(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】アルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法、及び、熱交換器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 35/22 20060101AFI20220104BHJP
B23K 35/28 20060101ALI20220104BHJP
C22C 21/00 20060101ALI20220104BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20220104BHJP
B23K 1/19 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B23K35/22 310E
B23K35/28 310B
C22C21/00 D
C22C21/00 E
C22C21/00 J
B23K1/00 S
B23K1/00 330L
B23K1/19 F
(21)【出願番号】P 2017103073
(22)【出願日】2017-05-24
【審査請求日】2019-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉 孝裕
(72)【発明者】
【氏名】鶴野 招弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 申平
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 雄二
(72)【発明者】
【氏名】篠田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 詔悟
(72)【発明者】
【氏名】大野 慎吾
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-050861(JP,A)
【文献】特開2014-155955(JP,A)
【文献】特開2016-165744(JP,A)
【文献】特開2014-177708(JP,A)
【文献】特開2018-099726(JP,A)
【文献】特許第5619538(JP,B2)
【文献】特開2010-247209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/22
B23K 35/28
C22C 21/00
B23K 1/00
B23K 1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心材と、前記心材の一方の面に設けられるろう材と、を備えるアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法であって、
前記心材は、Mg:2.0質量%以下(0質量%を含む)であり、残部がAl及び不可避的不純物からなり、
前記ろう材は、Si、Bi、Mgを含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、
前記ろう材のSiの含有量をC
Si質量%とし、前記ろう材のBiの含有量をC
Bi質量%とし、前記ろう材のMgの含有量をC
Mg-b質量%とし、前記心材のMgの含有量をC
Mg-c質量%とし、C
Mg=C
Mg-b+C
Mg-c/2とした場合に、
3≦C
Si≦13、
0.13C
Mg
-0.3≦C
Bi≦0.58C
Mg
0.45、
C
Mg-b≧0.1、
0.2≦C
Mg≦0.9、を満たし、
前記アルミニウム合金ブレージングシートを不活性ガス雰囲気においてフラックスを用いずに、350~560℃までの昇温速度を1~500℃/minとし、560~620℃の加熱温度(前記加熱温度の温度域における保持時間が10秒以上)によってろう付することを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法。
【請求項2】
前記ろう材は、Mn:2.0質量%以下、Ti:0.3質量%以下、Cr:0.3質量%以下、Zr:0.3質量%以下のうちの1種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法。
【請求項3】
前記ろう材は、Zn:5.0質量%以下をさらに含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法。
【請求項4】
前記ろう材は、Sr:0.10質量%以下、Na:0.050質量%以下、Sb:0.5質量%以下、のうちの1種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法。
【請求項5】
前記ろう材は、希土類元素:1.0質量%以下をさらに含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法。
【請求項6】
前記ろう材は、Li:0.3質量%以下をさらに含有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法。
【請求項7】
前記心材は、Mn:2.5質量%以下をさらに含有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法。
【請求項8】
前記心材は、Si:1.2質量%以下をさらに含有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法。
【請求項9】
前記心材は、Cu:3.0質量%以下をさらに含有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法。
【請求項10】
前記心材は、Ti:0.5質量%以下、Cr:0.5質量%以下、Zr:0.5質量%以下のうちの1種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1から請求項
9のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法。
【請求項11】
前記心材は、Li:0.3質量%以下をさらに含有することを特徴とする請求項1から請求項
10のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法。
【請求項12】
前記ろう材は、厚さが50μm以上であることを特徴とする請求項1から請求項
11のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法。
【請求項13】
請求項1から請求項
12のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法を実施するろう付工程を含むことを特徴とする熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法、及び、熱交換器の製造方法に関し、特に、フラックスを使用しないろう付方法、いわゆるフラックスレスろう付方法、及び、フラックスレスろう付方法を用いた熱交換器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金製の熱交換器等の部材をろう付するにあたり、真空中において、フラックスを使用せずにろう付を行う真空ろう付という方法が存在する。
この真空ろう付は、フラックスを使用するフラックスろう付と比較すると、フラックスを塗布する処理が不要、フラックスの塗布量が適切でないことに伴った問題発生の回避等、様々なメリットがある。
【0003】
しかしながら、真空ろう付は、ろう付時の炉内を真空にした状態で加熱を施す高価な真空炉が必要となるため、作業コストが高くなってしまうとともに、真空にした炉内の制御が難しいことから、作業の困難性も高まってしまう。
【0004】
このような問題を解決するため、真空中ではない雰囲気下において、フラックスを使用しないフラックスレスろう付に関して研究が進められ、以下のような技術が提案されている。
【0005】
具体的には、特許文献1において、質量%で、Mgを0.1~5.0%、Siを3~13%含有するAl-Si系ろう材が最表面に位置するアルミニウムクラッド材を用いる細流路インナーフィンを有する熱交換器のろう付け方法であって、前記Al-Si系ろう材に含まれるSi粒子は、円相当径で0.8μm以上の径をもつものの数の内、1.75μm以上の径のものの数が25%以上であり、減圧を伴わない非酸化性雰囲気で、前記Al-Si系ろう材とろう付け対象部材とを接触密着させ、加熱温度559~620℃において、前記アルミニウムクラッド材と前記ろう付け対象部材とを接合することを特徴とする細流路インナーフィンを有する熱交換器のフラックスレスろう付け方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に係る技術は、真空ではない不活性ガス雰囲気におけるフラックスレスろう付に関する技術であり、所定の効果について検討している。
しかしながら、特許文献1に係る技術では、十分なろう付性を発揮できない。詳細には、特許文献1の実施例1~23、29~58によると、ろう材に0.1~3質量%のMgを含有させており、このMgがろう付加熱時の昇温過程において、ろう材表面でのMgOの生成を促進させてしまう。その結果、特許文献1の実施例1~23、29~58によると、ろう材表面のMgOがろう溶融時に障害となって、ろう付性を低下させてしまうおそれがある。
なお、特許文献1の実施例24~28ではろう材にBiを含有させているが、実施例24~26はろう材のBiの含有量が少なく、実施例27、28はBiの含有量が多いため、いずれの場合もろう付性を十分には発揮できない。
【0008】
そこで、本発明は、優れたろう付性を発揮することができるアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法、及び、熱交換器の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、心材と、前記心材の一方の面に設けられるろう材と、を備えるアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法であって、前記心材は、Mg:2.0質量%以下(0質量%を含む)であり、残部がAl及び不可避的不純物からなり、前記ろう材は、Si、Bi、Mgを含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、前記ろう材のSiの含有量をCSi質量%とし、前記ろう材のBiの含有量をCBi質量%とし、前記ろう材のMgの含有量をCMg-b質量%とし、前記心材のMgの含有量をCMg-c質量%とし、CMg=CMg-b+CMg-c/2とした場合に、3≦CSi≦13、0.13CMg
-0.3≦CBi≦0.58CMg
0.45、CMg-b≧0.1、0.2≦CMg≦0.9、を満たし、前記アルミニウム合金ブレージングシートを不活性ガス雰囲気においてフラックスを用いずに、350~560℃までの昇温速度を1~500℃/minとし、560~620℃の加熱温度(前記加熱温度の温度域における保持時間が10秒以上)によってろう付する。
【0010】
このように、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、使用するアルミニウム合金ブレージングシートの心材及びろう材の成分の含有量、例えば、心材及びろう材のMgの含有量とろう材のBiの含有量との関係等が特定されていることから、心材及びろう材のMgがろう材のBiと反応する(トラップされる)ことで、ろう材表面でのMgOの生成が抑制される。さらに、ろう付加熱時のろう溶融時において、Biと反応したMgは母相(ろう材)に溶解するため、Mgの蒸発が促進され、ろう材表面に形成された酸化膜がMgの蒸発時に好適に破壊されるとともに、このMgが雰囲気中の酸素と反応することで雰囲気の酸素濃度が低下し溶融ろうの再酸化が抑制される。また、母相に溶解したBiがろうの流動性を高める。その結果、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、優れたろう付性を発揮する。
【0011】
また、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、前記ろう材が、Mn:2.0質量%以下、Ti:0.3質量%以下、Cr:0.3質量%以下、Zr:0.3質量%以下のうちの1種以上をさらに含有していてもよい。また、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、前記ろう材が、Zn:5.0質量%以下をさらに含有していてもよい。また、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、前記ろう材が、Sr:0.10質量%以下、Na:0.050質量%以下、Sb:0.5質量%以下、のうちの1種以上をさらに含有していてもよい。また、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、前記ろう材が、希土類元素:1.0質量%以下をさらに含有していてもよい。
【0012】
このように、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、ろう材がMn、Ti、Cr、Zr、Zn、Sr、Na、Sb、希土類元素を含有していても、優れたろう付性を発揮することができる。
【0013】
また、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、前記ろう材が、Li:0.3質量%以下をさらに含有していてもよい。
【0014】
このように、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、前記ろう材がLiを含有することにより、ろう付性をさらに向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、前記心材が、Mn:2.5質量%以下をさらに含有していてもよい。また、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、前記心材が、Si:1.2質量%以下をさらに含有していてもよい。また、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、前記心材が、Cu:3.0質量%以下をさらに含有していてもよい。また、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、前記心材が、Ti:0.5質量%以下、Cr:0.5質量%以下、Zr:0.5質量%以下の1種以上をさらに含有していてもよい。
【0016】
このように、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、心材がMn、Si、Cu、Ti、Cr、Zrを含有していても、優れたろう付性を発揮することができる。
【0017】
また、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、前記心材が、Li:0.3質量%以下をさらに含有していてもよい。
【0018】
このように、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、前記心材がLiを含有することにより、ろう付性をさらに向上させることができる。
【0019】
また、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、前記ろう材の厚さが50μm以上であってもよい。
このように、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、ろう材の厚さが所定値以上であることにより、優れたろう付性をより確実に発揮することができる。
【0020】
本発明に係る熱交換器の製造方法は、前記したろう付方法を実施するろう付工程を含む。
このように、本発明に係る熱交換器の製造方法は、所定のろう付方法を実施するろう付工程を含むことにより、優れたろう付性を発揮させつつ熱交換器を製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、使用するアルミニウム合金ブレージングシートの心材及びろう材の各成分の含有量が特定されていることによって、優れたろう付性を発揮することができる。
本発明に係る熱交換器の製造方法は、使用するアルミニウム合金ブレージングシートの心材及びろう材の各成分の含有量が特定されていることによって、優れたろう付性を発揮させつつ熱交換器を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係るアルミニウム合金ブレージングシートの断面図である。
【
図2A】ろう付性評価の試験方法を説明するための図であり、下材と上材とを組み合わせた状態の斜視図である。
【
図2B】ろう付性評価の試験方法を説明するための図であり、下材と上材とを組み合わせた状態の側面図である。
【
図3】一部の実施例について、ろう材のBiの含有量とろう材及び心材のMgの含有量との関係を示すグラフである。
【
図4】一部の実施例について、ろう材のMgの含有量と心材のMgの含有量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面を参照して、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法、及び、熱交換器の製造方法を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0024】
まずは、本実施形態に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法(以下、適宜「ろう付方法」という)に使用するアルミニウム合金ブレージングシート(以下、適宜「ブレージングシート」という)について説明する。
【0025】
[アルミニウム合金ブレージングシート]
本実施形態に係るブレージングシートの構成は、例えば、
図1に示すように、心材2と、心材2の一方の面に設けられるろう材3と、を備える。
そして、本実施形態に係るブレージングシート1は、心材2、ろう材3の各成分の含有量が適宜特定されている。
以下、本実施形態に係るブレージングシートの心材及びろう材の各成分について数値限定した理由を詳細に説明する。
【0026】
[心材]
本実施形態に係るブレージングシートの心材は、アルミニウム合金(純アルミニウムも含む)からなり、詳細には、Mg:2.0質量%以下(0質量%を含む)であるアルミニウム合金からなる。このようなアルミニウム合金としては、JIS 2000系のAl-Cu系合金、JIS 3000系のAl-Mn系合金、JIS 5000系のAl-Mg系合金、JIS 6000系のAl-Mg-Si系合金等を用いることができる。
また、本実施形態に係るブレージングシートの心材は、Mn、Si、Cu、Fe、Ti、Cr、Zr、Liをさらに適宜含有していてもよい。
【0027】
(心材のMg:2.0質量%以下)
心材のMgは、強度を向上させる。また、心材のMgは、ろう付加熱時の昇温過程にろう材へ拡散し、ろう溶融温度で雰囲気中に蒸発し、雰囲気中の酸素と反応する。その結果、ろう材表面に形成された酸化膜がMgの蒸発時に好適に破壊されるとともに、雰囲気中の酸素濃度が低下し溶融ろうの再酸化が抑制される(ゲッター作用)ことによって、ろう付性を向上させる。なお、ろう材のMgもゲッター作用を奏することから、ろう材のMgの含有量が多い場合は、心材のMgの含有量は少なくてもよく、0質量%であってもよい。
一方、Mgの含有量が2.0質量%を超えると、ろう材のBiによってMgをトラップしきれず、ろう材表面でのMgOの生成が促進されてしまい、ろう付性が低下する。
したがって、心材のMgの含有量は、2.0質量%以下(0質量%を含む)である。
【0028】
(心材のMn:2.5質量%以下)
心材のMnは、強度を向上させる。ただし、Mnの含有量が2.5質量%を超えると、Al-Mn系化合物が多くなり、材料製造工程中に割れが生じるおそれがある。
したがって、心材にMnを含有させる場合、Mnの含有量は、2.5質量%以下である。
【0029】
なお、Mnを含有させることによって得られる強度の向上という効果をより確実なものとするため、心材のMnの含有量は、0.5質量%以上が好ましい。
【0030】
(心材のSi:1.2質量%以下)
心材のSiは、強度を向上させる。ただし、Siの含有量が1.2質量%を超えると、心材の固相線温度が低下するため、耐エロージョン性が低下するとともに、ろう流動性が低下するため、ろう付性が低下する。
したがって、心材にSiを含有させる場合、Siの含有量は1.2質量%以下である。
【0031】
なお、Siを含有させることによって得られる強度の向上という効果をより確実なものとするため、心材のSiの含有量は、0.05質量%以上が好ましい。
【0032】
(心材のCu:3.0質量%以下)
心材のCuは、心材の電位を貴化させ耐食性を向上させる。ただし、Cuの含有量が3.0質量%を超えると、心材の固相線温度が低下するため、耐エロージョン性が低下するとともに、ろう流動性が低下するため、ろう付性が低下する。
したがって、心材にCuを含有させる場合、Cuの含有量は3.0質量%以下である。
【0033】
なお、Cuを含有させることによって得られる耐食性の向上という効果をより確実なものとするため、心材のCuの含有量は、0.05質量%以上が好ましい。
【0034】
(心材のFe:1.5質量%以下)
心材のFeは、固溶強化作用により強度を向上させる。ただし、Feの含有量が1.5質量%を超えると、粗大な金属間化合物が形成されることによって、成形性を低下させるおそれがある。
したがって、心材にFeを含有させる場合、Feの含有量は、1.5質量%以下である。
【0035】
なお、Feを含有させることによって得られる強度の向上という効果をより確実なものとするため、心材のFeの含有量は、0.05質量%以上が好ましい。
【0036】
(心材のTi:0.5質量%以下)
心材のTiは、心材の電位を貴化させ耐食性を向上させる。ただし、Tiの含有量が0.5質量%を超えると、粗大な金属間化合物が形成されることによって、成形性を低下させるおそれがある。
したがって、心材にTiを含有させる場合、Tiの含有量は、0.5質量%以下である。
【0037】
なお、Tiを含有させることによって得られる耐食性の向上という効果をより確実なものとするため、心材のTiの含有量は、0.01質量%以上が好ましい。
【0038】
(心材のCr:0.5質量%以下)
心材のCrは、Al-Cr系の分散粒子を形成し、心材の強度を向上させる。ただし、Crの含有量が0.5質量%を超えると、粗大な金属間化合物が形成されることによって、成形性を低下させるおそれがある。
したがって、心材にCrを含有させる場合、Crの含有量は、0.5質量%以下である。
【0039】
なお、Crを含有させることによって得られる強度の向上という効果をより確実なものとするため、心材のCrの含有量は、0.01質量%以上が好ましい。
【0040】
(心材のZr:0.5質量%以下)
心材のZrは、Al-Zr系の分散粒子を形成し、心材の強度を向上させる。ただし、Zrの含有量が0.5質量%を超えると、粗大な金属間化合物が形成されることによって、成形性を低下させるおそれがある。
したがって、心材にZrを含有させる場合、Zrの含有量は、0.5質量%以下である。
【0041】
なお、Zrを含有させることによって得られる強度の向上という効果をより確実なものとするため、心材のZrの含有量は、0.01質量%以上が好ましい。
【0042】
前記した心材のTi、Cr、Zrは、前記した上限値を超えなければ、心材に1種以上、つまり1種が含まれる場合だけでなく、2種以上が含まれていても、本発明の効果を妨げない。
【0043】
(心材のLi:0.3質量%以下)
心材のLiは、ろう付性をさらに向上させる。Liがろう付性を向上させる詳細なメカニズムは解明できていないものの、ろう付加熱時のろう溶融時において、Liがろう材表面に形成された酸化膜を破壊することにより、Mgのゲッター作用をさらに好適に発揮させるのではないかと推測する。ただし、Liの含有量が0.3質量%を超えると、ろう付け加熱時の昇温過程において、ろう材表層部へLiが拡散し酸化膜の成長を促進するためろう付性が低下する。
したがって、心材にLiを含有させる場合、Liの含有量は、0.3質量%以下である。
【0044】
(心材の残部:Al及び不可避的不純物)
心材の残部はAl及び不可避的不純物であるのが好ましい。そして、心材の不可避的不純物としては、V、Ni、Ca、Na、Sr等が挙げられ、これらの元素は本発明の効果を妨げない範囲で含有されていてもよい。詳細には、V:0.05質量%以下、Ni:0.05質量%以下、Ca:0.05質量%以下、Na:0.05質量%以下、Sr:0.05質量%以下、その他の元素:0.01質量%未満の範囲で含有されていてもよい。
そして、これらについては、前記した所定の含有量を超えなければ、不可避的不純物として含有される場合だけではなく、積極的に添加される場合であっても、本発明の効果を妨げず許容される。
また、前記したMg、Mn、Si、Cu、Fe、Ti、Cr、Zr、Liについては、積極的に添加してもよいが、不可避的不純物として含まれていてもよい。
【0045】
[ろう材]
本実施形態に係るブレージングシートのろう材は、アルミニウム合金からなり、詳細には、Si、Bi、Mgを含有するアルミニウム合金からなる。このようなアルミニウム合金としては、JIS 4000系のAl-Si系合金(Al-Si-Mg-Bi系合金)やAl-Si-Zn系合金(Al-Si-Zn-Mg-Bi系合金)等を用いることができる。
また、本実施形態に係るブレージングシートのろう材は、Mn、Ti、Cr、Zr、Zn、Sr、Na、Sb、希土類元素、Liをさらに適宜含有してもよい。
【0046】
(ろう材のSi:3質量%以上13質量%以下、3≦CSi≦13)
ろう材のSiは、ろう材の固相線温度を低下させることによって、ろう付加熱温度での液相率を向上させてろうの流動性を高める。Siの含有量が3質量%以上であれば、ろうの流動性が高まり、ろう付性の向上という効果が得られる。一方、Siの含有量が13質量%を超えると、粗大Si粒が形成するとともに、流動ろうが過剰に生成することにより、心材の溶融などのろう付不良が発生するおそれがある。
したがって、ろう材のSiの含有量は、3質量%以上13質量%以下である。そして、ろう材のSiの含有量をCSi質量%とした場合、3≦CSi≦13である。
【0047】
(ろう材のBi:0.13CMg
-0.3≦CBi≦0.58CMg
0.45)
ろう材のBiは、心材及びろう材のMgと反応し、ろう溶融温度以下ではほとんど溶解しないMg-Bi系化合物(例えば、Bi2Mg3)を生成する。その結果、材料製造工程、及び、ろう付加熱時のろう溶融開始温度までの昇温過程において、Mgのろう材表層部への拡散を抑え、ろう材表面におけるMgOの生成・成長を抑制し(Mgのトラップ作用)、ろう付性を向上させる。また、ろう付加熱時のろう溶融温度では、Mg-Bi系化合物は母相(ろう材)に溶解するため、Mgの蒸発が促進される。そして、ろう材表面に形成された酸化膜がMgの蒸発時に好適に破壊されるとともに、このMgが雰囲気中の酸素と反応することで雰囲気の酸素濃度が低下し溶融ろうの再酸化を抑制する作用(ゲッター作用)が向上し、その結果、ろう付性を向上させる。さらに、Biは、ろうの流動性を高め、ろう付性を向上させる。
【0048】
前記した効果を適切に発揮させるためには、ろう材のBiの含有量は、心材及びろう材のMgの含有量と関係において、非常に精緻に特定する必要がある。
詳細には、ろう材のMgの含有量をCMg-b質量%、心材のMgの含有量をCMg-c質量%、CMg=CMg-b+CMg-c/2とした場合、ろう材のBiの含有量が、0.13CMg
-0.3未満であると、Mgを十分にトラップできないとともに、ろう材中にフリーなMgが多くなる結果、ろう材表面でMgOが生成されてしまう。加えて、ろう材のBiの含有量が、0.13CMg
-0.3未満であると、ろう流動性が低下し、ろう付性が低下する。
一方、ろう材のBiの含有量が、0.58CMg
0.45を超えても、ろう付性が低下する。この点について、詳細なメカニズムは解明できていないものの、Mgの含有量に対してBiの含有量が多くなると、低融点のBi単体化合物が増え、この化合物がろう付加熱時の低温域から溶融し始め濡れ拡がることで、酸化膜を形成・成長させ、この酸化膜がゲッター作用を抑制してしまうのではないかと推測する。
したがって、ろう材のBiの含有量は、0.13CMg
-0.3以上、0.58CMg
0.45以下である。そして、ろう材のBiの含有量をCBi質量%とした場合、0.13CMg
-0.3≦CBi≦0.58CMg
0.45である。
【0049】
「0.13CMg
-0.3≦CBi≦0.58CMg
0.45」の係数については、前記のとおり、効果を奏する範囲を特定するためのものであり、多くの実験の結果から導いたものである。
【0050】
(ろう材のMg:0.1質量%以上、CMg-b≧0.1)
ろう材のMgは、心材のMgと同様、ろう付加熱時のろう溶融温度で雰囲気中に蒸発し、雰囲気中の酸素と反応する。その結果、ろう材表面に形成された酸化膜がMgの蒸発時に好適に破壊されるとともに、雰囲気中の酸素濃度が低下し溶融ろうの再酸化が抑制される(ゲッター作用)ことによって、ろう付性を向上させる。なお、心材のMgもゲッター作用を奏することから、心材のMgの含有量が多い場合は、ろう材のMgの含有量は少なくてもよい。
しかしながら、Mgの含有量が0.1質量%未満であると、熱間圧延時に耳割れが生じやすくなり、ブレージングシートの歩留まりが悪くなってしまう。この点について、詳細なメカニズムは解明できていないものの、ろう材のMgの含有量が少ないと、低融点のBi単体化合物が増え、この化合物が熱間圧延時に溶融することで、熱間圧延割れを誘発させるのではないかと推測する。なお、Mgの含有量が0.1質量%以上であると、MgがBiと反応し、熱間圧延時にも溶融し難い高融点のBi2Mg3が生成されることにより、熱間圧延割れの発生を回避することができる。
したがって、ろう材のMgの含有量は、0.1質量%以上である。そして、ろう材のMgの含有量をCMg-b質量%とした場合、CMg-b≧0.1である。
【0051】
(ろう材のMgと心材のMg:0.2≦CMg≦1.1)
ろう材のMgと心材のMgは、前記したとおり、いずれもゲッター作用を発揮することによって、ろう付性を向上させる。
ただ、ろう材のMgと心材のMgとでは、ゲッター作用への寄与度等が異なるため、ゲッター作用に基づくろう付性の向上という効果を適切に発揮させるためには、ろう材のMgと心材のMgとの含有量を精緻に特定する必要がある。
ろう材のMgの含有量をCMg-b質量%、心材のMgの含有量をCMg-c質量%、CMg=CMg-b+CMg-c/2とした場合、CMgが0.2未満であると、Mgによるゲッター作用が不十分となり、ろう付性が低下するおそれがある。一方、CMgが1.1を超えると、ろう材のBiによってMgをトラップしきれず、ろう材表面でのMgOの生成が促進されてしまい、ろう付性が低下するおそれがある。
したがって、0.2≦CMg≦1.1である。
【0052】
なお、Mgを含有させることによって得られるゲッター作用をより確実なものとするため、CMgは、0.3以上が好ましい。また、ろう付性の低下を抑制する観点から、CMgは、0.9以下が好ましい。
【0053】
「CMg=CMg-b+CMg-c/2」の係数については、ろう材のMgと心材のMgとのゲッター作用への寄与度等を考慮したものであるとともに、前記のとおり、効果を奏する範囲を特定するためのものであり、多くの実験の結果から導いたものである。
【0054】
(ろう材のMn:2.0質量%以下)
ろう材のMnは、耐食性を向上させる。Mnが耐食性を向上させる詳細なメカニズムは解明できていないものの、Al-Mn-Si系化合物が生成され、化合物周囲のMn、Si欠乏層が電位の卑な部分となり、優先的に腐食が進行するため、腐食が分散され、耐食性が向上すると推測する。ただし、Mnの含有量が2.0質量%を超えると、Al-Mn-Si系化合物の生成にSiが費やされるため、Si濃度が低下し、ろう付性が低下する。
したがって、ろう材にMnを含有させる場合、ろう材のMnの含有量は、2.0質量%以下である。
【0055】
なお、Mnを含有させることによって得られる耐食性の向上という効果をより確実なものとするため、ろう材のMnの含有量は、0.05質量%以上が好ましい。また、Si濃度の低下に伴うろう付性の低下を抑制するという観点から、ろう材のMnの含有量は、1.2質量%以下が好ましい。
【0056】
(ろう材のTi:0.3質量%以下)
ろう材のTiは、耐食性を向上させる。Tiが耐食性を向上させる詳細なメカニズムは解明できていないものの、Al-Ti系化合物が生成され、化合物周囲のTi欠乏層が電位の卑な部分となり、優先的に腐食が進行するため、腐食が分散され、耐食性が向上すると推測する。ただし、Tiの含有量が0.3質量%を超えると、溶解、鋳造時に粗大な化合物が生成され、材料製造時に割れが生じやすくなり、製造が困難となる。
したがって、ろう材にTiを含有させる場合、ろう材のTiの含有量は、0.3質量%以下である。
【0057】
なお、Tiを含有させることによって得られる耐食性の向上という効果をより確実なものとするため、ろう材のTiの含有量は、0.05質量%以上が好ましい。また、材料製造時の割れの発生を抑制するという観点から、ろう材のTiの含有量は、0.2質量%以下が好ましい。
【0058】
(ろう材のCr:0.3質量%以下)
ろう材のCrは、耐食性を向上させる。Crが耐食性を向上させる詳細なメカニズムは解明できていないものの、Al-Cr系やAl-Cr-Si系化合物が生成され、化合物周囲のCr、Si欠乏層が電位の卑な部分となり、優先的に腐食が進行するため、腐食が分散され、耐食性が向上すると推測する。ただし、Crの含有量が0.3質量%を超えると、溶解、鋳造時に粗大な化合物が生成され、材料製造時に割れが生じやすくなり、製造が困難となる。
したがって、ろう材にCrを含有させる場合、ろう材のCrの含有量は、0.3質量%以下である。
【0059】
なお、Crを含有させることによって得られる耐食性の向上という効果をより確実なものとするため、ろう材のCrの含有量は、0.05質量%以上が好ましい。また、材料製造時の割れの発生を抑制するという観点から、ろう材のCrの含有量は、0.2質量%以下が好ましい。
【0060】
(ろう材のZr:0.3質量%以下)
ろう材のZrは、耐食性を向上させる。Zrが耐食性を向上させる詳細なメカニズムは解明できていないものの、Al-Zr系化合物が生成され、化合物周囲のZr欠乏層が電位の卑な部分となり、優先的に腐食が進行するため、腐食が分散され、耐食性が向上すると推測する。ただし、Zrの含有量が0.3質量%を超えると、溶解、鋳造時に粗大な化合物が生成され、材料製造時に割れが生じやすくなり、製造が困難となる。
したがって、ろう材にZrを含有させる場合、ろう材のZrの含有量は、0.3質量%以下である。
【0061】
なお、Zrを含有させることによって得られる耐食性の向上という効果をより確実なものとするため、ろう材のZrの含有量は、0.05質量%以上が好ましい。また、材料製造時の割れの発生を抑制するという観点から、ろう材のZrの含有量は、0.2質量%以下が好ましい。
【0062】
前記したろう材のMn、Ti、Cr、Zrは、前記した上限値を超えなければ、ろう材に1種以上、つまり1種が含まれる場合だけでなく、2種以上が含まれていても、本発明の効果を妨げない。
【0063】
(ろう材のZn:5.0質量%以下)
ろう材のZnは、ろう材の電位を卑にすることができ、心材との電位差を形成することで犠牲防食効果により耐食性を向上させる。ただし、Znの含有量が5.0質量%を超えると、フィレットの早期腐食を引き起こすおそれがある。
したがって、ろう材にZnを含有させる場合、ろう材のZnの含有量は、5.0質量%以下である。
【0064】
なお、Znを含有させることによって得られる耐食性の向上という効果をより確実なものとするために、ろう材のZnの含有量は、0.1質量%以上が好ましい。また、フィレットの早期腐食の発生を抑制するという観点から、ろう材のZnの含有量は、4.0質量%以下が好ましい。
【0065】
(ろう材のSr:0.10質量%以下)
ろう材のSrは、共晶Siを微細化させることにより、ろう付加熱時における心材の溶融の原因となる粗大なSi粒の晶出を抑制する。ただし、Srの含有量が0.10質量%を超えると、ろうの流動性が低下し、ろう付加熱時にフィレットの形成が不十分となるおそれがある。
したがって、ろう材にSrを含有させる場合、Srの含有量は、0.10質量%以下である。
【0066】
なお、Srを含有させることによって得られる共晶Siの微細化という効果をより確実なものとするため、ろう材のSrの含有量は、0.001質量%以上が好ましい。
【0067】
(ろう材のNa:0.050質量%以下)
ろう材のNaは、共晶Siを微細化させることにより、ろう付加熱時における心材の溶融の原因となる粗大なSi粒の晶出を抑制する。ただし、Naの含有量が0.050質量%を超えると、ろうの流動性が低下し、ろう付加熱時にフィレットの形成が不十分となるおそれがある。
したがって、ろう材にNaを含有させる場合、Naの含有量は、0.050質量%以下である。
【0068】
なお、Naを含有させることによって得られる共晶Siの微細化という効果をより確実なものとするため、ろう材のNaの含有量は、0.0001質量%以上が好ましい。
【0069】
(ろう材のSb:0.5質量%以下)
ろう材のSbは、共晶Siを微細化させることにより、ろう付加熱時における心材の溶融の原因となる粗大なSi粒の晶出を抑制する。ただし、Sbの含有量が0.5質量%を超えると、ろうの流動性が低下し、ろう付加熱時にフィレットの形成が不十分となるおそれがある。
したがって、ろう材にSbを含有させる場合、Sbの含有量は、0.5質量%以下である。
【0070】
なお、Sbを含有させることによって得られる共晶Siの微細化という効果をより確実なものとするため、ろう材のSbの含有量は、0.001質量%以上が好ましい。
【0071】
前記したろう材のSr、Na、Sbは、前記した上限値を超えなければ、ろう材に1種以上、つまり1種が含まれる場合だけでなく、2種以上が含まれていても、本発明の効果を妨げない。
【0072】
(ろう材の希土類元素:1.0質量%以下)
希土類元素とは、周期表3族のうちScとYにランタノイド(15元素)を加えた17元素の総称であり、例えば、Sc、Y、La、Ce、Nd、Dyなどが挙げられる。そして、ろう材に希土類元素を含有させる場合、1種が含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。なお、ろう材への希土類元素の含有方法は、特に限定されないものの、例えば、Al-希土類系の中間合金の添加、あるいはミッシュメタルの添加によって2種類以上の希土類元素を同時に含有させることができる。
【0073】
ろう材の希土類元素は、ろう付加熱時に、ろう材の表面酸化膜(Al2O3)と希土類元素あるいは希土類元素を含む酸化物が反応し、ろう材の表面酸化膜の体積収縮を生じさせて酸化膜を破壊するため、ろう付性を向上させる。ただし、希土類元素の含有量(2種以上が含まれる場合は総量)が1.0質量%を超えると、希土類元素を含む酸化膜が過剰に生成され、酸化膜破壊の効果が低減するため、ろう付性が低下する。
したがって、ろう材に希土類元素を含有させる場合、ろう材の希土類元素の含有量は、1.0質量%以下である。
【0074】
なお、希土類元素を含有させることによって得られる酸化膜破壊という効果をより確実なものとするため、ろう材の希土類元素の含有量は、0.001質量%以上が好ましい。
【0075】
(ろう材のLi:0.3質量%以下)
ろう材のLiは、心材のLiと同様、ろう付性をさらに向上させる。Liがろう付性を向上させる詳細なメカニズムは解明できていないものの、ろう付加熱時のろう溶融時において、Liがろう材表面に形成された酸化膜を破壊することにより、Mgのゲッター作用をさらに好適に発揮させるのではないかと推測する。ただし、Liの含有量が0.3質量%を超えると、Liが酸化膜の成長を促進させてしまうためろう付性が低下する。
したがって、ろう材にLiを含有させる場合、Liの含有量は、0.3質量%以下である。
【0076】
なお、酸化膜の成長を抑制するという観点から、ろう材のLiの含有量は0.05質量%以下が好ましい。
【0077】
(ろう材の残部:Al及び不可避的不純物)
ろう材の残部はAl及び不可避的不純物であるのが好ましい。そして、ろう材の不可避的不純物としては、Fe、Ca、Be等が本発明の効果を妨げない範囲で含有されていてもよい。詳細には、Fe:0.35質量%以下、Ca:0.05質量%以下、Be:0.01質量%以下、その他の元素:0.01質量%未満の範囲で含有されていてもよい。
そして、これらについては、前記した所定の含有量を超えなければ、不可避的不純物として含有される場合だけではなく、積極的に添加される場合であっても、本発明の効果を妨げず許容される。
また、前記したMn、Ti、Cr、Zr、Zn、Sr、Na、Sb、希土類元素、Liについては、積極的に添加してもよいが、不可避的不純物として含まれていてもよい。
【0078】
[アルミニウム合金ブレージングシートの厚さ]
本実施形態に係るブレージングシートの厚さは、特に限定されないが、チューブ材に用いる場合、0.5mm以下であるのが好ましく、0.4mm以下であるのがより好ましく、また、0.05mm以上であるのが好ましい。
そして、本実施形態に係るブレージングシートの厚さは、サイドサポート材、ヘッダー材、タンク材に用いる場合、2.0mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましく、また、0.5mm以上であるのが好ましい。
また、本実施形態に係るブレージングシートの厚さは、フィン材に用いる場合、0.2mm以下であるのが好ましく、0.15mm以下であるのがより好ましく、また、0.01mm以上であるのが好ましい。
なお、本実施形態に係るブレージングシートの厚さは、ろう付後強度等の基本特性を損なうことなく適正なろう材の厚さを確保するという観点に基づくと、0.5mm以上が特に好ましい。
【0079】
本実施形態に係るブレージングシートのろう材の厚さは、いずれの板材に適用する場合においても特に限定されないが、2μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。ろう材の厚さを所定値以上とすることによって、ろう材に含有するMgの絶対量が多くなりゲッター作用をより確実に発揮させることができる。なお、ろう材の厚さは、250μm以下が好ましい。
本実施形態に係るブレージングシートのろう材のクラッド率は、いずれの板材に適用する場合においても特に限定されないが、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましい。ろう材のクラッド率を所定値以下とすることによって、ろう付後強度等の基本特性や生産性等の低下を回避・抑制することができる。
【0080】
[アルミニウム合金ブレージングシートのその他の構成]
本実施形態に係るブレージングシートについて、
図1に示す2層構造の構成を例示して説明したが、その他の構成を除外するものではない。
例えば、本実施形態に係るブレージングシートの構成は、使用者の要求に応じて、
図1に示す心材2の他方側(ろう材3が設けられている側とは逆側)に犠牲材(犠牲防食材、犠材)や中間材を設けてもよい。また、心材2の他方側にろう材をさらに設けてもよい。また、心材2の他方側に犠牲材や中間材を設けるとともに、その外側に、ろう材をさらに設けてもよい。
なお、本実施形態に係るブレージングシートの構成がろう材を心材の両側に備える構成の場合、いずれか一方のろう材が、本発明の発明特定事項を満たせば、他方のろう材は本発明の発明特定事項を満たさないろう材(例えば、JIS 4045、4047、4343等のAl-Si系合金、Al-Si-Zn系合金、Al-Si-Mg系合金等)であってもよい。また、本発明の発明特定事項を満たさないろう材に対しては、当該ろう材表面にフラックスを塗布してろう付してもよい。
【0081】
犠牲材としては、犠牲防食能を発揮できる公知の成分組成のものであればよく、例えば、JIS 1000系の純アルミニウム、JIS 7000系のAl-Zn系合金を用いることができる。また、中間材としては、要求特性によって、種々なアルミニウム合金を用いることができる。
なお、本明細書に示す合金番号は、JIS H 4000:2014、JIS Z 3263:2002に基づくものである。
【0082】
なお、本実施形態に係るブレージングシートは、心材及びろう材の成分と含有量とが特定されていることから、耐食性にも優れる。よって、本実施形態に係るブレージングシートによると、ろう付後の構造体が様々な使用環境・使用雰囲気にも対応することができる。
【0083】
次に、本実施形態に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法について説明する。
[アルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法]
本実施形態に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、フラックスを使用しない、いわゆるフラックスレスろう付であって、不活性ガス雰囲気において所定の加熱条件で加熱するという方法である。
【0084】
(加熱条件:昇温速度)
本実施形態に係るブレージングシートを加熱(ろう付)する際、350℃から560℃までの昇温速度が1℃/min未満であると、この昇温過程において心材及びろう材のMgがろう材表層部に過剰に拡散し、ろう材表面においてMgOが生成される可能性が高くなり、ろう付性が低下するおそれがある。一方、350℃から560℃までの昇温速度が500℃/minを超えると、この昇温過程において心材及びろう材のMgがろう材表層部に適切に拡散せず、ゲッター作用が不十分となる可能性が高くなり、ろう付性が低下するおそれがある。
したがって、350℃から560℃までの昇温速度は、1℃/min以上500℃/min以下が好ましい。
【0085】
なお、ろう材表面におけるMgOが生成される可能性をより低くするため、350℃から560℃までの昇温速度は、10℃/min以上が好ましい。また、ゲッター作用をより確実に発揮させるため、350℃から560℃までの昇温速度は、300℃/min以下が好ましい。
一方、560℃からの降温速度については特に限定されず、例えば、5℃/min以上1000℃/min以下であればよい。
【0086】
560℃から実際の加熱温度(後記する加熱温度の範囲内の所定の最高到達温度)までの昇温速度は特に限定されないものの、350℃から560℃までの昇温速度と同じ範囲内の速度とすればよい。また、実際の加熱温度から560℃までの降温速度についても特に限定されないものの、560℃からの降温速度と同じ範囲内の速度とすればよい。
【0087】
(加熱条件:加熱温度、保持時間)
本実施形態に係るブレージングシートを加熱する際の加熱温度(ろう溶融温度)は、ろう材が適切に溶融する560℃以上620℃以下であり、580℃以上620℃以下が好ましい。そして、この温度域における保持時間が10秒未満であると、ろう付現象(酸化膜の破壊、雰囲気の酸素濃度の低下、接合部への溶融ろうの流動)が生じるのに必要な時間が不足する可能性がある。
したがって、560℃以上620℃以下の温度域(好ましくは580℃以上620℃以下の温度域)における保持時間は、10秒以上が好ましい。
【0088】
なお、ろう付現象をより確実に発生させるため、560℃以上620℃以下の温度域(好ましくは580℃以上620℃以下の温度域)における保持時間は、30秒以上が好ましく、60秒以上がより好ましい。一方、保持時間の上限については特に限定されないものの、1500秒以下であればよい。
【0089】
(不活性ガス雰囲気)
本実施形態に係るブレージングシートを加熱(ろう付)する際の雰囲気は、不活性ガス雰囲気であり、例えば、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気、ヘリウムガス雰囲気、これら複数のガスを混合した混合ガス雰囲気である。また、不活性ガス雰囲気は、酸素濃度が出来る限り低い雰囲気が好ましく、具体的には、酸素濃度は50ppm以下であるのが好ましく、10ppm以下であるのがより好ましい。
そして、本実施形態に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、雰囲気を真空にする必要はなく、常圧(大気圧)で行うことができる。
【0090】
なお、通常、本実施形態に係るブレージングシートに対して前記の加熱を施す前(ろう付工程の前)に、被接合部材をブレージングシートのろう材に接するように組み付けることとなる(組み付け工程)。また、組み付け工程の前に、ブレージングシートを所望の形状・構造に成形してもよい(成形工程)。
【0091】
本実施形態に係るブレージングシートのろう付方法(言い換えると、ブレージングシートに被接合部材がろう付された構造体の製造方法)は、以上説明したとおりであるが、明示していない条件については、従来公知の条件を用いればよく、前記処理によって得られる効果を奏する限りにおいて、その条件を適宜変更できることは言うまでもない。
【0092】
なお、本実施形態に係るブレージングシートのろう付方法は、使用するブレージングシートの心材及びろう材の成分と含有量とが特定されていることから、優れた耐食性も発揮する。よって、本実施形態に係るブレージングシートのろう付方法によると、ろう付後の構造体が様々な使用環境・使用雰囲気にも対応することができる。
【0093】
次に、本実施形態に係る熱交換器の製造方法について説明する。
[熱交換器の製造方法]
本実施形態に係る熱交換器の製造方法は、前記したろう付方法を実施するろう付工程を含む方法である。
なお、本実施形態に係る熱交換器の製造方法は、ろう付工程以外の各工程、例えば、前記した成形工程や組み付け工程等は、従来公知の方法で行えばよい。
【0094】
次に、本実施形態に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法について説明する。
[アルミニウム合金ブレージングシートの製造方法]
本実施形態に係るブレージングシートの製造方法は特に限定されず、例えば公知のクラッド材の製造方法により製造される。以下にその一例を説明する。
まず、心材、ろう材のそれぞれの成分組成のアルミニウム合金を、溶解、鋳造し、さらに必要に応じて面削(鋳塊の表面平滑化処理)、均質化処理を施して、それぞれの鋳塊を得る。そして、ろう材の鋳塊については、所定厚さまで熱間圧延を施し、心材の鋳塊と組み合わせて、常法にしたがって、熱間圧延によりクラッド材とする。その後、このクラッド材に対して、冷間圧延、必要に応じて中間焼鈍、さらに、最終冷間圧延を施し、必要に応じて最終焼鈍を施す。
なお、均質化処理は400~600℃で1~20時間、中間焼鈍は300~450℃で1~20時間実施するのが好ましい。また、最終焼鈍は150~450℃で1~20時間実施するのが好ましい。そして、最終焼鈍を実施する場合、中間焼鈍を省略することが可能である。また、調質は、H1n、H2n、H3n、O(JIS H 0001:1998)のいずれでもよい。
【0095】
本実施形態に係るアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法は、以上説明したとおりであるが、前記各工程において、明示していない条件については、従来公知の条件を用いればよく、前記各工程での処理によって得られる効果を奏する限りにおいて、その条件を適宜変更できることは言うまでもない。
【実施例】
【0096】
次に、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法について、本発明の要件を満たす実施例と本発明の要件を満たさない比較例とを比較して具体的に説明する。
【0097】
[供試材作製]
表1に示す組成の心材を鋳造し、500℃×10時間の均質化処理を施し、所定の厚さまで両面を面削した。また、表2に示す組成のろう材を鋳造し、500℃×10時間の均質化処理を施し、所定の厚さまで熱間圧延を施し、熱間圧延板を作製した。そして、心材とろう材とを組み合わせて熱間圧延を施し、クラッド材を得た。その後、冷間圧延を施し、0.4mmの厚さ(ろう材のクラッド率は10%)とし、400℃×5時間の最終焼鈍を施し、2層構造のブレージングシート(O調質材)を作製し、供試材とした。
なお、供試材A65、A66については、前記した厚さと異なる厚さとしたが(供試材A65の厚さは0.6mm、ろう材のクラッド率は10%、供試材A66の厚さは0.8mmであり、ろう材のクラッド率は10%)、その他の作製条件は同じであった。
【0098】
次に、ろう付相当加熱の条件、並びに、ろう付性評価、耐食性評価の評価方法及び評価基準を示す。
【0099】
[ろう付相当加熱]
ろう付相当加熱は、酸素濃度10ppmの窒素雰囲気において、350~560℃までの昇温速度30℃/min、580~620℃範囲での保持時間180s、という条件で実施した。ただし、表4に示す供試材は表中に記載した条件でろう付相当加熱を実施した。
なお、560℃から最高到達温度までの昇温速度は、350~560℃までの昇温速度と同じであり、降温速度はいずれも100℃/minであった。
【0100】
[ろう付性評価]
ろう付性は、竹本正ら著、「アルミニウムブレージングハンドブック(改訂版)」(軽金属溶接構造協会、2003年3月発行)の132~136頁に記載されている評価方法により評価した。
詳細には、ろう付相当加熱前の供試材から面寸法が25mm×55mmの試験片を切り出した。そして、
図2A、Bに示すように、水平に置いた下板(3003Al合金板(厚さ1.0mm×縦幅25mm×横幅60mm))と、この下板に対して垂直に立てて配置した上板(試験片(縦幅25mm×横幅55mm))との間に、φ2mmのステンレス製スペーサを挟んで、一定のクリアランスを設定した。
そして、前記したろう付相当加熱の条件でろう付接合した。ろう付接合後、下板と上板の間隙が充填された長さ(間隙充填長さ)を測定してろう付性を数値化した。
なお、このろう付性は、厳密には間隙充填性のことであり、各部材を組み付けたときに生じる部材接合面間の隙間、ろう付時におけるブレージングシートや被接合部材の熱変形の発生により生じる部材接合面間の隙間、を考慮したろう付性である。
【0101】
ろう付性評価として、間隙充填長さが45mm以上のものを「☆」、35mm以上45mm未満のものを「◎」、25mm以上35mm未満のものを「○」、15mm以上25mm未満のものを「△」、15mm未満のものを「×」と評価し、「☆」、「◎」、「○」、「△」を合格、「×」を不合格と評価した。
【0102】
表4に示す供試材については、前記したろう付性評価のみ実施したが、表3に示す供試材については、前記したろう付性評価に加えて、以下に示す耐食性評価についても実施した。
【0103】
[耐食性評価]
ろう付相当加熱後の供試材から面寸法が50mm×50mmの試験片を切り出した。この試験片について、ろう材側が試験面(40mm×40mm)となるように、心材面全体と端面全体およびろう材表面の外縁5mm幅の領域を、シールテープを用いてシールした。そして、シールした試験片をOY水(Cl-:195質量ppm、SO4
2-:60質量ppm、Cu2+:1質量ppm、Fe3+:30質量ppm、pH:3.0)に浸漬し、20日間、浸漬試験を実施した。詳細には、この浸漬試験は、OY水を、室温から1時間で88℃まで加熱し、この88℃で7時間保持した後、室温まで1時間で冷却し、この室温にて15時間保持するという一連の流れを1日1サイクルとし、20日間行うというものであった。
浸漬試験後、試験面の中でも腐食が最も顕著な領域を光学顕微鏡により断面観察し、腐食形態と腐食深さを求めた。
【0104】
耐食性評価として、腐食深さが25μm以下のものを「☆」、25μmを超え50μm以下のものを「◎」、50μmを超え75μm以下のものを「〇」、75μmを超え100μm以下のものを「△」、100μmを超えたものを「×」と評価し、「☆」、「◎」、「○」、「△」を合格、「×」を不合格と評価した。
なお、ろう付性評価が「×」のものについては、耐食性評価を行わなかった。
【0105】
以下、表1には、心材の組成、表2には、ろう材の組成、表3には、供試材の構成、及び、評価結果、表4には、供試材の構成、ろう付条件、及び、評価結果を示す。そして、表1の心材、表2のろう材の残部は、Al及び不可避的不純物であり、表中の「-」は、含有していない(検出限界以下である)ことを示す。また、表3に示す「0.13CMg
-0.3」、「0.58CMg
0.45」の値は、小数第3位を四捨五入した値である。
【0106】
なお、表3の一部の供試材について、「C
Bi」と「C
Mg」との関係を
図3のグラフに示した。また、表3の一部の供試材について、「C
Mg-b」と「C
Mg-c」との関係を
図4のグラフに示した。この
図3、4中の「○」、「△」については、本発明の規定する要件を満たすものであり、特に「○」は、本発明の規定する好ましい要件を満たすものであり、「×」は本発明の規定する要件を満たさないものである。
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
[結果の検討]
供試材A1~A66、B1~B8については、本発明の規定する要件を満たしていた。よって、供試材A1~A66、B1~B8は「ろう付性」が合格という結果となるとともに、供試材A1~A66は「耐食性」も合格という結果となった。
【0112】
そして、本発明の規定する要件を満たすことで「ろう付性」及び「耐食性」が合格であるものは、
図3のC
Bi=0.13C
Mg
-0.3、C
Bi=0.58C
Mg
0.45、C
Mg=0.2、C
Mg=1.1で囲まれる範囲に位置することがわかった。
また、本発明の規定する要件を満たすことで「ろう付性」及び「耐食性」が合格であるものは、
図4のC
Mg-c=-2C
Mg-b+0.4とC
Mg-c=-2C
Mg-b+2.2との間に位置することもわかった。
【0113】
一方、供試材A100~A114については、本発明の規定する要件を満足しないことから、ろう付性が不合格、又は、熱間圧延時に耳割れが発生してしまうという結果となった。詳細には、以下のとおりである。
【0114】
供試材A100は、CMgの値が大きく、ろう材表面でのMgOの生成が促進されてしまったと想定され、その結果、ろう付性が「×」となった。
供試材A101は、CBiの値が大きく、Bi単体化合物に基づく酸化膜がゲッター作用を抑制してしまったと想定され、さらに、CMgの値が小さく、ゲッター作用が不十分であったと想定され、その結果、ろう付性が「×」となった。
供試材A102は、CBiの値が小さく、Mgを十分にトラップすることができずに、ろう材表面でのMgOの生成が促進されてしまったと想定され、その結果、ろう付性が「×」となった。
供試材A103は、CBiの値が小さく、Mgを十分にトラップすることができずに、ろう材表面でのMgOの生成が促進されてしまったと想定され、その結果、ろう付性が「×」となった。
供試材A104は、CBiの値が小さく、Mgを十分にトラップすることができずに、ろう材表面でのMgOの生成が促進されてしまったと想定され、その結果、ろう付性が「×」となった。
供試材A105は、CBiの値が大きく、Bi単体化合物に基づく酸化膜がゲッター作用を抑制してしまったと想定され、その結果、ろう付性が「×」となった。
供試材A106は、CBiの値が大きく、Bi単体化合物に基づく酸化膜がゲッター作用を抑制してしまったと想定され、その結果、ろう付性が「×」となった。
供試材A107は、CBiの値が大きく、Bi単体化合物に基づく酸化膜がゲッター作用を抑制してしまったと想定され、その結果、ろう付性が「×」となった。
供試材A108は、CBiの値が小さく、Mgを十分にトラップすることができずに、ろう材表面でのMgOの生成が促進されてしまったと想定され、その結果、ろう付性が「×」となった。
供試材A109は、CBiの値が小さく、Mgを十分にトラップすることができずに、ろう材表面でのMgOの生成が促進されてしまったと想定され、さらに、CMgの値が小さく、ゲッター作用が不十分であったと想定され、その結果、ろう付性が「×」となった。
供試材A110は、CBiの値が小さく、Mgを十分にトラップすることができずに、ろう材表面でのMgOの生成が促進されてしまったと想定され、その結果、ろう付性が「×」となった。
供試材A111は、CMgの値が大きく、ろう材表面でのMgOの生成が促進されてしまったと想定され、その結果、ろう付性が「×」となった。
供試材A112は、CBiの値が小さく、Mgを十分にトラップすることができずに、ろう材表面でのMgOの生成が促進されてしまったと想定され、さらに、CMgの値が大きく、ろう材表面でのMgOの生成が促進されてしまったと想定され、その結果、ろう付性が「×」となった。
供試材A113は、CBiの値が大きく、Bi単体化合物に基づく酸化膜がゲッター作用を抑制してしまったと想定され、さらに、CMgの値が小さく、ゲッター作用が不十分であったと想定され、その結果、ろう付性が「×」となった。
供試材A114は、CMg-bの値が小さく、Bi単体化合物が熱間圧延時に溶融し、熱間圧延割れ(耳割れ)を誘発したと想定される。
【0115】
以上の結果より、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートのろう付方法は、優れたろう付性、及び、耐食性を発揮できることが確認できた。
【符号の説明】
【0116】
1 アルミニウム合金ブレージングシート(ブレージングシート)
2 心材
3 ろう材