(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/14 303
B41J2/14 501
B41J2/14 603
(21)【出願番号】P 2017134995
(22)【出願日】2017-07-10
【審査請求日】2020-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】上月 敦詞
(72)【発明者】
【氏名】冨永 和由
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 高徳
(72)【発明者】
【氏名】宮城 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 研治
(72)【発明者】
【氏名】浜野 勇一郎
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-133345(JP,A)
【文献】特開2003-072065(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0043077(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に積層されるとともに、液体を噴射する第1ヘッドチップ及び第2ヘッドチップと、
前記第1方向において、前記第1ヘッドチップに対して前記第2ヘッドチップとは反対側に配置されるとともに、前記第1ヘッドチップに連通する第1液体流路を有する第1流路部材と、
前記第1方向において、前記第2ヘッドチップに対して前記第1ヘッドチップとは反対側に配置されるとともに、前記第2ヘッドチップに連通する第2液体流路を有する第2流路部材と、を有し、
前記第1流路部材には、前記第1液体流路の内外を連通させる第1気泡排出流路が形成され、
前記第2流路部材には、前記第2液体流路の内外を連通させる第2気泡排出流路が形成されている
、
液体噴射ヘッドであって、
前記第1流路部材は、液体の供給源と前記第1液体流路とを接続する流入ポートを有し、
前記第1流路部材と前記第2流路部材との間には、前記第1液体流路と前記第2液体流路とを連通させる連通流路が配置され、
前記第1気泡排出流路は、外部に開口する第1排出孔と連通しており、
前記第2気泡排出流路は、外部に開口する第2排出孔と連通しており、
前記第2排出孔の内径は、前記第1排出孔の内径よりも小さくなっていることを特徴とす
る液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記第2ヘッドチップは、液体に圧力変動を付与する第2圧力室が前記第1方向に交差する第2方向に並んで配置された噴射領域を有し、
前記連通流路は、前記第2方向において前記噴射領域に対して両側に位置する部分に一対で配置され、
前記第2気泡排出流路は、前記第2方向における一対の前記連通流路間の中央部で前記第2液体流路に連通していることを特徴とする請求項
1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記第1ヘッドチップは、液体に圧力変動を付与する第1圧力変動室を有し、
前記第2ヘッドチップは、液体に圧力変動を付与する第2圧力変動室を有し、
前記第1ヘッドチップ及び前記第2ヘッドチップには、前記第1圧力変動室及び前記第2圧力変動室に各別に連通する噴射孔が形成された噴射孔プレートが設けられ、
前記第1排出孔及び前記第2排出孔はそれぞれ、前記噴射孔が開口する噴射面において開口していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第2気泡排出流路には、液体を濾過するフィルタが配設されていることを特徴とする請求項
1から請求項
3の何れか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項1から請求項
4の何れか1項に記載の液体噴射ヘッドを備えていることを特徴とする液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録紙等の被記録媒体に液滴状のインクを吐出して、被記録媒体に画像や文字を記録する装置として、インクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタがある。インクジェットヘッドは、例えば各色に対応する複数のジェットモジュールがキャリッジに搭載されて構成されている。
【0003】
上述したジェットモジュールは、インクを吐出するヘッドチップや、ヘッドチップにインクを供給するインク流路が形成されたマニホールド等を備えている。例えば、下記特許文献1には、高解像度印刷や高速印刷等を可能にするために、1つのジェットモジュールに複数のヘッドチップを搭載する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクがインク流路を流通する過程で、空気を巻き込むと、インク中に気泡となって滞留する場合がある。気泡がヘッドチップまで達してしまうと、各ヘッドチップ内でのインクの充填が不十分となり、ノズル孔からのインクの吐出が不安定になる。
【0006】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、吐出安定性を向上させることができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の一態様に係る液体噴射ヘッドは、第1方向に積層されるとともに、液体を噴射する第1ヘッドチップ及び第2ヘッドチップと、前記第1方向において、前記第1ヘッドチップに対して前記第2ヘッドチップとは反対側に配置されるとともに、前記第1ヘッドチップに連通する第1液体流路を有する第1流路部材と、前記第1方向において、前記第2ヘッドチップに対して前記第1ヘッドチップとは反対側に配置されるとともに、前記第2ヘッドチップに連通する第2液体流路を有する第2流路部材と、を有し、前記第1流路部材には、前記第1液体流路の内外を連通させる第1気泡排出流路が形成され、前記第2流路部材には、前記第2液体流路の内外を連通させる第2気泡排出流路が形成されている、液体噴射ヘッドであって、前記第1流路部材は、液体の供給源と前記第1液体流路とを接続する流入ポートを有し、前記第1流路部材と前記第2流路部材との間には、前記第1液体流路と前記第2液体流路とを連通させる連通流路が配置され、前記第1気泡排出流路は、外部に開口する第1排出孔と連通しており、前記第2気泡排出流路は、外部に開口する第2排出孔と連通しており、前記第2排出孔の内径は、前記第1排出孔の内径よりも小さくなっている。
【0008】
この構成によれば、第1液体流路及び第2液体流路で滞留する気泡を、第1気泡排出流路及び第2気泡排出流路を通じてそれぞれ排出できる。そのため、各ヘッドチップ内に気泡が進入するのを抑制し、各ヘッドチップでの液体の充填性を向上させることができる。これにより、噴射安定性を向上させることができる。
【0010】
第2液体流路には、第1液体流路内の液体の一部が連通流路を通して供給される。この場合、第2液体流路は、第1液体流路に対して下流側に位置するため、第1液体流路内の圧力に比べて高圧になり易い。
そこで、本態様によれば、第2排出孔の内径を第1排出孔の内径よりも小さくすることで、第2排出孔の内面で作用する表面張力を第1排出孔の内面で作用する表面張力よりも高くすることができる。これにより、第2排出孔内でメニスカスを安定させ易くなり、第2排出孔を通じて液体が不意に漏れ出るのを抑制できる。
また、第2排出孔内でメニスカスが安定することで、液体噴射ヘッドの使用時(液体噴射時等)に例えば第2ヘッドチップ内で発生する負圧によってメニスカスが破壊されて、第2排出孔を通じて第2ヘッドチップ内に外気(空気)が進入するのを抑制できる。そのため、第2排出孔から進入した空気が気泡となってヘッドチップ内に滞留するのを抑制し、噴射安定性を向上させることができる。
【0011】
上記態様に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記第2ヘッドチップは、液体に圧力変動を付与する第2圧力室が前記第1方向に交差する第2方向に並んで配置された噴射領域を有し、前記連通流路は、前記第2方向において前記噴射領域に対して両側に位置する部分に一対で配置され、前記第2気泡排出流路は、前記第2方向における一対の前記連通流路間の中央部で 前記第2液体流路に連通していてもよい。
本態様によれば、各連通流路から第2気泡排出流路までの距離が互いに同等に設定される。そのため、第2液体流路内を各連通流路から第2方向の中央部に液体が流通する過程で、第2液体流路内に滞留する気泡を第2方向の両側から第2気泡排出流路に向けて均等に押し出すことができる。これにより、第2ヘッドチップ内に気泡が進入するのをより確実に抑制できる。
上記態様に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記第1ヘッドチップは、液体に圧力変動を付与する第1圧力変動室を有し、前記第2ヘッドチップは、液体に圧力変動を付与する第2圧力変動室を有し、前記第1ヘッドチップ及び前記第2ヘッドチップには、前記第1圧力変動室及び前記第2圧力変動室に各別に連通する噴射孔が形成された噴射孔プレートが設けられ、前記第1排出孔及び前記第2排出孔はそれぞれ、前記噴射孔が開口する噴射面において開口している。
【0012】
上記態様に係る液体噴射ヘッドにおいて、前記第2気泡排出流路には、液体を濾過するフィルタが配設されていてもよい。
本態様によれば、第2気泡排出流路内の流路抵抗をフィルタにより増加させることで、上流からの液体の流れや噴射孔からの液体の噴射等に起因する第2気泡排出流路内の圧力変動によって、第2排出孔内のメニスカスが壊れることを抑制することができる。これにより、第2排出孔内でメニスカスを安定させ易くなり、第2排出孔を通じて液体が不意に漏れ出るのを抑制できる。
【0013】
本発明の一態様に係る液体噴射装置は、上記態様に係る液体噴射ヘッドを備えている。
本態様によれば、吐出性能に優れた液体噴射装置を提供できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、吐出安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
【
図2】実施形態に係るインクジェットヘッドの斜視図である。
【
図3】実施形態に係るインクジェットヘッドにおいて、一部を分解した斜視図である。
【
図4】実施形態に係るインクジェットヘッドにおいて、ベース部材と第1ジェットモジュールの分解斜視図である。
【
図5】実施形態に係る第1ジェットモジュールの分解斜視図である。
【
図7】
図6のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】実施形態に係る第1流路部材において、第1流路板から+Y方向に展開させた分解斜視図である。
【
図9】実施形態に係る第1流路板を+Y方向から見た正面図である。
【
図10】
図8のX-X線に相当する第1ジェットモジュールの断面図である。
【
図12】実施形態に係る第1流路部材において、第1流路板から-Y方向に展開させた分解斜視図である。
【
図13】実施形態に係る第2流路板を+Y方向から見た正面図である。
【
図14】
図2のXIV-XIV線に沿う部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、インク(液体)を利用して被記録媒体に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
[プリンタ]
図1はプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態のプリンタ1は、一対の搬送機構2,3と、インク供給機構4と、インクジェットヘッド5A,5Bと、走査機構6と、を備えている。なお、以下の説明では、必要に応じてX,Y,Zの直交座標系を用いて説明する。この場合、X方向(第2方向)は被記録媒体P(例えば、紙等)の搬送方向(副走査方向)に一致している。Y方向(第1方向)は走査機構6の走査方向(主走査方向)に一致している。Z方向は、X方向及びY方向に直交する高さ方向(重力方向)を示している。以下の説明では、X方向、Y方向及びZ方向のうち、図中矢印方向をプラス(+)方向とし、矢印とは反対の方向をマイナス(-)方向として説明する。本実施形態において、+Z方向は重力方向の上方に相当し、-Z方向は重力方向の下方に相当する。
【0018】
搬送機構2,3は、被記録媒体Pを+X方向に搬送する。具体的に、搬送機構2は、Y方向に延設されたグリットローラ11と、グリットローラ11に平行に延設されたピンチローラ12と、グリットローラ11を軸回転させるモータ等の駆動機構(不図示)と、を備えている。同様に、搬送機構3は、Y方向に延設されたグリットローラ13と、グリットローラ13に平行に延設されたピンチローラ14と、グリットローラ13を軸回転させる駆動機構(不図示)と、を備えている。
【0019】
インク供給機構4は、インクが収容されたインクタンク15と、インクタンク15とインクジェットヘッド5A,5Bとを接続するインク配管16と、を備えている。
本実施形態において、インクタンク15は、X方向に複数並べられている。各インクタンク15には、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクが各別に収容されている。
インク配管16は、例えば可撓性を有するフレキシブルホースである。インク配管16は、各インクタンク15と各インクジェットヘッド5A,5Bとの間を接続している。
【0020】
走査機構6は、インクジェットヘッド5A,5BをY方向に往復走査させる。具体的に、走査機構6は、Y方向に延設された一対のガイドレール21,22と、一対のガイドレール21,22に移動可能に支持されたキャリッジ23と、キャリッジ23をY方向に移動させる駆動機構24と、を備えている。
【0021】
駆動機構24は、X方向におけるガイドレール21,22の間に配設されている。駆動機構24は、Y方向に間隔をあけて配設された一対のプーリ25,26と、一対のプーリ25,26間に巻回された無端ベルト27と、一方のプーリ25を回転駆動させる駆動モータ28と、を備えている。
【0022】
キャリッジ23は、無端ベルト27に連結されている。キャリッジ23には、複数のインクジェットヘッド5A,5BがY方向に並んだ状態で搭載されている。各インクジェットヘッド5A,5Bは、1つのインクジェットヘッド5A,5Bにつき2色のインクを吐出可能に構成されている。したがって、本実施形態のプリンタ1では、各インクジェットヘッド5A,5Bそれぞれが互いに異なる2色のインクを吐出することで、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクを吐出可能に構成されている。
【0023】
<インクジェットヘッド>
図2は、インクジェットヘッド5Aの斜視図である。
図3は、インクジェットヘッド5Aにおいて、一部を分解した斜視図である。なお、インクジェットヘッド5A,5Bは、供給されるインクの色以外は何れも同等の構成である。そのため、以下の説明ではインクジェットヘッド5Aについて説明し、インクジェットヘッド5Bの説明を省略する。
図2、
図3に示すように、本実施形態のインクジェットヘッド5Aは、ジェットモジュール30A,30B(
図3参照)やダンパ31、ノズルプレート32(
図2参照)、ノズルガード33等がベース部材38に搭載されて構成されている。
【0024】
(ベース部材)
図4は、インクジェットヘッド5Aにおいて、ベース部材38と第1ジェットモジュール30Aの分解斜視図である。
図4に示すように、ベース部材38は、Z方向を厚さ方向とし、X方向を長手方向とする板状に形成されている。ベース部材38は、各ジェットモジュール30A,30Bを保持するベース本体部41と、ベース部材38をキャリッジ23(
図1参照)に固定するためのキャリッジ固定部42と、を有している。なお、本実施形態において、ベース部材38は、金属材料により一体で形成されている。
【0025】
ベース本体部41には、モジュール収容部(第1モジュール収容部44A及び第2モジュール収容部44B)が形成されている。各モジュール収容部44A,44Bは、ジェットモジュール30A,30Bに対応してY方向に2つ並んで形成されている。各モジュール収容部44A,44Bは、ベース本体部41をZ方向に貫通している。各モジュール収容部44A,44Bには、対応するジェットモジュール30A,30Bがそれぞれ差込可能とされている。すなわち、ジェットモジュール30A,30Bは、-Z方向端部が各モジュール収容部44A,44B内に差し込まれることで、ベース部材38から+Z方向に起立した状態でベース本体部41に保持されている。
【0026】
ベース本体部41において、各モジュール収容部44A,44B間に位置する部分には、各モジュール収容部44A,44B間を仕切る仕切部46が形成されている。
ベース本体部41におけるX方向で対向する一対の短辺部45a,45bには、X方向の内側に向けて突出する突出壁47が形成されている。突出壁47は、X方向で対向する突出壁47同士を1組として、各モジュール収容部44A,44B毎に形成されている。
【0027】
第1短辺部45aには第1付勢部材48が設けられている。第1付勢部材48は、各モジュール収容部44A,44Bに対応して設けられている。各第1付勢部材48は、第1短辺部45aと各ジェットモジュール30A,30Bとの間にそれぞれ介在する板ばね状に形成されている。各第1付勢部材48は、各ジェットモジュール30A,30Bを第2短辺部45bに向けて(-X方向)付勢する。
【0028】
キャリッジ固定部42は、ベース本体部41の+Z方向端部からXY平面に張り出している。キャリッジ固定部42には、ベース部材38をキャリッジ23(
図1参照)に取り付けるための取付孔等が形成されている。
【0029】
(ジェットモジュール)
図3に示すように、ジェットモジュール30A,30Bは、Y方向を厚さ方向とする板状に形成されている。ジェットモジュール30A,30Bは、インクタンク15(
図1参照)から供給されるインクを被記録媒体Pに向けて吐出可能に構成されている。ジェットモジュール30A,30Bは、ベース部材38上にY方向に間隔をあけて搭載されている。
【0030】
本実施形態のインクジェットヘッド5Aでは、ジェットモジュール30A,30Bのうち、各ジェットモジュールで1色ずつインクを吐出するようになっている。なお、ベース部材38に搭載されるジェットモジュール30A,30Bの数や、ジェットモジュール30A,30Bから吐出するインクの色、種類等は、適宜変更が可能である。各ジェットモジュール30A,30Bは、同一の構成からなるジェットモジュール同士がY方向で互いに逆向きでベース部材38に搭載されている。したがって、以下の構成では、第1ジェットモジュール30Aを例にして説明する。
【0031】
図5は、第1ジェットモジュール30Aの分解斜視図である。
図5に示すように、第1ジェットモジュール30Aは、吐出部50と、吐出部50を間に挟んでY方向で対向する第1流路部材51A及び第2流路部材51Bと、を主に備えている。
【0032】
(吐出部)
図6は、吐出部50の分解斜視図である。
図6に示すように、吐出部50は、第1ヘッドチップ52Aと、第1ヘッドチップ52Aに対して+Y方向に積層された第2ヘッドチップ52Bと、を有している。各ヘッドチップ52A,52Bは、後述する吐出チャネル57における延在方向(Z方向)の端部からインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのものである。
【0033】
第1ヘッドチップ52Aは、第1アクチュエータプレート55及び第1カバープレート56がY方向に重ね合わされて構成されている。
【0034】
第1アクチュエータプレート55は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等により形成された圧電基板である。第1アクチュエータプレート55は、分極方向が厚さ方向(Y方向)に沿って一方向に設定されている。なお、第1アクチュエータプレート55は、分極方向がY方向で異なる2枚の圧電基板を積層して形成しても構わない(いわゆる、シェブロンタイプ)。
【0035】
第1アクチュエータプレート55には、-Y方向を向く面(以下、「表面」という。)で開口する複数のチャネル57,58が、X方向に間隔をあけて並設されている。各チャネル57,58は、それぞれZ方向に沿って直線状に形成されている。各チャネル57,58は、第1アクチュエータプレート55における-Z方向端面上で開口している。なお、各チャネル57,58は、Z方向に対して傾いて延在していても構わない。
【0036】
図7は、
図6のVII-VII線に沿う断面図である。
図6、
図7に示すように、上述した複数のチャネル57,58は、インクが充填される吐出チャネル57、及びインクが充填されない非吐出チャネル58である。吐出チャネル57及び非吐出チャネル58は、X方向に交互に並んで配置されている。各チャネル57,58は、第1アクチュエータプレート55からなる駆動壁61によってそれぞれX方向に仕切られている。なお、チャネル57,58の内面には、駆動電極59が形成されている。駆動電極59は、第1アクチュエータプレート55の+Z方向端部において、第1アクチュエータプレート55の表面に形成された駆動端子(不図示)に接続されている。
【0037】
第1カバープレート56は、Y方向から見た平面視で矩形状に形成されている。第1カバープレート56は、第1アクチュエータプレート55の+Z方向端部を突出させた状態で、第1アクチュエータプレート55の表面に接合されている(
図10参照)。
【0038】
第1カバープレート56は、-Y方向を向く面(以下、「表面」という。)で開口する共通インク室62と、+Y方向を向く面(以下、「裏面」という。)で開口する複数のスリット63と、を有している。
共通インク室62は、Z方向において、吐出チャネル57の+Z方向端部に対応する位置に形成されている。共通インク室62は、第1カバープレート56の表面から+Y方向に向けて窪むとともに、X方向に延設されている。共通インク室62には、上述した第1流路部材51Aを通してインクが流入する。
スリット63は、共通インク室62のうち、吐出チャネル57とY方向で対向する位置に形成されている。スリット63は、共通インク室62内と各吐出チャネル57内とを各別に連通している。したがって、非吐出チャネル58は、共通インク室62内には連通していない。
【0039】
第1カバープレート56のうち、共通インク室62よりもX方向の外側に位置する部分には、一対の第1気泡抜き孔65Aが形成されている。各第1気泡抜き孔65Aは、第1カバープレート56をY方向に貫通した後、第1カバープレート56と第1アクチュエータプレート55との間を-Z方向に延在している。すなわち、第1気泡抜き孔65Aのうち、第1開口部は第1カバープレート56の表面で開口し、第2開口部は第1ヘッドチップ52Aの-Z方向端面で開口している。
【0040】
第2ヘッドチップ52Bは、第2アクチュエータプレート71及び第2カバープレート72がY方向に重ね合わされて構成されている。以下の説明では、第2ヘッドチップ52Bにおける第1ヘッドチップ52Aと同様の構成について、第1ヘッドチップ52Aと同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
第2アクチュエータプレート71は、第1アクチュエータプレート55のうち、+Y方向を向く面(以下、「裏面」という。)に接合されている。第2ヘッドチップ52Bの吐出チャネル57及び非吐出チャネル58は、第1ヘッドチップ52Aの吐出チャネル57及び非吐出チャネル58の配列ピッチに対して半ピッチずれて配列されている。すなわち、各ヘッドチップ52A,52Bの吐出チャネル57同士及び非吐出チャネル58同士は、それぞれ千鳥状に配列されている。
【0042】
第2カバープレート72は、第2アクチュエータプレート71における+Y方向を向く面(以下、「表面」という。)に接合されている。第2カバープレート72のうち、共通インク室62よりも少なくとも+X方向に位置する部分には、第2気泡抜き孔65Bが形成されている。第2気泡抜き孔65Bは、第2カバープレート72をY方向に貫通した後、第2カバープレート72と第2アクチュエータプレート71との間を-Z方向に延在している。
【0043】
吐出部50において、チャネル57,58が配列された領域を吐出領域Q1とし、吐出領域Q1に対してX方向の両側に位置する領域(最外のチャネル57,58よりも外側の領域)を一対の非吐出領域Q2とする。非吐出領域Q2には、吐出部50(各ヘッドチップ52A,52B)をY方向に貫通する連通孔73(
図6,7では、一方の連通孔73のみを示す)が形成されている。連通孔73は、各ヘッドチップ52A,52B(アクチュエータプレート55,71及びカバープレート56,72)をY方向に貫通し、各ヘッドチップ52A,52Bの共通インク室62同士を連通させている。なお、連通孔73の数や位置、形状等は適宜変更が可能である。
【0044】
(第1流路部材)
図8は、第1流路部材51Aにおいて、第1流路板77から+Y方向に展開させた分解斜視図である。
図8に示すように、第1流路部材51Aは、第1マニホールド75と、流入ポート76と、を有している。なお、第1マニホールド75及び流入ポート76は、一体に形成されていても構わない。
第1マニホールド75は、全体としてY方向を厚さ方向とする板状に形成されている。
図3に示すように、第1マニホールド75は、-Z方向端部が上述した第1モジュール収容部44A内に差し込まれることで、+Z方向に起立した状態でベース部材38に保持されている。
【0045】
図8に示すように、第1マニホールド75は、第1流路板77と、第1流路板77に対して+Y方向に配設されたフロントカバー78と、第1流路板77に対して-Y方向に配設されたリアカバー79と、を有している。
【0046】
第1流路板77は、熱伝導性に優れた材料により形成されている。本実施形態において、第1流路板77の材料には、金属材料(例えば、アルミニウム等)が好適に用いられている。第1流路板77には、第1ヘッドチップ52Aに向けてインクが流通する第1インク流路81が形成されている。
【0047】
図9は、第1流路板77を+Y方向から見た正面図である。
図8、
図9に示すように、第1インク流路81は、上流流路83、濾過流路84、下流流路85及び供給流路86(
図11参照)が連なって形成されている。
上流流路83は、第1流路板77において+Y方向に開口している。具体的に、上流流路83は、幅狭流路91と、幅狭流路91及び濾過流路84間を接続する接続流路92と、を有している。
【0048】
幅狭流路91は、第1流路板77における+X方向、かつ+Z方向に位置する部分を上流端とし、第1流路板77におけるZ方向及びX方向の中央部に位置する部分を下流端として、上流端から下流端に向かうに従い屈曲しながら延在している。具体的に、幅狭流路91は、上流端から-Z方向に延在した後、-Z方向に向かうに従い-X方向に延在し、さらに-Z方向に延在している。本実施形態において、幅狭流路91の流路幅(流通方向及びY方向に直交する方向での幅)、及び流路深さ(Y方向での深さ)は、全体に亘って一様に設定されている。但し、幅狭流路91の形状や流路幅、流路深さは、適宜変更が可能である。
【0049】
図9に示すように、接続流路92は、+Y方向から見た正面視において、-Z方向に向かうに従い流路幅が漸次拡幅する三角形状に形成されている。接続流路92は、+Z方向端部において、幅狭流路91の下流端に連通している。本実施形態において、接続流路92の上流端(+Z方向端部)での流路幅は、幅狭流路91の下流端での流路幅と同等になっている。
【0050】
図10は、
図8のX-X線に相当する第1ジェットモジュール30Aの断面図である。
図10に示すように、接続流路92は、+X方向から見た断面視において、-Z方向に向かうに従い流路深さが漸次浅くなっている。すなわち、本実施形態の接続流路92は、上流側から下流側に向かうに従い流路幅が広くなる一方、上流側から下流側に向かうに従い流路深さが浅くなっている。本実施形態において、接続流路92の上流端での流路深さは、幅狭流路91の下流端での流路深さと同等になっている。
【0051】
接続流路92における下流端(-Z方向端部)での流路断面積(XY平面での断面積)は、上流端での流路断面積よりも小さくなっていることが好ましい。但し、接続流路92の流路幅や流路深さ、流路断面積は、適宜変更が可能である。
なお、本実施形態では、流路幅及び流路深さが連続的(直線状)に変化する構成について説明したが、この構成のみに限られない。すなわち、接続流路92は、流路幅及び流路深さが下流側に向かうに従い徐々に変化する構成であれば、例えば階段状や曲線状に形成されていても構わない。また、傾きの異なる複数の直線が連なる構成であっても構わない。
【0052】
図11は、
図10のXI部拡大図である。
図9、
図11に示すように、濾過流路84は、接続流路92における下流端とZ方向で連通するとともに、接続流路92から流入するインクを-Y方向に向けて流通させる。具体的に、濾過流路84は、+Y方向に位置するフィルタ入口流路95と、フィルタ入口流路95に対して-Y方向に連なるフィルタ出口流路96と、を有している。
フィルタ入口流路95は、+Z方向端部(重力方向の上端部)において、接続流路92に連通している。フィルタ入口流路95におけるX方向での幅は、接続流路92における下流端でのX方向の幅と同等になっている。
【0053】
フィルタ出口流路96は、Y方向から見た正面視での面積(流路断面積)がフィルタ入口流路95に比べて一回り小さくなっている。すなわち、フィルタ入口流路95とフィルタ出口流路96との境界部分には、+Y方向を向く段差面97が形成されている。段差面97は、フィルタ入口流路95の外周縁に倣って延びる額縁状に形成されている。
【0054】
フィルタ入口流路95には、濾過流路84をフィルタ入口流路95とフィルタ出口流路96とにY方向で仕切るメインフィルタ99が配置されている。メインフィルタ99は、Y方向から見た平面視外形がフィルタ入口流路95と同等の大きさに形成されたメッシュシートである。メインフィルタ99は、外周部分が上述した段差面97に+Y方向から接合されている。インクは、フィルタ入口流路95からフィルタ出口流路96に流通する過程でメインフィルタ99を通過する。これにより、インク中に含まれる異物や気泡がメインフィルタ99により捕捉される。
【0055】
図11に示すように、フィルタ出口流路96の内面には、フィルタ出口流路96と下流流路85との間をY方向で仕切る貯留壁部100が形成されている。貯留壁部100は、フィルタ出口流路96の内面のうち、-Z方向(重力方向の下方)に位置する-Z方向内側面から+Z方向に立設されるとともに、フィルタ出口流路96におけるX方向の全体に亘って形成されている。
【0056】
貯留壁部100における+Z方向端部には、貯留壁部100をY方向に貫通する連通流路102が形成されている。連通流路102は、貯留壁部100(フィルタ出口流路96)におけるX方向の全体に亘って連続的に形成されている。本実施形態において、連通流路102の内面のうち、+Z方向に位置する+Z方向内側面は、フィルタ出口流路96の内面のうち、+Z方向に位置する+Z方向内側面と面一になっている。すなわち、連通流路102は、フィルタ出口流路96の最上端部で開口している。但し、連通流路102及びフィルタ出口流路96における+Z方向内側面同士は、面一である場合に限られない。
【0057】
連通流路102の上流端での流路断面積(XZ平面での面積)は、上述したフィルタ入口流路95の最小流路断面積(XY平面での断面積)よりも小さくなっていることが好ましい。但し、連通流路102の流路断面積は、フィルタ入口流路95の最小流路断面積と同等以上であっても構わない。なお、本実施形態では、フィルタ入口流路95の最小流路断面積を、フィルタ入口流路95の上流端(接続流路92との境界部分)に設定した場合について説明したが、この構成のみに限られない。すなわち、フィルタ入口流路95の最小流路断面積は、フィルタ入口流路95の任意の位置に設定することが可能である。
【0058】
図12は、第1流路部材51Aにおいて、第1流路板77から-Y方向に展開させた分解斜視図である。
図10、
図12に示すように、下流流路85は、第1流路板77において-Y方向に開口している。具体的に、下流流路85は、ストレート部110と、ストレート部110の下流側に連なる拡大部111と、を有している。
【0059】
ストレート部110は、貯留壁部100を間に挟んでフィルタ出口流路96にY方向で対向している。ストレート部110は、X方向における流路幅がフィルタ出口流路96と同等に形成されるとともに、Y方向での流路深さがZ方向の全体に亘って一様に形成されている。ストレート部110は、+Z方向の端部において、連通流路102を通じてフィルタ出口流路96に連通している。なお、ストレート部110の流路幅や流路深さは、適宜変更が可能である。
【0060】
拡大部111は、ストレート部110の-Z方向端部から-Z方向に延在している。拡大部111は、X方向での流路幅がストレート部110と同等に形成されている。拡大部111は、Y方向での流路深さが-Z方向に向かうに従い漸次深くなっている。すなわち、拡大部111の流路断面積(Z方向に直交する方向での断面積)は、下流側(-Z方向)に向かうに従い漸次拡大している。
【0061】
供給流路86は、第1流路板77の-Z方向端部において、第1流路板77をY方向に貫通している。供給流路86におけるX方向での流路幅は、拡大部111よりも広くなっている。本実施形態において、供給流路86の流路幅は、共通インク室62と同等に設定されている。
【0062】
供給流路86における上流端(-Y方向端部)は、拡大部111の下流端(-Z方向端部)に連通している。一方、供給流路86における下流端は、第1流路板77において+Y方向に開口している。
【0063】
図9に示すように、第1流路板77には、第1インク流路81に連通する第1気泡排出流路120が形成されている。第1気泡排出流路120は、濾過流路84に対してX方向の両側に一対で形成されている。すなわち、各第1気泡排出流路120は、第1流路部材51AにおけるX方向の中心を通り、Z方向に延びる対称軸に対して線対称に形成されている。そのため、以下の説明では、第1インク流路81に対して+X方向に位置する第1気泡排出流路120について説明する。なお、第1気泡排出流路120は、一対に限られない。
【0064】
図9、
図12に示すように、第1気泡排出流路120は、誘導部121と、第1貫通部122と、排出部123と、第2貫通部124と、を有している。
誘導部121は、第1流路板77において+Y方向に開口している。誘導部121は、上述した接続流路92及びフィルタ入口流路95に対して+X方向に連なっている。具体的に、誘導部121は、+X方向に向かうに従いZ方向の幅が漸次縮小するテーパ状に形成されている。具体的に、誘導部121の内面のうち、+Z方向に位置する+Z方向内側面は、X方向に沿って直線状に延在している。但し、+Z方向内側面は、+X方向に向かうに従い+Z方向や-Z方向に向けて傾斜して延在しても構わない。
【0065】
誘導部121の内面のうち、-Z方向に位置する-Z方向内側面は、+X方向に向かうに従い+Z方向に延びる傾斜面に形成されている。なお、誘導部121におけるY方向での深さは、誘導部121の全体に亘って一様になっている。但し、誘導部121の深さは、例えば+X方向に向かうに従い徐々に浅くなっていても構わない。
【0066】
第1貫通部122は、誘導部121の頂部(+Z方向内側面と-Z方向内側面との交差部分)において、誘導部121に連通している。第1貫通部122は、第1流路板77をY方向に貫通している。本実施形態において、第1貫通部122は、濾過流路84よりも+Z方向であって、+X方向に配置されている。なお、第1貫通部122は、濾過流路84よりも+Z方向に配置されるか、濾過流路84よりも+X方向に配置されるかの何れか一方を満たしていることが好ましい。但し、第1貫通部122のZ方向及びX方向での位置は適宜変更が可能である。
【0067】
図12に示すように、排出部123は、第1流路板77において、-Y方向に開口している。排出部123は、Z方向に延在している。排出部123における+Z方向端部は、上述した第1貫通部122に連通している。
【0068】
第2貫通部124は、排出部123の-Z方向端部に連通している。第2貫通部124は、第1流路板77をY方向に貫通している。第2貫通部124と排出部123との境界部分には、サブフィルタ126が配置されている。
【0069】
リアカバー79は、Y方向から見た正面視で第1流路板77と同等の外形を有し、かつY方向の厚さが第1流路板77よりも薄い矩形板状に形成されている。リアカバー79は、第1流路板77のうち-Y方向を向く面に固定されている。すなわち、リアカバー79は、第1インク流路81(下流流路85や供給流路86)及び第1気泡排出流路120(貫通部122,124や排出部123)を-Y方向から閉塞している。なお、本実施形態において、リアカバー79は、熱伝導性に優れた金属材料(例えば、ステンレス等)により形成されている。
【0070】
リアカバー79における-Y方向を向く面には、ヒータ130が配置されている。ヒータ130は、リアカバー79を通じて第1インク流路81内を加熱することで、第1インク流路81内を流通するインクを所定の温度範囲内に保持(保温)する。
【0071】
図8に示すように、フロントカバー78は、リアカバー79と同形同大に形成された矩形板状のものである。すなわち、フロントカバー78は、Y方向の厚さが第1流路板77よりも薄くなっている。フロントカバー78は、第1流路板77のうち、+Y方向を向く面に固定されている。すなわち、フロントカバー78は、第1インク流路81(上流流路83や濾過流路84)及び第1気泡排出流路120(誘導部121や貫通部122)を+Y方向から閉塞している。
【0072】
フロントカバー78のうち、Y方向から見て供給流路86と重なり合う位置には、供給流路86を開放させる連通口132が形成されている。連通口132は、Y方向から見た正面視で供給流路86と同等の形状をなし、フロントカバー78をY方向に貫通している。
フロントカバー78のうち、Y方向から見て上流流路83の上流端(+Z方向端部)と重なり合う位置には、上流流路83を開放させる流入口133が形成されている。流入口133は、フロントカバー78をY方向に貫通している。
【0073】
フロントカバー78のうち、Y方向から見て第2貫通部124と重なり合う位置には、第2貫通部124を開放させる排出口134が形成されている。排出口134は、フロントカバー78をY方向に貫通している。
【0074】
本実施形態では、第1流路板77のみに溝状の第1インク流路81を形成した場合について説明したが、この構成のみに限らず、第1流路板77、フロントカバー78及びリアカバー79のうち少なくとも何れか一方にインク流路が形成されていれば構わない。この場合、例えば第1流路板77やフロントカバー78、リアカバー79のそれぞれに溝部を形成し、これら溝部を重ね合わせてインク流路としても構わない。
【0075】
流入ポート76は、Z方向に延びる筒状に形成されている。流入ポート76は、フロントカバー78における+Z方向端部に固定されている。流入ポート76内は、上述した流入口133を通じて第1インク流路81内に連通している。
【0076】
(第1絶縁シート)
図8に示すように、フロントカバー78における+Y方向を向く面には、第1絶縁シート135が設けられている。第1絶縁シート135は、Y方向から見た正面視で-Z方向に開口するU字状に形成されている。第1絶縁シート135は、フロントカバー78において連通口132の周囲を取り囲んでいる。具体的に、第1絶縁シート135は、連通口132に対してX方向の両側に位置する一対の外側台座部136と、外側台座部136の+Z方向端部同士を接続するブリッジ部137と、を有している。なお、本実施形態において、第1絶縁シート135は、例えばポリイミドが好適に用いられている。但し、第1絶縁シート135の材料は、絶縁性や耐インク性(耐溶出性)を有し、かつ比較的軟質な材料(例えば、樹脂材料やゴム材料)により形成されていれば適宜変更が可能である。
【0077】
外側台座部136において、Y方向から見て上述した排出口134と重なり合う位置には、排出口134を露出させる露出口140が形成されている。露出口140は、外側台座部136をY方向に貫通している。
外側台座部136において、露出口140よりも+Z方向に位置する部分には、外側台座部136をY方向に貫通する位置決め孔142が形成されている。位置決め孔142は、第1流路部材51Aから+Y方向に突出する係合ピン143を収容している。なお、位置決め孔142は、ブリッジ部137に形成しても構わない。
【0078】
ブリッジ部137は、連通口132に対して+Z方向に位置している。すなわち、フロントカバー78において、連通口132に対して-Z方向に位置する部分は、第1絶縁シート135が位置していないブランク領域141になっている。なお、第1絶縁シート135は、少なくとも非吐出領域Q2に外側台座部136のみを有していれば構わない。
【0079】
図10に示すように、上述した第1ヘッドチップ52Aは、第1カバープレート56の表面を-Y方向に向けた状態でフロントカバー78や第1絶縁シート135に固定されている。具体的に、第1カバープレート56の表面のうち、第1絶縁シート135に対向する部分は、接着剤S1を介して第1絶縁シート135に固定されている。一方、第1カバープレート56の表面のうち、ブランク領域141に対向する部分は、接着剤S1を介してフロントカバー78に直接固定されている。
【0080】
第1ヘッドチップ52Aが第1流路部材51Aに固定された状態において、駆動壁61(
図6に示す吐出領域Q1)はブランク領域141にY方向で対向する。すなわち、本実施形態において、駆動壁61とフロントカバー78との間には、接着剤S1のみが介在する(第1絶縁シート135が介在しない)ようになっている。この場合、接着剤S1は、共通インク室62及び連通口132の周囲を取り囲み、第1ヘッドチップ52Aと第1流路部材51Aとの間をシールしている。なお、本実施形態で用いる接着剤S1は、絶縁性を有し、かつ比較的軟質(第1絶縁シート135よりも軟質)な材料(例えば、シリコーン系)等が用いられている。
【0081】
第1ヘッドチップ52Aが第1流路部材51Aに固定された状態において、第1カバープレート56の共通インク室62は、連通口132を通じて供給流路86に連通する。一方、
図8に示すように、第1ヘッドチップ52Aの第1気泡抜き孔65A(
図7参照)は、露出口140及び排出口134を通じて第1気泡排出流路120(第2貫通部124)に連通する。
【0082】
(第2流路部材)
図5に示すように、第2流路部材51Bは、第2マニホールド150と、第2付勢部材151と、を有している。
第2マニホールド150は、全体としてY方向を厚さ方向とし、Z方向の長さが第1マニホールド75よりも短い板状に形成されている。
図3に示すように、第2マニホールド150は、-Z方向端部が上述した第1モジュール収容部44A内に差し込まれることで、+Z方向に起立した状態でベース部材38に保持されている。
【0083】
図5に示すように、第2マニホールド150は、第2流路板152と、流路カバー153と、を有している。
第2流路板152は、第1流路板77と同様に、金属材料(例えば、アルミニウム等)等により形成されている。第2流路板152には、第2ヘッドチップ52Bに向けてインクが流通する第2インク流路155が形成されている。
【0084】
図13は、第2流路板152を+Y方向から見た正面図である。
図13に示すように、第2インク流路155は、第2流路板152をY方向に貫通するとともに、X方向に帯状に延在している。第2インク流路155は、Y方向から見た正面視外形が共通インク室62と同等の形状に形成されている。したがって、吐出部50の連通孔73は、第2インク流路155におけるX方向の両端部において、第2インク流路155にY方向で対向している。なお、本実施形態において、第2インク流路155及び第2ヘッドチップ52Bの共通インク室62の合計容積は、上述した供給流路86及び第1ヘッドチップ52Aの共通インク室62の合計容積と同等に設定されていることが好ましい。
【0085】
図13における符号157は、第2インク流路155に連通する洗浄流路である。洗浄流路157には、メンテナンス時等において、後述するノズル孔240から吸い上げられ、吐出部50や第2インク流路155等を通過した洗浄液が流入する。洗浄流路157に流入した洗浄液は、洗浄ポート158を通じて吸引される。
【0086】
第2流路板152には、第2インク流路155に連通する第2気泡排出流路160が形成されている。第2気泡排出流路160は、排出部161と、貫通部162と、を有している。
排出部161は、第2流路板152において+Y方向に開口している。排出部161は、第2流路板152のうち、第2インク流路155に対して+Z方向に位置する部分をX方向に延在している。排出部161の上流端は、第2インク流路155の内面における+Z方向(重力方向の上方)に位置する+Z方向内側面のうち、X方向の中央部で開口している。すなわち、上述した一対の連通孔73と排出部161の上流端とのX方向での距離は、それぞれ同等に設定されている。なお、一対の連通孔73と排出部161の上流端とのX方向での距離は、適宜変更が可能である。また、連通孔73の数や位置は、適宜変更が可能である。
【0087】
排出部161の下流端は、第2インク流路155に対して+X方向に位置する部分で貫通部162に連通している。なお、本実施形態では、第2インク流路155に対して+Z方向に第2気泡排出流路160が配置される構成について説明したが、この構成のみに限られない。
【0088】
貫通部162は、第2流路板152をY方向に貫通している。貫通部162内には、サブフィルタ165が配置されている。
【0089】
第2流路板152において、第2気泡排出流路160の+Z方向に位置する部分には、センサ収容部167が形成されている。センサ収容部167は、第2流路板152において+Y方向に開口するとともに、X方向に延在している。
【0090】
図5に示すように、流路カバー153は、Y方向から見た正面視で第2流路板152と同等の外形を有し、かつY方向の厚さが第2流路板152よりも薄い矩形板状に形成されている。流路カバー153は、第2インク流路155、第2気泡排出流路160及びセンサ収容部167を+Y方向から閉塞している。なお、流路カバー153は、熱伝導性に優れた金属材料(例えば、ステンレス等)により形成されている。
【0091】
第2付勢部材151は、第2流路板152におけるX方向の両端部に一対で設けられている。各第2付勢部材151は、第2流路板152に対して+Y方向に自由端が配置された板ばね状とされている。
図3に示すように、第2付勢部材151は、第2流路部材51Bが第1モジュール収容部44Aに差し込まれた状態において、ベース本体部41におけるY方向で対向する長辺部45c,45dのうち、第1長辺部45cと第2マニホールド150との間に介在する。すなわち、第2付勢部材151は、ジェットモジュール30Aを-Y方向に向けて付勢する。
【0092】
(第2絶縁シート)
図5に示すように、第2流路板152における-Y方向を向く面には、第2絶縁シート170が設けられている。第2絶縁シート170は、上述した第1絶縁シート135と同様に、外側台座部171及びブリッジ部172有している。
【0093】
各外側台座部171のうち、+X方向に位置する外側台座部171において、Y方向から見て貫通部162と重なり合う位置には、貫通部162を露出させる露出口175が形成されている。露出口175は、外側台座部171をY方向に貫通している。
【0094】
ブリッジ部172は、第2インク流路155に対して+Z方向に位置している。すなわち、第2流路板152において、第2インク流路155に対して-Z方向に位置する部分は、第2絶縁シート170が位置していないブランク領域178(
図10参照)になっている。
ブリッジ部172において、X方向の両端部には、ブリッジ部172をY方向に貫通する位置決め孔173が形成されている。位置決め孔173は、第2流路部材51Bから-Y方向に突出する係合ピン(不図示)を収容している。なお、位置決め孔173は、外側台座部171に形成しても構わない。
【0095】
図10に示すように、上述した第2ヘッドチップ52Bは、第2カバープレート72の表面を+Y方向に向けた状態で第2流路板152や第2絶縁シート170に固定されている。具体的に、第2カバープレート72の表面のうち、第2絶縁シート170に対向する部分は、接着剤S2を介して第2絶縁シート170に固定されている。一方、第2カバープレート72の表面のうち、ブランク領域178に対向する部分は、接着剤S2を介して第2流路板152に直接固定されている。第2ヘッドチップ52Bが第2流路部材51Bに固定された状態において、駆動壁61(
図6に示す吐出領域Q1)はブランク領域178にY方向で対向する。この場合、接着剤S2は、共通インク室62及び第2インク流路155の周囲を取り囲み、第2ヘッドチップ52Bと第2流路部材51Bとの間をシールしている。なお、接着剤S1,S2には、同様の材料が用いられている。
【0096】
本実施形態では、各ヘッドチップ52A,52Bと流路部材51A,51Bとの間に絶縁シート135,170を各別に介在させる構成について説明したが、少なくとも第1ヘッドチップ52Aと第1流路部材51Aとの間に第1絶縁シート135が介在していれば構わない。
【0097】
第2ヘッドチップ52Bが第2流路部材51Bに固定された状態において、第2カバープレート72の共通インク室62は、第2インク流路155に連通する。第2ヘッドチップ52Bの第2気泡抜き孔65Bは、露出口175を通じて第2気泡排出流路160(貫通部162)に連通する。
【0098】
このように、本実施形態のジェットモジュール30Aは、第1流路部材51A及び第2流路部材51BがY方向で対向するとともに、各流路部材51A,51B間に2つのヘッドチップ52A,52Bを有する吐出部50が挟持されている。
【0099】
(FPCユニット)
図5に示すように、第1マニホールド75のフロントカバー78には、FPCユニット180が支持されている。FPCユニット180は、駆動基板181及び配線基板182を備えている。駆動基板181及び配線基板182は、それぞれフレキシブルプリント基板であって、ベースフィルムに配線パターンが形成されて構成されている。
【0100】
駆動基板181は、実装部185、チップ接続部186、センサ接続部187及び引出部188を有している。なお、駆動基板181は、実装部185にリジッド基板等を用いても構わない。
【0101】
実装部185は、フロントカバー78に支持されている。実装部185には、例えば複数のドライバ190A,190Bが実装されている。ドライバ190A,190Bは、第1ヘッドチップ52Aを駆動する第1ドライバ190A、及び第2ヘッドチップ52Bを駆動する第2ドライバ190Bである。各ドライバ190A,190Bは、X方向に直線状に並んでいる。なお、本実施形態では、1枚の駆動基板181に第1ドライバ190A及び第2ドライバ190Bがまとめて実装された構成について説明するが、この構成のみに限らず、各ドライバに対応して駆動基板を設けても構わない。
【0102】
図10に示すように、チップ接続部186は、実装部185から-Z方向に延設されている。チップ接続部186の-Z方向端部は、第1アクチュエータプレート55の+Z方向端部に圧着等により固定されている。これにより、第1ドライバ190Aと、第1ヘッドチップ52Aの駆動電極59と、がチップ接続部186を介して電気的に接続される。
【0103】
図5、
図13に示すように、センサ接続部187は、実装部185から+X方向に延設されている。センサ接続部187の先端部には、温度センサ191(例えば、サーミスタ等)が実装されている。センサ接続部187は、上述したセンサ収容部167内に収容されている。すなわち、温度センサ191は、第2流路板152を介して吐出部50のインク温度を検出する。
【0104】
引出部188は、実装部185から+Z方向に延設されている。引出部188は、インターフェイス192(
図3参照)に接続されている。インターフェイス192は、例えばインクジェットヘッド5Aの外部から供給される電力をFPCユニット180に電力を供給したり、制御信号の送受信を行ったりするためのものである。
【0105】
図5、
図10に示すように、配線基板182は、実装部185と第2ヘッドチップ52Bとの間を接続している。具体的に、配線基板182のうち、+Z方向端部が実装部185に接続され、-Z方向端部が第2アクチュエータプレート71の+Z方向端部に圧着等により固定されている。これにより、第2ドライバ190Bと、第2ヘッドチップ52Bの駆動電極59と、が配線基板182を介して電気的に接続される。
【0106】
図3、
図5に示すように、第1流路部材51Aのうち、Y方向から見て上述したドライバ190A,190Bと重なり合う位置には、放熱板195が配置されている。放熱板195は、駆動基板181をX方向に跨るように形成されている。放熱板195は、伝熱シート196を間に挟んでドライバ190A,190Bを覆っている。放熱板195のX方向の両端部は、駆動基板181よりも外側において第1流路部材51Aに固定されている。なお、放熱板195及び伝熱シート196は、熱伝導性に優れた材料により形成されている。本実施形態において、放熱板195は例えばアルミニウム等により形成され、伝熱シート196は例えばシリコーン樹脂等により形成されている。
【0107】
図3、
図4に示すように、上述した第1ジェットモジュール30Aは、第1流路部材51Aが-Y方向を向き、第2流路部材51Bが+Y方向を向いた状態で、第1モジュール収容部44A内に差し込まれている。この際、第1ジェットモジュール30Aは、第2流路部材51Bと第1短辺部45aとの間に第1付勢部材48が介在し、第2流路部材51Bと第1長辺部45cとの間に第2付勢部材151が介在した状態でベース部材38に保持されている。そのため、第1ジェットモジュール30Aは、第1付勢部材48によって-X方向(第2短辺部45bに向かう方向)に付勢され、第2付勢部材151によって-Y方向(仕切部46に向かう方向)に付勢された状態でベース部材38に保持されている。この際、吐出部50の-Z方向端面は、ベース部材38(ベース本体部41)の-Z方向端面と面一に配置されるか、ベース部材38の-Z方向端面よりも-Z方向に配置されることが好ましい。
【0108】
第2ジェットモジュール30Bは、第1流路部材51Aが+Y方向を向き、第2流路部材51Bが-Y方向を向いた状態で、第2モジュール収容部44B内に差し込まれている。すなわち、第2ジェットモジュール30Bの第1流路部材51Aは、第1ジェットモジュール30Aの第1流路部材51AにY方向で対向している。なお、各ジェットモジュール30A,30Bは、対応するモジュール収容部44A,44Bに接着剤により固定される。
【0109】
(ステーユニット)
図2に示すように、ベース部材38には、ベース部材38への搭載部品を支持するステーユニット200が設けられている。ステーユニット200は、ベース部材38から+Z方向に起立するとともに、各ジェットモジュール30A,30Bの周囲をまとめて取り囲んでいる。
【0110】
ステーユニット200のうち、X方向の両側に位置するX方向ステー(第1ステー201及び第2ステー202)と、ジェットモジュール30A,30Bと、の間にはモジュール保持機構210が介在している。なお、各モジュール保持機構210は何れも同様の構成からなるため、以下の説明では、第1ステー201と第1ジェットモジュール30Aとの間に介在するモジュール保持機構210を例にして説明する。
【0111】
第1ステー201は、ジェットモジュール30A,30Bに対して+X方向に位置している。第1ステー201は、-Z方向端部がモジュール収容部44A,44B内に差し込まれた状態で、ベース部材38から+Z方向に起立している。なお、第1ステー201は、ベース部材38へのジェットモジュール30A,30Bの組付後にベース部材38に組み付けられる。
【0112】
図14は、
図2のXIV-XIV線に沿う部分断面図である。
図3、
図14に示すように、モジュール保持機構210は、第1流路部材51Aに設けられた位置決めピン212と、第1ステー201に形成された第1収容部214と、位置決めピン212と第1ステー201との間を連結するサポート片216と、を有している。
【0113】
位置決めピン212は、第1流路板77から+X方向に突出している。なお、位置決めピン212は、ベース部材38に対してZ方向に離間した位置に配置されることが好ましい。本実施形態において、位置決めピン212は、第1流路板77におけるZ方向の中央部よりも+Z方向に位置する部分に配置されている。
【0114】
第1収容部214は、第1ステー201のうち、X方向から見た側面視で、位置決めピン212と重なり合う部分をX方向に貫通して形成されている。第1収容部214は、X方向から見た側面視で円形に形成されるとともに、内径が一様に形成されている。第1収容部214の内径は、位置決めピン212の外径よりも大きくなっている。上述した位置決めピン212は、第1収容部214を貫通して第1ステー201に対して+X方向に突出している。
【0115】
サポート片216は、Z方向を長手方向とする板材である。サポート片216は、+X方向から第1収容部214を閉塞するように第1ステー201に固定されている。具体的に、サポート片216において、X方向から見た側面視で、第1収容部214と重なり合う位置には、サポート片216をX方向に貫通する第2収容部220が形成されている。第2収容部220は、X方向から見た側面視で円形に形成されるとともに、内径が一様に形成されている。第2収容部220の内径は、第1収容部214の内径よりも小さく、位置決めピン212の外径よりも大きくなっている。上述した位置決めピン212は、第2収容部220内に挿入されている。そして、位置決めピン212の外周面が第2収容部220の内周面に接触することで、第1ステー201に対する第1ジェットモジュール30AのX方向に直交する方向での移動が規制される。
【0116】
なお、位置決めピン212は、第2収容部220に嵌合されていても構わない。第1収容部214及び第2収容部220は、側面視内形は円形に限らず、矩形状や三角形状であっても構わない。また、第1収容部214及び第2収容部220は、互いに異形状であっても構わない。このような場合においても、第2収容部220の開口面積は、第1収容部214の開口面積よりも小さく設定されている。
第2収容部220は、位置決めピン212が挿入可能であれば、サポート片216を貫通していなくても構わない。
第1収容部214や第2収容部220は、内径が徐々に変化する構成であっても構わない。
【0117】
サポート片216は、第2収容部220に対してZ方向の両側において、ビス222によって第1ステー201に固定されている。具体的に、サポート片216のうち、第2収容部220に対してZ方向の両側には、逃げ孔223が形成されている。逃げ孔223の内径は、ビス222の軸部の外径よりも大きくなっている。ビス222は、逃げ孔223を通して第1ステー201に締結されている。ビス222の頭部と第1ステー201との間に、サポート片216がX方向で挟持されることで、サポート片216が第1ステー201に固定されている。なお、ビス222の先端部は、第1流路板77に対してX方向で近接している。
【0118】
このように、本実施形態の第1ジェットモジュール30Aは、-Z方向端部が第1モジュール収容部44A内に差し込まれることでベース部材38に保持され、+Z方向端部がモジュール保持機構210によって保持されている。
【0119】
(ダンパ)
図2に示すように、ダンパ31は、ジェットモジュール30A,30Bに対して+Z方向に、各ジェットモジュール30A,30Bに対応して(インクの色に対応して)設けられている。各ダンパ31は、Y方向に並んで設けられている。なお、各ダンパ31は、供給されるインクの色以外は何れも同等の構成である。そのため、以下の説明では、一方のダンパ31(第1ジェットモジュール30Aのダンパ31)について説明し、他方のダンパ31の説明を省略する。
【0120】
ダンパ31は、第1ジェットモジュール30Aに対して+Z方向において、上述したステーユニット200に固定されている。ダンパ31は、入口ポート230と、圧力緩衝部231と、出口ポート232と、を有している。なお、ダンパ31は、インクジェットヘッド5Aとは別に設けても構わない。
【0121】
入口ポート230は、圧力緩衝部231から+Z方向に突設された筒状に形成されている。入口ポート230には、上述したインク配管16(
図1参照)が接続される。入口ポート230は、インクタンク15内のインクがインク配管16内を通して流入する。
圧力緩衝部231は、箱型に形成されている。圧力緩衝部231は、その内部に可動膜等が収納されて構成されている。圧力緩衝部231は、インクタンク15(
図1)と第1ジェットモジュール30Aとの間に配置されて、入口ポート230を通してダンパ31に供給されるインクの圧力変動を吸収する。
【0122】
出口ポート232は、圧力緩衝部231における入口ポート230と対角となる位置から-Z方向に突設されている。出口ポート232内には、圧力緩衝部231内から排出されたインクが流入する。出口ポート232には、第1ジェットモジュール30Aの流入ポート76が接続されている。
【0123】
Y方向で対向するダンパ31同士の間に位置する部分には、上述したインターフェイス192が配置されている。インターフェイス192は、ステーユニット200に支持されている。
【0124】
(ノズルプレート)
上述したノズルプレート32は、ポリイミド等の樹脂材料により形成されている。ノズルプレート32は、ベース本体部41の-Z方向端面や吐出部50の-Z方向端面(モジュール収容部44A,44Bから露出した部分)に接着剤等を介して固定されている。ノズルプレート32は、各ジェットモジュール30A,30Bの吐出部50を-Z方向からまとめて覆っている。
【0125】
図6、
図7に示すように、ノズルプレート32には、ノズルプレート32をZ方向に貫通するノズル孔240が形成されている。ノズル孔240は、各ヘッドチップ52A,52Bの吐出チャネル57にZ方向で対向する位置に各別に形成されている。
【0126】
ノズルプレート32において、上述した気泡抜き孔65A,65BとZ方向で対向する位置には、ノズルプレート32をZ方向に貫通する排出孔241A,241Bが形成されている。すなわち、本実施形態において、ノズル孔240及び排出孔241A,241Bは、ノズルプレート32の吐出面(-Z方向を向く面)上でそれぞれ開口している。本実施形態の排出孔241A,241Bは、第1気泡抜き孔65Aに連通する第1排出孔241A、及び第2気泡抜き孔65Bに連通する第2排出孔241Bである。第2排出孔241Bの内径(開口面積)は、第1排出孔241Aの内径よりも小さくなっている。但し、各排出孔241A,241Bの内径は、適宜変更が可能である。また、各排出孔241A,241Bは、丸孔である場合に限られない。
【0127】
なお、ノズル孔240及び排出孔241A,241B内のインクは、ノズル孔240及び排出孔241A,241Bそれぞれの内面で作用する表面張力等により適正(凹面状)なメニスカスが形成される。すなわち、本実施形態のプリンタ1では、インクタンク15の液面とメニスカスの液面との水頭差により、吐出チャネル57内の圧力を所望の負圧に保持している。これにより、上述したメニスカスが保持され、インクが不意に漏れ出ないようになっている。
【0128】
なお、ノズルプレート32は、樹脂材料に限らず、金属材料(ステンレス等)で形成してもよく、樹脂材料と金属材料の積層構造としても構わない。本実施形態では、1枚のノズルプレート32が各ジェットモジュール30A,30Bをまとめて覆う構成について説明したが、この構成のみに限らず、複数枚のノズルプレート32で各ジェットモジュール30A,30Bを個別に覆う構成でも構わない。
【0129】
(ノズルガード)
図2に示すように、ノズルガード33は、例えばステンレス等の板材にプレス加工が施されて形成されている。ノズルガード33は、ノズルプレート32を間に挟んだ状態で、ベース本体部41を-Z方向から覆っている。
【0130】
ノズルガード33のうち、各ジェットモジュール30A,30Bの吐出部50とZ方向で対向する位置には、ノズルプレート32を外部に露出させる露出孔245が形成されている。露出孔245は、ノズルガード33をZ方向に貫通するとともに、X方向に延在するスリット状に形成されている。露出孔245は、各ジェットモジュール30A,30Bに対応してY方向で間隔をあけて2列形成されている。上述したノズル孔240及び排出孔241A,241Bは、露出孔245を通じてインクジェットヘッド5Aの外部に連通している。なお、ノズルガード33には、インクの充填時や印刷動作の停止時等に、ノズルガード33に-Z方向から密着して、上述したノズル孔240及び排出孔241A,241Bを封止するキャップが装着される構成であっても構わない。
【0131】
[プリンタの動作方法]
次に、上述したプリンタ1を利用して、被記録媒体Pに情報を記録する方法について説明する。
図1に示すように、プリンタ1を作動させると、搬送機構2,3のグリットローラ11,13が回転することで、これらグリットローラ11,13及びピンチローラ12,14間を被記録媒体Pが+X方向に搬送される。また、これと同時に駆動モータ28がプーリ26を回転させて無端ベルト27を走行させる。これにより、キャリッジ23がガイドレール21,22にガイドされながらY方向に往復移動する。
この間に、各インクジェットヘッド5A,5Bにおいて、ヘッドチップ52A,52Bの駆動電極59(
図7参照)に駆動電圧を印加する。これにより、駆動壁61に厚みすべり変形を生じさせ、吐出チャネル57内に充填されたインクに圧力波を発生させる。この圧力波により、吐出チャネル57の内圧が高まり、インクがノズル孔240を通して吐出される。そして、インクが被記録媒体P上に着弾することで、各種情報が被記録媒体P上に記録される。
【0132】
ここで、インクジェットヘッド5Aの第1ジェットモジュール30A内でのインクの流れについて説明する。
本実施形態において、インクタンク15からインクジェットヘッド5Aに供給されるインクは、
図3に示すように、ダンパ31を通過した後、流入ポート76を通してジェットモジュール30Aの第1マニホールド75内に流入する。
【0133】
図10の実線矢印で示すように、第1マニホールド75内に流入したインクは、上流流路83を通過した後、濾過流路84のフィルタ入口流路95内に+Z方向から流入する。
図11の実線矢印で示すように、フィルタ入口流路95内に流入したインクは、フィルタ入口流路95からフィルタ出口流路96に向かう過程で、メインフィルタ99を通過する。これにより、インク内に含まれる異物や気泡がメインフィルタ99で捕捉される。フィルタ出口流路96内に到達したインクは、貯留壁部100によって-Y方向(下流流路85)への流れが塞き止められる。これにより、フィルタ出口流路96がインクで満たされる。
【0134】
フィルタ出口流路96に満たされたインクは、連通流路102に達すると、連通流路102を通じて下流流路85内に流入する。インクは、下流流路85内を-Z方向に流通した後、供給流路86を+Y方向に向けて流れる。供給流路86内を流れるインクは、連通口132を通じて第1ヘッドチップ52Aの共通インク室62内に流入する。第1ヘッドチップ52Aの共通インク室62内に流入したインクのうち、一部のインクは第1ヘッドチップ52Aにおいて、スリット63を通過して吐出チャネル57に流入した後、ノズル孔240を通じて吐出される。
【0135】
一方、第1ヘッドチップ52Aの共通インク室62内に流入したインクのうち、一部のインクは、共通インク室62におけるX方向の両端部において連通孔73内に流入する。その後、インクは、連通孔73を通じて第2ヘッドチップ52Bの共通インク室62内に流入する。第2ヘッドチップ52Bの共通インク室62内に流入したインクは、第2インク流路155内も満たしながら、X方向の内側に向けて流通する。その後、第2ヘッドチップ52B内に流入したインクは、スリット63を通過して吐出チャネル57に流入した後、ノズル孔240を通じて吐出される。
【0136】
ところで、
図9の破線矢印で示すように、第1インク流路81内において、フィルタ入口流路95内(メインフィルタ99に対して上流側)に滞留する気泡は、第1気泡排出流路120を通じて第1ジェットモジュール30Aの外部に排出される。具体的に、メインフィルタ99で捕捉された気泡や、フィルタ入口流路95内に滞留する気泡は、インクがフィルタ入口流路95内をX方向の両側に流通する過程でX方向の両側に押し出される。その後、気泡は、誘導部121に進入した後、誘導部121内をX方向の外側、かつ+Z方向に移動する。そして、気泡は、第1貫通部122を通じて-Y方向に移動する。その後、気泡は排出部123を通じて-Z方向に移動した後、サブフィルタ126(
図12参照)を通じて第2貫通部124に進入する。第2貫通部124に進入した気泡は、
図6に示すように第1ヘッドチップ52Aの第1気泡抜き孔65Aに進入した後、ノズルプレート32の第1排出孔241Aを通して外部に排出される。
【0137】
一方、第2ヘッドチップ52Bの共通インク室62内や、第2流路部材51B(第2インク流路155)に気泡が滞留している場合、気泡は第2気泡排出流路160を通じて第1ジェットモジュール30Aの外部に排出される。具体的に、第2インク流路155等に滞留する気泡は、排出部161を通じて貫通部162に到達する。貫通部162に到達した気泡は、サブフィルタ165を通過した後、
図6に示す第2ヘッドチップ52Bの第2気泡抜き孔65Bに進入する。その後、気泡は、ノズルプレート32の第2排出孔241Bを通して外部に排出される。
【0138】
このように、本実施形態において、第1流路部材51Aには、第1インク流路81の内外を連通させる第1気泡排出流路120が形成され、第2流路部材51Aには、第2インク流路155の内外を連通させる第2気泡排出流路160が形成されている構成とした。
この構成によれば、第1インク流路81及び第2インク流路155で滞留する気泡を、第1気泡排出流路120及び第2気泡排出流路160を通じてそれぞれ排出できる。そのため、各ヘッドチップ52A,52B内に気泡が進入するのを抑制し、各ヘッドチップ52A,52Bでのインクの充填性を向上させることができる。これにより、吐出安定性を向上させることができる。
【0139】
本実施形態では、ノズル孔240及び排出孔241A,241Bがノズルプレート32における同一面上(吐出面)で開口する構成とした。
この構成によれば、例えばインクの充填時や印刷動作の停止時に、ノズル孔240及び排出孔241A,241Bをキャップによって封止する場合等において、ノズル孔240及び排出孔241A,241Bを1つのキャップによってまとめて覆うことが可能になる。そのため、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0140】
ところで、上述したように第2インク流路155には、第1インク流路81内のインクの一部が連通孔73を通して供給される。この場合、第2インク流路155は、第1インク流路81に対して下流側に位置するため、第1インク流路81内の圧力に比べて高圧になり易い。
そこで、本実施形態によれば、第2排出孔241Bの内径を第1排出孔241Aの内径よりも小さくすることで、第2排出孔241Bの内面で作用する表面張力を第1排出孔241Aの内面で作用する表面張力よりも高くすることができる。これにより、第2排出孔241B内でメニスカスを安定させ易くなり、第2排出孔241Bを通じてインクが不意に漏れ出るのを抑制できる。
また、第2排出孔241B内でメニスカスが安定することで、インクジェットヘッド5A,5Bの使用時(インク吐出時等)に例えば第2ヘッドチップ52B内で発生する負圧によってメニスカスが破壊されて、第2排出孔241Bを通じて第2ヘッドチップ52B内に外気(空気)が進入するのを抑制できる。そのため、第2排出孔241Bから進入した空気が気泡となって第2ヘッドチップ52B内に滞留するのを抑制し、吐出安定性を向上させることができる。
【0141】
本実施形態では、一対の連通孔73と排出部161の上流端とのX方向での距離が、それぞれ同等に設定されている構成とした。
この構成によれば、第2インク流路155内を各連通孔73からX方向の中央部にインクが流通する過程で、第2インク流路155内に滞留する気泡をX方向の両側から第2気泡排出流路160に向けて均等に押し出すことができる。これにより、第2ヘッドチップ52B内に気泡が進入するのをより確実に抑制できる。
【0142】
本実施形態では、第1気泡排出流路120及び第2気泡排出流路160に、サブフィルタ126,165がそれぞれ配置されている構成とした。
この構成によれば、気泡排出流路120,160内の流路抵抗をサブフィルタ126,165により増加させることで、上流からのインクの流れやノズル孔240からのインクの吐出等に起因する第2気泡排出流路160内の圧力変動によって、第2排出孔241B内のメニスカスが壊れることを抑制することができる。これにより、排出孔241A,241B内でメニスカスを安定させ易くなり、排出孔241A,241Bを通じてインクが不意に漏れ出るのを抑制できる。なお、本実施形態では、各排出孔241A,241Bの内径を異ならせて表面張力を調整する構成について説明したが、この構成のみに限らず、各サブフィルタ126,165の流路抵抗を異ならせて表面張力を調整しても構わない。
【0143】
本実施形態では、上述したインクジェットヘッド5A,5Bを備えているので、吐出性能に優れたプリンタ1を提供できる。
【0144】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、液体噴射装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であっても構わない。
【0145】
上述した実施形態では、ベース部材38上にジェットモジュール30A,30Bが2つ搭載された構成について説明したが、この構成のみに限られない。ベース部材38に搭載するジェットモジュールの数は、1つでも3つ以上の複数でも構わない。
【0146】
上述した実施形態では、エッジシュートのヘッドチップについて説明したが、これに限られない。例えば、吐出チャネルにおける延在方向の中央部からインクを吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのヘッドチップに本発明を適用しても構わない。
また、インクに加わる圧力の方向と、インクの吐出方向と、を同一方向とした、いわゆるルーフシュートタイプのヘッドチップに本発明を適用しても構わない。
【0147】
上述した実施形態では、各ヘッドチップ52A,52B自体に連通孔73が形成されている構成について説明したが、この構成のみに限られない。各ヘッドチップ52A,52Bとは別に各ヘッドチップ52A,52B間を連通させる連通流路を設けても構わない。
上述した実施形態では、各インク流路81,155間が連通孔73を通じて連通する構成について説明したが、この構成のみに限らず、各流路部材51A,51Bそれぞれに流入ポートを設け、各流路部材51A,51Bに独立してインクを供給する構成であっても構わない。
【0148】
上述した実施形態では、Z方向が重力方向に一致する構成について説明したが、この構成のみに限らず、Z方向を水平方向に一致させても構わない。
上述した実施形態では、排出孔241A,241Bがノズルプレート32に形成された構成について説明したが、この構成のみに限られない。例えば、各流路部材51A,51Bやヘッドチップ52A,52B等に排出孔を形成しても構わない。
【0149】
上述した実施形態では、1つのジェットモジュールに2つのヘッドチップ52A,52Bが搭載された構成について説明したが、この構成のみに限られない。すなわち、1つのジェットモジュールに1つのヘッドチップが搭載された構成であっても構わない。
【0150】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0151】
1…インクジェットプリンタ(液体噴射装置)
5A,5B…インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
15…インクタンク(供給源)
32…ノズルプレート(噴射孔プレート)
51A…第1流路部材
51B…第2流路部材
52A…第1ヘッドチップ
52B…第2ヘッドチップ
57…吐出チャネル(第1圧力変動室、第2圧力変動室)
62…共通インク室(液体室)
71…第2アクチュエータプレート
72…第2カバープレート
73…連通孔(連通流路)
76…流入ポート
81…第1インク流路(第1液体流路)
120…第1気泡排出流路
126.165…サブフィルタ
155…第2インク流路(第2液体流路)
160…第2気泡排出流路
241A…第1排出孔
241B…第2排出孔
Q1…吐出領域(噴射領域)