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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】椅子の構造物の回動構造
(51)【国際特許分類】
   A47C 4/04 20060101AFI20220104BHJP
   A47C 7/56 20060101ALI20220104BHJP
   A47C 3/04 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A47C4/04 Z
A47C7/56
A47C3/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017191394
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019063227
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087468
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 一美
(72)【発明者】
【氏名】登内 武
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖教
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-120124(JP,A)
【文献】特開2005-214325(JP,A)
【文献】特開平07-269589(JP,A)
【文献】特開2006-029560(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0043835(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 3/04
A47C 4/04-26
A47C 7/56
F16D 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動支持軸部材を通過させる貫通孔を有する回動部材と、
前記回動支持軸部材が固定されるねじ孔を有し前記回動部材を回動可能に支持する支持部材と、
前記ねじ孔と螺合するねじが先端に形成されると共に前記回動部材に引っかかる頭部を後端に有し、前記ねじと前記頭部との間に前記回動部材を回動可能に支持する回転軸部を有し且つ前記ねじと前記回転軸部との境界には前記ねじの頭部として機能する段付きが形成された回動支持軸部材と、
前記回動支持軸部材の前記回転軸部を包囲し、前記回転軸部と前記回動部材との間に介在されて前記回動部材の回動の際に前記回転軸部に対して摩擦抵抗を付与する摩擦抵抗付与部材とを備え、
前記摩擦抵抗付与部材と前記回動部材との間では回転が生ずることがなく、前記回動支持軸部材に対して前記摩擦抵抗付与部材の内周面が摺接することで摩擦抵抗が付与される
ことを特徴とする椅子の構造物の回動構造。
【請求項2】
前記摩擦抵抗付与部材は、前記回動支持軸部材の前記回転軸部の外周面に面接触する円弧状の内周面を有するシュー部材と、前記回転軸部に向けて前記シュー部材を押しつける締め付け力を付与する締付部材とを有し、前記締付部材で軸中心に向けて締め付けられることにより前記回転軸部に前記シュー部材が押しつけられて摩擦抵抗が付与されることを特徴とする請求項1記載の椅子の構造物の回動構造。
【請求項3】
前記シュー部材は横断面C形の筒部材であり、前記締付部材による締め付けで縮径されて前記回転軸部に摩擦抵抗を付与することを特徴とする請求項2記載の椅子の構造物の回動構造。
【請求項4】
前記締付部材はOリングであることを特徴とする請求項2または3記載の椅子の構造物の回動構造。
【請求項5】
前記シュー部材と前記回動部材との間には互いに嵌合し前記回動部材の回転方向には係止される回り止めを構成する凹凸を有し、前記シュー部材が前記回動部材に対して回転不能に保持されることを特徴とする請求項記載の椅子の構造物の回動構造。
【請求項6】
前記回動部材が座フレームであり、前記支持部材が脚フレームであり、前記回動支持軸部材が前記脚フレームに固定された回転軸部を有する固定軸であり、前記回動支持軸部材が前記座フレームを貫通して前記脚フレームに固定される一方、前記摩擦抵抗付与部材が前記座フレーム側に回転不能に装着され、前記脚フレーム側に固定された前記回動支持軸部材を中心に前記座フレームが回転可能に支持されて前記座フレームを含む座を水平姿勢と垂直姿勢とに切り替え可能とし、前記垂直姿勢に前記座を保持した状態で同一構造の他の椅子と前後方向にネスティング可能とすることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の椅子の構造物の回動構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに相対的に回転可能に連結される2部材間の回動構造、特に重力の作用方向に回動する回転軸部に適用して有用な回動構造に関する。さらに詳述すると、本発明は、特に椅子の2部材間の回動構造、例えば水平な使用位置から垂直に起立した収納位置との間で回動する跳ね上げ式座の回動構造に適用して有用な回動構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、椅子の構造物の回動構造において回転軸に対して摩擦抵抗を付与する手法については種々提案されている。例えば、金属パイプで四角形に形成された座フレームと当該座フレームに固定された合成樹脂製の座板とを備える座の座フレームの後部が前脚の上端部に設けられた軸受けにボルトで連結されて座がボルトを中心として跳ね上げ回動させることができる椅子において、座の回動に対して抵抗を付与する合成樹脂製の制動部材が嵌められた状態で座フレーム後部の貫通孔を貫通するボルトが軸受けにねじ込まれるようにしているものがある(特許文献1)。
【0003】
また、座フレームと、座フレームを回動可能に支持する回動軸との間に、回動軸の周面に配設されて回動軸と座フレームとの間に介在して座フレームの回動に対して摩擦抵抗を付与するOリングを備え、ねじの締め付けによって摩擦抵抗を発揮させる構造を用いることなく、座などの椅子を構成する部材の回動に抵抗を付与することを可能にするものも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-235670号公報
【文献】特開2016-120124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、座フレームと前脚(軸受け)とを締結するボルトを締める強さ即ちボルトの締め付けトルクを適当に調節することによって座フレームと制動部材との摩擦抵抗を発揮させて座の回動の抵抗を適度に調整するものであるので、ボルトの締め付けが弛むと摩擦抵抗が低減して座が容易に回動するようになる。即ち、ねじによる抵抗付与の方法では、長期間の使用によって座の回動を繰り返すことでねじの弛みが起き、それとともに摩擦抵抗が落ちてしまい、使用者が意図していないにも拘わらず座が不意に倒れるなどの様々の問題を引き起こす虞がある。
【0006】
また、特許文献2記載の発明では、摩擦抵抗付与部材であるOリングと座フレームとが点あるいは線接触により接触するため、座の回動に伴いOリングが擦れることに因るOリングの劣化が激しく、Oリングが破断したり、摩擦抵抗が早期に低減してしまう問題がある。
【0007】
本発明は、長期間の使用によっても、摩擦抵抗付与部材の破損の虞が少なく、摩擦抵抗の低下も少ない椅子の構造物の回動構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、本発明の椅子の構造物の回動構造は、回動支持軸部材を通過させる貫通孔を有する回動部材と、回動支持軸部材が固定されるねじ孔を有し回動部材を回動可能に支持する支持部材と、ねじ孔と螺合するねじが先端に形成されると共に回動部材に引っかかる頭部を後端に有し、ねじと頭部との間に回動部材を回動可能に支持する回転軸部を有し且つねじと回転軸部との境界にはねじの頭部として機能する段付きが形成された回動支持軸部材と、回動支持軸部材の回転軸部を包囲し、回転軸部と回動部材との間に介在されて回動部材の回動の際に回転軸部に対して摩擦抵抗を付与する摩擦抵抗付与部材とを備え、摩擦抵抗付与部材と回動部材との間では回転が生ずることがなく、回動支持軸部材に対して摩擦抵抗付与部材の内周面が摺接することで摩擦抵抗が付与されるようにしている。
【0009】
また、本発明の椅子の構造物の回動構造において、摩擦抵抗付与部材は、回動支持軸部材の回転軸部の外周面に面接触する円弧状の内周面を有するシュー部材と、回転軸部に向けてシュー部材を押しつける締め付け力を付与する締付部材とを有し、締付部材で軸中心に向けて締め付けられることにより回転軸部にシュー部材が押しつけられて摩擦抵抗が付与される構造であることが好ましい。
【0010】
ここで、シュー部材は横断面C形の筒部材であり、締付部材による締め付けで縮径されて回転軸部に摩擦抵抗を付与することが好ましい。
【0011】
また、締付部材はOリングであることが好ましい。
【0012】
さらに、シュー部材と回動部材との間には互いに嵌合し回動部材の回転方向には係止される回り止めを構成する凹凸を有し、シュー部材が回動部材に対して回転不能に保持されることが好ましい。
【0013】
また、本発明の椅子の構造物の回動構造は、回動部材が座フレームであり、支持部材が脚フレームであり、回動支持軸部材が脚フレームに固定された回転軸部を有する固定軸であり、回動支持軸部材が座フレームを貫通して脚フレームに固定される一方、摩擦抵抗付与部材が座フレーム側に回転不能に装着され、脚フレーム側に固定された回動支持軸部材を中心に座フレームが回転可能に支持されて座フレームを含む座を水平姿勢と垂直姿勢とに切り替え可能とし、垂直姿勢に座を保持した状態で同一構造の他の椅子と前後方向にネスティング可能としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の椅子の構造物の回動構造によれば、互いに相対的に回転可能に連結される2部材間の連結と回転の際の摩擦抵抗付与とを分離させた軸受け構造となるので、一定の摩擦抵抗を付与しつつ、2部材間の締結に影響を与えず完全に締め付けて2部材を連結することができる。したがって、ねじに弛みが起き難くい上に仮にねじの弛みが起きても回転軸部を締め付ける摩擦抵抗付与部材の締め付け力には影響を与えず、回転軸部と摩擦抵抗付与部材とが接触する全面(広範囲な面接触)で一定の摩擦抵抗を長期間安定的に付与できる。しかも、回転軸部と摩擦抵抗付与部材とが接触する全面(広範囲な面接触)で一定の摩擦抵抗を長期間安定的に付与できる。即ち、本発明によれば、長期間の使用によっても、摩擦抵抗付与部材の破損の虞が少なく、摩擦抵抗の低下も少ない椅子の構造物の回動構造を提供することができる。
【0015】
さらに加えて、摩擦抵抗付与部材で包囲した回動支持軸部材を回動部材に貫通させて支持部材に連結するだけの簡単な構造で、2部材の連結と回動に対して摩擦抵抗を付与するための仕組みが比較的簡便に構成できる。しかも、摩擦抵抗付与部材は回動部材に挿入されるだけなので、組み立て時に摩擦抵抗の調整作業が不要であると共に調整のばらつきも少ない。
【0016】
また、請求項2記載の発明によれば、摩擦抵抗付与部材を、シュー部材と締付部材とで構成し、締付部材で軸中心に向けて締め付けられることにより回転軸部に摩擦抵抗を付与するようにしているので、回動部材への組み込みが容易であると共に摩擦抵抗の調整が容易に可能である。
【0017】
また、請求項3記載の発明によれば、摩擦抵抗付与部材がC形筒部材であり、その外周面を締付部材で締め付けて縮径させることにより回転軸部に押し当てるようにしているので、C形筒部材の内周面全面での広範囲な面接触で摩擦抵抗を付与することができ、摩擦抵抗が安定的に長期間保持される。しかも、摩擦抵抗付与部材が一部品となるので、取り扱い易く、組み立て性に優れると共に量産性に優れている。
【0018】
また、請求項4記載の発明によれば、摩擦抵抗付与部材に径方向内向きに変形させる締め付け力を付与する締付部材としてOリングを用いているので、Oリングの設置個数が調節されることによって摩擦抵抗の大きさが調整され得るので、椅子を構成する部材の回動に対して摩擦抵抗を付与するための仕組みであって当該摩擦抵抗が容易に調整可能である仕組みが比較的簡便に構成される。
【0019】
また、請求項記載の発明によれば、回動構造を組み立てる際に、シュー部材と回動部材との間の凹凸を噛み合わせるように挿入するだけで、回動部材とシュー部材との間の回り止めを構成することができるので、組み立て性に優れると共に量産性に優れている。
【0020】
さらに、請求項6記載の発明によれば、長期間の使用によっても、摩擦抵抗付与部材の破損の虞が少なく、摩擦抵抗の低下も少ないネスティング椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の椅子の構造物の回動構造をネスティング椅子の座と脚との連結部に適用した一実施形態を示す斜視図である(メッシュ張地を透明にして示す)。
図2】同椅子の座を収納位置に跳ね上げた状態を示す側面図である。
図3】同椅子の座を収納位置に跳ね上げた状態の正面側から見た斜視図である。
図4】同椅子の脚フレームの前脚部、座支持部、後脚部及び後脚部の上端の出っ張りを示す斜視図である。
図5】同椅子の脚と座と背凭れとの関係を斜め後方下から見て示す斜視図である(メッシュ張地を透明にして示す)。
図6】同椅子の座を構成する座枠(メッシュ張地を透明にして示す)と座フレームを分解して示す斜視図である。
図7】分解状態の座枠と座フレームとの回動支持軸部材が貫通する部分の拡大斜視図である。
図8】同椅子の座枠の横断面図である。
図9】同椅子の座フレームの貫通孔部分の拡大斜視図である。
図10】同椅子の構造物の回動構造の一実施形態を示す縦断面図である。
図11】同回動構造の回動支持軸部材と摩擦抵抗付与部材(シュー部材と締付部材)とを分解して示す斜視図である。
図12図11の回動支持軸部材と摩擦抵抗付与部材(シュー部材と締付部材)とを反対側から見て示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1から図12に、本発明にかかる椅子の構造物の回動構造をネスティング椅子の座の支持構造に適用した例を挙げて実施の一形態を示す。なお、本明細書においては、椅子の座に座った着座者を基準にして、また、特に座については座が水平姿勢にあるときを基準にして、上下,前後,左右を定義する。また、座が水平姿勢であるとは座面が正確に水平である状態に加えて大凡水平である状態を含み、座が垂直姿勢であるとは座面が正確に垂直である状態に加えて大凡垂直である状態を含む。
【0024】
この実施形態にかかるネスティング椅子は、座を収納位置に跳ね上げた状態で同一構造の他の椅子と前後方向にネスティングし得るようにしたものであり、ほぼ水平姿勢が保たれる位置(座の使用位置)と跳ね上げられてほぼ垂直姿勢が保たれる位置(座の収納位置)との間で座を回転させるように脚フレームに対して支持させる回動構造を有している。
【0025】
本実施形態のネスティング椅子1は、図1図3に示すように、脚を構成する左右の脚フレーム2と、各脚フレーム2に対して幅方向の水平軸周りに回転自在に支持される座10及び背凭れ7を有し、座10を水平姿勢位置と垂直姿勢位置とに切り替え可能とされている。
【0026】
脚は、本実施形態の場合、左右の脚フレーム2を、それらの間に取り付けられる座10と背凭れ7並びに左右脚連結パイプ8とによって相互に連結することによって組み立てられている(図3及び図5参照)。各脚フレーム2は、前脚部3と、後脚部5と、前脚部3と後脚部5とをそれらの上部で連結する座支持部4と、横連結部6とを備え、例えばアルミダイキャストによって一体成形されている。アルミダイキャストによる脚フレーム2の成形は形状の自由度が高くなるので脚フレームのデザインに受ける制約を少なくしてデザイン性に優れる脚フレームを提供できる。尚、本実施形態の脚フレーム2は、アルミダイキャストによって構成されているが、これに特に限られるものではなく、例えばステンレススティール製パイプあるいはアルミ合金製パイプなどの一本の金属パイプを折り曲げたものを同種の金属板を介して溶接付けして組み立てる一般的な脚フレームを採用しても良い。この場合においても、本発明にかかる回動構造を適用できることは言うまでもない。
【0027】
横連結部6は、例えば前脚部3の内側面から斜め前方内側へ向けて突出するように形成され、かつ先端が対向する相手側脚フレームに向けて対向するように屈曲して左右脚連結パイプ8を嵌合させる先端嵌合部6aが形成されている(図4参照)。この横連結部6の先端嵌合部6aに左右脚連結パイプ8を嵌め込んでねじ止めすることで、左右の脚フレーム2の前方側が左右脚連結パイプ8を介して相互に連結される。本実施形態の場合、左右脚連結パイプ8は、例えば角パイプであって、横連結部6の角軸状の先端嵌合部6aと嵌合する。尚、図示していないが、左右脚連結パイプ8の中には補強のための芯材が収容され、芯材の両端が横連結部6の先端嵌合部6aに連結されることによって当該左右脚連結パイプ8の剛性特に鉛直方向の剛性を高めて撓みを防ぐように設けられている。
【0028】
また、横連結部6及び左右脚連結パイプ8は、座支持部4に固定される回動支持軸部材11よりも前方の位置に配設されて回動支持軸部材11よりも前側で座フレーム24の横桟部25を受け支えることができれば良いが、同時に座の収納位置に座10を跳ね上げて垂直姿勢としたときに左右の脚フレーム2の間に残ることから可能な限り回動支持軸部材11寄りの位置に設けることがネスティング効率を上げる上では好ましい。そこで、本実施形態の場合には、例えば、座10を倒して水平姿勢にした状態で、回動支持軸部材11が貫通する位置から座フレーム24の先端縁までの間の中程に横連結部6及び左右脚連結パイプ8が配置されるように設けられている。また、横連結部6及び左右脚連結パイプ8は、本実施形態の場合、ユーザーが座に着座したときのメッシュ張地23の撓みを考慮して、メッシュ張地23で構成される座面よりも遙かに下に設けられている。
【0029】
座支持部4の前後方向における中間位置には、互いに対向する向かい側の座支持部4に向けて即ち椅子1の内側に向けて左右方向に突出する回動支持軸部材11が固定されるねじ孔35が設けられている。また、回動支持軸部材11がねじ込まれる面には、ボス部36が形成されると共にねじ孔35の入り口部分となる座ぐり穴37が設けられている。
【0030】
後脚部5の内側の面(左右の脚フレーム2の後脚部5の互いに対向する面)には、後部ダンパ33が備えられている。この後部ダンパ33は、例えば樹脂製のブロックであり、後脚部5に例えばビス止めあるいは接着等によって取り付けられている。また、前脚部3の左右連結部6のコーナ部分には、前部ダンパ34が備えられている。この前部ダンパ34は、例えば樹脂製のブロックであり、左右連結部6のコーナ部分に例えばビス止めあるいは接着等によって取り付けられている。これによって、座10を跳ね上げた状態で同一構造の他の椅子と前後方向にネスティングさせる場合に、後脚部5と前脚部3の左右連結部6のコーナ部分とが直に接触するのを防いで、衝撃や衝突時の音を緩和させることができる。
【0031】
ここで、本実施形態の脚フレーム2は、後脚部5に対して座支持部4と前脚部3とが先端側に向かうほど漸次内側にオフセットするように形成され、左右の脚フレーム2を組み立てた状態で、後脚部5の内脚幅(左右の後脚部5の間の内側の間隔)よりも前脚部2の外脚幅(左右の前脚部3の間の外側の間隔)が狭くなるように構成されている。これにより複数の椅子1が前後方向に並べられたときに、後方の他の椅子の左右の前脚部3,3が前方の椅子の左右の後脚部5,5の間に入り込み、ネスティング可能な脚構造となる。なお、本実施形態では、前脚部3及び後脚部5のそれぞれの下端部にはキャスタ38が取り付けられているが、キャスタ38を備えることは本発明において必須の構成ではない。
【0032】
背凭れ7は、射出成形によって背枠7aと背凭れ面7b及び背枠7aの両側部分の下端部分に筒状の取付部(受口)7cが一体成形された樹脂成形品であり、平面視において左右方向における中間部分が後方に撓んで湾曲すると共に側面視において上下方向における中央よりもやや下方の部分が前向きに凸となるように湾曲する形状に形成されている。そして、背凭れ面には、前後方向に貫通する多数の小孔7dが形成されている。
【0033】
この背凭れ7は、例えば背枠下端の取付部7cが、後脚部5の上端の上に向かって先細りとなる出っ張り5aに嵌められることによって脚フレーム2に装着される。即ち、背凭れ7の筒状の取付部(受口)7cと後脚部5の上端の出っ張り部5aとは、印籠継手を構成しており、嵌め込まれた状態で、例えばねじ止めなどによって相互に固定される。
【0034】
座10は、例えば図6及び図7に示すように、座面を形成するメッシュ張地23と、該メッシュ張地23の縁をインサート成形により一体化して保持する座枠22と、該座枠22を下から受支え補強する座フレーム24とで構成され、座フレーム24と座枠22とを重ね合わせてねじ止めすることによって一体化されている。座フレーム24の回動支持軸部材11が貫通する部位に重なる座枠22の周縁には、貫通孔29のボス部32を囲うU形溝22aが形成され、隙間なく重ね合わされている。尚、座10の構造物としての機械的強度は主に座フレーム24によって担保されている。
【0035】
メッシュ張地23と座枠22とは、座枠22の射出成形時にメッシュ張地23の縁をインサートすることで一体成形されている。メッシュ張地23は、予めテンションを付加せずに金型のキャビティ内にメッシュ張地23の縁をインサートし、射出成形後にプラスチック製座枠22によって周縁が固定されたメッシュ張地23部分を熱処理して熱収縮によりテンションを付与して成形(本明細書ではヒートセットと呼び、例えば加熱した熱源を膜状部材に当接或いは接近させることで膜状部材を熱収縮させることによって予張力を付与することをいう。)しても良いし、予めメッシュ張地23にテンションを付加した状態で金型内にインサートしてインサート成形するようにしても良い。本実施形態の場合、インサート成形後にメッシュ張地23をヒートセットする方法で座10を形成している。ここで、型を閉じて射出成形する時に、金型内にインサートしたメッシュ張地23の縁を成形品の底面(裏面)を区画する部分のキャビティ面に押さえつけて固定するための爪形のスライドコア(図示省略)を利用して溶融樹脂の流れにメッシュ張地23の縁が浮遊しないようにすることが好ましい。同時に、溶融樹脂の流れによって爪形のスライドコアで固定された部位から離れたところでメッシュ張地23の縁が成形品の底面(裏面)から内側面を区画する部分のキャビティ面に押しつけられないようにするため、メッシュ張地23の縁とキャビティ面との間のキャビティ内に部分的仕切りのような堰状のスライドコア(図示省略)あるいは堰状のインサート(図示省略)をセットして溶融樹脂の流れに変化を与えてキャビティ面に向けてメッシュ張地23が偏る動きを阻止することを併用することが好ましい。これらのインサート成形手法は、メッシュ張地23のインサート成形を確実なものとすると共にメッシュ地が樹脂枠の中に確実に配置して樹脂枠の表面に露出しないようにできるので、外観を損なうこともなければ、メッシュ張地23に着座者の体重がかかったときに樹脂枠の表面からメッシュ張地23が剥がれることも無い。尚、図8に示すように、上述の爪形のスライドコア並びに仕切りのようなスライドコアの使用により、射出成形品・座枠22の裏面側には凹部27,28が形成されメッシュ張地23の縁が露出するが、座フレーム24が宛がわれて覆われるので外観に露出することはない。
【0036】
また、座フレーム24の両側の中央にはメッシュ張地23で構成される座面から離れる方向(床方向)に突出する弓形の横桟部25が設けられている。この横桟部25は、脚の横連結部6の間に嵌合された左右脚連結パイプ8と当接して座フレーム24全体を受支えるためのものであり、横連結部6から十分に離れた上方に座フレーム24を持ち上げることでメッシュ地の下に十分な空間を形成して底突き感の無い座面を形成するように設けられている。
【0037】
さらに、座フレーム24のほぼ中央を横切る横桟部25の裏面の左右脚連結パイプ8と当接する部位には、弾力性を有する緩衝パッド26が備えられている。この緩衝パッド26は、例えばプレート状の当接部と横桟部25に設けられた孔(図示省略)に圧入される係止ピン(図示省略)とを有するものであり、座10を使用位置に倒したときに脚側の左右脚連結パイプ8に当接することで、衝突音の発生を防ぐと共に緩衝作用を与え、座10が着座に適当な水平姿勢になる高さに保つ。座10は、横桟部25が脚の左右脚連結パイプ8と当接することで水平姿勢を採り、かつ水平姿勢が保たれる。
【0038】
また、座フレーム24には、図6及び図9などに示すように、例えば前後方向における中間位置よりも後方寄りの位置に、回動支持軸部材11を取り付けるための貫通孔29が幅方向の一軸上に左右対称に設けられている。一例としては、貫通孔29は座フレーム24の中央よりも後端側寄りで、尚且つ座フレーム24を跳ね上げて垂直姿勢を採ったときに回転軸部14を通る鉛直軸よりも後方側(背凭れ側)に重心位置が設定される位置に回動支持軸部材11が配置されるように設けられている。これによって、座10は、回動構造の回転軸部14を中心に跳ね上げられて垂直姿勢を採ると、背凭れ7に凭れかかることで、あるいは摩擦抵抗付与部材21から付与される摩擦抵抗によって、垂直姿勢が保たれる。また、貫通孔29の入り口には、回動支持軸部材11の頭部13を納める座ぐり穴30が設けられると共に、摩擦抵抗付与部材21の回転を阻止するための構造例えば凹部31が設けられている。そして、これら貫通孔29に回動支持軸部材11が挿し込まれてその先端のねじ12が座支持部4のねじ孔35に螺合されることによって脚フレーム2と座フレーム24とが回転可能に連結される。
【0039】
以上のように構成されたネスティング椅子の座10と脚フレーム2とは、回動構造を介して水平な一軸上で回転可能に連結されて水平姿勢(座としての使用位置)と垂直姿勢(背凭れに沿うように跳ね上げられて起立する座の収納位置)との間で回動するように脚フレーム2に対して装着される。
【0040】
即ち、本実施形態の椅子の構造物の回動構造は、例えば回動部材と支持部材との連結部に、回動部材を回動可能に支持する回転軸部を有し回動部材を支持部材に回転可能に連結する回動支持軸部材と、回動支持軸部材の回転軸部を包囲し、回転軸部と回動部材との間に介在されて回動部材の回動の際に回転軸部に対して摩擦抵抗を付与する摩擦抵抗付与部材とを備え、摩擦抵抗付与部材と回動部材との間では回転が生ずることがなく、回動支持軸部材に対して摩擦抵抗付与部材の内周面が摺接することで摩擦抵抗が付与される構造とされている。
【0041】
具体的には、ネスティング椅子の座10と脚フレーム2との間の回動構造に適用した本実施形態の場合には、回動部材が座フレーム24であり、支持部材が脚フレーム2であり、回動支持軸部材11が脚フレーム2に固定された回転軸部14を有する固定軸であり、回動支持軸部材11が座フレーム24を貫通して脚フレーム2に固定される一方、摩擦抵抗付与部材21が座フレーム24側に回転不能に装着され、脚フレーム2側に固定された回動支持軸部材11を中心に座フレーム24が回転可能に支持されて座フレーム24を含む座10を水平姿勢と垂直姿勢とに切り替え可能とし、垂直姿勢に座10を保持した状態で同一構造の他の椅子と前後方向にネスティング可能とする。
【0042】
回動支持軸部材11は、図11に示すように、先端にねじ12が形成されると共に、後端に頭部(円板状の頭部)13を有し、それらの間に段付きを伴う回転軸部14(ボルトのねじを切っていない円筒部・ショルダー)が形成されている。即ち、回動支持軸部材11は、本実施形態の場合には所謂段付ねじ(ショルダーボルト)の形態を成している。本実施形態では、頭部13は円板によって構成され、頭部13の中央には、六角レンチを差し込むための六角孔13aが形成された六角穴付きショルダーボルトである。回動支持軸部材11の先端のねじ12と回転軸部14(ショルダーとも呼ばれる)14との境界には段付き15が形成され、この段付き(ショルダー接触面とも呼ばれる)15が脚フレーム2の座支持部4のねじ孔35の入り口の座ぐり穴37の底面に当接して、ねじの頭部としての機能を発揮する。即ち、回動支持軸部材11は、段付き15が座支持部4のねじ孔35の座ぐり穴37の底面に当接するまで先端のねじ12を締め付けることで一定の締結力で固定できる。
【0043】
尚、本発明において回動支持軸部材11が支持部材である脚フレーム2に対してねじ止めで固定されることは必須の構成ではなく、例えば圧入固定や、溶接付あるいはリベット止めなどで固定しても良いし、回動部材である座フレーム24に貫通させた自由端側のねじ部に抜け止めのナットなどを螺合させるようにしても良い。即ち、回動支持軸部材11は段付きねじの形態に限られない。
【0044】
摩擦抵抗付与部材21は、例えば、回転軸部14を包囲して径方向に弾性変形可能な円弧状部材であり、回動支持軸部材11に対して摩擦抵抗付与部材21の内周面が摺接することで摩擦抵抗を付与するものであり、かつ軸受けも兼ねる。具体的には、摩擦抵抗付与部材21は、例えば図11及び図12に示すように、回動支持軸部材11の回転軸部14の外周面に面接触する円弧状の内周面を有するシュー部材16と、回転軸部14に向けてシュー部材16を押しつける締め付け力を付与する締付部材20とで構成され、締付部材20で軸中心に向けて締め付けられることにより回転軸部14にシュー部材16が押しつけられて摩擦抵抗が付与されるように設けられている。
【0045】
本実施形態の場合、シュー部材16は例えばポリアセタール製の横断面形状C形の筒部材(以下、C形筒部材と呼ぶ)であり、その外周面を径方向中心側に向けて常時付勢力を付与する締付部材例えばOリング20で締め付けることにより、径方向内向きに弾性変形可能な構造とされている。ポリアセタールは、通常軸受け部材などとしても使用されるものであり、摺動性、耐摩耗性、耐疲労性に富み、機械的強度に優れるものであるが、軸方向のスリット17が設けられて横断面形状C形に形成されることによって、径方向に弾性変形可能な弾性構造物として機能する。そして、C形筒部材の外周面側を全周から中心に向けて均等にOリング20で締め付けることにより、内方の回転軸部14をほぼ全周面で均一に締め付けて摩擦抵抗を与える摩擦抵抗付与部材21として機能するものである。本実施形態の場合、C形筒部材から成るシュー部材16の外周面に軸方向に等間隔に形成された複数本例えば4本の環状の溝18に、Oリング20をそれぞれ嵌めることによって長さ方向に均等に締め付けるように構成されている。これにより、座10は適度な摩擦抵抗が付与されて使用位置と跳ね上げ位置との間で必要以上の抵抗なく回転可能となる。ここで、本実施形態のシュー部材16は、軸方向のスリット17を入れた一部品となる横断面形状C形の筒部材に形成されているので、複数枚に分割されたシュー部材16を回転軸部14の周りに配置してOリングなどの締付部材20で組み付けてから座フレーム24に組み込む場合に比べて遙かに組み立て性に優れ、量産性に優れている。
【0046】
締付部材20は、径方向に弾性変形可能なシュー部材16を径方向中心側に向けて常時付勢力を付与するものであり、例えば入手が容易で安定した締め付け力が得られるOリングの使用が好ましい。本実施形態の場合、シュー部材16の外周面に軸方向へ一定間隔で複数本例えば4本のOリングが嵌められている。Oリングの本数は4本であることに特に限られるものではなく、3本以下のOリングあるいは5本以上のOリングを用いて締め付けるようにしても良い。締付部材の数及び位置を調整することによって回転軸部14に付与する摩擦抵抗の大きさ、付与位置あるいは分布などの調整を容易に行える。例えば、予め環状の溝18を多数設けておけば、基本構造は変更せずにOリング20の本数を増減することで締め付け力を増減させることができる。特に、本実施形態のように締付部材としてOリング20が用いられる場合には、Oリング20の設置個数の調節は容易・簡便であるので、座フレーム24の回動に対する摩擦抵抗の調整が容易である仕組みが簡便に構成される。
【0047】
ここで、径方向に弾性変形可能な円弧状のシュー部材16とOリング20との組み合わせから成る摩擦抵抗付与部材21は、回動支持軸部材11の回転軸部14にシュー部材16と締付部材であるOリング20とを嵌合させた状態で座フレーム24の貫通孔29に挿入することで、シュー部材16の外周面よりも径方向外側へ膨らんだ(飛び出した)Oリング20が押し潰され適度の圧縮を受けることにより生ずる反発力をシュー部材16に伝えてシュー部材16を回転軸部14に押しつけ締め付けるものである。これにより、制動力即ち摩擦抵抗を得る。このため、締め付け力換言すれば摩擦抵抗を予め一定に設定することができるので、締め付け力の調整作業が不要となると共に締め付け力の調整のばらつきもなくなる。
【0048】
また、座フレーム24の貫通孔29に締付部材・Oリング20を嵌め込むときの反発で締め付け力が発生するものであるので、締付部材20はリング状で無くとも良いしそれ自体の弾性力・復元力でシュー部材16を締め付ける必要もなく、座フレーム24と回転軸部14との間に介在されることで、即ち座フレーム24の貫通孔29に挿入されることで付加される拘束で発生する反発力でシュー部材16を回転軸部14に押しつけるようにしても良い。例えば、ポリアセタール製シュー部材16の裏面(回転軸部14と摺接する内周面に対して裏側となる外周面側を指す)に何らかの高反発性クッション材例えば高反発ウレタンを取り付けることで、一部品化しても良い。
【0049】
また、リング状の締付部材20は、相対的な回転を伴わない2部材間に介在されることから、断面形状については特に円形(Oリング)に限定されず、角リング、Dリング、Xリングなどの非円形断面のばね性のあるリングでも良い。また、締付部材20は密封を目的とせず、シュー部材16を回転軸部14に押しつける付勢力を常時付与することを目的とするものであることから、ニトリルゴム製のOリングのようなものに限られず、例えばゴムバンドやばね鋼製C形リング、ガーターばねなどのばね性のあるリングや筒状部材でも良い。さらには、Oリングに代えてクッション性のある素材のテープなどを巻くことも可能である。
【0050】
また、本実施形態では、摩擦抵抗付与部材21はC形筒部材から成るシュー部材16とその外周面を締め付けるOリング20との2部材の組み合わせで構成されているが、これに特に限定されるものではなく、それ自体が径方向に弾性変形可能で尚且つ中心に向けて常時付勢力を付勢するばね性を有する材料であれば一部品であっても実施可能である。例えば、図示していないが、弾力性のあるエラストマ樹脂やばね鋼などで回動支持軸部材11よりも僅かに小径の円筒あるいはC形円筒に形成し、拡げて回動支持軸部材11に嵌め込むことにより復元力により常時締め付け力を付与するようにしても良いし、さらには貫通孔の内周面に中心軸に向けて突出するテーパ面を形成して回動支持軸部材11とその外周を包囲するシュー部材16とを貫通孔に挿入すると同時にテーパ面でシュー部材16を内側に窄めてシュー部材16を回動支持軸部材11に押しつけるように変形させるようにしても良い。これらの場合には、摩擦抵抗付与部材21は一部品で構成される。
【0051】
また、摩擦抵抗付与部材21は、本実施形態の場合、C形の円弧状(優弧)として構成されているが、例えば180°未満の円弧(劣弧)状のシュー部材例えば2部材あるいは3部材以上に周方向に分割されたシュー部材を回転軸部14の周りに組み合わせて締付部材で締め付けるような構造としても良い。
【0052】
以上の構成の回動支持軸部材11とシュー部材16及びOリング20とは、順次嵌合されて1本の軸として回動部材たる座フレーム24の貫通孔29にセットされてから支持部材たる脚フレーム2のねじ孔35にねじ込まれる。
【0053】
貫通孔29には、回動支持軸部材11の回転軸部14並びに該回転軸部14に嵌合される摩擦抵抗付与部材21即ちシュー部材16とシュー部材16の周囲に嵌められるOリング20とが組み立てられた状態で収容され、回動支持軸部材11の先端のねじ部12が脚フレーム2の座支持部4のねじ孔35に向けて突出させられる。他方、シュー部材16の側には、座フレーム24の貫通孔29の入り口周辺の凹部31と嵌合して回り止めを構成する凸起19が頭部13の直近に形成されている。したがって、回転支持軸部材11を貫通孔29に挿入する際に、摩擦抵抗付与部材21の凸部19を貫通孔19側の凹部31と位置合わせてして軸方向に押し込むだけで、凹凸19,31が嵌合してシュー部材16と回動部材たる座フレーム24とが回転方向に係合され、シュー部材16と座フレーム24との間で回転が生ずることがなくなる。
【0054】
そして、貫通孔29に摩擦抵抗付与部材21(シュー部材16とOリング20)を介在させて挿入された回動支持軸部材11は、先端のねじ12が座支持部4のねじ孔35に螺合されることによって、脚フレーム2と座フレーム24とを回転可能に連結する。同時に、上述の回動構造は、互いに相対的に回転可能に連結される2部材間の連結と回転の際の摩擦抵抗付与とを分離させた軸受け構造となるので、ねじの締結に影響を与えず完全に締め付けて2部材を連結することができる。
【0055】
以上のように構成されたネスティング椅子1の座10の回動構造によれば、脚フレーム2と座フレーム24とを回転可能に連結する回動支持軸部材11と座フレーム24の貫通孔29との間に介在される円弧状の摩擦抵抗付与部材21によって、座フレーム24の回動に際して摩擦抵抗が回動支持軸部材11の回転軸部14の外周面のほぼ全域に面接触下に付与されることから、荷重が集中されること無く分散される。また、回動支持軸部材11は摩擦抵抗付与部材21とは無関係に脚フレーム2に固定される。依って、回動支持軸部材11の締め付けとは無関係に安定的に一定の摩擦抵抗を付与することができる。
【0056】
したがって、座10は水平姿勢と垂直姿勢とに適度な摩擦抵抗の下に軽快に切り替え可能であると共に、水平姿勢に戻そうとする外力がかからない限り垂直姿勢を保ち続けることができる。このため、座10を跳ね上げて垂直姿勢に保持した状態で同一構造の他の椅子と前後方向にネスティングし得る椅子に適用した場合に、椅子の使用の快適性が高まる。しかも、Oリング20は回転軸部14と直に接触しておらず、シュー部材16を回転軸部14に押しつける力を付与しているだけなので、損傷し難い上に、材質、厚み、本数などを増減することで締め付け力換言すれば摩擦抵抗の大きさを容易に調整できる。
【0057】
しかも、ねじ12の適正な締め付けによって脚フレーム2と座フレーム24との間のねじ締結を行うと同時に、回転軸部14を包囲する摩擦抵抗付与部材21のシュー部材16にねじの締め付け力とは異なる方向の締め付け力を付与して一定の摩擦抵抗を発揮させながら滑り摩擦で荷重を面で支えているので、ねじ12に弛みが起き難くい上に仮にねじ12の弛みが起きても回転軸部14を締め付ける摩擦抵抗付与部材21の締め付け力には影響を与えず、回転軸部14と摩擦抵抗付与部材21とが接触する全面(広範囲な面接触)で一定の摩擦抵抗を長期間安定的に付与できる。
【0058】
即ち、椅子の互いに相対的に回転可能に連結される2部材間のねじ締結と回転とを両立させ、椅子の使用の快適性の向上を図ることが可能になる。特に重力の作用方向に回動する回転軸部を備える座の跳ね上げ機構における、座の使用位置と跳ね上げ位置との間の回転動作の快適性の向上を図ることを可能にする。摩擦抵抗付与部材21は座フレーム24の貫通孔29に挿入するだけなので、組み立て時に摩擦抵抗の調整作業が不要であると共に調整のばらつきも少ない。
【0059】
なお、上述の実施形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では本発明に係る回動構造がネスティング椅子1の座部回転構造に適用されるようにしているが、これに特に限られるものではなく、種々の椅子の構造物の回動構造に適宜選択され得る。具体的には例えば、上述の実施形態の椅子1のように前後方向にネスティング可能であることは本発明において必須の構成ではなく、また、脚フレーム2並びに背凭れ7及び座10などの各構成部材の具体的な形状や態様は椅子の用途やデザインなどを踏まえて種々のものが適宜選択され得る。さらに、一例として挙げると、本発明が適用される椅子としては、背凭れ7を有することは必須の構成ではなく、また、座10がメッシュ張地23を座枠22にインサート成形してヒートセットしたものと座フレーム24とを組み合わせたものとすることも必須の構成ではない。座10は特定の構造に限定されず、例えば特開2016-120124号において開示されているような構造、即ち座フレームと、座フレームの上面に取り付けられるシェルと、シェルの下方に配設される弾性部材と、シェルの上面を覆うクッションと、座フレームの下面に取り付けられる座裏カバーとで構成されるようなものであっても良い。
【0060】
また、上述の実施形態では、座10は、座フレーム24と座枠22との2部材で構成されているが、これに限られるものではなく、上述の実施形態における座フレーム24と座枠22とが備える構成・機能に相当する構成・機能を備えて一体のものとして形成された座が用いられるようにしても良い。
【0061】
また、上述の実施形態では左右の回動支持軸部材11の双方に摩擦抵抗付与部材21が設けられるようにしているが、どちらか一方の回動支持軸部材11のみに摩擦抵抗付与部材21が設けられるようにしても良い。
【0062】
また、上述の実施形態ではネスティング椅子の座の回動構造を例に挙げて説明しているが、椅子の構造物における回動部材と回動支持軸部材との組み合わせは上述の実施形態におけるものには限られない。具体的には例えば、前後傾動可能なヘッドレストを回動部材とすると共に当該ヘッドレストの左右両端部において当該ヘッドレストを回動可能に支持する左右方向に配設された一対の軸部材を回動支持軸部材とするようにしても良いし、水平回動可能な肘掛け(具体的には肘載せ部)を回動部材とすると共に当該肘掛けの下面側において当該肘掛けを回動可能に支持する上下方向に配設された軸部材を回動支持軸部材とするようにしても良いし、あるいは着座者の前方において左右方向や前後方向または他の方向に回転可能なメモ台やテーブルを回動部材とすると共に当該メモ台やテーブルを回動可能に支持する軸部材を回動支持軸部材とするようにしても良い。即ち、本発明は、互いに相対的に回転可能に連結される2部材間の回転軸部、特に重力の影響を受ける方向に回動する回転軸部に適用することが好ましいが、これに特に限られるものではなく、互いに相対的に回転可能に連結される2部材間の回動構造の全般に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
1 椅子
2 脚フレーム(支持部材)
4 座支持部
10 座
11 回動支持軸部材(段付きねじ)
14 回転軸部
16 シュー部材
19 摩擦抵抗付与部材の回り止めを構成する凸起
20 Oリング(締付部材)
21 摩擦抵抗付与部材
24 座フレーム(回動部材)
29 貫通孔
31 摩擦抵抗付与部材の回り止めを構成する凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12