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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】超音波走査装置及びその使用と方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/28 20060101AFI20220104BHJP
   G01N 29/27 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
G01N29/28
G01N29/27
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020549863
(86)(22)【出願日】2019-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 CN2019086826
(87)【国際公開番号】W WO2020052252
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】201811075406.0
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520197516
【氏名又は名称】ジァンスー ジトリ-ハスト インテリジェント エクイップメント テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU JITRI-HUST INTELLIGENT EQUIPMENT TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 216, No.2 Qingyan Road,Huishan District Wuxi, Jiangsu 214174 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェン ユェ
(72)【発明者】
【氏名】ドン ヂェア
(72)【発明者】
【氏名】ファン ユンフェイ
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-296982(JP,A)
【文献】特開2018-054553(JP,A)
【文献】特開平06-050944(JP,A)
【文献】特開昭53-083672(JP,A)
【文献】特開2012-242388(JP,A)
【文献】特開平07-020103(JP,A)
【文献】特開平06-102261(JP,A)
【文献】特開昭55-125450(JP,A)
【文献】米国特許第03986390(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0068312(US,A1)
【文献】特表2014-509748(JP,A)
【文献】特開平04-058151(JP,A)
【文献】米国特許第03205702(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0254470(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00 - B22D 11/22
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01V 1/00 - G01V 99/00
G11B 19/20 - G11B 19/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一組の円柱状ローラを含み、各組の円柱状ローラの軸心が互いに平行であり、各円柱状ローラ内に超音波を伝搬するための液体が収容され、
作動する際に、一組の円柱状ローラが、それぞれの軸心を中心に互いに逆方向に回転し、測定対象物が超音波測定を受けるように一組の円柱状ローラ間を通過し、
測定対象物が通過するとき、円柱状ローラ自体または測定対象物が弾性変形することで、測定対象物と一組の円柱状ローラを常に安定して良好に面接触させることにより、確実に高効率の超音波伝搬を行い、
少なくとも一組の超音波トランスデューサをさらに含み、一組の円柱状ローラに少なくとも一組の超音波トランスデューサが配置され、一組の超音波トランスデューサにおける2つのトランスデューサが、それぞれ一組のローラ内の2つのローラに対応して設けられ、
前記超音波トランスデューサは、超音波を発信または受信する機能を備え、
一組の円柱状ローラ間の隙間の大きさが一定であり、
測定する際に、一組または複数組の超音波トランスデューサが、ローラの軸心方向に沿って繰り返し往復直線運動を行い、測定対象物は、隙間を通過するとき、2つのローラ筒壁と同時に接触し、一組のローラのうちの一つが動力装置を有し、動力装置の駆動を介して設定した角速度で回転することができ、また、もう一つのローラが動力装置を有さず、作動する際、摩擦力の作用により従動回転し、
一組の円柱状ローラの軸心方向が水平面と15°~90°の角度をなし、ローラが開口容器であることを特徴とする超音波走査装置。
【請求項2】
音波トランスデューサは、平板超音波トランスデューサまたは集束超音波トランスデューサであることを特徴とする請求項1に記載の超音波走査装置。
【請求項3】
一組の超音波トランスデューサは、対向して配置され、且つ超音波トランスデューサの全ての超音波信号発信の中心点と全ての超音波信号受信の中心点との接続線は、2つのローラの軸心と同一平面上にあることを特徴とする請求項2に記載の超音波走査装置。
【請求項4】
ローラの外壁表面が高分子材料を有し、前記高分子材料がシリコーンゴムであることを特徴とすること請求項に記載の超音波走査装置。
【請求項5】
高分子材料に液体が封入されていることを特徴とする請求項4に記載の超音波走査装置。
【請求項6】
一組の円柱状ローラにおける2つのローラが位置する高さは等しく、円柱状ローラの軸心と水平面とは、垂直であり、さらに、測定対象物を載置するための1つの水平コンベアを含み、水平コンベアが、一組の円柱状ローラの下方に配置されていることを特徴とする請求項に記載の超音波走査装置。
【請求項7】
円柱状ローラの軸心は、水平面との間に15°~40°の角度をなし、
一組の円柱状ローラの2本のローラ軸心を含む平面と水平面との交線と、円柱状ローラの軸心とが互いに垂直であり、
測定する際に、測定対象物は、一組の円柱状ローラの上方から隙間に入り、ローラの回転により、自然に隙間を通過し、一組のローラの下方に落下することを特徴とする請求項に記載の超音波走査装置。
【請求項8】
円柱状ローラの軸心が水平面との間に15°~80°の角度をなし、且つ、一組の円柱状ローラの2本のローラの軸心を含む平面は、水平面に対して垂直となることを特徴とする請求項に記載の超音波走査装置。
【請求項9】
リチウムイオン電池内部の欠陥及び健康状態を検出することに用いられる請求項1~8のいずれかの一項に記載の超音波走査装置のリチウムイオン電池の検出のための使用。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかの一項に記載の超音波走査装置を用いて超音波画像を取得する方法であって、
一組のローラの軸心を含む平面の法線方向をx、ローラの回転角速度をω1、作動過程におけるローラの軸心と測定対象物との間の最小距離をR、走査時間をtと定義したときに、超音波トランスデューサの組の測定対象物に対するx方向への変位Xが、X=ω1Rtであり、
ローラ軸心に平行な方向をy、超音波トランスデューサの組がy方向に周波数pで往復運動すると定義したときに、その変位Yとtの関係がY=f(t)であり、
超音波トランスデューサの組が時刻tに測定した信号強度をSとすると、確定した時刻t、X、Y、Sのいずれも既知量であるため、SとX、Yとの関係が確立されるので、Sを疑似カラーとし、SとX、Yとの関係に基づいて、測定対象物の位置ごとの超音波伝搬特性を反映した、測定対象物の超音波画像として図を作成することを特徴とする超音波画像を取得する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波検出分野に属し、具体的には、超音波走査装置及びその使用と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は、20kHzより高い周波数を有する音波であり、指向性が良好であり、透過能力に優れ、集中的な音響エネルギーを得やすい。液体と固体において遠くまで伝搬するため、非破壊検出分野に用いることができ、測定対象物における気泡、密度変動及び亀裂などを検出することができる。しかしながら、超音波は空気中での伝搬能力が悪く、特に0.5MHz以上の周波数を有する超音波は、空気中での減衰が非常に深刻であり、空気結合を通じて必要な超音波情報を取得することが困難である。そこで、超音波の伝搬を促進するため、超音波トランスデューサ及び測定対象物の間に液体結合剤を充填する必要がある。
【0003】
実際の応用において、高品質の高周波超音波走査結果を得るには、測定対象物が、水又はその他の液体媒質に浸漬される必要があり、汚染を招くことがある。特別な応用の場合において、測定対象物(例えば、リチウムイオン電池)は、液体汚染を許容しない。
【0004】
液体に加え、超音波は固体中における減衰も小さいため、超音波トランスデューサと測定対象物との間に固体媒質を充填することも可能な選択肢である。しかしながら、固体媒質は、流動性を有さないため、超音波トランスデューサ及び測定対象物の相対位置が固定されており、超音波トランスデューサが測定対象物の機械的な走査を実現することが困難であるという問題がある。また、超音波トランスデューサが一つの測定対象物の表面から取り外され、他の測定対象物を測定する際、硬質固体媒質が不可逆的に破壊されるため、複数の測定対象物を連続的に走査する能力を有さない。
【0005】
したがって、液体と測定対象物との直接接触を避け、及び硬質固体媒質と硬質測定対象物との直接接触を避ける新規な超音波結合方法または装置を開発する必要があり、その使用の利便性、繰り返し使用できること、低いコストが要求されている。
【発明の概要】
【0006】
従来技術の上記欠点または改善のニーズに鑑み、本発明は、固体及び液体の組み合わせ超音波伝搬媒質を採用し、トランスデューサを液体が充填されたローラに配置され、ローラの外壁を測定対象物と接触させ、ローラの回転によってトランスデューサと測定対象物とを相対移動させることにより、超音波の機械的な走査を実現することを目的とする超音波走査装置及びその使用と方法を提供する。本発明の装置は、構造が簡単で、使用が便利で、コストが安く、設計が巧みであり、実際のリチウムイオン電池の検出のために使用する効果が高い。
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の一つの形態によれば、少なくとも一組の円柱状ローラを備える超音波走査装置を提供し、各組の円柱状ローラの軸心が互いに平行であり、各円柱状ローラにおいて、いずれも超音波を送信するための液体が配置されており、作動する際に、一組の円柱状ローラがそれぞれの軸心を中心に互いに逆方向に回転する。測定対象物は一組の円柱状ローラの間に通過する際に測定を受け、測定対象物が通過するとき、円柱状ローラ自体または測定対象物が弾性変形し、測定対象物と一組の円柱状ローラが常時良好に接触することで、超音波を高い効率で確実に伝搬させる。
【0008】
更に、少なくとも一組の超音波トランスデューサを含み、一組の円柱状ローラに少なくとも一組の超音波トランスデューサが配置され、一組の超音波トランスデューサにおける2つのトランスデューサが、それぞれ一組のローラ内の2つのローラに対応して設けられ、前記超音波トランスデューサは、超音波を発信または受信する機能を備える。超音波トランスデューサは、好ましくは、平板超音波トランスデューサまたは集束超音波トランスデューサであり、ここで、平板超音波トランスデューサは、直進伝搬超音波を発信または受信することができ、集束超音波トランスデューサから放出された超音波は焦点区域に収束される。好ましくは、一組の超音波トランスデューサは、対向して配置され、且つ超音波トランスデューサの全ての超音波信号発信の中心点と全ての超音波信号受信の中心点との接続線は、2つのローラの軸心と同一平面上にあり、2つのローラの軸心に対して垂直となる。この設計の目的は、超音波がそのうちの一つのトランスデューサから発信され、2つのローラと測定対象物を通過し、もう一つのトランスデューサに到達し、全行程において空気を通過しないことにより、精確な測定対象物の局所的な超音波透過信号を得ることである。
【0009】
トランスデューサの全ての発信または受信の中心点の位置はいずれも2つのローラの軸心と同一平面上にある。トランスデューサの軸心方向に沿って往復運動する距離は、超音波トランスデューサのピッチより大きい。
【0010】
さらに、一組の円柱状ローラ間の隙間の大きさが一定であり、測定する際に、超音波トランスデューサが測定対象物のローラ軸心方向の機械的な走査を行うことを実現するため、一組または複数組の超音波トランスデューサが、ローラの軸心方向に沿って繰り返し往復直線運動を行い、測定対象物は、隙間を通過するとき、2つのローラ筒壁と同時に接触し、一組のローラのうちの一つが動力装置を有し、動力装置の駆動を介して設定した角速度で回転することができ、また、もう一つのローラが動力装置を有さず、作動する際に、摩擦力の作用により従動回転する。
【0011】
上記は、2つのローラ軸心を含む平面の法線方向(X方向と定義される)において、超音波トランスデューサの組が測定対象物に対する機械的な走査を行うことを実現するための設計である。ここに記載された隙間は必須ではなく、測定対象が非常に薄く、且つローラの筒壁が十分に柔らかい場合、初期状態で2つのローラ外壁を直接接触させ、作動する際に測定対象物が筒壁の変形を伴って、2つのローラ間に押し込まれ、2つのローラ間を通過してもよい。
【0012】
さらに、一組の円柱状ローラの軸心方向が水平面と15°~90°の角度をなし、ローラが開口容器である。
【0013】
さらに、ローラの外壁表面が高分子材料を有し、前記高分子材料がシリコーンゴムであることが好ましい。これにより、剛性の測定対象物が2つのローラ間の隙間を通過する過程において、2つのローラの両方ともに良好な接触することが保証できる。好ましくは、高分子材料に液体が封入されている。このような設計により、軟質高分子を単独で使用する構造より柔軟性が高く、剛性の測定対象物が2つのローラの間を通過する過程において、2つのローラの両方ともに良好な接触することが保証できる。
【0014】
さらに、ローラの方向及び相対位置は、以下の3つの設計を有してもよい。
【0015】
<一>2つのローラの高さは等しく、軸心方向は水平面に対して垂直であり、一つの水平コンベアを含み、水平コンベアに測定対象の矩形物品が載置され、コンベアが、2つのローラ間の下方に配置され、作動する際に、測定対象物が2つのローラ間の隙間を通過するように、測定対象物を担持する。このような装置は、本発明において「縦筒式超音波走査装置」と呼ばれ、コンベアに垂直に載置可能な物品に対して超音波走査を行うことに適している(例えば、矩形アルミケースリチウムイオン電池の走査)。
【0016】
<二>ローラの軸心方向と水平面とが15-40°の角度をなし、2つのローラの軸心を含む平面と水平面との間の角度は、ローラの軸心と水平面とがなす角度に等しい。2つのローラの軸心を含む平面と水平面の交線は、2つのローラの軸心に対して垂直である。このような装置は、本明細書の後段に「フラット配列斜筒式超音波走査装置」と呼ばれ、測定対象物は、2つのローラの上方から、ローラの隙間に入り、ローラの回転により、隙間を通過し、2つのローラの下方に落下する。
【0017】
<三>2つのローラの底部中心の高さは等しくなく、軸心方向は、水平面とは15-80°の角度をなしている。2つのローラの軸心を含む平面と水平面とは垂直になる。このような装置は、本明細書の後段に「縦配列斜筒式超音波走査装置」と呼ばれ、測定対象物は、傾斜したコンベア上に載置され、ローラの隙間に送り込まれ、ローラの回転により、隙間を通過し、他の傾斜したコンベアに落下する。
【0018】
斜筒式超音波走査装置(フラット配列斜筒式超音波走査装置と縦配列斜筒式超音波走査装置を含む)は、厚さが薄く、垂直に載置できない測定対象物(例えば、ソフトパックリチウムイオン電池の走査)に対する超音波走査を行うことに適している。
【0019】
さらに、前記ローラの直径が100mmより大きいことにより、ローラの外表面の十分に大きな曲率半径を確保でき、軟質高分子層が、径方向に若干圧縮されることで、測定対象物のより大きな面積のシームレスな接触を実現することができる。
【0020】
さらに、前記2つのローラの軸心方向が、水平面と15~90°の角度をなすことで、ローラの上端が密封されなくても、ローラ内の液体が流出しないことを保証できる。超音波トランスデューサ支持具のローラへの挿入を容易にし、且つローラに対して移動させるため、ローラの上端は密封されない。
【0021】
本発明の第2の形態によれば、前記超音波走査装置は、リチウムイオン電池の検出のための使用を提供し、リチウムイオン電池の状態を検出するために用いられる。
【0022】
本発明の第3の形態によれば、前記装置を用いた超音波画像を得る方法は、具体的に以下の通りである。
【0023】
一組のローラの軸心を含む平面の法線方向をx、ローラの回転角速度をω、作動過程におけるローラの軸心と測定対象物との間の最小距離をR、走査時間をtと定義したときに、超音波トランスデューサの組の測定対象物に対するx方向への変位Xが、X=ωであり、
【0024】
ローラ軸心に平行な方向をy、超音波トランスデューサの組がy方向に周波数pで往復運動すると定義したときに、その変位Yとtの関係がY=f(t)であり、
【0025】
超音波トランスデューサの組が時刻tに測定した信号強度をSとすると、確定した時刻t、X、Y、Sのいずれも既知量であるため、SとX、Yとの関係が確立されるので、Sを疑似カラーとし、SとX、Yとの関係に基づいて、測定対象物の位置ごとの超音波伝搬特性を反映した、測定対象物の超音波画像として図を作成する。
【0026】
一般には、本発明が想到した上記技術的解決手段と従来技術に比べると、以下の有益な効果を奏することができる。
【0027】
本発明装置において、固体及び液体の組み合わせ超音波伝搬媒質を採用し、トランスデューサを液体が充填されたローラに配置し、ローラの外壁を測定対象と接触させ、ローラの回転によってトランスデューサと測定対象物とを相対移動させることにより、超音波の機械的な走査を実現する。本発明の装置は、構造が簡単で、使用が便利で、コストが安く、設計が巧みであり、走査速度が速く、実際のリチウムイオン電池の検出のための使用の効果が高い。
【0028】
本発明の方法によると、リチウムイオン電池の測定において、高精度且つ迅速な超音波走査分析を実現し、測定対象物の超音波透過特性および反射特性の分布図を得ることができる。超音波強度、超音波飛行時間等の物理量を精確に分析しているので、空気結合技術に比べると、信号対雑音比がはるかに良好となる。また、液体媒質により電池を汚染する問題は存在せず、電池内部の電解液の分布状況及び電極の製造欠陥を明らかに観察することができ、リチウムイオン電池製品の均一性を向上させ、不良な電池を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施例における縦筒式超音波走査装置の上面断面図である。
図2】本発明の実施例における縦筒式超音波走査装置の断面図である。
図3】本発明の実施例における縦筒式超音波走査装置及びコンベアの概略構成図である。
図4】本発明の実施例における超音波トランスデューサ支持具及び超音波トランスデューサ支持具を駆動させるクランクロッドの概略構成図である。
図5】本発明の実施例における水平配列斜筒式超音波走査装置の概略図である。
図6】本発明の実施例における上下配列斜筒式超音波走査装置の断面概略図である。
図7】本発明の実施例における傾斜したコンベアに置かれている測定対象物の概略図である。
図8】本発明の実施例における筒壁が高分子密封液体構成を有する円筒の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の目的、技術方案及び利点をより明瞭にするために、以下、図面及び実施例と結びつけて、本発明に対して更に詳しく説明する。説明する具体的な実施形態が本発明を解釈するためだけであり、本発明を限定するものではないことは、理解されたい。また、以下で説明する本発明の各実施例における技術的特徴について、互いに矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。
【0031】
図1は、本発明実施例における縦筒式超音波走査装置の上面断面図であり、図から分かるように、一組の円柱状ローラを含む。各組の円柱状ローラの軸心は互いに平行である。円柱状ローラは開口しており、その中には、いずれも超音波の伝搬に用いられる液体媒質4を含む。液体媒質には超音波トランスデューサ3が浸漬されている。ローラ内壁1及びローラ外壁2は互いに異なる材料で製作されている。2つのローラ間の隙間には、測定対象物5が配置される。
【0032】
以下、さらに図面及び実施例と併せて本発明の装置及び方法について詳細に説明する。
【0033】
<実施例1>
矩形電池内部の欠陥を検出するための縦筒式超音波走査装置
【0034】
矩形アルミニウムケースリチウムイオン電池は、現在、パワーバッテリー市場に一般的に使用されている電池であり、その外観は、矩形であり、内部は巻き取りまたは積層した多層電極材料と、隔膜と、集電体とを含み、電解液により浸漬されていた。超音波を使用することで、内部における電極の欠陥や、電解液の注液分布や、内部気体等を検出することができ、電池品質を保証することに対して意義は大きい。本実施例において、サイズが150mmx100mmx30mmである矩形アルミニウムケースリチウムイオン電池を測定対象物とした。
【0035】
ローラ内壁は、有機ガラスで製作され、外径が200mmであり、壁の厚さが3mmであり、底部が密封され、上端が開放され、軸心方向は水平面と垂直になり、ローラ外壁として、一層の厚さが10mmのシリコーンゴムがセットされていた。有機ガラス内壁のほとんどの垂直表面が、シリコーンゴム外壁により被覆されており、頂端から20mmの区域のみシリコーンゴムに被覆されておらず、当該エリアは、補助ホイールと直接に接触することにより、ローラの位置を保証することができた。ローラの間に29mmの隙間があり、厚さ30mmの矩形電池がローラの回転に連れられて当該隙間を通過することができ、通過過程において、シリコーンゴムローラの外壁が押圧されてわずかに変形し、各側のシリコーンゴム層が最大で0.5mm圧縮され、電池とのシームレスな接触が実現された。シリコーンゴム層の変形を考慮すれば、作動過程において、ローラの軸心と測定対象物との最小距離R=109.5mmであった。
【0036】
超音波トランスデューサとしては、エネルギー変換シートの直径が6mmである平板超音波トランスデューサを採用した。合計で5組の超音波トランスデューサが、図2に示す超音波トランスデューサ支持具7の2つのアームに取り付けられた。図から分かるように、トランスデューサ支持具7には、5組の超音波トランスデューサが取り付けられており、測定対象物5は、コンベア6に載置され、垂直方向における超音波トランスデューサの中心のピッチが20mmであった。超音波トランスデューサがローラ内のシリコーンオイルに浸漬された状態で、シリコーンオイルの液面はローラの内部の頂端から50mm離れていた。これにより、トランスデューサ支持具が超音波トランスデューサと共にy方向へ往復運動する過程において、シリコーンオイルがローラから溢れないことが保証された。ここで、超音波伝搬媒質としてシリコーンオイルを選択する理由は、その化学性質が安定し、不揮発性、非腐食性を有することであった。超音波トランスデューサの中心と、2つのローラの軸心を含む平面とは同一平面上にあり、超音波トランスデューサの中心からローラ内壁までの距離は3mmであった。超音波トランスデューサは、1MHzの超音波を発信及び受信する機能を兼ね備え、一方のローラにおける超音波トランスデューサにより発信された超音波は、測定対象物を通過することができ、他方のローラにおける正対する超音波トランスデューサにより捕捉された。
【0037】
図1及び図2を参照すれば、縦筒式超音波走査装置の構造が分かる。ここで、図1は上面図であり、図2はx方向からの側面図である。図3は、本発明の実施例における縦筒式超音波走査装置及びコンベアの概略構成図である。ローラ9内に超音波を伝搬する液体媒質が置かれ、液体媒質内にトランスデューサ支持具7が配置され、複数組の超音波トランスデューサがトランスデューサ支持具7に取り付けられ、複数の測定対象物が、コンベア6に配列され、ローラがローラ支持軸8により支持されることで、ローラ支持軸を軸心として回転することができる。
【0038】
作動する際に、測定対象の矩形電池が、図2及び図3に示されるコンベアに置かれ、コンベアの速度がローラの回転と同期を保持した。速度はv=10mm/sであり、ドラムの角速度ω=v/R=1.826rad/sであった。図4は、本発明の実施例における超音波トランスデューサ支持具及びその超音波トランスデューサ支持具を駆動させるクランクロッドの概略構成図である。図から分かるように、超音波トランスデューサ支持具7は、1つのステッピングモータにより駆動される類似クランクリンク機構の作用により直線往復運動を行う。具体的には、ステッピングモータは、回転クランク11及び接続ロッド12を介して、固定スライダ10の運動を駆動し、さらに固定スライダによって超音波トランスデューサ支持具7を駆動する。クランクの有効長さはr=10mmであり、接続ロッドの有効長さはl=15mmであり、ステッピングモータの角速度は一定で、ω2=10π/sであった。即ち、毎秒5回転であった。t=0の初期状態においてクランクと接続ロッドの間の角度が0°であり、ある超音波トランスデューサの矩形電池に対する位置が(X,Y)である場合、後続のある時点tにおいて、当該超音波トランスデューサの矩形電池に対する位置(X,Y)は、三角法を用いて解くことにより、以下の式で表すことができる。
【数1】
【0039】
したがって、当該超音波トランスデューサのxy平面における測定対象物に対する位置(X,Y)を、時間tから求めることができる。
【0040】
固定振幅の矩形波電圧パルスで当該超音波トランスデューサを励起すると、当該超音波トランスデューサから発信された超音波は、発信側のローラにおけるシリコーンオイル→発信側ローラの内壁→発信側ローラの外壁→矩形電池→対向するローラの内壁→対向するローラにおけるシリコーンオイルを通過し、対向するもう一つの超音波トランスデューサに達した。受信された超音波振動波形を記録し、最大ピーク値をSとし、毎秒1000個最大ピーク値及びその対応時間を記録した。それぞれの時刻tに得られたS,X,Y値を疑似カラー図として作成した。長波長の赤色で透過信号が強いことを表示し、短波長の青色で透過信号が弱いことを表示し、緑色で透過信号が適切であることを表示することにより、矩形電池が当該超音波トランスデューサの走査区域内にあるときの超音波信号の透過強度分布情報を得ることができた。複数の超音波トランスデューサのそれぞれの走査区域における超音波信号透過強度分布図を統合することにより、電池全体の超音波透過強度分布図を得ることができた。
【0041】
電池内気体が存在する(または局所的に電解液に浸漬されていない)場合、気液界面及び気固界面が超音波を反射するので、局所的な超音波透過強度の低下を引き起こし、そこが疑似カラー図では、局所的に青色に示された。電池内部に電極のしわが存在する場合、局所的な厚さの違いやしわにより散乱を誘発することによって、超音波透過信号が低下する。ただし、その程度は、通常、局所的にガスが存在する場合より低い。
【0042】
さらに、超音波反射信号により気体の存在を判断することができる。超音波トランスデューサが超音波信号を発信した後、電池内に気体が存在する場合、超音波が微小な時間τ後に反射され、当該超音波トランスデューサに戻され、測定されることができる。τが大きいほど、気泡の位置が当該超音波トランスデューサから遠くなった。このような反射モードでは、対向する超音波トランスデューサを必要としない。
【0043】
<実施例2>
矩形ゴムブロック内部の欠陥を検出するための縦筒式超音波走査装置
【0044】
本実施例においては、サイズが150mmx100mmx50mmである矩形ゴムブロックを測定対象とした。超音波走査装置のほとんどの構造は実施例1と同じであり、以下のような点で異なるだけである。
【0045】
測定対象物自身が弾性を有し、且つ全体の厚みが実施例1における矩形電池より20mm大きいので、2つのローラは、シリコーンゴム外壁との接触を必要とせず、有機ガラスローラ内壁を測定対象物と直接接触させ、測定対象物自身の変形により、ピッチ49mmのローラの隙間を通過させた。
【0046】
測定対象物のz方向の厚さが厚く、コンベアに載置してもより安定であるため、コンベアの幅を45mmに変更し、その位置をローラの下端より高い位置まで高くした。この設計の利点は、測定対象物下方に走査ブラインドゾーンが存在しないことである。
【0047】
測定対象物内に2ミリメートルより大きい直径を有する気泡が存在する場合、当該走査装置を用いて、x-y平面内の当該区域の超音波透過信号が低減することを発見することができた。z方向の深さは、反射信号の遅延時間τにより確定することができ、τが大きいほど、気泡の位置が当該超音波トランスデューサから遠くなった。
【0048】
測定対象物内に直径が5ミリメートルの石が存在する場合、当該走査装置を用いて、x-y平面内の当該区域の超音波透過信号が増大することを発見することができた。z方向の深さも、反射信号の遅延時間τにより確定することができ、τが大きいほど、気泡の位置が当該超音波トランスデューサから遠くなった。
【0049】
<実施例3>
ソフトパックバッテリ内部の欠陥を検出するためのフラット配列斜筒式超音波走査装置
【0050】
ソフトパックリチウムイオン電池は、現在、市場で一般的に使用されている電池であり、一般的には、外観も矩形であるが、矩形アルミニウムケース電池と異なり、通常、内部は積層加工で製造された多層電極材料と、隔膜と、集電体であり、電解液により浸漬されている。通常、厚みは15mm未満であり、エッジがアルミニウムプラスチック膜の折辺構造であり、コンベアに垂直に載置することができない。ソフトパックリチウムイオン電池に対する連続走査の問題を解決するため、本発明は斜筒式超音波走査装置を開示する。
【0051】
実施例1に記載の縦筒式超音波走査装置と異なり、フラット配列斜筒式超音波走査装置において、2つのローラ軸心と水平面とは15°から40°の角度をなし、軸心を中心に回転する。図5は、本発明の実施例における水平配列斜筒式超音波走査装置の概略図である。図5に示すように、本実施例において、2つのローラ軸心方向と水平面との間は30°の角度をなしている。図5はz方向からの視点であり、2つのローラが並んで配列されており、一方のローラの内部構造のみを表示し、他方のローラが隠れている。この配置の利点は以下の通りである。ローラの上端が密封されない場合、ローラ内の液体が筒外に溢れることがなく、且つローラ内の超音波トランスデューサが液体に浸かった状態を確保でき、確実に超音波伝搬を行える。作動する際に、ソフトパックバッテリは、2つのローラの上方からローラの隙間に入り、ローラの回転により、隙間を通過し、2つのローラの下方に落下し、コンベアにより搬送され、連続走査を実現することができる。
【0052】
本実施例において、測定対象物のソフトパックバッテリのサイズは80mmx50mmx6mmであった。
【0053】
2つのローラのサイズ、仕様は、完全に一致していた。ローラ内壁は、有機ガラスで製作され、外径が120mmであり、高さが300mmであり、壁の厚さが3mmであり、底部が密封されており、上端が開放されていた。内壁の外には厚さ10mmのシリコーンゴムの外壁が設けられ、シリコーンゴムの被覆区域は、内壁の底端から10mm離れているところから内壁の頂端から100mm離れているところまでであった。2つのローラは、並列に傾斜して配置され、高低の差を有さない。軸の方向と水平面との間は30°の角度をなしている。ローラの内壁の上に近く、外壁にカバーされていない区域は、補助ホイールと接触可能である。これにより、ローラが確実に位置決めされる。ローラ間には5mmの隙間があり、厚さ6mmの矩形電池がローラの回転に連れられて当該隙間を通過することができ、通過過程において、シリコーンゴムローラの外壁が押圧されてわずかに変形し、各シリコーンゴム層が最大で0.5mm圧縮され、電池とのシームレスな接触が実現される。シリコーンゴム層の変形を考慮すれば、作動過程において、ローラの軸心と測定対象物との最小距離R=69.5mmであり、ローラの回転速度は、一定であり、ω=0.1439rad/sとした。ローラ内液体超音波伝導媒質としてシリコーンオイルが充填されており、シリコーンオイルの液面がローラ口から50mm離れていた。
【0054】
超音波トランスデューサとしては、エネルギー変換シートの直径が6mmである平板超音波トランスデューサを採用した。合計で5組の超音波トランスデューサが、図5に示される超音波トランスデューサ支持具の2つのアームに取り付けられた。5組の超音波トランスデューサ中心点の距離が12mmであった。超音波トランスデューサがローラ内のシリコーンオイルに浸漬され、超音波トランスデューサの中心は、いずれも2つのローラの軸心を含む平面と同一平面上にあり、超音波トランスデューサの中心からローラ内壁までの距離は3mmであった。超音波トランスデューサは、1MHzの超音波を発信及び受信する機能を兼ね備え、一方のローラにおける超音波トランスデューサにより発信された超音波は、測定対象物のソフトパックバッテリを通過し、他方のローラにおける正対する超音波トランスデューサにより捕捉された。超音波トランスデューサ支持具7は、1つのステッピングモータにより駆動される類似クランクリンク機構の作用により直線往復運動を行った。クランクの有効長さr=6mmであり、接続ロッドの有効長さl=10mmであり、ステッピングモータの角速度は一定で、ω2=10π/sであり、即ち、毎秒5回転であった。すべての超音波トランスデューサのy方向の走査範囲は、60mmであった。
【0055】
図5に示される方向のように、電池が2つのローラの隙間の上方から、2つのローラの間隙に入れた。超音波トランスデューサのy方向の走査範囲は、ソフトパックバッテリが位置する区域を含む。これにより、トランスデューサがソフトパックバッテリ全体へ走査することを保証することに留意されたい。超音波トランスデューサは、1MHzの超音波を発信及び受信する機能を兼ね備え、一方のローラにおける超音波トランスデューサにより発信された超音波は、測定対象物を通過することができ、他方のローラにおける正対する超音波トランスデューサにより捕捉された。
【0056】
t=0の初期状態においてクランクと接続ロッドの間の角度が0°であり、ある超音波トランスデューサのソフトパックバッテリに対する位置が(X,Y)である場合、後続のある時点tにおいて、当該超音波トランスデューサのソフトパックバッテリに対する位置(X,Y)は、三角法を用いて解くことにより、以下の式で表すことができる。
【数2】
【0057】
したがって、当該超音波トランスデューサのx、y平面における測定対象物に対する位置(X,Y)を、時間から求めることができる。
【0058】
固定振幅の矩形波電圧パルスで当該超音波トランスデューサを励起すると、当該超音波トランスデューサから発信された超音波は、発信側のローラにおけるシリコーンオイル→発信側ローラの内壁→発信側ローラの外壁→ソフトパックバッテリ→対向するローラの内壁→対向するローラにおけるシリコーンオイルを通過し、対向するもう一つの超音波トランスデューサに達した。受信した超音波振動波形を記録し、最大ピーク値をSとする。それぞれの時刻tに得られたS,X,Y値を疑似カラー図として作成した。ソフトパックバッテリが当該超音波トランスデューサの走査区域内にあるときの超音波信号の透過強度分布情報を得ることができた。複数の超音波トランスデューサのそれぞれの走査区域における超音波信号透過強度分布図を統合することにより、電池全体の超音波透過強度分布図を得ることができた。
【0059】
電池内気体が存在する(または局所的に電解液に浸漬されていない)場合、気液界面及び気固界面が超音波を反射するので、局所的な超音波透過強度の低下を引き起こし、そこが疑似カラー図では、局所的に青色に示された。電池内部に電極のしわが存在する場合、局所的な厚さの違いやしわにより散乱を誘発することによって、超音波透過信号が低下する。ただし、その程度は、通常、局所的にガスが存在する場合より低い。
【0060】
さらに、超音波反射信号により気体の存在を判断することができる。超音波トランスデューサが超音波信号を発信した後、電池内に気体が存在する場合、超音波が微小な時間τ後に反射され、当該超音波トランスデューサに戻され、測定されることができる。τが大きいほど、気泡の位置が当該超音波トランスデューサから遠くなった。このような反射モードでは、対向する超音波トランスデューサを必要としない。
【0061】
出荷直後のソフトパックリチウムイオン電池良品に関しては、内部の正極材料、負極材料および隔膜はいずれも電解質に浸漬され、各層の材料分布が均一であり、気体が存在せず、走査により得られたS,X,Yの値を疑似カラー図として作成すれば、電池が均一な緑色に示される。長期使用後の健康状態が劣化し、容量が出荷状態の80%に降下したソフトパックリチウムイオン電池では、内部副反応の不均一性により、局所的に気体が発生し、超音波透過信号の強さが均一ではなく、疑似カラー図において青色と緑色が不均等な分布となる。80℃で24時間静置して破壊試験をした結果、電池内部のSEI膜は分解し、健康状態が深刻に劣化した。すなわちより大量の気体が発生し、電池の超音波透過性能全体が低下し、疑似カラー図において全体的に青色となった。
【0062】
<実施例4>
ソフトパックバッテリ内部の欠陥を検出するための縦配列斜筒式超音波走査装置
【0063】
本実施例において、測定対象物は、依然として、ソフトパックリチウムイオン電池であり、そのサイズは実施例3と同じであ。超音波トランスデューサの仕様、サイズ及び超音波トランスデューサ支持具に配列された方式も、実施例3と同じである。ローラの材質、直径、回転数、ピッチ、内/外壁の厚さは、実施例3と同じであり、内壁の高さと配列方式のみ相違している。
【0064】
本実施例において、2つのローラの位置に高低差があり、軸心の方向と水平面とが60°の角度をなしている。2つのローラ軸心を含む平面は、図6に示すように、水平面と垂直である。図6は、本発明の実施例における上下配列斜筒式超音波走査装置の断面概略図である。位置が上方に近いローラ内壁の高さが180mmであり、位置が下方に近いローラ内壁の高さが220mmである。このように設計した理由は、以下の通りである。超音波トランスデューサから発信された超音波が伝搬の過程中に空気層に当たらないことを保証するため、位置が上方に近いローラは、その下側の内壁と音波トランスデューサとの間をシリコーンオイルに確実に浸漬させる必要がある。位置が下方に近いローラは、上側の内壁と超音波トランスデューサとの間をシリコーンオイルに確実に浸漬させる必要がある。図6に示される傾斜構造において、シリコーンオイルの重力作用により形成された水平面の位置を考慮すれば、位置が下方に近いローラ内壁の高さを、位置が上方に近いローラより高くにすることにより、シリコーンオイルが溢れないことを確保した上で、空間を有効的に利用することができる。
【0065】
2つのローラ内壁の底端は同一平面上にあり、内壁底端から10mm~110mm離れた範囲までがシリコーンゴム外壁に被覆されている。下方に近い位置のローラのみ動力装置を有し、その回転速度はω=0.1439rad/sである。一方、上方に近い位置のローラは自由に回転することができ、サンプルがローラ間の隙間に入ったとき、摩擦力の作用により、従動回転することができる。
【0066】
この装置にサンプルを入れる場合、図7に示される傾斜したコンベアを採用することができる。図7は、本発明の実施例における傾斜したコンベアに置かれている測定対象物の概略図である。コンベア6は、水平面と60°の角度をなし、コンベアの下部に突起を有していることで、測定対象物であるソフトパックバッテリが滑り落ちることを防止できた。コンベアは、ソフトパックバッテリを正確な角度で2つのローラ間の隙間に送ることができ、走査が完了した後、もう一つの傾斜したコンベアに落下することにより、大量のサンプルの連続走査が実現できた。
【0067】
<実施例5>
ソフトパックバッテリ内部の欠陥を検出するための高精度縦配列斜筒式超音波走査装置
【0068】
本実施例において、測定対象物は、依然として、ソフトパックリチウムイオン電池であり、そのサイズは実施例4と同じである。ローラの材質、直径、回転数、ピッチ、内/外壁の厚さは、実施例4と同じである。
【0069】
本実施例において、走査システムの走査精度を高めるため、超音波トランスデューサを、実施例4における直径が6mmである平板超音波トランスデューサから、直径が6mmであり、焦点距離が20mmである集束超音波トランスデューサ(焦点が、2つの対応するトランスデューサの接続線の中点にある)に変更した。合計で5組を有し、それぞれ図5に示される超音波トランスデューサ支持具の2つのアームに取り付けられており、5組の超音波トランスデューサのz方向のピッチが12mmであった。超音波トランスデューサがローラ内のシリコーンオイルに浸漬され、超音波トランスデューサの中心は、いずれも2つのローラの軸心を含む平面と同一平面上にあり、超音波トランスデューサの中心からローラ内壁までの距離7mmであった。
【0070】
超音波トランスデューサを、平板超音波トランスデューサから集束超音波トランスデューサに変更したため、超音波信号が電池を一回通過するときの面積が減少している。電池全体をより良好な測定区域により被覆するため、本実施例におけるクランク接続ロッド機構の回転角速度を、実施例4の2倍とした。すなわち、ω=20π/sであった。その他のテスト過程は実施例4と同じであった。このような方法を採用した後、本実施例で得た超音波検出画像の解像度は実施例4より著しく向上し、電池の内部に対するより小さい欠陥の判断を行うことができた。
【0071】
<実施例6>
筒壁が高分子密封液体構成を有する縦配列斜筒式超音波走査装置
【0072】
本実施例において、ローラの内壁材質、直径、回転数、ピッチ、サイズ、空間配列は、実施例4と同じであり、外壁構造のみを変更した。
【0073】
図8は、本発明の実施例における筒壁が高分子密封液体構成を有する円筒の断面概略図である。図8に示すように、ローラ外壁は、ローラ内に超音波を伝達可能な液体媒質が収容され、ローラ外壁表面にシリコーンゴムスリーブ13が設けられ、シリコーンゴムスリーブ13において液体14が密封されている。本実施例において、具体的には、水を充填したシリコーンゴム外壁を採用した。中空のシリコーンゴムスリーブで強力接着剤が塗布されたローラ内壁を被覆し、その内壁に水を充填し、液体媒質Bとした。シリコーンゴムスリーブの壁の厚さは、0.5mmであり、y方向への被覆された範囲は、120mmであった。水を満杯に充填した後、シリコーンゴムスリーブは膨張し、弾性作用により形状を保持した。外壁の最も厚い箇所は、内壁面から14mmの距離があった。実施例4に記載の空間配列のように、2つのローラを支持具に固定した後、2つのローラの水に充填されたシリコーンゴムの外壁の間には隙間がなく、直接相互に接触した。
【0074】
本実施例のローラ外壁は、比較的大きく変形可能であるため、厚みが均一でない測定対象物を測定することができる。例えば、同じ装置が3mmから10mmの厚みを有する様々な型番のソフトパックリチウムイオン電池を測定することができた。
【0075】
当業者であれば容易に分かることであるが、上述した内容は、本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明を限定するものではない。本発明の精神及び原則範囲内で限り、いかなる修正、同等置換及び改良などのすべては本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0076】
すべての図面は、同一の符号は、同一の部品または構成を示すために用いられる。
1 ローラ内壁
2 ローラ外壁
3 超音波トランスデューサ
4 液体媒質
5 測定対象物
6 コンベア
7 超音波トランスデューサ支持具
8 ローラ支持軸
9 ローラ
10 直線スライダ
11 回転クランク
12 接続ロッド
13 シリコーンゴム
14 液体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8