(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】透明被膜形成用塗布液及び透明被膜付基材
(51)【国際特許分類】
C09D 4/02 20060101AFI20220104BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220104BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20220104BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20220104BHJP
【FI】
C09D4/02
B05D7/24 301T
B05D7/24 302P
C09D7/20
C09D7/62
(21)【出願番号】P 2017071511
(22)【出願日】2017-03-31
【審査請求日】2020-01-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】林 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】箱嶋 夕子
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 光章
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-508828(JP,A)
【文献】特開2005-126453(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0326383(US,A1)
【文献】国際公開第2014/083644(WO,A1)
【文献】特開2011-190343(JP,A)
【文献】特開2006-188557(JP,A)
【文献】特開2016-011365(JP,A)
【文献】特開2012-031312(JP,A)
【文献】特開2012-140534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 4/02
B05D 7/24
C09D 7/20
C09D 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3以上のアルキレンオキサイド基及び3以上の(メタ)アクリレート官能基を有するアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートモノマー樹脂と、紫外線照射により開裂し重合する官能基を有する表面処理金属酸化物微粒子と、(メタ)アクリレート基を有するフッ素系モノマー樹脂と、有機溶媒と、光重合開始剤とを含む透明被膜形成用塗布液であって、
前記アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートモノマー樹脂が、(メタ)アクリレート官能基数を分子量で除して100を乗じた値が
0.6~1.0であり、
前記フッ素系モノマー樹脂が、前記アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートモノマー樹脂、前記表面処理金属酸化物微粒子及び前記フッ素系モノマー樹脂の固形分の合計量に対して、固形分として0.05~3.0質量%含まれていることを特徴とする透明被膜形成用塗布液。
【請求項2】
前記アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートモノマー樹脂が、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレートモノマー樹脂であることを特徴とする請求項1記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項3】
前記有機溶媒における主溶媒の溶解度パラメーターが7~10.5であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項4】
前記表面処理金属酸化物微粒子が、表面処理シリカ系微粒子であることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項5】
基材に、請求項1~4のいずれか記載の透明被膜形成用塗布液を塗布した後、乾燥及び紫外線照射を行い、基材上に透明被膜を形成することを特徴とする透明被膜付基材の製造方法。
【請求項6】
前記透明被膜は、樹脂と表面処理金属酸化物微粒子とを含み、前記透明被膜の表面にフッ素成分が偏在していることを特徴とする請求項5記載の透明被膜付基材の製造方法。
【請求項7】
前記透明被膜の表面にフッ素成分を主成分とする多数の凸状物が形成されていることを特徴とする請求項6記載の透明被膜付基材の製造方法。
【請求項8】
前記透明被膜とスチールウールとの動摩擦係数が0.01~0.30であることを特徴とする請求項6又は7記載の透明被膜付基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬度(鉛筆硬度)及び強度(耐擦傷性)の高い透明被膜を形成できる塗布液、及びこれを用いた透明被膜付基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス、プラスチック等で形成されたシートやレンズ等の基材表面の硬度及び強度を向上させるため、基材表面にハードコート機能を有する透明被膜が形成されている(特許文献1及び2参照)。このような透明被膜としては、有機樹脂膜や無機膜が用いられ、さらに、膜中に樹脂粒子やシリカ等の無機粒子を配合して、硬度や強度を向上させることが行われている。ここで、有機樹脂膜としては、アクリレート樹脂膜等が用いられており、例えば、ウレタン系アクリレートや多官能アクリレート樹脂を用いた透明被膜が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-055203号公報
【文献】特開2013-064038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの従来の技術では、近年普及しているスマートフォン、タブレット等のタッチパネルに要求される硬度及び耐擦傷性が十分でないという問題があった。
ここで、従来の公知技術において、透明被膜の硬度を上げるためには、金属酸化物微粒子を添加し、硬度を向上させることが一般的であるが、金属酸化物微粒子を添加すると、耐擦傷性が著しく低下するという問題があった。一方、透明被膜の耐擦傷性を向上させるためには、被膜形成成分に例えばフッ素系樹脂を加えることが一般的であるが、硬度が低くなるという問題があった。また、この問題を解決するために、更に、金属酸化物微粒子を添加すると、該微粒子が凝集し、透明被膜が得られない場合や、該微粒子が凝集しなくても、耐擦傷性が著しく低下するという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、高い硬度(鉛筆硬度)を有すると共に、強度(耐擦傷性)がさらに向上した透明被膜を形成できる塗布液、及びこれを用いた透明被膜付基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、この問題を解決すべく研究を進めた結果、特定のバインダー樹脂、表面処理された金属酸化物微粒子、及び特定のフッ素系樹脂を組み合わせることにより、膜の表面にフッ素成分を偏在させることができると共に、金属酸化物微粒子の分散も充分に図られ、これにより、高い硬度(鉛筆硬度)及び強度(耐擦傷性)を有する透明被膜が形成できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂と、紫外線照射により開裂し重合する官能基を有する表面処理金属酸化物微粒子と、(メタ)アクリレート基を有するフッ素系樹脂と、有機溶媒と、光重合開始剤とを含み、前記フッ素系樹脂が、前記アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂、前記表面処理金属酸化物微粒子及び前記フッ素系樹脂の固形分の合計量に対して、固形分として0.05~3.0質量%含まれている透明被膜形成用塗布液に関する。
【0008】
また、本発明は、基材に、上記透明被膜形成用塗布液を塗布した後、乾燥及び紫外線照射を行い、基材上に透明被膜を形成する透明被膜付基材の製造方法に関する。
【0009】
さらに、本発明は、基材上に、樹脂と表面処理金属酸化物微粒子とを含み、その表面にフッ素成分が偏在している透明被膜が設けられた透明被膜付基材に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の透明被膜形成用塗布液は、高い硬度を有すると共に耐擦傷性に優れたハードコート機能を有する透明被膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1の透明被膜表面のAFM像(凸状物有り)である。
【
図2】比較例2の透明被膜表面のAFM像(凸状物無し)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《透明被膜形成用の塗布液》
本発明の塗布液は、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂と、紫外線照射により開裂し重合する官能基を有する表面処理金属酸化物微粒子と、(メタ)アクリレート基を有するフッ素系樹脂と、有機溶媒と、光重合開始剤とを含む。この塗布液は、レベリング剤等の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0013】
塗布液に含まれる主要な成分について以下に詳細に説明する。
《アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂(バインダー樹脂)》
本発明のアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂は、アルキレンオキサイド基及び(メタ)アクリレート官能基を有するモノマー樹脂であればよいが、1以上のアルキレンオキサイド基及び3以上の(メタ)アクリレート官能基を有するモノマー樹脂であることが好ましい。
【0014】
アルキレンオキサイド基は、極性が高い親水性の官能基であり、表面処理金属酸化物微粒子の分散性を向上させる役割を果たすと考えられる。すなわち、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂は、表面処理金属酸化物微粒子との相溶性が高いため、フッ素系樹脂の存在下でも、表面処理金属酸化物微粒子をアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂中に充分に分散させることができる。
【0015】
アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂のアルキレンオキサイド基は、少なくとも1つ有していればよいが、3以上であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。アルキレンオキサイド基数がこの範囲にあることにより、表面処理金属酸化物微粒子の分散性と膜の緻密化による高硬度の両者をより確実に担保することができる。
【0016】
このアルキレンオキサイド(AO)基としては、エチレンオキサイド(EO)基、プロピレンオキサイド(PO)基、ブチレンオキサイド(BO)基が好ましい。特に、単位基内の酸素原子の割合が高く極性が高いエチレンオキサイド基が好ましい。
【0017】
(メタ)アクリレート官能基は、緻密で硬度な膜の形成に寄与する。
アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂における(メタ)アクリレート官能基は、少なくとも1つ有していればよいが、3以上であることが好ましく、5~8であることがより好ましい。(メタ)アクリレート官能基数がこの範囲にあることにより、膜の緻密化による高硬度及び高耐擦傷性の両者をより確実に担保することができる。
【0018】
また、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂の(メタ)アクリレート官能基数を分子量で除して100を乗じた値は、0.4以上が好ましく、0.6~1.0であることがより好ましい。(メタ)アクリレート官能基数に関する上記値がこの範囲にあることにより、膜の緻密化による高硬度及び高耐擦傷性の両者をより確実に担保することができる。また、上記値が0.4未満の場合は、表面処理金属酸化物微粒子と結合するサイトが減るため、硬度及び耐擦傷性が不充分となるおそれがある。一方、上記値が1.0よりも多い場合には、収縮が大きくなり、カーリングが顕著になる場合や、密着性が不充分となるおそれがある。
分子量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算により質量平均分子量を測定し、得たものである。
【0019】
本発明のアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂としては、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂、プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂およびブチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂が好適である。
具体的に、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂としては、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを例示できる。これらは、エチレンオキサイド基を各々3~40個もっている。
プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂としては、プロポキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを例示できる。これらは、プロピレンオキサイド基を各々3~40個もっている。
ブチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂としては、ブトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ブトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ブトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ブトキシ化ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ブトキシ化ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ブトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを例示できる。これらは、ブチレンオキサイド基を各々3~40個もっている。
これらの樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0020】
《表面処理金属酸化物微粒子》
本発明の表面処理金属酸化物微粒子は、紫外線照射により開裂し重合する官能基を有する金属酸化物微粒子である。
【0021】
金属酸化物微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、シリカ-アルミナ、シリカ-ジルコニア等の他、酸化錫、SbまたはPがドープされた酸化錫、酸化インジウム、SnまたはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化チタン等の導電性粒子も好適に用いることができる。本発明においては、シリカを含むシリカ系微粒子が好ましい。
【0022】
〈平均粒子径〉
表面処理金属酸化物微粒子の平均粒子径は、分散安定性や製造される膜の透明性の点から、5~500nmの範囲が好ましく、10~200nmの範囲がより好ましく、10~120nmの範囲がさらに好ましい。
平均粒子径の測定は、電子顕微鏡写真を撮影し、任意の100個の粒子について、その最長径を測定し、その平均値として得たものである。
【0023】
〈表面処理:表面処理剤、表面処理量〉
表面処理金属酸化物微粒子は、金属酸化物微粒子を下記式(1)で表される紫外線照射により開裂し重合する官能基を有する有機珪素化合物で表面処理したものであることが好ましい。
Rn-SiX4-n・・・(1)
但し、式中、Rは炭素数1~10の非置換または置換炭化水素基で、互いに同一であっても異なっていてもよい。置換基としては、エポキシ基、アルコキシ基、(メタ)アクリロイロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミノ基、フェニルアミノ基が挙げられる。Xは炭素数1~4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、水素原子であり、nは1~3の整数を示す。
【0024】
表面処理金属酸化物微粒子は、固形分として、有機珪素化合物が金属酸化物微粒子100質量部に対し、Rn-SiO(4-n)/2として0.1~50質量部の範囲にあれば相溶性が向上する。ここで、有機珪素化合物量が0.1質量部よりも少ないと、表面処理金属酸化物微粒子の分散性が不充分となり、得られる透明被膜にヘーズが発生するおそれがあると共に、バインダー(アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂)との結合力が弱くなるので、基材との密着性や硬度が不充分となることがある。逆に、有機珪素化合物量が50質量部より多くても、分散性がさらに向上する訳ではなく、表面処理金属酸化物微粒子の高密度充填が阻害されるおそれがある。また、バインダーと結合するサイトが増えるので、収縮が大きくなり、カーリングが顕著になる場合や、密着性が不充分となるおそれがある。さらに、未反応(微粒子と結合しない)の表面処理剤(有機珪素化合物)同士が結合すると収縮が大きくなるため、未反応の表面処理剤を少なくすることが好ましい。
【0025】
《フッ素系樹脂》
本発明のフッ素系樹脂は、フルオロ基及び(メタ)アクリレート基を有するモノマー樹脂であり、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂(バインダー樹脂)と共重合して透明被膜を形成する。フッ素系樹脂が(メタ)アクリレート基を有することにより、バインダー樹脂との共重合により、耐擦傷性が高く、緻密で高硬度な膜を形成することができる。
【0026】
フルオロ基は、主鎖や側鎖に導入されていればよく、(メタ)アクリレート基の置換基として導入されていてもよい。フッ素系樹脂は、製造される透明被膜にフッ素成分が偏在し、膜表面に滑り性を付与して耐擦傷性を向上できることができるものであればよい。
【0027】
フッ素系樹脂としては、下記式(2)で表されるフッ素系樹脂を例示することができる。
【0028】
【0029】
式中、nは0~100の整数である。Xは、水素原子又はフッ素原子である。
【0030】
本発明において使用できる市販のフッ素系樹脂としては、例えば、ダイキン工業株式会社製オプツールDAC-HP、DIC株式会社製メガファックRSシリーズ、株式会社フロロテクノロジー製フロロサーフシリーズ、信越化学工業株式会社製KY-1200シリーズ等を挙げることができる。
【0031】
《有機溶媒》
有機溶媒としては、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂、表面処理金属酸化物微粒子、フッ素系樹脂及び光重合開始剤を溶解あるいは分散できるものが用いられる。
有機溶媒としては、親水性溶媒や極性溶媒が好ましい。親水性溶媒としては、アルコール類、エステル類、グリコール類、エーテル類等が使用でき、極性溶媒としては、エステル類、ケトン類等が使用できる。
【0032】
有機溶媒は、具体的に、アルコール類として、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等があり、エステル類として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールモノアセテート等があり、グリコール類として、エチレングリコール、ヘキシレングリコール等があり、エーテル類としては、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプルピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等があり、ケトン類として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン等があり、極性溶媒として他に、炭酸ジメチル、トルエン等がある。これらは単独で使用してもよいが、2種以上を混合して使用することが好ましい。
【0033】
使用される有機溶媒において最も質量割合の多い主溶媒は、溶解度パラメーター(SP値)が、7~10.5であることが好ましく、8~9であることがより好ましい。このような溶解度パラメーターの溶媒は、本発明のアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂の溶解性あるいは分散性が良く、本発明の表面処理金属酸化物微粒子の分散性も良い。また、本発明のフッ素系樹脂の溶解性あるいは分散性が適度である。SP値が7未満の場合はアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂や表面処理金属酸化物微粒子の分散性あるいは溶解性が不充分となり、充分な被膜の強度や耐擦傷性が得られない場合がある。逆に、SP値が10.5を超えるとフッ素系樹脂の溶解性が高すぎる場合があり、得られる透明被膜の表面にフッ素成分が偏析せず、耐擦傷性向上の効果が得られないおそれがある。好ましい主溶媒としては、具体的にメチルイソブチルケトン(SP値8.4)、メチルエチルケトン(SP値9.3)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値10.4)を挙げることができる。
なお、主溶媒は、有機溶媒全体の40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0034】
《光重合開始剤》
塗布液は、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、2-ヒドロキシ-メチル-2-メチル-フェニル-プロパン-1-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等がある。光重合開始剤の使用量としては、有機樹脂の固形分濃度の2~20質量%が好ましく、4~16質量%にあることが更に好ましい。
【0035】
《その他の成分》
また、塗布液は、造膜性を向上させるために、必要に応じてレベリング剤等を含有させることが好ましい。レベリング剤としては、アクリル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、アクリルシリコーン系レベリング剤等がある。また、界面活性剤等を含有させてもよい。
【0036】
《透明被膜形成用の塗布液の濃度》
塗布液の全固形分濃度(アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂の固形分と表面処理金属酸化物微粒子の固形分とフッ素系樹脂の固形分と光重合開始剤の固形分等を合計した固形分の濃度)は、5~70質量%であることが好ましく、10~60質量%であることがより好ましい。5質量%より低いと、塗料の濃縮安定性が低いために、均一な膜が得られ難い場合がある。また、得られた透明被膜は、硬度や耐擦傷性が不充分となったり、ヘーズあるいは外観が悪くなったりして、生産性、製造信頼性等が低下する場合がある。70質量%より高くても、塗布液の粘度が高くなり、塗布性が低下したり、得られる透明被膜のヘーズが高くなったり、表面粗さが大きくなり、耐擦傷性が不充分となる場合がある。
【0037】
〈アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂の濃度〉
塗布液中のアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂は、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂の固形分と表面処理金属酸化物微粒子の固形分とフッ素系樹脂の固形分の合計量に対して、固形分として27~79.95質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることが更に好ましい。
ここで、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂が27質量%より少ないと、塗膜化した時に、透明被膜にクラックが発生したり、耐擦傷性が不充分となる場合がある。逆に、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂が79.95質量%より多いと、透明被膜の硬度が不充分となる場合がある。
【0038】
〈表面処理金属酸化物微粒子の濃度〉
塗布液中の表面処理金属酸化物微粒子は、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂の固形分と表面処理金属酸化物微粒子の固形分とフッ素系樹脂の固形分の合計量に対して、固形分として20~70質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることが更に好ましい。ここで、表面処理金属酸化物微粒子が20質量%より少ないと、塗膜化した時に、硬度が不充分となる場合がある。逆に、表面処理金属酸化物微粒子が70質量%より多いと、透明被膜にクラックが発生する場合がある。また、被膜が得られたとしても、基材との密着性が不充分となる場合や、膜強度や耐擦傷性、透明性、ヘーズ等が悪化する場合がある。
【0039】
〈フッ素系樹脂の濃度〉
塗布液中のフッ素系樹脂は、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂の固形分と表面処理金属酸化物微粒子の固形分とフッ素系樹脂の固形分の合計量に対して、固形分として0.05~3.0質量%であり、0.08~2.0質量%であることが好ましく、0.1~1.0質量%であることがより好ましい。
ここで、フッ素系樹脂が0.05質量%より少ないと、塗膜化した際に、フッ素樹脂の機能を充分に発揮することができず、耐擦傷性向上の効果が得られない。逆に、(メタ)アクリレート基を有するフッ素系樹脂が3.0質量%より多いと、透明被膜の硬度や耐擦傷性が不充分となる。
【0040】
[透明被膜付基材]
上述の塗布液を用いて、透明被膜を基材に直接的又は間接的に形成する。具体的には、基板上に塗布液を塗布した後、乾燥及び紫外線照射を行い、基板上に透明被膜を形成する。乾燥は、例えば、50~150℃程度に加熱し、一部の溶媒を蒸発させて除去する。その後、好ましくは窒素雰囲気下において、紫外線を照射し、樹脂成分の重合を促進させて膜の硬度化を図る。透明被膜は、主に樹脂成分と表面処理金属酸化物微粒子で形成される。
【0041】
透明被膜付基材の光透過率は、90.0%以上であることが好ましい。透明被膜付基材の光透過率が90.0%よりも低いと、表示装置等に用いた場合、画像の鮮明度不充分となる場合がある。この透明被膜付基材の光透過率は、91.5%以上であることが更に好ましい。
このような透明被膜付基材は、光電気セル、液晶表示セルや携帯電話、パソコン等の軽量化のために、薄くかつ軽量性が求められる用途に好適である。
【0042】
《透明被膜》
本発明の透明被膜付基材は、透明被膜の表面に、フッ素成分が偏在することを特徴とする。フッ素成分は、透明被膜表面で滑り剤や犠牲膜として機能し、耐擦傷性を向上させることができる。この被膜中のフッ素成分の偏析は、後述するように、X線光電子分光装置を用いてスペクトル解析することで確認できる。
【0043】
また、透明被膜表面には、上記偏在したフッ素成分を主成分とする多数の凸状物が形成されていることが好ましい。上記のように、フッ素成分は、透明被膜表面で、滑り剤や犠牲膜として機能し、耐擦傷性を向上させることができるが、特に凸状物が形成されている場合には、耐擦傷性が顕著に向上する。ここで、凸状物とは、高さ1.0nm以上のものをいい、この高さの測定は、原子間力顕微鏡(AFM)を使用して行うことができる。
この凸状物の形成の原因は明らかではないが、おそらくフッ素系樹脂とアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂と表面処理金属酸化物微粒子と有機溶媒(主溶媒)との相溶性と、膜化の際のフッ素成分の偏在性とが関連しているものと考えている。
【0044】
透明被膜と#0000のスチールウールとの動摩擦係数は、0.01~0.30であることが好ましく、0.01~0.25であることがより好ましい。
透明被膜の耐擦傷性は、#0000のスチールウールを用い、荷重1kg/cm2にて摺動させて評価する。この摺動回数が少なくとも100回の時点で膜表面に筋状の傷が認められないことが好ましく、1000回の時点で傷が認められないことがより好ましく、2000回の時点で傷が認められないことが更に好ましい。透明被膜が上記範囲の動摩擦係数を有することにより、このような高い耐擦傷性を得ることが可能となる。
【0045】
透明被膜の鉛筆硬度は、3H以上であることが好ましい。3H未満の鉛筆硬度では、ハードコート膜として硬度が不充分である。この透明被膜の鉛筆硬度は、4H以上であることが更に好ましい。
【0046】
本発明に係る透明被膜は、塗布液中のアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂成分と、表面処理金属酸化物微粒子成分と、フッ素系樹脂成分と、光重合開始剤と、固形分として残存するレベリング剤等のその他の成分の量が、そのまま被膜中の成分割合となる。
【0047】
透明被膜の膜厚は1~15μmが好ましい。透明被膜が1μmより薄いと、透明被膜の硬度、耐擦傷性が不充分となる場合がある。透明被膜が15μmより厚いと、膜の収縮が大きくなり、カーリングが起こり易く、基材との密着性が不充分となる場合がある。また、収縮が非常に大きい場合には、クラックが発生する場合もある。この透明被膜の膜厚は、4~12μmが更に好ましい。
【0048】
《基材》
基材としては、公知のものを特に制限なく使用することが可能である。例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)等の透明な樹脂基材が好ましい。これらの樹脂基材は、上述の塗布液によって形成される透明被膜との密着性が優れ、硬度、耐擦傷性等に優れた透明被膜付基材を得ることができる。このため、薄い基材に好適に用いることができる。基材の厚みは、20~70μmの範囲にあることが好ましい。
基材の厚みは、30~60μmの範囲にあることが更に好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
《塗布液(1)の調製》
AО変性多官能アクリレート樹脂(第一工業製薬(株)製 ニューフロンティアMF-101)15.96gと、表面処理金属酸化物微粒子としてシリカオルガノゾル(平均粒子径12nm、固形分濃度40.5質量%、分散媒 メチルイソブチルケトン(MIBK) SP値8.4 35.26g、表面処理剤 γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 3.13g)59.26gと、フッ素系樹脂(ダイキン工業(株)製 オプツール DAC-HP)0.19gと、光重合開始剤(BASFジャパン(株)製 イルガキュア184、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)で固形分濃度30質量%に溶解)3.19gと、アクリルシリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製 ディスパロンNSH-8430HF)1.00gと、PGME(SP値10.4)10.40gとアセトン(SP値9.9)10.00gを充分に混合して固形分濃度41.0質量%のハードコート膜形成用塗布液(1)を調製した。この塗布液(1)の組成を表1に示す。なお、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート樹脂の固形分と表面処理金属酸化物微粒子の固形分とフッ素系樹脂の固形分の合計量(特定固形分量)を100質量%として換算し、これらの固形分と光重合開始剤の固形分とレベリング剤の固形分の合計量(全固形分量)を102.5質量%としている。また、有機溶媒は、MIBK、PGME、及びアセトンであり、最も質量割合の多い溶媒(主溶媒)はMIBKである。
【0051】
《透明被膜付基材(1)の調製》
ハードコート膜形成用塗布液(1)を、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フイルム(株)製 FT-PB40UL-M、厚さ 40μm)にバーコーター法(#16)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下、300mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ、透明被膜付基材(1)を形成した。
【0052】
この透明被膜付基材(1)の鉛筆硬度、耐擦傷性、凸状物、フッ素偏析、動摩擦係数について、以下の方法および評価基準で評価を行った。さらに、鉛筆硬度と耐擦傷性の評価について総合評価を行った。その結果を表2に示す。
透明被膜の平均膜厚は8μmであった。
【0053】
<透明被膜の平均膜厚>
透明被膜の平均膜厚は、デジタルゲージ((株)小野測器製ゲージスタンドST-0230とデジタルゲージカウンターDG-5100)により5か所測定した平均値とした。
【0054】
<鉛筆硬度の評価>
JIS-K-5600に準じて鉛筆硬度試験機により測定し、以下の4段階に分類することにより鉛筆硬度を評価した。
評価基準:
4H以上:◎
3H :○
2H :△
H以下 :×
【0055】
<耐擦傷性の評価>
#0000のスチールウールを用い、荷重1kg/cm2において10回、100回、1000回、2000回摺動し、膜の表面を目視観察し、以下の4段階に分類することにより耐擦傷性を評価した。
評価基準:
筋状の傷が認められない :◎
筋状の傷が僅かにある :○
筋状の傷が無数にある :△
面が全体的に削られている:×
【0056】
<凸状物の評価>
原子間力顕微鏡(VECCO(株)製 D3100)を用いて、コンタクトモード、スキャンスピード0.50Hz、スキャンサイズ20μm×20μmの条件でスキャンすることで透明被膜付基材表面の凸状物を評価した。
【0057】
<フッ素の偏析評価>
X線光電子分光装置(VGサイエンティフィック(株)製 ESCALAB220iXL)を用いて、X線源にAlKα線を使用し、透明被膜付基材表面のF1sスペクトルの有無を評価した。
【0058】
<動摩擦係数の評価>
摩擦摩耗試験機(新東科学(株)製 トライボギア表面性測定機TYPE38)を用いて、透明被膜付基材上を#0000のスチールウールで荷重1kg/cm2の条件にて10回摺動し、10回摺動時の動摩擦係数を測定した。
【0059】
<総合評価>
鉛筆硬度と耐擦傷性の評価に対し、以下の様に点数付けを行った。
◎:4点
○:3点
△:2点
×:1点
【0060】
前記点数を用いて、以下の式にて合計点を算出し、4段階に分類することで総合判定を行った。
合計点算出式:
(鉛筆硬度の点数)×((耐擦傷性評価の10回摺動時の点数+同100回摺動時の点数+同1000回摺動時の点数+同2000回摺動時の点数)/4)
【0061】
総合判定は、下記「◎」または「○」を合格とした。
16.0 :◎
10.0以上16.0未満:○
8.0以上10.0未満 :△
8.0未満 :×
【0062】
(実施例2)
《透明被膜形成用の塗布液(2)の調製》
AО変性多官能アクリレート樹脂を新中村化学工業(株)製 NKエステル A-DPH-3Eに変更した以外は実施例1と同様にして塗布液(2)を調製した。得られた塗布液(2)の組成を表1に示す。
《透明被膜付基材(2)の調製》
塗布液(2)を使用した以外は実施例1と同様に透明被膜付基材(2)を製造し、評価した。透明被膜の平均膜厚は8μmであった。
【0063】
(実施例3)
《透明被膜形成用の塗布液(3)の調製》
フッ素系樹脂をDIC(株)製 メガファック RS-90に変更し、0.40g用い、PGMEを10.19g用いた以外は実施例1と同様にして塗布液(3)を調製した。得られた塗布液(3)の組成を表1に示す。
《透明被膜付基材(3)の調製》
塗布液(3)を使用した以外は実施例1と同様に透明被膜付基材(3)を製造し、評価した。透明被膜の平均膜厚は8μmであった。
【0064】
(実施例4)
《透明被膜形成用の塗布液(4)の調製》
フッ素系樹脂を(株)フロロテクノロジー製 FS-7025に変更した以外は実施例1と同様にして塗布液(4)を調製した。得られた塗布液(4)の組成を表1に示す。
《透明被膜付基材(4)の調製》
塗布液(4)を使用した以外は実施例1と同様に透明被膜付基材(4)を製造し、評価した。透明被膜の平均膜厚は8μmであった。
【0065】
(実施例5)
《透明被膜形成用の塗布液(5)の調製》
AО変性多官能アクリレート樹脂を15.98g用い、フッ素系樹脂を0.10g用い、PGMEを10.47g用いた以外は実施例1と同様にして塗布液(5)を調製した。得られた塗布液(5)の組成を表1に示す。
《透明被膜付基材(5)の調製》
塗布液(5)を使用した以外は実施例1と同様に透明被膜付基材(5)を製造し、評価した。透明被膜の平均膜厚は8μmであった。
【0066】
(実施例6)
《透明被膜形成用の塗布液(6)の調製》
AО変性多官能アクリレート樹脂を15.60g用い、フッ素系樹脂を1.94g用い、PGMEを9.01g用いた以外は実施例1と同様にして塗布液(6)を調製した。得られた塗布液(6)の組成を表1に示す。
《透明被膜付基材(6)の調製》
塗布液(6)を使用した以外は実施例1と同様に透明被膜付基材(6)を製造し、評価した。透明被膜の平均膜厚は8μmであった。
【0067】
(実施例7)
《透明被膜形成用の塗布液(7)の調製》
AО変性多官能アクリレート樹脂(第一工業製薬(株)製 ニューフロンティア MF-101)19.96gと、表面処理金属酸化物微粒子としてシリカオルガノゾル(平均粒子径12nm、固形分濃度40.5質量%、分散媒 メチルイソブチルケトン(MIBK) SP値8.4 29.38g、表面処理剤 γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 2.60g)49.38gと、フッ素系樹脂(DIC(株)製 メガファック RS-90)0.40gと、光重合開始剤(BASFジャパン(株)製 イルガキュア184、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)で固形分濃度30%に溶解)3.99gと、アクリルシリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製 ディスパロンNSH-8430HF)1.00gと、MIBK5.50gと、PGME9.77gとアセトン10.00gを充分に混合して固形分濃度41.2質量%のハードコート膜形成用塗布液(7)を調製した。この塗布液(7)の組成を表1に示す。
《透明被膜付基材(7)の調製》
塗布液(7)を使用した以外は実施例1と同様に透明被膜付基材(7)を製造し、評価した。透明被膜の平均膜厚は8μmであった。
【0068】
(実施例8)
《透明被膜形成用の塗布液(8)の調製》
表面処理金属酸化物微粒子としてシリカオルガノゾルを(平均粒子径12nm、固形分濃度40.5質量%、分散媒 プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) SP値10.2 29.38g、表面処理剤 γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 2.60g)に変更した以外は実施例7と同様にして塗布液(8)を調製した。得られた塗布液(8)の組成を表1に示す。なお、本実施例で用いた有機溶媒は、PGME及びアセトンであり、最も質量割合の多い溶媒(主溶媒)はPGMEである。
《透明被膜付基材(8)の調製》
塗布液(8)を使用した以外は実施例1と同様に透明被膜付基材(8)を製造し、評価した。透明被膜の平均膜厚は8μmであった。
【0069】
(比較例1)
《透明被膜形成用の塗布液(R1)の調製》
AО変性多官能アクリレート樹脂を、多官能ウレタンアクリレート樹脂(新中村化学工業(株)製 NKオリゴUA-33H)/2官能アクリレート樹脂(共栄社化学(株)製 ライトアクリレートDCP-A)=9/1(質量比)に変更した以外は実施例1と同様にして塗布液(R1)を調製した。得られた塗布液(R1)の組成を表1に示す。
《透明被膜付基材(R1)の調製》
塗布液(R1)を使用した以外は実施例1と同様に透明被膜付基材(R1)を製造し、評価した。透明被膜の平均膜厚は8μmであった。
【0070】
(比較例2)
《透明被膜形成用の塗布液(R2)の調製》
フッ素系樹脂を用いず、PGMEを10.59g用いた以外は比較例1と同様にして塗布液(R2)を調製した。得られた塗布液(R2)の組成を表1に示す。
《透明被膜付基材(R2)の調製》
塗布液(R2)を使用した以外は実施例1と同様に透明被膜付基材(R2)を製造し、評価した。透明被膜の平均膜厚は8μmであった。
【0071】
(比較例3)
《透明被膜形成用の塗布液(R3)の調製》
表面処理金属酸化物微粒子としてのシリカオルガノゾル及びフッ素系樹脂を用いず、AО変性多官能アクリレート樹脂(第一工業製薬(株)製 ニューフロンティアMF-101)40.00gと、光重合開始剤(BASFジャパン(株)製 イルガキュア184、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)で固形分濃度30質量%に溶解)8.00gと、MIBK34.30gと、PGME6.70gを用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度42.4質量%の塗布液(R3)を調製した。得られた塗布液(R3)の組成を表1に示す。
《透明被膜付基材(R3)の調製》
塗布液(R3)を使用した以外は実施例1と同様に透明被膜付基材(R3)を製造し、評価した。透明被膜の平均膜厚は8μmであった。
【0072】
(比較例4)
《透明被膜形成用の塗布液(R4)の調製》
表面処理金属酸化物微粒子としてのシリカオルガノゾルを、表面未処理金属酸化物微粒子であるシリカゾル(平均粒子径12nm、SiO2濃度40.5質量%、分散媒 プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME))に変更した以外は実施例7と同様にして塗布液(R4)を調製した。得られた塗布液(R4)の組成を表1に示す。
《透明被膜付基材(R4)の調製》
塗布液(R4)を使用した以外は実施例1と同様に透明被膜付基材(R4)を製造し、評価した。透明被膜の平均膜厚は8μmであった。
【0073】
(比較例5)
《透明被膜形成用の塗布液(R5)の調製》
フッ素系樹脂を用いず、AО変性多官能アクリレート樹脂(第一工業製薬(株)製 ニューフロンティア MF-101)16.00gと、PGME10.55gを用いた以外は実施例1と同様にして塗布液(R5)を調製した。得られた塗布液(R5)の組成を表1に示す。
《透明被膜付基材(R5)の調製》
塗布液(R5)を使用した以外は実施例1と同様に透明被膜付基材(R5)を製造し、評価した。透明被膜の平均膜厚は8μmであった。
【0074】
(比較例6)
《透明被膜形成用の塗布液(R6)の調製》
AО変性多官能アクリレート樹脂を16.00g用い、フッ素系樹脂を0.02g用い、PGMEを10.53g用いた以外は実施例1と同様にして塗布液(R6)を調製した。得られた塗布液(R6)の組成を表1に示す。
《透明被膜付基材(R6)の調製》
塗布液(R6)を使用した以外は実施例1と同様に透明被膜付基材(R6)を製造し、評価した。透明被膜の平均膜厚は8μmであった。
【0075】
(比較例7)
《透明被膜形成用の塗布液(R7)の調製》
AО変性多官能アクリレート樹脂を14.00g用い、フッ素系樹脂を9.71g用い、PGMEを2.84g用いた以外は実施例1と同様にして塗布液(R7)を調製した。得られた塗布液(R7)の組成を表1に示す。
《透明被膜付基材(R7)の調製》
塗布液(R7)を使用した以外は実施例1と同様に透明被膜付基材(R7)を製造し、評価した。透明被膜の平均膜厚は8μmであった。
【0076】
【0077】