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特許6990576室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物、その硬化物及び積層体
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  • 特許-室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物、その硬化物及び積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物、その硬化物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20220104BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20220104BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20220104BHJP
   B32B 37/12 20060101ALI20220104BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20220104BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220104BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K5/5415
C08K3/00
B32B37/12
B32B15/04 B
B32B27/00 101
B32B27/20 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017245747
(22)【出願日】2017-12-22
(65)【公開番号】P2019112509
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000221111
【氏名又は名称】モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大場 敏男
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-180382(JP,A)
【文献】特開2007-321122(JP,A)
【文献】特開2015-098557(JP,A)
【文献】特開2017-088689(JP,A)
【文献】特開2009-007553(JP,A)
【文献】特開平09-241509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B32B 37/00- 37/30
B32B 15/00- 15/20
B32B 27/00- 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(A1)両末端がトリアルコキシシリル基で封鎖された直鎖状のポリオルガノシロキサンの20~80質量%と(A2)両末端がジアルコキシシリル基で封鎖された直鎖状のポリオルガノシロキサンの80~20質量%の混合物からなるポリオルガノシロキサン混合物の100質量部、
(B)無機充填剤の1~100質量部、
(C)一般式:R Si(OR4-a
(式中、Rは1価炭化水素基、Rはアルキル基又はアルコキシ置換アルキル基、aは0、1、又は2である。)
で表されるアルコキシシランの部分加水分解縮合物の0.5~15質量部、
(D)チタンキレート触媒の0.1~10質量部、及び
(E)接着性付与剤の0.01~5質量部
を含有することを特徴とする室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項2】
前記(B)無機充填剤は炭酸カルシウム又はシリカ粉末からなることを特徴とする請求項1に記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項3】
前記炭酸カルシウムは重質炭酸カルシウム及び軽質炭酸カルシウムから選ばれる1種以上からなることを特徴とする請求項2に記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項4】
(C)アルコキシシランの部分加水分解縮合物の平均重合度は、3~50であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物が硬化してなる硬化物。
【請求項6】
金属基材と、前記金属基材表面に配置された接着性樹脂と、前記接着性樹脂表面に配置されたガラス又はガラスセラミックスからなる耐熱プレートを備える積層体であって、
前記接着性樹脂は、請求項5に記載の硬化物からなる積層体。
【請求項7】
前記耐熱プレートの前記接着性樹脂側の主面に着色コーティングを備える請求項6に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物とその硬化物及び積層体に係り、特に、表面硬化性及び深部硬化性が良好で、貯蔵安定性に優れた室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物とその硬化物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
室温で硬化し、ゴム状弾性体を生成するポリオルガノシロキサン組成物の中で、空気中の水分と接触することにより硬化反応が生起するタイプのものは、使用直前に本体(ベースポリマー)や架橋剤、あるいは触媒を秤量したり、これらを混合したりする煩雑さがなく、配合上のミスを生じることがない上、接着性に優れるので、電気・電子工業などにおける弾性接着剤やコーティング剤として、また建築用シーリング剤等として広く用いられている。
【0003】
なかでも、両末端又は片末端にジアルコキシシリル基又はトリアルコキシシリル基、あるいはヒドロキシシリル基等を有するポリオルガノシロキサンをベースポリマーとして使用し、これに無機充填剤として軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、シリカ等を、架橋剤としてアルコキシシランを、さらにチタンキレート触媒等を組み合わせることにより、接着性、接着耐久性、モジュラスなど硬化後の各種物性の向上を図っている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-152020号公報
【文献】特開2003-49072公報
【文献】特開2003-269818公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、透明基材表面に従来のシリコーンゴム組成物の硬化物(シリコーンゴム)を形成させた際に、シリコーンゴムの外周近傍に、薄いシミだしが生じることを、前記透明基材のシリコーンゴムの形成された側と反対側の面から観測した。このシミだしは、深部硬化が不十分であるために、シリコーンゴム組成物の未反応成分がシリコーンゴムの外部に染み出たものと考えられる。このようなシミだしが生じる場合、用途によっては外観を損なう場合があった。
【0006】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであって、貯蔵安定性に優れ、表面硬化性及び深部硬化性に優れ、優れた機械的性質の硬化物を与える室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、(A)(A1)両末端がトリアルコキシシリル基で封鎖された直鎖状のポリオルガノシロキサン20~80質量%と(A2)両末端がジアルコキシシリル基で封鎖された直鎖状のポリオルガノシロキサン80~20質量%の混合物からなるポリオルガノシロキサン混合物の100質量部、(B)無機充填剤の1~100質量部、(C)一般式:R Si(OR4-a(式中、Rは1価炭化水素基、Rはアルキル基又はアルコキシ置換アルキル基、aは0、1、又は2である。)で表されるアルコキシシランの部分加水分解縮合物の0.5~15質量部、(D)チタンキレート触媒0.1~10質量部、及び(E)接着性付与剤0.01~5質量部を含有することを特徴とする。
【0008】
本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物において、前記(B)無機充填剤は炭酸カルシウム又はシリカ粉末からなることが好ましい。また、炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウム及び軽質炭酸カルシウムから選ばれる1種以上からなることが好ましい。
【0009】
本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物において、(C)アルコキシシランの部分加水分解縮合物の平均重合度は、3~50であることが好ましい。
【0010】
本発明の硬化物は、上記本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物が硬化してなることを特徴とする。
【0011】
本発明の積層体は、金属基材と、前記金属基材表面に配置された接着性樹脂と、前記接着樹脂表面に配置されたガラス又はガラスセラミックスからなる耐熱プレートを備える積層体であって、前記接着性樹脂は、上記本発明の硬化物からなることを特徴とする。また、本発明の積層体において、前記耐熱プレートの前記接着性樹脂側の主面に着色コーティングを備えることが好ましい。
【0012】
なお、本明細書において、「ジアルコキシシリル基」は、末端のケイ素原子に2個のアルコキシ基と、1個の1価炭化水素基(置換炭化水素基を含む。)がそれぞれ結合された「ジアルコキシモノオルガノシリル基」をいう。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、貯蔵安定性に優れ、表面硬化性及び深部硬化性に優れ、優れた機械的性質の硬化物を与える室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、貯蔵安定性に優れ、表面硬化性及び深部硬化性に優れた本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を硬化させることで機械的性質の優れた硬化物を得ることができる。
また、本発明によれば、上記表面硬化性及び深部硬化性に優れた組成物により得られる硬化物を有することで、硬化物からのシミだしのない外観に優れた積層体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係るIH調理器具を概略的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、(A)ポリオルガノシロキサン混合物の100質量部、(B)無機充填剤の1~100質量部、(C)一般式:R Si(OR4-a(式中、Rは1価炭化水素基、Rはアルキル基又はアルコキシ置換アルキル基、aは0、1、又は2である。)で表されるアルコキシシランの部分加水分解縮合物の0.5~15質量部、(D)チタンキレート触媒0.1~10質量部、及び(E)接着性付与剤の0.01~5質量部を含有する。以下、上記の各成分について説明する。
【0016】
本実施形態において、(A)ポリオルガノシロキサン混合物は、室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物のベースポリマーである。(A)ポリオルガノシロキサン混合物は、(A1)両末端がトリアルコキシシリル基で封鎖された直鎖状のポリオルガノシロキサン(以下「両末端トリアルコキシシリル基封鎖ポリオルガノシロキサン」ともいう。)及び任意に(A2)両末端がジアルコキシシリル基で封鎖された直鎖状のポリオルガノシロキサン(以下「両末端ジアルコキシシリル基封鎖ポリオルガノシロキサン」ともいう。)を含む。(A)成分中の(A1)成分の含有量は(A)成分の全量に対して20~100質量%であり、(A2)成分の含有量は(A)成分の全量に対して80~0質量%である。
【0017】
(A1)成分は、例えば下記一般式(A1)で表されるオルガノポリシロキサンである。
【0018】
【化1】
【0019】
上記一般式(A1)において、Rはアルキル基、Xは2価の酸素(オキシ基)又は2価の炭化水素基である。Rは1価炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基及びシアノアルキル基から選ばれる基である。複数のR、R及びXは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0020】
上記一般式(A1)において、nは、(A1)両末端トリアルコキシシリル基封鎖ポリオルガノシロキサンの平均重合度を表し、23℃における粘度が好ましくは0.02~1000Pa・s、より好ましくは0.1~500Pa・sとなるような正数である。具体的には、nは、好ましくは20~2500であり、より好ましくは80~2000である。
【0021】
(A1)成分の23℃における粘度は、上記したように好ましくは0.02~1000Pa・s、より好ましくは0.1~500Pa・sである。(A1)成分の粘度は高いほうが、表面硬化性が良好になる傾向である。ただし、(A1)成分の粘度は低すぎると硬化後のゴム弾性が乏しくなり、高すぎると作業性が低下する。
【0022】
のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のような低級アルキル基が例示される。
【0023】
Xの2価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等のアルキレン基;フェニレン基等が例示される。合成が容易なことから、Xはオキシ基又はエチレン基が好ましく、オキシ基が特に好ましい。
【0024】
の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基等のアラルキル基等が例示される。また、ハロゲン化炭化水素基としては、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が、シアノアルキル基としては、2-シアノエチル基、3-シアノプロピル基等が挙げられる。合成が容易であり、かつ(A1)成分が分子量の割に低い粘度を有し、組成物の作業性と、硬化物の良好な機械的性質を両立し易い点から、R全体の85%以上がメチル基であることが好ましく、実質的にすべてのRがメチル基であることがより好ましい。
【0025】
特に、硬化物に、耐熱性、耐放射線性、耐寒性又は透明性を付与する場合には、Rの一部として必要量のフェニル基を、耐油性、耐溶剤性を付与する場合には、Rの一部として3,3,3-トリフルオロプロピル基や3-シアノプロピル基を、また塗装適性を有する表面を付与する場合には、Rの一部として長鎖アルキル基やアラルキル基を、それぞれメチル基と併用するなど、Rの構造は目的に応じて任意に選択することができる。
【0026】
(A1)成分は、シラノール基末端ポリオルガノシロキサンと、該ポリオルガノシロキサンのシラノール基に対して過剰モルのテトラアルコキシシランとを触媒の存在下又は不存在下で縮合させることにより得られる。この触媒としては、公知のアミン、カルボン酸、亜鉛、錫、鉄等の金属カルボン酸塩等が用いられる。触媒の不存在下で縮合反応を行う場合は、反応混合物をテトラアルコキシシランの還流温度に加熱することが好ましい。縮合反応におけるテトラアルコキシシラン/SiOHのモル比は、5~15程度が好ましい。
【0027】
(A1)成分は、ビニル基末端ポリオルガノシロキサンに、トリアルコキシシランを付加させたり、水素基末端ポリオルガノシロキサンに、ビニルトリアルコキシシランを付加させたりすることでも得られる。
【0028】
(A)成分中の(A1)成分の含有量は(A)成分の全量に対して20~100質量%である。(A1)成分の含有量は20質量%以上であることで、表面硬化性が良好であり、硬化物のシミだしを抑制することができ、貯蔵安定性に優れ、また、硬化物の機械的性質が良好である。表面硬化性及び硬化物の機械的性質を向上させる点で(A1)成分の含有量は(A)成分の全量に対して40~80質量%であることが好ましい。
【0029】
(A1)成分である両末端トリアルコキシシリル基封鎖ポリオルガノシロキサンを配合することにより、接着性を向上させ、また、硬化物の硬さ、引張り強さ、伸び及び接着性等の機械的性質を向上させることができる。
【0030】
(A2)成分は、例えば下記一般式(A2)で表されるオルガノポリシロキサンである。
【0031】
【化2】
【0032】
(A2)成分を表す前記一般式において、Rはアルキル基であり、前記したRと同様の基が挙げられる。さらに、Xは2価の酸素(オキシ基)又は2価の炭化水素基であり、上記一般式(A1)におけるXと同様の基が挙げられる。また、Rは1価炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基及びシアノアルキル基から選ばれる基であり、前記したRと同様の1価炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基及びシアノアルキル基が挙げられる。複数のR、R及びXは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0033】
上記一般式(A2)において、mは、(A2)両末端ジアルコキシシリル基封鎖ポリオルガノシロキサンの平均重合度を表し、23℃における粘度が好ましくは0.02~1000Pa・s、より好ましくは0.1~500Pa・sとなるような正数である。具体的には、mは、好ましくは20~2500であり、より好ましくは80~2000である。
【0034】
(A1)成分及び(A2)成分の平均重合度n、mは、それぞれ、(A1)成分及び(A2)成分の重量(質量)平均分子量を用いて下記式によって概算した値を用いることができる。
n=(A1)成分の重量平均分子量/([SiOR ]単位の分子量)
m=(A2)成分の重量平均分子量/([SiOR ]単位の分子量)
【0035】
なお、(A1)成分、(A2)成分及び後述する(C)成分の重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを基準とするGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)により求められる。また、[SiOR ]単位の分子量及び[SiOR ]単位の分子量は、R及びRがメチル基である場合には、いずれも74である。
【0036】
(A2)成分の23℃における粘度は、上記したように好ましくは0.02~1000Pa・s、より好ましくは0.1~500Pa・sである。(A2)成分の粘度は高いほうが、表面硬化性が良好になる傾向である。ただし、(A2)成分の粘度は低すぎると硬化後のゴム弾性が乏しくなり、高すぎると作業性が低下する。
【0037】
(A2)成分は、(A1)成分と同様の方法で得ることができる。すなわち、テトラアルコキシシランに代えて、トリアルコキシシランを用い、シラノール基末端ポリオルガノシロキサンと縮合させることにより、得ることができる。縮合反応におけるトリアルコキシシラン/SiOHのモル比は、5~15程度が好ましい。また、(A2)成分は、ビニルジアルコキシシランを用い、(A1)成分と同様の付加反応によって得ることもできる。
【0038】
(A)成分中の(A2)成分の含有量は、(A)成分の全量に対して80~0質量%であり、60~20質量%であることが好ましい。
【0039】
(A2)成分である両末端ジアルコキシシリル基封鎖ポリオルガノシロキサンを配合することにより、本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の硬化速度や硬化物の硬さを調節することができる。
【0040】
本実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物において、(A)成分は、本発明の効果を損なわない限り、(A1)成分及び(A2)成分以外の成分を含んでいてもよいが、(A1)成分及び(A2)成分のみからなることが好ましい。(A)成分に含まれ得る(A1)成分及び(A2)成分以外の成分としては、分子内に分岐を有する末端アルコキシシリル基封鎖ポリオルガノシロキサンや、分子鎖にアルコキシ基を有する末端アルコキシシリル基封鎖ポリオルガノシロキサン等である。
【0041】
本実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は(B)無機充填剤の1~100質量部を含む。(B)成分の無機充填剤は、室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の硬化物に機械的強度を付与する。(B)無機充填剤としては、沈澱シリカなどの湿式シリカ、煙霧質シリカ(ヒュームドシリカ)や焼成シリカ等の乾式シリカ、石英微粉末、炭酸カルシウム、カーボンブラック、けいそう土、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、アルミノケイ酸等を使用することができる。
【0042】
硬化物の補強性の観点から、(B)無機充填剤としては、シリカ粉末、例えば沈澱シリカ粉末、煙霧質シリカなどが好ましい。また、硬化物に高い機械的強度を付与する点では、(B)無機充填剤として、炭酸カルシウムを配合することが好ましい。
【0043】
シリカ粉末としては、特に、BET法による比表面積(以下、BET比表面積という。)が50m/g以上であるシリカ粉末、あるいはその表面をオルガノクロロシラン類、ポリオルガノシロキサン類、オルガノシラザン類等の公知の処理剤で表面処理したものの使用が好ましい。このように表面処理されたシリカ粉末は、硬化前の組成物に適度の流動性を与え、かつ硬化して得られるゴム状弾性体に、その用途に応じて要求される高い機械的強度を付与することができる。
【0044】
炭酸カルシウムとしては、例えば、重質炭酸カルシウムや合成(軽質)炭酸カルシウムを使用することができる。炭酸カルシウムは、補強性の充填剤であり、硬化前の組成物に高い流動性と粘稠性を付与し、耐スランプ性やチキソ性を付与する。炭酸カルシウムの粒径(平均粒径)は、0.01~10μmの範囲であることが好ましい。炭酸カルシウムの平均粒径が10μmを超えると、硬化物の機械的性質が低下するばかりでなく、硬化物の伸張性が十分でなくなる。また、平均粒径が0.01μm未満の場合には、硬化前の組成物の粘度が著しく上昇し流動性が低下する。なお、この平均粒径の値は、電子顕微鏡による画像解析によって測定された値、比表面積から換算された平均粒径、粒度分布からの質量換算による50%径から求められた平均粒径、あるいはレーザー回折・散乱法で測定された平均粒径のいずれであってもよい。
【0045】
また、このような炭酸カルシウムの表面を、ステアリン酸やパルミチン酸のような高級脂肪酸、樹脂(ロジン)酸、又はそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などの金属塩)やエステルで表面処理したものを用いてもよい。高級脂肪酸又はそのエステルで表面処理された炭酸カルシウムを使用した場合には、組成物中における炭酸カルシウムの分散性が改善されるため、加工性が向上する。
【0046】
(B)無機充填剤として炭酸カルシウムを用いる場合には、軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムを併用することが好ましく、さらに、このときの軽質炭酸カルシウムは、上述のように表面処理した軽質炭酸カルシウムがより好ましい。軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムを併用しその量比を調節することで、硬化物の硬さや接着性を調節することができる。
【0047】
(B)成分である無機充填剤の配合量は、組成物の使用目的を損なわないかぎり限定されず、通常、(A)成分100質量部に対して1~100質量部である。沈澱シリカ、煙霧質シリカのようなシリカ粉末を配合する場合には、その配合量は、(A)成分100質量部に対して1~30質量部とすることが好ましく、3~25質量部の範囲が特に好ましい。また、このようなシリカ粉末以外の前記無機充填剤、例えば炭酸カルシウムを配合する場合には、その配合量は、(A)成分100質量部に対して5~100質量部とすることが好ましく、30~70質量部の範囲がより好ましく、40~60質量部程度がさらに好ましい。いずれの場合も、(B)無機充填剤の配合量が多すぎると、組成物の粘度が著しく上昇して塗布などにおける作業性が悪くなり、少なすぎると、硬化物の機械的強度が十分でなくなることがある。
【0048】
(B)無機充填剤として軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムを併用する場合、軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムの質量比は、優れた機械的性質を得る点から、軽質炭酸カルシウム:重質炭酸カルシウムで10:0~5:5が好ましい。
【0049】
本実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物において、(C)成分であるアルコキシシランの部分加水分解縮合物は、(C)一般式:R Si(OR4-a(式中、Rは1価炭化水素基、Rはアルキル基又はアルコキシ置換アルキル基、aは0、1、又は2である。)で表されるアルコキシシランの部分加水分解縮合物である。
【0050】
上記式(C)中、Rは1価炭化水素基であり、前記したRと同様の基が挙げられる。Rはアルキル基又はアルコキシ置換アルキル基である。また、aは0、1又は2である。
【0051】
アルコキシシランとしては、具体的には、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリ(エトキシメトキシ)シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等が例示される。
【0052】
(C)成分であるアルコキシシランの部分加水分解縮合物は、上記したアルコキシシランの2分子以上が、アルコキシ基を介して加水分解縮合した構造の化合物である。(C)アルコキシシラン部分加水分解縮合物における平均重合度は、3~50であることが好ましく、5~30であることがより好ましく、7~15であることがさらに好ましい。(C)アルコキシシラン部分加水分解縮合物の重合度は3以上であることで、深部硬化性が良好であり、50以下であることで、室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の他の必須成分との相溶性に優れるため、作業性を向上できる。
【0053】
(C)アルコキシシラン部分加水分解縮合物は、例えば、上記したアルコキシシランに塩酸水を滴下し、60~80℃に加熱して縮合反応させ、中和、脱溶媒することで得られる。このときの反応時間は例えば、4~6時間程度である。また、(C)アルコキシシラン部分加水分解縮合物における平均重合度は、(C)アルコキシシラン部分加水分解縮合物の重量平均分子量から、式:平均重合度=重量平均分子量/(アルコキシシラン部分加水縮合物の重合単位の分子量)によって近似値として概算することができる。
【0054】
(C)アルコキシシラン部分加水分解縮合物は、アルコキシシランの単量体が直鎖状に重合した構造であっても、分岐して重合した構造であっても、両者が混合した構造であってもよい。このような(C)アルコキシシラン部分加水分解縮合物の構造は、必ずしも明確に分析することはできないが、その平均重合度は上記式によって概算した値と同等あるいは類似した値となる。このような近似値として例えば、(C)アルコキシシラン部分加水分解縮合物としてメチルトリメトキシシランを上記の条件で部分加水分解縮合させた部分加水分解縮合物を用いる場合、その重合度は、得られた(C)メチルトリメトキシシラン部分加水分解縮合物の重量平均分子量/(CH(SiO)(OCH)の分子量=90)で概算することができる。本実施形態における(C)アルコキシシラン部分加水分解縮合物の平均重合度は、上記式で算出される近似が、好ましい範囲内であればよい。
【0055】
本実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサンは、(C)アルコキシシラン部分加水分解縮合物を含むことで、表面硬化性及び深部硬化性を向上させることができる。そのため、硬化後の硬化物中に未反応成分が残りにくく、硬化物からのシミだしを抑制することができる。また、硬化物に優れた機械的性質を付与することができる。
【0056】
(C)アルコキシシラン部分加水分解縮合物の配合量は、(A)ポリオルガノシロキサン混合物の100質量部に対して0.5~15質量部であり、1~10質量部が好ましい。(C)アルコキシシラン部分加水分解縮合物の量は0.5質量部以上であることで、優れた機械的強度の硬化物が得られる。15質量部以下であることで、深部硬化性に優れ、シミだしを抑制し易い。
【0057】
本発明の実施形態において、(D)成分であるチタンキレート触媒としては、(ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(メチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(アセルアセトン)チタン、ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジメトキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等の公知のチタンキレート化合物が挙げられる。
【0058】
(D)チタンキレート触媒の配合量は、(A)ポリオルガノシロキサン混合物の100質量部に対して0.1~10質量部であり、1~5質量部であることが好ましい。
【0059】
本発明の実施形態において、(E)成分である接着性付与剤は、組成物の接着性及び接着耐久性をより高める成分である。
【0060】
(E)接着性付与剤として、下記式(3)に示されるイソシアヌル酸1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]のようなイソシアヌレート化合物を使用することもできる。
【0061】
【化3】
【0062】
(E)接着性付与剤として使用されるイソシアヌレート化合物としては、上記イソシアヌル酸1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]の窒素原子に結合した(トリメトキシシリル)プロピル基の1つ又は2つが、2-プロペニル基や(ジメトキシシリルメチル)プロピル基に変換された化合物を用いてもよい。
【0063】
また、(E)接着性付与剤としては、一般式:R 4-qSiYqで表されるシラン化合物が挙げられる。式中、Rは互いに同一でも異なっていてもよい置換又は非置換の1価の炭化水素基を表し、Yは加水分解性基を表す。またqは、平均2を超え4以下の数である。Rとしては、置換のアミノ基、エポキシ基、イソシアナト基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基又はハロゲン原子で置換されたアルキル基やフェニル基が例示される。置換アルキル基としては、置換メチル基、3-置換プロピル基、4-置換ブチル基が例示されるが、合成が容易なことから、3-置換プロピル基が好ましい。
【0064】
(E)接着性付与剤として使用可能な前記一般式を有するシラン化合物としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、3-アミノプロピルトリアセトアミドシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジメチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランのような置換又は非置換のアミノ基含有シラン;3-グリシドキシトリメトキシシラン、3-グリシドキシメチルジメトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランのようなエポキシ基含有シラン;3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルメチルジメトキシシランのようなイソシアナト基含有シラン;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランのような(メタ)アクリロキシ基含有シラン;3-メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプト基含有シラン;及び3-クロロプロピルトリメトキシシランのようなハロゲン原子含有シランが例示される。中でも、前記した(D)チタンキレート触媒への影響が少ないエポキシ基含有シラン、イソシアナト基含有シランがより好ましい。また、アミノ基含有シランとエポキシ基含有シランの混合物あるいは反応物などの使用が好ましい。
【0065】
室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物中での相溶性の観点から、(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.01~5質量部である。(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.01以上であることで十分な接着性向上効果が得られ、またその発現も速い。また、5質量部以下であることで、保存中の分離や硬化物の収縮が生じるのを抑えることができ、保存安定性及び作業性の低下、また黄変現象の発生を抑えられる。(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1~2質量部の範囲が好ましい。
【0066】
本実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、必要に応じて、チクソトロピー性付与剤、粘度調整剤、流動性調整剤、顔料、難燃剤、有機溶媒、防かび剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、耐熱向上剤など、各種の機能性添加剤を含んでいてもよい。
【0067】
本実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、通常ポリオルガノシロキサン組成物に、組成物の粘度調整や硬化物への可塑性の付与を目的として配合されるジアルキルポリシロキサン等の、非架橋性のポリオルガノシロキサンを実質的に含有しないことが好ましい。また、通常ポリオルガノシロキサン組成物に架橋剤として配合される、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン(単量体)を実質的に含有しないことが好ましい。これら非架橋性のポリオルガノシロキサンやアルコキシシランを実質的に含有しないことで、本実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物はその硬化物からのシミだしを著しく抑えることができる。なお、「実質的に含有しない」とは、例えば、必須成分である(A)~(E)の各成分とともに、これらの原料や不純物に由来して含有される等で組成物に不可避的に含有されるもの以外に、上記非架橋性のポリオルガノシロキサンやアルコキシシランが配合されないことをいう。
【0068】
本実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、(A)~(E)の各成分及び前記したその他の任意成分の所定量を乾燥雰囲気で均一に混合することにより、一液型の室温硬化性組成物として得られる。この組成物は、空気中に暴露すると湿分によって架橋反応が進行し、ゴム弾性体に硬化する。また、二液型の室温硬化性組成物として調製することもできる。二液型の組成物においては、主剤と硬化剤を空気中で混合することにより、一液型の室温硬化性組成物と同様に硬化する。
【0069】
そして、実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、貯蔵安定性に優れ、表面硬化性及び深部硬化性に優れている。また、組成物を上記のように硬化させて得られた硬化物は、硬さ、引張り強さ、伸び、接着性等の機械的性質に優れている。
【0070】
実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、表面硬化性及び深部硬化性に優れ、またその硬化物は上述のような優れた機械的性質を有するため、例えば、電気・電子機器、建築用構造物、土木工事用構造物などの用途における接着剤、シーリング剤として好適である。特に、硬化物からのシミだしがないことから、外観の重視される用途に適している。
【0071】
このような外観の重視される用途として、例えば、IH調器具を例に説明する。図1は、IH調理器具1の構造を概略的に示す断面図である。IH調理器具1は、例えば、誘導コイル10と、誘導コイル10の上方を覆う、ガラス製ないしガラスセラミック製の、耐熱性のトッププレート11を備えている。トッププレート11上面には、IH対応の調理器具、例えばIH用鍋、IH用フライパン、IH用ヤカンといったIH用調理器具が載せられる。そしてIH用調理器具自身を誘導加熱により発熱させて、IH用調理器具の中の肉片や野菜片などの被調理物を加熱調理する。誘導コイル10は、非磁性ステンレスやアルミニウム等の非磁性金属製板からなる筐体12に収容される。
【0072】
上記IH調器具1において、筐体12を構成する、誘導コイル10上方の金属板12a表面上に接着性樹脂13を介してトッププレート11が接着される。このトッププレート11の、IH調理器具が載置される上面とは反対側の下面11aに、意匠性の向上などを目的として、貴金属コーティングや着色ガラスコーティングからなる着色コーティングが設けられて、着色が施されることがある。
【0073】
ここで、接着性樹脂13として従来の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の硬化物を用いた場合、硬化物からのシミだしが、着色コーティングに付着して内部に染みこむことがある。この場合、トップレートの上方からこのシミだしが視認され、外観を損なう。これに対し、本実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物によれば、硬化物からのシミだしが著しく抑制されるため、上記のようなIH調理器具のトッププレートの外観を向上させることができる。
【実施例
【0074】
以下、本発明の実施例について記載するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、部は質量部を示し、粘度は23℃における値である。
【0075】
以下の実施例及び比較例において使用した各成分は次のものである。
A1-1:両末端がトリメトキシシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン(粘度22Pa・s、平均重合度1020)
A2-1:両末端がメチルジメトキシシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン(粘度11Pa・s、平均重合度820)
A3:両末端がトリメチルシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン(粘度:0.1Pa・s、平均重合度90)
【0076】
B1:脂肪酸(ステアリン酸)で表面処理された軽質炭酸カルシウム(平均粒子径:0.05μm)
B2:未処理の重質炭酸カルシウム(平均粒子径:2.2μm)
B3:乾式シリカ(BET法による比表面積:130m/g)
【0077】
C1:メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物(平均重合度:7(7量体))
C2:メチルトリメトキシシラン
【0078】
D:ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン
E:イソシアヌル酸1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]
【0079】
(C1:メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物の調整)
(C1)メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物は次のように調製した。メチルトリメトキシシランに塩酸水を滴下し、70℃に加熱し、5時間程度攪拌して縮合反応させた。その後、中和、脱溶媒して(C1)メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物を得た。得られた(C1)メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物における平均重合度の近似値は、(C1)メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物の重量平均分子量/90によって概算した。
【0080】
(実施例1)
(A1-1)両末端がトリメトキシシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン(粘度22Pa・s、平均重合度1020)80質量部と、(A2-1)両末端がメチルジメトキシシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン(粘度11Pa・s、平均重合度820)20質量部を混合して、ポリオルガノシロキサン混合物100質量部を調製した。このポリオルガノシロキサン混合物100質量部に、(B1)脂肪酸で表面処理された軽質炭酸カルシウム45質量部、(B2)未処理の重質炭酸カルシウム5質量部、(C1)メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物(平均重合度:7)3.5質量部、(D)ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン1.0質量部、(E)イソシアヌル酸1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]0.5質量部を混合して、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
【0081】
(実施例2~7、比較例1~3)
(A)~(E)成分の種類及び配合量を表1のように変更して、実施例2~7及び比較例1~3のポリオルガノシロキサン組成物を得た。
【0082】
次に、上記実施例及び比較例で得られたポリオルガノシロキサン組成物について、タックフリータイム及び硬化物の硬さ、引張り強さ、伸び、せん断接着力、深部硬化性並びにシミだし性を、以下の方法で測定し、評価した。これらの測定・評価結果を、表1の下欄に示す。
【0083】
[タックフリータイム]
ポリオルガノシロキサン組成物を、有機溶剤で表面を洗浄した直径5cmのアルミニウム製シャーレの表面に塗布し、23℃、相対湿度50%(RH)の環境下、指で表面に接触して乾燥状態にあることを確認するに至る時間を測定した。
【0084】
[硬さ、引張り強さ及び伸び]
ポリオルガノシロキサン組成物をディスペンスして、2mmのシート状に成形した後、23℃、50%RHの雰囲気で7日間放置して硬化させ、ポリオルガノシロキサン組成物の硬化物を得た。得られた硬化物の硬さ(初期硬さ)を、タイプA硬度計で測定した。また、引張り強さをJIS K 6249に準拠して測定した。さらに、伸びをJIS K 6249に準拠して測定した。
【0085】
[せん断接着力]
組成物を、アルミニウム基材の表面に、長さ10mm、幅25mmで、厚さ1mmになるように塗布し、23℃、50%RHの雰囲気に7日間放置して硬化させた。
そして、得られた試験片について、島津製作所製オートグラフにより引張速度10mm/minで引張試験を行い、せん断接着力を測定した。
【0086】
[深部硬化性]
組成物を、ポリスチレンカップ(15ml)に封入し、最上部を平滑にした後、23℃、50%RHの雰囲気に7日間放置して硬化させた。そして、得られた試験片について、硬化した部分を取り出し、その厚さを厚さ測定器で測定した。硬化した部分の厚さが厚いほど深部硬化性が良好である。
【0087】
[シミだし性試験]
一方の主面に着色コーティングを有するプリントガラス(100mm×100mm、厚さ4mm)のプリント面(着色コーティングを有する面)に組成物を1g塗布し、組成物の厚さが1mmになるようにアルミニウム基材をのせ、40℃、50%RHの雰囲気に2時間放置して硬化させた。そして、得られた試験片について、90℃、90%RHの雰囲気に4時間放置して、シミの有無を目視にてプリント面の反対側の面から確認した。
【0088】
<貯蔵安定性試験(加熱劣化促進後特性)>
湿気を遮断した容器に組成物を入れ、70℃で5日間加熱し劣化させた後、前記と同様にしてタックフリータイム、硬さ、引張り強さ、伸び、せん断接着力及び深部硬化性を測定した。
【0089】
【表1】
【0090】
表1に示されるように、(A)ポリオルガノシロキサン混合物に、(C)アルコキシシラン部分加水分解縮合物を架橋剤として配合し、(D)チタンキレート触媒を硬化触媒として含む本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、表面硬化性及び深部硬化性に優れている。さらに(B)無機充填剤及び(E)接着性付与剤を含むため、硬さ、引張り強さ、伸び及びせん断接着力など、優れた機械的性質の硬化物を生成することができる。また、保存安定性に優れることから、保存後も、表面硬化性及び深部硬化性の低下、硬化物の機械的性質の低下が極めて小さい。
【0091】
さらに、上記表面硬化性及び深部硬化性に優れた組成物により得られる硬化物からのシミだしが著しく抑制されるので、ガラス基材表面に、本発明の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の硬化物を形成した場合に、外観に優れた積層体を得ることができる。
【符号の説明】
【0092】
1…IH調理器具、11…トッププレート、12…筐体、12a…金属板、13…接着性樹脂。
図1