(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】真空包装装置、および、真空包装装置内の除菌方法
(51)【国際特許分類】
B65B 31/02 20060101AFI20220104BHJP
B65B 55/24 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B65B31/02 B
B65B55/24
(21)【出願番号】P 2017182152
(22)【出願日】2017-09-22
【審査請求日】2020-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】517164556
【氏名又は名称】株式会社TOSEI
(74)【代理人】
【識別番号】100098073
【氏名又は名称】津久井 照保
(72)【発明者】
【氏名】浅利 達也
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 義昭
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第206202829(CN,U)
【文献】特表2013-537433(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0047850(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0236621(US,A1)
【文献】特許第4945272(JP,B2)
【文献】特開平08-141054(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0183112(US,A1)
【文献】中国実用新案第206481920(CN,U)
【文献】特開昭62-287821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 31/02
B65B 55/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被包装物を収納した包装袋を収容するチャンバーと、該チャンバー内を減圧して包装袋内の脱気を行う真空ポンプと、チャンバー内に設けられ、包装袋の開口部を封止する封止装置と、を備えた真空包装装置において、
前記チャンバー内
を大気開放する大気開放工程でチャンバー内に外気を導入
する外気導入路と、
前記外気導入路に連通して設けられ、除菌作用を有するイオンを発生するイオン発生装置と、を備え
、
前記大気開放工程で前記イオンを外気導入路に供給して外気とともにチャンバー内へ導入して該チャンバー内を除菌することを特徴とする真空包装装置。
【請求項2】
前記外気導入路には、イオン発生装置が発生させたイオンを貯留可能なイオン貯留部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の真空包装装置。
【請求項3】
前記イオンを当該真空包装装置の外方へ放出するイオン放出装置を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空包装装置。
【請求項4】
少なくとも前記イオン発生装置およびイオン放出装置を制御する制御装置を備え、
該制御装置は、イオン発生装置およびイオン放出装置を予め設定された駆動予定スケジュールに従って駆動するイオン放出予約駆動手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の真空包装装置。
【請求項5】
被包装物を収納する包装袋を収容した状態でチャンバー内を減圧して包装袋内の脱気を行い、この状態で包装袋の被包装物投入口を封止して、被包装物を真空包装する真空包装装置内の除菌方法であって、
減圧された前記チャンバー内の大気開放時に、除菌作用を有するイオンを外気とともにチャンバー内へ導入して該チャンバー内を除菌することを特徴とする真空包装装置内の除菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被包装物を収納する包装袋を収容した状態でチャンバー内を減圧して包装袋内の脱気を行い、この状態で包装袋の被包装物投入口を封止して、被包装物を真空包装する真空包装装置、および、真空包装装置内の除菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等の被包装物を包装する包装方法の一つとして真空包装が知られている。真空包装は、真空包装装置のチャンバー内に被包装物が収納された包装袋を収容し、チャンバー内を減圧して包装袋内を脱気し、この状態で包装袋の被包装物投入口をヒートシール等により封止して行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、食品の包装作業に使用する真空包装装置においては、包装作業前にチャンバー内(詳しくは、食品を入れた包装袋が収容されるチャンバー内)を予め除菌して清潔にしておくことが好適である。そこで、包装作業前に除菌シート等でチャンバー内を拭くことが考えられるが、チャンバー内に複雑な凹凸構造があると、チャンバー内を隅々まで拭いて除菌することが困難である。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、チャンバー内を隅々まで除菌し易い真空包装装置、および、真空包装装置内の除菌方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のものは、被包装物を収納した包装袋を収容するチャンバーと、該チャンバー内を減圧して包装袋内の脱気を行う真空ポンプと、チャンバー内に設けられ、包装袋の開口部を封止する封止装置と、を備えた真空包装装置において、
前記チャンバー内を大気開放する大気開放工程でチャンバー内に外気を導入する外気導入路と、
前記外気導入路に連通して設けられ、除菌作用を有するイオンを発生するイオン発生装置と、を備え、
前記大気開放工程で前記イオンを外気導入路に供給して外気とともにチャンバー内へ導入して該チャンバー内を除菌することを特徴とする真空包装装置である。
【0007】
請求項2に記載のものは、前記外気導入路には、イオン発生装置が発生させたイオンを貯留可能なイオン貯留部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の真空包装装置である。
【0008】
請求項3に記載のものは、前記イオンを当該真空包装装置の外方へ放出するイオン放出装置を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空包装装置である。
【0009】
請求項4に記載のものは、少なくとも前記イオン発生装置およびイオン放出装置を制御する制御装置を備え、
該制御装置は、イオン発生装置およびイオン放出装置を予め設定された駆動予定スケジュールに従って駆動するイオン放出予約駆動手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の真空包装装置である。
【0010】
請求項5に記載のものは、被包装物を収納する包装袋を収容した状態でチャンバー内を減圧して包装袋内の脱気を行い、この状態で包装袋の被包装物投入口を封止して、被包装物を真空包装する真空包装装置内の除菌方法であって、
減圧された前記チャンバー内の大気開放時に、除菌作用を有するイオンを外気とともにチャンバー内へ導入して該チャンバー内を除菌することを特徴とする真空包装装置内の除菌方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
請求項1および請求項5に記載の発明によれば、減圧状態(脱気状態)のチャンバー内にイオンを外気とともに導入することで、チャンバー内を大気圧に戻すことができると同時に、イオンをチャンバー内の全体に亘って満遍なく十分に分散させることができ、チャンバー内を隅々まで除菌し易い。また、イオンのチャンバー内への移動(導入)に特別な移動機構を備える必要がなく、チャンバー内の除菌を実現する構造が複雑になることを抑えることができる。さらに、真空包装作業の終了直前にチャンバー内の除菌を済ませることができ、次回の真空包装作業を行う前の準備において、チャンバー内の除菌を行う手間を省くことができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、チャンバー内の大気開放前に予めイオン発生装置からイオンを発生させて貯留することができる。これにより、イオン発生装置の駆動タイミングと、チャンバー内の大気開放のタイミングとを揃える必要がなく、真空包装装置の運転設定の自由度を増すことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、真空包装装置が設置された場所の周辺に対しても、真空包装装置を用いて除菌を実行することができる。したがって、真空包装装置の周辺を除菌するための機器を真空包装装置とは別個に準備する必要がない。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、真空包装作業を行わない時間帯であったとしても、真空包装装置を用いて周辺の除菌を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】真空包装装置の制御系統を示すブロック図である。
【
図4】イオン放出装置を備えた真空包装装置の説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は制御系統の一部を示すブロック図である。
【
図5】真空包装装置におけるチャンバー内除菌運転のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
真空包装装置1は、
図1および
図2に示すように、被包装物を収容した包装袋Bを収納するチャンバー2と、該チャンバー2内を減圧して包装袋B内の脱気を行う脱気装置3と、チャンバー2の内部に設けられ、包装袋Bの開口部(被包装物投入口)を閉じて封止する封止装置5と、包装袋B内に窒素ガス等のガスを吹き込むガス充填装置6と、この真空包装装置1を制御する制御装置7とを備えて構成されている。
【0017】
チャンバー2は、上面に包装袋Bを載置可能な本体部2aと、該本体部2aを上方から閉塞する蓋部2bとから構成された耐圧容器であり、蓋部2bを上下方向に回動して開閉可能とし、蓋部2bと本体部2aとの当接部分にシール材10を設けてチャンバー2内の気密性を維持できるように構成されている。また、本体部2aに吸気口12を設けて脱気装置3へ接続し、脱気装置3を駆動するとチャンバー2内の空気が吸気口12から吸引されてチャンバー2内が減圧されるように構成されている。そして、本体部2aの上面のうち、吸気口12と封止装置5との間を包装袋Bの載置箇所に設定し、該載置箇所には平板状のスペーサー13を必要に応じて載置可能とし、該スペーサー13の高さ(積層枚数)を調節して包装袋Bの開口部と封止装置5との上下位置を揃えることができるように構成されている。
【0018】
また、チャンバー2内に設けられた封止装置5は、本体部2a側に固定された横長角材状の下側ヒーターブロック15と、蓋部2bの内側に昇降可能な状態で設けられた横長角材状の上側ヒーターブロック16とを備え、上側ヒーターブロック16を閉成用エアバッグ17の膨縮駆動により昇降可能とし、下側ヒーターブロック15と下降状態の上側ヒーターブロック16との間に包装袋Bを挟持して包装袋Bの開口部を閉成するように構成されている。そして、閉成用エアバッグ17と脱気装置3とを投入口閉成駆動流路18により接続し、投入口閉成駆動流路18には、三方弁で構成された投入口閉成用電磁弁19の接続口の1つを接続し、残りの接続口の一方を脱気装置3の一部に接続し、他方を大気中に開放している。そして、投入口閉成用電磁弁19を操作することにより、閉成用エアバッグ17と脱気装置3とを連通して閉成用エアバッグ17を脱気装置3により吸気して収縮すると、閉成用エアバッグ17が上側ヒーターブロック16を下降させて下側ヒーターブロック15へ圧接し、閉成用エアバッグ17内を大気開放して膨張復帰すると、上側ヒーターブロック16が下側ヒーターブロック15から上方へ離間するように構成されている。なお、本発明では、包装袋Bの開口部を閉成する封止装置5の駆動源として閉成用エアバッグ17を用いることに限定されない。要は、包装袋Bの開口部を閉成することができれば、どのような駆動源を用いてもよい。例えば、空気圧駆動のシリンダーを封止装置5の駆動源として用いてもよい。
【0019】
さらに、下側ヒーターブロック15の上側ヒーターブロック16側(上部)および上側ヒーターブロック16の下側ヒーターブロック15側(下部)にはシール用ヒーター20をそれぞれ備え、上側ヒーターブロック16と下側ヒーターブロック15との間に包装袋Bを挟持した状態でシール用ヒーター20に通電すると、包装袋Bの開口部が閉成した状態で加熱圧着(熱溶着)されて封止されるように構成されている。
【0020】
脱気装置3は、真空ポンプ25と、該真空ポンプ25とチャンバー2とを連通可能な状態で接続する吸気流路26とを備えて構成されており、吸気流路26の途中には、真空ポンプ25とチャンバー2との連通を許容したり閉止したりする真空電磁弁(真空弁)27を設けている。また、吸気流路26のうち真空電磁弁27と真空ポンプ25との間に位置する箇所には閉成分岐ポート28と真空破壊分岐ポート29とを設け、該閉成分岐ポート28には投入口閉成用電磁弁19の接続口の1つを接続し、真空破壊分岐ポート29には真空破壊弁30を接続し、該真空破壊弁30の操作により、吸気流路26のうち真空電磁弁27と真空ポンプ25との間の真空状態(減圧状態)を解除できるように構成されている。
【0021】
さらに、吸気流路26のうち真空電磁弁27とチャンバー2との間に位置する箇所には外気導入路33を分岐し、該外気導入路33の途中には、真空破壊弁30と連動する真空開放弁(外気導入弁)34を接続し、外気導入路33のうち真空開放弁34を挟んでチャンバー2とは反対側の端部(
図1中、下端部となる大気開放端部)にはイオン供給ユニット36を備えている。そして、真空開放弁34を開放すると、イオン供給ユニット36および外気導入路33を介して外気(具体的には、真空包装装置1の周辺の空気)をチャンバー2内へ導入して、チャンバー2内を減圧状態から大気圧に戻せる(大気開放できる)ように構成されている。
【0022】
イオン供給ユニット36は、除菌作用を有するイオンを発生可能なイオン発生装置37と、該イオン発生装置37が発生させたイオンを空気中に浮遊する状態で貯留可能なイオン貯留部38とを備えて構成されている。そして、イオン貯留部38に外気導入路33の大気開放端部を接続してイオン貯留部38内と外気導入路33とを連通し、イオン貯留部38のうち外気導入路33の接続箇所とは異なる箇所には外気取入口38aを設け、該外気取入口38aには除塵フィルター付きのサイレンサー(消音器)39を備えている。なお、イオン発生装置37が発生させるイオンは、少なくとも除菌作用を有するものであればどのような構成であってもよい。例えば、ナノイー、プラズマクラスターイオン、ピコイオン(いずれも登録商標)等のように、空気中の酸素や水分(霧)を帯電させてイオン化し、空気中を浮遊して分散されるもの(空中浮遊物質)であってもよい。また、除菌作用とは異なる作用(例えば、除塵作用や消臭作用)を併せて有するものであってもよい。さらに、イオン貯留部38は、これらイオンを一時貯留することができれば、どのような原理、構成であってもよい。
【0023】
包装袋Bにガスを充填するガス充填装置6は、チャンバー2内にブラケット41で支持されたガスノズル42と、ガスを貯留するガスボンベ43と、ガスノズル42とガスボンベ43とを接続するガス供給路44とを備えて構成されており、ガス供給路44の途中には、ガスボンベ43からガスノズル42へのガスの供給を許容したり停止したりするガス用電磁弁45を接続している。また、ガスノズル42をチャンバー2内のうち封止装置5を挟んでスペーサー13とは反対側に配置し、ガスノズル42の先端を上側ヒーターブロック16と下側ヒーターブロック15との間に向けて延設し、ガスノズル42およびブラケット41の一部に包装袋Bの開口部を被せ、この状態でガスノズル42からガスを噴出して包装袋B内へ充填するように構成されている。
【0024】
制御装置7は、
図2に示すように、真空包装装置1の制御を行うワンチップマイクロコンピュータ50と、各信号の入出力処理を行うインターフェイス回路51と、真空包装装置1の動作タイミングを管理するタイマー(シールタイマー,シール冷却タイマー等(
図3参照))52等から構成されている。そして、インターフェイス回路51には、真空包装装置1の操作パネル(図示せず)に設けられた電源スイッチ54、圧力や時間の設定スイッチ55や、イオン発生装置37を駆動・停止するためのスイッチ(イオン発生装置スイッチ)56等の各種操作スイッチ、チャンバー2内の気圧を検出する気圧検出センサー(真空センサー)57、ガス充填装置6からチャンバー2内へ供給されたガスを検出するガスセンサー58、蓋部2bの開閉状態を検出する蓋開閉検出センサー59からの信号が入力されている。また、インターフェイス回路51からは、真空ポンプ25、真空電磁弁27、投入口閉成用電磁弁19、真空開放弁34、真空破壊弁30、シール用ヒーター20、ガス用電磁弁45、各種報知音を発するブザー60、各種状態を表示する表示器61に制御信号を出力する。
【0025】
次に、上記した構成からなる真空包装装置1において被包装物を真空包装する手順について、
図3に示すタイミングチャートに基づき説明する。なお、真空包装開始前の状態(常態)では、真空ポンプ25およびイオン発生装置37を駆動せず、真空電磁弁27、投入口閉成用電磁弁19の全接続口を閉状態とし、真空破壊弁30および真空開放弁34を開状態とする。また、投入口閉成駆動流路18内および閉成用エアバッグ17内が減圧されておらず、上側ヒーターブロック16が上昇した状態とする。
【0026】
まず、被包装物を入れた包装袋Bをチャンバー2内にセットするセット工程(準備工程)を行う。セット工程では、作業員が真空包装装置1の電源スイッチ54をオンに設定し、蓋部2bを開けた状態で、包装袋Bを本体部2a上(詳しくは、本体部2aに配置されたスペーサー13上)に載せるとともに包装袋Bの開口部を下側ヒーターブロック15上に載せ、ガスノズル42を包装袋Bの開口内に臨ませる。包装袋Bをセットした後、手で蓋部2bを閉じると、蓋開閉検出センサー59が蓋部2bの閉成状態を検出して真空包装装置1の制御装置7に信号を送る。なお、真空包装装置1に電源が供給されている状態(電源スイッチ54がオンの状態)であれば、どのタイミングであってもイオン発生装置スイッチ56をオンにすると、イオン発生装置37が駆動を開始する(言い換えると、イオン貯留部38においてイオンが貯留され始める)。
図3に示すタイミングチャートにおいては、作業員が電源スイッチ54のオン操作とともにイオン発生装置スイッチ56のオン操作を実行している。この結果、イオン供給ユニット36では、真空包装開始(真空包装装置1の使用開始)からイオン貯留部38内にイオンを貯留し始めている。
【0027】
制御装置7が蓋部2bの閉成状態の検出信号を受信したならば、減圧工程に移行する。減圧工程では、制御装置7がチャンバー2内の減圧操作を制御する。具体的には、チャンバー2と真空ポンプ25との間の真空電磁弁27を開くとともに、真空開放弁34および真空破壊弁30を閉じ、この状態で真空ポンプ25を駆動してチャンバー2内の減圧を開始し、包装袋B内の脱気を行う。
【0028】
チャンバー2内を減圧し続け、チャンバー2内が予め設定された所定の圧力まで減圧されたことが気圧検出センサー57により検出されたならば、封止工程に移行する。封止工程では、制御装置7が減圧工程時に開いた真空電磁弁27を閉じてチャンバー2内の減圧状態を保つ。真空電磁弁27を閉じてから予め設定されたホールド時間が経過すると、予め設定されたガス充填時間に亘ってガス用電磁弁45を開いて、ガスノズル42からガスを噴出して包装袋B内へ充填する。そして、ガス充填時間が経過すると、投入口閉成用電磁弁19を開き、閉成用エアバッグ17を収縮することにより上側ヒーターブロック16を下降させ、上側ヒーターブロック16と下側ヒーターブロック15との間に包装袋Bを挟持して開口部を閉成する。包装袋Bの開口部を閉成したならば、この状態で各シール用ヒーター20に通電し、開口部を閉成状態で加熱してヒートシール(封止)する。
【0029】
包装袋Bの開口部のヒートシールが終了したならば、各シール用ヒーター20の通電を停止し、予め設定されたシール冷却時間が経過するまで封止装置5による挟持状態を維持する。そして、シール冷却時間の経過後、制御装置7は、封止工程を終了して大気開放工程を実行する。大気開放工程では、真空開放弁34および真空破壊弁30を開いてチャンバー2内および吸気流路26内を大気開放する。このとき、チャンバー2内に外気を導入する外気導入路33およびイオン供給ユニット36においては、減圧状態のチャンバー2内と真空包装装置1の周辺の大気圧との圧力差により、外気(空気)がサイレンサー39を通ってイオン貯留部38内に流入する。そして、イオン貯留部38に貯留されていたイオンが外気とともに外気導入路33を介してチャンバー2内に導入される。この結果、チャンバー2内に封止装置5等の凹凸構造が複雑に配置されていたとしても、チャンバー内を大気圧に戻すことができると同時に、除菌作用を有するイオンをチャンバー2内の全体に亘って満遍なく十分に分散させることができ、チャンバー2内を隅々まで除菌し易い。また、イオンのチャンバー2内への移動(導入)に特別な移動機構を備える必要がなく、チャンバー2内の除菌を実現する構造が複雑になることを抑えることができる。さらに、真空包装作業の終了直前にチャンバー2内の除菌を済ませることができ、次回の真空包装作業を行う前の準備において、チャンバー2内の除菌を行う手間を省くことができる。
【0030】
さらに、外気導入路33にはイオン貯留部38(イオン供給ユニット36)を備えたので、チャンバー2内の大気開放前に予めイオン発生装置37からイオンを発生させて貯留することができる。これにより、イオン発生装置37の駆動タイミングと、チャンバー2内の大気開放のタイミングとを揃える必要がなく、真空包装装置1の運転設定の自由度を増すことができる。
【0031】
真空開放弁34および真空破壊弁30を開放してから(言い換えると、大気開放工程を開始してから)予め設定された大気開放時間が経過すると、制御装置7が投入口閉成用電磁弁19を操作して、閉成用エアバッグ17内を大気開放することにより上側ヒーターブロック16を上昇させて下側ヒーターブロック15から離間させ、封止状態の包装袋Bの挟持を解除する。さらに、ブザー60から報知音を発生させて真空包装の終了を報知し、作業員が蓋部2bを開いて蓋開閉検出センサー59が蓋部2bの開放状態を検出すると、制御装置7が蓋開閉検出センサー59からの検出信号に基づいて真空包装装置1の運転制御を終了する。
【0032】
ところで、上記実施形態では、イオン貯留部38を備えてイオン発生装置37が発生したイオンを貯留可能としたが、本発明はこれに限定されない。要は、チャンバー2の大気開放時にイオンを外気とともにチャンバー2内へ導入してチャンバー2内を除菌することができれば、どのような構成を採用してもよい。例えば、イオン貯留部を備えずにイオン発生装置を外気導入路へ直接連通し、大気開放工程の開始のタイミングでイオン発生装置を駆動してイオンを外気導入路へ供給するように構成してもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、イオン発生装置37が発生したイオンをチャンバー2内の除菌にのみ用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図4に示す第2実施形態の真空包装装置においては、基本的な構成は第1実施形態と同じであるが、イオンを真空包装装置の外方へ放出する構成を備え、チャンバー内の除菌だけではなく、真空包装装置の周辺に対する除菌も実行可能である点で異なる。具体的に説明すると、第2実施形態の真空包装装置1′は、
図4(a)および(b)に示すように、当該真空包装装置1′の基部となる筐体65の上面にチャンバー2を配置し、該筐体65内に脱気装置3、ガス充填装置6、制御装置7、イオン放出装置66等を収容している。
【0034】
イオン放出装置66は、筐体65の左右両側部にそれぞれ開設されたイオン放出口67と、各イオン放出口67に配置されたイオン放出ファン68と、各イオン放出口67とイオン貯留部38とを連通するイオン放出路69と、該イオン放出路69の途中に設けられた放出路開閉弁70とを備えて構成されている。そして、放出路開閉弁70を開いてイオン放出ファン68を駆動すると、イオン貯留部38内のイオンをイオン放出路69へ通してイオン放出口67から真空包装装置1′の外方へ放出し、イオン放出ファン68を停止した状態では、放出路開閉弁70を閉じて外気がイオン放出口67からイオン貯留部38内へ侵入すること(言い換えると、外気がサイレンサー(除塵フィルター)39を介さずにイオン貯留部38内やチャンバー2内へ侵入すること)を阻止するように構成されている。さらに、
図4(c)に示すように、イオン放出ファン68および放出路開閉弁70を制御装置7のインターフェイス回路51へ接続して、制御装置7からの駆動信号に基づいてそれぞれ駆動可能としている。そして、制御装置7には、タイマー52の一種であるイオン放出予約駆動タイマー71を備え、このイオン放出予約駆動タイマー71の作用に基づき、イオン発生装置37、イオン放出ファン68、放出路開閉弁70を予め設定された駆動予定スケジュールに従って駆動することができるように構成されている。
【0035】
このような構成を備えた第2実施形態の真空包装装置1′においては、作業員による設定スイッチの操作に基づいて、真空包装作業中や、真空包装作業時間外にイオンをイオン放出口67から真空包装装置1′の外方へ放出することができる。例えば、真空包装作業中にイオンをイオン放出口67から放出する場合には、作業員が所望のタイミングで設定スイッチ55やイオン発生装置スイッチ56を操作して制御装置7にイオン放出指示信号を入力する。すると、制御装置7がこの信号に基づいてイオン発生装置37の駆動(既に駆動中の場合は駆動の継続)、放出路開閉弁70の開放動作、イオン放出ファン68の駆動を実行して、イオンをイオン放出路69、イオン放出口67へ通して真空包装装置1′の外方へ放出する。そして、作業員が所望のタイミングで設定スイッチ55やイオン発生装置スイッチ56を操作して制御装置7にイオン放出停止指示信号を入力すると、制御装置7がこの信号に基づいてイオン発生装置37の駆動停止(別個の信号でイオン貯留部38内でのイオンの貯留動作が指示されている場合は駆動停止せず)、放出路開閉弁70の閉成動作、イオン放出ファン68の停止を実行して、イオンの放出を停止する。
【0036】
また、真空包装作業時間外にイオンをイオン放出口67から放出する場合には、作業員が設定スイッチ55を操作してイオン発生装置37およびイオン放出装置66の駆動予定スケジュール、言い換えるとイオン放出の実行希望スケジュール(実行前待機時間、実行継続時間、実行開始時刻、実行終了時刻等)を入力し、真空包装装置1′の電源スイッチ54をオンのままにして電源供給状態を継続しておく。すると、制御装置7は、入力された駆動予定スケジュール(実行希望スケジュール)をイオン放出予約駆動タイマー71に記憶して待機する。そして、駆動予定スケジュールに基づくイオン放出開始条件(例えば、実行待機時間の経過や、実行開始時刻の到来)が成立すると、制御装置7が本発明におけるイオン放出予約駆動手段として機能して、イオン発生装置37の駆動(既に駆動中の場合は駆動の継続)、放出路開閉弁70の開放動作、イオン放出ファン68の駆動を実行して、イオンをイオン放出路69、イオン放出口67へ通して真空包装装置1′の外方へ放出する。さらに、駆動予定スケジュールに基づくイオン放出終了条件(例えば、実行継続時間の経過や、実行終了時刻の到来)が成立すると、制御装置7(イオン放出予約駆動手段)がイオン発生装置37の駆動停止(別個の信号でイオン貯留部38内でのイオンの貯留動作が指示されている場合は駆動停止せず)、放出路開閉弁70の閉成動作、イオン放出ファン68の停止を実行して、イオンの放出を停止する。
【0037】
このようにして、真空包装装置1′にイオン放出装置66を備えれば、真空包装装置1′が設置された場所の周辺に対しても、真空包装装置1′を用いて除菌を実行することができる。したがって、真空包装装置1′の周辺を除菌するための機器を真空包装装置1′とは別個に準備する必要がない。また、イオン発生装置37およびイオン放出装置66を予め設定された駆動予定スケジュールに基づいて駆動するように構成すれば、真空包装作業を行わない時間帯であったとしても、真空包装装置1′を用いて周辺の除菌を実行することができる。
【0038】
なお、上記第2実施形態においては、イオン放出ファン68を備えたイオン放出装置66を例示したが、本発明はこれに限定されない。要は、イオン発生装置が発生したイオンを真空包装装置の外方へ放出できれば、どのような構成のイオン放出装置であってもよい。例えば、イオン放出ファンの代わりにブロワーを備え、該ブロワーが発生する空気流に乗せてイオンを放出するように構成してもよい。
【0039】
また、上記第2実施形態では、1つのイオン発生装置37からイオンを発生させてチャンバー内と真空包装装置1′の周辺とを除菌するが、本発明はこれに限定されない。例えば、チャンバー内に導入されるイオンを発生させるイオン発生装置と、真空包装装置の外方へ放出されるイオンを発生させるイオン発生装置とを別個に備えてもよい。このように用途(除菌対象)が異なるイオン発生装置を複数備えれば、真空包装作業中にイオン放出装置からのイオンの放出を行う場合に、真空包装作業の大気開放工程を実行したとしても、チャンバー内へのイオンの導入量とイオン放出装置からのイオンの放出量とがともに不足する不都合(すなわち、チャンバー内の除菌と真空包装装置の周辺の除菌とが不十分になってしまう不都合)を抑制することができる。
【0040】
ところで、上記各実施形態の真空包装装置1,1′では、イオンの分散によるチャンバー2内の除菌を真空包装作業の大気開放工程にて実行したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図5に示すタイミングチャートに基づいて、真空包装作業を行わずにチャンバー2内の除菌のみを行う運転(チャンバー内除菌運転)を実行してもよい。具体的に説明すると、チャンバー内除菌運転においては、まず、作業員が真空包装装置1,1′の電源スイッチ54およびイオン発生装置スイッチ56をオンに設定し、設定スイッチ55を操作してチャンバー内除菌運転の実行をセットする。次に、作業員が手で蓋部2bを閉じると、蓋開閉検出センサー59が蓋部2bの閉成状態を検出して制御装置7に信号を送る。
【0041】
制御装置7が蓋部2bの閉成状態の検出信号を受信したならば、イオン導入準備工程(減圧工程)に移行する。イオン導入準備工程では、制御装置7がチャンバー2と真空ポンプ25との間の真空電磁弁27を開くとともに、真空開放弁34および真空破壊弁30を閉じ、この状態で真空ポンプ25を駆動してチャンバー2内の減圧を開始する。
【0042】
チャンバー2内を減圧し続け、チャンバー2内が予め設定された所定の圧力まで減圧されたことが気圧検出センサー57により検出されたならば、イオン導入工程に移行する。イオン導入工程では、制御装置7がイオン導入準備工程時に開いた真空電磁弁27を閉じるとともに、真空開放弁34および真空破壊弁30を開いてチャンバー2内および吸気流路26内を大気開放し、チャンバー2内にはイオン供給ユニット36および外気導入路33を介して外気とともにイオンを導入する。そして、チャンバー2内が大気圧まで戻る前に再び真空開放弁34を閉じ、予め設定された除菌ホールド時間が経過するまで真空開放弁34の閉状態を維持する。すると、チャンバー2内の気圧(大気圧よりも低い気圧)とチャンバー2外の大気圧との圧力差により蓋部2bの閉状態が維持されてイオンがチャンバー2内に閉じ込められる。この結果、イオンがチャンバー2内の全体に亘って満遍なく分散し、チャンバー2内を十分に除菌することができる。
【0043】
除菌ホールド時間が経過すると、制御装置7が大気開放工程を実行し、真空開放弁34を再び開いてチャンバー2内を大気開放する。このとき、チャンバー2内には再びイオンが外気とともにイオン供給ユニット36および外気導入路33を介して導入され、チャンバー2内の追加除菌処理が行われる。したがって、チャンバー2内を更に除菌することができる。そして、大気開放工程を開始してから予め設定された大気開放時間が経過すると、制御装置7がブザー60から報知音を発生させてチャンバー内除菌運転の終了を報知し、真空包装装置1,1′の運転制御を終了する。なお、チャンバー内除菌運転においては、作業員による包装袋の取り出し作業がないため、蓋部2bを閉じたままでチャンバー内除菌運転を終了しても不都合はない。このため、ブザー60からの報知音の発生は、蓋部2bの開閉に拘らず(蓋開閉検出センサー59から検出信号が発生したか否かに拘らず)所定時間の経過後に終了する。
【0044】
このようにして真空包装装置1,1′においてチャンバー内除菌運転を実行することができれば、真空包装作業を行っていない時でもチャンバー2内の除菌処理を行うことができる。例えば、一日の真空包装作業の終了後に、作業員が後片付け作業の一つとしてチャンバー内除菌運転の実行を操作すれば、次の作業日には、チャンバー2が除菌済みの真空包装装置1,1′を直ちに使用することができて好適である。また、除菌済みのチャンバー2が不用意に開放されることを避けるために、蓋部2bの閉状態を維持するロック機構をチャンバー2に備えてもよい。
【0045】
なお、蓋部2bの閉状態を維持するロック機構をチャンバー2に備えた場合には、真空包装作業中やチャンバー内除菌運転中に亘ってロック機構を用いて蓋部2bの閉状態を維持してもよい。ロック機構により蓋部2bの閉状態を維持すれば、真空包装作業中やチャンバー内除菌運転中に蓋部2bが不用意に開いてしまう不都合、さらには、開いた蓋部2bと本体部2aとの隙間から外気が侵入してしまい、この侵入した外気の分だけ外気導入路33から導入される外気およびイオンの導入量が減少してしまう不都合をなくすことができる。言い換えると、チャンバー2内におけるイオンの十分な分散が阻害されてしまう不都合をなくすことができる。
【0046】
そして、前記した実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、上記した説明に限らず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
1,1′ 真空包装装置
2 チャンバー
2a 本体部
2b 蓋部
3 脱気装置
5 封止装置
6 ガス充填装置
7 制御装置
10 シール材
12 吸気口
13 スペーサー
15 下側ヒーターブロック
16 上側ヒーターブロック
17 閉成用エアバッグ
18 投入口閉成駆動流路
19 投入口閉成用電磁弁
20 シール用ヒーター
25 真空ポンプ
26 吸気流路
27 真空電磁弁
28 閉成分岐ポート
29 真空破壊分岐ポート
30 真空破壊弁
33 外気導入路
34 真空開放弁
36 イオン供給ユニット
37 イオン発生装置
38 イオン貯留部
38a 外気取入口
39 サイレンサー
41 ブラケット
42 ガスノズル
43 ガスボンベ
44 ガス供給路
45 ガス用電磁弁
50 ワンチップマイクロコンピュータ
51 インターフェイス回路
52 タイマー
54 電源スイッチ
55 設定スイッチ
56 イオン発生装置スイッチ
57 気圧検出センサー
58 ガスセンサー
59 蓋開閉検出センサー
60 ブザー
61 表示器
65 筐体
66 イオン放出装置
67 イオン放出口
68 イオン放出ファン
69 イオン放出路
70 放出路開閉弁
71 イオン放出予約駆動タイマー
B 包装袋