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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】止水装置及び止水パネル
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017238262
(22)【出願日】2017-12-13
(65)【公開番号】P2019105085
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100095212
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 武
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 展之
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-309684(JP,A)
【文献】特開2016-79641(JP,A)
【文献】米国特許第7523589(US,B1)
【文献】特開2013-204244(JP,A)
【文献】特開2010-77685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側が開口部となっている開口枠と、この開口枠に当接する防水シール部材が取り付けられている止水パネルを有し、この止水パネルによって前記開口部の少なくとも一部が塞がれることにより水が室外側から室内側に流入することを防止する止水装置において、
前記止水パネルを前記開口枠に固定するための固定手段を備えており、
前記止水パネルに設けられている前記固定手段は、前記開口枠を形成するために互いに対向する左右の位置に配置された2個の枠部材に前記止水パネルを固定するための手段となっているとともに、前記固定手段は、前記開口枠の内側から前記2個の枠部材に向かって進退自在となっている少なくとも2個の進退部材を含んで構成され、
前記止水パネルには、前記2個の進退部材と共に前記固定手段を構成する回転部材が配置されており、前記2個の進退部材は前記回転部材に連結機構を介して連結され、この連結機構は、前記回転部材が一方の方向に回転したときに前記2個の進退部材を前記2個の枠部材に向かって前進させる方向に移動させ、前記回転部材が前記一方の方向とは逆の他方の方向に回転したときに前記2個の進退部材を前記2個の枠部材から後退させる方向に移動させるための右ねじ機構と左ねじ機構とを含んで構成されており、
前記回転部材は、前記止水パネルの厚さ方向の2つの表面のうちの一方の面の側に配置されていることを特徴とする止水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の止水装置において、前記止水パネルの厚さ方向の前記2つの表面は、室外側の表面と室内側の表面であり、前記回転部材が配置されている前記一方の面の側は、前記室内側の表面の側であることを特徴とする止水装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の止水装置において、前記一方の面には、前記止水パネルの厚さ方向に窪んだ窓孔が形成され、この窓孔と一致する箇所において、前記止水パネルの内部に前記回転部材が収納配置されていることを特徴とする止水装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の止水装置において、前記防水シール部材は、前記止水パネルの左右両端部に固定された防水シール部と、前記止水パネルの下端部に固定された防水シール部とを有することを特徴とする止水装置。
【請求項5】
請求項4に記載の止水装置において、前記止水パネルには、左右両端部において、左右の中央部よりも厚さ寸法が小さい薄厚部が設けられているとともに、下端部において、上端部よりも厚さ寸法が小さい薄厚部が設けられ、前記止水パネルの左右両端部に固定された前記防水シール部は、左右両端部の前記薄厚部における前記一方の面に配置され、前記止水パネルの下端部に固定された前記防水シール部は、前記止水パネルの下端部の前記薄厚部における前記一方の面に配置されていることを特徴とする止水装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の止水装置において、前記固定手段は、前記止水パネルの上下方向に複数個設けられていることを特徴とする止水装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の止水装置において、前記2個の進退部材の先端部のそれぞれには、これらの進退部材が前進することにより前記2個の枠部材に当接して押圧する押圧部材が設けられ、これらの前記押圧部材が前記2個の枠部材を前記開口枠の内側から押圧することにより前記止水パネルが前記開口枠に固定されることを特徴とする止水装置。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の止水装置において、前記2個の進退部材の先端部のそれぞれは、これらの進退部材が前進することにより前記2個の枠部材の内部に挿入する挿入部となっており、これらの挿入部が前記2個の枠部材の内部に前記開口枠の内側から挿入することにより前記止水パネルが前記開口枠に固定されることを特徴とする止水装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の止水装置において、前記開口枠の内側の前記開口部は出入口であり、前記止水パネルは、この開口枠の下端部からこの開口枠の高さの途中までの上下寸法を有していることを特徴とする止水装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の止水装置において、前記開口枠は下枠部材を含んで形成されており、前記止水パネルは前記下枠部材の上に載せられることにより自立することを特徴とする止水装置。
【請求項11】
内側が開口部となっている開口枠に当接する防水シール部材が取り付けられていて、前記開口部の少なくとも一部を塞ぐことにより水が室外側から室内側に流入することを防止するための止水パネルであって、
固定手段を備えており、
前記固定手段は、前記開口枠の内側から、この開口枠を形成するために互いに対向する左右の位置に配置された2個の枠部材に向かって進退自在となっている少なくとも2個の進退部材を含んで構成され、
前記2個の進退部材と共に前記固定手段を構成する回転部材が配置されており、前記2個の進退部材は前記回転部材に連結機構を介して連結され、この連結機構は、前記回転部材が一方の方向に回転したときに前記2個の進退部材を前記2個の枠部材に向かって前進させる方向に移動させ、前記回転部材が前記一方の方向とは逆の他方の方向に回転したときに前記2個の進退部材を前記2個の枠部材から後退させる方向に移動させるための右ねじ機構と左ねじ機構とを含んで構成されており、
前記回転部材は、厚さ方向の2つの表面のうちの一方の面の側に配置されていることを特徴とする止水パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大雨時や洪水発生時等において、例えば、開き戸装置のドア枠の出入口等の開口部から水が室内に流入することを防止するための止水装置に係り、開き戸装置や引き戸装置等の開口枠に適用できるものである。
【背景技術】
【0002】
大雨時や洪水発生時等において、開き戸により開閉される出入口から水が室内に流入することを防止するための止水装置が下記の特許文献1に示されている。この止水装置は、出入口が内側に形成された開口枠となっているドア枠に、開き戸よりも高さ寸法が小さい止水パネルを立て掛けることにより、出入口の下側の部分を止水パネルによって塞ぐとともに、この止水パネルに取り付けられている防水シール部材をドア枠の左右の側枠部材と下枠部材のそれぞれの戸当り部に当接させ、開き戸が開いているときの水圧によって防水シール部材をこれらの戸当り部に押圧させることにより、水が室外側から室内側へ流入することを阻止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-218794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この止水装置では、ドア枠に止水パネルを配置することは、ドア枠に止水パネルを立て掛けることにより行われるようになっており、このため、止水パネルに水圧が作用する以前では、ドア枠に止水パネルを安定して配置しておくことは難しい。
【0005】
本発明の目的は、止水パネルに水圧が作用する以前でも、この止水パネルをドア枠等の開口枠に安定して配置することができるようになる止水装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る止水装置は、内側が開口部となっている開口枠に当接する防水シール部材が取り付けられている止水パネルを有し、この止水パネルによって前記開口部の少なくとも一部が塞がれることにより水が室外側から室内側に流入することを防止する止水装置において、前記止水パネルを前記開口枠に固定するための固定手段を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
この止水装置は、開口部の少なくとも一部を塞ぐ止水パネルを開口枠に固定するための固定手段を備えているため、止水パネルに水圧が作用する以前でも、固定手段により止水パネルを開口枠に安定して配置しておくことができ、これにより、止水パネルの倒れ等が生ずることを防止できる。
【0008】
固定手段は、止水パネルを開口枠に固定することができるものであれば、任意のものでよく、例えば、開口枠と接触する止水パネルの周縁部を開口枠に止着したり、クランプしたりするものでよく、あるいは、開口枠を形成するために互いに対向する位置に配置されている2個の枠部材に止水パネルを固定するものでもよい。
【0009】
固定手段を、開口枠を形成するために互いに対向する位置に配置されている2個の枠部材に止水パネルを固定するものとする場合には、この固定手段を、開口枠の内側から2個の枠部材に向かって進退自在となっている少なくとも2個の進退部材を含んで構成し、これらの進退部材を止水パネルに配置してもよい。
【0010】
そして、この場合における一例として、2個の進退部材の先端部のそれぞれに、これらの進退部材が前進することによって2個の枠部材に当接して押圧する押圧部材を設け、これらの押圧部材が2個の枠部材を開口枠の内側から押圧することにより、止水パネルが開口枠に固定されるようにしてもよい。
【0011】
また、他の例として、2個の進退部材の先端部のそれぞれを、これらの進退部材が前進することにより2個の枠部材の内部に挿入される挿入部とし、これらの挿入部が2個の枠部材の内部に開口枠の内側から挿入することにより、止水パネルが開口枠に固定されるようにしてもよい。
【0012】
以上のように、止水パネルを開口枠に固定するための固定手段を、開口枠の内側から2個の枠部材に向かって進退自在となっている少なくとも2個の進退部材を含んで構成する場合においては、これらの進退部材を、開口枠の内側から2個の枠部材に向かって進退自在とする構造は、例えば、それぞれの進退部材に操作部を設け、これらの操作部による押し操作や引き操作により、2個の進退部材を2個の枠部材に向かって進退させることができるものでもよく、あるいは、止水パネルに回転部材を配置し、2個の進退部材をこの回転部材に連結機構を介して連結し、この連結機構を、回転部材が一方の方向に回転したときには、2個の進退部材を2個の枠部材に向かって前進させる方向に移動させることができ、回転部材が前記一方の方向とは逆の他方の方向に回転したときには、2個の進退部材を2個の枠部材から後退させる方向に移動させることができる右ねじ機構と左ねじ機構とを含んで構成されているものとしてもよい。
【0013】
後者の固定手段によると、回転部材の回転により、2個の進退部材を2個の枠部材に対して同時に移動させることができるとともに、2個の枠部材に対する2個の進退部材の前進、後退を、回転部材の回転方向によって選択できることになる。
【0014】
なお、この固定手段における回転部材の回転は、手動操作によって行われるものでもよく、あるいは、電動モータ等による駆動源からの駆動力によって行われるものでもよい。
【0015】
また、以上の本発明において、止水パネルは、開口枠の内側の開口部の全体を塞ぐものでもよく、あるいは、この開口部が出入口である場合には、止水パネルを、この開口枠の下端部からこの開口枠の高さの途中までの上下寸法を有するものとし、止水パネルにより塞がれる開口部の範囲を、この開口部の下側の部分だけとしてもよい。
【0016】
後者によると、止水パネルにより開口部の下側の部分が塞がれているときでも、止水パネルの上を跨ぐことにより、出入口を通過することができる。
【0017】
また、本発明において、止水パネルは、前述した固定手段により開口枠に固定される以前では、開口枠に立て掛けられることによりこの開口枠に配置されるものでもよく、あるいは、開口枠が下枠部材を含んで形成されている場合には、止水パネルは、この下枠部材の上に載せられることによって自立するものでもよい。
【0018】
後者によると、止水パネルを、固定手段により開口枠に固定される以前でも、下枠部材の上で自立させておくことができるため、この止水パネルを固定手段により開口枠に固定するための作業を容易に行える。
【0019】
以上説明した本発明に係る止水装置は、任意の開口枠に適用することができ、この開口枠は、開き戸装置の開き戸により内側の出入口が開閉されるドア枠でもよく、あるいは、引き戸装置の引き戸により内側の出入口が開閉される開口枠でもよく、あるいは、常時通過可能となっている開口部が内側に設けられている通行用開口枠でもよい。また、本発明に係る止水装置は、窓枠のように、内側の開口部が通行用とはなっていない開口枠にも適用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、止水パネルに水圧が作用する以前でも、この止水パネルをドア枠等の開口枠に安定して配置できるようになるという効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る止水装置が適用される開き戸装置を示す正面図である。
図2図2は、図1の開き戸装置の開き戸を開いたときを示す正面図である。
図3図3は、図2のときに止水装置の止水パネルを固定手段によりドア枠に固定して配置した状態を示す正面図である。
図4図4は、止水パネルの全体を室外側から見た斜視図である。
図5図5は、止水パネルを室内側から見た背面図である。
図6図6は、止水パネルに設けられている固定手段の構造を示す平面図で、止水パネルを二点鎖線で示した図である。
図7図7は、図3のS7-S7線断面図である。
図8図8は、図3のS8-S8線断面図である。
図9図9は、別実施形態の固定手段を示す図5と同様の図である。
図10図10は、図9の実施形態における図8と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る止水装置が適用される開き戸装置の全体が示されている。この開き戸装置は、開き戸1をドア枠2にヒンジ3により開閉自在に取り付けたものであり、図2には、開き戸1を開けたときの状態が示されている。ドア枠2は、本実施形態における開口枠であり、ドア枠2の内側は、室外と室内との間を連通させるために貫通した開口部となっている出入口4である。
【0023】
ドア枠2は、図1及び図2に示されているように、左右の側枠部材5,6と、上下の上枠部材7、下枠部材8とからなる四方枠であり、図2に示されているように、これらの枠部材5,6,7,8には、閉じたときの開き戸1が当接する戸当り部5A,6A,7A,8Aが設けられ、また、この開き戸1との間の気密性を確保するための気密部材9,10,11,12も枠部材5,6,7,8に設けられている。なお、戸当り部5A,6A,7A,8Aと気密部材9,10,11,12のうち、左右の側枠部材5,6と下枠部材8に設けられている戸当り部5A,6A,8A及び気密部材9,10,12は、後述する図7図8にも示されている。
【0024】
図3には、開き戸1を開いているときに、出入口4の下側の部分を本実施形態の止水パネル20により塞いでいる状態が示されている。この止水パネル20は、左右方向の幅寸法が、ドア枠2を形成するために互いに対向する位置に配置された左右の側枠部材5,6の間隔と対応する寸法となっていて、上下の高さ寸法が開き戸1の高さ寸法よりも小さくて、ドア枠2の下端部からこのドア枠2の高さの途中までの寸法となっているものである。
【0025】
図4には、止水パネル20を室外側から見た斜視図が示されている。厚さ方向が室内外方向となっているこの止水パネル20は、金属板又は硬質の合成樹脂板等で形成された表面部材の内部に補強部材や充填材等の部材を収納することにより形成されており、室外側の表面20Aと室内側の表面20Bは、互いに平行となった鉛直面となっている。また、止水パネル20の厚さ寸法は、左右方向と上下方向の両方について一定ではなく、左右の両端部には、左右の中央部よりも厚さ寸法が小さい薄厚部20Cが設けられ、下端部には、上端部よりも厚さ寸法が小さい薄厚部20Dが設けられている。このため、止水パネル20は、左右の両端部と下端部とに薄厚部20C,20Dが形成されている段付き状のパネルとなっている。
【0026】
また、開き戸1が開けられているときにドア枠2に配置されるこの止水パネル20には、ドア枠2の構成部材となっている左右の側枠部材5,6と下枠部材8の戸当り部5A,6A,8Aに当接する防水シール部材21が取り付けられており、この防水シール部材21は、止水パネル20の左右両端部の薄厚部20Cにおける室内側の面に固定されている左右両側の防水シール部21Aと、下端部の薄厚部20Dにおける室内側の面に固定されている防水シール部21Bとからなる。
【0027】
図5には、止水パネル20を室内側から見た背面図が示されている。止水パネル20の室内側の表面20Bの左右中央部には窓孔22が形成されており、この窓孔22と一致する箇所において、止水パネル20の内部には、止水パネル20をドア枠2に固定するための固定手段40の一部を構成している回転部材23が収納配置されている。左右方向が軸方向となっているこの回転部材23は、図6に示されているように、左右両方向へ延びる一対の雌ねじ筒部23Aを有し、これらの雌ねじ筒部23Aに左右一対の雄ねじ部材24の雄ねじ軸部24Aが螺入している。これらの雄ねじ部材24には、止水パネル20の内部において、止水パネル20の室外側の表面20Aに近い箇所に配置されている左右一対の進退部材25が結合部材26により結合されており、棒状の部材となっているこれらの進退部材25における左右方向外側の先端部25Aは、止水パネル20の前述した左右両端部の薄厚部20Cの端面から突出しており、これらの先端部25Aに押圧部材27が取り付けられている。
【0028】
以上のように結合部材26で結合されている雄ねじ部材24と進退部材25は、止水パネル20の内部に2個ずつ配置されている支持部材28,29により左右方向に移動自在に支持されており、左右方向に離れているこれらの支持部材28,29のうち、一方の支持部材28には、雄ねじ部材24に左右方向の長さを有して形成されている溝24Bに挿入された突起部28Aが設けられている。このため、それぞれの雄ねじ部材24は、回転が阻止されて左右方向に移動自在となっている。また、回転部材23の左右一対の雌ねじ筒部23Aのうち、一方の雌ねじ筒部23Aは、内周面に右ねじによる雌ねじ30が形成されたものであり、他方の雌ねじ筒部23Aは、内周面に左ねじによる雌ねじ31が形成されたものである。また、左右一対の雄ねじ部材24の雄ねじ軸部24Aのうち、右ねじによる雌ねじ30に螺入している一方の雄ねじ軸部24Aは、外周面に右ねじによる雄ねじ32が形成されたものであり、左ねじによる雌ねじ31に螺入している他方の雄ねじ軸部24Aは、外周面に左ねじによる雄ねじ33が形成されたものである。
【0029】
このため、回転部材23を、正逆回転方向のうち、一方の方向に回転させるための操作を手又は工具により行うと、この回転は、左右一対の雄ねじ部材24の左右方向外側への移動に変換されるため、左右一対の進退部材25も左右方向外側へ移動し、この移動方向は、止水パネル20が、図3に示されているように、ドア枠2に配置されているときでは、ドア枠2を形成するために左右方向に互いに対向する位置に配置されている左右の側枠部材5,6に向かって左右一対の進退部材25と押圧部材27がドア枠2の内側から前進する方向である。また、回転部材23を、正逆回転方向のうち、他方の方向に回転させるための操作を手又は工具により行うと、この回転は、左右一対の雄ねじ部材24の左右方向内側への移動に変換されるため、左右一対の進退部材25も左右方向内側へ移動し、この移動方向は、止水パネル20がドア枠2に配置されているときでは、左右一対の進退部材25と押圧部材27が左右の側枠部材5,6から後退する方向である。
【0030】
したがって、本実施形態では、左右一対の進退部材25は、止水パネル20に配置されている回転部材23に雄ねじ部材24や進退部材25等による連結機構34を介して連結されていることになり、この連結機構34は、右ねじによる雌ねじ30及び雄ねじ32によって形成されている右ねじ機構35と、左ねじによる雌ねじ31及び雄ねじ33によって形成されている左ねじ機構36とを含んで構成されたものとなっている。
【0031】
そして、回転部材23や、左右一対の進退部材25、連結機構34等により、本実施形態に係る前述した固定手段40が構成されており、この固定手段40は、図5に示されているように、止水パネル20に上下方向に複数個、図5では2個設けられている。
【0032】
大雨時や洪水発生時等において、ドア枠2から開き戸1を開き、図3に示されているように止水パネル20をドア枠2に配置する際には、予め回転部材23を上述した他方の方向へ回転操作することにより、左右一対の進退部材25及びこれらの進退部材25の先端部25Aに設けられている左右一対の押圧部材27を後退させておく。この後に、止水パネル20を持ち上げることにより、図3のS7-S7線断面図である図7に示されているように、止水パネル20をドア枠2の下側を形成している下枠部材8の上に載せ、これにより、止水パネル20を下枠部材8の上で自立させる。次いで、回転部材23を上述した一方の方向へ回転操作し、これにより、左右一対の進退部材25及び押圧部材27を左右の側枠部材5,6に向かって前進させ、これにより、図3のS8-S8線断面図である図8に示されているように、それぞれの押圧部材27をこれらの側枠部材5,6にドア枠2の内側から当接させて押圧させる。このように一対の押圧部材27が側枠部材5,6をドア枠2の内側から押圧すると、止水パネル20は、これらの押圧部材27が構成部材となって構成されている固定手段40により、ドア枠2に固定されることになる。
【0033】
このように止水パネル20を固定手段40により固定したときには、図7及び図8に示されているように、止水パネル20に取り付けられている防水シール部材21は、ドア枠2の左右の側枠部材5,6と下枠部材8とに設けられている戸当り部5A,6A,8Aに室外側から当接している。このため、大雨や洪水等による水の水圧が止水パネル20の室外側の表面20Aに作用することにより、防水シール部材21の防水シール作用のために、水がドア枠2の内側の出入口4を通過して室外側から室内側に流入することを阻止できる。なお、側枠部材5,6と下枠部材8における戸当り部5A,6A,8Aが設けられている箇所は、図7及び図8から分かるように、一対の押圧部材27が当接している左右の側枠部材5,6の面5B,6B、及び止水パネル20の前述した薄厚部20Dの下端面が当接している下枠部材8の面8Bよりも室内側の位置において、これらの面5B,6B,8Bからドア枠2の内側へ突出した箇所となっている。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る止水装置の止水パネル20は、この止水パネル20をドア枠2に固定するための固定手段40を備えたものとなっており、この固定手段40により止水パネル20をドア枠2に固定して配置することにより、止水パネル20が室外側に倒れることを防止できるため、止水パネル20の室外側の表面20Aに水圧が作用する以前でも、止水パネル20をドア枠2に安定して設置することができる。
【0035】
また、止水パネル20は、ドア枠2の下枠部材8の上に載せられるものとなっているため、止水パネル20をドア枠2に固定手段40で固定する以前でも、止水パネル20を下枠部材8の上で自立させることができ、このため、固定手段40による止水パネル20のドア枠2への固定作業を容易に行える。
【0036】
さらに、図3で示されているように、止水パネル20は、ドア枠2の下端部を形成している下枠部材8からドア枠2の高さの途中までの上下寸法を有し、ドア枠2の内側に形成されている出入口4の下側の部分だけが止水パネル20により塞がれるため、人は室外と室内との間を、止水パネル20の上を跨ぐことにより移動することができる。
【0037】
図9には、別実施形態に係る固定手段40’が示されている。この固定手段40’は、前記実施形態の固定手段40と比較して、押圧部材27が左右一対の進退部材25の先端部に設けられていないものとなっている。そして、図10に示されているように、ドア枠2の左右の側枠部材5,6には、フランジ部付きの付属部材37が水密状態で取り付けられ、これらの付属部材37には、前進した進退部材25の先端部25Bが内部空間37Bに挿入される筒状部37Aが設けられ、内部空間37Bの先端部37Cが閉じられているこの筒状部37Aは、側枠部材5,6の内部に配置されている。
【0038】
このため、この実施形態の固定手段40’では、前進させた一対の進退部材25の先端部25Bを付属部材37の筒状部37Aの内部空間37Bに挿入させることにより、これらの先端部25Bが、ドア枠2の内側から側枠部材5,6の内部に挿入される挿入部となり、これにより、止水パネル20はドア枠2に固定される。止水パネル20をドア枠2に固定するための固定手段は、このような手段であってもよい。
【0039】
なお、図9及び図10の実施形態において、付属部材37の筒状部37Aの内部空間37Bの先端部を開口した端部としてよく、このようにする場合には、一対の進退部材25の先端部25Bに防水性と弾力性を有するキャップ部材を被せることにより、これらの先端部25Bを筒状部37Aの内部空間37Bに挿入したときに、先端部25Bと筒状部37Aとの間で防水性を確保できるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、大雨時や洪水発生時等に、例えば、開き戸装置のドア枠等の開口枠の内側に形成されている開口部から水が室内に流入することを防止するために利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 開き戸
2 開口枠であるドア枠
4 開口部である出入口
5,6 ドア枠を形成するために互いに対向する位置に配置された側枠部材
20 止水パネル
21 防水シール部材
23 回転部材
25 進退部材
25A 先端部
25B 挿入部となっている先端部
27 押圧部材
34 連結機構
35 右ねじ機構
36 左ねじ機構
40,40’ 固定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10