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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】尿検出装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/44 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
A61F5/44 S
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2016211187
(22)【出願日】2016-10-28
(65)【公開番号】P2018068583
(43)【公開日】2018-05-10
【審査請求日】2019-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】道関 隆国
(72)【発明者】
【氏名】田中 亜実
(72)【発明者】
【氏名】末松 俊造
(72)【発明者】
【氏名】堀井 大輔
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3194932(JP,U)
【文献】特開2011-222236(JP,A)
【文献】特開2002-270470(JP,A)
【文献】特開2015-229003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿との接触状態で発電し、尿を検出する尿検出装置であって、
カーボンのみからなるシート状電極体または前記カーボンを含むシート状電極体を用いた正極と、
前記正極と離間して配置され、前記正極よりも幅および厚みが小さいシート状電極体を用いた負極と、
を備え、前記正極が尿との接触状態で発電し、排尿を表す発電出力を前記正極および前記負極から取り出し、
前記発電出力は、排尿毎にピーク値を生じ、該ピーク値から時間の経過とともに安定値に移行し、排尿回数に応じて段階状に増加する段階値を呈し、該段階状の電気的変化から排尿または排尿回数のいずれか一方または双方を捉えることを特徴とする尿検出装置。
【請求項2】
さらに、外装体と、
前記外装体に配置されて排尿を保持する保持部材と、
を備え、前記保持部材を介して前記正極および前記負極に尿を接触させることを特徴とする請求項1に記載の尿検出装置。
【請求項3】
さらに、
前記発電出力に応じた間隔を持つ間欠信号を生成する信号生成部と、
を備え、
前記正極および前記負極が前記保持部材に保持された尿に接触することで、前記保持部材での尿の保持量に応じた前記発電出力が取り出され、
前記保持量が所定値を超えたとき、前記外装体の交換時期を示す前記間欠信号が前記信号生成部で生成され、出力されることを特徴とする請求項に記載の尿検出装置。
【請求項4】
前記外装体はおむつ、または排尿を溜める容器であることを特徴とする請求項または請求項に記載の尿検出装置。
【請求項5】
前記シート状電極体が50ないし500〔μm〕の厚みであることを特徴とする請求項1ないし請求項の何れかに記載の尿検出装置。
【請求項6】
前記カーボンが0.3ないし1.0〔g/cc〕の密度であることを特徴とする請求項1ないしの何れかに記載の尿検出装置。
【請求項7】
前記カーボンが500ないし4000〔m2/g〕の比表面積であることを特徴とする請求項1ないし請求項の何れかの請求項に記載の尿検出装置。
【請求項8】
前記カーボンが0.1ないし10〔μm〕の平均粒子径であることを特徴とする請求項1ないし請求項の何れかの請求項に記載の尿検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿と接触する電極が備える自己発電機能を利用した尿検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
排尿検出について、電極が持つ自己発電機能を利用することは既に知られている。この技術は尿との接触で生じる発電出力を利用するため、外部給電が不要であるとともに、構造が簡単で効率的な尿検出を行える利点がある。
【0003】
この尿検出に関し、正極と負極の間に尿を接触させ、尿を電解液として正極と負極に生じる発電電流で排尿を検出することが知られている(特許文献1)。自己発電機能として液漏れを検知する検知部に液体を触媒とするボルタ電池を有する発電部を含む液体検出システムが知られている(特許文献2)。また、患者が身に着けたおむつの濡れ具合を尿センサーにより検出し、この尿センサーから有線または無線で送信された信号を管理室で受け表示することが知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭60-169205号公報
【文献】特開2013-94175号公報
【文献】特開2004-041697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、介護を必要とする患者など、患者が身に着けるおむつは、排尿や排尿回数に応じて交換される。保水性が高いおむつでは排尿回数や排尿量が少ない場合など、おむつ交換を頻繁に行うことは不経済である。しかし、おむつの保水性が高くても排尿量や排尿回数が増加すれば、おむつの保水量が増加し、斯かるおむつ交換の時期の管理では患者数に比例して介護者の負担を増加させることになる。
おむつ交換時期の判断に尿による電極の自己発電機能を利用すれば、外部給電が不要のみならず、発電出力で排尿量や排尿回数を予測できる。しかし、排尿検出の感度や検出精度が低い場合には、つまり、発電出力における排尿回数の分解能が低いと、おむつの交換時期が曖昧となり、介護者や患者の負担増になるという課題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、排尿や、排尿回数の検出機能を高めた発電出力が得られる尿検出電極を用いて排尿や排尿回数の検出精度を高めた尿検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の尿検出装置によれば、尿との接触状態で発電し、尿を検出する尿検出装置であって、カーボンのみからなるシート状電極体または前記カーボンを含むシート状電極体を用いた正極と、前記正極と離間して配置され、前記正極よりも幅および厚みが小さいシート状電極体を用いた負極とを備え、前記正極が尿との接触状態で発電し、排尿を表す発電出力を前記正極および前記負極から取り出し、前記発電出力は、排尿毎にピーク値を生じ、該ピーク値から時間の経過とともに安定値に移行し、排尿回数に応じて段階状に増加する段階値を呈し、該段階状の電気的変化から排尿または排尿回数のいずれか一方または双方を捉える。
記尿検出装置において、さらに、外装体と、前記外装体に配置されて排尿を保持する保持部材とを備え、前記保持部材を介して前記正極および前記負極に尿を接触させればよい。
上記尿検出装置において、さらに、前記発電出力に応じた間隔を持つ間欠信号を生成する信号生成部とを備え、前記正極および前記負極が前記保持部材に保持された尿に接触することで、前記保持部材での尿の保持量に応じた前記発電出力が取り出され、前記保持量が所定値を超えたとき、前記外装体の交換時期を示す前記間欠信号が前記信号生成部で生成され、出力されればよい。
上記尿検出装置において、前記外装体はおむつ、または排尿を溜める容器であればよい。
上記尿検出装置において、前記シート状電極体が50ないし500〔μm〕の厚みであればよい。
上記尿検出装置において、前記カーボンが0.3ないし1.0〔g/cc〕の密度であればよい。
上記尿検出装置において、前記カーボンが500ないし4000〔m2/g〕の比表面積であればよい。
上記尿検出装置において、前記カーボンが0.1ないし10〔μm〕の平均粒子径であればよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、次のいずれかの効果が得られる。
(1) 排尿または排尿回数を特定可能な段階値を持つ発電出力を得ることができ、排尿または排尿回数の検出感度を高めることができる。
(2) 発電出力からおむつ交換の時期を排尿回数に応じて特定でき、介護者や患者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】Aは一実施の形態に係る尿検出電極を示す斜視図、Bはシート状電極体断面を示す断面図、Cはシート状電極体の変形例を示す断面図である。
図2】Aは尿発電部を示す図、Bは支持部材および吸水部材を併設した尿発電部の一例を示す図、Cは尿発電部の動作を説明するための図である。
図3】Aは実施例2に係るおむつを示す断面図、Bは装着前のおむつを示す斜視図である。
図4】Aは実施例3に係る尿検出装置を示す図、Bは尿発電部の発電特性を示す図、Cは排尿および排尿回数を表す正規化検出信号を示す図である。
図5】Aはおむつの濡れを示す図、Bは排尿回数を表す正規化検出信号を示す図、Cはおむつの交換時期を説明するための図である。
図6】Aは実施例4に係る尿発電部および定抵抗負荷を示す図、BおよびCは出力特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔一実施の形態〕
図1のAは、一実施の形態に係る尿発電電極、BおよびCはシート状電極体の断面を示している。図1のA、BおよびCに示す構成は一例であり、係る構成に本発明は限定されない。
【0013】
この尿発電電極2は尿検出電極の一例である。この尿発電電極2は尿と接触して自己発電する機能、その発電によって生じた電荷を保持(充電)する機能、これを発電出力として取り出し可能な機能を備える。この尿発電電極2にはシート状電極体4が備えられる。このシート状電極体4はカーボンのみのシートでもよいし、カーボンを含んだシートでもよい。このシートは厚みを備えた板状体であってもよい。
【0014】
このシート状電極体4では一例として長方形状の断面を備えており、その長さをL1、幅をW1、厚みをM1とすれば、厚みM1に対して長さL1または幅W1がL1≫M1、W1≫M1であればよく、L1>W1またはL1<W1であってもよい。このようなシート状電極体4では、機械的な可撓性や柔軟性を具備し、おむつなど、身に着ける際に屈曲可能である利便性と、尿との接触面積を広くして発電出力が高められる。
シート状電極体4は、図1のBに示すように、長方形状の断面を備えてよいが、図1のCに示すように、角部を円形とするなど、長円形などの断面形状でもよい。また、シート状電極体4の表面に凹凸面を備えて尿との接触面積を拡大してもよいし、尿の浸透性を高めてもよい。
【0015】
<シート状電極体4>
このシート状電極体4について、厚みM1、カーボンの密度、比表面積または平均粒子径は次の通りである。
M1: M1=50~500〔μm〕でよく、好ましくはM1=100~400〔μm〕でよい。
カーボンの密度: 0.3~1.0〔g/cc〕でよく、好ましくは0.4~0.7〔g/cc〕でよい。
カーボンの比表面積: 500~4000〔m2/g〕でよく、好ましくは1000~2000〔m2/g〕でよい。
カーボンの平均粒子径: 0.1~10〔μm〕でよく、好ましくは1~5〔μm〕でよい。
【0016】
<カーボンおよびその処理>
このシート状電極体4に用いるカーボンには、やしがらなどの天然植物組織、フェノールなどの合成樹脂、石炭、コークス、ピッチなどの化石燃料由来のものを原料とする活性炭や、メソポーラスカーボンなどを挙げることができる。このカーボンには、所定の多孔質化処理が施されたカーボンなども使用でき、活性炭に限定されない。
【0017】
シート状電極体4にはカーボンの処理として、賦活処理、開口処理などの多孔質化処理を施すことが好ましい。賦活処理には、ガス賦活法、薬剤賦活法などの公知の賦活処理法を用いればよい。
ガス賦活法に用いるガスには、水蒸気、空気、一酸化炭素、二酸化炭素、塩化水素、酸素またはこれらの混合ガスのいずれでもよい。
薬剤賦活法に用いる薬剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;ホウ酸、リン酸、硫酸、塩酸等の無機酸類;または塩化亜鉛などの無機塩類など、いずれでもよい。
各賦活処理では、カーボンに必要に応じて加熱処理を施せばよい。また、開口処理はカーボンに多数の孔を形成する多孔質化処理であり、多孔質化処理には既述の賦活処理や開口処理の他、他の処理を用いても良い。
【0018】
<尿発電部>
尿発電部8は尿を用いる尿発電電池の一例であり、図2のAに示すように、少なくとも陽極としてシート状電極体4、負極として電極体6を備える電極対を含む。この尿発電部8は、シート状電極体4の尿との接触による発電機能と、発電によって生じた電荷の保持機能の双方を具備する。つまり、尿発電部8は尿を媒介とした尿発電電池を構成する。
負極側の電極体6はシート状電極体4と同様にシート状であり、導電性材料としてたとえば、アルミニウム、亜鉛、銅などの金属箔を用いればよい。これらの金属箔をエッチングなどの拡面処理を施すことで、負極を小形化することができるため、好ましい。この電極体6の長さをL2、幅をW2、厚みをM2とすれば、シート状電極体4と同様に、厚みM2に対して長さL2またはW2がL2≫M2、W2≫M2であればよく、L2>W2またはL2<W2であってもよい。
シート状電極体4との関係では、検出対象である尿との同時接触性を維持するため、L1=L2でよく、また、導体である電極体6の集電能力からW1>W2、M1>M2とすればよい。
【0019】
この尿発電部8では、シート状電極体4および電極体6は絶縁間隔10を設けて平行に配置される。シート状電極体4と電極体6の絶縁間隔10の幅をDとすれば、L1(=L2)>D>W1(>W2)>M1(>M2)とすればよい。一例として、M2=1.8〔mm〕、D=10〔mm〕とすればよい。
【0020】
この尿発電部8は絶縁性を持つ支持部材12に設置され、この例ではシート状電極体4および電極体6からなる電極対が水平に維持される。支持部材12はシート状電極体4と電極体6をたとえば、水平に維持するとともに、シート状電極体4と電極体6の間を絶縁する絶縁材料で形成すればよい。
尿発電部8の上側には図2のBに示すように、尿を保持する保持部材の一例として、尿の吸水部材14が配置される。この吸水部材14には尿の吸水機能を備える吸水材としてたとえば、吸水ポリマーなどを用いればよい。尿発電部8は少なくともシート状電極体4および電極体6を備えればよいが、吸水部材14や支持部材12を含んで編成されてもよい。
【0021】
排尿時、図2のBに示すように、吸水部材14が排尿を受け、尿16が吸水部材14に保持され、尿16がシート状電極体4に到達すると、図2のCに示すように、シート状電極体4と電極体6の間が尿16で橋絡状態となる。シート状電極体4が尿16と接触すると、シート状電極体4の発電機能により発電状態を呈する。この発電状態は排尿タイミングにより発電を開始して電荷を生じ、過渡的に収束して発電電荷が保持される。したがって、この発電により生じた発電出力がシート状電極体4と電極体6の電極間に得られる。つまり、シート状電極体4を陽極とし、負極とした電極体6を接地すれば、この接地電位を基準電位として発電出力が得られる。この発電出力はたとえば、電流出力、電圧出力または電力であってもよい。この発電出力は排尿毎に生じ、排尿および排尿回数を表し、発電出力に現れる段階値などにより排尿および排尿回数を判定することができる。
【0022】
<排尿検出および発電出力の生成>
この尿発電部8によれば、後述の実施例4~実施例8から明らかなように、発電出力ioは、実施例4(図6のB)に示すように、排尿毎にピーク値を生じ、該ピーク値から時間の経過とともに安定値に移行し、排尿回数に応じて段階状に増加する段階値を呈し、この電気的変化から排尿および排尿回数を捉えることができる。特に、尿発電部8の陽極として、カーボンのみからなる又はカーボンを含むシート状電極を用いることで、安定的な電気的変化を得られるため、排尿または排尿回数のいずれか一方または双方の検出に効果的である。
【0023】
<一実施の形態の効果>
この一実施の形態によれば、次のいずれかの効果が得られる。
(1) 排尿または排尿回数を特定可能な段階値を持つ発電出力が得られるので、排尿または排尿回数の検出感度が高められる。
(2) 発電出力に現れる段階値により排尿や排尿回数を特定できる。
(3) この発電出力からおむつ交換の時期を排尿回数に応じて特定でき、おむつ交換などの時期管理の容易化を図ることができ、介護者や患者の負担の軽減に寄与することができる。
(4) 尿発電部8は少なくともシート状電極体4と電極体6を備える極めて簡単な構成である。
(5) シート状電極体4、電極体6に電極箔を用いれば、尿発電部8の軽量化やコンパクト化を図ることができる。
【実施例1】
【0024】
尿発電電極2の製法の一例とし、シート状電極体4の製造にはシート状電極体材料の選択および計量(ステップ1)、混合および混練処理(ステップ2)、成形処理(ステップ3)が含まれる。
〔1〕シート状電極体材料の選択および計量(ステップ1)
ステップ1では、シート状電極体材料として、水蒸気賦活した電気二重層キャパシタ用活性炭を選択する。シート状電極体材料の計量としてたとえば、活性炭を約50〔mg〕を計り取る。
【0025】
〔2〕混合および混練処理(ステップ2)
ステップ1で得た活性炭に約10〔mg〕のバインダーとしてたとえば、四フッ化エチレン樹脂(Polytetrafluoroethylene :PTFE)分散液と、導電補助材として約10〔mg〕のケッチェンブラックと混合させる。
活性炭を含む混合体を、たとえば、乳鉢を用いて混練すれば、粘度を持つ混練体が生成される。
【0026】
〔3〕成形処理(ステップ3)
ステップ2で得られた混練体を成形手段としてたとえば、二軸ローラーに挟み込み、ローラー回転によって加圧しつつ送り出せば、混練体をシート状に延伸させ、成形することができる。これにより、活性炭シートとしてのシート状電極体4を生成できる。
【0027】
<実施例1の効果>
実施例1によれば、次のいずれかの効果が得られる。
(1) 発電性能の高いシート状電極体4を形成できる。
(2) 活性炭を含む混合体を、乳鉢を用いて混練した混練体は適当な粘度を備えているので、シート状電極体4への成形が容易であり、画一的なシート状電極体を製造でき、特性の画一化や均一化を図ることができる。
(3) シート状電極体4を軽量化や所望の厚みに形成できる。
【実施例2】
【0028】
図3は実施例2に係るおむつを示し、Aは身体装着時のおむつ断面、Bは装着前のおむつを示している。
このおむつ18は、身体20の曲線部に装着可能な柔軟性のある外装部材22を備えて既述の尿発電部8が設置されている。外装部材22は身体20の形状に対応してたとえば、湾曲形状で尿漏れを防止するための防水材で形成すればよい。尿発電部8は、シート状電極体4および電極体6が水平方向に配置されており、身体20の前後方向に向かって排尿を受け止め可能に取り付けられている。この例では、尿発電部8に対して吸水部材14を、身体20側を凹に湾曲させてある。
【0029】
被覆部材24と外装部材22の間には空間部26が備えられ、この空間部26に尿発電部8が配置されている。被覆部材24は、吸水紙、綿状パルプ、高分子吸収材を含む吸水材で形成すればよい。この被覆部材24の側部には尿漏れを防止する立体ギャザー部28が備えられる。各立体ギャザー部28は、外装部材22と同様に防水材で形成すればよい。外装部材22の縁部には保持テープ30などを備えて身体20に保持させればよい。そして、おむつ18には尿発電部8の外部接続端子を備え、たとえば、後述の尿検出装置32(図4のA)との電気接続を行えばよい。
【0030】
<実施例2の効果>
この実施例2によれば、次のいずれかの効果が得られる。
(1) 発電性能の高いシート状電極体4を含む尿発電部8を備えたおむつ18を構成できる。
(2) 尿発電部8は外装部材22に安定した状態で設置され、その上面に吸水部材14を備えているので、排尿や排尿回数の検出機能を高め、安定した発電出力を生成させることができる。
(3) 尿発電部8を構成するシート状電極体4および電極体6は極めて軽量かつコンパクトであり、おむつ18に占める割合は小さく、患者などのおむつ18の使用者に違和感を生じさせることがなく、装着感を損なうことがない。
【実施例3】
【0031】
図4のAは、実施例3に係る尿検出装置32を示している。この尿検出装置32には、尿発電部8、キャパシタ34、間欠電源部36、無線送信部38が備えられる。
尿発電部8は、正極にシート状電極体4、負極に電極体6を使用し、この電極体6を接地している。この尿発電部8には充電用のキャパシタ34が並列に接続され、このキャパシタ34の容量CL〔mF〕、すなわち、尿発電部8の出力側に設定される出力負荷容量(Output load capacitance :OLC)〔mF〕とする。
【0032】
排尿時、シート状電極体4による発電出力が尿発電部8からキャパシタ34に加えられ、キャパシタ34が充電される。キャパシタ34から発電出力が間欠電源部36に加えられ、間欠電源部36は、排尿を表す正規化検出信号(Normalized sensing signal :Nss)を生成し、この正規化検出信号Nssは、尿発電部8の発電出力のレベルに応じた間隔を持つ間欠信号である。この正規化検出信号Nssによれば、間隔が発電出力のレベルに応じて異なるので、その間隔から排尿および排尿回数を特定できる。この正規化検出信号Nssは、間欠電源部36から無線送信部38に提供され、無線送信部38で変調処理などが施された後、無線信号としてアンテナ40から受信側に向けて送信される。受信側では、受信信号から排尿および排尿回数を認識できる。正規化検出信号Nssは、受信側で生成させる処理としてもよい。
【0033】
<キャパシタ34の充電特性>
図4のBは、尿発電部8の排尿検出に係るキャパシタ34の電池出力電圧(Battery output voltage:Bov〔V〕)を示している。
キャパシタ34の容量CL=10〔mF〕、尿の単位量(Unit volume of urine:Uvu)をUvu=80〔cm3 〕とした場合、排尿時、尿発電部8の発電出力によりキャパシタ34には図4のBに示すように、電池出力電圧Bov〔V〕が生じている。このBov〔V〕は、排尿を契機に時間tの経過とともに指数関数的に増加し、一定電圧に到達している。
【0034】
<排尿検出に係る正規化検出信号>
図4のCは、尿検出装置32の尿検出に係る正規化検出信号(Normalized sensing signal :Nss)を示している。
排尿毎の尿の単位量UvuをUvu=80〔cm3 〕、排尿間隔をt>300〔s〕とした場合、間欠電源部36には図4のCに示すように、正規化検出信号Nssが生成される。第1回(I)の排尿では間隔t1の間欠信号が生じ、第2回(II)の排尿後、間隔t2(<t1)の間欠信号に遷移している。この信号間隔の遷移により、排尿および排尿回数を認識することができる。
【0035】
<おむつ18の濡れ推移、その検出およびおむつ交換時期>
図5のAは、単位尿量とおむつの濡れ推移を示している。
尿の単位量Uvu=40〔cm3 〕、80〔cm3 〕、120〔cm3 〕について、おむつ18に維持される尿のトータル加算量(Total amount of urine added to diaper :Taud〔cm3 〕)=240〔cm3 〕に到達する排尿回数を、Uvu=40〔cm3 〕の場合:6回、Uvu=80〔cm3 〕の場合:3回、Uvu=120〔cm3 〕の場合:2回とする。
この結果、尿のトータル加算量Taud、排尿間隔により、おむつ18の濡れ具合に相違がある。尿のトータル加算量Taud=240〔cm3 〕に到達する場合において、1回の尿の単位量Uvuが少なくても排尿間隔が短ければ、おむつの濡れが段階的に増加傾向となるのに対し、1回の尿の単位量Uvuが多くても排尿間隔が長ければ、おむつの濡れが少ない傾向となる。
【0036】
<排尿量および排尿回数の特定>
図5のBは、排尿量および排尿回数を表す正規化検出信号Nssを示している。
尿の単位量Uvu=40〔cm3 〕:
図5のBのB1に示すように、第1回(I)の排尿から時間t=3500〔s〕の経過後に第2回(II)の排尿があった場合、第1回(I)の排尿から第2回(II)の排尿に至る間ではNss=0、第2回(II)の排尿からNss=連続状態となる。
【0037】
尿の単位量Uvu=80〔cm3 〕:
図5のBのB2に示すように、第1回(I)の排尿から300〔s〕の経過後に第2回(II)の排尿があった場合、正規化検出信号Nssは、第1回(I)の排尿から第2回(II)の排尿までの間は広い間隔となり、第2回(II)の排尿後、狭い間隔となる。
【0038】
尿の単位量Uvu=120〔cm3 〕:
図5のBのB3に示すように、第1回(I)の排尿から時間t>300〔s〕の経過後に第2回(II)の排尿があった場合、正規化検出信号Nssは第1回の排尿から第2回の排尿までの間はUvu=80〔cm3 〕の場合より広い間隔となり、第2回の排尿後、より狭い間隔となる。
【0039】
<おむつの交換時期の特定>
図5のCは、排尿量、排尿回数によるおむつの交換時期(Time to change diaper :Tcd)を示している。
尿の単位量Uvu=40〔cm3 〕、時間間隔=1時間〔hr〕で排尿があった場合には、尿のトータル加算量Taudは、I:Taud=40〔cm3 〕、II:Taud=80〔cm3 〕、III :Taud=120〔cm3 〕、IV:Taud=160〔cm3 〕に段階的に増加する。Taud=160〔cm3 〕の到達時点をおむつ交換時期Tcdとすれば、3時間でおむつ交換時期Tcdが到来している。このおむつ交換時期TcdはTaud=160〔cm3 〕を表す正規化検出信号Nssで認識することができる。
【0040】
<実施例3の効果>
この実施例3によれば、次のいずれかの効果が得られる。
(1) 排尿および排尿回数をおむつ18に蓄積される排尿量を正規化検出信号Nssとして取り出すことができる。
(2) 正規化検出信号Nssの信号状態、つまり信号間隔によっておむつ18の濡れ、その交換時期を特定できる。
(3) 正規化検出信号Nssはたとえば、無線または有線により、おむつ18の使用位置から離れた場所で捉えることができ、おむつ18の交換時期を個別および複数のおむつ18を単位として総括的に把握することができる。
(4) これにより、患者、介護者など、おむつ交換の管理負担を軽減でき、ひいては衛生的な介護環境の実現や、効率的な介護が実現できる。
【実施例4】
【0041】
図6のAは、実施例4に係る尿発電部8を示している。この実施例4では、尿発電部8に負荷抵抗42を並列に接続し、尿発電部8に対して定抵抗負荷を接続した状態で尿発電部8の出力特性を測定する。
【0042】
<実施例4の測定条件>
正極:活性炭電極、正極の幅W1:10〔mm〕、正極の長さL1:320〔mm〕、厚さM1:100、140、400〔μm〕
負極:EDLC(Electric Double-Layer Capacitor:電気二重層コンデンサ)用アルミニウム箔、負極の幅W2:1.8〔mm〕、負極の長さL2:320〔mm〕=L1
正極-負極間の距離D:10〔mm〕
負荷抵抗42の抵抗値RL:10〔kΩ〕
電解液:0.9〔%〕の生理食塩水
【0043】
<測定方法>
図6のAに示す測定回路を使用し、1時間毎、おむつ18に1回で注入する電解液を40〔cm3 〕とし、6回の注入でトータル加算量:240〔cm3 〕とした。これにより、尿発電部8から出力される発電電流(Battery-generated current :Bgc〔μA〕)を測定した。
【0044】
<測定結果1>
図6のBは、発電電流Bgc〔μA〕の測定結果1を示している。
シート状電極体4の厚さM1:140〔μm〕=実線で示した発電電流Bgc(特性B1):
第1回(I)注入で、急峻に立ち上がるピーク値が生じ、このピーク値から指数関数的に急激に減少して安定値に移行し、1時間後の第2回(II)注入で、急峻に立ち上がり、ピーク値を生じている。このピーク値は第1回(I)のピーク値より僅かに低い値である。このピーク値から指数関数的に減少して第1回(I)注入より高い値の安定値に移行している。この安定値から1時間の経過後、第3回(III )注入でピーク値を生じ、第2回(II)注入より高い安定値に移行している。第4回(IV)、第5回(V)および第6回(VI)の各注入時点でレベル変化を生じ、前回注入よりも高い安定値に増加している。各安定値は、排尿回数に応じて増加する段階値であり、排尿回数に比例して電流変化の度合いが小さくなる傾向である。
【0045】
シート状電極体4の厚さM1:400〔μm〕=破線で示した発電電流Bgc(特性B2):
第1回(I)注入で急峻に立ち上がり、指数関数的に減少して安定値に移行し、この安定値から第2回(II)注入で急峻に立ち上がり、指数関数的に減少して安定値に移行し、この安定値から第3回(III )注入で急峻に立ち上がり、立ち上がった値で安定値に移行している。
【0046】
各特性B1、B2の電流値の大きさや、変化の度合いに相違があるものの、一定時間を単位とする排尿毎にピーク値を生じ、該ピーク値から時間の経過とともに安定値に移行し、排尿回数に応じて段階状に増加する段階値を呈しており、この段階値やピーク値を以て排尿および排尿回数を認識することができる。
【0047】
<測定結果2>
図6のCは、発電電流Bgc〔μA〕の測定結果2を示している。
シート状電極体4の厚さM1:140〔μm〕=実線で示した発電電流Bgc(特性C1):
測定結果1と同様に、第1回(I)注入で急峻に立ち上がり、指数関数的に減少して安定値に移行し、この安定値から第2回(II)注入で急峻に立ち上がり、指数関数的に減少して安定値に移行し、この安定値から第3回(III )注入で急峻に立ち上がり、指数関数的に減少して安定値に移行し、再び、第4回(IV)注入で立ち上がり減少して安定値に移行する傾向が見られる。各安定値は、排尿回数に応じて増加する段階値であり、排尿回数に比例して電流変化の度合いが小さくなる傾向である。
【0048】
シート状電極体の厚さM1:100〔μm〕=破線で示した発電電流Bgc(特性C2):
特性C1と電流レベルに若干の相違があるものの、特性C1と同様の傾向である。
【0049】
各特性C1、C2の電流値の大きさに若干の相違がある程度で、一定時間を単位とする排尿毎にピーク値を生じ、該ピーク値から時間の経過とともに安定値に移行し、排尿回数に応じて段階状に増加する段階値を呈しており、この段階値やピーク値を以て排尿および排尿回数を認識することができる。
【0050】
〔他の実施の形態〕
(1) 上記実施の形態や実施例ではおむつを例示したが、尿を尿発電部に接触させることができる容器や保水部材であればよく、おむつに限定されない。
(2) 実施例3に係る尿検出装置では正規化検出信号を無線で送信しているが、有線で伝送してもよい。
(3) 上記実施例ではキャパシタ、負荷抵抗を使用し、一例として容量値や抵抗値を例示したが、本発明はこれらの値に限定されるものではなく、またキャパシタは他の充電素子でもよく、キャパシタや負荷抵抗にはトランジスタなどの能動素子を使用してもよい。
【0051】
以上説明したように本発明の実施の形態などについて説明した。本発明は上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、尿を媒介とした発電機能を備える尿検出電極を備えており、外部給電を伴うことなく、排尿および排尿回数を表す発電出力を得ることにより、発電出力から排尿や排尿回数を特定することができる。
【符号の説明】
【0053】
2 尿発電電極
4 シート状電極体
6 電極体
8 尿発電部
10 絶縁間隔
12 支持部材
14 吸水部材
16 尿
18 おむつ
20 身体
22 外装部材
24 被覆部材
26 空間部
28 立体ギャザー部
30 保持テープ
32 尿検出装置
34 キャパシタ
36 間欠電源部
38 無線送信部
40 アンテナ
42 負荷抵抗

図1
図2
図3
図4
図5
図6