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特許6990568発泡体付きヘルムホルツレゾネータ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】発泡体付きヘルムホルツレゾネータ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/12 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
F02M35/12 B
F02M35/12 N
F02M35/12 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017225399
(22)【出願日】2017-11-24
(65)【公開番号】P2019094846
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100101627
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 宜延
(72)【発明者】
【氏名】丹下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 久
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-262426(JP,A)
【文献】特開平07-310614(JP,A)
【文献】特開2001-124281(JP,A)
【文献】特開2012-180760(JP,A)
【文献】特開2016-023562(JP,A)
【文献】特開2016-044668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/12
B60K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が別体の相手方ダクトに設けたノズルへ挿着される連通管と該連通管の基端部に接続されるレゾネータ容積部とを備えるヘルムホルツレゾネータと、
該ヘルムホルツレゾネータを埋設して一体発泡成形されている軟質のポリウレタン発泡体からなる被覆層と、を具備し、
且つ該被覆層が、前記レゾネータ容積部の外周面を覆う第一被覆層と、前記連通管に係る先端部の外周面へ筒状に巻き付く第二被覆層と、を有することを特徴とする発泡体付きヘルムホルツレゾネータ。
【請求項2】
前記相手方ダクトを車両エンジンの吸気ダクトとし、且つ前記レゾネータ容積部からアームを突出し、該アームに該吸気ダクトへの係止用部分を設けた請求項1記載の発泡体付きヘルムホルツレゾネータ。
【請求項3】
前記第一被覆層が前記レゾネータ容積部の外周面に押圧状態で密着して一体成形されている請求項1又は2に記載の発泡体付きヘルムホルツレゾネータ。
【請求項4】
先端部が別体の相手方ダクトに設けたノズルへ挿着される連通管と該連通管の基端部に接続されるレゾネータ容積部とを備えたヘルムホルツレゾネータを発泡成形型にセットし、次に、該発泡成形型へ軟質のポリウレタン発泡原料を注入して型閉じした後、該連通管を介してレゾネータ容積部の空洞部へ気体を供給して内圧をかけた状態にして、該レゾネータ容積部の外周面を覆う第一被覆層と、前記連通管の外周先端部へ筒状に巻き付く第二被覆層とを有する被覆層を一体発泡成形し、しかる後、前記連通管を介して前記空洞部へ、前記内圧よりも高い高圧気体を供給して脱型することを特徴とする発泡体付きヘルムホルツレゾネータの製造方法。
【請求項5】
前記発泡成形型の下型キャビティ面上に、前記連通管に係る先端の管口内へ挿着できる柱状突起を突設すると共にその柱軸方向に縦通する貫通孔が設けられて、
前記連通管の先端管口側を該柱状突起に嵌め込み、下型にセットした前記ヘルムホルツレゾネータに係る前記レゾネータ容積部の空洞部へ、該貫通孔を通って気体を供給して内圧をかけた状態にする請求項4記載の発泡体付きヘルムホルツレゾネータの製造方法。
【請求項6】
前記貫通孔から半径外方に向かい前記柱状突起の外周面へ貫通する枝孔が設けられ、且つ該枝孔が下型キャビティ面上近くに配された前記発泡成形型を用いて、前記被覆層を一体発泡成形する請求項5記載の発泡体付きヘルムホルツレゾネータの製造方法。
【請求項7】
前記相手方ダクトを車両エンジンの吸気ダクトとし、前記レゾネータ容積部から該吸気ダクトへの係止用部分を有する板状アームを突設させたヘルムホルツレゾネータを用いる一方、前記発泡成形型へのヘルムホルツレゾネータのセットで、下型キャビティ面における前記アームの対応位置に溝穴を形成して、
前記アームの先端部分を該溝穴に挿入すると共に前記連通管の先端管口側を前記柱状突起に嵌め込み、前記ヘルムホルツレゾネータを前記発泡成形型にセットする請求項5又は6に記載の発泡体付きヘルムホルツレゾネータの製造方法。
載の車両用シートパッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気ダクト等のダクトに取付けられる発泡体付きヘルムホルツレゾネータ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両エンジンには、吸気口から空気を吸込む際に発生する吸気騒音を低減すべく、エアクリーナまでの吸気ダクト途中にヘルムホルツレゾネータ(以下、単に「レゾネータ」ともいう。)が配設される。該レゾネータに箱型のレゾネータ容積部が備わることで、共鳴を起こし吸気騒音を低減させている。ただ、該レゾネータ容積部を形成する板壁が共振すると、所望の低減効果が得られない。
こうしたことから、上記共振の発生を抑える発明が種々提案されてきた(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-262015号公報
【文献】特開2016-31071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1はレゾネータ容積部に相当する共鳴吸音室に制振用の植毛を施す発明であり、特許文献2は共鳴室の壁部にリブを設けて剛性を高める発明内容にとどまる。双方とも、レゾネータを別体の吸気ダクト(相手方ダクト)に形成したノズルに取付ける場合は、リーク防止のために、連通管の先端部にシール用テープ等を巻いて挿着しなければならず、その手間と、別資材のテープが必要であった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するもので、連通管先端部に巻き付けるシール材用被覆層を含めて、レゾネータ容積部の板壁が共振するのを抑える被覆層を一体成形して、シール用資材やこれを取付ける手間を省く発泡体付きヘルムホルツレゾネータ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、1の態様に記載の発明の要旨は、先端部が別体の相手方ダクトに設けたノズルへ挿着される連通管と該連通管の基端部に接続されるレゾネータ容積部とを備えるヘルムホルツレゾネータと、該ヘルムホルツレゾネータを埋設して一体発泡成形されている軟質のポリウレタン発泡体からなる被覆層と、を具備し、且つ該被覆層が、前記レゾネータ容積部の外周面を覆う第一被覆層と、前記連通管に係る先端部の外周面へ筒状に巻き付く第二被覆層と、を有することを特徴とする発泡体付きヘルムホルツレゾネータにある。2の態様の発明たる発泡体付きヘルムホルツレゾネータは、1の態様で、相手方ダクトを車両エンジンの吸気ダクトとし、且つ前記レゾネータ容積部からアームを突出し、該アームに該吸気ダクトへの係止用部分を設けたことを特徴とする。3の態様の発明たる発泡体付きヘルムホルツレゾネータは、1又は2の態様で、第一被覆層が前記レゾネータ容積部の外周面に押圧状態で密着して一体成形されていることを特徴とする。
4の態様に記載の発明の要旨は、先端部が別体の相手方ダクトに設けたノズルへ挿着される連通管と該連通管の基端部に接続されるレゾネータ容積部とを備えたヘルムホルツレゾネータを発泡成形型にセットし、次に、該発泡成形型へ軟質のポリウレタン発泡原料を注入して型閉じした後、該連通管を介してレゾネータ容積部の空洞部へ気体を供給して内圧をかけた状態にして、該レゾネータ容積部の外周面を覆う第一被覆層と、前記連通管の外周先端部へ筒状に巻き付く第二被覆層とを有する被覆層を一体発泡成形し、しかる後、前記連通管を介して前記空洞部へ、前記内圧よりも高い高圧気体を供給して脱型することを特徴とする発泡体付きヘルムホルツレゾネータの製造方法にある。5の態様の発明たる発泡体付きヘルムホルツレゾネータの製造方法は、4の態様で、発泡成形型の下型キャビティ面上に、前記連通管に係る先端の管口内へ挿着できる柱状突起を突設すると共にその柱軸方向に縦通する貫通孔が設けられて、前記連通管の先端管口側を該柱状突起に嵌め込み、下型にセットした前記ヘルムホルツレゾネータに係る前記レゾネータ容積部の空洞部へ、該貫通孔を通って気体を供給して内圧をかけた状態にすることを特徴とする。6の態様の発明たる発泡体付きヘルムホルツレゾネータの製造方法は、5の態様で、貫通孔から半径外方に向かい前記柱状突起の外周面へ貫通する枝孔が設けられ、且つ該枝孔が下型キャビティ面上近くに配された前記発泡成形型を用いて、前記被覆層を一体発泡成形することを特徴とする。7の態様の発明たる発泡体付きヘルムホルツレゾネータの製造方法は、5又は6の態様で、相手方ダクトを車両エンジンの吸気ダクトとし、前記レゾネータ容積部から該吸気ダクトへの係止用部分を有する板状アームを突設させたヘルムホルツレゾネータを用いる一方、前記発泡成形型へのヘルムホルツレゾネータのセットで、下型キャビティ面における前記アームの対応位置に溝穴を形成して、前記アームの先端部分を該溝穴に挿入すると共に前記連通管の先端管口側を前記柱状突起に嵌め込み、前記ヘルムホルツレゾネータを前記発泡成形型にセットすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発泡体付きヘルムホルツレゾネータ及びその製造方法は、レゾネータと一体発泡成形される軟質ポリウレタン発泡体の被覆層に係る第一被覆層が、レゾネータ容積部の外周面を覆って制振作用に効を奏し、また連通管の外周先端部に巻き付く第二被覆層がダクトとの接続時のシール材として機能発揮するので、レゾネータ容積部の板壁が共振するのを抑えるだけでなく、吸気ダクト等のダクトに形成したノズルにシール材なしで簡便に取付けることができ、作業性向上,低コスト化等に優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の発泡体付きヘルムホルツレゾネータの一形態で、発泡体付きレゾネータを吸気ダクトに取付けた状態の断面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3】型開状態の下型にレゾネータをセットする様子の説明断面図である。
図4】下型にレゾネータをセットして発泡原料を注入する説明断面図である。
図5】型閉じし、レゾネータ容積部内に気体を供給し内圧をかけた説明断面図である。
図6図5の後、発泡成形を終えた説明断面図である。
図7図6の後、上型を型開した説明断面図である。
図8】脱型の説明断面図である。
図9図8の脱型初期の様子を表した部分拡大図である。
図10】柱状突起周りの説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る発泡体付きヘルムホルツレゾネータ及びその製造方法について詳述する。
図1図10は本発明の発泡体付きヘルムホルツレゾネータ(以下、単に「発泡体付きレゾネータ」ともいう) 及びその製造方法の一形態で、自動車エンジンの吸気ダクトに取付けられる発泡体付きレゾネータに適用する。図1は発泡体付きレゾネータの断面図、図2図1のII-II線断面図、図3は下型にレゾネータをセットする様子の説明断面図、図4は発泡原料を注入する説明断面図、図5は型閉じ後、レゾネータ容積部内に気体を供給し内圧をかけた説明断面図、図6図5の後、発泡成形を終えた説明断面図を示す。図7は上型を型開した説明断面図、図8は脱型の説明断面図、図9図8の脱型初期の様子を表した説明断面図、図10は柱状突起周りの説明斜視図を示す。各図は図面を判り易くするため発明要部を強調図示し、また本発明と直接関係しない部分を簡略化又は省略する。図3,図4図7,図8は型開状態を示し、上型の図示を省く。
【0010】
(1)発泡体付きレゾネータ
発泡体付きレゾネータは、レゾネータRと被覆層Fとを具備する。
レゾネータRは、別体の吸気ダクトDに設けたノズルD2に、先端部22が挿着される連通管2と、該連通管2の基端部21に接続されるレゾネータ容積部1と、を備える。吸気ダクトDのノズルD2に連通管2の先端部22を取付ければ、レゾネータRが吸気ダクトD内の特定周波数の吸気音を低減する。レゾネータ容積部1は被覆層Fに埋設一体化されるタンクで、本実施形態は中空六面体の箱型状になっている。連通管2は、該レゾネータ容積部1の一板壁11に基端部21がつながる一方、ここから水平に若干張り出し、屈曲部を設けた後、図1でいえば吸気ダクトD側に延在して先端部22を形成する。レゾネータ容積部1に係る吸気ダクトD側の板壁11に対し管状先端部22の軸方向を直交させて、先端部22が吸気ダクトD側の該板壁11よりも吸気ダクトD側に突き出し、吸気ダクトDのノズルD2に挿着し易くしている。
ノズルD2に先端部22を挿着,固定すると、吸気口から吸気ダクトD内、管内20、基端部21の通孔210を通ってレゾネータ容積部1の空洞部10と連通する。吸気ダクトD内に発生する気柱共鳴による騒音が、連通管2とレゾネータ容積部1の共鳴現象によって、音のエネルギが摩擦による熱エネルギに変換され特定周波数の騒音を低減できる。
【0011】
レゾネータR自体は公知品で、ブロー成形や射出成形等によって造られる。具体的には、ポリプロピレン樹脂(PP)や高密度ポリエチレン(HPE)等からなる樹脂成形品である。その成形にあたり、レゾネータ容積部1に係る空洞部10の容積、連通管2の断面積、及び連通管2の長さを、特定周波数(例えば250Hz)の吸気音を低減させるよう設定する。
【0012】
本実施形態のレゾネータRは、さらにレゾネータ容積部1の側方板壁11から図2でいえば板状アーム3を吸気ダクトD側に向けて水平外方へ突出させ、該アーム3の先端部分に吸気ダクトDへの係止用部分31たる小孔310を設けている。レゾネータRをブロー成形品として、アーム3がバリとなる部分で形成されると、アーム3付きレゾネータRとして一体化でき、また低コスト化できる。
レゾネータ容積部1からのアーム3の突出方向は、図1のごとくレゾネータ容積部1からの連通管2に係る先端部22の突出方向と同方向にする。連通管先端部22で吸気ダクトDのノズルD2に挿着固定するだけでなく、アーム3の小孔310と吸気ダクトDに設けた取付け部たる透孔D5とにビスBSを挿着して、本発泡体付きレゾネータが吸気ダクトDの二か所で確実に取付けられる。また、アーム3が在ると、発泡体付きレゾネータの製造方法において、発泡成形型TへのレゾネータRのセットも楽になる(詳細後述)。
【0013】
被覆層FはレゾネータRを埋設して一体発泡成形されている軟質のポリウレタン発泡体からなる発泡成形物である。被覆層Fは、レゾネータ容積部1の外周面1aを覆う第一被覆層4と、前記連通管2の外周先端部22へ筒状に巻き付く第二被覆層5と、を具備する。
ここで、第一被覆層4がレゾネータRを埋設するといっても、レゾネータ容積部1の一部を第一被覆層4から露出させることもできる。ただ、レゾネータRは、第一被覆層4が図1,図2のようにレゾネータ容積部1の外周全面を包み込んで、第一被覆層4でレゾネータ容積部1を完全埋設するのがより好ましい。軟質のポリウレタン発泡体からなる弾性の被覆層Fが全体を包み込むことで、レゾネータR内の共鳴による空気の振動で生じるレゾネータ容積部1の壁面振動や、剛性の樹脂成形品からなるレゾネータ容積部1が車両走行時等の振動での干渉音が発生するのを、より効果的に抑えられるからである。本実施形態のポリウレタン発泡体は、比較的密度の高い80~200Kg/mのものとし、埋設されるレゾネータ容積部1の板壁の単位面積当たりの重量を上げている。本実施形態は、さらに第一被覆層4がレゾネータ容積部1の外周面1aに押圧状態で密着して一体成形されている。
【0014】
第二被覆層5は、被覆層Fのうち、連通管2に係る先端部22の外周面221へ所定厚みで筒状に巻き付く発泡成形部である。第二被覆層5の厚みを二倍にして、これと連通管先端部22の管径を加えた値が、吸気ダクトDに設けたノズルD2の内径よりも多少大きく設定される。被覆層Fは弾性の軟質発泡体であるため、第二被覆層5を圧縮させて図1のごとくノズルD2へ挿着すると、該第二被覆層5がパッキンの役目を果たす。第二被覆層5を形成する軟質のポリウレタン発泡体は、圧縮変形し易く且つ除圧後の復元性が大きく、さらに耐屈曲疲労性も良好であり、パッキンのシール性確保に効を奏する。こうして、従来のように連通管先端部22にパッキン用シールテープ等を巻いて挿着する手間が省ける発泡体付きレゾネータになっている。図示を省略するが、第二被覆層5や連通管先端部22が先端に向けてテーパ状に先細りに形成されると、ノズルD2への挿着が楽になり一層好ましくなる。
【0015】
本実施形態の被覆層Fは、第一被覆層4,第二被覆層5だけでなく、連通管2の屈曲部を含めて基端部21から先端部22に至る部位を覆う第三被覆層61、さらにレゾネータ容積部1から突き出すアーム3の基端側を覆う第四被覆層62を具備する。アーム3の先端部分と連通管2の先端管口220の部分だけが被覆層Fから露出する図1,図2ごとくの発泡体付きレゾネータになっている。制震作用のある第一被覆層4~第四被覆層62で、レゾネータRの大半を包み込むことで、吸気音の低減の際にレゾネータ容積部1の該板壁11が共振したり、レゾネータ容積部1の板壁11が車両走行時に干渉音を発したりするのを効率的に抑えられる。
また、被覆層Fを形成する軟質のポリウレタン発泡体は、連続気泡構造とすることでレゾネータRでは吸音できない高周波の吸音特性を有し、レゾネータR周りで発生する高周波の車両騒音をも低減できる発明になっている。
【0016】
(2)発泡体付きヘルムホルツレゾネータの製造方法
発泡体付きヘルムホルツレゾネータの製造方法は、前記レゾネータRを用いて例えば次のようにして造られる。製造に先立ち、レゾネータRと発泡成形型Tと圧供給装置9が用意される。レゾネータRは前述した内容と同じで、その説明を省く。
【0017】
発泡成形型Tは下型7と上型8とを備える(図3図10)。図3の型開状態で、下型7へのレゾネータRのセット後、ヒンジHを支点にして型閉じすると、図5のような型閉じ状態になる。下型キャビティ面71が、レゾネータ容積部1を覆う第一被覆層4のうち吸気ダクトD側の約半分、連通管先端部22の第二被覆層5、該先端部22から屈曲部を覆う第三被覆層61の大半、及びアーム3の基端側を覆う第四被覆層62の各キャビティ面を形成する。上型キャビティ面81はレゾネータ容積部1を覆う第一被覆層4の残り半分と屈曲部を覆う第三被覆層61の残りの両キャビティ面を形成する。
【0018】
下型7には、その下面から下型キャビティ面71へ貫通する気体の導入孔73が設けられ、該導入孔73の下型キャビティ面71側の上半部は孔径を一回り大きくする。そして、下型キャビティ面71側から導入孔73へ柱状突起72を挿入固定し、下型キャビティ面71上に、連通管2の先端管口220側を嵌め込むことのできる柱状突起72が突設する。
また、前記アーム3を有するレゾネータRを用いることから、下型キャビティ面71には、レゾネータRの発泡成形型Tへのセットで、アーム3の対応位置にアーム先端部分を挿入する溝穴74が形成される。
【0019】
前記柱状突起72にはその柱軸方向に縦通する貫通孔721が設けられる。下型7の導入孔73から該貫通孔721を通って下型7にセットされたレゾネータRの空洞部10へ気体を供給できる構成とする。具体的には、下型7へのレゾネータRのセットで、連通管2の先端管口220側を柱状突起72へ嵌め込んだ後、圧供給装置9の低圧弁92を開にして、低圧気体G1の供給を受けている低圧弁92から配管91,導入孔73を経由して、図5の矢印のごとく貫通孔721を通って空洞部10への低圧気体G1の供給を可能にする。
【0020】
前記圧供給装置9は、下型7の導入孔73、柱状突起72の貫通孔721を通って、下型7にセットされたレゾネータRの空洞部10へ低圧気体G1又は高圧気体G2を供給できる装置である。ここでは、図9のごとく前記導入孔73の下端口側へ直結配管911の一端側を螺着結合し、他端側にT型継手914を取付ける。T型継手914の一方には低圧弁92を介して低圧気体用配管912が接続し、他方には高圧弁93を介して高圧気体用配管913が接続する。
低圧気体用配管912中を流れる加圧気体の低圧気体G1は大気圧よりも高いが、高圧気体用配管913中を流れる高圧気体G2よりも圧力が低い。低圧弁92,高圧弁93は常態で閉とする。被覆層Fの発泡成形時の発泡圧によってレゾネータ容積部1が凹まないようにする内圧を、低圧気体配管912を使って加える。また、高圧気体用配管913を使って、脱型を可能にする(詳細後述)。低圧気体G1,高圧気体G2は共に圧縮空気を用いる。本実施形態は、脱型を容易にするために、柱状突起72には貫通孔721から半径外方に向かい外周面へ貫通する枝孔722が複数設けられる。下型7への柱状突起72の挿入固定で、図9,図10ごとくの枝孔722が下型キャビティ面71上近くに配される発泡成形型Tを採用する。柱状突起72を連通管2の前記管口220内へ挿着したとき、連通管2の管口220傍の管内周面に前記枝孔722の孔口が配される。
【0021】
前記発泡成形型T、圧供給装置9、及びレゾネータRを用いて、発泡体付きレゾネータが例えば次のように製造される。
まず、型開状態にして下型7にレゾネータRをセットする(図3,図4)。アーム3の先端部分を溝穴74に挿入し、またこれと並行して連通管2の先端管口220側を柱状突起72に嵌め込んで、レゾネータRを下型キャビティ面71上にセットする。レゾネータRがアーム3と連通管2の二箇所で下型7に支持されるので、精度良く且つ安定セットされる。連通管先端部22の管口220は、柱状突起72で塞がれ、また連通管2の先端面に下型キャビティ面71が当接する。
【0022】
続いて、軟質ポリウレタン発泡原料g(以下、単に「発泡原料」ともいう。)の注入及び型閉じへと進む。型開状態のまま下型キャビティ面71上に、図4のごとく注入ホースNL等を使用して被覆層F用の発泡原料gを所定量注入する。
次いで、上型8を作動させ型閉じする(図5)。上型8と下型7との型閉じで、レゾネータRがインサートセットされた発泡体付きレゾネータ用キャビティCができる。尚、発泡原料gは型閉じ後に注入してもよい。
【0023】
その後、連通管2を介してレゾネータ容積部1の空洞部10に気体を供給し、内圧をかけた状態にして、レゾネータRと一体の被覆層Fを発泡成形する。レゾネータ容積部1の外周面1aを覆う第一被覆層4、連通管2の外周先端部22へ筒状に巻き付く第二被覆層5、先端部22から屈曲部を覆う第三被覆層61、及びアーム3の基端側を覆う第四被覆層62を有する被覆層Fを発泡成形する。ここで、内圧をかけずにそのまま発泡成形すると、レゾネータRの容積が潰れて小さくなり、消音性能が低下してしまう問題がある。
【0024】
前記問題の解決策として、発泡圧に耐えられるようレゾネータ容積部1の板厚を上げる方法も考えられるが、製品重量が大きくなったりコスト高になったりする。
本発明では、主工程の発泡成形に先立ち、圧供給装置9の低圧弁92を開にして図5のように低圧気体G1がレゾネータ空洞部10に導かれる。型閉じ工程に続いてレゾネータ容積部1の内圧を高める工程へと進む。低圧気体G1を低圧弁92,導入孔73,貫通孔721,連通管2の管内20を通って空洞部10へ導く(図5)。低圧気体配管912からの低圧気体G1を用い、発泡成形時にウレタン樹脂の発泡圧力によってレゾネータ容積部1が変形しない程度の圧力を加えて、前記問題を解決する。発泡成形圧以上に空洞部10の内圧を高めた状態にするのが好ましい。発泡成形過程で、空洞部10に内圧がかかっているため、柱状突起72に挿着された連通管2の管口220に隙間ができても、管口220から連通管2の管内20へ発泡原料gが入り込み難くなる。尚、本実施形態は型閉じ後に空洞部10へ内圧をかけたが、レゾネータRを覆う被覆層Fを一体発泡成形するに際し、空洞部10へ内圧をかけた状態になっておれば足りる。
こうして、被覆層Fの発泡成形を終えると、図6ごとくの所望の発泡体付きレゾネータ(被覆層F付きレゾネータR)が出来上がり、低圧弁92が閉じられる。発泡圧力を超える空洞部10の内圧を高めた状態にして成形された第一被覆層4は、該内圧に抗し、レゾネータ容積部1の外周面1aに押圧状態で密着して一体成形された形になっている。
【0025】
その後、図6の発泡体付きレゾネータを、図7の型開後、図8,図9のようにして脱型する。空洞部10にかけた先の内圧よりも高い高圧気体G2を連通管2,空洞部10等へ供給して脱型する。
高圧弁93を開にし、高圧気体G2を連通管2,レゾネータ容積部1に供給して充満させいく。その高圧気体G2の内圧が高まることによって、連結管先端部22が下型キャビティ面71(第二被覆層先端面用キャビティ面716)から少し浮き上がる。そして、高圧気体G2が、枝孔722を通って枝孔722周りの連通管先端部22の端面を横切り、第二被覆層5の先端面と第二被覆層先端面用キャビティ面716との間に押圧進入する(図9)。そうして、弾性の第二被覆層5を変形させ、さらに下型キャビティ面71に接していた第一被覆層4,第四被覆層62を変形させて、図8の矢印のごとく高圧気体G2が入り込んでいく。続いて、下型キャビティ面71と被覆層Fとの間に潜り込んだ高圧気体G2が、その押圧力でもって、図8の白抜矢印のごとく被覆層F付きレゾネータR(発泡体付きレゾネータ)を下型キャビティ面71から持ち上げる。柱状突起72は脱型方向に突き出し、溝穴74も脱型方向に穴が開いているので、発泡体付きレゾネータが下型7から円滑に浮き上がる。斯かる状態にしてから、発泡体付きレゾネータが作業者によって脱型される。後は上記工程が繰り返されて、発泡体付きレゾネータが造られていく。
図中、符号79,89は型合わせ面、符号D1は吸込み口、符号uは流路を示す。
【0026】
(3)効果
このように構成した発泡体付きヘルムホルツレゾネータ及びその製造方法によれば、軟質ポリウレタン発泡体の第一被覆層4がレゾネータ容積部1を覆って一体発泡成形されるので、吸気音やエンジン音等の低減で、レゾネータ容積部1内の共鳴による空気の振動で生じる該レゾネータ容積部1の壁面振動を抑えることができる。また車両走行で、他の部品や相手方ダクトDとの干渉によるレゾネータ容積部1の板壁11に生じ易い干渉音等も弾性のポリウレタン発泡体が有する制振作用によって抑えられる。
【0027】
そして、別体の相手方ダクトDに設けたノズルD2へ挿着される連通管2の先端部外周面221に、軟質ポリウレタン発泡体の第二被覆層5が筒状に巻き付くと、これがシール材の役割を担う。相手方ダクトD(例えば吸気ダクト)に設けたノズルD2へ第二被覆層5が巻き付いた先端部22をそのまま挿着して取付けることができる。軟質のポリウレタン発泡体は弾性に富み且つ高い復元力を有しており、連通管先端部22に巻き付いた第二被覆層5はパッキンとしての機能に優れ、高いシール性を発揮する。従来、必要であったパッキン用シールテープ等が不要になり、低コスト化できる。先端部22に従来のようにシール材を巻く作業も不要で、労力軽減につながる。本発泡体付きレゾネータは、連通管2の第二被覆層5が巻き付いた先端管口220側を、シール材なしで吸気ダクトD等のノズルD2にそのまま挿着するだけで、簡便に取付けることができ、作業性向上に優れた効果を発揮する。第二被覆層5はレゾネータ容積部1を埋設一体化する第一被覆層4と一緒に発泡成形されるので、特に別工程を要せず、生産性を低下させることもない。
【0028】
また、相手方ダクトDが車両エンジンの吸気ダクトである場合、エンジンルームは各種排ガス対策や各種安全装置の追加によってその空間が少なくなり、以前よりも高温になっている。そして、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂成形品のレゾネータRは、高温の環境下では板壁11の剛性に影響を受ける。
これに対し、本発明はレゾネータRを覆った被覆層Fが断熱材として機能発揮し、エンジンルーム内の熱をレゾネータRに熱伝達させないようにする。温度上昇に伴って、レゾネータ板壁11の剛性低下を回避できる。
さらに、レゾネータ容積部1からアーム3を突出し、該アーム3に該ダクトへの係止用部分31を設けると、連通管2の先端部22とアーム3との二か所で吸気ダクトDに確実に取付け固定できる。
さらにいえば、連通管先端部22が吸気ダクトD側の板壁11よりも吸気ダクトD側に突出し、またアーム3の突出方向が図1のように連通管先端部22の突出方向と同方向にすると、発泡体付きレゾネータの製造方法における下型7へのレゾネータRのセットが容易になる。図4のごとく連通管先端部22とアーム3の二か所で下型7に係止するので、下型7にレゾネータRを安定させてセット保持できる。連通管先端部22とアーム3の脱型方向が図8のごとく同じになるので、脱型も容易になる。
【0029】
加えて、発泡体付きヘルムホルツレゾネータの製法で、空洞部10へ気体を供給して内圧をかけた状態にして、レゾネータ容積部1の外周面1aを覆う第一被覆層4を有する被覆層Fを一体発泡成形すると、内圧が内側からレゾネータRを保形する役目を果たすので、レゾネータ容積部1が潰れたり変形したりすることがなく、所望の発泡体付きレゾネータを製造できる。空洞部10を加圧しているため、レゾネータ容積部1の板厚を小さくでき、軽量,低コストで製品を提供できる。また、空洞部10を加圧しているため、被覆層Fの発泡成形で、レゾネータ容積部1の内部へのウレタン樹脂の侵入を防ぐことができる。発泡成形後の余分なウレタン除去が不要になり、低コストで製品提供できる。
また、発泡圧以上の内圧に設定し、該内圧に抗して被覆層Fを発泡成形させることによって、第一被覆層4をレゾネータ容積部1の外周面1aに押圧状態で密着して一体成形させることができる。レゾネータ容積部1の外周面1aへの第一被覆層4の押圧密着によって、レゾネータ容積部1の動きが規制されるので、レゾネータ容積部1を形成する板壁11の壁面振動や干渉音等をより効果的に抑えることができる。この押圧密着によって、レゾネータ容積部1を構成する板壁11を薄くしても壁面振動や干渉音が抑えられることから、さらなる板壁11の薄肉化,レゾネータRの軽量化も可能になり、より一層好ましくなる。
【0030】
また、貫通孔721,枝孔722がある柱状突起72へ連通管2の先端管口220側を嵌め込み、下型7にセットしたレゾネータRが埋設される被覆層Fを、空洞部10に内圧をかけた状態で一体発泡成形し、しかる後、連通管2を介して空洞部10へ、前記内圧よりも高い高圧気体G2を供給すると、脱型が容易になる。高圧気体G2が前記枝孔722から図8,図9のように下型キャビティ面71とこれに接する被覆層F側を剥がすようにして入り込んで、図8の白抜き矢印のように発泡体付きレゾネータを浮き上がらせる。その結果、作業者は下型キャビティ面71に引っ付いた発泡体付きレゾネータを剥がし取る苦労を要しない。製品にキズつけることなく短時間で簡単に脱型でき、高品質で低価格製品を提供できることとなる。
このように本発明の発泡体付きレゾネータは、上述した数々の優れた効果を発揮し、極めて有益である。
【0031】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。レゾネータ容積部1,連通管2,アーム3,被覆層F,発泡成形型T,圧供給装置9,相手方ダクトD等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。
【符号の説明】
【0032】
1 レゾネータ容積部
1a 外周面
10 空洞部
2 連通管
22 先端部
3 アーム
4 第一被覆層
5 第二被覆層
71 下型キャビティ面
72 柱状突起
721 貫通孔
722 枝孔
D 相手方ダクト(吸気ダクト)
D2 ノズル
F 被覆層
R レゾネータ
T 発泡成形型
g 軟質ポリウレタン発泡原料(発泡原料)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10