小麦粉・塩等をミキサーで混ぜ合わせる(混錬工程S51)。この混錬工程S51において、ミキサーで水と小麦粉をすばやく均一に混ぜ合わせることで、生地中のグルテン組織が繊維状の立体的な格子を形成しやすくなる。いわゆる「もっちり感」のあるうどんにすることができる。このような状態に鍛えられた生地が最も良好な食感になる。
【0004】
次に、原材料をミキサーで混ぜ合わせた後、生地の緊張を休ませる、いわゆる「寝かし」と称される「熟成」を適切な温度・時間で行う(第1熟成工程S52)。この一定の温度で正確に熟成することで、うどんの食感に大きな影響を与える。麺の製造において重要な作業工程である。この熟成の工程には4つの大きな目的がある。小麦粉の水和を行うこと、生地の脱気作用を行うこと、グルテンの緩和を行うこと、酵素の働きを待つことであり、食感の向上に寄与することである。
【0005】
生地全体に所定の押圧力を均一に加えて生地を鍛える(加圧工程S53)。この加圧工程S53は生地中のグルテンの組織をつなぎ合わせる工程である。従来は足踏みで行われていた作業である。
【0006】
加圧工程S53を経て鍛えられた生地は、再度熟成させる、第2熟成を行う(第2熟成工程S54)。この第2熟成工程S54はグルテンの緩和で麺の美味しさを高める工程である。例えば、生地の表面を指先で押し、すぐ復元するかどうかで熟成の完了度が判断できる。その熟成時間は室温と加水量と塩度によって変える。
【0007】
次に、生地全体に圧力を加えて延ばす(圧延工程S55)。この圧延工程S55では、グルテンを破壊せず、薄く均一に延ばすようにする。例えば、先にプレスにより、ある程度生地を平らにした後、ロール部分で麺の厚みを確かめながら徐々に薄く延ばす。生地に無理な力がかからず、理想的なグルテン組織ができ上がった美味しいうどんにすることができる。茹でたときに、いわゆる「弾力(コシ)の強い」うどんになる。これは小麦粉に含まれるグルテンが、混錬工程S51ではよく捏ねられるので、複雑に絡まりあった網目状のグルテンになり、適度の弾力(コシ)が出るようになる。
【0008】
最後に、うどん、ラーメン、スパゲッティ(パスタ)の種類に応じた太さ、長さになるように生地を切断機を用いて細断する(細断工程S56)。なお、パスタのような場合は押出成形をすることもある。麺を茹で上げたときに「出汁の乗り」が悪かったり、「茹で溶け」を起こす部分が生じないように、麺の厚さや、縦横比率に注視して生地を細断する。
これで製品が完成し、作業工程は終了する。
【0009】
<フォーの一般的な製造方法>
一方、ベトナムの麺で有名な米を主材とするフォーは、図6の作業フロー図に示すような方法により製造される場合が多い。上述したうどん等の製造方法とは大きく異なる。
原材料は小麦ではなく、米である。この米を所定の粒径になるように粉砕機で粉砕する(粉砕工程S61)。この粉砕工程S61は米を米粉にすることで、材料に水が浸み込みやすくなる。
米粉を水に漬けて、米粉水を糊状にする(浸漬工程S62)。この浸漬工程S62は、米粉水のサラサラの状態から糊状の生地が生成されるまで所定の時間を要する。
なお、粉砕工程S61と浸漬工程S62に代えた方法もある。粉砕工程S61と浸漬工程S62とを同時に行う方法もある。例えば,米を水に漬け、その後水と一緒に臼で潰して、米粉水を生成する製造方法もある(米粉水工程)。この米粉水工程は、生産量が少ない場合に適している。
【0010】
次に、糊状の生地をコンベア等に流して帯状に形成する(延伸工程S63)。この延伸工程S63のときにフォーの厚さが決まるので、厚過ぎず、薄過ぎずの微妙な調整が必要となる。
帯状に形成された生地は、蒸し器などを用いて加熱凝固させ、弾力性を有するシート状の生地にする(加熱工程S64)。このときは帯状の生地に裂け、気泡、穴が生じないように注意して蒸す。
【0011】
シート状の生地を冷却する(生地冷却工程S65)。この冷却されてある程度固くなったシート状の生地を上下に配置されたロール状の切断刃等で細断する(細断工程S66)。これでフォーの形態となる。
【0012】
このように製造されたフォーは、食する際には数十秒から1、2分の短時間茹でる。この茹でたフォーは鶏や牛肉で取った透明のつゆに入れ、茹でた鶏肉や牛の薄切り肉、様々なハーブ類や生野菜などの具材を乗せて食される。
このフォーは、弾力(コシ)の強いうどんとは異なり、弾力(コシ)の弱い、つるつるとした食感を味わう麺である。
【0013】
なお、そのまま食さない場合は、細断工程S66の後に麺乾燥工程S67を設ける。この麺乾燥工程S67では、細断したフォーを、保存性を高め、運搬しやすいように乾燥して乾麺にする。その後これを袋に詰めて乾麺の製品とする。
【0014】
このようにフォーのような米麺の製造方法に関する技術が提案されている。例えば、特許文献1の特開2006-304674号公報「米麺及び米麺の製造方法」のように、玄米から精米した乾燥状態の米を粉砕または磨砕して得られる米由来原料に適量の水または湯を加えてよく捏ね、得られた米粉粘稠物を圧延して米生地とし、この米生地を適当の細さ、長さに裁断して得る米麺の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2006-304674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
フォーのような米麺の原材料になる米のデンプンは、主にアミロペクチンとアミロースから構成される。アミロペクチンは分解速度が速い性質をもち、アミロースはゆっくりと分解される性質を有する。アミロースは別名「レジスタントスターチ:難消化デンプン」とも称されている。高アミロース米は特性上、パサパサとした食感がある。高アミロース米は、炊飯器で炊いてそのまま食するよりも、おかゆに適している。その他はチャーハン、パエリア、ドライカレー、リゾットなど、サラッとした食感を活かしたメニューで食することが勧められている。
【0017】
しかし、アミロペクチンの含有量の多い、例えばジャポニカ米をフォーの原材料として用いると、水に浸漬させる工程(浸漬工程S62)において、水を多く吸収するため、生地が柔らかくなり過ぎる。生地がこのような状態になると、その後のフォーの製造作業が煩雑になりやすい。例えば、べたべたした状態の食感の悪いものになりやすかった。
【0018】
逆に、浸漬工程S62において水の量を少なくすると、吸水が不完全になりやすかった。図7(a)、(b)に示すように、延伸工程S63において糊状の生地31をコンベア等に流して帯状に形成するときに、裂け目32ができたり(図7(a))、穴33が開いたり(図7(b))、均一な厚さにすることが困難になるなど、その後のフォーの製造作業に支障をきたすという問題を有していた。
【0019】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、グルテンを含有せず、又は少量しか含有しない米を原料とする米麺について、その製造過程において麺帯が裂けたり、気泡、穴が開くという不具合の発生を防止して、細断まで円滑に作業することができ、かつ米麺の特有な、弾力(コシ)がない、つるつるした食感を呈する、米を主材料とする麺の製造方法及び米麺を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の製造方法は、米を水に漬けて糊状にし、これを延ばしてから麺を製造する、米を主材料とする麺の製造方法であって、
原材料となる米を水に浸漬する第1浸漬工程(S1)と、
前記第1浸漬工程(S1)において浸漬した米を浸漬水と共に冷却する原材料冷却工程(S2)と、
前記原材料冷却工程(S2)において浸漬水と共に冷却した米を、水と共に所定の粒径の第1米粉水に磨砕する水挽き(みずびき)工程(S3)と、
前記水挽き工程(S3)において磨砕した第1米粉水に、「つなぎ効果」を高めるために製粉機で製粉した粉状の乾燥したアルファ型の米粉から成る糊化剤を、第1米粉水の全体量の5~15重量%の割合で加えて第2米粉水を生成する米粉水生成工程(S4)と、
前記米粉水生成工程(S4)において生成された第2米粉水を、水に浸漬させた状態で糊化する第2浸漬工程(S5)と、
前記第2浸漬工程(S5)において糊化した第2米粉水をコンベアに流して帯状の生地に形成する延伸工程(S6)と、
前記延伸工程(S6)において帯状に形成した生地を蒸し機で蒸して、帯状の生地を加熱凝固して麺帯を形成する加熱麺帯生成工程(S7)と、
前記加熱麺帯生成工程(S7)において形成した麺帯を細断しやすくするために、この麺帯を冷却する生地冷却工程(S9)と、
前記生地冷却工程(S9)において冷却形成した麺帯を、フォーとして食しやすいように所定の幅と長さに細断する細断工程(S8)と、から成る、ことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の製造方法は、米を水に漬けて糊状にし、これを延ばしてから麺を製造する、米を主材料とする麺の製造方法であって、
原材料となる米を、水と共に所定の粒径に磨砕する水挽き(みずびき)工程(S3)と、
前記水挽き工程(S3)において磨砕した米粉水を、「つなぎ効果」を高めるために製粉機で製粉した粉状の乾燥したアルファ型の米粉から成る糊化剤を、第1米粉水の全体量の5~15重量%の割合になるように水に浸漬して混合する混合米粉水を生成する混合米粉水生成工程(S21)と、
前記混合米粉水生成工程(S21)において生成された混合米粉水を、浸漬した状態で一晩維持して糊化する浸漬工程(S22)と、
前記浸漬工程(S22)において浸漬した米を浸漬水と共に冷却する原材料冷却工程(S2)と、
前記浸漬工程(S22)において生成された混合米粉水を、コンベアに流して帯状の生地に形成する延伸工程(S6)と、
前記延伸工程(S6)において帯状に形成した生地を蒸し機で蒸して、帯状の生地を加熱凝固して麺帯を形成する加熱麺帯生成工程(S7)と、
前記加熱麺帯生成工程(S7)において形成した麺帯を細断しやすくするために、この麺帯を冷却する生地冷却工程(S9)と、
前記生地冷却工程(S9)において冷却形成した麺帯を、フォーとして食しやすいように所定の幅と長さに細断する細断工程(S8)と、から成る、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の構成では、原材料の米以外に米粉などの糊化剤を加えて浸漬処理をしているので、製造過程において、裂けたり、穴が開いたりせずに円滑に処理することができる。また、糊化剤の添加量も原材料の全体量からすると少ないので、グルテンの含有率が低く、うどんのような「コシ」に相当する弾力性の「もっちり感」が出ることなく、つるつるした米麺特有の食感を出す麺を製造することができる。
【0026】
糊化剤に、米を製粉した乾燥米粉を用いることで、米粉水(第1米粉水、第2米粉水、混合米粉水)に均等に分散させて混合しやすくなる。少量の糊化剤でも米粉水の「つなぎ効果」を有し、しかも麺に「もっちり感」が出ないため好ましい食感を呈する麺にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施例1の米を主材料とする麺の製造方法を示す作業フロー図である。
図2】本発明の実施例1の米を主材料とする麺の製造方法の変形例を示す作業フロー図である。
図3】本発明の実施例2の米を主材料とする麺の製造方法を示す作業フロー図である。
図4】本発明の実施例2の米を主材料とする麺の製造方法の変形例を示す作業フロー図である。
図5】一般的なうどんの製造方法を示す作業フロー図である。
図6】一般的なフォーの製造方法を示す作業フロー図である。
図7】一般的なフォーの製造方法により発生する不具合を示す概略図であり、(a)は生地が裂けた状態、(b)は生地に穴が開いた状態である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の米を主材料とする麺の製造方法は、原材料となる米を水に浸漬する第1浸漬工程と、この水に浸漬させた米を、水と共に所定の粒径の第1米粉水に磨砕する水挽き工程と、この磨砕した第1米粉水に、糊化剤を加えて第2米粉水を生成する米粉水生成工程と、この第2米粉水を水に浸漬させた状態で時間をかけて糊化する第2浸漬工程と、この第2米粉水をコンベアに流して帯状の生地に形成する延伸工程と、この帯状の生地を蒸し機で蒸して、帯状の生地を加熱凝固して麺帯を形成する加熱麺帯生成工程と、この麺帯を、フォーとして食しやすいように所定の幅と長さに細断する細断工程と、から成る製造方法である。
【実施例1】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
<浸漬処理の工程が2回ある麺の製造方法の構成>
図1は本発明の実施例1の米を主材料とする麺の製造方法を示す作業フロー図である。
実施例1の米を主材料とする麺の製造方法は、米を水に漬ける浸漬工程が第1浸漬工程と第2浸漬工程と2回有する。
この製造方法は、原材料となる米を水に浸漬する第1浸漬工程S1と、この第1浸漬工程S1で水に漬かった米を、水と共に所定の粒径の第1米粉水に磨砕する水挽き(みずびき)工程S3と、この第1米粉水に、糊化剤を加えて第2米粉水を生成する米粉水生成工程S4と、米粉水生成工程S4において生成された第2米粉水を、時間をかけて糊化する第2浸漬工程S5を有する。
ここで、第1、第2と表現したのは、等級、順番を表すのではなく、略同様の成分からなる米粉水であるが、若干性状が相違するために便宜的に使用するものである。
【0030】
第1浸漬工程S1では、原材料となる米を水に所定時間浸漬する。例えば、1日水に浸漬する。収穫直後の水分の多い新米の場合は半日、収穫後1年以上経過した水分の少ない古米等の場合は1日以上浸漬すると良い。その米の状態に応じて浸漬時間を調節することが好ましい。
【0031】
この第1浸漬工程S1は、米からグルテンを抽出する工程である。本来、米はグルテンの含有量が少量、又は無い種類のものもある。この米粉水にグルテンが抽出されないと、その後の麺としての「つなぎ効果」が弱く、図7に示したように、裂けたり、穴が開いたりして、麺の体をなさない場合がある。主材料となる米は、フォーの原材料として適している高アミロース米を用いる。
【0032】
第1浸漬工程S1は、米麺の製造過程において重要な処理工程である。そこで、本発明では、第1浸漬工程S1の後に、米を浸漬水と共に冷却する原材料冷却工程S2を有する。この原材料冷却工程S2では、第1浸漬工程S1の処理中に浸漬水の水温が上昇したときに必要な処理工程である。
【0033】
水挽き工程S3は、水に浸漬している米を水と共に所定の粒径に磨砕する作業工程である。例えば、この水挽き工程S3では、原料の米の2倍量の水と共に粉砕する。この水挽き工程S3は、出来上がったフォー(米麺)の食感に重要な影響を及ぼす工程である。例えば、水挽き工程S3で処理した水挽き米粉の最頻粒度は5~10μm程度であり、非常に細かい米粉水(第1米粉水)となる。これから製造したフォー(米麺)は、非常に滑らかな食感を呈する。
【0034】
米粉水生成工程S4では、糊化剤の米粉を投入して第2米粉水とする。このとき投入する米粉は、フォーは透明な麺であるため、アルファ型の乾燥した米粉が望ましい。このアルファ型米粉は、もち米又はうるち米を一度蒸してでんぷん質を糊化(アルファ化)させてから乾燥した後、製粉した米粉である。
一方、米麺として透明な状態を欲しない場合は、生のもち米又はうるち米をそのまま製粉した非加熱のべータ型の米粉でよい。
【0035】
米粉水生成工程S4に用いる糊化剤は、米粉(アルファ型、べータ型)に限定されない。製品としての麺に「もっちり感」を醸成しないが、つなぎ効果を有する素材として、タピオカを用いることができる。タピオカは、キャッサバの根茎から製造したでんぷんである。このタピオカは、グルテンの含有量が少ないが、熱を加えると糊化しやすく、抱水力が高い性質を有する。そこで、糊化剤として適している。
更に、麺に「もっちり感」を付与せず、米粉水(第1米粉水)のつなぎ効果を有する素材であれば、アルファ型米粉、べータ型米粉、タピオカに限定されないことは勿論である。
【0036】
このように米粉水生成工程S4における糊化剤としては、製粉機で粉状にした乾燥した米粉が好ましい。これは乾燥した米粉は、第1米粉水に均等に分散させて混合しやすいからである。少量の糊化剤でも米粉水(第1米粉水)の「つなぎ効果」を有し、しかも麺に「もっちり感」が出ないため好ましい食感を呈する麺にすることができる。
【0037】
この米粉水生成工程S4において、水に浸漬させた米に混合する糊化剤の割合は、第1米粉水の全体量の5~15重量%である。表1の比較表にあるように、糊化剤が5%未満のときは、糊化剤としてのつなぎ効果が減殺され、その後の製造過程に支障が生じた。逆に15%以上ではつなぎ効果は出るが、完成した米麺(フォー)に「もっちり感」が付与されてうどんのようになり、独特の食感が消される。そこで、5~15重量%が適量とした。この幅は主材料の米の種類に応じて加減する。
【0038】
【表1】
【0039】
次に、この米粉水生成工程S4を経て、更に第2浸漬工程S5により時間をかけて第2米粉水を糊化させる。このときは、次の延伸工程S6があるので、第2米粉水が凝固しないように常温で作業をする。この第2浸漬工程S5は、作業の都合上一日を目安とする。但し、夏のように熱い時は短く、冬のように寒い時は長い時間設定をする。
【0040】
延伸工程S6は、糊化した生地(第2米粉水)をコンベアに流して帯状の生地に形成する工程である。更に、所定の幅、薄さにロール等を用いて薄く延ばす。このときの生地の厚さは、製品の麺の太さになる。
【0041】
次に、この帯状の生地は加熱麺帯生成工程S7で処理する。この加熱麺帯生成工程S7は、帯状の生地を蒸し機で蒸して、帯状の生地が加熱凝固したいわゆる「麺帯」に形成する工程である。この工程で生地が凝固して弾力性を有するシートになる。但し、うどんと異なり「もっちり感」が出ないようにする。この麺帯の弾力性は次の細断工程S8に支障がない程度の弾力性である。上述したうどんで「コシ」に相当する弾力性とは大いに異なる。
【0042】
麺帯は、細断工程S8でフォーとして食しやすいように所定の幅と長さに細断する。このときは上下に刃の付いたロールの間に送り込み、所望の形状のフォー(米麺)としての製品とする。これで、製造工程は終了し、フォー(米麺)が完成する。
【0043】
このように製造されたフォー(米麺)は、食する際には数十秒から1、2分といった短時間茹でる。この茹でたフォー(米麺)は、鶏や牛肉で取った透明のつゆ(スープ)に入れ、茹でた鶏肉や牛の薄切り肉、様々なハーブ類や生野菜などの具材をのせて食される。製造直後のフォー(米麺)は、茹でないでそのままつゆ(スープ)に入れて食される場合もある。このフォー(米麺)は、「つるつる」した食感が重要であり、うどんなどとは異なり、「コシ」、「もっちり感」を出さないようにするためである。
【0044】
<実施例1の変形例の構成>
図2は本発明の実施例1の米を主材料とする麺の製造方法に生地冷却工程と乾燥工程を追加した変形例を示す作業フロー図である。
麺帯は、細断工程S8で所望の形状のフォー(米麺)としての製品とする際に、必要に応じて生地冷却工程S9を付加することもある。冷却した麺帯の方が細断しやすくなるからである。
また、米麺を乾麺にするときは、細断したフォーをその状態で乾燥させる(乾燥工程S10)。常温で放置するか、冷風を当てて速乾させる方法を用いる。温風はなるべく避けるとよい。表面のみの乾燥が早まり、ひび割れの原因になりやすいからである。
【実施例2】
【0045】
<浸漬米粉水生成工程を有する麺の製造方法の構成>
図3は本発明の実施例2の米を主材料とする麺の製造方法を示す作業フロー図である。
実施例2の米を主材料とする麺の製造方法は、当初から米と糊化剤の米粉を水に漬ける工程を有する麺の製造方法である。
実施例2の製造方法は、原材料となる米と糊化剤を、水に浸漬して米粉水を生成する混合米粉水生成工程S21と、この混合米粉水生成工程S21において生成された混合米粉水を、時間をかけて糊化させる浸漬工程S22と、を有する。浸漬時間を短くして早期に米麺を製造する際に適した製造方法である。
【0046】
混合米粉水生成工程S21は、実施例1と異なり、最初から米と糊化剤を同時に水に浸漬させる工程である。この糊化剤としては、製粉機で製粉した粉状の乾燥した米粉が好ましい。この糊化剤は実施例1で使用した、米粉(アルファ型、べータ型)、タピオカなどを使用する。
【0047】
浸漬工程S22は、このように米と糊化剤を浸漬した状態で一晩維持する工程である。時間をかけて混合米粉水を糊化させて、その延伸工程S6、加熱麺帯生成工程S7を円滑に処理できるようにする工程である。この延伸工程S6、加熱麺帯生成工程S7と細断工程S8は実施例1と同様な作業工程である。完成した米麺(フォー)の食感ももっちり感はなく、つるつるした食感を有する。
【0048】
<実施例2の変形例の構成>
図4は本発明の実施例2の米を主材料とする麺の製造方法の変形例を示す作業フロー図である。
実施例2の製造方法により製造した麺帯は、細断工程S8で所望の形状のフォー(米麺)としての製品とする際に、必要に応じて生地冷却工程S9を付加したものである。冷却した麺帯の方が細断しやすくなるからである。
また、米麺を乾麺にするときは、細断したフォーをその状態で乾燥させる(乾燥工程S10)。常温で放置するか、冷風を当てて速乾させる方法を用いる。温風はなるべく避けるとよい。表面のみの乾燥が早まり、ひび割れの原因になりやすいからである。
【0049】
なお、本発明は、グルテンを含有せず、又は少量含有する米を原料とする米麺について、その製造過程において麺帯が裂けたり、気泡、穴が開くという不具合の発生を防止して、細断まで円滑に作業することができ、かつ米麺の特有な弾力(コシ)がなく、つるつるした食感を呈することができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の米を主材料とする麺の製造方法及び米麺は、フォーなどのもっちり感のない米麺の製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
S1 第1浸漬工程
S2 原材料冷却工程
S3 水挽き(みずびき)工程
S4 米粉水生成工程
S5 第2浸漬工程
S6 延伸工程
S7 加熱麺帯生成工程
S8 細断工程
S21 混合米粉水生成工程
S22 浸漬工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7