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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】切断装置
(51)【国際特許分類】
   B23D 21/02 20060101AFI20220104BHJP
   B23D 33/02 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B23D21/02 B
B23D33/02 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018148808
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2020023018
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2020-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】391019658
【氏名又は名称】株式会社中部プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 守孝
【審査官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-138610(JP,U)
【文献】特開2018-118349(JP,A)
【文献】特許第4035083(JP,B2)
【文献】特開平10-309623(JP,A)
【文献】特開2018-024043(JP,A)
【文献】特開2002-364631(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0043192(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 21/02
B23D 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の配管を切断する切断装置であって、
切断対象の配管を、内部に挿入した軸棒と共に、切断位置に向けて搬送する一対の搬送ローラと、
前記切断位置において、第1方向に対向して配置され、前記配管を切断する一対の回転刃と、
前記一対の回転刃により切断される前記配管を、前記第1方向に直交する第2方向の両側からガイドする一対のガイド部材と、を含み
前記軸棒は、熱処理により表面が硬化した断面円形状の鋼材であり、
前記切断位置を通過する前記配管を前記一対の回転刃が切断する際に、前記配管の内部に挿入した前記軸棒が、前記配管の変形を抑制する、配管の切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の配管の切断装置であって、
前記一対のガイド部材は、前記第2方向に対向配置された一対のローラである、配管の切断装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配管の切断装置であって、
前記一対のガイド部材は、
前記配管の搬送方向において、前記一対の回転刃の外形範囲内に配置されている、配管の切断装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の配管の切断装置であって、
前記回転刃は、円盤の外周部に鋭角状の刃部を有し、
前記回転刃は、前記切断位置を通過する前記配管を、回転する前記刃部により押し切る、配管の切断装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の配管の切断装置であって、
前記配管の硬度よりも、前記回転刃及び前記軸棒の表面硬度の方が硬い、切断装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の配管の切断装置であって、
前記一対の回転刃のうち少なくともいずれか一方を、前記第1方向において位置変位させることで、前記一対の回転刃の中心間距離を調整する調整機構を有する、配管の切断装置。
【請求項7】
請求項6に記載の配管の切断装置であって、
前記一対の回転刃の中心間距離は、前記一対の回転刃の刃部の先端が、前記軸棒の外周の頂点に接触するように調整されている、切断装置。
【請求項8】
金属製の配管の切断方法であって、
配管の内部に、熱処理により表面が硬化した断面円形状の鋼材からなる軸棒を挿入するステップと、
一対の搬送ローラにより、切断対象の配管を前記軸棒と共に、切断位置に向けて搬送するステップと、
前記切断位置において、第1方向に直交する第2方向の両側から一対のガイド部材を用いて前記配管をガイドしつつ、前記第1方向に対向して配置される一対の回転刃により前記配管を切断するステップと、を含み、
前記配管を切断するステップでは、前記切断位置を通過する前記配管を前記一対の回転刃が切断する際に、前記配管の内部に挿入した前記軸棒が、前記配管の変形を抑制する、金属製の配管の切断方法。
【請求項9】
請求項8に記載の金属製の配管の切断方法であって、
前記回転刃は、円盤の外周部に鋭角状の刃部を有し、
前記配管を切断するステップでは、前記回転刃が、前記切断位置を通過する前記配管を、回転する前記刃部により押し切る、金属製の配管の切断方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の金属製の配管の切断方法であって、
前記配管の硬度よりも、前記回転刃及び前記軸棒の表面硬度の方が硬い、金属製の配管の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の配管を切断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、原子力発電所内で使用された熱交換用細管等の小口径配管を除去する際に、配管の汚染状況を確認する必要がある。小口径配管は、サーベイメータ等の計測器により管内の放射線を計測して、配管内面の汚染状況を確認することが難しい。特許文献1には、配管の汚染状況の確認を容易にするため小口径配管を半割りする半割切断機が開示されている。
【0003】
この半割切断機は、切断機に導入された配管を水平方向前方に送り出すための左右一対の前部送りディスクと、配管の両側を長手方向に切断して上下に分割する左右一対の切断ディスクと、分割切断された配管を筒状に維持した状態で前方に送り出す左右一対の後部送りディスクとを備え、これらディスクが配管の搬送方向に向って順に機枠上に装着されており、一対の切断ディスクと一対の後部送りディスクとの間に、半割り分割しようとする配管と同心の切断ガイド棒を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4035083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の半割切断機は、切断ガイド棒を機枠に対して固定する構造である。切断ガイド棒は、切断しようとする配管の長さに応じて、ある程度の長さが必要であることから、これを機枠に固定する構造の場合、装置が配管の搬送方向で大型化するという問題がある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、配管の搬送方向で装置を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金属製の配管の切断装置であって、切断対象の配管を、内部に挿入した軸棒と共に切断位置に向けて搬送する一対の搬送ローラと、前記切断位置において、第1方向に対向して配置される一対の回転刃と、前記一対の回転刃により切断される前記配管を、前記第1方向に直交する第2方向の両側からガイドする一対のガイド部材とを含む。切断装置は、軸棒を装置に固定しないので、軸棒を固定する従来装置と比較して、配管の搬送方向で装置を小型化することが出来る。また、配管を第2方向の両側からガイドする一対のガイド部材を設けているため、回転刃による切断時に、配管が第2方向に逃げ難くなる。そのため、回転刃による配管の切断不良を抑制できる。
【0007】
切断装置の一実施態様として、前記一対のガイド部材は、前記第2方向に対向配置された一対のローラが好ましい。ローラであれば、搬送経路を移動する配管との摩擦を抑えつつ、配管をガイドすることが出来る。
【0008】
切断装置の一実施態様として、前記一対のガイド部材は、前記配管の搬送方向において、前記一対の回転刃の外形範囲内に配置されているとよい。この構成では、切断位置の近傍で配管をガイドできるため、回転刃による切断時に、配管が第2方向に逃げ難くなる。
【0009】
切断装置の一実施態様として、前記回転刃は、円盤の外周部に鋭角状の刃部を有し、前記回転刃は、前記切断位置を通過する前記配管を、回転する前記刃部により押し切るとよい。この構成では、メタルソーなどの鋸刃タイプの回転刃と比較して、刃の欠けが少なく耐久性がよい。
【0010】
切断装置の一実施態様として、前記軸棒は、断面が円形状であるとよい。この構成では、回転刃による切断時、配管が内側に変形することを防止し、配管の切断不良を抑制できる。
【0011】
切断装置の一実施態様として、前記一対の回転刃のうち少なくともいずれか一方を前記第1方向において位置変位させることで、前記一対の回転刃の中心間距離を調整する調整機構を有する。この構成では、中心間距離の調整により、回転刃の刃先(刃部の先端)と軸棒の位置関係を切断に適した状態に調整できる。例えば、刃先が軸棒外周の頂点部分に、丁度接触するように位置を調整することができる。これにより、回転刃で配管を円滑に切断することが出来る。また、回転刃の刃先が軸棒に過度にラップ(干渉)することを抑制できるため、回転刃の摩耗を抑えることが出来、回転刃を再研磨する頻度を下げることが出来る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、配管の搬送方向で装置を小型化することが出来る。また、装置の大きさを変えなくても、配管の長さの制約がなく、長尺の管も切断可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】配管と軸棒の斜視図
図2】切断装置の斜視図
図3】切断装置の斜視図
図4】本体フレームの一部を取り外した斜視図
図5】ガイド部材と切断刃の位置関係を示す図
図6】切断装置の側面図
図7図6のA-A断面図
図8図6のB-B断面図
図9図7の一部を拡大した図
図10図6のC-C断面図
図11図6のD-D断面図
図12】配管の切断工程を示す図
図13】配管の切断工程を示す図
図14】配管の切断工程を示す図
図15】切断後の配管を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
本発明の実施形態を、図1図15によって説明する。
1.切断装置10の構造説明
切断装置10は、原子力発電所内で使用された熱交換用細管等の金属製の配管1を、配管1の軸線Vに対して平行な切断面で切断する装置である。切断装置10は、軸棒スルー方式の切断装置である。軸棒スルー方式とは、内部に軸棒3を挿入した配管1を、切断装置10を通過させながら切断する方式である。切断装置10は、軸棒3を切断装置10に固定せず、配管1と共に切断装置10をスルー(通過)させる点が特徴の1つになっている。
【0015】
軸棒3は、配管1よりも長い棒材である。軸棒3は、断面が円径であり、図1に示すように、配管1の内側に挿入して使用される。軸棒3は、回転刃50A、50Bによる切断時に、配管1が内側に変形して逃げることを抑制するために使用される。
【0016】
配管1の内側に隙間なく挿入できるように、軸棒3の外径は、配管1の内径とほぼ等しいことが好ましい。配管1と軸棒3の隙間を小さくすることで、切断時、配管1が内側に変形して逃げることを効果的に抑制できる。
【0017】
また、軸棒3は、熱処理(焼き入れや焼き戻し)をした材料で、表面が硬化していることが好ましい。表面が硬化した軸棒3を使用することで、切断時、配管1が内側に変形して逃げることを効果的に抑制できる。
【0018】
切断装置10は、図2図3に示すように、本体フレーム20と、一対のレール28A、28Bと、一対の搬送ローラ40A、40Bと、一対のローラホルダ45A、45Bと、一対の回転刃50A、50Bと、一対の回転刃50ホルダ55A、55Bと、一対のガイド部材60と、駆動モータ70と、ギヤ機構75とを含む。
【0019】
以下、配管1の搬送方向をX方向とする。また、上下方向をZ方向とし、上下方向に直交する左右方向をY方向とする。Z方向が第1方向に相当し、Y方向が第2方向に相当する。
【0020】
本体フレーム20は、基台21と、一対の側部パネル24と、天板25とから構成されている。側部パネル24は、図2に示すように、基台21上において、Y方向に向かい合うようにして、対向配置されている。側部パネル24には、逃がし溝25が設けられている。逃がし溝25は、搬送ローラ40や回転刃50の軸部41、51を逃がすために設けられている。
【0021】
一対のレール28A、28Bは、一対の側部パネル24の内面に、固定されている。一対のレール28A、28Bは、X方向に平行に伸びており、前後の両端を前後フレーム29に固定している。一対のレール28A、28Bは、Z方向(上下方向)において、本体フレーム20の概ね中間高さに位置している。レール間のスペースは、配管1の搬送経路Lである。
【0022】
2つの側部パネル24間には、一対の搬送ローラ40A、40Bと、一対の回転刃50A、50Bが配置されている。
【0023】
一対の搬送ローラ40A、40Bは、Z方向(上下方向)に向かい合っている。各搬送ローラ40A、40Bは、ローラホルダ45A、45Bによって、支持されている。
【0024】
ローラホルダ45A、45Bは、断面コの字型であり、搬送ローラ40A、40Bの両側に位置する2つの側壁が、各搬送ローラ40A、40Bの軸部41を回転可能に支持している。
【0025】
図4に示す上側のローラホルダ45Aは可動、図4に示す下側のローラホルダ45Bは固定である。上側のローラホルダ45Aを、後述する調整機構81により、上下方向(Z方向)に位置調整することで、本体フレーム20内において、上下に向かい合う2つの搬送ローラ40A、40Bの中心間距離Hを調整することが出来る仕組みになっている。
【0026】
一対の搬送ローラ40A、40Bは、駆動モータ70の動力により回転して、軸棒3を内挿した配管1を、2つのレール28間に位置する搬送径路Lに沿って、下流の切断位置Lcに送り出すことが出来る。
【0027】
下側の搬送ローラ40Bは、一対のガイド部材60A、60Bが、配管1の中心高さ部分を挟むような、高さ位置で配管1を搬送する。また、各搬送ローラ40A、40Bの外周面は、湾曲する凹状であり、送出される配管1の横ずれ(Y方向の位置ずれ)を抑える構成になっている。
【0028】
一対の回転刃50A、50Bは、一対の搬送ローラ40A、40Bの下流側に配置されている。具体的には、搬送径路L上の切断位置Lcに配置されている。一対の回転刃50A、50Bは、上下方向(Z方向)に向かい合っている。各回転刃50A、50Bは、回転刃ホルダ55A、55Bによって、支持されている。回転刃ホルダ55A、55Bは、断面コの字型であり、回転刃50の両側に位置する2つの側壁57が、回転刃50A、50Bの軸部51を回転可能に支持している。
【0029】
図4に示す上側の回転刃ホルダ55Aは可動、図4に示す下側の回転刃ホルダ55Bは固定である。上側の回転刃ホルダ55Aを、後述する調整機構81により、上下方向(Z方向)に位置調整することで、本体フレーム20内において、上下に向かい合う2つの回転刃50A、50Bの中心間距離Hを調整することが出来る仕組みになっている。
【0030】
図4に示すように、一対の回転刃50A、50Bは、円盤状である。一対の回転刃50A、50Bは外周部に鋭角状の刃部53を有している。刃部53は、回転刃50A、50Bの全周に渡って連続して設けられている。
【0031】
一対の回転刃50A、50Bは、駆動モータ70の動力により回転して、搬送ローラ40A、40Bにより送り出される配管1を、切断位置Lcにて切断する。具体的には、上側の回転刃50Aと下側の回転刃50Bの刃先間の距離(図5に示すD1)は、軸棒1の外周の頂点部分に各回転刃50A、50Bの刃部53の先端(刃先)が接触するように調整する。図9に示すように、上側の回転刃50Aの刃部53の先端が軸棒外周の上側頂点P1に接触し、下側の回転刃50Bの刃部53の先端が軸棒外周の下側頂点P2に接触している。
【0032】
上記調整により、回転する上下の回転刃50A、50Bの刃部53の先端が、切断位置Lcを通過する配管1に対して干渉気味に接触し、配管1は2つの回転刃50A、50Bにより上下両側から押圧された状態となる。これにより、図9に示すように、回転する上側の回転刃50Aにより、配管1の外周上端を押し潰しながら切断し、回転する下側の回転刃50Bで配管1の外周下端を押し潰しながら切断できる。
【0033】
尚、切断対象となる配管1は、一例として、SUS管、黄銅管、チタン管の3種である。回転刃50A、50Bの材質は、硬度が高く耐摩耗性に優れる材料が好ましい。回転刃50A、50Bの材質は一例として、SKD材(合金工具鋼材)やSKH材(高速度工具鋼材)などであり、焼き入れや焼き戻し等の熱処理により表面硬度を高くするとよい。また、回転刃で配管1を押しつけて切断するには、刃部の先端が軸棒3に対して線接触になる必要があり、軸棒3がわたまないように、軸棒3の表面硬度も高くすることが好ましい。軸棒3の材質は一例として、SUJ材(高炭素クロム軸受鋼鋼材)やSK材(炭素工具鋼鋼材)などであり、焼き入れや焼き戻し等の熱処理により、表面硬度を高くするとよい。
【0034】
以下に、配管1、回転刃50A、50B、軸棒3の材料と硬度を示す。なお、Hvはビッカーズ硬さ、HRCはロックウェル硬さである。
【0035】
(配管1の材質と硬度)
SUS管、Hv200~370(HRC 12~38)である。
黄銅管、Hv120~200(HRC 0~12)である。
チタン管、Hv160~320(HRC 1~30)である。
【0036】
(回転刃50A、50Bの材質と熱処理後の表面硬度)
SKD11材でHRC58~60又はSKH51材でHRC60~63である。
(軸棒3の材質と熱処理後の表面硬度)
SUJ2材でHRC58~60又はSK4材でHRC58~60である。
【0037】
上記のように、配管1の硬度よりも、回転刃50A、50B及び軸棒3の表面硬度の方が高い関係となっている。尚、硬度は、HRCで規定することが出来る。
【0038】
一対のガイド部材60A、60Bは、図9に示すように、一対のレール28A、28Bの上面に配置されている。一対のガイド部材60A、60Bは、図10に示すように、搬送径路Lの両側に位置している。
【0039】
一対のガイド部材60A、60Bは、図9に示すように、ベアリングローラである。ベアリングローラは、ローラ軸R(回転軸)に対して、ベアリングを介して、金属製のローラを支持したものである。
【0040】
一対のガイド部材60A、60Bは、搬送径路Lを通過する配管1のY方向両側に位置しており、搬送径路Lを通過する配管1をY方向の両側からガイドする。
【0041】
一対のガイド部材60A、60Bは、配管1の搬送方向であるX方向において、切断位置Lcの近傍に位置している。具体的には、一対のガイド部材60A、60Bは、回転刃50A、50Bの外形範囲(図5に示すF範囲)内に位置しており、配管1の搬送方向であるX方向において、回転刃50A、50Bと重なっている。また、切断位置Lcとの関係では、切断位置Lcの上流側(図5の左側)に位置している。
【0042】
切断位置Lcの近傍で、配管1をY方向の両側からガイドすることで、回転刃50A、50Bによる切断時に、配管1がY方向(図9の左右方向)に逃げ難くなり、軸棒3のほぼ頂点P1、P2に回転刃50A、50Bの刃先を合わせることが出来る。
【0043】
図2図3に示すように、ギヤ機構75は、第1ギヤG1、第2ギヤG2、第3ギヤG3、第4ギヤG4、第5ギヤG5、第6ギヤG6、第7ギヤG7、第8ギヤG8を含む。第1ギヤG1と第2ギヤG2は、本体フレーム20の正面側に配置されている。
【0044】
第1ギヤG1は、下側の搬送ローラ40Bの軸部41の端部に固定されており、第2ギヤG2は上側の搬送ローラ40Aの軸部41の端部に固定されている。第1ギヤG1と第2ギヤG2は噛み合っており、また、第1ギヤG1は、モータギヤ73と噛み合っている。以上のことから、駆動モータ70の動力を、各ギヤ73、G1、G2を介して、2つの搬送ローラ40A、40Bに伝達することで、2つの搬送ローラ40A、40Bを回転させることが出来る。
【0045】
第3ギヤG3から第8ギヤG8は、本体フレーム20の裏面側に配置されている。第3ギヤG3は、下側の搬送ローラ40Bの軸部41の端部に固定されており、第5ギヤは下側の回転刃50Bの軸部51の端部に固定されている。第4ギヤG4は、第3ギヤG3と第5ギヤG5の間に合って両ギヤに噛み合っている。第5ギヤG5は、ギヤ間で動力を伝達するためのアイドルギヤである。
【0046】
第6ギヤG6は、上側の搬送ローラ40Aの軸部41の端部に固定されており、第8ギヤG8は上側の回転刃50Aの軸部51の端部に固定されている。第7ギヤG7は、第6ギヤG6と第8ギヤG8の間に合って両ギヤに噛み合っている。第7ギヤG7は、ギヤ間で動力を伝達するためのアイドルギヤである。
【0047】
以上のことから、駆動モータ70の動力を、各ギヤG3~G8を介して、2つの回転刃50A、50Bに伝達することで、2つの搬送ローラ40A、40Bだけでなく、2つの回転刃50A、50Bを回転させることが出来る。
【0048】
切断装置10は、図3に示すように、第1調整機構81と、第2調整機構85を有している。
【0049】
第2調整機構85は、上側の回転刃ホルダ55Aの高さを調整することで、2つの回転刃50A、50Bの中心間距離Hを調整するものである。具体的に説明すると、図7に示すように、本体フレーム20の天板27の上面には、第2調整ボルト86と、2つのストッパボルト87が設けられている。第2調整ボルト86は、天板27を貫通している。第2調整ボルト86は、上側の回転刃ホルダ55Aの上面壁56に設けられたねじ部に螺合している。2つのストッパボルト87は、第2調整ボルト86の両側に位置している。2つのストッパボルト87は、天板27を貫通している。
【0050】
第2調整ボルト86を締める又は緩めることで、本体フレーム20に対する回転刃ホルダ55Aの高さを調整できる。具体的には、2つのストッパボルト87を所定高さに調整しておき、回転刃ホルダ55Aの上面壁56がストッパボルト87の先端に突き当たるように、第2調整ボルト86で高さを調整することで、回転刃ホルダ55Aを所望の高さに調整することが出来る。これにて、2つの回転刃50A、50Bの中心間距離Hを調整することが出来る。
【0051】
第1調整機構81は、第2調整機構85とほぼ同じ構造であり、本体フレーム20の天板26の上面には、第1調整ボルト82と、2つのストッパボルト83が設けられている。第1調整ボルト82は、天板26を貫通している。第1調整ボルト82は、上側のローラホルダ45Aの上面壁に設けられたねじ部に、螺合している。2つのストッパボルト83は、第1調整ボルト82の両側に位置している。2つのストッパボルト83は、天板26を貫通している。
【0052】
第1調整機構81は、第2調整機構85と同様に、第1調整ボルト82を締める又は緩めることで、本体フレーム20に対する上側のローラホルダ45Aの高さを調整することが出来、2つの搬送ローラ40A、40Bの中心間距離Hの調整が可能である。
【0053】
また切断装置10は、図2図6図11に示すように、保持体90A、90Bを有している。保持体90A、90Bは、Y方向に長い形状であり、本体フレーム20の後部に配置されている。
【0054】
保持体90A、90Bは、スポンジ状であり、潤滑油を保持している。保持体90Aは、上側の回転刃50Aに対して、後方から接触している。また、保持体90Bは、下側の回転刃50Bに対して後方から接触している。切断時に、保持体90A、90Bから回転刃50A、50Bの刃部53に潤滑油を塗布することが出来る。
【0055】
回転刃50A、50Bに潤滑油を供給することで、回転刃50A、50Bの刃部53に、切粉が溜まって切断不良が発生することを抑制できる。
【0056】
2.配管1の切断方法
配管1を切断にあたり、まず、図外のスイッチを操作して、駆動モータ70を駆動する。駆動モータ70の駆動により、2つの搬送ローラ40A、40Bと2つの回転刃50A、50Bがそれぞれ回転する。次に配管1に対して軸棒3を挿入し、その後、図12に示すように、軸棒3を挿入した配管1を、切断装置10の前方から回転する2つの搬送ローラ40A、40Bの間に差し込む。
【0057】
軸棒3を挿入した配管1は、搬送ローラ40A、40Bまで差し込まれると、図13に示すように、2つの搬送ローラ40A、40Bにより、搬送径路Lに沿ってX方向に送られる。搬送径路Lに沿って移動する配管1は、図9に示すように、切断位置Lcの手前に位置する一対のガイド部材60A、60Bにより、Y方向(左右方向)の両側からガイドされる。具体的には、搬送径路Lに沿って移動する配管1に対して一対のガイド部材60A、60Bのローラ外周面がY方向の両側から接し、搬送径路Lに沿って移動する配管1をY方向の両側からガイドする。
【0058】
軸棒3を挿入した配管1は、その後、切断位置Lcを通過する時に、回転する2つの回転刃50A、50Bにより、外周の上端と下端をそれぞれ切断される。そして、図14図15に示すように、後端が切断位置Lcを通過すると、軸棒3と共に、左右に2分割された配管1が、本体フレーム20の後方から排出される。
【0059】
3.効果説明
切断装置10は、軸棒3を固定せず、配管1と一体的に送る構成であることから、軸棒3を固定する従来装置と比較して、配管1の搬送方向(X方向)で装置を小型化することが出来る。例えば、本体フレーム20のX方向の大きさ(図6に示すJ寸法)を小さくすることが出来る。加えて、この装置は、配管1の長さに対して制約がなく、長尺の配管1を切断することが出来る。
【0060】
また、配管1のY方向の両側をガイドする一対のガイド部材60A、60Bを設けているため、回転刃50A、50Bによる切断時に、配管1が側方(Y方向)に逃げ難くなる。そのため、回転刃50A、50Bによる配管1の切断不良を抑制できる。特に本構成は、回転刃50A、50Bで配管1を押し切ることから、切断時に、配管1がY方向に逃げやすく、こうしたガイドが必須である。
【0061】
また、ガイド部材60A、50Bは、ローラ軸Rを中心に回転するローラである。そのため、搬送経路Lを移動する配管1との摩擦を抑えつつ、配管1をガイドすることが出来る。
【0062】
回転刃50A、50Bは、外周部に設けられた鋭角状の刃部53により、配管1を押し切る。回転刃50A、50Bは、メタルソーなどの鋸刃タイプの回転刃50と比較して、刃の欠けが少なく耐久性がよい。また、配管1の内部に挿入される軸棒3は、断面円形状であり、回転刃50による切断時、配管1が内側に変形することを抑制する。そのため、配管1の切断不良を抑制できる。
【0063】
切断装置10は、第2調整機構85により、回転刃50A、50Bの中心間距離Hを調整することが出来る。中心間距離Hの調整により、回転刃50A、50Bの刃先(刃部53の先端)が、軸棒3の外周の頂点部分に、丁度接触するように位置を調整するができる。これにより、回転刃50A、50Bで配管1を円滑に切断して、切断不良を抑制することが出来る。また、回転刃50A、50Bの刃先が軸棒3に過度にラップ(干渉)することを抑制できるため、回転刃50A、50Bの摩耗を抑えることが出来、回転刃50A、50Bを再研磨する頻度を下げることが出来る。
【0064】
なお、本例では、管径の異なる配管1を切断する場合、上下の回転刃50A、50Bを、外径の異なる回転刃50A、50Bに交換することとしている。また、搬送ローラ40A、40Bは、回転刃同様交換してもいいし、中心間距離Hの調整により、共通使用してもよい。
【0065】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば、次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0066】
(1)上記実施形態では、切断対象の配管1として、原子力発電所内で使用された熱交換用細管を例示したが、金属製であれば、他の配管の切断に使用することも出来る。
【0067】
(2)上記実施形態では、Z方向(上下方向)に配置される一対の回転刃50A、50Bで、配管1をY方向(左右方向)に2分割するように切断した。これ以外にも、Y方向(左右方向)に配置される一対の回転刃50A、50Bで、配管1をZ方向(上下方向)に2分割するように切断してもよい。この場合、一対のガイド部材60A、60Bは、切断時に配管1がZ方向(上下方向)で位置ずれしないように、Z方向に対向して配置して配管1のZ方向両側をガイドするとよい。
【0068】
(3)上記実施形態では、一対のガイド部材60A、60Bを、切断位置Lcの近傍に配置した。具体的には、一対のガイド部材60A、60Bを、配管1の搬送方向で、切断位置Lcよりも、やや上流の位置に配置した。これ以外にも、切断位置Lcや、切断位置Lcよりも、やや下流の位置など、X方向(配管の搬送方向)で、切断刃50A、50Bの外形範囲内(図5に示すF範囲内)の位置であれば、どこに配置してもよい。
【0069】
(4)上記実施形態では、搬送径路Lのうち、切断位置Lcの上流の位置に、1対のガイド部材60A、60Bを、1組だけ配置した。これ以外にも、搬送径路Lのうち、切断位置Lcの上流と下流の2か所に、1対のガイド部材60A、60Bを、それぞれ配置してもよい。
【0070】
(5)上記実施形態では、鋭角形状の刃部53で、配管1を押し切る回転刃50とした。回転刃50の形状は、実施形態の構成に限定されない。メタルソーなどの鋸刃タイプでもよい。
【符号の説明】
【0071】
1...配管
3...軸棒
10...切断装置
20...本体フレーム
40A、40B...搬送ローラ
41...軸部
50A、50B...回転刃
51...軸部
60A、60B...ガイド部材
70...モータ
L...搬送径路
Lc...切断位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15