(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】硬さ測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/80 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
G01N27/80
(21)【出願番号】P 2018066018
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2020-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000100805
【氏名又は名称】アイシン高丘株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 武
(72)【発明者】
【氏名】後藤 誠
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-15608(JP,A)
【文献】特開昭62-52451(JP,A)
【文献】特開2010-230484(JP,A)
【文献】特開2006-194666(JP,A)
【文献】特開2017-58325(JP,A)
【文献】特開2000-88810(JP,A)
【文献】実開昭63-155057(JP,U)
【文献】実開昭60-111265(JP,U)
【文献】米国特許第4006406(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72 - G01N 27/9093
G01R 33/00 - G01R 33/26
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に当接させる一対の端面を有するヨークと、
励磁電流の供給を受けて前記ヨークを励磁する励磁コイルと、
励磁された前記ヨークと前記測定対象とで形成された閉磁路の磁束量を検出する検出コイルと、
前記ヨークを保持した状態で前記励磁コイル及び前記検出コイルが巻回されるボビンと、
を有する磁気検出プローブを備え、前記検出コイルによる検出値に基づいて前記測定対象の硬さを測定する硬さ測定装置であって、
前記磁気検出プローブは、
前記ボビンに設けられ、前記励磁コイルの両端部がそれぞれ接続される一対の第1端子ピンと、
前記ボビンに設けられ、前記検出コイルの両端部がそれぞれ接続される一対の第2端子ピンと、
を備えており、さらに、
前記磁気検出プローブを着脱可能な状態で収容するプローブホルダと、
前記プローブホルダに設けられ、前記励磁コイルに前記励磁電流を供給する電源経路が接続されるとともに、前記一対の第1端子ピンがそれぞれ差し込まれて電気的に接続される一対の第1被差込部と、
前記プローブホルダに設けられ、前記検出コイルの検出値を出力する検出経路が接続されるとともに、前記一対の第2端子ピンがそれぞれ差し込まれて電気的に接続される一対の第2被差込部と、
を備えていることを特徴とする硬さ測定装置。
【請求項2】
前記磁気検出プローブにおいて、
前記ボビンは前記励磁コイル及び前記検出コイルを収容する収容空間を形成する一対の鍔部を有し、
前記一対の鍔部のうちの一方に、前記一対の第1端子ピン及び前記一対の第2端子ピンが一列に並んで設けられるとともに、
前記一対の第1被差込部及び前記一対の第2被差込部も前記各端子ピンの並びに合わせて一列に並んで設けられていることを特徴とする請求項1に記載の硬さ測定装置。
【請求項3】
前記磁気検出プローブにおいて、
前記ボビンは、前記一対の端面と平行をなす組み合わせ面同士を重ね合わせて第1部品と第2部品とが組み合わされてなり、
前記一対の第1端子ピン及び前記一対の第2端子ピンは、その並び方向に沿ってピン同士の間が等間隔となるように前記第2部品に設けられ、
前記一対の第1端子ピン及び前記一対の第2端子ピンのうち一方は前記並び方向の中央側に隣り合って配置され、他方は前記一方の両外側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬さ測定装置。
【請求項4】
前記プローブホルダに設けられ、前記磁気検出プローブの周囲を取り囲む枠部材と、
前記磁気検出プローブに設けられ、前記枠部材と係合する突起部と、
を備え、
前記突起部が前記枠部材に係合することにより、前記磁気検出プローブが前記プローブホルダから外れることが規制されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬さ測定装置。
【請求項5】
前記磁気検出プローブにおいて前記ヨークは、
前記励磁コイル及び前記検出コイルが巻回される鉄心部と、
前記鉄心部の両端部に設けられ、前記一対の端面を有するとともに前記一対の端面に対して垂直をなす方向に沿って延びる一対の腕部と、
を備えて全体としてU字形状をなし、
前記一対の腕部の延長上において、前記一対の端面とは反対側に、前記鉄心部の前記両端部と当接するように弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の硬さ測定装置。
【請求項6】
前記一対の第1被差込部及び前記一対の第2被差込部を有するコネクタと、
前記一対の第1被差込部にそれぞれ接続されて前記電源経路を形成し、前記コネクタから引き出される一対の励磁用ケーブルと、
前記一対の第2被差込部にそれぞれ接続されて前記検出経路を形成し、前記コネクタから引き出される一対の検出用ケーブルと、
前記プローブホルダに設けられ、前記各ケーブルのうち前記コネクタ寄りの部分をカバーするケーブルカバーと、
を備えたことを特徴とする請求項4又は5に記載の硬さ測定装置。
【請求項7】
前記コネクタと前記ケーブルカバーとの間には隙間が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の硬さ測定装置。
【請求項8】
前記プローブホルダが取り付けられ、前記磁気検出プローブを、前記一対の端面が前記測定対象に当接して硬さ測定する当接位置と、前記一対の端面が前記当接位置から後退した後退位置とに移動させる移動手段としてエアシリンダを備え、
前記ケーブルカバーには、前記プローブホルダに対する取付け位置を変更して前記隙間の寸法を調整可能とする取付け位置調整手段が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の硬さ測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気検出プローブを備えた硬さ測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用骨格部品等の金属製部品に関し、その硬さを評価する方法としては、例えばビッカース硬さ試験のように、評価対象となる金属製部品それ自体に傷をつけて硬さを測定する破壊検査方法が知られている。ただ、このような破壊検査方法は、検査に必要な工数が多くて手間がかかること、検査対象となった金属製部品は検査結果が良好であっても廃棄しなければならず、その分だけ製品ロスが生じることなどの問題があった。そこで、金属製部品を破壊することなくその硬さを検査する非破壊検査方法として、金属製部品の磁束量を測定して磁気ヒステリシス特性を求め、その特性から硬さの推定値を算出する方法が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
この方法を用いて硬さを測定する硬さ測定装置は、磁気検出プローブを備えている。磁気検出プローブは、一対の端面を有するU字状のヨークと、励磁コイルと、検出コイルとを備えている。評価対象となる金属製部品にヨークの両端面を当接させて閉磁路を形成し、励磁コイルによって励磁されたヨークの磁束量を検出コイルによって検出する。磁束量の検出値に基づいて、測定対象の磁気ヒステリシス特性が求められる。
【0004】
従来の硬さ測定装置において、磁気検出プローブは、当該検出プローブを収容するプローブホルダと一体化された状態で設けられていた。プローブホルダには、励磁コイルに励磁電流を供給する電源につながる第1導線と、検出コイルの検出値を取り出す第2導線とがホルダ外部から導入され、それぞれの端部がプローブホルダの内部に設けられている。第1導線及び第2導線のそれぞれの端部と、励磁コイル及び検出コイルのそれぞれの両端部とは、プローブホルダの内部で、圧着スリーブを用いて接続されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-142203号公報
【文献】特開2017-15608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
磁気検出プローブにおいて、ヨークは純鉄によって形成されている。純鉄は炭素や不純物の含有量が低く、鋼等に比較して柔らかい素材である。硬さ測定時には、そのヨークが有する一対の端面を測定対象に当接させるため、柔らかい素材であるという素材の特性上、繰り返しの使用によって端面には摩耗や欠けが生じやすい。ヨーク端面の摩耗や欠けが生じた場合には、検出精度の悪化を避けるため、磁気検出プローブを交換しなければならない。
【0007】
ところが、上記のような磁気検出プローブの構成では、磁気検出プローブを交換するには、プローブホルダや導線等も合わせて交換しなければならず、無駄が生じていた。また、プローブホルダや導線等も合わせた全体を交換しなければならないとなると、交換作業も煩雑であった。
【0008】
そこで、本発明は、磁気検出プローブが交換可能であり、かつその交換作業を容易に行うことができる硬さ測定装置を得ることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、第1の発明の硬さ測定装置は、測定対象に当接させる一対の端面を有するヨークと、励磁電流の供給を受けて前記ヨークを励磁する励磁コイルと、励磁された前記ヨークと前記測定対象とで形成された閉磁路の磁束量を検出する検出コイルと、前記ヨークを保持した状態で前記励磁コイル及び前記検出コイルが巻回されるボビンと、を有する磁気検出プローブを備え、前記検出コイルによる検出値に基づいて前記測定対象の硬さを測定する硬さ測定装置であって、
前記磁気検出プローブは、前記ボビンに設けられ、前記励磁コイルの両端部がそれぞれ接続される一対の第1端子ピンと、前記ボビンに設けられ、前記検出コイルの両端部がそれぞれ接続される一対の第2端子ピンと、を備えており、さらに、前記磁気検出プローブを着脱可能な状態で収容するプローブホルダと、前記プローブホルダに設けられ、前記励磁コイルに前記励磁電流を供給する電源経路が接続されるとともに、前記一対の第1端子ピンがそれぞれ差し込まれて電気的に接続される一対の第1被差込部と、前記プローブホルダに設けられ、前記検出コイルの検出値を出力する検出経路が接続されるとともに、前記一対の第2端子ピンがそれぞれ差し込まれて電気的に接続される一対の第2被差込部と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明の硬さ測定装置は、前記磁気検出プローブにおいて、前記ボビンは前記励磁コイル及び前記検出コイルを収容する収容空間を形成する一対の鍔部を有し、前記一対の鍔部のうちの一方に、前記一対の第1端子ピン及び前記一対の第2端子ピンが一列に並んで設けられるとともに、前記一対の第1被差込部及び前記一対の第2被差込部も前記各端子ピンの並びに合わせて一列に並んで設けられていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明の硬さ測定装置は、前記磁気検出プローブにおいて、前記ボビンは、前記一対の端面と平行をなす組み合わせ面同士を重ね合わせて第1部品と第2部品とが組み合わされてなり、前記一対の第1端子ピン及び前記一対の第2端子ピンは、その並び方向に沿ってピン同士の間が等間隔となるように前記第2部品に設けられ、前記一対の第1端子ピン及び前記一対の第2端子ピンのうち一方は前記並び方向の中央側に隣り合って配置され、他方は前記一方の両外側に配置されていることを特徴とする。
【0012】
第4の発明の硬さ測定装置は、前記プローブホルダに設けられ、前記磁気検出プローブの周囲を取り囲む枠部材と、前記磁気検出プローブに設けられ、前記枠部材と係合する突起部と、を備え、前記突起部が前記枠部材に係合することにより、前記磁気検出プローブが前記プローブホルダから外れることが規制されることを特徴とする。
【0013】
第5の発明の硬さ測定装置は、前記磁気検出プローブにおいて前記ヨークは、前記励磁コイル及び前記検出コイルが巻回される鉄心部と、前記鉄心部の両端部に設けられ、前記一対の端面を有するとともに前記一対の端面に対して垂直をなす方向に沿って延びる一対の腕部と、を備えて全体としてU字形状をなし、前記一対の腕部の延長上において、前記一対の端面とは反対側に、前記鉄心部の前記両端部と当接するように弾性部材が設けられていることを特徴とする。
【0014】
第6の発明の硬さ測定装置は、前記一対の第1被差込部及び前記一対の第2被差込部を有するコネクタと、前記一対の第1被差込部にそれぞれ接続されて前記電源経路を形成し、前記コネクタから引き出される一対の励磁用ケーブルと、前記一対の第2被差込部にそれぞれ接続されて前記検出経路を形成し、前記コネクタから引き出される一対の検出用ケーブルと、前記プローブホルダに設けられ、前記各ケーブルのうち前記コネクタ寄りの部分をカバーするケーブルカバーと、を備えたことを特徴とする。
【0015】
第7の発明の硬さ測定装置は、前記コネクタと前記ケーブルカバーとの間には隙間が設けられていることを特徴とする。
【0016】
第8の発明の硬さ測定装置は、前記プローブホルダが取り付けられ、前記磁気検出プローブを、前記一対の端面が前記測定対象に当接して硬さ測定する当接位置と、前記一対の端面が前記当接位置から後退した後退位置とに移動させる移動手段としてエアシリンダを備え、前記ケーブルカバーには、前記プローブホルダに対する取付け位置を変更して前記隙間の寸法を調整可能とする取付け位置調整手段が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、磁気検出プローブは、プローブホルダにおいて着脱可能な状態で収容されているため、各端子ピンをそれぞれ被差込部から引き抜くことにより、磁気検出プローブをプローブホルダから取り外すことができる。新しい磁気検出プローブの各端子ピンをそれぞれ被差込部に差し込むことにより、その新しい磁気検出プローブがプローブホルダに取り付けられる。このため、磁気検出プローブのみを取り外して新しいものに交換することできる。また、磁気検出プローブの各端子ピンを被差込部に抜き差しすれば交換可能なため、交換作業を容易に行うことができる。
【0018】
第2の発明によれば、一列に並んだ各端子ピンをそれらに合わせて一列に並んだ各被差込部に差し込むようにすれば、励磁コイル及び検出コイルと電源経路及び検出経路とが電気的に接続される。この場合、端子ピンとソケットとの位置合わせが不要となり、交換作業を容易に行うことができる。
【0019】
第3の発明によれば、磁気検出プローブの製造時において、第2部品が180度反転して第1部品と組み合わされたとしても、第1端子ピン及び第2端子ピンの配置は変わらない。そのため、第1部品に対して第2部品を組み合わせる向きを考慮することが不要となり、磁気検出プローブの製造を容易に行うことができる。
【0020】
第4の発明によれば、磁気検出プローブはプローブホルダから抜け出ないように保持される。そのため、磁気検出プローブの一対の端面を測定対象に当接させて硬さ測定をする際に、磁気検出プローブが意図せず外れてしまって測定不良が生じることを抑制できる。
【0021】
第5の発明によれば、硬さ測定時において、ヨークが有する一対の端面が測定対象の被当接面に当接した際に、その衝撃が弾性部材によって緩和される。また、一対の端面に対して測定対象の被当接面が傾斜している場合に、弾性部材の弾性力によってヨークが傾斜に追従し、傾斜する被当接面に両端面を当接させることができる。これにより、接触不良によって異常検出状態となることが抑制される。
【0022】
第6の発明によれば、各ケーブルのコネクタ寄りの部分がカバーされるため、磁気検出プローブを用いた硬さ測定時に、これらケーブルが測定の邪魔になることを抑制できる。
【0023】
第7の発明によれば、ヨークの端面が測定対象の被当接面に当接した際に、端子ピンが被差込部に差し込まれて磁気検出プローブと一体化されたコネクタが、反当接側へ移動するためのスペースが確保される。これにより、ヨークの端面が測定対象の被当接面と当接する際にかかる衝撃を緩和できる。
【0024】
第8の発明によれば、コネクタとケーブルカバーとの間の隙間寸法を調整して、状況に応じた最適な隙間寸法を設定することができる。磁気検出プローブを移動させる移動手段としてエアシリンダを用いた場合、ヨークの端面が測定対象の被当接面に当接した際の磁気検出プローブ及びコネクタの反当接側への移動量には、用いられるエアシリンダの特性によって若干の誤差がある。また、測定対象の製造ラインの空気中に舞っている鉄等の粉塵が隙間から入り込むと、端子ピンと被差込部との接続部分を短絡させる等の悪影響を及ぼす原因となる。そのため、エアシリンダの特性に合わせながらできるだけ狭い隙間を設定する等、状況に応じた隙間を設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】硬さ測定装置の動作を説明する動作説明図であり、(a)は測定部が後退位置にある状態を示し、(b)は測定部が当接位置にある状態を示している。
【
図5】コイルが省略された状態の磁気検出プローブを示す分解斜視図。
【
図8】被当接面の傾斜に追従してヨークが傾斜する様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
本実施形態の硬さ測定装置は、金属製部品等の測定対象について、それを破壊することなく硬さを検査するために用いられる。例えば、自動車骨格部品などの金属製部品を製造する製造ラインに設置され、熱間プレス加工された金属製部品の一部又は全部について硬さが測定される。
【0028】
初めに、
図1及び
図2を参照しながら、硬さ測定装置10の概要と測定時の動作について説明する。
【0029】
図1に示すように、硬さ測定装置10は、測定部20を備えている。測定部20は、磁気検出プローブ30を備えている。磁気検出プローブ30は、ヨーク40、励磁コイル81、検出コイル82を備えている。ヨーク40は、測定対象T(
図2参照)に当接させる一対の端面43を有している。励磁コイル81及び検出コイル82はヨーク40に巻回されている。
【0030】
硬さ測定装置10は、前記測定部20を移動させる移動手段としてのエアシリンダ130を備えている。エアシリンダ130は、偏平な形状をなすシリンダ部131を有している。シリンダ部131は、隣り合う2本のロッド132(
図2では1本のみ示されている。)と、給排用のポート133とを備えている。ポート133に加圧エアを給排することにより、2本のロッド132が同時に突出したり、没入したりするようになっている。シリンダ部131には、偏平な形状をなすスライドテーブル134がシリンダ部131と重なり合うようにして設けられている。
【0031】
なお、以下では、スライドテーブル134にシリンダ部131が重なり合う側を正面側とし、左右(横)方向とはその正面側からみた場合の左右(横)方向を示し、前後方向とは正面側からみた場合の前後方向を示すものとして説明する。
【0032】
スライドテーブル134はロッド132の出没方向に沿って移動可能に設けられており、その移動は案内レール135(
図2参照)によって案内される。また、スライドテーブル134はロッド132の先端部と連結されている。そのため、ロッド132の出没により、スライドテーブル134はロッド132の出没方向に沿って移動するようになっている。スライドテーブル134のテーブル面134aには、前記測定部20がボルトBを用いて固定されている。
【0033】
図2(a)に示すように、硬さ測定装置10により硬さ測定を行う場合は、まず、測定部20が有する磁気検出プローブ30の一対の端面43を、測定対象Tの測定部位と対峙する位置に配置する。ここでは、エアシリンダ130のロッド132は没入した状態が維持されており、スライドテーブル134もシリンダ部131と重なり合った状態で保持されている。
【0034】
次いで、
図2(b)に示すように、エアシリンダ130のロッド132を突出させてスライドテーブル134を移動させる。すると、測定部20が測定対象Tに向けて移動し、ヨーク40の一対の端面43が測定部位の被当接面Sに当接する。以下では、この位置を当接位置として説明する。ヨーク40の一対の端面43が測定部位の被当接面Sに当接することにより、ヨーク40と測定対象Tとで閉磁路が形成される。この状態で、励磁コイル81に交流電源から交流電流が供給されると、ヨーク40は励磁される。検出コイル82により前記閉磁路の磁束量の変化を検出し、その検出値に基づいて検出コイル82と電気的に接続された演算装置(図示略)を用いて測定対象Tの磁気ヒステリシス特性が求められる。
【0035】
その後、磁束量の検出を止める場合には、交流電源の供給を止めた後、エアシリンダ130のロッド132を没入させてスライドテーブル134を元の位置に後退させる。そして、磁気検出プローブ30の一対の端面43を、測定対象Tの別の測定部位と対峙する位置に配置し、再度、当該端面43を測定部位の被当接面Sに当接させて磁束量を検出する。このような検出を繰り返した後に、演算装置は、得られた磁気ヒステリシス特性に基づいて、測定対象Tの硬さを算出する。
【0036】
なお、以下では、エアシリンダ130のロッド132が没入して測定部20が測定対象Tの測定部位から後退した位置を後退位置とし、ヨーク40の一対の端面43が測定部位の被当接面Sに当接した位置を当接位置として説明する。後退位置と当接位置との間の移動方向(ロッド132の出没方向でもある。)について、以下では測定移動方向として説明する。また、測定移動方向のうち、後退位置から当接位置へ向かう側を当接側とし、当接位置から後退位置へ向かう側を反当接側として説明する。
【0037】
次に、前記測定部20の構成について、
図3乃至
図7を参照しながらより詳しく説明する。
【0038】
図3に示すように、測定部20は、磁気検出プローブ30と、プローブホルダ90と、プローブ保持枠100と、ソケットハウジング110と、ケーブルカバー120とを備えている。これら各構成部材の構成は次のとおりである。
【0039】
磁気検出プローブ30は、ヨーク40を備えている。
図5に示すように、ヨーク40は、純鉄により全体としてU字状をなすように形成されている。ヨーク40は、鉄心部41を有している。鉄心部41は測定移動方向に対して直交する方向に延び、励磁コイル81及び検出コイル82が巻回される場合の巻き軸となる。鉄心部41の軸方向両端部には、測定移動方向に沿って延びる一対の腕部42が設けられている。一対の腕部42の当接側の先端部には、それぞれ、測定移動方向に対して垂直をなす平坦な端面43が形成されている。これら一対の端面43同士は、同一平面を形成している。
【0040】
図3~
図5に示すように、ヨーク40はボビン50と一体化されている。ボビン50は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等の合成樹脂により形成され、
図4に示すように、鉄心被覆部51を備えている。鉄心被覆部51は、ヨーク40が有する鉄心部41の外周を被覆するように設けられている。励磁コイル81及び検出コイル82は、鉄心被覆部51に被覆された鉄心部41に巻回される。鉄心被覆部51の軸方向両端部には、それぞれ鍔部52が設けられている。両鍔部52はいずれも一辺が10~20mm程度の寸法を有する略正方形状をなすように形成されている。励磁コイル81及び検出コイル82は、鍔部52同士の間に形成された収容空間53内で巻回される。
【0041】
図5に示すように、ボビン50は、第1部品54と第2部品55とが一体化されることによって形成されている。第1部品54は測定移動方向のうちの当接側に設けられ、第2部品55はその逆の反当接側に設けられ、ヨーク40が有する一対の端面43と平行をなす組み合わせ面54a,55a同士を合わせることによって一体化されている。
【0042】
第1部品54は、第1半被覆部61と、一対の第1半鍔部62とを備えている。第1半被覆部61は、ボビン50の鉄心被覆部51を当接側と反当接側とで分割した場合の当接側となる部位である。一対の第1半鍔部62は、ボビン50が有する一対の鍔部52を当接側と反当接側とで分割した場合の当接側となる部位である。各第1半鍔部62の外側には、左右方向の中心部に、測定移動方向に沿った凹溝63が形成されている。各凹溝63の底面同士の間の寸法は、ヨーク40における一対の腕部42同士の間の寸法と略同じに設定されている。
【0043】
第2部品55は、第2半被覆部71と、一対の第2半鍔部72とを備えている。第2半被覆部71は、ボビン50の鉄心被覆部51を当接側と反当接側とで分割した場合の反当接側となる部位である。一対の第2半鍔部72は、ボビン50が有する一対の鍔部52を当接側と反当接側とで分割した場合の反当接側となる部位である。一対の第2半鍔部72のうち、正面側に配置された第2半鍔部72には、その反当接側寄りの部位にピン設置部73が設けられている。
【0044】
ピン設置部73は、左右方向の全域にわたる長さを有し、他の部位よりも厚肉に形成されている。ピン設置部73には、棒状をなす端子ピン74がそれぞれ設けられている。4本の端子ピン74は測定移動方向に沿って延び、かつ左右方向に沿って一列に並んで設けられている。4本の端子ピン74のうち、左右方向の中央側に配置された2本を第1端子ピン74aとし、その両外側に配置された2本を第2端子ピン74bとして区別する。
【0045】
一対の第2半鍔部72には、それぞれ、左右方向の両端部に突起部75が設けられている。そのため、突起部75は全部で4つ設けられている。突起部75は、第2半鍔部72と同じ厚みを有して、前記両端部から左右方向に沿って突出するように設けられている。
【0046】
図5に示すように、ヨーク40とボビン50とは、ボビン50の第1部品54が有する第1半被覆部61と、第2部品55が有する第2半被覆部71とでヨーク40の鉄心部41を包み込むようにして組み付けられている。このようにして組付けられると、第1半被覆部61と第2半被覆部71とで鉄心被覆部51が形成され、ヨーク40の鉄心部41の外周部が被覆される。第1部品54の第1半鍔部62と第2部品55の第2半鍔部72とが組み合わされて、ボビン50の鍔部52が形成される。各第1半鍔部62の外側にヨーク40の腕部42がそれぞれ配置され、それら腕部42の一部が凹溝63に嵌め込まれる。ヨーク40が有する一対の端面43は、ボビン50よりも当接側に突出している。鉄心被覆部51に被覆された鉄心部41に励磁コイル81及び検出コイル82が巻回されることにより、ヨーク40とボビン50とが一体化された状態で保持され、磁気検出プローブ30が形成される。
【0047】
図3に戻り、これまで述べてきたように、励磁コイル81はボビン50の鉄心被覆部51に被覆されたヨーク40の鉄心部41に巻回されている。励磁コイル81の巻数としては、例えば150巻程度に設定されている。励磁コイル81の両端部は、一対の第1端子ピン74aの基端部にそれぞれ巻き付けられ、さらにはんだ付けされることにより電気的に接続されている。ここで、励磁コイル81を巻回するにあたっては、はじめにワイヤの一端部を1つの第1端子ピン74aの基端部に巻き付け、そこからワイヤをボビン50の鍔部52の内側を這わせた後、ヨーク40の鉄心部41に巻回している。鍔部52の内側には、当該内側を這わせたワイヤを収容するためのワイヤ収容溝52aが形成されている。そのため、内側に這わせたワイヤが鉄心部41に巻回されるワイヤと干渉することが抑制されて、励磁コイル81が整列した状態で巻回されている。
【0048】
検出コイル82も励磁コイル81と同じく、ボビン50の鉄心被覆部51に被覆されたヨーク40の鉄心部41に巻回されている。検出コイル82の巻き数としては、例えば50巻程度に設定されている。検出コイル82の両端部は、一対の第2端子ピン74bの基端部にそれぞれ巻き付けられ、さらにはんだ付けされることにより電気的に接続されている。
【0049】
図3及び
図4に示すように、プローブホルダ90は磁気検出プローブ30を収容した状態で保持する。プローブホルダ90はアルミニウム合金等の金属製であり、エアシリンダ130のスライドテーブル134にボルトBを用いて固定される。プローブホルダ90は、プローブ収容部91と、緩衝ゴム収容部92とを有している。
【0050】
プローブ収容部91は、プローブホルダ90の当接側端面93に凹状をなすように設けられている。緩衝ゴム収容部92は、前後両側にプローブ収容部91が拡張されて設けられている。
図6に示すように、緩衝ゴム収容部92は収容底面92aを有しており、その収容底面92aに弾性部材としての緩衝ゴム94が設けられている。緩衝ゴム94は四角柱状をなすように形成されている。プローブ収容部91に収容された磁気検出プローブ30は、そのヨーク40の両肩部、つまり一対の腕部42の反当接側の部位にそれぞれ緩衝ゴム94が当接している。この当接により、磁気検出プローブ30はその反当接側がプローブ収容部91に収容され、ヨーク40はブローブ収容部の外に設けられた状態となっている。この状態の磁気検出プローブ30は、プローブホルダ90に対して非固定状態となっている。
【0051】
磁気検出プローブ30がプローブ収容部91に収容された状態では、当該磁気検出プローブ30はむき出しの状態で設けられている。そこで、磁気検出プローブ30がプローブホルダ90から外れないようにそれを保持すべく、プローブ保持枠100がプローブホルダ90に設けられている。
図3及び
図7に示すように、プローブ保持枠100は枠部材に相当し、プローブホルダ90よりも当接側に設けられてプローブホルダ90に収容された状態の磁気検出プローブ30を保持する。プローブ保持枠100はアルミニウム合金等の金属製であり、プローブホルダ90の当接側端面93にボルトBを用いて固定されている。プローブ保持枠100は、プローブ挿通孔101を有している。
【0052】
プローブ挿通孔101は、測定移動方向に沿って同一の孔断面を有し、当該孔断面は、
図7に示すように略十字形状をなしている。プローブ挿通孔101には、プローブホルダ90に収容された状態の磁気検出プローブ30が挿通されている。プローブ保持枠100がプローブホルダ90に固定された状態では、磁気検出プローブ30のヨーク40及びボビン50の当接側端部がプローブ挿通孔101よりも突出している。
【0053】
磁気検出プローブ30の周囲は、プローブ保持枠100によって取り囲まれている。左右方向におけるプローブ挿通孔101の寸法は、ボビン50の鍔部52の寸法よりも長く、鍔部52から左右方向の外方へ突出する突起部75の両端間の寸法よりも短く形成されている。そのため、
図7に示すように、プローブ保持枠100がプローブホルダ90に固定されると、プローブ挿通孔101の反当接側の開口縁部がボビン50の突起部75に係合する。これにより、磁気検出プローブ30がプローブホルダ90から抜けて外れることが規制され、その状態で保持される。
【0054】
図3に示すように、ソケットハウジング110はコネクタに相当し、磁気検出プローブ30よりも反当接側において、プローブホルダ90の正面側に設けられた正面凹部95に設けられている。ただ、ソケットハウジング110は、プローブホルダ90に直接固定されておらず、また、他の部材に対しても固定されていない。ソケットハウジング110はポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等の合成樹脂により形成され、ソケット収容部111を備えている。
【0055】
図4に示すように、ソケット収容部111には、磁気検出プローブ30が有する4本の端子ピン74がそれぞれ差し込まれ、当該端子ピン74と電気的に接続される4つのソケット112が収容されている。各ソケット112は、左右方向に沿ってソケット112同士の間が端子ピン74同士と同じ間隔で等間隔となるように一列に並んで設けられている。4個のソケット112のうち、左右方向の中央側に配置された2個を第1ソケット112aとし、その両外側に配置された2個を第2ソケット112bとして区別する。ソケット112は端子ピン74が差し込まれる被差込部であり、第1ソケット112aが第1被差込部に、第2ソケット112bが第2被差込部にそれぞれ相当する。
【0056】
各ソケット112はそれぞれケーブル113,114と接続され、各ケーブル113,114は測定移動方向の反当接側へ向けてソケットハウジング110から引き出されている。各ケーブル113,114のうち、一対の第1ソケット112aに接続されたものは、励磁コイル81に励磁電流を供給する電源経路を形成する励磁用ケーブル113である。他方、一対の第2ソケット112bに接続されたものは、検出コイル82の検出値を出力する検出経路を形成する検出用ケーブル114である。
【0057】
ソケット収容部111は測定移動方向の当接側に向けて開口しており、その開口を介して各ソケット112にそれぞれ端子ピン74が差し込まれている。前述したように端子ピン74の基端部にはコイルの端部が巻き付けられ、さらにはんだ付けされた状態にあるため、端子ピン74のすべてがソケット112に入りきらない。そのため、
図6に示すように、磁気検出プローブ30とソケットハウジング110との間には隙間115が形成されている。磁気検出プローブ30の端子ピン74がソケット112に差し込まれることにより、ソケットハウジング110は磁気検出プローブ30と一体化され、かつその状態で保持されている。各端子ピン74を各ソケット112から引き抜くことが可能であり、その引き抜きにより、磁気検出プローブ30はソケットハウジング110から取り外される。
【0058】
磁気検出プローブ30の各端子ピン74がそれぞれソケット112に差し込まれることにより、両者は電気的に接続されている。その結果、一対の第1端子ピン74aが一対の第1ソケット112aに接続されて、励磁コイル81が励磁用ケーブル113と電気的に接続されている。また、一対の第2端子ピン74bが一対の第2ソケット112bに接続されて、検出コイル82が検出用ケーブル114と電気的に接続されている。
【0059】
図6に示すように、ケーブルカバー120は、ソケットハウジング110よりも反当接側に当該ソケットハウジング110との間に数ミリ程度の隙間121を空けて設けられ、プローブハウジングにボルトBによって固定されている。ケーブルカバー120はアルミニウム合金等の金属製であり、横長の板状をなすように形成されている。ケーブルカバー120の板厚は、ケーブルカバー120の外面が、プローブホルダ90の外面のうち最も外側に配置された外面よりも外側に突出しないように設定されている。
【0060】
ケーブルカバー120の内側には、測定移動方向に沿って延びる凹状部122が形成されている。凹状部122は、測定移動方向の両端部において開口し、ソケットハウジング110よりも短い横幅を有している。凹状部122により、各ケーブルのソケットハウジング110寄りの部分が外側からカバーされている。また、凹状部122により、測定移動方向の反当接側へ各ケーブルが引き出されるように各ケーブルの延びる方向が案内されている。なお、仮に、磁気検出プローブ30がソケットハウジング110から取り外された場合でも、各ケーブルはカバーされた状態が維持され、かつソケットハウジング110がプローブホルダ90から外れないようになっている。
【0061】
凹状部122の横隣りには、ボルト挿通孔123が設けられている。ボルト挿通孔123はケーブルカバー120をプローブホルダ90に固定する際に、ボルトBを挿通する。ボルト挿通孔123は、測定移動方向に沿った長孔として形成されている。そのため、ケーブルカバー120をプローブホルダ90に取付ける取付け位置を、測定移動方向に沿って調整することが可能となっている。ケーブルカバー120の取付け位置を調整することで、ソケットハウジング110とケーブルカバー120との間の隙間121の寸法が調整される。なお、ボルト挿通孔123は位置調整手段に相当する。
【0062】
本実施形態の硬さ測定装置10に設けられた測定部20は上記の構成を有しており、この測定部20を用いた場合には次のような機能が得られる。
【0063】
(1)プローブ保持枠100をプローブホルダ90から外すと、磁気検出プローブ30は、プローブ保持枠100による抜け止めされた状態から解放されてむき出しの状態となる。この状態の磁気検出プローブ30は、各端子ピン74が各ソケット112に差し込まれた状態でプローブホルダ90のプローブ収容部91に収容され、プローブホルダ90に対して非固定状態にある。そのため、磁気検出プローブ30はプローブホルダ90に対して着脱可能な状態となっている。
【0064】
この状態で、磁気検出プローブ30を持って、それを測定移動方向の当接側へ引っ張る。すると、磁気検出プローブ30の各端子ピン74がソケットハウジング110の各ソケット112から引き抜かれ、磁気検出プローブ30はソケットハウジング110及びプローブホルダ90から取り外される。
【0065】
次いで、新しい磁気検出プローブ30の各端子ピン74をソケットハウジング110の各ソケット112に差し込み、プローブ保持枠100をプローブホルダ90に固定することで、新しい磁気検出プローブ30がソケットハウジング110及びプローブホルダ90に取り付けられる。このため、本実施の形態の測定部20では、磁気検出プローブ30のみを取り外して新しいものに交換することができる。また、磁気検出プローブ30の各端子ピン74を各ソケット112に抜き差しすれば交換可能なため、交換作業を容易に行うことができる。
【0066】
(2)磁気検出プローブ30を交換する場合、新しい磁気検出プローブ30の各端子ピン74をそれぞれに対応するソケット112に差し込む必要がある。この点、各端子ピン74は、ボビン50が有する一対の鍔部52のうちの一方において、左右方向に沿って一列に並んで設けられている。また、ソケットハウジング110の各ソケット112も同じく左右方向に沿って一列に並んで設けられ、かつ第1端子ピン74a及び第2端子ピン74bの並びに合わせて第1ソケット112a及び第2ソケット112bが設けられている。そのため、磁気検出プローブ30の端子ピン74をソケットハウジング110に差し込めば、励磁コイル81が励磁用ケーブル113と電気的に接続され、検出コイル82が検出用ケーブル114と電気的に接続される。この場合、端子ピン74とソケット112との位置合わせが不要となり、交換作業を容易に行うことができる。
【0067】
(3)磁気検出プローブ30のボビン50は、第1部品54と第2部品55とが組み合わされて構成され、端子ピン74は第2部品55に設けられている。第2部品55において、4本の端子ピン74は並び方向に沿ってピン同士の間が等間隔となるように設けられ、第1端子ピン74aは並び方向の中央側に、第2端子ピン74bは第1端子ピン74aの両外側に配置されている。そのため、磁気検出プローブ30の製造時において、第2部品55が180度反転して第1部品54と組み合わされたとしても、第1端子ピン74a及び第2端子ピン74bの配置は変わらない。そのため、第1部品54に対して第2部品55を組み合わせる向きを考慮することが不要となり、磁気検出プローブ30の製造を容易に行うことができる。
【0068】
(4)磁気検出プローブ30のボビン50には突起部75が設けられ、突起部75は、磁気検出プローブ30の周囲を取り囲むように設けられたプローブ保持枠100と係合している。これにより、磁気検出プローブ30はプローブホルダ90から抜け出ないように保持される。そのため、磁気検出プローブ30の一対の端面43を測定対象Tに当接させて硬さ測定をする際に、磁気検出プローブ30が意図せず外れてしまって測定不良が生じることを抑制できる。
【0069】
(5)磁気検出プローブ30は、ヨーク40の肩部に緩衝ゴム94が設けられ、緩衝ゴム94を介してプローブホルダ90に設けられている。そのため、硬さ測定時において、一対の端面43が測定対象Tの被当接面Sに当接した際に、その衝撃が緩衝ゴム94によって緩和される。また、
図8に示すように、一対の端面43に対して測定対象Tの被当接面Sが傾斜している場合、当接当初は片当たりとなる。それでも、緩衝ゴム94の弾性力により、一方の緩衝ゴム94を押しつぶしながらヨーク40は傾斜に追従する。そのため、一対の端面43の片当たりが解消されて、
図8に二点鎖線で示すように、傾斜する被当接面Sに一対の端面43が当接した状態でヨーク40と測定対象Tとで閉磁路を形成することができる。これにより、接触不良によって異常検出状態となることが抑制される。なお、
図8では、説明をわかりやすくするために、被当接面Sの傾きが強調して図示されている。
【0070】
(6)ソケットハウジング110から測定移動方向の反当接側へ向けて導出される4本のケーブルは、そのソケットハウジング110寄りの部分がケーブルカバー120によってカバーされている。これにより、各ケーブルは測定移動方向の反当接側に引き出されるように案内されており、4本のケーブルのソケットハウジング110寄りの部分をまとめることができ、測定部20が当接位置と後退位置との間を移動する際にケーブルが測定の邪魔になることを抑制できる。
【0071】
(7)ソケットハウジング110は、その有するソケット112に磁気検出プローブ30の端子ピン74が差し込まれ、磁気検出プローブ30と一体化されている。そして、ソケットハウジング110それ自体は、プローブホルダ90等の他の部材に対して固定されていない。そのため、硬さ測定時において、一対の端面43が測定対象Tの被当接面Sに当接すると、磁気検出プローブ30及びそれと一体化されたソケットハウジング110は測定移動方向の反当接側へ若干移動しようとする。
【0072】
この場合において、ソケットハウジング110とケーブルカバー120との間には隙間121が設けられているため、ソケットハウジング110が測定移動方向の反当接側へ移動するためのスペースが確保されている。これにより、磁気検出プローブ30が緩衝ゴム94による緩衝を受けながら反当接側へ移動することが許容され、測定対象Tの被当接面Sとの当接時に一対の端面43にかかる衝撃を緩和できる。
【0073】
(8)硬さ測定時において、測定部20はエアシリンダ130の駆動により後退位置から当接位置に移動する。このように移動手段としてエアシリンダ130を用いた場合、ヨーク40の端面43が測定対象Tの被当接面Sに当接した際の磁気検出プローブ30及びコネクタの反当接側への移動量には、用いられるエアシリンダ130の特性によって若干の誤差がある。また、製造ラインの空気中に舞っている鉄等の粉塵がソケットハウジング110とケーブルカバー120との隙間121から入り込むと、磁気検出プローブ30の端子ピン74とソケット112との接続部分を短絡させる等の悪影響を及ぼす原因となる。そのため、隙間121は広げ過ぎない方が好ましい。
【0074】
そこで、ケーブルカバー120には長孔となるボルト挿通孔123が設けられ、このボルト挿通孔123にボルトBが挿通されてケーブルカバー120がプローブホルダ90に固定されている。そのため、ケーブルカバー120をプローブホルダ90に取付ける取付け位置を、測定移動方向に沿って調整し、ソケットハウジング110とケーブルカバー120との間の隙間121の寸法を調整することが可能となっている。これにより、測定部20が取り付けられるエアシリンダ130の特性に合わせながらできるだけ狭い隙間121となるように最適な寸法を設定する等、状況に応じた隙間121を設定できる。
【0075】
次に、硬さ測定装置10及び測定部20は、上記実施の形態で説明した構成に限定されるものではなく、例えば以下のように実施してもよい。
【0076】
(a)硬さ測定装置10において、上記実施の形態では、測定部20を移動させる移動手段としてエアシリンダ130が用いられている。この構成に代えて、スライドテーブル式でのものではない一般のエアシリンダ、ロッドレスシリンダ、ラックアンドピニオン機構等の駆動機構を用いてもよい。
【0077】
(b)硬さ測定装置10において、上記実施の形態では、測定部20を有するエアシリンダ130の設置数について特に説明していないが、測定部20を有するエアシリンダ130を一つだけ備えていてもよいし、複数備えていてもよい。複数の測定部20を備えていることにより、一つの測定対象Tに対して同時に複数の測定部位で磁束量を検出することが可能となり、硬さ測定の測定効率を向上させることができる。
【0078】
(c)測定部20の磁気検出プローブ30において、上記実施の形態では、ボビン50が有する一対の鍔部52のうちの一方に4本の各端子ピン74が一列に並んで設けられている。この構成に代えて、一対の鍔部52のそれぞれに、第1端子ピン74a及び第2端子ピン74bのいずれか一方が設けられるようにしてもよい。
【0079】
また、上記実施の形態では、4本の各端子ピン74はその並び方向に沿ってピン同士の間が等間隔となるように設けられている。この構成に代えて、例えば、第1端子ピン74a同士の間隔を他のピン同士の間隔と異ならせるなど、各端子ピン74の間隔を不均等に設定してもよい。さらに、上記実施の形態では、一対の第1端子ピン74a及び一対の第2端子ピン74bのうち一方は並び方向の中央側に隣り合って配置され、他方はその一方の両外側に配置されている。この構成に代えて、例えば、左右方向の一方側に一対の第1端子ピン74aが配置され、他方側に第2端子ピン74bが配置されるなど、第1端子ピン74a及び第2端子ピン74bの配置を異ならせるようにしてもよい。
【0080】
(d)測定部20において、上記実施の形態では、磁気検出プローブ30が有するボビン50の鍔部52にその左右方向に突出する突起部75が設けられ、突起部75がプローブ保持枠100に係合することにより磁気検出プローブ30の抜け止めが図られている。この構成に代えて、突起部75は鍔部52の正面側に突出するように設けられてもよい。また、磁気検出プローブ30の突起部75に代えて被係止部が設けられ、プローブホルダ90には先端に鉤状部を有する係止レバーが設けられ、鉤状部を被係止部に係止させることにより、磁気検出プローブ30をプローブホルダ90に固定するようにしてもよい。
【0081】
(e)測定部20において、上記実施の形態では、ヨーク40の肩部とプローブホルダ90との間に緩衝ゴム94が介在された状態で磁気検出プローブ30が設けられている。この構成に代えて、緩衝ゴム94を省略してもよい。もっとも、硬さ測定時においてヨーク40にかかる衝撃の緩和や測定対象Tの被当接面Sへの追従という効果が得られる緩衝ゴム94を設置することが好ましい。
【0082】
(f)測定部20において、上記実施の形態では、ケーブルカバー120が設けられている。このケーブルカバー120は省略してもよい。もっとも、測定部20が当接位置と後退位置との間を移動する際に、ソケットハウジング110から引き出されたケーブルが測定の邪魔になったり、鉄等の粉塵が磁気検出プローブ30の端子ピン74とソケット112との接続部分に悪影響を及ぼしたりすることを抑制するには、ケーブルカバー120が設けられた構成を採用することが好ましい。
【0083】
ケーブルカバー120が設けられた場合において、ソケットハウジング110に当接するようにケーブルカバー120が設けられ、両者に間に隙間121が形成されないようにしてもよい。もっとも、緩衝ゴム94を設置したことの効果を得るためには磁気検出プローブ30及びソケットハウジング110が反当接側へ移動可能とすることが好ましく、そのためには所定の隙間121が形成されている構成を採用することが好ましい。
【0084】
また、ケーブルカバー120が設けられた場合において、上記実施の形態では、ケーブルカバー120に長孔のボルト挿通孔123が設けられ、ケーブルカバー120の取付け位置を変更して隙間121の寸法を調整する位置調整手段を有している。この構成に代えて、プローブホルダ90に複数のボルト孔が設けられ、ボルト締めするボルト孔を変更することによってケーブルカバー120の取付け位置を変更するようにしてもよい。また、位置調整手段を省略してもよいが、エアシリンダ130の特性に合わせた隙間121を調整可能とした上記実施の形態の構成を採用することが好ましい。
【0085】
(g)測定部20において、上記実施の形態では、プローブホルダ90とは別にソケットハウジング110が設けられ、磁気検出プローブ30の端子ピン74が挿入されるソケット112がそのソケットハウジング110に設けられている。この構成に代えて、ソケット112をプローブホルダ90に設置するようにしてもよい。この場合、プローブホルダ90を樹脂により形成してもよいし、プローブホルダ90を金属製とした場合には、ソケット112の周囲に絶縁対策が施される。
【符号の説明】
【0086】
10…堅さ測定装置、30…磁気検出プローブ、40…ヨーク、41…鉄心部、42…腕部、43…端面、50…ボビン、52…鍔部、54…第1部品、55…第2部品、54a,55a…組み合わせ面、74a…第1端子ピン、74b…第2端子ピン、75…突起部、81…励磁コイル、82…検出コイル、90…プローブホルダ、94…緩衝ゴム(弾性部材)、100…プローブ保持枠(枠部材)、110…ソケットハウジング(コネクタ)、112a…第1ソケット(第1被差込部)、112b…第2ソケット(第2被差込部)、113…励磁用ケーブル、114…検出用ケーブル、120…ケーブルカバー、121…隙間、123…ボルト挿通孔(位置調整手段)、130…エアシリンダ。