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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】浸水防止パック及び浸水防止方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/02 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
B65D81/02 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021515231
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2021000495
(87)【国際公開番号】W WO2021141113
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2020002829
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596141402
【氏名又は名称】有限会社ちふりや工業
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】岩下 芳人
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-215210(JP,A)
【文献】実開平07-017644(JP,U)
【文献】特開平11-029172(JP,A)
【文献】特開平09-226878(JP,A)
【文献】特開2006-321512(JP,A)
【文献】特開平08-226116(JP,A)
【文献】実開平06-088146(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水密性及び気密性を有し、保護対象物を水害から保護する浸水防止パックであって、
防水性素材で中空箱型に形成され、防水ファスナーにより密閉可能な少なくとも1つの開閉部を有し、前記保護対象物を収納して周囲の固定構造物に繋ぎ止められる収納体を備え、前記収納体は、該収納体の長手方向の一側の前壁及び他側の後壁の高さ方向中央部にそれぞれ形成された第1、第2の結束部材挿通部を有し、前記第1の結束部材挿通部に挿通され前記前壁の表面を横切る第1の結束部材の両端部は、前記後壁の後方に位置する固定構造物に繋ぎ止められ、前記第2の結束部材挿通部に挿通され前記後壁の表面を横切る第2の結束部材の両端部は、前記前壁の前方に位置する固定構造物に繋ぎ止められて、前記第1、第2の結束部材挿通部から前記各固定構造物に至るまで前記第1、第2の結束部材を弛ませ、前記収納体が浮力により水に浮く場合には、水位の上昇に合わせて該収納体を浮上させ前記収納体に収納された前記保護対象物を浸水から保護し、前記保護対象物が水に浮かない重量物であるときには、前記収納体を水没させた状態で前記第1、第2の結束部材に加わる負荷を軽減しながら前記収納体に収納された前記保護対象物を浸水から保護することを特徴とする浸水防止パック。
【請求項2】
請求項1記載の浸水防止パックにおいて、前記第1、第2の結束部材の端部が前記各固定構造物に結束されて形成される前記第1、第2の結束部材の結束部と前記各固定構造物の間に隙間が設けられ、前記各結束部が前記各固定構造物の高さ方向に沿って移動可能であることを特徴とする浸水防止パック。
【請求項3】
保護対象物を水密及び気密に密閉して水害から保護する浸水防止方法であって、
防水性素材で中空箱型に形成され長手方向の一側の前壁及び他側の後壁の高さ方向中央部にそれぞれ第1、第2の結束部材挿通部が形成された収納体の少なくとも1つの開閉部を開いて、前記収納体の底部の上面に前記保護対象物を載置する保護対象物載置工程と、
前記開閉部を防水ファスナーにより密閉して、前記収納体の内部に前記保護対象物を収納する保護対象物収納工程と、
前記保護対象物が収納された前記収納体に対し、第1の結束部材を前記第1の結束部材挿通部に挿通し、前記前壁の表面を横切る前記第1の結束部材の両端部を前記後壁の後方に位置する固定構造物に繋ぎ止め、第2の結束部材を前記第2の結束部材挿通部に挿通し、前記後壁の表面を横切る前記第2の結束部材の両端部を前記前壁の前方に位置する固定構造物に繋ぎ止め、前記収納体が浮力により水に浮く場合には、水位の上昇に合わせて該収納体を浮上させ前記収納体に収納された前記保護対象物を浸水から保護し、前記保護対象物が水に浮かない重量物であるときには、前記収納体を水没させた状態で前記第1、第2の結束部材に加わる負荷を軽減しながら前記収納体に収納された前記保護対象物を浸水から保護するために前記第1、第2の結束部材挿通部から前記各固定構造物に至るまで前記第1、第2の結束部材を弛ませる収納体繋ぎ止め工程とを有することを特徴とする浸水防止方法。
【請求項4】
請求項記載の浸水防止方法において、前記第1、第2の結束部材の端部を前記各固定構造物に結束する際に、前記第1、第2の結束部材の結束部と前記各固定構造物の間に隙間が設けられ、前記各結束部が前記各固定構造物の高さ方向に沿って移動可能であることを特徴とする浸水防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、津波又は洪水等の発生時に、電化製品、寝具、家財道具、事務機器、農業用機械、工作機械及び各種車両等の様々な保護対象物を水密及び気密にパック詰めすることにより、浸水及び流出等の水害から保護する浸水防止パック及び浸水防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、台風、集中豪雨、地震等に伴って発生する津波又は洪水等により、屋内(床上)が浸水したり、家屋が倒壊したりした際に、家財道具の水没又は屋外への流出等によって、家財道具が、汚損若しくは損傷して使用不能になることや、行方不明になることがある。そこで、例えば特許文献1には、洪水等において床上浸水した場合に、寝具、衣類、その他の家財道具等を水濡れや土砂崩れ等で倒壊する等の被害から守るようにした密閉式強化袋が提案されている。また、車両の水没を防止するものとして、例えば特許文献2には、空気袋の下に箱型の防水布を結合させた袋の中央に自動車を置き、空気袋を自動車の排気ガスで膨らませ、周囲の水位の上昇と共に空気袋が上昇し自動車を水害から保護する自動車用水害防止袋が提案されている。特許文献3には、自動車の床下が支えられてそれを浮上させるための袋状で折畳み可能なマット本体と、該マット本体にガスを導入するための導入パイプと、その導入パイプの端部にマフラーの排気管に取付ける排気部取付具とから少なくとも構成し、且つ、マット本体が、中央マット部と、その両側に配置して固定したサイドマット部とから少なくとも構成される自動車用浮上マットが提案されている。特許文献4には、浮き袋と、車室への浸水を検出する浸水検出部と、該浸水検出部の検出信号に従って制御信号を発する制御部と、該制御部の制御信号に従って該浮き袋にガスを供給するガス供給部とを含む車両用水面浮揚装置が提案されている。特許文献5には、防水底パッドと、防水底パッド周縁で相互に通じる中空の辺棒と、辺棒一端に設けられた防水空気充填孔と、防水底パッド片側に設けられた防水カバー体を備え、防水カバー体と防水底パッドに相互に対応する防水ファスナーを設置し、防水カバー体により自動車を包んだ後、防水ファスナーにより、防水カバー体と防水底パッドとを閉めて合わせる自動車防水カバーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-29172号公報
【文献】実用新案登録第3100090号公報
【文献】特開2016-20191号公報
【文献】特開2016-132365号公報
【文献】実用新案登録第3179545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の密閉式強化袋は、それぞれが水密性及び気密性を有する内袋と外袋からなっており、各種の物品を収納して密閉した内袋を外袋の中に入れ、内袋と外袋の間に適度な空間を作って外袋を密閉することにより、密閉式強化袋の上に倒壊物等が落下した場合に、内袋と外袋の間の空気圧で、内袋に収納された物品を衝撃から保護するものである。従って、内袋と外袋をそれぞれ密閉しなければならず、物品の収納に手間がかかり、作業性に欠けるという問題があった。また、内袋と外袋の間に適度な空間を作って外袋を密閉したとしても、内袋が固定されていなければ、外部からの衝撃や振動等によって外袋の中で移動したり、転倒したりして姿勢が安定せず、内部の物品が破損するおそれがある。特に、複数の内袋を外袋の内部に収納した場合、空間を維持することができず、内袋同士が衝突して内部の物品が破損する可能性もある。これに対し、特許文献1には、内袋同士の打撃や外部からの衝撃により物品が損傷しないように、内袋を粘着テープで固定することや、緩衝材で空間を作って収納することも記載されているが、粘着テープのみで内袋を確実に固定することは困難であり、どのようにして緩衝材で空間を作るのか具体的な構成や方法も不明である。また、これらの作業には手間がかかるため、緊急時の対応性に欠けるという問題があった。また、内袋及び外袋を密閉する際に空気が外に漏れると、内部の空気圧を保つことができずに内袋及び外袋が潰れ、物品を衝撃から保護することができないという問題もあった。さらに、保護対象物として、工作機械や各種車両等の大型重量物は想定されておらず、保護対象物が収容された密閉式強化袋が漂流することを防止する手段も検討されておらず、実用性に欠けるという問題があった。
【0005】
特許文献2及び特許文献3においても、車両を水上に浮かせて水没を防止することはできても、空気袋及びマット本体を周囲の固定物(例えば、柱、電柱又は大木等)に繋ぎ止める手段を備えていないため、車両が空気袋又はマット本体と共に水に流されて漂流するおそれがある。さらに、水に浮いた状態では姿勢が不安定になり易く、激しい水流等によって転覆して車両が破損する可能性や、空気袋及びマット本体が破損して浸水又は水没が発生する可能性があり、安全性及び信頼性に欠けるという問題もある。特許文献4では、浮き袋が車両の内部に収容されており、車両を半水没状態(不沈状態)に維持することができるが、車両を繋ぎ止める手段を備えていないため、車両が水に流されて漂流するおそれがある。また、車両の周囲を保護するものがないため、漂流物等が車両に衝突して車両が破損する可能性があり、安全性に欠けるという問題がある。特許文献5では、防水底パッドの角に嵌合リングを取り付け、その嵌合リングにワイヤー体を通し、周囲の固定物に縛り付けることにより漂流を防いでいるが、水流によって自動車(車両)の重量がワイヤー体に集中して加わった際に、ワイヤー体が切れたり、嵌合リングが破損したり、嵌合リングと防水底パッドとの接続部が裂けたりするおそれがあり、その結果、自動車防水カバーが自動車を収容したまま漂流することや、自動車防水カバーの内部に浸水して水没することが考えられ、耐久性及び安全性に欠け、漂流防止対策及び水没防止対策が不十分であるという問題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、津波又は洪水等の発生時に、電化製品、寝具、家財道具、事務機器、農業用機械、工作機械及び各種車両等の様々な保護対象物を短時間でパック詰めして浸水及び流出等の水害から確実に保護することができる実用性に優れた浸水防止パック及び浸水防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る浸水防止パックは、水密性及び気密性を有し、保護対象物を水害から保護する浸水防止パックであって、
防水性素材で中空箱型に形成され、防水ファスナーにより密閉可能な少なくとも1つの開閉部を有し、前記保護対象物を収納して周囲の固定構造物に繋ぎ止められる収納体を備え、前記収納体は、該収納体の長手方向の一側の前壁及び他側の後壁の高さ方向中央部にそれぞれ形成された第1、第2の結束部材挿通部を有し、前記第1の結束部材挿通部に挿通され前記前壁の表面を横切る第1の結束部材の両端部は、前記後壁の後方に位置する固定構造物に繋ぎ止められ、前記第2の結束部材挿通部に挿通され前記後壁の表面を横切る第2の結束部材の両端部は、前記前壁の前方に位置する固定構造物に繋ぎ止められて、前記第1、第2の結束部材挿通部から前記各固定構造物に至るまで前記第1、第2の結束部材を弛ませ、前記収納体が浮力により水に浮く場合には、水位の上昇に合わせて該収納体を浮上させ前記収納体に収納された前記保護対象物を浸水から保護し、前記保護対象物が水に浮かない重量物であるときには、前記収納体を水没させた状態で前記第1、第2の結束部材に加わる負荷を軽減しながら前記収納体に収納された前記保護対象物を浸水から保護する。
ここで、中空箱型の収納体を形成する防水性素材は非透水性であり、保護対象物を出し入れするための開閉部が、防水ファスナーにより密閉可能であることにより、浸水防止パック全体として水密性及び気密性を確保することができる。従って、収納体(浸水防止パック)が水没した場合でも、収納体に収納された保護対象物を浸水から守ることができる。
【0007】
第1の発明に係る浸水防止パックにおいて、前記保護対象物の外周を着脱可能に覆う緩衝部材を備えることが好ましい。
ここで、緩衝部材としては、保護対象物の形状、大きさ、種類等に応じて、クッション材又は気泡緩衝材等を適宜、選択して使用することができる。気泡緩衝材としては、例えばシート状の基材の一面又は両面に、複数の気室が形成され、各気室の内部に予め気体が充填されたものが好適に用いられる。なお、気室の数、大きさ及び配置は、適宜、選択することができる。また、専用の緩衝部材を用意する代わりに、毛布や布団等を緩衝部材として使用してもよいし、種類の異なる複数の緩衝部材を組合せて使用してもよい。
【0008】
収納体の底部の上面に載置される底部緩衝部材、保護対象物の上面を覆う上部緩衝部材及び収納体の外側に取付けられる外部緩衝部材を備えることもできる。この底部緩衝部材、上部緩衝部材及び外部緩衝部材の材質及び構造等は、上述の緩衝部材と同様である。なお、上部緩衝部材は、保護対象物の上面に直接、載置又は固定されてもよいし、収納体の天井部の内面に固定された状態で保護対象物の上面を覆ってもよい。底部緩衝部材及び上部緩衝部材は、水に浮いた状態で収納体の姿勢が変化(収納体が回転)したり、上方から落下物が衝突したりしても、収納体に収納された保護対象物を衝撃から保護することができる。外部緩衝部材は、収納体の外側の所望の位置に取り付けることができ、転倒物、落下物、漂流物及び周囲の構造物(壁、柱等の他に箪笥や本棚等の大型の家具類を含む)等との衝突時の衝撃を緩和することができると共に、それらが収納体に直接、衝突することを防止して収納体の損傷を抑えることができ、収納体に収納された保護対象物の水濡れ及び破損を効果的に防ぐことができる。
【0009】
第1の発明に係る浸水防止パックにおいて、前記緩衝部材は、中空袋状に形成され、使用時に内部に気体(空気等)が充填可能であってもよく、例えば、エアーマットが好適に用いられる。
ここで、保護対象物の周囲を直接、エアーマットで覆ってもよいが、保護対象物の周囲をクッション材、気泡緩衝材又は毛布や布団等で覆って(包んで)から、エアーマットを巻き付ければ、エアーマットが保護対象物に直接接触することがなく、エアーマットの破損を防止することができる。なお、保護対象物の表面に凸部及び凹部が存在する場合は、クッション材、気泡緩衝材又は毛布や布団等で保護対象物全体を覆う代わりに、凸部及び凹部を部分的に覆ってからエアーマットを巻き付けてもよい。
【0010】
第1の発明に係る浸水防止パックにおいて、外周を前記緩衝部材で覆われた前記保護対象物の外形は、平面視して長方形状又は正方形状に整形されていることが好ましい。
【0011】
第1の発明に係る浸水防止パックにおいて、前記収納体は、平面視して長方形状に形成されることが好ましい。
【0012】
【0013】
前記目的に沿う第2の発明に係る浸水防止方法は、保護対象物を水密及び気密に密閉して水害から保護する浸水防止方法であって、
防水性素材で中空箱型に形成され長手方向の一側の前壁及び他側の後壁の高さ方向中央部にそれぞれ第1、第2の結束部材挿通部が形成された収納体の少なくとも1つの開閉部を開いて、前記収納体の底部の上面に前記保護対象物を載置する保護対象物載置工程と、
前記開閉部を防水ファスナーにより密閉して、前記収納体の内部に前記保護対象物を収納する保護対象物収納工程と、
前記保護対象物が収納された前記収納体に対し、第1の結束部材を前記第1の結束部材挿通部に挿通し、前記前壁の表面を横切る前記第1の結束部材の両端部を前記後壁の後方に位置する固定構造物に繋ぎ止め、第2の結束部材を前記第2の結束部材挿通部に挿通し、前記後壁の表面を横切る前記第2の結束部材の両端部を前記前壁の前方に位置する固定構造物に繋ぎ止め、前記収納体が浮力により水に浮く場合には、水位の上昇に合わせて該収納体を浮上させ前記収納体に収納された前記保護対象物を浸水から保護し、前記保護対象物が水に浮かない重量物であるときには、前記収納体を水没させた状態で前記第1、第2の結束部材に加わる負荷を軽減しながら前記収納体に収納された前記保護対象物を浸水から保護するために前記第1、第2の結束部材挿通部から前記各固定構造物に至るまで前記第1、第2の結束部材を弛ませる収納体繋ぎ止め工程とを有する。
【0014】
第2の発明に係る浸水防止方法において、前記保護対象物収納工程の前に、前記保護対象物の外周を緩衝部材で着脱可能に覆う緩衝部材取り付け工程を有することが好ましい。
【0015】
第2の発明に係る浸水防止方法において、前記緩衝部材取り付け工程で前記保護対象物の外周を覆う前記緩衝部材は中空袋状に形成され、使用時に内部に気体が充填されてもよい。
【0016】
第2の発明に係る浸水防止方法において、前記緩衝部材取り付け工程で外周を前記緩衝部材で覆われた前記保護対象物の外形は、平面視して長方形状又は正方形状に整形されていることが好ましい。
【0017】
第2の発明に係る浸水防止方法において、前記収納体は、平面視して長方形状に形成されることが好ましい。
【0018】
【発明の効果】
【0019】
第1の発明に係る浸水防止パック及び第2の発明に係る浸水防止方法は、防水性素材で中空箱型に形成された収納体に、電化製品、寝具、家財道具、事務機器、農業用機械、工作機械及び各種車両等の様々な保護対象物を収納し、開閉部を防水ファスナーにより密閉して、保護対象物が収納された収納体を周囲の固定構造物に繋ぎ止めることにより、水位の増減及び収納体の浮沈に関わらず、保護対象物を浸水から保護し、保護対象物の流出を防止することができる。
【0020】
第1の発明に係る浸水防止パック及び第2の発明に係る浸水防止方法において、保護対象物の外周を緩衝部材で着脱可能に覆った場合、保護対象物の外周の凸部及び凹部の影響を受けることなく、保護対象物を収納体にスムーズに収納することができ、緩衝部材のクッション性により、保護対象物を周囲の転倒物及び漂流物等との衝突から保護し、保護対象物の破損を効果的に防止することができる。
【0021】
第1の発明に係る浸水防止パック及び第2の発明に係る浸水防止方法において、緩衝部材が、中空袋状に形成され、使用時に内部に気体が充填可能である場合、使用時以外は緩衝部材を扁平に押し潰して搬送及び保管が可能で、使用時は充填された気体のクッション性により、保護対象物を外部からの衝撃から効果的に保護することができ、必要に応じて、浮力を発生させて収納体を水に浮かせることもできる。
【0022】
第1の発明に係る浸水防止パック及び第2の発明に係る浸水防止方法において、外周を緩衝部材で覆われた保護対象物の外形が、平面視して長方形状又は正方形状に整形されている場合、保護対象物の外周の凸部及び凹部を緩衝部材で覆って保護対象物(主に凸部)の破損を防止できると共に、収納体の周壁部が、凸部によって破られることがなく、収納体への浸水を防止することができ、保護対象物を確実に保護することができる。
【0023】
第1の発明に係る浸水防止パックにおいて、収納体が、平面視して長方形状に形成され、周壁部のうち、収納体の長手方向の一側の前壁及び他側の後壁の高さ方向中央部にそれぞれ形成された第1、第2の結束部材挿通部を有し、第1の結束部材挿通部に挿通され前壁の表面を横切る第1の結束部材の両端部が、後壁の後方に位置する固定構造物に繋ぎ止められ、第2の結束部材挿通部に挿通され後壁の表面を横切る第2の結束部材の両端部が、前壁の前方に位置する固定構造物に繋ぎ止められることにより、収納体を長手方向の一側に移動させる力、又は他側に移動させる力が働いても、第1、第2の結束部材挿通部に負荷が加わることがなく、第1、第2の結束部材挿通部又は収納体の破損を防止し、第1、第2の結束部材で収納体の外周を囲むようにして収納体を強固に固定することができ、収納体の移動、傾き及び回転等を効果的に防止することができる。
【0024】
第1の発明に係る浸水防止パック及び第2の発明に係る浸水防止方法は、保護対象物が水に浮かない重量物であるときに、収納体を水没させた状態で、収納体に収納された保護対象物を浸水から保護するので、収納体を水に浮かせるための手段を必要とせず、簡素な構成のまま保護対象物を浸水から守ることができ、収納体を屋外に設置したり、収納体の高さ以上に水位が上昇したりしても収納体の内部に浸水することがなく、乗用車をはじめ、トラック、バス、タンクローリー、消防車等の大型の特殊車両も水害から守ることができる。
【0025】
第2の発明に係る浸水防止方法において、平面視して長方形状に形成され、長手方向の一側の前壁及び他側の後壁の高さ方向中央部にそれぞれ第1、第2の結束部材挿通部が形成された収納体に対し、収納体繋ぎ止め工程で、第1の結束部材を第1の結束部材挿通部に挿通し、前壁の表面を横切る第1の結束部材の両端部を後壁の後方に位置する固定構造物に繋ぎ止め、第2の結束部材を第2の結束部材挿通部に挿通し、後壁の表面を横切る第2の結束部材の両端部を前壁の前方に位置する固定構造物に繋ぎ止めることにより、収納体を長手方向の一側に移動させる力と他側に移動させる力を減殺し、第1、第2の結束部材で収納体の外周を囲むようにして収納体を強固に固定することができ、収納体の移動、傾き及び回転を効果的に防止することが可能で姿勢の安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施例に係る浸水防止パックの使用状態を示す正面図である。
図2】同浸水防止パックの使用状態を示す平面図である
図3】同浸水防止パックの収納体の開閉部を開いて設置面に設置した状態を示す斜視図である。
図4】同浸水防止パックの収納体の内部に載置した保護対象物の外周に緩衝部材を巻き付けた状態を示す斜視図である。
図5】同浸水防止パックの収納体に保護対象物を収納して開閉部を閉じる前の状態を示す斜視図である。
図6】同浸水防止パックで用いる緩衝部材の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施例につき説明し、本発明の理解に供する。
以下、図1図5を参照して、本発明の一実施例に係る浸水防止パック10及び浸水防止方法について説明する。
浸水防止パック10及び浸水防止方法は、津波又は洪水等の発生時に、電化製品、寝具、家財道具、事務機器、農業用機械、工作機械及び各種車両等の様々な保護対象物11を水密及び気密にパック詰めすることにより、浸水及び流出等の水害から保護するものである。
【0028】
浸水防止パック10は、防水性素材で中空箱型(ここでは直方体状)に形成され、防水ファスナー12により密閉可能な開閉部13を有し、保護対象物11を収納して周囲の固定構造物(ここでは柱)14a、14bに繋ぎ止められる収納体15を備えている。この収納体15は、底部17と底部17の周囲を囲む周壁部18とを有し、周壁部18の上面側には開口部19が形成されている。本実施例において、収納体15は開口部19が開閉部13で覆われる構造となっており、開口部19の周縁と、開閉部13の外周との間に、防水ファスナー12が取り付けられている。防水ファスナー12が、周壁部18の上面よりも低い位置で、周壁部18に沿って略U字状に連続的に取付けられることにより、防水ファスナー12の動作がスムーズになり、開閉作業を容易に行うことができる。また、開閉部13が、周壁部18の1つの面(一方の側面)の上縁に延設されて、周壁部18に連続的に形成されていることにより、開閉部13が紛失することがなく、開口部19と開閉部13との位置合わせも不要で、即座に開口部19を閉じることができる。
【0029】
以上の構成により、浸水防止パック10は、保護対象物11を水密及び気密にパック詰めすることができるが、開口部及び開閉部の形状、数及び配置は、適宜、選択することができる。例えば、周壁部の一部に開口部を形成し、開閉部で覆う構造、又は収納体の上面から周壁部の一部に跨って開口部を形成し、開閉部で覆う構造の他、周壁部を複数の面に分割し、分割された各面を開閉部として、隣合う面同士を防水ファスナーで連結する構造としてもよい。
【0030】
浸水防止パック10(収納体15)を形成する防水性素材としては、例えばゴムボート、災害用エアーテント、又は耐火防護服等と同様の堅牢性及び耐久性を有する生地を用いることが好ましい。特に、水上で使用されるゴムボートの生地は、破れ難く、水密性に優れるので好適である。具体的には、ポリアミド又はポリエステル等の合成繊維の基布に、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、クロロプレンゴム、又は天然ゴム等のゴムを複数層貼り合わせたゴム引布が好適に用いられる。基布としてポリアミドを用いた場合は、軽量で柔軟性及び伸縮性に優れ、ポリエステルを用いた場合は、硬く、高剛性で伸縮性が少なく、耐久性に優れる。なお、基布に貼り合わせるゴムの組合せ及び層数は、適宜、選択することができる。また、ゴムの代わりに、塩化ビニル樹脂を基布に貼り合わせた生地を用いてもよく、その場合、加工が簡単で低コストで製造でき、耐摩耗性にも優れる。なお、周壁部18の少なくとも1つの面と開閉部13は一体に形成することが好ましいが、溶着又は接着により貼り合わせて一体化することにより、気密性及び水密性を確保してもよい。また、収納体の底部と周壁部との継ぎ目及び周壁部同士の継ぎ目が発生する場合も溶着又は接着で貼り合わせることにより、気密性及び水密性を確保することができる。このとき、継ぎ目の数及び場所は適宜、選択することができる。なお、継ぎ目を防水ファスナーで連結することもできる。
【0031】
図1図2図5に示すように、平面視して長方形状に形成された収納体15の長手方向の一側の前壁(周壁部18の一部)20及び他側の後壁(周壁部18の一部)21の高さ方向中央部にそれぞれ第1、第2の結束部材挿通部23、24が形成されている。そして、第1の結束部材挿通部23に挿通され前壁20の表面を横切る第1の結束部材25aの両端部は、後壁21の後方に位置する固定構造物14aに繋ぎ止められ、第2の結束部材挿通部24に挿通され後壁21の表面を横切る第2の結束部材25bの両端部は、前壁20の前方に位置する固定構造物14bに繋ぎ止められる。これにより、収納体15を長手方向の一側(前壁20側)に移動させる力、又は他側(後壁21側)に移動させる力が働いても、第1、第2の結束部材挿通部23、24に負荷が加わることがなく、第1、第2の結束部材挿通部23、24又は収納体15の破損を防止し、第1、第2の結束部材25a、25bで収納体15の外周を囲むようにして収納体15を強固に固定することができる。その結果、収納体15の移動、傾き及び回転等を効果的に防止し、安定した姿勢を維持して、保護対象物11を保護することができる。第1、第2の結束部材25a、25bとしては、紐又はロープ等が好適に用いられるが、保護対象物11の種類によっては、ワイヤー又は鎖等を用いてもよい。
【0032】
本実施例では、第1、第2の結束部材挿通部23、24を前壁20及び後壁21の幅方向にそれぞれ3つずつ直列に配置したが、第1、第2の結束部材挿通部の数及び配置間隔等は適宜、選択することができる。また、本実施例では、第1、第2の結束部材挿通部23、24の強度を増すために円筒状に形成したが、その直径及び長さは、適宜、選択することができる。なお、第1、第2の結束部材挿通部は、第1、第2の結束部材を挿通することができればよく、その形状は円筒状に限らず、適宜、選択することができ、例えば半円筒状でもよい。また、第1、第2の結束部材挿通部23、24は、溶着又は接着により収納体15に固定されるので、その材質は、収納体15の材質と同一であることが好ましいが、異なっていてもよいし、防水性を備えていなくてもよく、一般的な布や合成樹脂でもよい。
【0033】
浸水防止パック10は、図4図5に示すように、保護対象物11の外周を着脱可能に覆う緩衝部材26を備えている。保護対象物11の外周を覆う緩衝部材26の周りに、ゴム又は布等で帯状に形成された固定バンド27を巻き付けて端部同士を結束したり、面ファスナー等で接合したりして、緩衝部材26を固定することができる。そして、外周を緩衝部材26で覆われた保護対象物11の外形が、平面視して長方形状又は正方形状に整形されることにより、保護対象物11の外周の凸部及び凹部を緩衝部材26で覆って保護対象物11(主に凸部)の破損を防止できる。また、収納体15の周壁部18が、保護対象物11の凸部によって破られることがなく、収納体15への浸水を防止し、保護対象物11を確実に保護することができる。なお、固定バンドの寸法、数及び配置は、適宜、選択することができる。
【0034】
緩衝部材26としては、中空袋状に形成され、内部に気体(空気、窒素、二酸化炭素等)が充填可能なもの(例えばエアーマット)を使用することが好ましい。この緩衝部材26は使用時に予め気体を充填してから保護対象物11の外周に巻き付けてもよいし、気体が抜かれて潰れた状態の緩衝部材26を保護対象物11の外周に巻き付けてから気体を充填してもよい。また、緩衝部材26を保護対象物11の外周に巻き付けながら、並行して気体の充填を行えば、作業時間を短縮することができる。なお、保護対象物の各面が必ずしも1枚の緩衝部材で覆われている必要はない。例えば保護対象物の長手方向に沿って、複数の緩衝部材を並べて配置してもよいし、複数枚の緩衝部材を重ねて配置してもよく、緩衝部材の総厚は適宜、選択することができる。
【0035】
緩衝部材26は、保護対象物11の寸法(長さ、幅及び高さ)に合わせて正方形又は長方形の板状に形成されることが好ましいが、例えば、図6に示す変形例の緩衝部材28のように、複数(ここでは5つ)の気室29を有するものを用いることもできる。このように分割された複数の気室29を有する緩衝部材28では、一部の気室29が破損して内部の気体が漏れても、他の気室29から気体が漏れることを防止して、緩衝部材28の機能を維持することができる。また、気室の数を増やして緩衝部材を長尺化すれば、図4のように、保護対象物11の外周に別々の緩衝部材26を配置する代わりに、1つの緩衝部材を折り曲げて保護対象物11の外周に巻き付けることもできる。なお、気室の断面形状は、図6に示した半円形状以外に円形状に形成したものが好適に用いられるが、これらに限定されるものではなく、適宜、選択することができる。
【0036】
また、緩衝部材としてクッション材を用いることもでき、その場合、シート状のポリウレタン(スポンジ)等をそのまま使用してもよいし、布製又は合成樹脂製の袋体の中に詰めて使用してもよい。なお、緩衝部材として、気泡緩衝材を使用することもできるが、その場合は、複数枚重ねて使用することが好ましい。以上、説明した種類の異なる緩衝部材は、それぞれを単独で使用してもよいし、複数種類を組合せて(重ねて)使用してもよい。また、これらの専用の緩衝部材を用意する代わりに、毛布や布団等で保護対象物の周囲を覆って簡易的な緩衝部材として使用することもできるし、専用の緩衝部材と簡易的な緩衝部材を併用することもできる。
【0037】
本実施例では、図5に示すように、保護対象物11の上面を上部緩衝部材30で覆って、落下物又は転倒物等との衝突により、収納体15の上面側から受ける衝撃を緩和した。上部緩衝部材30は、保護対象物11の上面に載置するだけでもよいが、必要に応じて、保護対象物11又は緩衝部材26に固定してもよい。なお、上部緩衝部材は省略してもよい。また、保護対象物11を収納した収納体15が浮力により水に浮く場合、漂流物等との衝突により底部17側から受ける衝撃を緩和するために、底部17の上面全体を底部緩衝部材で覆ってもよい。底部緩衝部材は底部に固定しても固定しなくてもよい。なお、上部緩衝部材及び底部緩衝部材の材質及び構造は、緩衝部材と同様であるが、全てが同一の種類である必要はなく、取付け場所等に応じて、異なる種類のものを用いてもよい。
【0038】
以上のように構成された浸水防止パック10の使用方法に基づいて、浸水防止方法を説明する。
まず、図3に示すように、収納体15の開閉部13を開いて、収納体15の周壁部18を高さ方向に押し潰した状態で、所望の位置に設置する。そして、収納体15の底部17の上面に保護対象物11を(移動させ)載置する(以上、保護対象物載置工程)。
次に、図4に示すように、保護対象物11の外周を緩衝部材26で着脱可能に覆って固定バンド27で固定する。緩衝部材26は先に説明したように、中空袋状に形成されており、使用時に内部に気体が充填される。そして、外周を緩衝部材26で覆われた保護対象物11の外形は、平面視して長方形状に整形されている。また、保護対象物11の上面は上部緩衝部材28で覆われる(以上、緩衝部材取り付け工程)。
次に、図5に示すように、収納体15の周壁部18を上方に持ち上げ、開閉部13を防水ファスナー12で密閉することにより、収納体15の内部に保護対象物11を収納することができる(以上、保護対象物収納工程)。
【0039】
次に、図1図2に示すように、平面視して長方形状に形成され、長手方向の一側の前壁20及び他側の後壁21の高さ方向中央部にそれぞれ第1、第2の結束部材挿通部23、24が形成された収納体15に対し、第1の結束部材25aを第1の結束部材挿通部23に挿通し、前壁20の表面を横切る第1の結束部材25aの両端部を後壁21の後方に位置する固定構造物14aに繋ぎ止め、第2の結束部材25bを第2の結束部材挿通部24に挿通し、後壁21の表面を横切る第2の結束部材25bの両端部を前壁20の前方に位置する固定構造物14bに繋ぎ止める。このとき、第1、第2の結束部材25a、25bの両端部を固定構造物14a、14bに繋ぎ止める高さは、第1、第2の結束部材挿通部23、24の高さよりも低くし、第1、第2の結束部材挿通部23、24から固定構造物14a、14bに至るまで第1、第2の結束部材25a、25bを弛ませておくことが好ましい。これにより、浮力や水流により、浸水防止パック10(収納体15)を動かす力が加わった際に、第1、第2の結束部材25a、25bに加わる負荷を軽減することができる(以上、収納体繋ぎ止め工程)。
【0040】
以上のように構成された浸水防止パック10及び浸水防止方法によれば、津波又は洪水等の発生時に、屋内若しくは屋外に設置した浸水防止パック10(収納体15)の内部に各種の保護対象物11を収納することにより、保護対象物11を浸水及び流出等の水害から保護することができるので、被災者は、それらの保護対象物11を避難前に高所等の安全な場所に移動させたり、避難時に持ち出したりする必要がなく、迅速に避難することができ、身体の安全を確保しつつ、財産を守ることができる。特に、保護対象物11が、農業用機械、工作機械又は大型の特殊車両等の水に浮かない重量物であるときには、収納体15を水没させた状態で、収納体15に収納された保護対象物11を浸水から保護することができる。そして、津波又は洪水等が収まった後、保護対象物11を収納体15から取り出せば、それらの保護対象物11を直ちに使用することができるので、修理や新規購入にかかる被災者の費用負担を軽減することができる。また、被災者の生活支援に必要な労力及び支出も大幅に削減することができる。
なお、収納体15の寸法(長さ、幅及び高さ)は、収納する保護対象物11の寸法に応じて、適宜、選択することができる。例えば、家庭用であれば、長さ2m、幅1m、高さ1m程度の大きさとして、テレビ等の電化製品、家財道具、畳、絨毯、布団等を収納することができ、事業者用又は官公庁用であれば、各辺を2~5m程度の大きさとして、事務機器、農業用機械、工作機械等を収納することや、長さを5~10m程度まで長大化して、パトカー、消防車、タンクローリー、バキュームカーといった大型の特殊車両等を収納することができる。
【0041】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は何ら上記した実施例に記載の構成に限定されるものではなく、請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施例や変形例も含むものである。
例えば、開閉部には、盗難防止のための鍵(例えば、防水ファスナーのスライダーを固定するロック機構等)を取付けてもよい。なお、保護対象物は、収納体に収納できるものであれば、特に限定されるものではなく、上記したもの以外にも、例えば、金庫、オートバイ等も対象とすることができる。
また、収納体の外側(例えば、収納体を構成する周壁部の外周下部等)に外部緩衝部材を取付けることもできる。外部緩衝部材の材質及び構造は、上述の緩衝部材と同様とすることができ、漂流物及び周囲の構造物等との衝突時の衝撃を緩和することができる。そして、漂流物等が収納体に直接、衝突することを防止して収納体の損傷を抑えることができ、収納体に収納された保護対象物の水濡れ及び破損を効果的に防ぐことができる。特に、外部緩衝部材が中空袋状に形成され、内部に気体が充填された構造である場合、洪水等により水位が増した時に、外部緩衝部材によって浮力を発生させ、収納体を安定した姿勢で水に浮かせることもできる。外部緩衝部材の数、形状及び配置は、適宜、選択することができる。例えば、環状に形成した1つの外部緩衝部材を収納体の外周を囲むように取付ける以外に、棒状に形成した4本の外部緩衝部材を各周壁部の下辺に個別に取付けてもよいし、平板状に形成した外部緩衝部材で底面部全体を覆うようにしてもよい。また、収納体の上面に外部緩衝部材を取付けて落下物等の衝突による衝撃を緩和したり、収納体の上面周縁及び/又は各周壁部の表面若しくは周縁に外部緩衝部材を取付けて転倒物、漂流物及び周囲の構造物等の衝突による衝撃を緩和したりして、収納体の破損を効果的に防止することができる。
【0042】
基本的には、全体が水密性及び気密性を有する浸水防止パック(収納体)が水の中に浸かっても、収納体の内部に浸水することはなく、保護対象物を水害から守ることができるが、収納体(底部、周壁部及び開閉部)又は防水ファスナーが破損した場合には浸水が発生するので、収納体を水に浮かせることによって、浸水の発生リスクを低減することができる。この場合、収納体と周囲の固定構造物を繋ぎ止める結束部材を予め長め(例えば2~5m程度長め)にしておくことにより、水位の上昇に合わせて収納体を浮上させることができる。また、結束部材の端部を柱に結束する際に、結束部材の結束部と柱の間に予め隙間を設けておき、結束部が柱の高さ方向に沿って移動(摺動)できるようにすることもできる。或いは、結束部材の繰出し方向にフリーで回転可能なリールを備えた結束部材繰出し装置を柱等に固定し、結束部材の他端側をリールに巻き付けておき、水位と共に収納体が上昇して、結束部材が引っ張られた時に、結束部材が自動的に繰出されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る浸水防止パック及び浸水防止方法は、ゲリラ豪雨、台風、津波及び洪水等の発生に備えて、電化製品、寝具、家財道具、事務機器、農業用機械、工作機械及び各種車両等の様々な保護対象物を水密及び気密にパック詰めして浸水から保護することができる。
【符号の説明】
【0044】
10:浸水防止パック、11:保護対象物、12:防水ファスナー、13:開閉部、14a、14b:固定構造物、15:収納体、17:底部、18:周壁部、19:開口部、20:前壁、21:後壁、23:第1の結束部材挿通部、24:第2の結束部材挿通部、25a:第1の結束部材、25b:第2の結束部材、26:緩衝部材、27:固定バンド、28:緩衝部材、29:気室、30:上部緩衝部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6