(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】樹枝状ニッケル結晶粒子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C25C 5/02 20060101AFI20220104BHJP
C25C 1/08 20060101ALI20220104BHJP
H01B 5/00 20060101ALI20220104BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20220104BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20220104BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C25C5/02
C25C1/08
H01B5/00 A
H01B1/00 A
H01B1/22 B
H01B1/22 A
H01B13/00 501Z
(21)【出願番号】P 2019110804
(22)【出願日】2019-06-14
【審査請求日】2021-03-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390036364
【氏名又は名称】清川メッキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 一生
(72)【発明者】
【氏名】金牧 潤
(72)【発明者】
【氏名】清川 肇
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-071809(JP,A)
【文献】国際公開第2013/137018(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/057231(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102392270(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1651584(CN,A)
【文献】田島 栄,定電流法および定電位法による水溶液からの鉄族金属特にニッケルの樹枝状晶の析出,電気化学および工業物理化学,日本,電気化学会,1969年03月05日,第37巻、第3号,p.179-182,https//doi.org/10.5796/kogyobutsurikagaku.37.179
【文献】V.D.Jovic et al.,Electrodeposition of Ni, Co and Ni-Co alloy powders,Electrochimica Acta,ELSEVIER,2006年,vol.51,p.5468-5477,doi:10.1016/j.electacta.2006.02.022
【文献】Xiao-Tao Luo et al.,A comparison of cold spray deposition behavior between gas atmized and dendritic porous electolytic Ni powders under the same spray conditions,Materials Letters,ELSEVIER,2016年,vol.163,p.58-60,http://dx.doi.og/10.1016+/j.matlet.2015.10.048
【文献】V.D.Jovic et al.,Electrodeposition and morphology of Ni, Co and Ni-Co alloy powders Part.II. Ammonium chloride supporting electrolyte,Electrochimica Acta,ELSEVIER,2007年,vol.52,p.4254-4263,doi:10.1065/j.electacta.2006.12.003
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 5/02
B22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケルからなる樹枝状ニッケル結晶粒子の製造方法であって、ニッケルイオンおよび錯化剤を含有し、電解液中でニッケルイオンを生成するニッケル化合物の濃度が5~35g/Lであり、錯化剤の濃度が10~50g/Lである電解液中に陽極および陰極を浸漬し、陽極と陰極との間に電流密度が5~100A/dm
2である直流電流を通電し、陰極の表面で樹枝状ニッケル結晶粒子を析出させることを特徴とする樹枝状ニッケル結晶粒子の製造方法。
【請求項2】
錯化剤がクエン酸、グリシン、コハク酸、硫酸アンモニウムおよび塩化アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の錯化剤である請求項
1に記載の樹枝状ニッケル結晶粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹枝状ニッケル結晶粒子およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば、導電性フィルム、導電膜、導電性ペーストなどに用いられる導電性フィラーなどとして好適に使用することができる樹枝状ニッケル結晶粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の導体部と絶縁樹脂層との間の密着性および接着強度を高めることができるプリント配線板の製造方法として、配線板基材の表面に形成された導体部にめっき前処理を施す工程と、この導体部表面に電気的又は化学的な方法により多数の突起状金属晶を形成する工程と、この突起状金属晶を形成した導体部表面に絶縁樹脂層を形成する工程とを含むプリント配線板の製造方法において、絶縁樹脂板を接着剤により導体部表面に積層接着して絶縁樹脂層を形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記製造方法には、突起状金属晶として、銅、スズまたはニッケルからなり、大きさが数μm~10数μm程度であるデンドライトが用いられており、当該デンドライトは、電気めっき法または化学めっき法で形成されている(例えば、特許文献1の段落[0034]~[0036]参照)。
【0004】
しかし、特許文献1には、デンドライトの大きさが記載されているだけであり、デンドライトの具体的な構造および形状が明らかにされていないのみならず、デンドライトを実際に製造したことを示す具体的な実施例が記載されていないため、デンドライトの具体的な製造方法が不明であり、さらにデンドライトの入手方法も具体的に記載されていない。したがって、特許文献1の記載によれば、前記デンドライトの具体的な構造および形状ならびにその製造方法が不明である。
【0005】
また、導電性担体を使用せずに遷移金属(ニッケル)ナノ粒子が活性層に用いられている電気化学電極を製造する方法として、特定のナノ微細構造を有するニッケル含有ナノ構造体で活性層を形成させて電気化学電極を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2の段落[0010]-[0011]参照)。前記ニッケル含有ナノ構造体は、複数個の一次粒子が凝集して形成されているものであり、前記一次粒子は、ニッケルナノ結晶からなる中心部とニッケル酸化膜からなる被覆部とによって形成されている(例えば、特許文献2の段落[0013]参照)。
【0006】
しかし、前記ニッケル含有ナノ構造体は、一次粒子の凝集体であるため、外的応力を受けたときに容易に崩壊することから機械的強度に劣るのみならず、被覆部にニッケル酸化膜が用いられていることから導電性に劣るという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-147867号公報
【文献】国際公開第2006/129413号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、樹脂フィルムに対する密着性、導電性および機械的強度に優れた樹枝状ニッケル結晶粒子、当該樹枝状ニッケル結晶粒子の製造方法、ならびに当該樹枝状ニッケル結晶粒子を含有する導電性フィルム、導電膜および導電性ペーストを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(1) ニッケルからなる樹枝状ニッケル結晶粒子の製造方法であって、ニッケルイオンおよび錯化剤を含有し、電解液中でニッケルイオンを生成するニッケル化合物の濃度が5~35g/Lであり、錯化剤の濃度が10~50g/Lである電解液中に陽極および陰極を浸漬し、陽極と陰極との間に電流密度が5~100A/dm2である直流電流を通電し、陰極の表面で樹枝状ニッケル結晶粒子を析出させることを特徴とする樹枝状ニッケル結晶粒子の製造方法、および
(2) 錯化剤がクエン酸、グリシン、コハク酸、硫酸アンモニウムおよび塩化アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の錯化剤である前記(1)に記載の樹枝状ニッケル結晶粒子の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、樹脂フィルムに対する密着性、導電性および機械的強度に優れた樹枝状ニッケル結晶粒子およびその製造方法、ならびに当該樹枝状ニッケル結晶粒子を含有する導電性フィルム、導電膜および導電性ペーストが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図2】
図1に示された樹枝状ニッケル結晶粒子の走査型電子顕微鏡写真において、樹枝状ニッケル結晶粒子の中枝および微細小枝が図示された走査型電子顕微鏡写真である。
【
図3】(a)は実施例1で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子の中枝を構成している微細小枝の長さの測定結果を示す走査型電子顕微鏡写真、(b)は実施例1で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子の中枝を構成している微細小枝の幅の測定結果を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【
図4】比較例1で用いられた従来のデンドライト構造を有する銅粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図5】比較例3で得られたニッケル結晶粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子は、前記したように、複数の微細小枝が枝状に結合した形状を有する中枝を複数有し、当該中枝の側面または端部に当該中枝とは異なる他の中枝の端部が枝状に結合している結晶構造を有し、全体の長さが5~150μmであり、全体の幅が1~15μmである樹枝状ニッケル結晶粒子(以下、所定形状を有する樹枝状ニッケル結晶粒子という)である。本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子は、ニッケルの結晶が成長することによって形成されていることから、ニッケルの結晶で構成されている。
【0013】
本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子は、例えば、ニッケルイオンおよび錯化剤を含有する電解液中に陽極および陰極を浸漬し、陽極と陰極との間に電流密度が5~200A/dm2である直流電流を通電し、陰極の表面で樹枝状ニッケル結晶粒子を析出させることによって製造することができる。
【0014】
電解液は、前記したように、ニッケルイオンおよび錯化剤を含有する。電解液として水性電解液が用いられる。電解液の溶媒として、例えば、イオン交換水、純水、水道水などの水が挙げられるが、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒が含まれていてもよい。
【0015】
ニッケルイオンは、例えば、電解液中でニッケルイオンを生成するニッケル化合物を水中に溶解させることによって生成させることができる。前記ニッケル化合物としては、例えば、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、次亜リン酸ニッケルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのニッケル化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。ニッケル化合物のなかでは、所定形状を有する樹枝状ニッケル結晶粒子を効率よく製造する観点から、硫酸ニッケルおよび塩化ニッケルが好ましい。硫酸ニッケルとしては、例えば、硫酸ニッケル無水物、硫酸ニッケル六水和物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0016】
電解液における前記ニッケル化合物の濃度の下限値は、所定形状を有する樹枝状ニッケル結晶粒子を製造する観点から、5g/L(リットル)以上、好ましくは10g/L以上、より好ましくは15g/L以上である。また、電解液における前記ニッケル化合物の濃度の上限値は、所定形状を有する樹枝状ニッケル結晶粒子を製造する観点から、35g/L以下、好ましくは30g/L以下、より好ましくは25g/L以下である。したがって、電解液における前記ニッケル化合物の濃度は、所定形状を有する樹枝状ニッケル結晶粒子を製造する観点から、5~35g/L、好ましくは10~30g/L、より好ましくは10~25g/L、さらに好ましくは15~25g/Lである。
【0017】
錯化剤は、所定形状を有する樹枝状ニッケル結晶粒子を製造するために用いられる。錯化剤としては、例えば、クエン酸およびその塩、グリシン、コハク酸およびその塩、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、グルコン酸およびその塩、酒石酸およびその塩、ピロリン酸およびその塩、グリコール酸およびその塩、乳酸およびその塩、リンゴ酸およびその塩、マロン酸およびその塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの錯化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。錯化剤のなかでは、所定形状を有する樹枝状ニッケル結晶粒子を製造する観点から、クエン酸およびその塩、グリシン、コハク酸およびその塩、硫酸アンモニウムならびに塩化アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の錯化剤が好ましく、クエン酸、グリシン、コハク酸、硫酸アンモニウムおよび塩化アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の錯化剤がより好ましく、硫酸アンモニウム、グリシンおよび塩化アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の錯化剤がさらに好ましく、硫酸アンモニウムおよび/または塩化アンモニウムがさらに一層好ましい。前記塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの塩のなかでは、所定形状を有する樹枝状ニッケル結晶粒子を製造する観点から、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩およびカリウム塩がより好ましく、ナトリウム塩がさらに好ましい。
【0018】
電解液における錯化剤の濃度の下限値は、所定形状を有する樹枝状ニッケル結晶粒子を製造する観点から、好ましくは10g/L以上、より好ましくは15g/L以上、さらに好ましくは20g/L以上である。また、電解液における錯化剤の濃度の上限値は、所定形状を有する樹枝状ニッケル結晶粒子を製造する観点から、好ましくは60g/L以下、より好ましくは55g/L以下、さらに好ましくは50g/L以下である。したがって、電解液における錯化剤の濃度は、所定形状を有する樹枝状ニッケル結晶粒子を製造する観点から、好ましくは10~60g/L、より好ましくは15~55g/L、より一層好ましくは15~50g/L、さらに好ましくは20~45g/L、さらに一層好ましくは20~40g/Lである。
【0019】
めっき浴には、必要により、例えば、界面活性剤、還元剤などの添加剤が本発明の目的を阻害しない範囲内で含まれていてもよい。
【0020】
めっき浴のpHは、所定形状を有する樹枝状ニッケル結晶粒子を製造する観点から、3~8であることが好ましく、3.5~7.5であることがより好ましい。めっき浴のpHは、例えば、pH調整剤を用いて調整することができる。pH調整剤としては、例えば、塩酸、硫酸、酢酸、硝酸、リン酸などの酸性のpH調整剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エチレンジアミン、2-アミノエタノールなどの塩基性のpH調整剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0021】
電解液中に浸漬される陽極としては、例えば、ステンレス鋼、銅、ニッケル、コバルト、白金などの金属からなる金属板を用いることができる。また、電解液中に浸漬される陰極としては、例えば、ステンレス鋼、銅、ニッケル、コバルト、白金などの金属からなる金属板を用いることができる。電解液中に浸漬される陽極と陰極との電極間距離は、特に限定されないが、通常、5~30cm程度である。
【0022】
めっき浴の浴温は、所定形状を有する樹枝状ニッケル結晶粒子を効率よく製造する観点から、30~80℃程度であることが好ましい。
【0023】
めっき浴に浸漬された陽極と陰極との間に直流電流を通電する際、陽極と陰極との間の電流密度は、所定形状を有する樹枝状ニッケル結晶粒子を効率よく製造する観点から、5~200A/dm2、好ましくは10~100A/dm2、より好ましくは15~80A/dm2、さらに好ましくは20~50A/dm2である。前記電流密度を調整することにより、微細小枝および中枝の成長を制御することができる。なお、めっき浴に浸漬された陽極と陰極との間に直流電流を通電する際には、均一な樹枝状ニッケル結晶粒子を効率よく製造する観点から、例えば、撹拌子などで電解液を攪拌することが好ましい。
【0024】
以上のようにしてニッケルイオンおよび錯化剤を含有する電解液中に陽極および陰極を浸漬し、陽極と陰極との間に直流電流を通電することにより、陰極の表面で本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子を析出させることができる。陰極の表面で析出した樹枝状ニッケル結晶粒子は、陰極の表面で析出した樹枝状ニッケル結晶粒子をスクレーパーなどで剥離することによって回収することができる。回収された樹枝状ニッケル結晶粒子は、必要により、洗浄し、乾燥させ、所定の粒度分布を有するように分級してもよい。
【0025】
本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子は、前記方法によって容易に製造することができるものであり、前記したように、複数の微細小枝が枝状に結合した形状を有する中枝を複数有し、中枝の側面または端部に当該中枝とは異なる他の中枝の端部が枝状に結合している結晶構造を有する。
【0026】
本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子は、前記結晶構造を有することから、樹脂フィルムに対する密着性、導電性および機械的強度に優れている。
【0027】
前記樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、ポリウレタンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。樹脂フィルムの種類は、当該樹脂フィルムの用途に応じて適宜決定することが好ましい。
【0028】
以下に、本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子を図面に基づいて説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施態様のみに限定されるものではない。
【0029】
図1は、以下の実施例1で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子の一実施態様を示す走査型電子顕微鏡写真である。
図2は、
図1に示された樹枝状ニッケル結晶粒子の走査型電子顕微鏡写真において、樹枝状ニッケル結晶粒子の微細小枝1および中枝2が図示された走査型電子顕微鏡写真である。なお、各図の右下に記載されているスケールバーの長さは、いずれも各図に示されているように10μmである。
【0030】
図1および
図2に示されるように、本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子は、複数の微細小枝1が結合した形状の中枝2を複数本有する。また、本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子は、中枝2の側面または端部に当該中枝2とは異なる他の中枝2の端部が枝状に結合している結晶構造を有する。
【0031】
本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子の平面形状において、微細小枝1は、長さ20nm~2μmおよび幅20nm~1μmを有する。前記樹枝状ニッケル結晶粒子の平面形状は、当該樹枝状ニッケル結晶粒子の走査型電子顕微鏡写真の撮影画像を意味する。前記樹枝状ニッケル結晶粒子の走査型電子顕微鏡写真の撮影画像では、樹枝状ニッケル結晶粒子を立体的に観察することができないことから、撮影画像が平面形状として取り扱われている。
【0032】
微細小枝1の長さおよび幅、中枝2の長さおよび幅、ならびに樹枝状ニッケル結晶粒子の全体の長さおよび幅は、それぞれ、樹枝状ニッケル結晶粒子の走査型電子顕微鏡写真の撮影画像の任意の100視野において、500個の結晶粒子を観察し、各結晶粒子における最大長さおよび最大幅を測定し、当該500個の各結晶粒子における最大長さおよび最大幅の平均値である。
【0033】
微細小枝1は、通常、針状の微細小枝である。微細小枝1には、本発明の目的が阻害されない範囲内で前記長さまたは前記幅を有しない微細小枝が含まれていてもよい。
【0034】
本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子の平面形状において、複数の微細小枝1が枝状に結合した形状を有する中枝2は、長さ2~25μmおよび幅1~5μmを有する。中枝2には、本発明の目的が阻害されない範囲内で前記長さまたは幅を有しない中枝が含まれていてもよい。
【0035】
本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子の平面形状において、樹枝状ニッケル結晶粒子の全体の長さは5~150μmであり、全体の幅は1~15μmである。樹枝状ニッケル結晶粒子には、本発明の目的が阻害されない範囲内で前記長さまたは幅を有しない樹枝状ニッケル結晶粒子が含まれていてもよい。
【0036】
本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子は、
図1および
図2に示されるように、植物のスギなどの針葉樹の樹枝状の形状を有するニッケル結晶粒子である。
【0037】
なお、本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子を製造する際には、前記結晶構造を有しない樹枝状ニッケル結晶粒子が生成することがある。本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子に前記結晶構造を有しない樹枝状ニッケル結晶粒子が含まれている場合、当該樹枝状ニッケル結晶粒子全体の粒度分布は、樹脂フィルムに対する密着性、導電性および機械的強度を向上させる観点から、通常、2~150μm程度であることが好ましい。前記樹枝状ニッケル結晶粒子全体の粒度分布は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置〔日機装(株)製、商品名:マイクロトラックMT3000EXII〕を用いて測定したときの値である。
【0038】
以上説明したように、本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子は、前記した大きさおよび形状の結晶構造を有することから、樹脂フィルムに対する密着性、導電性および機械的強度に優れているので、例えば、導電性フィルム、導電膜、導電性ペーストなどに用いられる導電性フィラーなどとして好適に使用することができる。前記導電性フィラーは、本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子を含有するものであり、当該樹枝状ニッケル結晶粒子のみで構成されていてもよく、必要により当該樹枝状ニッケル結晶粒子以外の粒子などを含有していてもよい。
【0039】
本発明の導電性フィルムは、樹枝状ニッケル結晶粒子を含有することを特徴とする。導電性フィルムに用いられる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、ポリウレタンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0040】
本発明の導電性フィルムは、例えば、導電性フィルムの原料として用いられる樹脂に樹枝状ニッケル結晶粒子を溶融混練し、得られた溶融混練物をフィルム化させる方法、樹枝状ニッケル結晶粒子を押圧によって樹脂フィルムに埋め込む方法、樹枝状ニッケル結晶粒子を含有するバインダーを樹脂フィルムの表面に塗布し、バインダー層を当該樹脂フィルムの表面上で形成させる方法、樹脂フィルムの表面にバインダーを塗布し、形成されたバインダー層を介して樹枝状ニッケル結晶粒子を当該樹脂フィルムに付着させる方法などによって製造することができるが、本発明は、これらの方法のみに限定されるものではない。バインダーに使用される樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0041】
導電性フィルムにおける樹枝状ニッケル結晶粒子の含有率は、当該導電性フィルムの製造方法およびその用途などによって異なるので一概には決定することができないことから、当該導電性フィルムの製造方法およびその用途などに応じて適宜決定されるが、通常、5~80質量%程度である。
【0042】
本発明の導電膜は、樹枝状ニッケル結晶粒子を含有することを特徴とする。本発明の導電膜に使用される樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、ポリウレタンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0043】
本発明の導電膜は、例えば、導電膜の原料として用いられる樹脂に樹枝状ニッケル結晶粒子を溶融混練し、得られた溶融混練物をフィルム化させる方法、樹脂を溶媒に溶解させた樹脂溶液に樹枝状ニッケル結晶粒子を分散させ、得られた分散体をフィルム化させる方法などによって製造することができるが、本発明は、これらの方法のみに限定されるものではない。
【0044】
導電膜における樹枝状ニッケル結晶粒子の含有率は、当該導電膜の用途などによって異なるので一概には決定することができないことから、当該導電膜の用途などに応じて適宜決定されるが、通常、5~80質量%程度である。
【0045】
本発明の導電性ペーストは、樹枝状ニッケル結晶粒子を含有することを特徴とする。本発明の導電膜は、導電性ペーストの原料として用いられるペーストに本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子を分散させたものである。ペーストに使用される樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン、セルロースなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0046】
本発明の導電性ペーストは、例えば、樹脂に樹枝状ニッケル結晶粒子を溶融混練する方法、樹脂を溶媒に溶解させた樹脂溶液に樹枝状ニッケル結晶粒子を分散させる方法などによって製造することができるが、本発明は、これらの方法のみに限定されるものではない。
【0047】
導電性ペーストにおける樹枝状ニッケル結晶粒子の含有率は、当該導電性ペーストの用途などによって異なるので一概には決定することができないことから、当該導電性ペーストの用途などに応じて適宜決定されるが、通常、5~80質量%程度である。
【0048】
以上のようにして得られる導電性フィルム、導電膜および導電性ペーストは、いずれも、本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子が用いられていることから、種々の樹脂フィルムに対する密着性、導電性および機械的強度に優れている。
【実施例】
【0049】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
実施例1
陽極板としてニッケル板(縦:130mm、横:80mm、厚さ:2mm)、陰極板としてステンレス鋼板(材質:SUS304、縦:100mm、横:67mm、厚さ:0.3mm)を用いた。電解液として硫酸ニッケルをイオン交換水に溶解させた溶液を用い、硫酸ニッケルの濃度が20g/Lに調整され、硫酸アンモニウムの濃度が30g/Lに調整され、pHが7に調整された電解液を用いた。
【0051】
電解槽(1L容のビーカー)に電解液1Lを入れ、当該電解液に陽極板および陰極板を浸漬し、陽極板と陰極板との電極間距離を5cmに調節した。電解液の液温を50℃に調節し、電流密度30A/dm2にて直流電流を10分間通電することにより、陰極の表面に樹枝状ニッケル結晶粒子を析出させた。陰極の表面で析出した樹枝状ニッケル結晶粒子をスクレーパーで削ぎ落して回収し、水洗した後、熱風乾燥機中で70℃にて乾燥させた。
【0052】
前記で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子の走査型電子顕微鏡写真を
図1に示す。
図1に示された樹枝状ニッケル結晶粒子の走査型電子顕微鏡写真において、樹枝状ニッケル結晶粒子の微細小枝および中枝が図示された走査型電子顕微鏡写真を
図2に示す。
【0053】
また、前記で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子の中枝の走査型電子顕微鏡写真を
図3に示す。
図3において、(a)は、前記で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子の中枝を構成している微細小枝の長さの測定結果を示す走査型電子顕微鏡写真、(b)は、前記で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子の中枝を構成している微細小枝の幅の測定結果を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【0054】
図1に示された樹枝状ニッケル結晶粒子から、樹枝状ニッケル結晶粒子の中枝の長さ(最大長さ)は2~18μmであり、当該樹枝状ニッケル結晶粒子の中枝の幅(最大幅)は1~5μmであること、および樹枝状ニッケル結晶粒子全体の長さ(最大長さ)は6~35μmであり、当該樹枝状ニッケル結晶粒子全体の幅(最大幅)は3.5~15μmであることが確認された。また、得られた樹枝状ニッケル結晶粒子全体の粒度分布は、2~150μmの範囲内にあることが確認された。
【0055】
また、
図3に示された結果から、前記で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子の中枝を構成している微細小枝の長さ(最大長さ)は136~1363nmの範囲内にあり、当該微細小枝の幅(最大幅)は136~807nmの範囲内にあることが確認された。
【0056】
実施例2
陽極板としてニッケル板(縦:130mm、横:80mm、厚さ:2mm)、陰極板としてステンレス鋼板(材質:SUS304、縦:100mm、横:67mm、厚さ:0.3mm)を用いた。電解液として硫酸ニッケル六水和物をイオン交換水に溶解させた溶液を用い、硫酸ニッケルの濃度が20g/Lに調整され、グリシンの濃度が50g/Lに調整され、pHが4に調整された電解液を用いた。
【0057】
電解槽(1L容のビーカー)に電解液1Lを入れ、当該電解液に陽極板および陰極板を浸漬し、陽極板と陰極板との電極間距離を5cmに調節した。電解液の液温を50℃に調節し、電流密度25A/dm2にて直流電流を10分間通電することにより、陰極の表面に樹枝状ニッケル結晶粒子を析出させた。陰極の表面で析出した樹枝状ニッケル結晶粒子をスクレーパーで削ぎ落して回収し、水洗した後、熱風乾燥機で70℃にて乾燥させた。
【0058】
前記で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子は、実施例1で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子と同様の結晶構造を有することが確認された。
【0059】
実施例3
陽極板としてニッケル板(縦:130mm、横:80mm、厚さ:2mm)、陰極板としてステンレス鋼板(材質:SUS304、縦:100mm、横:67mm、厚さ:0.3mm)を用いた。電解液として硫酸ニッケルをイオン交換水に溶解させた溶液を用い、硫酸ニッケルの濃度が10g/Lに調整され、コハク酸の濃度が20g/Lに調整され、pHが7に調整された電解液を用いた。
【0060】
電解槽(1L容のビーカー)に電解液1Lを入れ、当該電解液に陽極板および陰極板を浸漬し、陽極板と陰極板との電極間距離を5cmに調節した。電解液の液温を50℃に調節し、電流密度35A/dm2にて直流電流を10分間通電することにより、陰極の表面に樹枝状ニッケル結晶粒子を析出させた。陰極の表面で析出した樹枝状ニッケル結晶粒子をスクレーパーで削ぎ落して回収し、水洗した後、熱風乾燥機で70℃にて乾燥させた。
【0061】
前記で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子は、実施例1で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子と同様の結晶構造を有することが確認された。
【0062】
実施例4
陽極板としてニッケル板(縦:130mm、横:80mm、厚さ:2mm)、陰極板としてステンレス鋼板(材質:SUS304、縦:100mm、横:67mm、厚さ:0.3mm)を用いた。電解液として硫酸ニッケル六水和物をイオン交換水に溶解させた溶液を用い、硫酸ニッケルの濃度が20g/Lに調整され、硫酸アンモニウムの濃度が55g/Lに調整され、pHが4に調整された電解液を用いた。
【0063】
電解槽(1L容のビーカー)に電解液1Lを入れ、当該電解液に陽極板および陰極板を浸漬し、陽極板と陰極板との電極間距離を5cmに調節した。電解液の液温を50℃に調節し、電流密度20A/dm2にて直流電流を10分間通電することにより、陰極の表面に樹枝状ニッケル結晶粒子を析出させた。陰極の表面で析出した樹枝状ニッケル結晶粒子をスクレーパーで削ぎ落して回収し、水洗した後、熱風乾燥機で70℃にて乾燥させた。
【0064】
前記で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子は、実施例1で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子と同様の結晶構造を有することが確認された。
【0065】
実施例5
陽極板としてニッケル板(縦:130mm、横:80mm、厚さ:2mm)、陰極板としてステンレス鋼板(材質:SUS304、縦:100mm、横:67mm、厚さ:0.3mm)を用いた。電解液として塩化ニッケルをイオン交換水に溶解させた溶液を用い、塩化ニッケルの濃度が15g/Lに調整され、塩化アンモニウムの濃度が35g/Lに調整され、pHが7に調整された電解液を用いた。
【0066】
電解槽(1L容のビーカー)に電解液1Lを入れ、当該電解液に陽極板および陰極板を浸漬し、陽極板と陰極板との電極間距離を5cmに調節した。電解液の液温を50℃に調節し、電流密度30A/dm2にて直流電流を10分間通電することにより、陰極の表面に樹枝状ニッケル結晶粒子を析出させた。陰極の表面で析出した樹枝状ニッケル結晶粒子をスクレーパーで削ぎ落して回収し、水洗した後、熱風乾燥機で70℃にて乾燥させた。
【0067】
前記で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子は、実施例1で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子と同様の結晶構造を有することが確認された。
【0068】
比較例1
従来の導電性材料としてデンドライト構造を有する銅粒子を用いた。当該銅粒子の走査型電子顕微鏡写真を
図4に示す。
【0069】
比較例2
陽極板としてニッケル板(縦:130mm、横:80mm、厚さ:2mm)、陰極板としてステンレス鋼板(材質:SUS304、縦:100mm、横:67mm、厚さ:0.3mm)を用いた。電解液として硫酸ニッケル六水和物をイオン交換水に溶解させた溶液を用い、硫酸ニッケルの濃度が20g/Lに調整され、クエン酸の濃度が50g/Lに調整され、pHが5に調整された電解液を用いた。
【0070】
電解槽(1L容のビーカー)に電解液1Lを入れ、当該電解液に陽極板および陰極板を浸漬し、陽極板と陰極板との電極間距離を5cmに調節した。電解液の液温を50℃に調節し、電流密度1A/dm2にて直流電流を10分間通電することにより、陰極の表面に樹枝状ニッケル結晶粒子を析出させようとしたが、陰極の表面に樹枝状ニッケル結晶粒子を生成させることができなかった。
【0071】
比較例3
陽極板としてニッケル板(縦:130mm、横:80mm、厚さ:2mm)、陰極板としてステンレス鋼板(材質:SUS304、縦:100mm、横:67mm、厚さ:0.3mm)を用いた。電解液として硫酸ニッケル六水和物をイオン交換水に溶解させた溶液を用い、硫酸ニッケルの濃度が40g/Lに調整され、グリシンの濃度が50g/Lに調整され、pHが4に調整された電解液を用いた。
【0072】
電解槽(1L容のビーカー)に電解液1Lを入れ、当該電解液に陽極板および陰極板を浸漬し、陽極板と陰極板との電極間距離を5cmに調節した。電解液の液温を50℃に調節し、電流密度30A/dm2にて直流電流を10分間通電することにより、陰極の表面にニッケル結晶粒子を析出させた。陰極の表面で析出したデンドライト構造を有するニッケル結晶粒子をスクレーパーで削ぎ落して回収し、水洗した後、熱風乾燥機で70℃にて乾燥させた。
【0073】
前記で得られたデンドライト構造を有するニッケル結晶粒子の走査型電子顕微鏡写真を
図5に示す。
図5に示されるように、デンドライト構造を有するニッケル結晶粒子は、複数の微細なニッケル球状粒子が結合した構造を有することがわかる。
【0074】
次に、各実施例で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子、比較例1で用いられたデンドライト構造を有する銅粒子および比較例3で得られたデンドライト構造を有するニッケル結晶粒子の物性として、密着性、導電性および機械的強度を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
【0075】
〔密着性〕
100mL容のビーカー内に、樹枝状ニッケル結晶粒子50g、銅粒子50gまたはニッケル結晶粒子50gと酢酸ビニル70質量%を含有するトルエン溶液50gとを室温下で均一な組成となるように混合することにより、塗工液を得た。
【0076】
前記で得られた塗工液をポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート)製フィルムA(幅:1cm、長さ:10cm、厚さ:0.3mm)に塗膜の厚さが100μmとなるように塗工することにより、塗膜が形成された塗工フィルムを得た。前記で得られた塗工フィルムを80℃の熱風乾燥機内に入れ、2時間乾燥させた。
【0077】
次に、前記で得られた塗工フィルムの塗膜が形成されている面にポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート)製フィルムB(幅:1cm、長さ:10cm、厚さ:0.3mm)の載せ、得られた積層体をラミネーター〔テージー(株)製、品番:TEJI LF-100〕で圧着温度135℃にて圧着させることにより、試験片を作製した。
【0078】
前記で得られた試験片の短辺でフィルムAとフィルムBとを長さ1cmにわたて剥離し、フィルムAの剥離部とフィルムBの剥離部とをそれぞれチャックで固定し、引張試験機〔(株)島津製作所製、商品名:オートグラフAGS-100NH〕にて引っ張り速度30mm/minでフィルムAとフィルムBとを引き剥がし、そのときの応力を密着性の指標として以下の評価基準に基づいて密着性を評価した。
【0079】
(評価基準)
EX:フィルムAとフィルムBとを引き剥がすときの応力が2.5N以上
A:フィルムAとフィルムBとを引き剥がすときの応力が2.0N以上2.5N未満
B:フィルムAとフィルムBとを引き剥がすときの応力が1.5N以上2.0N未満
C:フィルムAとフィルムBとを引き剥がすときの応力が1.0N以上1.5N未満
D:フィルムAとフィルムBとを引き剥がすときの応力が0.5N以上1.0N未満
F:フィルムAとフィルムBとを引き剥がすときの応力が0.5N未満(不合格)
【0080】
〔導電性〕
樹枝状ニッケル結晶粒子を円筒形セル(内径:20mm、深さ:60mm)に詰め、20kNの圧力で加圧することにより、ペレットを作製した。前記で得られたペレットの上面と下面との間の電気抵抗を抵抗測定器〔(株)三菱化学アナリテック製、粉体抵抗測定システムMCP-PD51型〕で測定し、以下の評価基準に基づいて導電性を評価した。
【0081】
(評価基準)
○:電気抵抗が2×10-4Ω未満
△:電気抵抗が2×10-4Ω以上、5×10-4Ω未満
×:電気抵抗が5×10-4Ω以上(不合格)
【0082】
〔機械的強度〕
樹枝状ニッケル結晶粒子(金属粒子)を円筒形セル(内径:20mm、深さ:60mm)に詰め、20kNの圧力で加圧することにより、ペレットを作製した。前記で得られたペレットに含まれている樹枝状ニッケル結晶粒子の加圧前後の形状を電子顕微鏡で観察し、機械的強度を以下の評価基準に基づいて評価した。
【0083】
(評価基準)
○:加圧前後の結晶粒子の形状に変形が認められない。
×:加圧前後の結晶粒子の形状に変形が認められる(不合格)。
【0084】
【0085】
表1に示された結果から、各実施例で得られた樹枝状ニッケル結晶粒子は、いずれも、比較例1で用いられた銅粒子および比較例3で得られたデンドライト構造を有するニッケル結晶粒子と対比して、密着性、導電性および機械的強度に総合的に優れていることがわかる。
【0086】
以上の結果から、本発明の樹枝状ニッケル結晶粒子は、樹脂フィルムに対する密着性、導電性および械的強度に優れていることから、例えば、導電性フィルム、導電膜、導電性ペーストなどに導電性フィラーなどとして好適に使用することができるものであることがわかる。
【符号の説明】
【0087】
1 微細小枝
2 中枝