(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】ファスト・チャンネル・チェンジの方法およびそれに対応する装置
(51)【国際特許分類】
H04N 21/438 20110101AFI20220104BHJP
【FI】
H04N21/438
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2016203286
(22)【出願日】2016-10-17
【審査請求日】2019-10-10
(32)【優先日】2015-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】319002876
【氏名又は名称】インターデジタル マディソン パテント ホールディングス, エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】クエール,テイエリー
(72)【発明者】
【氏名】リガル,ルノー
(72)【発明者】
【氏名】ドウボーミイ,ニコラス
【審査官】松元 伸次
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01670252(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2009/0148131(US,A1)
【文献】特開2012-165380(JP,A)
【文献】特表2006-506015(JP,A)
【文献】特開2012-191623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N7/10
7/14-7/173
7/20-7/56
21/00-21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネット・プロトコル・ネットワークを介してオーディオ/ビデオ・ストリームを受信するオーディオ/ビデオ受信装置のファスト・チャンネル・チェンジの方法において、該方法が前記オーディオ/ビデオ受信装置によって実施され、該方法が、
チャンネル変更命令を受信することと、
新たなチャンネルに対応する前記オーディオ/ビデオ・ストリームのバースト配信についての要求を送信することと、
前記バースト配信に含まれるビデオのプレゼンテーション・タイム・スタンプの受信前の前記バースト配信に含まれる最新のプログラム・クロック・リファレンスとオフセットとの加算値で前記オーディオ/ビデオ受信装置内の復号器クロックを初期化することであって、前記オフセットは、前記バーストにおけるビデオ・フレームとそれに対応するオーディオ・フレームとの間のドリフトと、データがプレイアウト・レートでの配信に比べて超過して受信される前記バースト配信の一部分の持続期間として定義される前記バースト配信の超過データ配信の持続期間との関数である、前記初期化することと、
前記バースト配信の終了後に前記プレイアウト・レートで前記オーディオ/ビデオ・ストリームを受信することと、
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記ドリフトは、前記ビデオのプレゼンテーション・タイム・スタンプと前記最新のプログラム・クロック・リファレンスとの差分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記差分が前記バースト配信の超過データ配信の前記持続期間よりも短い場合は、前記オフセットが前記ドリフトに等しく、その他の場合は、前記オフセットが超過データ配信の前記持続期間である、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
オーディオ・フレームとビデオ・フレームとの間の前記ドリフトをモニタリングすることと、
オーディオ・フレームとビデオ・フレームとの間の前記ドリフトが変化した場合に、前記復号器クロックをオーディオ・フレームとビデオ・フレームとの間のドリフトにおける前記変化に基づいて再初期化することと、
を更に含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
バースト特性をモニタリングすることと、
前記バースト特性が変化した場合に、前記復号器クロックを前記変化したバースト特性に基づいて再初期化することと、
を更に含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
オーディオ・フレームとビデオ・フレームとの間の前記ドリフトをモニタリングすることと、
バースト特性をモニタリングすることと、
前記ドリフト又は前記バースト特性が変化した場合に、前記復号器クロックを、前記変化したドリフトに基づいて、又は、前記変化したバースト特性に基づいて、再初期化することと、
を更に含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記復号器クロックの前記再初期化は、前記オーディオ/ビデオ受信装置によって出力される動画の出現の前に行われる、請求項4から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記復号器クロックはシステム・タイム・クロックである、請求項1から3のいずれか
1項に記載の方法。
【請求項9】
オーディオ/ビデオ受信装置において、
該オーディオ/ビデオ受信装置が、ビデオのプレゼンテーション・タイム・スタンプの受信前に受信された最新のプログラム・クロック・リファレンスとオフセットとの加算値で前記オーディオ/ビデオ受信装置の復号器クロックを初期化するように構成された復号器クロック初期化器を備え、前記オフセットは、バースト配信におけるオーディオ・フレームとビデオ・フレームとの間のドリフトと、データがプレイアウト・レートでの配信に比べて超過して受信される前記バースト配信の一部分の持続期間として定義される前記バースト配信の超過データ配信の持続期間との関数である、前記オーディオ/ビデオ受信装置。
【請求項10】
前記装置が、
チャンネル変更命令を受信するように構成されたインタフェースと、
選択されたオーディオ/ビデオ・チャンネルからのオーディオ/ビデオ・コンテンツのバースト配信についての要求を送信するように構成されたネットワーク・インタフェースと、
を更に備え、
前記ネットワーク・インタフェースは、前記バースト配信の終了前にプレイアウト・レートでの伝送からのオーディオ/ビデオ・コンテンツの受信に切り換えるように更に構成されている、請求項9に記載のオーディオ/ビデオ受信装置。
【請求項11】
前記復号器クロック初期化器は、前記ドリフトを、前記ビデオのプレゼンテーション・タイム・スタンプと前記最新のプログラム・クロック・リファレンスとの差分として算出するように更に構成されている、請求項9又は10に記載のオーディオ/ビデオ受信装置。
【請求項12】
前記復号器クロック初期化器は、前記差分が前記バースト受信の超過データ配信の前記持続期間よりも短い場合は、前記オフセットを前記ドリフトと等しくなるように算出するように更に構成されており、その他の場合は、前記オフセットは超過データ配信の前記持続期間である、請求項
11に記載のオーディオ/ビデオ受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概ね、オーディオ/ビデオ・サービスのレンダリングの分野に関し、詳しくは、ファスト・チャンネル・チェンジに関する。
【背景技術】
【0002】
アナログからデジタルへのテレビジョンの転換は、例えば、伝送帯域幅の増大、画質の向上といった多くの理由で、オーディオビジュアル・コンテンツの送受信において大きな飛躍的進歩であった一方で、チャンネル変更速度は顕著に遅くなった。その理由は、デジタル受信機が、新たなチャンネルの最初の画像を表示する準備ができる前に、多数のタスクを実行するからである。任意の動画を表示でき、音声をその動画と同期させて(リップ同期させて)レンダリングできる前に、処理時間が、特に、オーディオ及び/又はビデオ(AV)パケットの抽出とバッファリングとに費やされ、受信機のバッファをデジタル伝送から抽出されたAVパケットで満たすことに費やされる。多数のユーザが後退として感じるこの欠点を解消するために、一般にファスト・チャンネル・チェンジ(Fast Channel Change:FCC)と呼ばれる様々なソリューション(解決手段)が開発された。このFCCの課題に対するこれらの解決手段の1つは、マルチキャストIPストリームにつなげる前のオーディオ/ビデオ・コンテンツのインターネット・プロトコル(IP)ユニキャスト・バースト伝送である。チャンネルを変更する受信機が、オーディオ/ビデオ・コンテンツについてユニキャスト・バーストを要求する。このバーストの速度はプレイアウト・レート(playout rate)よりも速いので、受信機は、高速で自己の受信バッファを新たなチャンネルのオーディオ/ビデオ・パケットで満たすことができ、高速で復号とレンダリングとを開始できるようになり、その次に、マルチキャスト・ストリームからのオーディオ/ビデオ・パケットの受信に切り換える。十分なオーディオ及びビデオのデータが受信されると、動画が表示される。
【0003】
従って、チャンネル変更遅延の更なる低減が必要である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、従来技術の一部の不都合を解消することを目ざすものである。
【0005】
この目的のために、本原理は、インターネット・プロトコル・ネットワークを介してオーディオ/ビデオ・ストリームを受信するオーディオ/ビデオ受信装置のファスト・チャンネル・チェンジの方法を含む。この方法は、オーディオ/ビデオ受信装置によって実施され、この方法は、チャンネル変更命令を受信することと、新たなチャンネルに対応するオーディオ/ビデオ・ストリームのバースト配信についての要求を送信することと、バースト配信に含まれるビデオのプレゼンテーション・タイム・スタンプの受信前のバースト配信に含まれる最新のプログラム・クロック・リファレンスとオフセットとの加算値でオーディオ/ビデオ受信装置内の復号器クロックを初期化することであって、オフセットは、バースト配信におけるビデオ・フレームとそれに対応するオーディオ・フレームとの間のドリフトと、データがプレイアウト・レートでの配信に比べて超過して受信されるバースト配信の一部分の持続期間として定義されるバースト配信の超過データ配信の持続期間との関数である、初期化することと、バースト配信の終了後にプレイアウト・レートでオーディオ/ビデオ・ストリームを受信することと、を含む。
【0006】
本方法の一変形態様によれば、ドリフトは、ビデオのプレゼンテーション・タイム・スタンプと最新のプログラム・クロック・リファレンスとの差分である。
【0007】
本方法の一変形態様によれば、差分がバースト配信の超過データ配信の持続期間よりも短い場合は、オフセットはドリフトに等しく、その他の場合は、オフセットは超過データ配信の持続期間である。
【0008】
本方法の一変形態様によれば、本方法は、オーディオ・フレームとビデオ・フレームとの間のドリフトをモニタリングすることと、オーディオ・フレームとビデオ・フレームとの間のドリフトが変化した場合に、復号器クロックをオーディオ・フレームとビデオ・フレームとの間のドリフトにおける変化に基づいて再初期化することと、を更に含む。
【0009】
本方法の一変形態様によれば、本方法は、バースト特性をモニタリングすることと、バースト特性が変化した場合に、復号器クロックを変化したバースト特性に基づいて再初期化することと、を更に含む。
【0010】
本方法の一変形態様によれば、本方法は、オーディオ・フレームとビデオ・フレームとの間のドリフトをモニタリングすることと、バースト特性をモニタリングすることと、ドリフト又はバースト特性が変化した場合に、復号器クロックを、変化したドリフトに基づいて、又は、変化したバースト特性に基づいて、再初期化することと、を更に含む。
【0011】
本方法の一変形態様によれば、復号器クロックの再初期化が、オーディオ/ビデオ受信装置によって出力される動画の出現の前に行われる。
【0012】
本方法の一変形態様によれば、復号器クロックはシステム・タイム・クロックである。
【0013】
本開示は、また、オーディオ/ビデオ受信装置であって、ビデオのプレゼンテーション・タイム・スタンプの受信前に受信された最新のプログラム・クロック・リファレンスとオフセットとの加算値でオーディオ/ビデオ受信装置の復号器クロックを初期化するように構成された復号器クロック初期化器を備え、オフセットは、バースト配信におけるオーディオ・フレームとビデオ・フレームとの間のドリフトと、データがプレイアウト・レートでの配信に比べて超過して受信されるバースト配信の一部分の持続期間として定義されるバースト配信の超過データ配信の持続期間との関数である、オーディオ/ビデオ受信装置にも関する。
【0014】
一変形態様によれば、オーディオ/ビデオ受信装置は、(例えば、ユーザからリモート・コントロール・インタフェースを介して)チャンネル変更命令を受信するように構成されたインタフェースと、選択されたオーディオ/ビデオ・チャンネルからのオーディオ/ビデオ・コンテンツのバースト配信についての要求を送信するように構成されたネットワーク・インタフェースと、を更に備え、ネットワーク・インタフェースは、バースト配信の終了前にプレイアウト・レートでの伝送からのオーディオ/ビデオ・コンテンツの受信に切り換えるように更に構成されている。
【0015】
本オーディオ/ビデオ受信装置の一変形態様によれば、復号器クロック初期化器は、ドリフトを、ビデオのプレゼンテーション・タイム・スタンプと最新のプログラム・クロック・リファレンスとの差分として算出するように更に構成されている。
【0016】
本オーディオ/ビデオ受信装置の一変形態様によれば、復号器クロック初期化器は、記差分がバースト受信の超過データ配信の持続期間よりも短い場合は、オフセットをドリフトと等しくなるように算出するように更に構成されており、その他の場合は、オフセットは超過データ配信の持続期間である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本原理の更に多くの利点が、本開示の個別の非限定的な実施形態の説明を通じて、明らかになるであろう。本原理の利点が得られる方法を説明するために、添付図面に例示された本原理の具体的な実施形態を参照して本原理を詳しく説明する。これらの図面は、本開示の代表的な実施形態を表しているだけであり、従って、本開示の権利範囲を限定するものであると見なすべきではない。これらの説明された実施形態を組み合わせて、特定の有益な実施形態を形成することができる。下記の図面において、本開示を不必要に不明瞭にすることを回避するために、前の図で既に説明されている項目と同じ参照番号を有する項目については、再び説明することはしない。
【0018】
下記の図面を参照して、代表的な実施形態を説明する。
【
図1】IPユニキャスト・バースト伝送に基づくファスト・チャンネル・チェンジについての環境を示す図である。
【
図2】IPマルチキャストを介するAVストリームの伝送と並行するAV受信機に対するIPユニキャスト・バースト伝送を例示する図である。
【
図4】ファスト・チャンネル・チェンジについてのタイミング図である。
【
図5】本原理の一実施形態によるIPAV受信機を示す図である。
【
図6】本原理の一実施形態によるオーディオ/ビデオ受信装置の一変形例を示す図である。
【
図7】本原理による方法の一実施形態のフロー図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、IPユニキャスト・バースト伝送に基づくファスト・チャンネル・チェンジについての環境を示す図である。複数のオーディオ/ビデオ受信機12,13及び14が、IPネットワーク110に接続されている。また、オーディオ/ビデオ・サーバ10が、IPネットワーク110に接続されている。このオーディオ/ビデオ・サーバ10は、IPマルチキャスト・モジュール101とIPユニキャスト・モジュール102を備えている。
【0020】
図2には、同じAVコンテンツに対応するAVストリームのIPマルチキャスト伝送と並行する、例えば
図1のAVサーバ10のようなAVサーバから例えば
図1のAV受信機12,13又は14のようなIP AV受信機へのIPユニキャスト・バースト伝送が例示されている。縦軸228上には、バースト比率、すなわち、
【数1】
が示されている。
【0021】
例えば、バースト・レートが2.84Mbit/sであり、ノーマル・プレイ・レートが2Mbit/sであれば、バースト比率は1.42である。横軸227には、時間が示されている。AV受信機は、チャンネル変更命令の後に、要求チャンネルに対応するAVコンテンツについてユニキャスト・バースト・ストリームを要求する。AVサーバ10内のIPユニキャスト・モジュール102は、プレイアウト・レートよりも高いレートで、ここでは、プレイアウト・レートの1.42倍(参照番号225)のバースト比率で、この新たなチャンネルに関するデータを送信する。「プレイアウト・レート」とは、ここではノーマル・プレイ・レートを意味する、すなわち、AVコンテンツが、ここでは1として規定される標準再生速度で、再生されるレートを意味する。T
0(参照番号220)において、AV受信機12は、要求チャンネルの第1のデータを受信する。データがノーマル・プレイ・レートよりも高いレートで受信されるので、AV受信機は、比較的短期間で十分なデータを取り出して、チャンネル変更命令から1500msであるT
1(参照番号221)において、リップ同期オーディオと共に動画のレンダリングを開始できる。AV受信機は、ユニキャスト・バースト・ストリーム伝送224が、T
1=2s(参照番号222)において、停止するまで、ユニキャスト・バースト・ストリーム224からAVデータを受信し続ける。次に、AV受信機は、参照番号226で示されたプレイアウト・レートにあるマルチキャスト・ストリーム224からの新たなチャンネルに関するAVデータの受信に切り換える(参照番号223)。AV受信機は、再びチャンネルを変更するまで、マルチキャスト・ストリーム224からAVデータを受信し続ける。従って、IPネットワークにおいて占められる過剰帯域幅230が、バースト持続期間231の間に存在することが分かる。また、T
1からバーストの終了T
1までのバーストの期間中に受信されたデータの量が、受信機がT
0からT
1までにマルチキャストを受信していたならば、受信機が受信していたであろうデータの量の超過分であることも分かる。この期間を超過データ持続期間と呼ぶことにし、参照番号229で示す。この超過データ持続期間は、下記の等式において算出される。
【数2】
【0022】
バースト比率が1.42であり、且つ、バースト持続期間が2000msである場合、バーストの超過データ持続期間は592msであり、このことは、1.42のレートでの2000msのバースト配信において、バーストの超過データが592msの持続期間の間に受信されることを意味する。これは、プレイアウト・レートで消費される追加データの840msの超過データ持続期間(=burst_excess_data_duration×burst_ratio)に相当する。このプレイアウト・レートについての超過データ持続期間をバースト比率とバースト持続期間とから直接算出するには、下記の等式を適用する。
excess_data_duration = burst_duration x burst_ratio - burst_duration (3)
【0023】
超過分として受信されたデータの量を超過データと呼ぶことにし、参照番号228で示す。
【0024】
図3には、例えばIPセットトップ・ボックスに内蔵されるような従来技術のIP AV受信機3が示されている。
図3のAV受信機は、例えば、
図1のAV受信機12、13又は14のうちの1つに相当する。IP AV受信機3は、IPネットワークに(例えば、
図1のIPネットワーク110に)接続されたAVサーバから(例えば、
図1のサーバ10から)、ネットワーク・インタフェース99を介して、AVストリーム300を受信する。AVストリーム300はデマルチプレクサ(「Demux」)30において多重分離され、このDemux30は、AVストリーム内に含まれるパケットを抽出して、オーディオに関するパケット(A)301とビデオに関するパケット(V)302とを出力する。オーディオ・パケットはオーディオ・バッファ31に供給され、ビデオ・パケットはビデオ・バッファ32に供給される。ビデオ・バッファの出力からは、ビデオのプレゼンテーション・タイム・スタンプ(PTS)パケットが、システム・タイム・クロック(STC)35に供給される。STCは、受信機3の内部に在るクロックである。これは、通常、(例えば、サーバ10内の符号器に使用されるような)符号器クロックに近い周波数でインクリメント(増分)されるカウンタである。AVストリームに含まれるプログラム・クロック・リファレンス(PCR)パケットが、衛星又はデジタル地上波テレビジョン(DTT)受信のためのフロントエンド、例えばチューナ・フロントエンドを用いるAV受信機内における連続的な復号器・符号器の同期用に使用される。オーディオ及びビデオのPTSはタイミング・パケットであり、該タイミング・パケットはPCRに関するタイム・スタンプ値を含み、更に該タイミング・パケットは、AVストリーム内でPTSに続くオーディオ・パケット又はビデオ・パケットが、PCRのどの値において、プレゼンテーション(或いは「レンダリング」)されるべきかを示す。しかしながら、IP受信機において、PCRパケットは、最初の復号器・符号器の同期用に使用されるが、連続的な復号器・符号器の同期用には使用されず、その使用されない理由は、IP配信ネットワークの非同期特性によってトランスポート・ジッタが生じるので、技術的に実行不可能なためである。IP AV受信機3では、復号器クロックを符号器クロックと同期させるために、STCが、1つの受信PCR321の値で、1回(例えば、チャンネル変更期間中に)初期化される。STC35は、STCカウンタ値350を出力する。オーディオ・バッファ31から、オーディオ・パケット310がオーディオ復号器33に入力される。ビデオ・バッファ32からは、ビデオ・パケットがビデオ復号器34に入力される。更にオーディオ・バッファ31からは、オーディオPTSがオーディオ同期比較器36に入力される。更にビデオ・バッファ32からは、ビデオPTSがビデオ同期比較器37に入力される。STCからの値350は、オーディオ同期比較器36とビデオ同期比較器37とに入力される。オーディオ同期比較器は、受信オーディオPTS311をSTC値350と比較する。受信オーディオPTS311がSTC値350に等しい場合、オーディオ同期比較器36は、制御信号360をオーディオ復号器33に出力し、該オーディオ復号器33は、次のオーディオ・パケット310を復号して、復号済みオーディオ330を出力する。ビデオについても同様であり、ビデオ同期比較器37が、受信ビデオPTS321をSTC値350と比較する。受信ビデオPTS321がSTC値350に等しい場合、ビデオ同期比較器37は、制御信号370をビデオ復号器34に出力し、該ビデオ復号器34は、次のビデオ・パケット320を復号して、復号済みビデオ340を出力する。最終的に、オーディオ/ビデオ(AV)駆動器38がオーディオ/ビデオを変換し、増幅し、適合化してAV出力380に乗せて出力する。オプションとして、受信機3は、ユーザ命令を、例えば触感スクリーン(tactile screen)、マウス、キーボード及び/又はリモコン装置から、受信するためのユーザ・インタフェース(図示せず)を備えている。
【0025】
図4は、ファスト・チャンネル・チェンジについてのタイミング図である。上側のタイムラインは、例えば、
図3のAV受信機3に対応する、
図1に例示された従来技術のAV受信機12、13又は14によって実施されるファスト・チャンネル・チェンジであり、下側のタイムラインは、本原理の一実施形態による、例えば
図5のAV受信機5のようなAV受信機によって実施されるファスト・チャンネル・チェンジである。
図4内の遅延時間は、ただ単に説明の目的のために示されており、
図2に例示されたバースト特性と整合している。
【0026】
タイミング図が
図4の上側部分に示された従来技術のAV受信機において、そのAV受信機を操作するユーザが知覚するチャンネル変更遅延は、約1500ms(参照番号412)である。ユーザが知覚するこのチャンネル変更時間は、チャンネル変更命令の受信時点(参照番号400)から最初の動画を(リップ同期オーディオと共に)レンダリングする時点(参照番号411)までに相当する。チャンネル変更命令400が受信されると、AV受信機のリソース(資源)が、内蔵コントローラ(
図3に示されておらず、この内蔵コントローラは、例えばマイクロコントローラ又は中央処理装置である)によって停止され(参照番号401)、すなわち、例えば、復号器34によるビデオの復号とアクセス制御モジュール(
図3に図示せず)とが停止され、あるチャンネルのユニキャスト・バースト伝送の要求が、その同じチャンネルに対応するマルチキャスト伝送につなげるための要求の送信と並行して、或いは、その送信の前に、ファスト・チャンネル・チェンジ・サーバ(例えば、
図1のサーバ10)に送信される。チャンネル変更命令400の受信から100ms(参照番号402)後に相当するT
0(参照番号403)において、AV受信機3は、要求チャンネルに関するユニキャスト伝送から最初のデータを受信して、そのデータをオーディオ・バッファ31とビデオ・バッファ32に格納する。ビデオ復号器34は、制御信号370によってトリガされると、ビデオ・バッファ32からデータを取り出す。要求チャンネルの最初のデータの受信から200ミリ秒(参照番号404)後に、AV受信機のリソースの初期化が完了する(参照番号405)。その100ミリ秒(参照番号406)後に、最初のビデオPTSが、ビデオ・バッファ32から取り出されて(参照番号407)、ビデオ同期比較器37に送信される。ビデオ復号器34によってビデオ・バッファ32から取り出された最初の画像は、復号器34によって復号されてAV出力380に乗せられて出力され得るが、ビデオ同期比較器37によって、STC35から受信されたSTC値350がビデオPTS321の値に到達していることが確認されるまで、フリーズ(静止)させられたままになる。100ミリ秒(参照番号408)後に、すなわち、T
2(参照番号409)において、AV受信機のSTC35は、最初のビデオPTSの受信時に受信されたPCR (「PCR@FVPTS」)の値で初期化される。PCRは、頻繁に、例えば40ms毎に受信される。PCR@FVPTSは、最初のビデオPTS(FVPTS)の受信時点の前後の、例えば40msの持続期間の時間帯内で受信された最新のPCRに相当する。復号器は、リップ同期オーディオがビデオと共に提供され得るまで、ビデオの復号について待機する。一般に、これは(リップ同期オーディオがビデオと共に提供され得るのは)、オーディオ・ビデオ・ドリフトが1000msであれば、T
2から約1000ms(参照番号410)後である。このオーディオ・ビデオ・ドリフト、すなわち、AVドリフトは、データ伝送におけるビデオ・フレームとオーディオ・フレームとの間のギャップ(ずれ)である。STCの初期化から1秒(参照番号410)後のT
3(参照番号411)において、最初の動画が(リップ同期オーディオと共に)レンダリングされる(参照番号411)。この結果として、従来技術のAV受信機については、約1500ms(参照番号412)の知覚されるチャンネル変更遅延が生じる。
【0027】
チャンネル変更タイミング図が
図4の上側部分に示された従来技術のAV受信機とは対照的に、チャンネル変更タイミング図が
図4の下側部分に示された、本原理によるAV受信機は、知覚されるチャンネル変更遅延の大幅な低減を可能にする。参照番号401から408によって示された遅延は、従来技術のAV受信機についてのものと同じである。従来技術のAV受信機とは対照的に、本原理によるAV受信機では、STC35は、T
2(参照番号409a)において、PCR@FVPTS+オフセット値の値で初期化される。この結果として、T
3(参照番号411a)において、すなわち、T
2から約160ms(参照番号410a)後に、最初の動画、すなわち、ビデオが表示される、すなわち、知覚されるチャンネル変更遅延は、660ms(参照番号412a)である。T
4(参照番号413)において、リップ同期オーディオが、最初の動画のレンダリングから1340ms(参照番号410b)の付加的遅延後に、ビデオとつながる。動画の最初のレンダリングは、1500msから660msに低減され(参照番号414)、これは、約66%の低減に相当する。
【0028】
次に、この利点がどのようにして得られるかを説明する。
【0029】
バーストが提供されない第1のケースを考える。受信機が動作可能な状態であり、且つ、最初のビデオPTSが受信された時にビデオの復号を開始することが考えられるが、その場合、STCは、T2において、PTS@FVPTSで初期化されることになる。これは、AVドリフトがない場合に可能である。オーディオ/ビデオ・データを符号化する時に、オーディオ・フレームは、そのオーディオ・フレームが関連しているビデオ・フレームよりも遅れることがある。このオーディオ・フレームとビデオ・フレームとの間のずれは、オーディオ・ビデオ・ドリフト又はAVドリフトと呼ばれる。重大なAVドリフトが生じることがあるのは、例えば、ビデオ・シーケンスが高度に動的なシーンを含む時であり、その場合には、連続する画像相互間における類似性が低いので、ビデオ圧縮レートが低くなり、その結果、オーディオ・パケットを配置するのに利用できる領域が無いか、或いは、減少したビデオ・パケットの長いシーケンスが符号化器から出力される。実際に、受信機は、1000msの最大予想オーディオ・ビデオ・ドリフトを有するオーディオ/ビデオ・ストリームの受信を予期できる。しかしながら、STCがT2においてPTS@FVPTSで初期化され、且つ、AVドリフトがある場合には、ビデオと共にリップ同期オーディオを提供する機会はなく、その理由は、オーディオ・パケットがビデオ・パケットに追いつく可能性がないからである。それでも、リップ同期オーディオを提供しようとするならば、ビデオの復号をスローダウン(速度低減)するか、又は、停止するか、或いは、ビデオ・パケットを削除することによって、オーディオがビデオに追いつけるようにする必要がある。
【0030】
バーストが提供される第2のケースを考える。バーストは、AV受信機がオーディオ/ビデオ・パケットを消費するレートよりも高いレートで、そのオーディオ/ビデオ・パケットを配信する。これは、バーストが提供されない第1のケースよりも早く復号を開始できるので、有利である。AVドリフトがある場合、それでも、バーストなしのケースよりも早くビデオの復号を開始できるが、2つのサブケース(副ケース)を考える必要がある。
【0031】
第2のケースの第1のサブケースでは、AVドリフトは、超過データ持続期間よりも短いか、或いは、それに等しい。この場合、ビデオの復号の開始をAVドリフトの値に合わせて遅延させてもよく、その理由は、バーストにおける超過データの故に、オーディオが、バーストの終了前か、或いは、その終了時にビデオに追いつくことが保証されているからである。リップ同期オーディオは、バーストの終了前か、或いは、その終了時に保証される。従って、T2において、AVドリフトの値に等しいオフセットがSTCに付加されるが、これは、ビデオの復号が、バーストなしのケースよりもAVドリフト分だけ前に開始されるという効果を有する。
【0032】
第2のケースの第2のサブケースでは、AVドリフトは、超過データ持続期間よりも長い。この場合、バーストにおける超過データは、AVドリフトを完全には補償できず(AVドリフトは、超過データ持続期間についてのみ補償され得る)、そして、STCに付加されるべきオフセットが第1のサブケースにおけるように算出されるならば、リップ同期オーディオは危うくなる。従って、リップ同期オーディオを保証するためには、第1のサブケースにおいて算出されたビデオの復号の開始時点を、超過データ持続期間が補償できないAVドリフトの持続期間に合わせて、すなわちAV_drift-excess_data_duration(ここで、AV_driftはAVドリフトの値、excess_data_durationは超過データ持続期間の値である)の値に合わせて、遅延させる必要がある。そこで、T2においてSTCに付加するべきオフセットは、第1のサブケースについて算出されたオフセットからAV_drift-excess_data_durationを差し引いた値であり、その結果、オフセット=AV_drift-(AV_drift-excess_data_duration)となり、これは、オフセット=excess_data_durationを意味する。
【0033】
上述のことは、次の擬似コード(擬似規則)によって要約できる。
AV_drift < excess_data_durationならば、オフセット = AV_drift
さもなければ、オフセット = excess_data_duration (4)
【0034】
図4の下側部分において、受信機は、T
0(参照番号403)から400msであるT
2(参照番号409a)において、STC35を設定する準備ができる。
図2の例示のバースト特性と、1000msの例示のオーディオ・ビデオ・ドリフトとが与えられると、(4)の適用の結果として、オフセットは840msになる。T
2においてSTCをこの値に設定すると、最初の動画は、160ms(参照番号410a)後に、すなわち、T
3(参照番号411a)において表示される。リップ同期オーディオは、更に1340ms後のバーストの終了時点であるT
4においてビデオに結び付けられる。ビデオは、T
3において、すなわち、チャンネル変更命令から660ms後に再生され始めるが、これは、タイミング図が
図4の上側部分に示された従来技術のAV受信機についてよりも840ms(参照番号414)早い一方で、リップ同期オーディオがビデオに結び付けられるのは、従来技術のAV受信機についてよりも740ms(参照番号415)遅くなる。
【0035】
伝送環境が制御されない場合、バースト特性は、変動しやすくなることがある。変形実施形態では、バースト特性及び/又はオーディオ・ビデオ・ドリフトの変動を考慮に入れて、オフセットを、定期的に、或いは、これらのパラメータが変化した際に、再算出する。実際に、ネットワーク帯域幅が変動するので、
図2の直線224は、ある程度の曲線になることがある。超過データ期間229は、予測されるよりも短い、或いは、長いことがある。超過帯域幅230も、予測されるよりも高い、或いは、低いことがある。その結果として、超過データは、予測されるよりも早く、或いは、遅く配信されることがある。
【0036】
バースト特性の変動を考慮に入れる第1の変形実施形態では、AV受信期間中に、バースト特性をモニタリング(監視測定)する。第1のレベルの監視測定が、411a点の前に、行われる。この点の前では、如何なるSTCの更新も可視又は可聴効果を持たず、その理由は、ビデオがまだ動きを持たず、そして、オーディオがリップ同期可能時のみレンダリングされるので、オーディオのレンダリングも無いからである。この期間中に、バースト特性の監視測定結果が、そのバースト特性が予測されたものと異なるという結果であるならば、オフセットが再算出でき、その再算出されたオフセットに基づくSTCの更新が、オーディオ/ビデオのレンダリングに対する何らの影響もなく、例えば、ビデオの開始後のビデオ・フリーズの発生もなく、及び/又は、オーディオの不具合の発生もなく、行える。監視測定によるSTC更新の結果は更新値に依存し、T3、すなわち、ビデオの動きが可視になる時点(すなわち、オーディオ/ビデオ装置が動画を出力する時)は、前に算出されたものよりも早く、或いは、遅く現れる。例えば、バースト特性の監視測定が、バースト比率が、予測されたものよりも低いこと、例えば1.42ではなく1.1であることを示せば、burst_excess_data_durationは、592msの代わりに、282msになる。その結果、(4)から、STCは、840msの代わりに、400msのオフセットで再初期化され、従って、ビデオの復号は、以前に算出されたものよりも840-400=440ms遅く開始されることになる。逆に、バースト比率が、予測されたものよりも高ければ、オフセットを低減でき、オフセットが低減されることによってSTCが再初期化されて、最初の動画を表示する時点が、以前に算出されたものに比べて早められ得る。もしバースト特性が変化すれば、オフセットが再算出され、STCは、それに応じて再初期化される。
【0037】
更に別の変形実施形態では、AVドリフトの変動を考慮に入れて、AVドリフト特性を監視測定して、AV_driftが変化した時に、(4)に従ってオフセットを再算出する。AV_driftは、ビデオPTSの受信時に特定でき、これは、そのビデオPTSと、そのビデオPTSの前に受信された最後の(最新の)PCRとの差分である。もしAVドリフトが変化すれば、オフセットが再算出され、STCは、それに応じて再初期化される。
【0038】
一変形実施形態によれば、バースト特性、及び/又は、AV_driftの変動を考慮に入れるために、バースト特性とAV_driftの両方が監視測定される。もしこれらの何れかが変化すれば、オフセットが再算出され、STCは、それに応じて再初期化される。
【0039】
上述の任意の実施形態と組み合わすことができる一変形実施形態によれば、全てのストリームが、予測されたリップ同期時点で同期化されることを保証し、それによって、チャンネル変更の結果としてリップ同期オーディオなしのビデオが生じることを回避するセーフティ・ソリューションとして、第2の監視測定が、411aの時点後に行われる。この変形実施形態は、STC更新が少なくともビデオのレンダリングに大きな影響を及ぼすという点で、411aの時点前に行われた先行の監視測定とは区別される。この第2の監視測定は、T3後に、最新の受信PCRと現在のSTC値との比較によって実施できる。もしSTCが進んでいるならば、それを少なくとも差分に応じて小さくする必要があるが、その結果、可視アーティファクト(画像のフリーズ、或いは、反対に、画像のジャンプ)が生じ得る。
【0040】
バースト特性を監視測定する(そして、場合によっては、AVドリフトも監視測定する)更なる一変形実施形態によれば、STCを、T2において、当初予測されたバースト特性に基づいて設定した後に、スローダウンさせることによって、ビデオの動きが、どんな場合でも、予測された時点で生じることを保証する。その結果、ビデオのレンダリングの可視のスローダウンが生じることがある。一例として、バースト比率が、予測されたものよりも低い場合、STCをT2とT3の間でスローダウンさせることができ、それによって、PCRとSTCが同じ値になり、リップ同期が既定の時点T4において可能になることを保証する。スローダウンの係数は、バースト比率が展開する係数によって特定され、例えば、監視測定期間中に、実際のバースト比率が、予測されたものよりも66%低いと判定された場合には、STCクロック速度を、通常速度の66%に設定できる。リップ同期時点に到達すると、すなわちT4において、STCクロック速度は、その通常速度にリセットされ、それによって、オーディオ及びその他のストリーム(もしあれば、テレテキスト、クローズド・キャプション/字幕など)と同相のビデオを表示できる。
【0041】
このように、本原理によれば、ビデオが、オーディオなしで早期に表示され、その後、リップ同期オーディオと結び付けられる。
【0042】
図5は、本原理の一実施形態によるIP AV受信機5を示している。IP AV受信機5は、本原理に従ってSTCを初期化するためのSTC初期化ブロック50を備えている。PCR(参照番号501)が、Demux30から受信される。ビデオPTS321が、ビデオ・バッファ32から受信される。STC35は、最初のビデオPTSの受信前に受信された最新のPCR+オフセット値(PCR@VPTS+オフセット)(参照番号502)で初期化されるが、ここでオフセット値は、(4)に従って算出される。
【0043】
図6は、本原理によるオーディオ/ビデオ受信機装置の一変形実施形態を示している。この受信機は、ネットワーク98に接続されており、且つ、選択されたビデオ・チャンネルからのオーディオ/ビデオ・コンテンツのバースト受信についての要求を送信するように構成されたネットワーク・インタフェース63と、ビデオのプレゼンテーション・タイム・スタンプ(PTS)の受信前に受信された最新のプログラム・クロック・リファレンス(PCR)+オフセットの値を算出してその値でこのオーディオ/ビデオ受信機装置内の復号器クロックを初期化するための中央処理装置であり、オフセットが、バーストにおけるオーディオ・フレームとビデオ・フレームとの間のドリフト(ずれ)と、バースト受信の超過データ配信の持続期間との関数である、中央処理装置(CPU)60と、を備えており、ネットワーク・インタフェース63は、更に、バースト受信の終了前に、プレイアウト・レートにおける伝送からのオーディオ/ビデオ・コンテンツの受信に切り換えるように構成されている。復号器クロックは、クロック部64から得られる。ビデオとオーディオは、AV駆動器65を介して、AV出力180に乗せて出力される。この受信機装置は、プロセッサ60によって読み出し可能な命令及びデータを記憶する不揮発性メモリ61と、プロセッサがデータの読み出し/書き込みを行える揮発性メモリ62と、を更に備えている。例えばチャンネル変更についてのユーザ命令は、リモート・コントロール(リモコン)67とリモート・コントロール(リモコン)インタフェース66とを介して受信される。構成要素60から66は、内部データ通信バス68を介して、通信する。
【0044】
図7は、本原理による方法の一実施形態のフローチャートを示している。最初のステップ70において、この方法の実行期間中に使用されるあらゆる変数とメモリ領域が初期化される。ステップ71において、チャンネル変更命令が受信されて、選択されたオーディオ/ビデオ・チャンネルからのオーディオ/ビデオ・コンテンツのユニキャスト・バースト受信についての要求が、例えばFCC(ファスト・チャンネル・チェンジ)用サーバに、送信される。ビデオPTSが、ユニキャスト・バーストから受信されると(参照番号72)、ユニキャスト・バーストにおけるビデオ・フレームとそれに対応するオーディオ・フレームとの間のドリフト(ずれ)(AVドリフト)と、ユニキャスト・バースト受信の超過データ配信の持続期間との関数であるオフセットが算出される(参照番号73)。ここで、「それに対応するオーディオ・フレーム」とは、リップ同期の提供を可能にするためにビデオ・フレームと同期してレンダリングすべきオーディオ・フレームを意味する。また、「超過データ配信の持続期間」とは、(3)におけるようなexcess_data_durationである。次に、ステップ74において、復号器の復号クロック(例えば、STC)が、ビデオPTSの受信前に受信された最新のPCRと算出されたオフセットとの加算値で初期化される。選択されたチャンネルのコンテンツのマルチキャスト伝送への切り換え(参照番号76)が、ユニキャスト・バースト受信の終了(参照番号75)の前か、或いは、終了時点で行われて、ファスト・チャンネル・チェンジが完了する(参照番号77)。
【0045】
以上に例示した実施形態では、ユニキャスト・バースト伝送と、ブロードキャスト・タイプ伝送において特に効率的なプレイアウト・レートにおけるマルチキャスト伝送への切り換えとを引き合いに出したが、本原理は、例えばPVR(Personal Video Recoder:パーソナル・ビデオ・レコーダ)又はVoD(Video on Demand:ビデオ・オン・デマンド)のようなその他のオーディオ/ビデオ・ストリーム配信環境にも適用できる。そのような環境では、ビデオ・サーバが、最初にバースト形式における要求されたオーディオ/ビデオ・ストリームを送信でき、バースト終了時に、プレイアウト・レートにおける要求されたオーディオ/ビデオ・ストリームを続けて送信できる。この場合、オーディオ/ビデオ受信機装置が、オーディオ/ビデオ・データの受信について、例えばユニキャスト・バースト伝送から、例えばマルチキャスト伝送への切り換えを行うことはなく、すなわち、同一のオーディオ/ビデオ・サーバが、バースト伝送とプレイアウト・レートにおける伝送とを管理できる。
【0046】
本原理によれば、ビデオが、オーディオなしで早期に表示され、その後、リップ同期オーディオと結び付けられる。
【0047】
図面内の一部の構成要素は、必ずしも全ての実施形態においては、使用されない、或いは、必要ない場合もある。一部の動作は、並行して実行されることもある。例示された、及び/又は、説明された変形実施形態以外のものも可能である。
【0048】
当業者であれば理解できるように、本原理の態様は、システム、方法、あるいは、コンピュータ可読媒体として実施できる。したがって、本原理の態様は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐型ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、あるいは、ソフトウェア態様とハードウェア態様とを組み合わせた実施形態の形を取ることができ、ここでは、全て、概して「回路」、「モジュール」又は「システム」として定義できる。更に、本原理の態様は、コンピュータ可読記憶媒体の形態を取ることができる。1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体の任意の組み合わせも利用できる。
【0049】
したがって、例えば、ここに提示した図が本開示の原理を具体化するシステム構成要素例、及び/又は、回路例の概念的な図を表していることが当業者に理解されるであろう。同様に、任意のフローチャート、流れ図、状態遷移図、擬似コード等が、コンピュータ読み取り可能記憶媒体に実質的に表されて、従って、コンピュータ或いはプロセッサによって(そのようなコンピュータ或いはプロセッサが明示されているか否かに関わらず)実行され得る種々のプロセスを表していることが理解されるであろう。
【0050】
コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ可読プログラム製品の形を取ることができ、該コンピュータ可読プログラム製品は、1つ又は複数のコンピュータ可読媒体内で実施され、コンピュータ可読プログラム・コードを有し、該コンピュータ可読プログラム・コードは、1つ又は複数のコンピュータ可読記憶媒体上において実施され、コンピュータによって実行可能である。ここに使用されるコンピュータ可読媒体は、情報を記憶する固有の機能とその情報を取り出せる固有の機能とを備えた非一時的記憶媒体であると考えられる。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、電子的な、磁気的な、光学的な、電磁的な、赤外線の、又は、半導体のシステム、装置、又は、機器、あるいは、それらの任意の適切な組み合わせであってもよく、且つ、これらには限定されない。本原理を適用できるコンピュータ可読記憶媒体の更に具体的な例としては、ポータブル・コンピュータ・ディスケット、ハード・ディスク、読み出し専用メモリ(ROM)、消去書込み可能型読み出し専用メモリ(EPROM又はフラッシュ・メモリ)、ポータブル・コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、光学式記憶デバイス、磁気的記憶デバイス、あるいは、それらの任意の適切な組み合わせが挙げられるが、これらは、当業者であれば容易に
理解できるように、単なる例示であって網羅的な列挙ではない。
上述の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のように記載され得るが、以下には限定されない。
(付記1)
インターネット・プロトコル・ネットワークを介してオーディオ/ビデオ・ストリームを受信するオーディオ/ビデオ受信装置のファスト・チャンネル・チェンジの方法において、方法が、オーディオ/ビデオ受信装置によって実施され、方法が、
チャンネル変更命令を受信することと、
新たなチャンネルに対応するオーディオ/ビデオ・ストリームのバースト配信についての要求を送信することと、
バースト配信に含まれるビデオのプレゼンテーション・タイム・スタンプの受信前のバースト配信に含まれる最新のプログラム・クロック・リファレンスとオフセットとの加算値でオーディオ/ビデオ受信装置内の復号器クロックを初期化することであって、オフセットは、バーストにおけるビデオ・フレームとそれに対応するオーディオ・フレームとの間のドリフトと、データがプレイアウト・レートでの配信に比べて超過して受信されるバースト配信の一部分の持続期間として定義されるバースト配信の超過データ配信の持続期間との関数である、初期化することと、
バースト配信の終了後にプレイアウト・レートでオーディオ/ビデオ・ストリームを受信することと、
を含むことを特徴とする、方法。
(付記2)
ドリフトは、ビデオのプレゼンテーション・タイム・スタンプと最新のプログラム・クロック・リファレンスとの差分である、付記1に記載の方法。
(付記3)
差分がバースト配信の超過データ配信の持続期間よりも短い場合は、オフセットがドリフトに等しく、その他の場合は、オフセットが超過データ配信の持続期間である、付記1又は2に記載の方法。
(付記4)
オーディオ・フレームとビデオ・フレームとの間のドリフトをモニタリングすることと、
オーディオ・フレームとビデオ・フレームとの間のドリフトが変化した場合に、復号器クロックをオーディオ・フレームとビデオ・フレームとの間のドリフトにおける変化に基づいて再初期化することと、
を更に含む、付記1から3のいずれか1項に記載の方法。
(付記5)
バースト特性をモニタリングすることと、
バースト特性が変化した場合に、復号器クロックを変化したバースト特性に基づいて再初期化することと、
を更に含む、付記1から4のいずれか1項に記載の方法。
(付記6)
オーディオ・フレームとビデオ・フレームとの間のドリフトをモニタリングすることと、
バースト特性をモニタリングすることと、
ドリフト又はバースト特性が変化した場合に、復号器クロックを、変化したドリフトに基づいて、又は、変化したバースト特性に基づいて、再初期化することと、
を更に含む、付記1から3のいずれか1項に記載の方法。
(付記7)
復号器クロックの再初期化は、オーディオ/ビデオ受信装置によって出力される動画の出現の前に行われる、付記4から6のいずれか1項に記載の方法。
(付記8)
復号器クロックはシステム・タイム・クロックである、付記1から3のいずれか1項に記載の方法。
(付記9)
オーディオ/ビデオ受信装置において、
オーディオ/ビデオ受信装置が、ビデオのプレゼンテーション・タイム・スタンプの受信前に受信された最新のプログラム・クロック・リファレンスとオフセットとの加算値でオーディオ/ビデオ受信装置の復号器クロックを初期化するように構成された復号器クロック初期化器を備え、オフセットは、バースト配信におけるオーディオ・フレームとビデオ・フレームとの間のドリフトと、データがプレイアウト・レートでの配信に比べて超過して受信されるバースト配信の一部分の持続期間として定義されるバースト配信の超過データ配信の持続期間との関数である、オーディオ/ビデオ受信装置。
(付記10)
装置が、
チャンネル変更命令を受信するように構成されたインタフェースと、
選択されたオーディオ/ビデオ・チャンネルからのオーディオ/ビデオ・コンテンツのバースト配信についての要求を送信するように構成されたネットワーク・インタフェースと、
を更に備え、
ネットワーク・インタフェースは、バースト配信の終了前にプレイアウト・レートでの伝送からのオーディオ/ビデオ・コンテンツの受信に切り換えるように更に構成されている、付記9に記載のオーディオ/ビデオ受信装置。
(付記11)
復号器クロック初期化器は、ドリフトを、ビデオのプレゼンテーション・タイム・スタンプと最新のプログラム・クロック・リファレンスとの差分として算出するように更に構成されている、付記9又は10に記載のオーディオ/ビデオ受信装置。
(付記12)
復号器クロック初期化器は、差分がバースト受信の超過データ配信の持続期間よりも短い場合は、オフセットをドリフトと等しくなるように算出するように更に構成されており、その他の場合は、オフセットは超過データ配信の持続期間である、付記9から11のいずれか1項に記載のオーディオ/ビデオ受信装置。