(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】アスファルト合材熔融装置
(51)【国際特許分類】
E01C 19/08 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
E01C19/08
(21)【出願番号】P 2019038520
(22)【出願日】2019-03-04
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】593107421
【氏名又は名称】株式会社ナカケン
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】中原 良秀
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-197413(JP,A)
【文献】特開2002-227119(JP,A)
【文献】実開昭58-016207(JP,U)
【文献】実開平06-146210(JP,U)
【文献】米国特許第06012870(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト合材を収容して熔融する熔融部と、
前記熔融部内において前記アスファルト合材を撹拌可能に配設された撹拌部と、
前記撹拌部を駆動する駆動手段と、
前記熔融部に配設され前記アスファルト合材を加熱する燃焼手段と、
を備えるアスファルト合材熔融装置であって、
前記撹拌部は、軸部材と、前記軸部材から延設された撹拌体と、を有し、
前記燃焼手段は、前記熔融部内で前記燃焼手段の炎が、前記熔融部内に配される前記軸部材の軸線方向における中央部分及びその周辺を含む領域に向かうように配されていることを特徴とするアスファルト合材熔融装置。
【請求項2】
前記撹拌体は、棒状の首部と、前記首部より幅広に形成された板状の頭部と、を有していることを特徴とする請求項1記載のアスファルト合材熔融装置。
【請求項3】
前記頭部の回転方向前側となる面が、前記軸部材の軸線に対して傾斜するとともに、前記熔融部内における前記軸部材の軸線方向における中央部分に向けられていることを特徴とする請求項2記載のアスファルト合材熔融装置。
【請求項4】
前記熔融部の上部は、上壁と、前記上壁と直交する側壁と、を有する箱状に形成され、
前記上壁に前記燃焼手段が取り付けられ、前記上壁の前記燃焼手段近傍に空気取入口が配設されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のアスファルト合材熔融装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト合材熔融装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアスファルト合材熔融装置として、特許文献1に記載されるものがあった。これによれば、基体にアスファルト合材を熔融する熔融部を設け、熔融部の外周と基体の内周との間には空間が設けられ、この空間には燃焼装置から燃焼ガスが供給され、この燃焼ガスは空間及び熔融部を通過して排気部から基体の外部に排気されるように構成されていた。
【0003】
上記構成のアスファルト合材熔融装置は、熔融部の周囲に形成される空間を燃焼ガスが通過することによる間接加熱と、熔融部内に燃焼ガスが導入されることによる直接加熱により、アスファルト合材を良好に熔融することができるとされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のアスファルト合材熔融装置では、熔融部の周囲に形成される空間で構成される燃焼ガスの通路部分のためのスペースが必要となり、装置が大きくななってしまう。また、間接加熱における熔融部の周囲に形成される空間の燃焼ガスは、壁越しとなり熱伝導効率が悪く、直接加熱における熔融部内に導入された燃焼ガスは温度が低くなっているので作業に時間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、装置をコンパクトにするとともに、作業効率を向上させることができるアスファルト合材熔融装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明では、アスファルト合材を収容して熔融する熔融部と、
前記熔融部内において前記アスファルト合材を撹拌可能に配設された撹拌部と、
前記撹拌部を駆動する駆動手段と、
前記熔融部に配設され前記アスファルト合材を加熱する燃焼手段と、
を備えるアスファルト合材熔融装置であって、
前記撹拌部は、軸部材と、前記軸部材から延設された撹拌体と、を有し、
前記燃焼手段は、前記熔融部内で前記燃焼手段の炎が、前記熔融部内に配される前記軸部材の軸線方向における中央部分及びその周辺を含む領域に向かうように配されている。
【0008】
これによれば、燃焼手段は、熔融部内で燃焼手段の炎が、熔融部内に配される軸部材の軸線方向における中央部分及びその周辺を含む領域に向かうように配され、燃焼手段の炎が直接アスファルト合材に当たる構成としているため、燃焼ガスの通路部分のためのスペースが不要となり装置をコンパクトにするとともに、熱伝導効率を良くすることが可能となるので、アスファルト合材の熔融作業の効率を向上させることができる。
【0009】
また、前記撹拌体は、棒状の首部と、前記首部より幅広に形成された板状の頭部と、を有している。
【0010】
これによれば、アスファルト合材は、頭部に乗せられて落下し、首部ではほとんど乗せられないですり抜けるため、アスファルト合材が移動する部分と、ほとんど移動しない部分を作り出すことができる。よって、加熱されたアスファルト合材の撹拌効率を向上させることができる。
【0011】
また、前記頭部の回転方向前側となる面が、前記軸部材の軸線に対して傾斜するとともに、前記熔融部内における前記軸部材の軸線方向における中央部分に向けられている。
【0012】
これによれば、アスファルト合材が、燃焼手段の炎が向けられる、熔融部内に配される軸部材の軸線方向における中央部分及びその周辺を含む領域に寄せられるので、燃焼手段の炎が当たりやすくなり、熔融作業を短縮させることができる。
【0013】
また、前記熔融部の上部は、上壁と、前記上壁と直交する側壁と、を有する箱状に形成され、前記上壁に前記燃焼手段が取り付けられ、前記上壁の前記燃焼手段近傍に空気取入口が配設されている。
【0014】
これによれば、本出願人の実験により、箱状に形成された熔融部の上部の側壁にのみ空気取入口を配設した場合に比して、上壁の燃焼手段が取り付けられる近傍に空気取入口を配設すると、燃焼手段の炎の燃焼性が向上したことが認められている。炎の流れにより空気圧が低くなるので、燃焼手段の近傍の空気取入口から取り入れられる空気が、炎に吸い込まれて取り込みやすくなったものと推認される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態のアスファルト合材熔融装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のアスファルト合材熔融装置の第一の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では、各図面の矢印の、Fを前、Bを後ろ、Rを右、Lを左、Uを上、Dを下、とする。
【0017】
アスファルト合材熔融装置10は、
図1~4に示すように、概略的には、フレーム部20と、熔融部30と、撹拌部60と、駆動手段70と、燃焼手段80(
図2、3では省略してある)と、を備えて、熔融部30にアスファルト合材を投入して、加熱、撹拌するものである。
【0018】
フレーム部20は、溝形鋼を連結した枠体状に形成され、熔融部30が取り付けられる熔融部取付部21と、駆動手段70が取り付けられる駆動手段取付部22と、を有している。
【0019】
熔融部30は、金属製で、下端が閉塞し上端が開放する箱状に形成されている。詳説すれば、下部31が前後の端部が閉塞した半円筒状に、上部32が四角筒状に、形成されている。熔融部30は、熔融部取付部21に取り付けられている。
【0020】
熔融部30の上部32には、前端から後端に架け渡されるブリッジ部33が設けられ、ブリッジ部33を境界として、略矩形状に開口して、左側に位置する左開口34と後側に位置する投入口35が形成されている。左開口34は、アスファルト合材を排出するとき、アスファルト合材熔融装置10をメンテナンスするときに使用するものである。投入口35は、アスファルト合材を投入するとき、アスファルト合材熔融装置10をメンテナンスするときに使用するものである。
【0021】
左開口34を開閉可能な左蓋36と、投入口35を開閉可能な投入口蓋37とが、前後方向を軸としてブリッジ部33において回動可能に軸支されている。
【0022】
左蓋36、投入口蓋37は、アスファルト合材を熔融、撹拌するときに、開けておき、アスファルト合材熔融装置10を、使用しないとき、移動するときに閉じて左開口34、投入口35を覆うものである。
【0023】
左蓋36の中央部には、挿通孔38が設けられ、挿通孔38から左斜め上側に延びる略円筒状の取付ガイド39が取り付けられている。取付ガイド39は、燃焼手段80を取り付けるためのものである。
【0024】
左蓋36には、前後方向において取付ガイド39を挟んで略矩形状の空気取入口40が二つ形成され、前後方向にスライド移動して、空気取入口40をそれぞれ覆い可能な覆い部材41が配設されている。
【0025】
投入口蓋37には、略矩形状の開口窓42が形成され、前後方向にスライド移動して、開口窓42を覆い可能な一対の覆い部材43が配設されている。
【0026】
投入口蓋37の内側には、さらに、投入口35を覆い可能な網部材44が、前後方向を軸としてブリッジ部33において回動可能に軸支されている。
【0027】
また、熔融部30の上部32の左壁32bには、略矩形状の第二空気取入口45が形成され、上下方向にスライド移動して、第二空気取入口45を覆い可能な覆い部材46が配設されている。
【0028】
換言すれば、熔融部30の上部32は、上壁32aを構成する左蓋36と、上壁32aと直交する左壁32bを含む側壁と、を有する箱状に形成され、上壁32aに燃焼手段80が取り付けられ、上壁32aの燃焼手段近傍に空気取入口40が配設されていることになる。
【0029】
熔融部30の下部31左側には、加熱、撹拌されたアスファルト合材を排出する略矩形状の排出口47が前後方向に沿って二つ配設されている。
【0030】
排出口47を開閉可能とする排出口開閉部材48が、熔融部30の下部31に前後方向を軸として回動可能に軸支されている。
【0031】
排出口開閉部材48は、ねじ部50を有した操作ハンドル49と、熔融部取付部21に取り付けられたナット51と、で構成されるボールねじ機構で開閉可能とされている。ねじ部50は、排出口開閉部材48と当接した状態とされ、操作ハンドル49の回転操作によるねじ部50の軸線方向への移動により、排出口開閉部材48が開閉する。
【0032】
排出口47の近傍には、アスファルト合材の排出を規制する排出ガイド52が配設されている。
【0033】
撹拌部60は、軸部材61と、撹拌体62と、を有している。軸部材61は、金属製で円柱状に形成されている。軸部材61に撹拌体62が、軸部材61の軸線方向からみて、等間隔に三か所取り付けられている。本実施形態では120度間隔で取り付けられている。
【0034】
撹拌体62は、金属製で、首部63と、頭部64と、を有している。首部63は円柱状に形成され、一端側で軸部材61に取り付けられ、他端側に頭部64が取り付けられている。頭部64は、六角形板状に形成されている。
【0035】
図5に示すように、頭部64の回転方向前側となる面64aは、軸部材61の軸線に対して傾斜するとともに、熔融部30内における軸部材61の軸線方向における中央部分に向けられている。
【0036】
撹拌部60は、軸部材61において、軸受部材65を介して、熔融部30の下部31の前壁31aと後壁31bに前後方向を軸として軸支されている。
【0037】
駆動手段70は、電動モータが用いられ、駆動手段取付部22に取り付けられている。駆動手段70は、減速機71を介して配設された駆動軸72が、継手部材73により軸部材61と連結されている。図示しない制御装置を操作して駆動手段70を駆動させると撹拌部60が回動可能となる。
【0038】
燃焼手段80は、ガスバーナが用いられ、取付ガイド39の内側に挿通させてねじ止め等して取り付けられる。
【0039】
上記構成のアスファルト合材熔融装置10の使用態様及び作用機能を説明する。
【0040】
アスファルト合材熔融装置10を、トラック等の車両に搭載して作業現場まで移動させ、作業現場の設置場所に設置する。移動中は、アスファルト合材熔融装置10の開口部分は左蓋36、投入口蓋37、覆い部材41、43、46等で閉じて覆われた状態にあるので、左蓋36、投入口蓋37、覆い部材41、43、46を開いて開放状態とする。
【0041】
取付ガイド39に燃焼手段80を取り付けて、燃焼手段80を点火して燃焼を開始する。次に、投入口35からアスファルト合材を投入する。そして、駆動手段70を駆動させると、撹拌部60が回転する。本実施形態では、撹拌部60は、
図4における反時計周りに回転する。
【0042】
熔融部30内で、撹拌部60は、アスファルト合材を撹拌するとともに、燃焼手段80は、アスファルト合材を加熱する。
【0043】
このとき、アスファルト合材は、撹拌体62の頭部64の面64aに乗せられて上側に運ばれたのち落下し、首部63ではほとんど乗せられないですり抜けるため、アスファルト合材が移動する部分と、ほとんど移動しない部分を作り出すことができる。よって、加熱されたアスファルト合材の撹拌効率を向上させる。
【0044】
また、アスファルト合材が、燃焼手段80の炎が向けられる、熔融部30内に配される軸部材61の軸線方向における中央部分及びその周辺を含む領域に寄せられるので、燃焼手段80の炎が当たりやすくなり、熔融作業を短縮させる。
【0045】
さらに、燃焼手段80の炎は、投入されたアスファルト合材の上面に沿って、軸部材61の軸線方向に沿って流れていくので、熔融部30内のアスファルト合材にまんべんなく燃焼手段80の炎を当てることができる。
【0046】
アスファルト合材の熔融が完了したら、操作ハンドル49を操作して排出口開閉部材48を開き、排出口47からアスファルト合材を排出する。アスファルト合材は、排出ガイド52により排出が規制される。このとき、駆動手段70を逆回転させて、撹拌部60を
図4における時計回りにして、アスファルト合材の排出をサポートすることができる。
【0047】
本発明の出願人は、市販のアスファルト合材(マンホール補修材 商品名アパッチアスファルト 発売元セーブマシン株式会社)75kgを150℃となるまで加熱、撹拌したが、従来、トレーに入れて、ガスバーナで加熱し、人の手で撹拌して、作業者三人で作業完了まで三十分かかっていたが、本実施形態のアスファルト合材熔融装置10では、作業者一人で、十五分で作業が完了した。
【0048】
上記構成のアスファルト合材熔融装置10では、アスファルト合材を収容して熔融する熔融部30と、
熔融部30内においてアスファルト合材を撹拌可能に配設された撹拌部60と、
撹拌部60を駆動する駆動手段70と、
熔融部30に配設されアスファルト合材を加熱する燃焼手段80と、
を備えるアスファルト合材熔融装置であって、
撹拌部60は、軸部材61と、軸部材61から延設された撹拌体62と、を有し、
燃焼手段80は、熔融部30内で燃焼手段80の炎が、熔融部30内に配される軸部材61の軸線方向における中央部分及びその周辺を含む領域に向かうように配されている。
【0049】
これによれば、燃焼手段80は、熔融部30内で燃焼手段80の炎が、熔融部30内に配される軸部材61の軸線方向における中央部分及びその周辺を含む領域に向かうように配され、燃焼手段80の炎が直接アスファルト合材に当たる構成としているため、燃焼ガスの通路部分のためのスペースが不要となり装置をコンパクトにするとともに、熱伝導効率を良くすることが可能となるので、アスファルト合材の熔融作業の効率を向上させることができる。
【0050】
また、撹拌体62は、棒状の首部63と、首部63より幅広に形成された板状の頭部64と、を有している。
【0051】
これによれば、アスファルト合材は、頭部64に乗せられて落下し、首部63ではほとんど乗せられないですり抜けるため、アスファルト合材が移動する部分と、ほとんど移動しない部分を作り出すことができる。よって、加熱されたアスファルト合材の撹拌効率を向上させることができる。
【0052】
また、頭部64の回転方向前側となる面64aが、軸部材61の軸線に対して傾斜するとともに、熔融部30内における軸部材61の軸線方向における中央部分に向けられている。
【0053】
これによれば、アスファルト合材が、燃焼手段80の炎が向けられる、熔融部30内に配される軸部材61の軸線方向における中央部分及びその周辺を含む領域に寄せられるので、燃焼手段80の炎が当たりやすくなり、熔融作業を短縮させることができる。
【0054】
また、熔融部30の上部32は、上壁32aと、上壁32aと直交する左壁32bを含む側壁と、を有する箱状に形成され、上壁32aに燃焼手段80が取り付けられ、上壁32aの燃焼手段80近傍に空気取入口40が配設されている。
【0055】
これによれば、本出願人の実験により、箱状に形成された熔融部30の上部32の側壁にのみ空気取入口を配設した場合に比して、上壁32aの燃焼手段80が取り付けられる近傍に空気取入口40を配設すると、燃焼手段80の炎の燃焼性が向上したことが認められている。炎の流れにより空気圧が低くなるので、燃焼手段80の近傍の空気取入口40から取り入れられる空気が、炎に吸い込まれて取り込みやすくなったものと推認される。
【0056】
本発明のアスファルト合材熔融装置10は、上記構成に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない限り各種の設計変更等が可能である。
【0057】
例えば、燃焼手段80として、ガスを燃焼させるガスバーナを用いたが、固体、液体を気化して燃焼させるものであってもよい。
【0058】
また、駆動手段70も撹拌部60を回動可能であれば、既存の他のモータ等を用いることができる。
【0059】
また、空気取入口40の位置も、燃焼手段80の燃焼を維持できるのであれば、適宜変更することができる。
【0060】
また、撹拌体62の形状も、アスファルト合材を好適に撹拌出来るのであれば、適宜形状を変更することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 アスファルト合材熔融装置
30 熔融部
32 上部
32a 上壁
32b 左壁
40 空気取入口
60 撹拌部
61 軸部材
62 撹拌体
63 首部
64 頭部
64a 面
70 駆動手段
80 燃焼手段