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特許6990616スライド式支承体の固定構造及び固定方法、スライド式支承体の固定用の介装部材
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  • 特許-スライド式支承体の固定構造及び固定方法、スライド式支承体の固定用の介装部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】スライド式支承体の固定構造及び固定方法、スライド式支承体の固定用の介装部材
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/04 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
E01D19/04 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018067628
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178526
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】山本 吉久
(72)【発明者】
【氏名】柴田 洋輔
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-272115(JP,A)
【文献】特開2008-208657(JP,A)
【文献】特開昭63-247407(JP,A)
【文献】特開2015-209702(JP,A)
【文献】特開平08-302904(JP,A)
【文献】米国特許第04187573(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造物に固定される下沓と、
前記下沓の上側に配置されるゴム体と、
前記ゴム体の上側に配置される中間板と、
前記中間板に対してスライド可能に載置され、上部構造物に固定される上沓と、を含んでなるスライド式支承体の固定構造であって、
前記下沓と前記上沓との何れか一方側には、前記上部構造物の水平長手方向で前後に位置する少なくとも一対の第1係合部が、他方側には、前記水平長手方向で前記一対の第1係合部とそれぞれ対峙する少なくとも一対の第2係合部がそれぞれ形成されると共に、前記第1係合部と前記第2係合部との間には、前記水平長手方向で少なくとも2つの隙間が形成されて、
各前記隙間には、前記水平長手方向で複数に分割されるスペーサ部を備えた介装部材の前記スペーサ部が、前記隙間の大きさに合わせて選択した数でそれぞれ嵌合されることで、前記下沓と前記上沓との前記水平長手方向での相対移動が規制されていることを特徴とするスライド式支承体の固定構造。
【請求項2】
前記介装部材は、前記下沓側又は前記上沓側に固定される固定部を有し、前記スペーサ部は、前記固定部に連設される基本スペーサと、前記基本スペーサに別体で積層される少なくとも1つの調整スペーサとに分割されていることを特徴とする請求項1に記載のスライド式支承体の固定構造。
【請求項3】
前記調整スペーサを複数有し、各前記調整スペーサは互いに厚みが異なることを特徴とする請求項2に記載のスライド式支承体の固定構造。
【請求項4】
前記介装部材は、前記固定部と前記スペーサ部との間が直角となる平面視L字状であることを特徴とする請求項2又は3に記載のスライド式支承体の固定構造。
【請求項5】
前記介装部材は、前記固定部と前記スペーサ部とが直線状となる平板状であることを特徴とする請求項2又は3に記載のスライド式支承体の固定構造。
【請求項6】
前記調整スペーサは、連結部材を介して前記基本スペーサへ着脱可能に連結されていることを特徴とする請求項2乃至5の何れかに記載のスライド式支承体の固定構造。
【請求項7】
前記調整スペーサは、隣接する他の前記調整スペーサと前記基本スペーサと前記固定部との何れかに対して互いに着脱可能に係合していることを特徴とする請求項2乃至5の何れかに記載のスライド式支承体の固定構造。
【請求項8】
前記介装部材には防錆処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のスライド式支承体の固定構造。
【請求項9】
下部構造物に固定される下沓と、
前記下沓の上側に配置されるゴム体と、
前記ゴム体の上側に配置される中間板と、
前記中間板に対してスライド可能に載置され、上部構造物に固定される上沓と、を含んでなり、
前記下沓と前記上沓との何れか一方側には、前記上部構造物の水平長手方向で前後に位置する少なくとも一対の第1係合部が、他方側には、前記水平長手方向で前記一対の第1係合部とそれぞれ対峙する少なくとも一対の第2係合部がそれぞれ形成されると共に、前記第1係合部と前記第2係合部との間には、前記水平長手方向で少なくとも2つの隙間が形成されるスライド式支承体において、
各前記隙間にそれぞれ嵌合させて前記下沓と前記上沓との前記水平長手方向での相対移動を規制するために用いられる介装部材であって、
前記水平長手方向で複数に分割されるスペーサ部を備え、前記スペーサ部が、前記隙間の大きさに合わせて選択した数でそれぞれ前記隙間に嵌合可能であることを特徴とするスライド式支承体の固定用の介装部材。
【請求項10】
前記下沓側又は前記上沓側に固定される固定部を有し、前記スペーサ部は、前記固定部に連設される基本スペーサと、前記基本スペーサに別体で積層される少なくとも1つの調整スペーサとに分割され、前記固定部と前記スペーサ部との間が直角となる平面視L字状であることを特徴とする請求項9に記載のスライド式支承体の固定用の介装部材。
【請求項11】
前記下沓側又は前記上沓側に固定される固定部を有し、前記スペーサ部は、前記固定部に連設される基本スペーサと、前記基本スペーサに別体で積層される少なくとも1つの調整スペーサとに分割され、前記固定部と前記スペーサ部とが直線状となる平板状であることを特徴とする請求項9に記載のスライド式支承体の固定用の介装部材。
【請求項12】
下部構造物に固定される下沓と、
前記下沓の上側に配置されるゴム体と、
前記ゴム体の上側に配置される中間板と、
前記中間板に対してスライド可能に載置され、上部構造物に固定される上沓と、を含んでなり、
前記下沓と前記上沓との何れか一方側には、前記上部構造物の水平長手方向で前後に位置する少なくとも一対の第1係合部が、他方側には、前記水平長手方向で前記一対の第1係合部とそれぞれ対峙する少なくとも一対の第2係合部がそれぞれ形成されると共に、前記第1係合部と前記第2係合部との間には、前記水平長手方向で少なくとも2つの隙間が形成されるスライド式支承体において、
各前記隙間に、請求項9乃至11の何れかに記載の介装部材のスペーサ部をそれぞれ嵌合させて、前記下沓と前記上沓との前記水平長手方向での相対移動を規制することを特徴とするスライド式支承体の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁等の上部構造物と橋脚等の下部構造物との間に設けられるスライド式支承体を固定支承とするための固定構造及び固定方法と、スライド式支承体の固定用の介装部材とに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁等の上部構造物を橋脚等の下部構造物上に施工する際、上部構造物と下部構造物との間にゴム支承等の支承体を介在させて固定し、振動や横揺れを吸収させる構造が知られている。多点固定形式の橋梁においては、支承体の下側に設けられる下沓が下部構造物である橋脚に固定された後に、支承体の上側に設けられる上沓が上部構造物である橋桁に固定されることになるが、この際、上部構造物に伸縮が生じるため、一旦支承体に対して上沓(又は下沓)を水平長手方向へスライド可能にしておく仮可動構造が採用される。
このようなスライド式支承体の固定構造に関し、特許文献1には、支承体に設けた上部金属板の上面に下部滑り板を、上部構造物側の金属製支持板(上沓)に上部滑り板をそれぞれ固着して、橋梁の伸縮等に伴い、上部滑り板を下部滑り板の上でスライドさせた後、上部金属板を金属製支持板に固定するプレスライド式橋桁支承方法が開示されている。特にここでは、橋梁のスライドによって金属製支持板に設けたストッパ突条と上部金属板との間に生じた隙間をスペーサによって埋めるようにしている。
また、特許文献2には、支承体の上沓を上部構造物に固定すると共に、下沓を下部構造物側のベースプレート上の滑り部材に載置し、上部構造物の収縮後、下沓とベースプレートとの間の空隙に移動規制用のカラーを介在させて下沓を固定するスライド式橋桁支承体の固定構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2715048号公報
【文献】特許第3860892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記スライド式支承体の固定構造においては、上部構造物の伸縮等により生じた支承体との隙間の寸法を測定し、その測定結果に応じてスペーサやカラー等の介装部材を作製して、作製した介装部材を隙間に取り付けて固定支承とする手順となる。よって、寸法測定後に介装部材を設計・作製する日数が余計に必要となって施工期間が長くなってしまう。特に介装部材も支承体の金属部材と同様に防錆処理が必要となるため、さらに時間が掛かることになる。また、介装部材の作製中に生じた新たな寸法変化により、作製した介装部材と現場の隙間との寸法が合わなくなるおそれもある。
【0005】
そこで、本発明は、隙間の寸法測定後直ちに介装部材を隙間に合わせてセットでき、施工期間の短縮化に繋がるスライド式支承体の固定構造及び固定方法、スライド式支承体の固定用の介装部材を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、下部構造物に固定される下沓と、下沓の上側に配置されるゴム体と、ゴム体の上側に配置される中間板と、中間板に対してスライド可能に載置され、上部構造物に固定される上沓と、を含んでなるスライド式支承体の固定構造であって、
下沓と上沓との何れか一方側には、上部構造物の水平長手方向で前後に位置する少なくとも一対の第1係合部が、他方側には、水平長手方向で一対の第1係合部とそれぞれ対峙する少なくとも一対の第2係合部がそれぞれ形成されると共に、第1係合部と第2係合部との間には、水平長手方向で少なくとも2つの隙間が形成されて、
各隙間には、水平長手方向で複数に分割されるスペーサ部を備えた介装部材のスペーサ部が、隙間の大きさに合わせて選択した数でそれぞれ嵌合されることで、下沓と上沓との水平長手方向での相対移動が規制されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、介装部材は、下沓側又は上沓側に固定される固定部を有し、スペーサ部は、固定部に連設される基本スペーサと、基本スペーサに別体で積層される少なくとも1つの調整スペーサとに分割されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成において、調整スペーサを複数有し、各調整スペーサは互いに厚みが異なることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3の構成において、介装部材は、固定部とスペーサ部との間が直角となる平面視L字状であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項2又は3の構成において、介装部材は、固定部とスペーサ部とが直線状となる平板状であることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項2乃至5の何れかの構成において、調整スペーサは、連結部材を介して基本スペーサへ着脱可能に連結されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項2乃至5の何れかの構成において、調整スペーサは、隣接する他の調整スペーサと基本スペーサと固定部との何れかに対して互いに着脱可能に係合していることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の何れかの構成において、介装部材には防錆処理が施されていることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項9に記載の発明は、下部構造物に固定される下沓と、下沓の上側に配置されるゴム体と、ゴム体の上側に配置される中間板と、中間板に対してスライド可能に載置され、上部構造物に固定される上沓と、を含んでなり、
下沓と上沓との何れか一方側には、上部構造物の水平長手方向で前後に位置する少なくとも一対の第1係合部が、他方側には、水平長手方向で一対の第1係合部とそれぞれ対峙する少なくとも一対の第2係合部がそれぞれ形成されると共に、第1係合部と第2係合部との間には、水平長手方向で少なくとも2つの隙間が形成されるスライド式支承体において、
各隙間にそれぞれ嵌合させて下沓と上沓との水平長手方向での相対移動を規制するために用いられる介装部材であって、
水平長手方向で複数に分割されるスペーサ部を備え、スペーサ部が、隙間の大きさに合わせて選択した数でそれぞれ隙間に嵌合可能であることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項9の構成において、下沓側又は上沓側に固定される固定部を有し、スペーサ部は、固定部に連設される基本スペーサと、基本スペーサに別体で積層される少なくとも1つの調整スペーサとに分割され、固定部とスペーサ部との間が直角となる平面視L字状であることを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、請求項9の構成において、下沓側又は上沓側に固定される固定部を有し、スペーサ部は、固定部に連設される基本スペーサと、基本スペーサに別体で積層される少なくとも1つの調整スペーサとに分割され、固定部とスペーサ部とが直線状となる平板状であることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項12に記載の発明は、スライド式支承体の固定方法であって、下部構造物に固定される下沓と、下沓の上側に配置されるゴム体と、ゴム体の上側に配置される中間板と、中間板に対してスライド可能に載置され、上部構造物に固定される上沓と、を含んでなり、下沓と上沓との何れか一方側には、上部構造物の水平長手方向で前後に位置する少なくとも一対の第1係合部が、他方側には、水平長手方向で一対の第1係合部とそれぞれ対峙する少なくとも一対の第2係合部がそれぞれ形成されると共に、第1係合部と第2係合部との間には、水平長手方向で少なくとも2つの隙間が形成されるスライド式支承体において、
各隙間に、請求項9乃至11の何れかに記載の介装部材のスペーサ部をそれぞれ嵌合させて、下沓と上沓との水平長手方向での相対移動を規制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、分割されるスペーサ部を備えた介装部材の採用により、隙間の寸法測定後直ちに介装部材を隙間に合わせてセットできる。よって、介装部材を隙間に合わせて設計・作製する必要がなくなり、施工期間の短縮化に繋がる。また、介装部材と現場の隙間との寸法が合わなくなるおそれが生じず、スライド式支承体を確実に固定できる。
特に、請求項2に記載の発明によれば、上記効果に加えて、介装部材は、固定部とスペーサ部とを有し、スペーサ部は、基本スペーサと調整スペーサとを備えることで、厚みの調整と固定とが容易に行える。
特に、請求項3に記載の発明によれば、上記効果に加えて、調整スペーサは互いに厚みが異なるので、厚みのバリエーションが多くなって選択の幅が広がる。
特に、請求項4に記載の発明によれば、上記効果に加えて、介装部材は、固定部とスペーサ部との間が直角となる平面視L字状であるため、位置決めや取付がしやすくなる。
特に、請求項5に記載の発明によれば、上記効果に加えて、介装部材は、固定部とスペーサ部とが直線状となる平板状であるため、隙間への嵌合がしやすくなる。
特に、請求項6に記載の発明によれば、上記効果に加えて、調整スペーサは連結部材を介して基本スペーサへ着脱可能であるため、選択した調整スペーサの固定が容易に行え、脱落も生じにくくなる。
特に、請求項7に記載の発明によれば、上記効果に加えて、調整スペーサは、他の調整スペーサ等に対して互いに着脱可能に係合しているため、連結部材を用いなくても調整スペーサの着脱が容易に行える。
特に、請求項8に記載の発明によれば、上記効果に加えて、介装部材には防錆処理が施されているので、防錆処理による施工期間の延長が回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】スライド式支承体の正面図である。
図2】スライド式支承体の側面図である。
図3】スライド式支承体の正面からの拡大半断面図である。
図4】スライド式支承体の側面からの拡大半断面図である。
図5】(A)はスライド式支承体の平面図(介装部材は調整スペーサなし)、(B)は上沓部分の正面図である。
図6】介装部材の説明図で、(A)は平面、(B)は正面、(C)は側面をそれぞれ示す。
図7】(A)は介装部材の上方からの斜視、(B)は下方からの斜視をそれぞれ示す。
図8】介装部材の分割構造を示す説明図である。
図9】介装部材に調整スペーサを用いたスライド式支承体の平面図である。
図10】変更例の介装部材の説明図で、(A)は平面、(B)は正面、(C)は側面、(D)は斜視をそれぞれ示す。
図11】変更例の介装部材の分割構造を示す説明図である。
図12】変更例の介装部材を用いたスライド式支承体の正面図である。
図13】変更例の介装部材を用いたスライド式支承体の側面図である。
図14】(A)は変更例の介装部材(調整スペーサあり)を用いたスライド式支承体の平面図、(B)は上沓部分の正面図である。
図15】変更例の介装部材(調整スペーサなし)を用いたスライド式支承体の平面図である。
図16】変更例の介装部材の分割構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、スライド式支承体の固定構造の一例を示す正面図、図2は側面図、図3,4はそれぞれ正面及び側面からの拡大半断面図、図5は平面図及び上沓部分の正面図である。ここでは、橋脚等の下部構造物1と、橋梁等の上部構造物2との間にスライド式支承体(以下、単に「支承体」という。)3を取り付けた構造となっている。
支承体3は、下部構造物1に固定される下沓4と、上部構造物2に固定される上沓5とを備えると共に、下沓4と上沓5との間に、下からゴム体6、中間板7、フッ素樹脂等で作成された低摩擦板8、ステンレス板9をそれぞれ配置してなる。各図において矢印A方向が上部構造物2の水平長手方向(橋梁であれば橋軸方向)、矢印B方向が水平長手方向と直交する水平短手方向を示している。
【0010】
下沓4は、下面に接合したアンカーボルト10,10・・によって下部構造物1に固定される平面視四角形の金属板で、相対向する水平長手方向の一対の側辺には、サイドブロック11,11がボルト12,12・・で固定されている。各サイドブロック11の長手方向中央には、上端に互いの対向側へ突出する突出片14を備えた平面視四角形状の立ち上がり部13が形成されて、立ち上がり部13における水平長手方向の前後の外面は、水平短手方向と平行な第1係合部としての一対の第1係合面13a,13aとなっている。
【0011】
上沓5は、水平長手方向及び水平短手方向の寸法が共に下沓4より小さく形成されて水平短手方向でサイドブロック11,11間に収まる平面視四角形状の金属板で、上面には、上部構造物2への固定用のセットボルト16,16・・が接合されている。また、上沓5の中央には、上沓5と上部構造物2とに跨がって嵌合する平面視円形のせん断キー17が設けられている。
さらに、上沓5において、相対向する水平長手方向の一対の側辺中央には、水平長手方向の内法寸法が立ち上がり部13よりも大きく形成されて立ち上がり部13の突出片14側が部分的に遊嵌する平面視コ字状の凹部18,18が形成されている。各凹部18における水平長手方向の前後の内面は、水平短手方向と平行な第2係合部としての一対の第2係合面18a,18aとなってそれぞれ第1係合面13aと非接触で対峙し、両面間に水平長手方向の隙間S(図5)をそれぞれ形成している。凹部18の底となる水平長手方向の内面は、立ち上がり部13の突出片14と近接しており、当該内面の下部には、突出片14が上方から非接触で被さる段部19が形成されている。
【0012】
ゴム体6は、図3,4に示すように、ゴム製の直方体である。なお、ゴムの材質は問わず、補強鋼板が埋設されていてもよい。
中間板7は、水平長手方向及び水平短手方向の寸法が共に上沓5よりも小さく形成された平面視四角形状の金属板で、サイドブロック11,11と平行な水平長手方向の一対の側辺には、立ち上がり部13,13が遊嵌する切欠部22,22がそれぞれ形成されている。
底摩擦板8は、中間板7の上面中央に形成された円形凹部23に嵌合する円盤状で、嵌合状態で中間板7の上面より上方へ突出している。
ステンレス板9は、上沓5の下面に取り付けられて、下面が低摩擦板8の上面に当接して互いにスライド可能となっている。
【0013】
そして、図5に示すように、下沓4の各サイドブロック11の立ち上がり部13と、上沓5の凹部18との間に形成される4カ所の隙間Sには、支承体3を固定支承として機能させるための介装部材30がそれぞれ設けられている。
この介装部材30は、図6,7に示すように、帯板状の固定部31と、固定部31と直角に繋がり、固定部31より幅広な四角板状のスペーサ部32とからなる平面視L字状の金属製で、後述する調整スペーサ35A~35Cも含めて下沓4及び上沓5と同様に予め表面全体に防錆処理が施されている。
固定部31には、固定部31の長手方向に延びる長孔33,33が、長手方向に沿って2つ貫通形成されている。
【0014】
一方、スペーサ部32は、図8にも示すように、固定部31へ直角に連設され、固定部31よりも厚みが大きい基本スペーサ34と、基本スペーサ34に、連結部材としての2本の皿ネジ36,36によって着脱可能に取り付けられる3枚の調整スペーサ35A~35Cとからなる。
調整スペーサ35A~35Cは、基本スペーサ34から最も離れた調整スペーサ35Aが最も厚みが大きく、そこから調整スペーサ35B、35Cの順に厚みが小さくなっている。具体的な数値を例示すると、基本スペーサ34は、最低限必要な厚みとして10mmに設定されて、調整スペーサ35A~35Cは、想定される隙間Sの変動幅(3~10mm)に対応して、調整スペーサ35Aが4mm、調整スペーサ35Bが2mm、調整スペーサ35Cが1mmに設定されている。
ここでは基本スペーサ34にネジ孔37が、調整スペーサ35B,35Cに透孔38,38が形成され、最外の調整スペーサ35Aにはザグリ孔39が貫通形成されている。また、調整スペーサ35A~35Cを含むスペーサ部32の先端部下側には、切欠40が形成されている。
【0015】
よって、スペーサ部32は、調整スペーサ35A~35Cの全てが皿ネジ36,36により基本スペーサ34に取り付けられてスペーサ部32の厚みが最大となる第1パターンと、調整スペーサ35A,35Bのみが取り付けられて第1パターンの次に厚みが小さい第2パターンと、調整スペーサ35A,35Cのみが取り付けられて第2パターンの次に厚みが小さい第3パターンと、調整スペーサ35Aのみが取り付けられて第3パターンの次に厚みが小さい第4パターンと、調整スペーサ35A~35Cの何れも取り付けられず基本スペーサ34のみとなって第4パターンの次に厚みが小さい第5パターンとの5段階に厚みが調整可能となっている。
【0016】
図5に示す例では、各介装部材30のスペーサ部32を、基本スペーサ34のみで最も厚みが小さい第5パターンとして、固定部31を、上沓5の水平長手方向の側面にあてがい、スペーサ部32を各隙間Sに嵌合させて、切欠40を凹部18の段部19に係止させて位置決めした状態で、固定部31をボルト41,41によって上沓5に固定している。これにより、上沓5が下沓4側に対して水平長手方向での移動が規制された固定支承となっている。
【0017】
以上の如く構成された支承体3の施工は、以下のように行われる。
上沓5を中間板7の低摩擦板8と上沓5のステンレス板9との間でスライド可能とした状態で、下部構造物1であるコンクリート橋脚に設けた凹部内に下沓4のアンカーボルト10を配置し、凹部内にコンクリートを打設して下沓4と下部構造物1とを固定する。
この間に上部構造物2が水平長手方向へ伸縮すると、低摩擦板8上でステンレス板9がスライドして上沓5が下沓4に対して水平長手方向へ変位する。このとき、上沓5の凹部18と下沓4の立ち上がり部13との間には、予め隙間Sが設定されているので、上沓5が変位しても立ち上がり部13と干渉することはない。
【0018】
下沓4と下部構造物1との固化後、各立ち上がり部13の前後に形成される隙間S,Sが、介装部材30のスペーサ部32の厚みよりも小さい場合は、各介装部材30を、スペーサ部32を基本スペーサ34のみの第5パターンとして、図5に示すように、スペーサ部32を隙間Sに嵌合させて固定部31を上沓5にボルト41,41で固定すれば、上沓5が下沓4側に対して水平長手方向での移動が規制された固定支承となる。
一方、隙間Sが基本スペーサ34の厚みよりも大きい場合は、例えば各介装部材30を、スペーサ部32に全ての調整スペーサ35A~35Cを取り付けた第1パターンとして、図9に示すように、スペーサ部32を隙間Sに嵌合させて固定部31を上沓5にボルト41,41で固定すれば、同様に上沓5を固定できる。
なお、何れの場合も水平長手方向での固定部31の位置は、ボルト41を貫通させる長孔33によって微調整できる。また、スペーサ部32の嵌合時には、左右の第1係合面13aと第2係合面18aとの間にそれぞれスポンジ又はゴム板を介在させて、スペーサ部32を密着させるのが望ましい。
【0019】
また、上沓5の変位によって立ち上がり部13の前後に形成される隙間S,Sの大きさが不均一であっても、基本スペーサ34に取り付ける調整スペーサ35A~35Cの数を変更して各隙間Sごとに合わせたパターンを選択すれば、隙間Sに嵌合させることができる。
こうして固定された支承体3では、上部構造物2に水平長手方向の変位や回転力が作用すると、ゴム体6が追従して変位し、振動や横揺れを緩和することができる。
【0020】
このように、上記形態の介装部材30を用いた支承体3の固定構造及び固定方法によれば、下沓4側には、上部構造物2の水平長手方向で前後に位置する一対の第1係合面13a,13aが、上沓5側には、水平長手方向で一対の第1係合面13a,13aとそれぞれ対峙する一対の第2係合面18a,18aがそれぞれ形成されると共に、第1係合面13aと第2係合面18aとの間には、水平長手方向で4つの隙間Sが形成されて、各隙間Sには、水平長手方向で複数に分割されるスペーサ部32を備えた介装部材30のスペーサ部32が、隙間Sの大きさに合わせて選択した数でそれぞれ嵌合されることで、下沓4と上沓5との水平長手方向での相対移動が規制されている。
よって、隙間Sの寸法測定後直ちに介装部材30を隙間Sに合わせてセットできる。よって、介装部材30を隙間Sに合わせて設計・作製する必要がなくなり、施工期間の短縮化に繋がる。また、介装部材30と現場の隙間Sとの寸法が合わなくなるおそれが生じず、支承体3を確実に固定できる。
【0021】
特にここでは、介装部材30は、下沓4側に固定される固定部31を有し、スペーサ部32は、固定部31に連設される基本スペーサ34と、基本スペーサ34に別体で積層される3つの調整スペーサ35A~35Cとを備えることで、厚みの調整と固定とが容易に行える。
また、3つの調整スペーサ35A~35Cは互いに厚みが異なるので、厚みのバリエーションが多くなって選択の幅が広がる。
さらに、介装部材30は、固定部31とスペーサ部32との間が直角となる平面視L字状であるため、位置決めや取付がしやすくなる。
【0022】
加えて、調整スペーサ35A~35Cを、皿ネジ36を介して基本スペーサ34へ着脱可能に連結しているので、選択した調整スペーサ35A~35Cの固定が容易に行え、脱落も生じにくくなる。
そして、介装部材30には防錆処理が施されているので、防錆処理による施工期間の延長が回避できる。
【0023】
なお、上記形態では、介装部材を平面視L字状としているが、図10,11に示す介装部材30Aのように、2つの貫通孔45,45を備えた固定部31と、固定部31よりも幅広の基本スペーサ34とが直線状に繋がる一枚板形状としてもよい。ここでは調整スペーサ35A~35Cを、固定部31と基本スペーサ34とを含む形状で形成して固定部31側の端部に、貫通孔45,45と同心の2つの透孔46,46をそれぞれ形成している。よって、貫通孔45,45と共に透孔46,46へボルト41,41を貫通させることで、調整スペーサ35A~35Cを固定部31側で固定して反対側でスペーサ部32が形成可能となっている。
【0024】
この介装部材30Aを用いる場合、図12~14に示すように、スペーサ部32を第1係合面13aと第2係合面18aとの隙間Sに嵌合させて、固定部31を、上沓5ではなく立ち上がり部13の第1係合面13a,13aに、貫通孔45,45及び透孔46,46を介して調整スペーサ35A~35Cごとボルト41,41で固定する。ここでも隙間Sに対してスペーサ部32の幅が合わなければ、調整スペーサ35A~35Cの数を変更して隙間Sに合わせたパターンを選択すればよい。また、図15に示すように、調整スペーサ35A~35Cを全て外して基本スペーサ34のみを隙間に嵌合させるパターンとしてもよい。
このように、介装部材30Aを、固定部31とスペーサ部32とが直線状となる平板状とすれば、介装部材30Aを第2係合面18aに沿わせてスライドさせながらスペーサ部32を隙間Sへ嵌合させることができ、嵌合させやすくなる。
【0025】
一方、基本スペーサと調整スペーサとの連結は、ネジ等の連結部材による他、例えば図16に示す介装部材30Bのように、基本スペーサ34に係合凹部47を、各調整スペーサ35A~35Cに、係合凹部47に嵌合する係合凸部48と、係合凹部47と同じ形状及び深さの係合凹部49をそれぞれ表裏両面に一又は複数個設けて(但し、最外の調整スペーサ35Aには係合凸部48のみを設けている)、凹凸同士の嵌合によって互いに着脱可能に連結することも可能である。
このように、調整スペーサ35A~35Cを、隣接する他の調整スペーサ35A~35Cに対して互いに着脱可能に係合させるようにすれば、皿ネジ等の連結部材を用いなくても調整スペーサ35A~35Cの着脱が容易に行える。なお、係合による着脱は調整スペーサ同士に限らず、基本スペーサや固定部に対して互いに係合させるようにしてもよい。
また、上記形態及び変更例において、調整スペーサの数や厚みは上記形態に限らず、適宜変更可能で、厚みの異なる調整スペーサの数を増やせばより細かい隙間への対応が可能となる。さらに、固定部及びスペーサ部の形状も適宜変更可能である。
【0026】
そして、下沓や上沓、ゴム体や中間板、立ち上がり部等の形状も上記形態に限らず適宜変更可能で、上記形態では下沓側の立ち上がり部を上沓の凹部に遊嵌させているが、これと逆に、下沓側に凹部を、上沓側に凸部を設けて遊嵌させ、生じた隙間に介装部材を介在させてもよい。隙間の数も上記形態に限定されない。
また、上記形態では、支承体の下沓側を先に下部構造物側へ固定して上沓側を上部構造物の伸縮に伴ってスライドさせて、生じた隙間を介装部材で固定するようにしているが、これと逆に、支承体の上沓側を先に上部構造物側へ固定して下沓側を上部構造物の伸縮に伴ってスライドさせ、生じた隙間を介装部材で固定する構造であっても本発明は適用可能である。
さらに、上部構造物及び下部構造物については、コンクリート桁、鋼桁、コンクリート橋脚、鋼橋脚の任意の組み合わせに適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1・・下部構造物、2・・上部構造物、3・・スライド式支承体、4・・下沓、5・・上沓、6・・ゴム体、7・・中間板、8・・低摩擦板、9・・ステンレス板、11・・サイドブロック、13・・立ち上がり部、13a・・第1係合面、14・・突出片、18・・凹部、18a・・第2係合面、30,30A,30B・・介装部材、31・・固定部、32・・スペーサ部、33・・長孔、34・・基本スペーサ、35A~35C・・調整スペーサ、36・・皿ネジ、41・・ボルト、S・・隙間。
図1
図2
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図5
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図8
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図10
図11
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図16