(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】耐火間仕切壁
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20220104BHJP
E04B 2/76 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
E04B1/94 L
E04B2/76
(21)【出願番号】P 2017147756
(22)【出願日】2017-07-31
【審査請求日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2016234977
(32)【優先日】2016-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000199245
【氏名又は名称】チヨダウーテ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新田 亙
(72)【発明者】
【氏名】宮田 英憲
(72)【発明者】
【氏名】久保 仁
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-052333(JP,A)
【文献】特開2000-064455(JP,A)
【文献】特開2007-032275(JP,A)
【文献】実開平02-001341(JP,U)
【文献】特開2017-2481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 ー 1/99
E04B 2/72 - 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の天井躯体に固定された上側ランナーと、
前記建築物の床躯体に固定された下側ランナーと、
前記上側ランナーと前記下側ランナーとの間において、互いに間隔を保ちつつ整列した状態で立設された複数のスタッドと、
各々が前記スタッドに固定され、かつ前記スタッドを間においた両側にそれぞれ1枚ずつ配される一対の壁面部材とを有する片面1枚両面張り構造を備え、
前記壁面部材は、上下方向で隣り合った端部同士が突付けられた状態で並べられると共に、水平方向で隣り合った端部同士が突付けられた状態で並べられる複数の面材を有し、
複数の前記スタッドを横切るような帯状をなし、かつ上下方向で隣り合った前記端部同士の間に形成される横目地を裏側から覆う形で前記端部と共に前記スタッドに取り付けられる帯状本体部と、前記帯状本体部から前記面材の表側に向かって起立し、前記横目地に裏側から挿入される挿入部とを有する金属製の継ぎ目部材と、を備え、
上下方向で隣り合った前記面材の前記端部同士は、各々が、前記帯状本体部の延びる方向において互いに間隔を保ちつつ列状に並ぶ形で配された複数の固定部材によってそれぞれ前記帯状本体部に固定されることにより、互いに前記帯状本体部を介して連結され、
水平方向で隣り合った前記面材の前記端部同士は、前記スタッドと重なりつつ、前記スタッドに固定され、
前記帯状本体部は、上下方向で隣り合った前記面材の前記端部同士のうち、上側に配される一方の前記面材の前記端部に取り付けられる上側帯状部と、下側に配される他方の前記面材の前記端部に取り付けられる下側帯状部とを有し、
前記面材は、石膏ボードからな
る耐火間仕切壁。
【請求項2】
隣り合った前記固定部材の前記間隔は、200mm~400mmに設定される請求項1に記載の耐火間仕切壁。
【請求項3】
前記挿入部の前記帯状本体部からの高さは、上下方向で隣り合った前記端部同士の間から表側にはみ出さないように設定されている請求項1又は2に記載の耐火間仕切壁。
【請求項4】
前記継ぎ目部材は、1枚の金属製の板材が折り曲げ加工されたものからなり、
前記挿入部は、前記板材が山折りにされた部分からなり、
前記上側帯状部は、前記板材のうち、前記山折りにされた部分の上側の基部に接続され、
前記下側帯状部は、前記板材のうち、前記山折りにされた部分の下側の基部に接続される請求項1~3の何れか一項に記載の耐火間仕切壁。
【請求項5】
前記帯状本体部の前記上側帯状部と前記下側帯状部との間に形成される角度が180℃よりも小さく、かつ90°以上の角度に設定される請求項1~4の何れか一項に記載の耐火間仕切壁。
【請求項6】
前記石膏ボードは、板状の芯材と、前記芯材の表面と共に前記芯材の上端に貼り付けられる表側原紙と、前記芯材の裏面に貼り付けられる裏側原紙とを有し、
前記表側原紙の端部は、前記芯材の前記上端を越えて前記芯材の前記裏面に到達するように、前記芯材の前記裏面の上端に貼り付けられ、
前記芯材の裏面側に、前記裏側原紙の端部が前記表側原紙の前記端部と重なる段差部が形成される請求項1~5の何れか一項に記載の耐火間仕切壁。
【請求項7】
耐火構造として要求される耐火時間が1時間である請求項1~6の何れか一項に記載の耐火間仕切壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火間仕切壁に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の内部空間を区画する耐火間仕切壁の構造として、特許文献1に示されるようなものが知られている。この種の耐火間仕切壁は、建築物の天井スラブ(躯体)に固定された上側ランナーと、床スラブ(躯体)に固定された下側ランナーとの間で整列した状態で立設された複数本のスタッドと、各々がスタッドに固定され、かつスタッドを挟むように互いに対向する一対の壁面部材とを備えている。
【0003】
壁面部材は、耐火間仕切壁の壁面を構成する部材であり、スタッドに固定される複数の下張り面材と、それらの下張り面材に外側から重ねられる複数の上張り面材とを備えている。下張り面材及び上張り面材は、それぞれ耐火性に優れる石膏ボード等からなり、それぞれ複数のものが建て込まれて1つの壁面を構成するように並べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の耐火間仕切壁は、耐火性に優れるものの、スタッドを間においた両側に、壁面部材としてそれぞれ面材を2枚重ねの状態で使用する、いわゆる片面2枚両面張り構造であった。そのため、従来の耐火間仕切壁は、部品点数が多く、作業性(加工作業、取付作業等)やコスト等に改善の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、片面1枚両面張り構造であり、かつ耐火性に優れる耐火間仕切壁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る耐火間仕切壁は、建築物の天井躯体に固定された上側ランナーと、前記建築物の床躯体に固定された下側ランナーと、前記上側ランナーと前記下側ランナーとの間において、互いに間隔を保ちつつ整列した状態で立設された複数のスタッドと、各々が前記スタッドに固定され、かつ前記スタッドを間においた両側にそれぞれ配される一対の壁面部材とを備え、前記壁面部材は、上下方向で隣り合った端部同士が突付けられた状態で並べられる複数の面材を有し、複数の前記スタッドを横切るような帯状をなし、かつ上下方向で隣り合った前記端部同士の間に形成される横目地を裏側から覆う形で前記端部と共に前記スタッドに取り付けられる帯状本体部と、前記帯状本体部から前記面材の表側に向かって起立し、前記横目地に裏側から挿入される挿入部とを有する継ぎ目部材と、を備える。
【0008】
前記耐火間仕切壁において、上下方向で隣り合った前記面材の前記端部同士は、各々が、前記帯状本体部の延びる方向において互いに間隔を保ちつつ列状に並ぶ形で配された複数の固定部材によってそれぞれ前記帯状本体部に固定されることにより、互いに連結されることが好ましい。
【0009】
前記耐火間仕切壁において、隣り合った前記固定部材の前記間隔は、200mm~400mmに設定されることが好ましい。
【0010】
前記耐火間仕切壁において、前記挿入部の前記帯状本体部からの高さは、上下方向で隣り合った前記端部同士の間から表側にはみ出さないように設定されていることが好ましい。
【0011】
前記耐火間仕切壁において、前記継ぎ目部材は、1枚の金属製の板材が折り曲げ加工されたものからなることが好ましい。
【0012】
前記耐火間仕切壁において、前記面材が、石膏ボードからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、片面1枚両面張り構造であり、かつ耐火性に優れる耐火間仕切壁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図7】継ぎ目部材が上下方向で隣り合った面材の端部同士に裏側から取り付けられた状態を示す拡大断面図
【
図9】他の実施形態に係る継ぎ目部材を短手方向で切断した断面図
【
図10】
図9の継ぎ目部材が面材の長辺側の端部に取り付けられる工程を模式的に表した説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1を、
図1~
図7を参照しつつ説明する。
図1は、実施形態1の耐火間仕切壁1の部分破断斜視図である。耐火間仕切壁1は、建築物(例えば、鉄筋コンクリート造のビル)の内部空間を区画する壁状の構造物である。
【0016】
耐火間仕切壁1は、
図1に示されるように、建築物の天井躯体(天井スラブ)2と、床躯体(床スラブ)3との間に形成される。耐火間仕切壁1は、天井躯体2の表面(天井面)に配設されている上側ランナー4と、床躯体3の表面(床面)に配設されている下側ランナー5を介して、建築物内部に取り付けられる。
【0017】
上側ランナー4及び下側ランナー5は、金属製の板材(例えば、板厚0.4mmの溶融亜鉛メッキ鋼板)の両側縁が起立するように折り曲げられ、かつ内側に溝が形成されるように断面コの字型に加工されたものからなる。上側ランナー4及び下側ランナー5は、全体的には、水平方向に沿って延びた長手状をなしている。上側ランナー4は、溝が下方を向く形で、天井躯体2の表面にランナー固定ピン等の係止具を利用して固定されている。これに対し、下側ランナー5は、溝が床躯体2の表面にランナー固定ピン等の係止具を利用して固定されている。上側ランナー4及び下側ランナー5は、互いに対向しつつ平行に並ぶ形で、それぞれ天井躯体2の表面及び床躯体3の表面に配されている。
【0018】
また、耐火間仕切壁1は、複数のスタッド6を備えている。スタッド6は、建築物の天井躯体2と床躯体3との間において、互いに間隔を保ちつつ整列した状態で立設されている。スタッド6は、金属製の板材(例えば、板厚0.4mmの溶融亜鉛メッキ鋼板)が略コの字型に加工されてなる部材であり、全体的には、鉛直方向(上下方向)に沿って延びた長手状をなしている。なお、スタッド6の上端は、上側ランナー4の溝内に挿入された状態で、天井躯体2側で位置決めされ、また、スタッド6の下端は、下側ランナー5の溝内に挿入され、かつ床躯体3上に載せられた状態で位置決めされている。このようにして複数のスタッド6は、等間隔で一列に並んだ状態で、天井躯体2と床躯体3との間に立設されている。
【0019】
なお、
図1に示されるように、スタッド6の開口部分には、スペーサ7が取り付けられている。1つのスタッド6に対し、複数のスペーサ7が長手方向に沿って所定間隔を置く形で設けられている。各スタッド6において、スペーサ7の高さ位置が同じになるように設定されている。また、一列に並んだ各スタッド6を横切る形で、長手状の振れ止め8が形成されている。振れ止め8は、各スタッド6の同じ高さ位置の各スペーサ7に固定されつつ、各スタッド6の内部を貫通する形で水平方向に沿って配されている。
【0020】
上記のように一列に並んだ状態のスタッド6には、一対の壁面部材9A,9Bが固定されている。なお、
図1には、説明の便宜上、一対の壁面部材9A,9Bのうち、手前側に配された一方の壁面部材9Aのみが示されている。
図2は、
図1のA-A’線断面図である。
図2には、耐火間仕切壁1を水平方向に切断した断面図が示されている。
図2に示されるように、スタッド6を間においた両側にそれぞれ壁面部材9A,9Bが配されている。壁面部材9A,9Bは、それぞれスタッド6に固定されている。
【0021】
なお、
図3は、
図1のB-B’線断面図であり、
図4は、
図1のC-C’線断面図であり、
図5は、
図1のD-D’線断面図である。
【0022】
壁面部材9A,9Bは、それぞれ複数の面材91が1つの壁面を構成するように建て込まれたものからなる。つまり、各壁面部材9A,9Bは、1つの壁面を構成するように並べられた複数の面材91の集まりからなる。なお、本明細書では、壁面部材9A,9Bにおいて、スタッド6を向く側を、裏側(内側)とし、その逆側を、表側(外側)とする。
【0023】
面材91は、長方形の板状部材である。本実施形態の面材91は、長辺の長さが1820mmm、短辺の長さが606mm、及び厚みが25mmの強化石膏ボード(石膏ボードの一例)からなる。なお、面材91の長辺側の端部91a,91bは、いわゆるベベルエッジとなっており、表側の角部が面取りされている。これに対し、面材91の短辺側の端部91c,91dは、いわゆるスクエアエッジとなっており、真っ直ぐ平坦な形状となっている。
【0024】
壁面部材9A,9Bを構成する各面材91は、固定部材(例えば、タッピンねじ、ビス)10を利用して、スタッド6に固定されている。固定部材10は、面材91の表側から裏側に向かって差し込まれている。面材91は、スタッド6に対して、いわゆる横張りの状態で固定されている。つまり、面材91は、長辺側が水平方向に沿い、かつ短辺側が鉛直方向に沿う形で、スタッド6に固定される。本実施形態の場合、1枚の面材91を固定するのに、3つのスタッド6が利用される。3つの並んだスタッド6のうち、一方の端に配されたスタッド6に対して、面材91の一方の短辺側の端部91cが固定され、他方の端に配されたスタッド6に対して、他方の短辺側の端部91dが固定される。そして、中央に配されたスタッド6に対して、面材91の長辺側の中央部分が固定される。
【0025】
図1及び
図4等に示されるように、壁面部材9Aを構成する面材91同士は、上下方向で隣り合った端部91a,91b同士が突付けられた状態で並べられている。また、
図2に示されるように、面材91同士は、左右方向で隣り合った端部91c,91d同士も突付けられた状態で並べられている。
【0026】
図3に示されるように、壁面部材9A,9Bの各上端と、天井躯体2との間の隙間には、端部処理材(例えば、アクリル系樹脂のシーリング材)が充填されている。また、
図5に示されるように、壁面部材9A,9Bの各下端と、床躯体3との間の隙間にも、端部処理材(例えば、アクリル系樹脂のシーリング材)が充填されている。
【0027】
なお、壁面部材9Aと壁面部材9Bとの間には、断熱材(例えば、ガラスウール)13が充填されている。なお、
図5において、断熱材13の一部のみを示しているが、実際には、壁面部材9Bの内側の壁面を全面的に覆うように壁面部材9Aと壁面部材9Bとの間に設けられている。
【0028】
耐火間仕切壁1において、上下方向で隣り合った面材91の端部91a,91b同士は、固定部材10を利用して、継ぎ目部材14と共にスタッド6に固定されている。継ぎ目部材14は、全体的には、水平方向に沿って延びた長手状(帯状)の部材であり、隣り合ったスタッド6の間に差し渡される形で取り付けられる。本実施形態の場合、継ぎ目部材14は、一列に並んだスタッド6を横切る形で、水平方向に沿って配されている。
【0029】
継ぎ目部材14は、壁面部材9A,9Bの各横目地Xに沿う形で設けられている。そのため、一方の壁面部材9A(又は壁面部材9B)に対して、複数の継ぎ目部材14が上下方向で平行に並ぶ形で、割り当てられている。継ぎ目部材14は、スタッド6と壁面部材9Aとの間、及びスタッド6と壁面部材9Bとの間で挟まれる形で、スタッド6及び各壁面部材9A,9Bに固定されている。
【0030】
継ぎ目部材14は、金属製の板材(例えば、板厚0.5mmの溶融亜鉛メッキ鋼板)が所定形状に加工されたものからなる。
図6は、継ぎ目部材14を短手方向で切断した断面図である。
【0031】
継ぎ目部材14は、帯状本体部140と、挿入部141とを備えている。帯状本体部140は、水平方向に沿って長く延びた帯状の部分であり、隣り合ったスタッド6の間に差し渡される形で、各スタッド6に取り付けられる部分である。挿入部141は、帯状本体部140から起立し、横目地X(つまり、上下方向で隣り合った面材91の端部91a,91同士の間)に裏側から挿入される部分である。
【0032】
図6に示されるように、継ぎ目部材14の帯状本体部140は、上下方向で隣り合った面材91の端部91a,91bのうち、上側の端部91bに宛がわれる上側帯状部140aと、下側の端部91aに宛がわれる下側帯状部140bとを備えている。本実施形態の場合、上側帯状部140aと下側帯状部140bとは、同じ幅(継ぎ目部材14の短手方向における長さ)に設定されている。なお、他の実施形態では、上側帯状部140a及び下側帯状部140bの各幅は、互いに異なっていてもよい。
【0033】
本実施形態の継ぎ目部材14は、スタッド6及び面材91の各端部91a,91bに取り付けられる前の状態において、上側帯状部140aと下側帯状部140bとの間に形成される角度θ1が、180°に設定されている。つまり、上側帯状部140a及び下側帯状部140bは、真っ直ぐに延びた状態となっている。なお、本実施形態の場合、挿入部141は、継ぎ目部材14の短手方向の中央に設けられている。
【0034】
本実施形態の継ぎ目部材14は、1枚の金属製の板材が折り曲げ加工されたものからなる。そのため、継ぎ目部材14の挿入部141は、金属製の板材が山折りにされた部分からなる。このような構成の挿入部141であると、例えば、上側帯状部140aと下側帯状部140bとが互いに離れるように継ぎ目部材14に力が加えられた際に、挿入部141は、上側帯状部140a及び下側帯状部140bに引っ張られて若干、拡がることができる。そのため、面材(強化石膏ボード)91の水分が蒸発する等して、面材91が収縮した場合でも、継ぎ目部材14は面材91に対して隙間なく密着した状態となる。
【0035】
図7は、継ぎ目部材14が上下方向で隣り合った面材91の端部91a,91b同士に裏側から取り付けられた状態を示す拡大断面図である。継ぎ目部材14は、固定部材(例えば、タッピンねじ、ビス)10によって、上下方向で隣接する面材91の長辺側の端部91a,91bにそれぞれ面材91の裏側から固定されている。そして更に、継ぎ目部材14は、前記端部91a,91bに固定された状態で、前記固定部材10によってスタッド6に固定されている。つまり、固定部材10によって、面材91の長辺側の端部91a,91bと、継ぎ目部材14の帯状本体部140は、スタッド6に対して共締めされている。固定部材10は、面材91の表側から裏側に向かって差し込まれている。
【0036】
また、
図7に示されるように、上下方向で隣り合った面材91の端部91a,91b同士は、それぞれ表側から裏側に向かって互いに離れる傾斜端面191a,191bを有する。
図7に示されるように、上側の端部91bは、面材91の裏側から表側に向かって下るように傾斜する傾斜端面191bを有し、下側の端部91aは、面材91の裏側から表側に向かって上るように傾斜する傾斜端面191aを有する。そのため、互いに突付けられた上側の端部91bと下側の端部91aとの間には、面材91の裏側から表側に向かって幅が徐々に狭くなった隙間が形成されており、この隙間が横目地Xとなっている。なお、上側の端部91bと下側の端部91aとは、表側の部分が互いに突き当たっているため、表側からは、横目地Xは目立たなくなっている。
【0037】
なお、継ぎ目部材14の挿入部141は、帯状本体部140からの高さが、上記端部91a,91bの間から表側にはみ出さないように設定されている。
【0038】
図1に示されるように、左右方向で隣り合った面材91の端部91c,91dの間には、縦目地Yが形成される。
【0039】
継ぎ目部材14をスタッド6等に取り付ける場合、先ず、下側に配される面材91の中央、及び下側がスタッド6に取り付けられる。次いで、取付けられた面材91の上端(つまり、長辺側の端部91a)の裏側とスタッド6との間に、継ぎ目部材14の下側帯状部140bを差し込み、その状態で、固定部材10により、面材91の上端と継ぎ目部材14の下側帯状部140bとがスタッド6に固定される。その後、上側に配される面材91の下端(つまり、長辺側の端部91b)の裏側とスタッド6の間に、継ぎ目部材14の上側帯状部140aが挟まれる形で、上側の面材91を配置し、その状態で、固定部材10により、面材91の下端と継ぎ目部材14の上側帯状部140aとがスタッド6に固定される。このような作業を繰り返すことで、継ぎ目部材14をスタッド6等に取り付けることができる。
【0040】
以上のような耐火間仕切壁1は、横目地Xに継ぎ目部材14が配設されているため、耐火性に優れている。耐火間仕切壁1の耐火性は、後述する試験によって評価される。なお、耐火間仕切壁は、非耐力壁であり、耐火構造として要求される耐火時間は、1時間である。
【0041】
また、本実施形態の耐火間仕切壁1は、横目地Xに継ぎ目部材14が配設されているため、遮音性にも優れている。
【0042】
〔実施形態2〕
次いで、本発明の実施形態2を、
図8を参照しつつ説明する。
図8は、実施形態2の耐火間仕切壁1Aの部分破断斜視図である。本実施形態の耐火間仕切壁1Aは、実施形態1の耐火間仕切壁1に、面材91の左右方向(水平方向)に延びた端部を、継ぎ目部材14に固定するための固定部材(タッピンねじ、ビス)10Bを複数個追加したものからなる。なお、本実施形態の耐火間仕切壁1Aの基本的な構成は、実施形態1と同様であり、
図8において、実施形態1と同じ符号で示した。ただし、本実施形態では、固定部材10(例えば、タッピンねじ、ビス)のうち、面材91や継ぎ目部材14を、スタッド6に対して固定するものを、「固定部材10A」と表し、面材91を継ぎ目部材14に対して固定するものを、「固定部材10B」と表す。
【0043】
本実施形態の耐火間仕切壁1Aでは、面材91うち、スタッド6と重なる部分(例えば、鉛直方向に沿った短辺側の端部91c、91d、面材91の中央側の部分)が、実施形態1と同様、固定部材10Aを利用して、スタッド6に固定されている。そして更に、本実施形態では、面材91のうち、スタッド6とは重ならないものの、継ぎ目部材14の帯状本体部140と重なる部分(面材91の長辺側の端部)が、固定部材10Bを利用して、継ぎ目部材14に固定されている。このように、面材91が固定部材10Bを利用して、継ぎ目部材14に固定されると、上下方向で隣り合った面材91同士が互いに連結されて、それらが1つの大きな面材(壁)となることにより、耐火間仕切壁1Aの耐火性能が更に向上する。
【0044】
固定部材10(固定部材10A、固定部材10B)は、継ぎ目部材14(帯状本体部140)が延びる方向(水平方向)において、互いに間隔を保ちつつ列状に並ぶ形で複数個設けられている。上側帯状部140aには、継ぎ目部材14の上側に配される一方の面材91の下側の端部91bが、帯状本体部140の延びる方向に沿って列状に並ぶ複数個の固定部材(タッピンねじ、ビス)10Bにより固定されている。また、下側帯状部140bには、継ぎ目部材14の下側に配される他方の面材91の上側の端部91aが、前記方向に列状に並ぶ複数個の固定部材(タッピンねじ、ビス)10Bにより固定されている。上側帯状部140aに固定される複数個の固定部材10B、及び下側帯状部140bに固定される複数個の固定部材10Bは、共に同じ間隔(ピッチ)で配設されている。なお、固定部材10Bと、それに隣接するスタッド6に固定される固定部材10Aとの間隔も、固定部材10B同士が隣り合う上記間隔と同じに設定されている。
【0045】
隣り合った固定部材10の間隔は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、200mm~400mmに設定することが好ましい。固定部材10の間隔が、200mmよりも小さいと、面材91にビス留めした際に形成された複数のクラック同士が加熱時に成長して互いに繋がり、面材91の端部が継ぎ目部材14に拘束される力が弱まることで、耐火性能が劣る結果となる。これに対し、固定部材10の間隔が400mmよりも大きいと、面材91同士の結束力が弱くなるため、耐火性能が劣る結果となる。固定部材10の間隔が、200mmよりも小さいと、音が直接、伝わる部分が増えるため、遮音性が悪くなる。
【0046】
なお、隣り合った固定部材10の間隔とは、1枚の面材91におけるものであり、隣り合った固定部材10B同士の間隔、及び隣り合った固定部材10Aと固定部材10Bとの間隔である。このように、隣り合った固定部材10の間隔を上記のように設定することで、耐火間仕切壁1Aの耐火性能が更に向上する。
【0047】
なお、左右方向(水平方向)で隣り合った面材91の端部91c、91d同士は、共にスタッド6と重なるように配されている。そのため、このような面材91の端部91c、91d同士に設けられた固定部材10A,10Aの間隔は、
図8に示されるように通常、狭くなる。
【0048】
以上のように、上下方向で隣り合った面材91同士を、固定部材10Bを利用して継ぎ目部材14に固定して、互いに連結することで、それらが1つの大きな面材(壁)となる。その結果、耐火間仕切壁1Aが、耐火試験等において加熱された場合でも、1つの大きな壁となった複数個の面材91が、全体として加熱変形を吸収することができる。しかも、各々の面材91が加熱収縮して、隣り合った面材91の間の隙間が大きくなっても、その隙間は、固定部材10Bにより固定された継ぎ目部材14により確実に塞がれるため、前記隙間から炎や熱気が漏出することが抑制される。このような本実施形態の耐火間仕切壁1Aは、実施形態1と比べて、更に優れた耐火性能を備えている。
【0049】
なお、上下方向で隣り合った面材91同士を、ビス等の固定部材10Bを利用して、継ぎ目部材14に緊結することにより、壁全体の剛性が高くなるため、遮音性能も向上する。
【実施例】
【0050】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
上述した実施形態1と同様、厚みが25mmの強化石膏ボード(比重:0.76)を面材として利用した片側1枚張り構造の耐火間仕切壁を作製した。
【0052】
〔耐火性試験〕
実施例1の耐火間仕切壁を、1200mm角の耐火炉(加熱炉)に設置し、炉内バーナの燃焼作動により炉内温度を標準加熱曲線に従って上昇させて、実施例1の耐火間仕切壁を1時間加熱した。そして、加熱開始から1時間後、バーナに面しない非加熱側(裏面側)の壁(壁面部材)の縦目地(スタッド上)、横目地、縦目地と横目地の交差部、面材の目地以外の表面(一般部)における温度を測定した。そして、炉内貫通の有無を目視で確認した。裏面上昇温度の最高温度が、初期温度(23℃)から+180℃以下であり、裏面上昇温度の平均温度が初期温度(23℃)から+140℃以下であり、かつ炉内貫通がなかった場合、耐火性あり(記号:〇)と判定した。これに対し、裏面上昇温度の最高温度が初期温度(23℃)から+180℃を超えた場合、裏面上昇温度の平均温度が初期温度(23℃)から+140℃を超えた場合、又は炉内貫通があった場合、耐火性なし(記号:×)と判定した。結果は、表1に示した。
【0053】
(実施例2~4)
使用する面材を、表1に示されるものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、耐火間仕切壁を作製した。
【0054】
(比較例1~4)
継ぎ目部材を備えていないこと以外は、実施例1~4と同様にして、比較例1~4の間仕切壁を作製した。
【0055】
〔耐火性の評価〕
実施例2~4の耐火間仕切壁及び比較例1~4の間仕切壁について、実施例1と同様の耐火性試験を行った。試験結果は、表1に示した。
【0056】
【0057】
表1に示されるように、横目地に継ぎ目部材が割り当てられている実施例1~4の耐火間仕切壁では、裏面上昇温度の最高温度が、初期温度(23℃)から+180℃以下であり、裏面上昇温度の平均温度が初期温度(23℃)から+140℃以下であり、かつ炉内貫通が発生せず、何れも耐火性に優れる結果となった。これに対し、比較例1~3の間仕切壁では、裏面上昇温度の最高温度が、初期温度(23℃)から+180℃以下であり、裏面上昇温度の平均温度が初期温度(23℃)から+140℃以下であったものの、炉内貫通が発生する結果となった。また、比較例4の間仕切壁では、裏面上昇温度の最高温度が、初期温度(23℃)から+180℃を超え、裏面上昇温度の平均温度が初期温度(23℃)から+140℃を超え、かつ炉内貫通が発生する結果となった。
【0058】
(実施例5)
面材として、厚みが25mmの強化石膏ボード(比重:0.76)を利用して、上述した実施形態2と同様、上下方向で隣り合った面材の端部同士を、継ぎ目部材にビス留め(緊結)することで互いに連結した、片面1枚張り構造の耐火間仕切壁を作製した。なお、ビスピッチは、333mmに設定した。
【0059】
(実施例6)
実施例5と比較するために、面材の端部を継ぎ目部材に対してビス留めしない実施形態1と同様の片面1枚張り構造の耐火間仕切壁を作製した。
【0060】
〔耐火性試験〕
耐火炉(加熱炉)として、3000mm×3350mm角の大型試験炉を使用したこと以外は、実施例1等と同様にして、実施例5,6の耐火間仕切壁の耐火性試験を行った。なお、耐火性の評価は、加熱を1時間(60分)行った後と、続けて、加熱をしない状態で、3時間放置した後にそれぞれ行った。結果は、表2に示した。
【0061】
【0062】
表2に示されるように、上下方向で隣り合った面材の端部同士を、継ぎ目部材にビス留め(緊結)することで、面材同士が連結した実施例5の耐火間仕切壁では、裏面上昇温度の最高温度が、初期温度(23℃)から+180℃以下であり、裏面上昇温度の平均温度が初期温度(23℃)から+140℃以下であり、かつ炉内貫通が発生せず、何れも耐火性に優れる結果となった。また、面材の端部が継ぎ目部材にビス留めされていない実施例6の耐火間仕切壁でも、裏面上昇温度の平均温度が初期温度(23℃)から+140℃以下であり、かつ炉内貫通が発生せず、何れも耐火性に優れる結果となった。特に、実施例5は、継ぎ目部材がビス留めされていることにより、裏面上昇温度を低く抑えられることが確かめられた。
【0063】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0064】
(1)上記実施形態では、複数のスタッド6が一列に真っ直ぐ整列した状態で立設されていたが、本発明はこれに限られず、他の実施形態においては、例えば、複数のスタッドが所謂、千鳥配置で整列した状態で立設されてもよい。つまり、複数のスタッドを、左右交互に位置をずらして配置させてもよい。
【0065】
(2)上記実施形態のスタッド6は、上述したよう形状を備えていたが、本発明はこれに限られず、例えば、角スタッド等の一般的な形状の部材が用いられてもよい。また、スタッドの板厚についても、本発明は上述したものに限られず、例えば、0.45mm、0.6mm、0.8mm、1.2mm、1.6mm、2.3mm、3.2mm、4.0mm、4.5mm、6.0mm等が挙げられる。
【0066】
(3)上記実施形態では、面材91が強化石膏ボードより構成されていたが、本発明はこれに限られず、例えば、石膏ボード、硬質石膏ボード等が面材として使用されてもよい。
【0067】
(4)上記実施形態において、継ぎ目部材14の上側帯状部140aと下側帯状部140bとの間に形成される角度θ1が180°に設定されていたが、本発明はこれに限られない。本発明において、継ぎ目部材の上側帯状部と下側帯状部との間の角度は、例えば、約180°(例えば、180°±10°)であってもよいし、90°~180°であってもよい。
【0068】
(5)
図9、他の実施形態に係る継ぎ目部材14Aを短手方向で切断した断面図である。
図9には、
図6に示される実施形態1の継ぎ目部材14に対応する部分が示されている。継ぎ目部材14Aの基本的な構造は、実施形態1の継ぎ目部材14と同様であり、金属製の板材が所定形状に折り曲げ加工されたものからなり、帯状本体部140Aと、挿入部141Aとを備えている。ただし、
図9に示される他の実施形態の継ぎ目部材14Aは、スタッド6等に取り付けられる前の状態において、帯状本体部140Aの上側帯状部140Aaと下側帯状部140Abとの間に形成される角度θ2が180°よりも小さく、かつ90°以下の角度に設定されている(90≦θ2(°)<180)。
【0069】
図10は、
図9の継ぎ目部材14Aが面材91の長辺側の端部91aに取り付けられる工程を模式的に表した説明図である。
図9に示されるように、前記角度θ2が上記のような範囲であると、継ぎ目部材14Aを面材91の端部91aに取り付ける際に、下側帯状部140Abが、面材91の裏面にある裏側原紙912と干渉することが抑制される。強化石膏ボードからなる面材91は、板状の芯材913と、芯材913の表側に貼り付けされる表側原紙911と、芯材913の裏側に貼り付けられる裏側原紙912とからなる。表側原紙911は、芯材913の表側の面のみならず、芯材913の上端(長辺側の端部)にも貼り付けられている。そして、表側原紙911の端部は、芯材913の裏面にまで到達しており、裏面の上端に貼り付けられている。これに対し、裏側原紙912は、端部が表側原紙911の端部に上側から重なり、かつ芯材913の裏面からはみ出さないように、芯材913の裏面に貼り付けられている。このように、強化石膏ボードからなる面材91の裏面には、裏側原紙912の端部が表側原紙911の端部と重なって段差が形成されている。このような面材91の端部91aに対して、上記継ぎ目部材14Aが取り付けられる際(特に、スタッドと面材との間に下側帯状部140Abが挿入される場合)、下側帯状部140Ab(及び上側帯状部140a)が、面材91の上記段差と干渉することが抑制される。また、上記のように角度θ2が設定されると、継ぎ目部材14Aの帯状本体部140Aが面材91の端部とスタッド6との間で挟まれる形でスタッド6及び面材91の端部に固定した場合、帯状本体部140Aの弾性力により、上側帯状部140Aa及び下側帯状部140Abがそれぞれ面材91の端部に裏側から押し付けられる。その結果、継ぎ目部材14Aの帯状本体部140Aと、面材91の端部との間に隙間が生じ難くなり、耐火間仕切壁の耐火性、遮音性等が向上する。
【0070】
(6)上記実施形態の継ぎ目部材14は、金属製の板材が所定形状に折り曲げ加工されたものであったが、本発明はこれに限られず、例えば、片方の端部が起立するように折り曲げられている2枚の金属製の板材を用意し、それらの折り曲げられた部分を重ね合わせて溶接したものを継ぎ目部材として利用してもよい。なお、上記実施形態のように、継ぎ目部材が、1枚の金属製の板材が所定形状に折り曲げ加工されたものからなると、継ぎ目部材自体に隙間が形成されず、強度的、及び耐火性能的に優れる。
【0071】
(7)上記実施形態の面材(強化石膏ボード)の長辺側の端部は、ベベルエッジとなっていたが、本発明の面材の端部はこれに限られず、例えば、スクエアエッジ、テーパーエッジ、ラウンドエッジ等の一般的な端部形状であってもよい。また、短辺側の端部についても、一般的な端部形状であればよい。
【0072】
(8)他の実施形態の耐火間仕切壁では、縦目地Y、及び横目地Xに対して、表側から目地処理材が貼り付けられてもよい。
【0073】
(9)上記実施形態の耐火間仕切壁では、面材は、いわゆる横張り状態でスタッドに固定されていたが、本発明はこれに限られず、いわゆる縦張り状態でスタッドに固定されてもよい。面材を縦張り状態でスタッドに固定した場合、継ぎ目部材は、面材の短辺側の端部に沿って(つまり、水平方向に沿って)取り付けられる。
【符号の説明】
【0074】
1…耐火間仕切壁、2…天井躯体、3…床躯体、4…上側ランナー、5…下側ランナー、6…スタッド、7…スペーサ、8…振れ止め、9A,9B…壁面部材、91…面材、91a,91b…面材の長辺側の端部、91c,91d…面材の短辺側の端部、191a,191b…傾斜端面(面材の長辺側の端面)、10…固定部材、13…断熱材、14…継ぎ目部材、140…帯状本体部、140a…上側帯状部、140b…下側帯状部、141…挿入部、X…横目地、Y…縦目地