(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】ハンドル用被覆部材、ハンドル、及びハンドルの製造方法
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
B62D1/06
(21)【出願番号】P 2018057037
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】植松 展隆
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-76556(JP,A)
【文献】特開2015-189294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する把持部本体部の少なくとも一部を覆って巻き付けられて固定され前記把持部本体部とともに運転者に把持操作される把持部を構成するハンドル用被覆部材であって、
切込みである分割部を有するシート状の被覆部材本体と、
前記分割部に沿う非設定範囲を除いて前記被覆部材本体に保持された被保持体とを具備し、
前記分割部は、この分割部と前記被保持体の非設定範囲とが前記凹部の開口縁より内方に配置されるように前記凹部に収容される
ことを特徴とするハンドル用被覆部材。
【請求項2】
分割部は、自然状態で両縁部が互いに略一致する
ことを特徴とする請求項1記載のハンドル用被覆部材。
【請求項3】
被保持体は、ヒータとセンサとのいずれかである
ことを特徴とする請求項1または2記載のハンドル用被覆部材。
【請求項4】
運転者に把持操作される把持部を有するハンドルであって、
前記把持部は、
凹部を有する把持部本体部と、
この把持部本体部の少なくとも一部を覆って巻き付けられて固定される請求項1ないし3いずか一記載のハンドル用被覆部材とを具備した
ことを特徴とするハンドル。
【請求項5】
凹部を有する把持部本体部を備え運転者に把持操作される把持部を有するハンドルの製造方法であって、
分割予定部を有するシート状の被覆部材本体と、前記分割予定部に沿う非設定範囲を除いて前記被覆部材本体に保持された被保持体とを備えたハンドル用被覆部材を用い、
前記凹部に前記分割予定部を位置合わせするように前記ハンドル用被覆部材を前記把持部本体部に巻き付けて固定し、
前記分割予定部にて前記被覆部材本体を切り開いて分割部を形成するとともに、この分割部と前記被保持体の非設定範囲とが前記凹部の開口縁より内方に配置するように前記分割部を前記凹部に収容する
ことを特徴とするハンドルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者に把持操作されるハンドルの把持部を把持部本体部とともに構成するハンドル用被覆部材、これを備えたハンドル、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のハンドルすなわちステアリングホイールに対して機能を追加付与することが要求されてきている。例えば、ヒータやセンサユニットなどの電気回路を有するシートをステアリングホイールの把持部であるリム部の表皮部の下部に設定する構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-189294号公報 (第5-9頁、
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、自動車のハンドルであるステアリングホイールに対して、近年デザインの要求が高まっている。例えばリム部の乗員側や外周部に溝部が設定され、その溝部内に表皮部の端末部を埋設する、いわゆる木目込み風の外観処理を施したステアリングホイールなども増加してきている。
【0005】
このようなステアリングホイールにおいては、通常溝部の周辺の位置にヒータやセンサを連続して設定できないため、溝部の周辺の位置にも可能な限り機能部品の作用範囲を拡張することが求められる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、被保持体を把持部本体部の凹部の開口縁に配置可能とするとともに把持部本体部に対して取り付けやすいハンドル用被覆部材、これを備えたハンドル、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のハンドル用被覆部材は、凹部を有する把持部本体部の少なくとも一部を覆って巻き付けられて固定され前記把持部本体部とともに運転者に把持操作される把持部を構成するハンドル用被覆部材であって、切込みである分割部を有するシート状の被覆部材本体と、前記分割部に沿う非設定範囲を除いて前記被覆部材本体に保持された被保持体とを具備し、前記分割部は、この分割部と前記被保持体の非設定範囲とが前記凹部の開口縁より内方に配置されるように前記凹部に収容されるものである。
【0008】
請求項2記載のハンドル用被覆部材は、請求項1記載のハンドル用被覆部材において、分割部は、自然状態で両縁部が互いに略一致するものである。
【0009】
請求項3記載のハンドル用被覆部材は、請求項1または2記載のハンドル用被覆部材において、被保持体は、ヒータとセンサとのいずれかであるものである。
【0010】
請求項4記載のハンドルは、運転者に把持操作される把持部を有するハンドルであって、前記把持部は、凹部を有する把持部本体部と、この把持部本体部の少なくとも一部を覆って巻き付けられて固定される請求項1ないし3いずか一記載のハンドル用被覆部材とを具備したものである。
【0011】
請求項5記載のハンドルの製造方法は、凹部を有する把持部本体部を備え運転者に把持操作される把持部を有するハンドルの製造方法であって、分割予定部を有するシート状の被覆部材本体と、前記分割予定部に沿う非設定範囲を除いて前記被覆部材本体に保持された被保持体とを備えたハンドル用被覆部材を用い、前記凹部に前記分割予定部を位置合わせするように前記ハンドル用被覆部材を前記把持部本体部に巻き付けて固定し、前記分割予定部にて前記被覆部材本体を切り開いて分割部を形成するとともに、この分割部と前記被保持体の非設定範囲とが前記凹部の開口縁より内方に配置するように前記分割部を前記凹部に収容するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のハンドル用被覆部材によれば、被覆部材本体に形成された切込みである分割部を、この分割部と被保持体の非設定範囲とが凹部の開口縁より内方に配置されるように凹部に収容することで、被保持体を把持部本体部の凹部の開口縁に容易に配置できるとともに、把持部本体部に取り付ける際には、被覆部材本体を実質的に1枚のシート状として取り扱うことができ、ハンドル用被覆部材を把持部本体部に対して取り付けやすい。
【0013】
請求項2記載のハンドル用被覆部材によれば、請求項1記載のハンドル用被覆部材の効果に加えて、分割部の両縁部が自然状態で互いに略一致するので、被覆部材本体を切り開いて分割部を形成することが可能であり、このように切り開くまで被覆部材本体を1枚のシート状として取り扱うことができ、ハンドル用被覆部材を把持部本体部に対して取り付けやすい。
【0014】
請求項3記載のハンドル用被覆部材によれば、請求項1または2記載のハンドル用被覆部材の効果に加えて、被保持体をヒータとする場合には、把持部に温まりにくい箇所を生じさせにくくでき、被保持体をセンサとする場合には、把持部に運転者の把持を検出しにくい箇所を生じさせにくくできる。
【0015】
請求項4記載のハンドルによれば、ハンドル用被覆部材の被保持体を把持部本体部の凹部の開口縁に配置させて、被保持体の配置範囲を把持部本体部に広く形成できるとともに、ハンドル用被覆部材を把持部本体部に対して取り付けやすいので、ハンドルの製造性を向上できる。
【0016】
請求項5記載のハンドルの製造方法によれば、ハンドル用被覆部材を把持部本体部に取り付けた後に被覆部材本体の分割予定部を切り開いて分割部を形成するので、分割予定部を切り開くまで被覆部材本体を1枚のシート状として取り扱うことができ、ハンドル用被覆部材を把持部本体部に対して取り付けやすく、かつ、分割予定部を切り開いて形成した分割部を、被保持体の非設定範囲とともに凹部の開口縁より内方に配置するように凹部に収容するので、被保持体を把持部本体部の凹部の開口縁に容易に配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)は本発明の第1の実施の形態のハンドルの製造方法のハンドル用被覆部材を把持部本体部に取り付ける工程を模式的に示す断面図、(b)は同上ハンドルの製造方法の被覆部材本体を分割予定部から切り開く工程を模式的に示す断面図、(c)は同上ハンドルの製造方法の分割部を凹部に落とし込む工程を模式的に示す断面図、(d)は同上ハンドルの製造方法の表皮部を凹部に落とし込む工程を模式的に示す断面図である。
【
図2】同上ハンドル用被覆部材の一部を示す平面図である。
【
図3】(a)は同上ハンドルの正面図、(b)は(a)のI-I相当位置の断面図である。
【
図4】(a)は比較例のハンドル用被覆部材の一部を示す平面図、(b)は比較例のハンドルの断面図である。
【
図5】(a)は本発明の第2の実施の形態のハンドルの製造方法のハンドル用被覆部材を把持部本体部に取り付ける工程を模式的に示す断面図、(b)は同上ハンドルの製造方法の分割部を凹部に落とし込む工程を模式的に示す断面図、(c)は同上ハンドルの製造方法の表皮部を凹部に落とし込む工程を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成を、図面を参照して説明する。
【0019】
図3(a)及び
図3(b)において、10は例えば車両としての自動車の(ステアリング)ハンドルであるステアリングホイールである。このステアリングホイール10は、ハンドル本体であるステアリングホイール本体11、及び、このステアリングホイール本体11の乗員側に装着されるパッド体12などを備えている。なお、ステアリングホイール10は、通常傾斜した状態で車両に備えられるステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、ステアリングホイール10を運転者(乗員)側から見て、矢印U方向を上側、矢印D方向を下側、車両の前側すなわち前側上方のフロントガラス側を前側あるいは背面側、車両の後側すなわち後側下方を後側、手前側あるいは正面側として説明する。
【0020】
そして、ステアリングホイール本体11は、把持部としてのリム部(グリップ部)15と、このリム部15の内側に位置するボス部16と、これらリム部15とボス部16とを連結する複数の、本実施の形態では左右及び下部の3本のスポーク部17とから構成されている。また、このステアリングホイール本体11は、ハンドル基部であるステアリングホイール基部18を備えている。また、このステアリングホイール本体11は、ハンドル用被覆部材としてのステアリング用被覆部材20(以下、単に被覆部材20という)を備えている。さらに、このステアリングホイール本体11は、表皮部21を備えている。そして、このステアリングホイール本体11は、図示しないカバー体を備えている。
【0021】
リム部15は、運転者(乗員)により把持操作される部分である。このリム部15は、少なくとも一部が円弧に沿って形成されている。本実施の形態において、このリム部15は、円環状に形成されている。なお、以下、ステアリングホイール本体11の各部の上下左右などの配置は、ステアリングホイール10の中立(ニュートラル)位置を基準とする。
【0022】
ステアリングホイール基部18は、芯金23と、この芯金23の一部を覆い被覆部材20により被覆され樹脂層24とを備えている。
【0023】
芯金23は、例えば金属製であり、ボス部16の車体側となる背面側に、ステアリングシャフトと歯合するセレーション構造を備えた略円筒状のボス25を備えているとともに、このボス25に、芯体を構成するボスプレート26が一体的に固着されている。そして、ボスプレート26から、スポーク部17に対応するスポーク芯金部27が連続して一体的に形成されている。さらに、このスポーク部17のスポーク芯金部27に、リム部15に対応する把持部芯金としてのリム芯金部28が溶接などして固着されている。
【0024】
スポーク芯金部27は、放射状に設けられている。このスポーク芯金部27は、必ずしもすべてのスポーク部17に対応していなくてもよく、一部のスポーク部17は、スポーク芯金部27を備えずにフィニッシャやカバー体などにより構成されていてもよい。本実施の形態において、スポーク芯金部27は、ボスプレート26の左右及び下部から突出してそれぞれリム芯金部28と連結されている。
【0025】
リム芯金部28は、リム部15の一部を構成するものである。このリム芯金部28は、リム部15の形状に対応する形状に形成されている。すなわち、このリム芯金部28は、リム部15の形状に応じて、例えば少なくとも一部が円弧に沿って形成された環状をなしている。本実施の形態において、このリム芯金部28は、円環状に形成されている。
【0026】
樹脂層24は、少なくともリム芯金部28を覆って形成されている。この樹脂層24は、本実施の形態において、例えばリム芯金部28全体、及びスポーク芯金部27の一部を覆って形成されている。より詳細に、この樹脂層24は、リム部15の位置でリム芯金部28を覆う把持部被覆部としてのリム被覆部31と、スポーク部17の位置で、スポーク芯金部27のリム芯金部28と連続する端部から所定距離の領域を覆うスポーク被覆部32とを一体的に備えている。また、この樹脂層24は、例えば断面略円形状に形成されている。そして、この樹脂層24は、例えば軟質の発泡ポリウレタン樹脂を微細発泡させたものが使用される。また、この樹脂層24には、表皮部21の一部を固定するための凹部33が形成されている。そして、この樹脂層24は、図示しない成形型(金型)を用いて成形されている。この成形型は、概略として、一の半型と、他の半型とを備え、これら一の半型と他の半型との間に形成されるキャビティに合成樹脂原料が充填されるようになっている。
【0027】
リム被覆部31は、リム芯金部28とともに、リム部15を構成する把持部本体部としてのリム部本体部35をなすものである。すなわち、樹脂層24は、芯金23とともに、リム部本体部35を構成している。このリム部本体部35は、少なくとも一部が円弧に沿って形成されている。このリム部本体部35は、本実施の形態において、円環状に形成されている。
【0028】
スポーク被覆部32は、リム被覆部31と連続し、このリム被覆部31からスポーク芯金部27側に突出している。このスポーク被覆部32は、本実施の形態において、例えば左右のスポーク部17(スポーク芯金部27)に対応する位置に形成されている。
【0029】
凹部33は、本実施の形態において、例えばリム部本体部35の円弧(円周)に沿ってリム部本体部35に形成されている。この凹部33は、所定幅の溝状に形成されている。また、この凹部33は、例えば本実施の形態において、樹脂層24(リム部本体部35)の表面にて少なくとも一部が乗員側である後側(正面側)に位置している。本実施の形態において、この凹部33は、例えば左右のスポーク部17よりも上側の位置から下部のスポーク部17の両側の位置に亘って連続的に形成されている。この凹部33は、例えば樹脂層24を成形型により成形する際に同時に形成されてもよいし、樹脂層24の成形後に加工されて形成されてもよい。また、この凹部33は、例えばリム部本体部35の最外周の位置に沿って周方向(緯線方向)に形成されていてもよい。
【0030】
図1ないし
図3に示す被覆部材20は、エレメントなどとも呼ばれ、樹脂層24のリム芯金部28を覆う位置すなわちリム被覆部31からスポーク芯金部27の一部を覆う位置すなわちスポーク被覆部32に亘って配置される。この被覆部材20は、シート状に形成された被覆部材本体としてのシート部材(マット部)41と、このシート部材41に保持された被保持体としての線材42とを備えている。さらに、この被覆部材20は、樹脂層24(リム部本体部35)の表面を覆ってこの樹脂層24(リム部本体部35)の表面に図示しない接着剤により貼り付けられて固定されている。本実施の形態において、この被覆部材20は、例えば運転者によるリム部15の把持(把持の有無)を検出するためのセンサユニットとする。
【0031】
シート部材41は、リム被覆部31(リム部本体部35)を覆う第1被覆部と、この第1被覆部から突出しスポーク被覆部32の一部を覆う第2被覆部とを一体に備えているが、図面においては、第1被覆部のみを図示し、第2被覆部を省略している。このシート部材41(第1被覆部)は、自然状態で長方形状に形成されている。また、このシート部材41には、凹部33に対応する位置に分割予定部44が形成されている。なお、このシート部材41は、複数の被覆部材本体片としてのシート部材片を長手方向に縫製などによって接合することにより形成されていてもよい。また、このシート部材41には、リム部本体部35の内周と外周との寸法差を吸収するための切欠部などが両側部などに形成されていてもよい。
【0032】
分割予定部44は、切込みが断続的に形成されたミシン目、あるいは単なるガイド線などである。本実施の形態において、この分割予定部44は、シート部材41の長手方向に沿って、凹部33の長さに対応する所定の長さに予め形成されている。そして、この分割予定部44は、リム部本体部35に取り付けられた状態で、例えば刃物などの図示しない治具により切り開かれることで、シート部材41に切込みである分割部45を形成するようになっている。このとき、分割部45は、分割予定部44全体が切り開かれて形成されてもよいし、分割予定部44の一部が切り開かれて形成されてもよいし、分割予定部44の延長上の位置までシート部材41が切り開かれて形成されてもよい。したがって、分割部45は、基本的には分割予定部44と同範囲に形成されるが、例えば分割予定部44よりも狭い範囲に設定されてもよいし、分割予定部44よりも広い範囲に設定されてもよい。
【0033】
線材42は、図示しない制御回路や給電源などに対して直接、または電力受け部などを介して間接的に接続され、本実施の形態では、被覆部材20が、通電されることにより、リム部15の把持圧力、あるいは静電容量変化を検出することによって運転者によるリム部15の把持を検出するように構成された機能部品である。すなわち、この線材42は、圧力センサ、あるいは静電容量センサの検出子となっている。この線材42は、シート部材41に対して所定の面状の領域を占めるように設定されており、この線材42が設定されている領域が、リム部15においてセンサユニットが作用する作用範囲となっている。また、この線材42は、シート部材41において、分割予定部44に沿って非設定範囲(第1非設定範囲)Aを有している(
図2の白抜き部分)。この非設定範囲Aは、分割予定部44の両側に所定幅ずつ設定されている。この非設定範囲Aの分割予定部44に対して離れる所定幅は、被覆部材20の製造工程において、線材42のシート部材41に対する配置限界として設定されるものである。すなわち、この非設定範囲Aは、シート部材41に対して分割予定部44を避けて線材42を配置する製造装置などの制限により、線材42を配置不可能な領域である。本実施の形態において、上記所定幅は例えば3mm程度に設定される。したがって、非設定範囲Aは、例えば6mm程度に設定される。そして、非設定範囲Aの幅寸法は、凹部33の幅寸法以下、好ましくは凹部33の幅寸法よりも小さく設定されている。また、この非設定範囲Aの両端部は、凹部33の両端部に対して凹部33の内方に位置している。すなわち、この非設定範囲Aは、凹部33以下の範囲、好ましくは凹部33よりも小さい範囲となっている。なお、線材42は、シート部材41の両縁部にも非設定範囲(第2非設定範囲)Bを有している。これら非設定範囲Bは、非設定範囲Aと同様に、被覆部材20の製造工程において、線材42のシート部材41に対する配置限界として設定されるものである。すなわち、これら非設定範囲Bは、シート部材41に対して線材42を配置する製造装置などの制限により、線材42をシート部材41の両側縁部に対して配置不可能な領域である。
【0034】
接着剤は、被覆部材20を樹脂層24(リム部本体部35)に対して接着固定するものである。この接着剤は、被覆部材20と樹脂層24(リム部本体部35)との少なくともいずれかに設定されている。この接着剤は、被覆部材20のシート部材41の裏面側、すなわちリム部本体部35側に予め設定されていてもよいし、被覆部材20をリム部本体部35に対して貼り付ける際に塗布されてもよい。
【0035】
図3(a)及び
図3(b)に示す表皮部21は、運転者(乗員)により直接把持される部分であり、ステアリングホイール10の加飾部である。この表皮部21は、例えば天然皮革や合成皮革などの皮革、あるいは合成樹脂などによりシート状に形成されている。この表皮部21は、被覆部材20を覆ってリム部本体部35に取り付けられる。例えば、この表皮部21は、被覆部材20を覆って、リム部本体部35の表面全体を連続的に覆うように配置されている。本実施の形態において、この表皮部21は、端末部21a,21aが凹部33の位置にそれぞれ落とし込まれて固定され、リム部15の運転者(乗員)側に、いわゆる木目込み風の線状の意匠部47を構成している。
【0036】
カバー体は、裏カバー、下部カバーあるいはボディカバーとも呼ばれ、合成樹脂などにより形成され、ボス部16の下側部を覆っている。
【0037】
パッド体12としては、例えばエアバッグ装置、あるいは衝撃吸収体を収納したものなどを用いることができる。なお、このパッド体12は、スイッチ装置としてのホーンスイッチ機構などを一体的に組み込んでもよい。
【0038】
そして、ステアリングホイール10を製造する際には、まず、予め成形された芯金23を成形型にセットした後、一の半型と他の半型とを型合わせ(型閉)して形成したキャビティに対して、合成樹脂原料を攪拌混合して成形型のキャビティ内に射出する。この結果、合成樹脂原料が発泡を伴いながら反応してポリウレタンとなりつつ流動末端に向かって流れていく。
【0039】
次いで、キャビティ内で樹脂層24がリム芯金部28を覆って形成された第1中間体を、一の半型と他の半型とを型開きして成形型から脱型し、ばりなどをカットする。
【0040】
さらに、この第1中間体の樹脂層24(リム部本体部35)の表面に、別途形成した被覆部材20を巻き付け、接着剤により貼り付けて固定する。このとき、凹部33をシート部材41により覆い、分割予定部44が凹部33の位置に対応するように位置合わせする(
図1(a))。
【0041】
この状態で、刃物などの治具によりシート部材41を分割予定部44に沿って切り開き、分割部45を形成する(
図1(b))。
【0042】
次いで、この分割部45の両縁部45a,45aを線材42の非設定範囲Aとともに凹部33の開口縁より内方に落とし込んで収容し、凹部33の内面に接着剤により固定する(
図1(c))。
【0043】
この後、被覆部材20を表皮部21により覆う。このとき、表皮部21は、端末部21a,21aを凹部33にそれぞれ落とし込んで固定し、意匠部47を形成する(
図1(d))。
【0044】
このステアリングホイール本体11は、被覆部材20の機能部品を制御回路と電気的に接続し、パッド体12やカバー体などを取り付けて、ステアリングホイール10が完成する(
図3(a))。
【0045】
このように、本実施の形態では、被覆部材20をリム部本体部35に取り付けた後にシート部材41の分割予定部44を切り開いて分割部45を形成するので、分割予定部44を切り開くまでシート部材41を大きな孔や分岐のない1枚のシート状として取り扱うことができる。すなわち、分割部45の両縁部45a,45aが自然状態で互いに略一致するので、シート部材41を切り開いて分割部45を形成することが可能であり、このように切り開くまでシート部材41を1枚のシート状として取り扱うことができる。したがって、被覆部材20をリム部本体部35に対して取り付けやすい。また、分割予定部44を切り開いて形成した分割部45を、線材42の非設定範囲Aとともに凹部33の開口縁より内方に配置するように凹部33に収容するので、線材42をリム部本体部35の凹部33の開口縁に容易に配置できる。
【0046】
特に、例えば意匠部47がリム部15全周に亘って連続するようなステアリングホイール10の場合には、分割部45によってシート部材41が分断されることとなる。このため、本実施の形態のように、被覆部材20をリム部本体部35に貼り付けた後に分割予定部44を切り開いて分割部45を形成することで、被覆部材20をリム部本体部35に貼り付ける際には、分断前の一体のシート状として貼り付けることができ、貼り付けの作業性が良好になる。
【0047】
また、線材42をセンサとしているため、この線材42をリム部本体部35の凹部33の開口縁に配置できるので、表皮部21の端末部21a,21aを凹部33に落とし込んだ木目込み風の意匠部47を運転者が把持した場合でも、この把持を検出できる。したがって、運転者によるリム部15の把持の有無を、その把持位置に拘らず確実に検出できる。
【0048】
そして、被覆部材20の線材42をリム部本体部35の凹部33の開口縁に配置させて、線材42の配置範囲をリム部本体部35に広く形成でき、被覆部材20の機能が弱まる箇所を低減できて商品性を向上できるとともに、被覆部材20をリム部本体部35に対して取り付けやすいので、ステアリングホイール10の製造性を向上できる。
【0049】
すなわち、
図4(a)及び
図4(b)に示す比較例のように、凹部33の大きさに対応する範囲を有する開口部48をシート部材41に形成する場合、被覆部材20aの製造工程において、この開口部48を避けて線材42をシート部材41に対して配置する際の製造装置などの制限によって開口部48の周囲に線材42の非設定範囲A1が設定されることにより、この被覆部材20aをリム部本体部35に貼り付けると、凹部33の開口縁の両側に非設定範囲A1が生じることとなる。これに対して、本実施の形態では、凹部33の開口縁まで線材42を配置できるので、線材42をリム部15の広い範囲で作用させることができる。
【0050】
次に、第2の実施の形態を、
図5を参照して説明する。なお、上記の第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0051】
本実施の形態は、上記の第1の実施の形態の分割部45が、切込みとして予めシート部材41に形成されているものである。この分割部45は、細いスリット状となっており、被覆部材20の自然状態(平面状に拡げた状態)で、両縁部45a,45aが略一致(一致)するようになっている。換言すれば、この分割部45は、本実施の形態において、幅を殆ど有しない切込みとして設定されており、被覆部材20をリム部本体部35に巻き付けるように変形させた状態でシート部材41を開口させるようになっている。すなわち、被覆部材20は、実質的に1枚のシート状としてリム部本体部35に取り付け可能となっている。また、線材42の非設定範囲Aは、この分割部45に沿って設定されている。
【0052】
そして、ステアリングホイール10を製造する際には、上記の第1の実施の形態の第1中間体の樹脂層24(リム部本体部35)の表面に、別途形成した被覆部材20を巻き付け、接着剤により貼り付けて固定する。このとき、凹部33をシート部材41により覆い、分割部45が凹部33の位置に対応するように位置合わせする(
図5(a))。また、分割部45の両縁部45a,45aが自然状態で互いに略一致するように分割部45をスリット状としているので、被覆部材20のリム部本体部35への取り付けの際には、シート部材41を、大きな孔や分岐のない、実質的に1枚のシート状として取り扱うことができ、取り付けの作業性を損ないにくい。
【0053】
次いで、この分割部45の両縁部45a,45aを線材42の非設定範囲Aとともに凹部33の開口縁より内方に落とし込んで収容し、凹部33の内面に接着剤により固定する(
図5(b))。
【0054】
この後、被覆部材20を表皮部21により覆う。このとき、表皮部21は、端末部を凹部33にそれぞれ落とし込んで固定する(
図5(c))。
【0055】
このように、本実施の形態では、分割部45を切込みとしてシート部材41に予め形成し、この分割部45を、線材42の非設定範囲Aとともに凹部33の開口縁より内方に配置するように凹部33に収容するので、線材42をリム部本体部35の凹部33の開口縁に容易に配置でき、線材42の作用範囲を凹部33の開口縁まで拡げることができる。
【0056】
なお、上記の各実施の形態において、被覆部材20は、例えばリム部15の温度を調整するためのヒータユニットとすることもできる。この場合、線材42は、通電により発熱するヒータ(電熱線)であり、温度センサなどからなる発熱回路を構成する。そして、線材42をヒータとすると、この線材42をリム部本体部35の凹部33の開口縁に配置できるので、表皮部21の端末部21a,21aを凹部33に落とし込んだ木目込み風の意匠部47も温めることができ、リム部15に温まりにくい箇所を生じさせにくくできる。したがって、リム部15を把持した運転者の手指を、その把持位置に拘らず温めやすくすることができる。
【0057】
また、被保持体としては、線材42に限らず、例えばヒータユニットやセンサユニットなどの回路部を構成する任意の機能部品を用いることができる。また、被保持体としては、例えば磁石(マッサージマグネット)や加飾部材など、回路部以外のものを用いることも可能である。
【0058】
さらに、凹部33は、ステアリングホイール10のデザインなどに応じて、その位置や数を任意に設定できる。
【0059】
また、ステアリングホイール10は、3本のスポーク部17を備えた構成に限られず、2本、あるいは4本以上のスポーク部17を備えた構成などとすることもできる。
【0060】
そして、ステアリングホイール10は、自動車などの車両だけでなく、任意の乗物のステアリング用のハンドルとして用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、例えば自動車のステアリングホイールに用いるステアリング用エレメント、そのステアリング用エレメントを備えるステアリングホイール、及びその製造方法として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0062】
10 ハンドルであるステアリングホイール
15 把持部としてのリム部
20 ハンドル用被覆部材としてのステアリング用被覆部材
33 凹部
35 把持部本体部としてのリム部本体部
41 被覆部材本体としてのシート部材
42 被保持体としての線材
44 分割予定部
45 分割部
45a 縁部
A 非設定範囲