(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】新規ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/31 20060101AFI20220127BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20220127BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220127BHJP
A61K 47/55 20170101ALI20220127BHJP
A61K 47/66 20170101ALI20220127BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220127BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20220127BHJP
A61K 51/08 20060101ALI20220127BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20220127BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220127BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220127BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220127BHJP
C07K 14/31 20060101ALI20220127BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220127BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220127BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
C12N15/31 ZNA
A61K38/16
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K47/55
A61K47/66
A61K47/68
A61K49/00
A61K51/08 200
A61K51/10 200
A61P31/00
A61P35/00
A61P35/02
C07K14/31
C07K19/00
C12N15/62
C07K16/00
(21)【出願番号】P 2018521314
(86)(22)【出願日】2016-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2016076027
(87)【国際公開番号】W WO2017072273
(87)【国際公開日】2017-05-04
【審査請求日】2019-10-11
(32)【優先日】2015-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】307015286
【氏名又は名称】アフィボディ・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】エリサベト・ヴァールボリ
【審査官】田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103304638(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104086627(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/31
C12N 15/62
C07K 14/31
C07K 19/00
A61P 35/00
A61P 31/00
A61P 35/02
A61K 39/395
A61K 47/68
A61K 47/66
A61K 38/16
A61K 47/55
A61K 49/00
A61K 51/08
A61K 51/10
C07K 16/00
CAplus/REGISTRY(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-L1結合モチーフBMを含むPD-L1結合ポリペプチドであって、該モチーフは:
i) ERTX
4AX
6WEIX
10X
11LPNLX
16X
17X
18QX
20GAFIX
25X
26LHD
[ここで、
配列i)は、配列番号1~4からなる群より選択される配列における位置8から位置36の配列に対応する];
及び
ii) i)において定義される配列に対して少なくとも
93%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列からなる、上記PD-L1結合ポリペプチド。
【請求項2】
配列i)は、配列番号1及び4からなる群より選択される配列における位置8から位置36の配列に対応する、請求項
1に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【請求項3】
前記PD-L1結合モチーフが、3ヘリックスバンドルタンパク質ドメインの一部を形成する、請求項1
又は2に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【請求項4】
結合モジュールBModを含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチドであって、該結合モジュールBModのアミノ酸配列が:
iii) K-[BM]-DPSQSX
aX
bLLX
c EAKKLX
dX
eX
fQ;[ここで、
[BM]は、請求項1
又は2において定義されるPD-L1結合モチーフであり;
X
aはA及びSから選択され;
X
bはN及びEから選択され;
X
cはA、S及びCから選択され;
X
dはE、N及びSから選択され;
X
eはD、E及びSから選択され;そして
X
fはA及びSから選択される];及び
iv) iii)において定義される配列に対して少なくとも91%の同一性を有する
アミノ酸配列
から選択される、上記PD-L1結合ポリペプチド。
【請求項5】
xvii) VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAPK;
[ここで、[BM]は請求項1
又は2において定義されたPD-L1結合モチーフである];及び
xviii) xvii)において定義される配列に対して少なくとも89%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【請求項6】
xxi) AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAPK;
[ここで、[BM]は請求項1
又は2に記載のPD-L1結合モチーフである];及び
xxii) xxi)において定義される配列に対して少なくとも89%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【請求項7】
配列xvii)又はxxi)が、配列番号1~5からなる群から選択される配列における位置1から位置58の配列に対応する、請求項
5又は
6に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【請求項8】
配列xvii)又はxxi)が、配列番号1、4及び5からなる群から選択される配列における位置1から位置58の配列に対応する、請求項
7に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【請求項9】
相互作用のK
D値が、多くとも1×10
-6MであるようにPD-L1に結合することができる、請求項1~
8のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【請求項10】
相互作用のK
D値が、多くとも1×10
-7MであるようにPD-L1に結合することができる、請求項
9に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【請求項11】
相互作用のK
D値が、多くとも5×10
-8MであるようにPD-L1に結合することができる、請求項
9又は
10に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【請求項12】
相互作用のK
D値が、多くとも1×10
-9MであるようにPD-L1に結合することができる、請求項
9~
11のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【請求項13】
- 請求項1~
12のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチドからなる第一の部分;及び
- 所望の生物学的活性を有するポリペプチドからなる第二の部分
を含む、融合タンパク質又は結合体。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の少なくとも1つのPD-L1結合ポリペプチド及び少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントを含む複合体。
【請求項15】
標識をさらに含む、請求項1~
14のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は複合体。
【請求項16】
標識は、蛍光色素及び金属、発色色素、化学発光化合物及び生物発光タンパク質、酵素、放射性核種、放射性粒子並びにプレターゲティング認識タグからなる群より選択される、請求項
15に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は複合体。
【請求項17】
請求項1~
14のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項18】
請求項1~
16のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は複合体、及び少なくとも1つの薬学的に許容しうる賦形剤又は担体を含む組成物。
【請求項19】
薬剤、診断用薬及び/又は予後用薬としての使用のための、請求項1~
16のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体若しくは複合体又は請求項
18に記載の組成物。
【請求項20】
PD-L1関連障害の処置、予後又は診断における請求項
19に記載の使用のための、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物。
【請求項21】
PD-L1関連障害は、感染性疾患及び癌からなる群より選択される、請求項
20に記載の使用のための、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物。
【請求項22】
請求項
21に記載の使用のための、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物であって、該癌は:
- 固形腫瘍を示す癌;及び
- 非固形腫瘍を示す癌
からなる群より選択される、上記、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物。
【請求項23】
固形腫瘍を示す癌は、皮膚癌;肺癌;頭頚部癌;腎細胞癌(RCC);膀胱癌;乳癌;結腸直腸癌;胃癌;卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;神経膠腫;神経膠芽腫;肝臓癌;胆嚢癌;甲状腺癌;骨癌;子宮頸癌;子宮癌;外陰癌;子宮内膜癌;精巣癌;腎臓癌;食道癌;脳/CNSの癌;神経の癌;中皮腫;肉腫;小腸腺癌;及び小児悪性腫瘍からなる群より選択される、請求項
22に記載の使用のための、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物。
【請求項24】
皮膚癌は、黒色腫及び非黒色腫皮膚癌(NMSC)からなる群より選択される、請求項
23に記載の使用のための、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物。
【請求項25】
肺癌は、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌(NSCLC)からなる群より選択される、請求項
23に記載の使用のための、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物。
【請求項26】
非固形腫瘍を示す癌は、白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病及び多発性骨髄腫からなる群より選択される、請求項
22に記載の使用のための、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、プログラム死-リガンド1(以下においてPD-L1と呼ばれる)に対する結合親和性を有するクラスの操作されたポリペプチドに関する。本開示はまた、治療用、予後用(prognostic)及び/又は診断用の薬剤としてのこのようなPD-L1結合ポリペプチドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
通常の生理条件下で、自己寛容を維持する(すなわち、自己免疫を防止する)ため、そして免疫系が病原性感染に応答している場合に組織損傷から保護するように免疫応答を調節するために、免疫チェックポイントは極めて重要である。時には、腫瘍細胞は、免疫監視機構から逃れるために特定の免疫チェックポイント経路を利用し得る。従って、免疫チェックポイントの阻害は、癌免疫治療における有望なアプローチとして現れた。この状況において最も活動的に研究された2つの免疫チェックポイント受容体は、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA-4;CD152としても知られる)及びプログラム細胞死タンパク質1(PD-1;CD279としても知られる)である、これらは異なるレベルで免疫応答を制御する。CTLA-4は主としてT細胞活性化の初期に免疫応答を制御するが、一方でPD-1は主に、組織及び腫瘍内でエフェクター相においてT細胞の活性を限定する(非特許文献1)。
【0003】
PD-1は2つの公知のリガンドを有する: プログラム死-リガンド1(PD-L1;ヒトB7ホモログ1、B7-H1、又は表面抗原分類274、CD274としても知られる)及びプログラム死-リガンド2(PD-L2;B7-DC及びCD273としても知られる)。両方のリガンドがB7免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、そしてIgC型及びIgV型細胞外ドメインから構成されるI型膜貫通糖タンパク質である。しかし、PD-L1及びPD-L2、さらにはPD-1もまた、膜に結合されていることに加えて可溶性形態で存在するということが近年報告された。PD-L1及びPD-L2は、約40%のアミノ酸残基同一性を共有する。PD-L2の発現は主に抗原提示細胞に限定されるが、PD-L1は造血細胞及び非造血細胞の両方において発現される。PD-L1の高い腫瘍発現は、増加した攻撃性及びより悪い予後に関連する(非特許文献2)。
【0004】
免疫チェックポイント経路を標的化することの臨床的重要性は、CTLA-4、PD-1及びPD-L1を阻害するいくつかのモノクローナル抗体で実証されており、これらは腫瘍細胞に対する保護的免疫応答を回復することにより機能する。抗CTLA-4抗体イピリムマブ(Yervoy(R), Bristol Myers Squibb)は、転移性黒色腫を有する患者処置について2011年にFDAにより承認されており、この場合、永続的な応答が患者の10~15%において観察された。しかし、イピリムマブは、免疫応答の初期免疫相におけるその役割に潜在的に起因し、それにより正常組織に影響を及ぼす免疫関連毒性と関連する。より安全なアプローチは、PD-1/PD-L1経路を標的とし、選択的に腫瘍微小環境内の抗腫瘍免疫を回復することであるかもしれない。PD-1/PD-L1経路の阻害は、進行した黒色腫を有する患者の30~35%において永続的な応答が実証され、これにより2014年に抗PD-1抗体ペンブロリズマブ(以前はランブロリズマブ;Keytruda(R), Merck)及びニボルマブ(Bristol Myers Squibb及びOno Pharmaceutical)(非特許文献3;非特許文献4)のFDA承認につながった。臨床試験において試験された最初のPD-L1標的化抗体はMDX-1105であり、これは黒色腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸直腸癌、腎細胞癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌及び乳癌を含む進行した固形腫瘍を有する患者においてフェーズI試験において評価された(非特許文献5)。結果は、PD-L1遮断の利益の可能性を実証した。現在フェーズIII臨床試験にあるPD-L1に対する他の抗体としては、アテゾリズマブ(MDPL3280A, Genentech)、デュルバルマブ(MEDI4736, MedImmune/Astra Zeneca, Celgene)、及びアベルマブ(MSB0010718C, EMD Serono, Pfizer)が挙げられる。
【0005】
免疫療法に応答する患者の有効性を改善し、そして数を増加させるために、多数のレベルで抗腫瘍免疫応答を標的化することが有益かもしれない。これは、相乗的組み合わせにより達成され得る。例えば、CTLA-4及びPD-1遮断抗体(イピリムマブ及びニボルマブ)を組み合わせる前臨床研究は、優れた抗腫瘍活性を実証したが、抗CTLA-4単剤療法と同様の毒性が伴っていた(Shin及びRibas, 2015、上記)。さらに、PD-L1は、腫瘍微小環境中に豊富であることに起因して、そしてPD-L1の腫瘍発現が抗PD-1/PD-L1療法に対する応答と強く関連しているので、潜在的なバイオマーカーであると推測される。
【0006】
癌及び感染性疾患の高い有病率は、満たされていない高い医療ニーズとともに、新しい様式の処置の開発を必要とする。組織透過率は分子のサイズの負に関連しているので、相対的に大きな抗体分子は、本質的に不十分な組織分布及び透過能を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Pardoll, 2012, Nat. Rev. Cancer, 12:252-64
【文献】Dai et al, 2014, Cellular Immunology, 290:72-79
【文献】Shin and Ribas, 2015, Curr. Opin. Immunol., 33:23-35
【文献】Philips and Atkins, 2015, International Immunology, 27:39-46
【文献】Momtaz and Postow, 2014, Pharmgenomics Pers Med. 7:357-65
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、モノクローナル抗体の使用は、常に治療に最適というわけでなく、そしてPD-L1に対する高い親和性を有する薬剤の供給に対する継続した必要性が存在する。PD-L1関連障害の処置、診断及び予後におけるこのような分子の使用の供給もまた大いに興味が持たれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
例えば、治療、予後及び診断適用のために使用され得る新しいPD-L1結合剤を提供することが本開示の目的である。
【0010】
PD-L1及び少なくとも1つのさらなる抗原に対して親和性を有する、二重特異性薬剤のような新しい多選択性薬剤を提供することが本開示の目的である。
【0011】
現在の治療の上述及び他の欠点を軽減しながら、例えば様々な形態の癌及び感染性疾患の有効な治療を可能にする分子を提供することが本開示の目的である。
【0012】
予後及び診断適用、例えば、癌及び感染性疾患の様々な形態に関連する予後及び診断適用に適した分子を提供することが本開示の目的である。
【0013】
これらの目的及び本開示から当業者に明らかである他の目的は、添付の特許請求の範囲において主張されそして本明細書に一般的に開示される様々な局面により満たされる。
【0014】
従って、本開示の第一の局面において、PD-L1結合モチーフBMを含むPD-L1結合ポリペプチドが提供され、該モチーフは:
i) ERTX4AX6WEIX10X11LPNLX16X17X18QX20GAFIX25X26LHD (配列番号23)
[ここで、互いに独立して、
X4はI、M、V及びWから選択され;
X6はT及びVから選択され;
X10はM及びVから選択され;
X11はD及びQから選択され;
X16はN及びTから選択され;
X17はA及びSから選択され;
X18はG、R及びWから選択され;
X20はK及びRから選択され;
X25はD、N及びWから選択され;そして
X26はK及びSから選択される];
及び
ii) i)において定義される配列に対して少なくとも89%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列からなる。
【0015】
配列が関連するPD-L1結合ポリペプチドのクラスの上記定義は、選択実験においてPD-L1とのそれらの相互作用について選択された、親骨格の多数のランダムポリペプチド変異体の統計的分析に基づく。同定されたPD-L1結合モチーフ又は「BM」は、親骨格の標的結合領域に対応し、この領域は、3ヘリックスバンドルタンパク質ドメイン内の2つのアルファヘリックスを構成する。親骨格において、2つのBMヘリックスの多様なアミノ酸残基は、抗体の定常Fc部分との相互作用のための結合表面を構成する。本開示において、結合表面残基のランダム変異及びその後の変異体の選択は、Fc相互作用能をPD-L1との相互作用の能力と置き換えた。
【0016】
当業者には当然のことながら、本開示のポリペプチドのPD-L1結合能のようないずれかのポリペプチドの機能は、ポリペプチドの三次構造に依存する。従って、ポリペプチドにおけるその機能に影響を及ぼさないアミノ酸の配列の小さな変更を行うことは可能である。従って、本開示は、PD-L1結合特徴を保持したPD-L1結合ポリペプチドの変更された変異体を包含する。
【0017】
このようにして、i)において定義されるポリペプチドに対して89%又はそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むPD-L1結合ポリペプチドが本開示に包含される。いくつかの実施態様において、上記ポリペプチドは、i)において定義されるポリペプチドと少なくとも93%、例えば少なくとも96%同一である配列を含み得る。例えば、アミノ酸残基の特定の官能基分類(例えば、疎水性、親水性、極性など)に属するアミノ酸残基は、同じ官能基群からのアミノ酸残基と交換され得る。
【0018】
いくつかの実施態様において、このような変化は、本明細書に開示されるPD-L1結合ポリペプチドの配列のいずれの位置において行われてもよい。他の実施態様において、このような変化は、骨格アミノ酸残基とも示される非可変位置においてのみ行われ得る。このような場合、変化は可変位置において許容されない。他の実施態様において、このような変化は、可変位置においてのみであり得る。このような「可変位置」の1つの定義に従って、これらは上で定義される配列i)において「X」で示される位置である。別の定義に従って、「可変位置」は、選択の前にZ変異体の選択ライブラリーにおいて無作為化される位置であり、従って例えば、実施例1において説明されるように、配列i)における位置2、3、4、6、7、10、11、17、18、20、21、25及び28であり得る。
【0019】
本明細書全体を通して使用される用語「同一性%」は、例えば以下のように計算され得る。問い合わせ配列を、CLUSTAL Wアルゴリズム(Thompson et al.、(1994) Nucleic Acids Research、22: 4673-4680)を使用して標的配列と整列させる。整列した配列の最も短いものに対応する範囲にわたって比較を行う。整列された配列の最も短いものは、いくつかの場合は、標的配列であり得る。他の例において、問い合わせ配列は、整列された配列の最も短いものを構成し得る。各位置におけるアミノ酸残基を比較し、そして標的配列における同一の対応を有する問い合わせ配列中の位置のパーセンテージを同一性%として報告する。
【0020】
別の実施態様において、配列i)において、
X4はI、M、V及びWから選択され;
X6はT及びVから選択され;
X10はM及びVから選択され;
X11はD及びQから選択され;
X16はTであり;
X17はA及びSから選択され;
X18はG、R及びWから選択され;
X20はK及びRから選択され;
X25はD、N及びWから選択され;そして
X26はKである、
PD-L1結合ポリペプチドが提供される。
【0021】
本明細書で使用される「Xn」及び「Xm」は、上で定義される配列i)における位置n及びmにおけるアミノ酸を示すために使用され、ここでn及びmは、上記配列のN末端から計算して上記配列内のアミノ酸の位置を示す整数である。例えば、X4及びX6は、配列i)のN末端からそれぞれ位置4及び6におけるアミノ酸を示す。
【0022】
第一の局面に従う実施態様において、配列i)におけるXnは、表1に従う可能な残基の群から独立して選択される。当業者には当然のことながら、Xnは、可能な残基のリストに記載された群のいずれか1つから選択され得、そしてこの選択は、Xmにおけるアミノ酸の選択とは独立しており、ここでn≠mである。従って、表1における位置Xnにおけるリストに記載された可能な残基のいずれも、表1におけるいずれかの他の可変位置のリストに記載された可能な残基と組み合わされ得る。
【0023】
当業者には当然のことながら、表1は以下のように読まれるべきである: 第一の局面に従う一実施態様において、配列i)におけるアミノ酸残基「Xn」が「可能な残基」から選択されるポリペプチドが提供される。従って、表1は、本発明の第一の局面のいくつかの特定の個別の実施態様を開示する。例えば、第一の局面に従う一実施態様において、配列i)におけるX4がI、M、及びVから選択されるポリペプチドが提供され、そして第一の局面に従う別の実施態様において、配列i)におけるX4がM、V及びWから選択されるポリペプチドが提供される。疑念を避けるために、リストに記載された実施態様は、さらに他の実施態様と自由に組み合わされ得る。例えば、1つのこのような組み合わされた実施態様は、X4がI、V、及びWから選択され、X18がG及びWから選択され、そしてX25がD及びWから選択されるポリペプチドである。
【0024】
【0025】
第一の局面に従う1つの特定の実施態様において、配列i)が6つの条件I~VI:
I. X6はVである;
II. X16はTである;
III. X17はAである;
IV. X18はWである;
V. X25はNである;及び
VI. X26はKである
のうちの少なくとも3つを満たすポリペプチドを提供する。
【0026】
一実施態様において、配列i)は、6つの条件I~VIのうちの少なくとも4つ、例えば6つの条件I~VIのうちのすくなくとも5つを満たす。1つの特定の実施態様において、配列i)は6つの条件I~VIの全てを満たす。
【0027】
第一の局面に従うPD-L1結合ポリペプチドのいくつかの実施態様において、X6X17はVAである。いくつかの実施態様において、X6X10X17はVMA及びVVAから選択される。いくつかの実施態様において、X6X17X20はVAK及びVARから選択される。
【0028】
以下の実験項において詳細に記載されるように、PD-L1結合ポリペプチド変異体の選択は、多数の個々のPD-L1結合モチーフ(BM)配列の同定をもたらした。これらの配列は、この局面に従う配列i)の個々の実施態様を構成する。個々のPD-L1結合モチーフの配列は、
図1に示される配列番号1~4におけるアミノ酸位置8~36に対応する。それ故、この局面に従うPD-L1結合ポリペプチドの一実施態様において、配列番号1~4からなる群より選択される配列における位置8から位置36の配列に対応する。一実施態様において、この局面に従うPD-L1結合ポリペプチドは、配列番号1、2及び3;又は配列番号2、3及び4;又は配列番号1、2及び4;又は配列番号1、3及び4からなる群より選択される配列における位置8から位置36の配列に対応する。1つの特定の実施態様において、配列i)は、配列番号1及び2;又は配列番号1及び3;又は配列番号1及び4;又は配列番号2及び3;又は配列番号2及び4;又は配列番号3及び4からなる群より選択される配列における位置8から位置36の配列に対応する。一実施態様において、配列i)は、配列番号1及び4からなる群より選択される配列における位置8から位置36の配列に対応する。一実施態様において、配列i)は、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4における位置8から位置36の配列に対応する。
【0029】
本開示のいくつかの実施態様において、上で定義されるBMは、3ヘリックスバンドルタンパク質ドメイン「の一部を形成する」。これは、BMの配列が、BM元のドメインの類似した構造モチーフを置き換えるように、元の3ヘリックスバンドルドメインの配列に「挿入される」か又は「グラフト化される」ことを意味すると理解される。例えば、理論に拘束されることを望まないが、BMは、3ヘリックスバンドルの3つのらせんのうちの2つを構成し、従っていずれかの3ヘリックスバンドル内の2ヘリックスモチーフを置き換えることができると考えられる。当業者が理解するように、3ヘリックスバンドルドメインの2つのらせんを2つのBMらせんにより置き換えることは、ポリペプチドの基本構造に影響を及ぼさないように行われなければならない。すなわち、本発明のこの実施態様に従うポリペプチドのCα骨格の全体の折り畳みは、それが一部を形成する3ヘリックスバンドルタンパク質ドメインと実質的に同じであり、例えば、二次構造の同じエレメントを同じ順序で有するなど。従って、この実施態様に従うポリペプチドが元のドメインと同じ折り畳みを有し、基本構造特性が共有され、それらの特性が、例えば同様のCDスペクトルを生じると示唆される場合、本開示に従うBMは3ヘリックスバンドルドメインの「一部を形成する」。当業者は、関連する他のパラメーターを知っている。
【0030】
従って、特定の実施態様において、PD-L1結合モチーフ(BM)は3ヘリックスバンドルタンパク質ドメインの一部を形成する。例えば、BMは、上記3ヘリックスバンドルタンパク質ドメイン内で、相互接続ループを有する2つのアルファヘリックスを本質的に構成し得る。特定の実施態様において、上記3ヘリックスバンドルタンパク質ドメインは、細菌受容体タンパク質のドメインから選択される。このような非限定的な例は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来のプロテインAの5つの異なる3ヘリックスドメイン、例えばドメインB、及びそれらの誘導体である。いくつかの実施態様において、3ヘリックスバンドルタンク質ドメインは、プロテインZの変異体であり、これはブドウ球菌プロテインAのドメインBから誘導される(Wahlberg E et al、2003、PNAS 100(6):3185-3190)。
【0031】
本明細書に開示されるPD-L1結合ポリペプチドが3ヘリックスバンドルタンパク質ドメインの一部を形成するいくつかの実施態様において、PD-L1結合ポリペプチドは、結合モジュール(BMod)を含み得、そのアミノ酸配列は:
iii) K-[BM]-DPSQSXaXbLLXcEAKKLXdXeXfQ; (配列番号24)
[ここで、
[BM]は本明細書において定義されるPD-L1結合モチーフであり;
XaはA及び Sから選択され;
XbはN及びEから選択され;
XcはA、S及びCから選択され;
XdはE、N及びSから選択され;
XeはD、E及びSから選択され;そして
XfはA及びSから選択される];及び
iv) iii)において定義される配列に対して少なくとも91%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択される。
【0032】
いくつかの実施態様において、上記ポリペプチドは、製造及び貯蔵、さらにはインビボでの、化学修飾、物理条件の変化及びタンパク質分解に対する抵抗性のような高い構造的安定性を有利に示し得る。
【0033】
上で考察されたように、三次構造及びポリペプチドの機能に大きな影響を及ぼさない、上記のアミノ酸配列と比較して小さな変化を含むポリペプチドもまた本発明の範囲内である。従って、いくつかの実施態様において、配列iv)は、iii)により定義される配列に対して、少なくとも91%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも97%の同一性を有する。
【0034】
一実施態様において、配列iii)におけるXaはAである。
一実施態様において、配列iii)におけるXaはSである。
一実施態様において、配列iii)におけるXbはNである。
一実施態様において、配列iii)におけるXbはEである。
一実施態様において、配列iii)におけるXcはAである。
一実施態様において、配列iii)におけるXcはSである。
一実施態様において、配列iii)におけるXcはCである。
一実施態様において、配列iii)におけるXdはEである。
一実施態様において、配列iii)におけるXdはNである。
一実施態様において、配列iii)におけるXdはSである。
一実施態様において、配列iii)におけるXeはDである。
一実施態様において、配列iii)におけるXeはEである。
一実施態様において、配列iii)におけるXeはSである。
一実施態様において、配列iii)におけるXdXeはEE、ES、SD、SE及びSSから選択される。
一実施態様において、配列iii)におけるXdXeはESである。
一実施態様において、配列iii)におけるXdXeはSEである。
一実施態様において、配列iii)におけるXdXeはSDである。
一実施態様において、配列iii)におけるXfはAである。
一実施態様において、配列iii)におけるXfはSである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはAであり;XbはNであり;XcはAであり、そしてXfはAである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはSであり;XbはEであり;XcはAであり、そしてXfはAである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはAであり;XbはNであり;XcはCであり、そしてXfはAである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはSであり;XbはEであり;XcはSであり、そしてXfはSである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはSであり;XbはEであり;XcはCであり、そしてXfはSである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはAであり;XbはNであり;XcはAであり;XdXeはNDであり、そしてXfはAである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはSであり;XbはEであり;XcはAであり;XdXeはNDであり、そしてXfはAである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはAであり;XbはNであり;XcはCであり;XdXeはNDであり、そしてXfはAである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはSであり;XbはEであり;XcはSであり;XdXeはNDであり、そしてXfはSである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはSであり;XbはEであり;XcはCであり;XdXeはNDであり、そしてXfはSである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはAであり;XbはNであり;XcはAであり;XdXeはSEであり、そしてXfはAである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはSであり;XbはEであり;XcはAであり;XdXeはSEであり、そしてXfはAである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはAであり;XbはNであり;XcはCであり;XdXeはSEであり、そしてXfはAである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはSであり;XbはEであり;XcはSであり;XdXeはSEであり、そしてXfはSである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはSであり;XbはEであり;XcはCであり;XdXeはSEであり、そしてXfはSである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはAであり;XbはNであり;XcはAであり;XdXeはSDであり、そしてXfはAである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはSであり;XbはEであり;XcはAであり;XdXeはSDであり、そしてXfはAである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはAであり;XbはNであり;XcはCであり;XdXeはSDであり、そしてXfはAである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはSであり;XbはEであり;XcはSであり;XdXeはSDであり、そしてXfはSである。
一実施態様において、配列iii)において、XaはSであり;XbはEであり;XcはCであり;XdXeはSDであり、そしてXfはSである。
【0035】
なおさらなる実施態様において、配列iii)は、
図1において示される配列番号1~4からなる群より選択される配列における位置7から位置55の配列に対応する。それ故、本局面に従うPD-L1結合ポリペプチドの一実施態様において、配列番号1~4からなる群より選択される配列における位置7から位置55の配列に対応する。一実施態様において、この局面に従うPD-L1結合ポリペプチドは、配列番号1、2及び3;又は配列番号2、3及び4;又は配列番号1、2及び4;又は配列番号1、3及び4からなる群より選択される配列における位置7から位置55の配列に対応する。一実施態様において、配列iii)は、配列番号1及び2;又は配列番号1及び3;又は配列番号1及び4;又は配列番号2及び3;又は配列番号2及び4;又は配列番号3及び4からなる群より選択される配列における位置7から位置55の配列に対応する。1つの特定の実施態様において、配列iii)は、配列番号1及び4からなる群より選択される配列における位置7から位置55の配列に対応する。一実施態様において、配列iii)は、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4における位置7から位置55の配列に対応する。
【0036】
また、さらなる実施態様において:
v) YA-[BMod]-AP; (配列番号25)
[ここで、[BMod]は、本明細書において定義されるPD-L1結合モジュールである];及び
vi) v)において定義される配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、PD-L1結合ポリペプチドが提供される。
【0037】
あるいは:
vii) FN-[BMod]-AP; (配列番号26)
[ここで、[BMod]は、本明細書において定義されるPD-L1結合モジュールである];及び
viii) vii)において定義される配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、PD-L1結合ポリペプチドが提供される。
【0038】
例えば、一実施態様において、
ix) FNK-[BM]-DPSQS ANLLXc EAKKL NDAQA P; (配列番号27)
[ここで、[BM]は上で定義されたPD-L1結合モチーフであり、そしてXcはA及びCから選択される];及び
x) ix)において定義される配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列
からなる群より選択されるPD-L1結合ポリペプチドが提供される。
【0039】
別の実施態様において、
xi) FAK-[BM]-DPSQS SELLXc EAKKL SESQA P; (配列番号28)
[ここで、[BM]は上で定義されるPD-L1結合モチーフであり、そしてXcはA、S及びCから選択される];及び
xii) xi)において定義される配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列
からなる群より選択されるPD-L1結合ポリペプチドが提供される。
【0040】
別の実施態様において、
xiii) FAK-[BM]-DPSQS SELLXc EAKKL NDSQA P; (配列番号29)
[ここで、[BM]は上で定義されたPD-L1結合モチーフであり、そしてXcはA、S及びCから選択される];
xiv) xiii)において定義される配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列
からなる群より選択されるPD-L1結合ポリペプチドが提供される。
【0041】
さらに別の実施態様において、
xv) YAK-[BM]-DPSQS SELLXc EAKKL NDSQA P; (配列番号30)
[ここで、[BM]は上で定義されたPD-L1結合モチーフであり、そしてXcはA、S及びCから選択される];
xvi) 及び、xv)において定義される配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列
からなる群より選択されるPD-L1結合ポリペプチドが提供される。
【0042】
上で考察されたように、上記のアミノ酸配列と比較して、ポリペプチドの三次構造及び機能に大きく影響を及ぼさない小さな変化を含むポリペプチドもまた、本開示の範囲内である。従って、いくつかの実施態様において、配列vi)、viii)、x)、xii)、xiv)又はxvi)は、それぞれv、vii)、ix)、xi)、xiii)及びxv)により定義される配列に対して、例えば、少なくとも90%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも98%同一であり得る。
【0043】
いくつかの実施態様において、PD-L1結合モチーフは、
ADNNFNK-[BM]-DPSQSANLLSEAKKLNESQAPK; 配列番号31
ADNKFNK-[BM]-DPSQSANLLAEAKKLNDAQAPK; 配列番号32
ADNKFNK-[BM]-DPSVSKEILAEAKKLNDAQAPK; 配列番号33
ADAQQNNFNK-[BM]-DPSQSTNVLGEAKKLNESQAPK; 配列番号34
AQHDE-[BM]-DPSQSANVLGEAQKLNDSQAPK; 配列番号35
VDNKFNK-[BM]-DPSQSANLLAEAKKLNDAQAPK; 配列番号36
AEAKYAK-[BM]-DPSESSELLSEAKKLNKSQAPK; 配列番号37
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLNDAQAPK; 配列番号38
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLNDSQAPK; 配列番号39
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAPK; 配列番号40
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAP; 配列番号41
AEAKFAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAPK; 配列番号42
AEAKFAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAP; 配列番号43
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLNDAQAPK; 配列番号44
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLSESQAPK; 配列番号45
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLSESQAP; 配列番号46
AEAKFAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLSESQAPK; 配列番号47
AEAKFAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLSESQAP; 配列番号48
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLSEAQAPK; 配列番号49
AEAKYAK-[BM]-QPEQSSELLSEAKKLSESQAPK; 配列番号50
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLESSQAPK; 配列番号51
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLESSQAP; 配列番号52
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLESAQAPK; 配列番号53
AEAKYAK-[BM]-QPEQSSELLSEAKKLESSQAPK; 配列番号54
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLSDSQAPK; 配列番号55
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLSDSQAP; 配列番号56
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLSDSQAPK; 配列番号57
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLSDAQAPK; 配列番号58
AEAKYAK-[BM]-QPEQSSELLSEAKKLSDSQAPK; 配列番号59
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAPK; 配列番号60
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLNDAQAPK; 配列番号61
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLSESQAPK; 配列番号62
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLSEAQAPK; 配列番号63
VDAKYAK-[BM]-QPEQSSELLSEAKKLSESQAPK; 配列番号64
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLESSQAPK; 配列番号65
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLESAQAPK; 配列番号66
VDAKYAK-[BM]-QPEQSSELLSEAKKLESSQAPK; 配列番号67
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLSDSQAPK; 配列番号68
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLSDSQAPK; 配列番号69
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLSDAQAPK; 配列番号70
VDAKYAK-[BM]-QPEQSSELLSEAKKLSDSQAPK; 配列番号71
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLNKAQAPK; 配列番号72
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLNKAQAPK; 配列番号73
及び
ADAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAPK; 配列番号74
[ここで、[BM]は、本明細書において定義されるPD-L1結合モチーフである]
から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの一部を形成し得る。
【0044】
一実施態様において、PD-L1結合ポリペプチドは:
xvii) VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAPK;
[ここで、[BM]は本明細書において定義されるPD-L1結合モチーフである];及び
xviii) xvii)において定義される配列に対して少なくとも89%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0045】
一実施態様において、PD-L1結合ポリペプチドは:
xix) AEAKFAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLSESQAPK;[ここで、[BM]は本明細書において定義されるPD-L1結合モチーフである];及び
xx) xix)において定義される配列に対して少なくとも89%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0046】
一実施態様において、PD-L1結合ポリペプチドは:
xxi) AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAPK;
[ここで、[BM]は本明細書において定義されたPD-L1結合モチーフである];及び
xxii) xxi)において定義された配列に対して少なくとも89%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0047】
一実施態様において、PD-L1結合ポリペプチドは:
xxiii) AEAKFAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAPK;
[ここで、[BM]は本明細書において定義されたPD-L1結合モチーフである];及び
xxiv) xxiii)において定義された配列に対して少なくとも89%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0048】
この場合もやはり、上記アミノ酸と比較して、ポリペプチドの三次構造及び機能に大きく影響を及ぼさない小さな変化を含むポリペプチドもまた本開示の範囲内である。従って、いくつかの実施態様において、配列xviii)、xx)、xxii)又はxxiv)は、それぞれxvii)、xix)、xxi)及びxxiii)により定義される配列に対して、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも98%同一であり得る。
【0049】
このようなポリペプチドにおける配列xvii)又はxxi)は、
図1に示される配列番号1~5からなる群より選択され得る。この局面に従うPD-L1結合ポリペプチドの一実施態様において、配列xvii)又はxxi)は、配列番号1~5からなる群より選択される配列における位置1から位置58の配列に対応する。
【0050】
一実施態様において、配列xvii)又はxxi)は、配列番号1、2、3及び5;又は配列番号2、3及び4;又は配列番号1、2、4及び5;又は配列番号1、3、4及び5からなる群より選択される配列における位置1から位置58の配列に対応する。一実施態様において、配列xvii)は、配列番号1、2及び3;又は配列番号2、3及び4;又は配列番号1、2及び4;又は配列番号1、3及び4からなる群より選択される配列における位置1から位置58の配列に対応する。
【0051】
一実施態様において、配列xvii)又はxxi)は、配列番号1、2及び5;又は配列番号1、3及び5;又は配列番号1、4及び5;又は配列番号2及び3;又は配列番号2及び4;又は配列番号3及び4からなる群より選択される配列における位置1から位置58の配列に対応する。
【0052】
一実施態様において、配列xvii)又はxxi)は、配列番号1及び2;又は配列番号1及び3;又は配列番号1及び4;又は配列番号2及び5;又は配列番号3及び5;又は配列番号4及び5からなる群より選択される配列における位置1から位置58の配列に対応する。
【0053】
1つの特定の実施態様において、配列xvii)又はxxi)は、配列番号1及び4からなる群又は配列番号1及び5からなる群のような配列番号1、4及び5からなる群より選択される配列における位置1から位置58の配列に対応する。一実施態様において、配列xvii)又はxxi)は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4又は配列番号5における位置1から位置58の配列に対応する。
【0054】
本明細書において使用される用語「PD-L1結合」及び「PD-L1に対する結合親和性」は、例えばELISAにより又は表面プラズモン共鳴(SPR)技術の使用により試験され得るポリペプチドの特性を指す。
【0055】
例えば以下の実施例に記載されるように、PD-L1結合親和性は、ポリペプチドのサンプルを抗体被覆ELISAプレート上に捕捉し、そしてビオチン化PD-L1、続いてストレプトアビジン結合HRPを加える実験において試験され得る。TMB基質を加え、そして450 nmでの吸光度をVictor3 (Perkin Elmer)のようなマルチウェルプレートリーダーを使用して測定する。当業者は、このような実験により得られた結果を読み取って、PD-L1に対するポリペプチドの結合親和性の少なくとも定性的な尺度を確立し得る。例えば相互作用についてのEC50値(有効濃度の最大半量)を決定するために定量的尺度が望まれる場合、ELISAも使用され得る。ビオチン化PD-L1の段階希釈に対するポリペプチドの応答は、上記のようにELISAを使用して測定される。次いで当業者は、このような実験により得られた結果を読み取り得、そしてEC50値を、例えばGraphPad Prism 5及び非線形回帰を使用した結果から計算し得る。
【0056】
PD-L1結合親和性はまた、PD-L1又はそのフラグメントが、表面プラズモン共鳴(SPR)機器のセンサーチップ上に固定化され、そして試験しようとするポリペプチドを含有するサンプルがチップ上に通される実験において試験され得る。あるいは、試験しようとするポリペプチドを、機器のセンサーチップ上に固定化し、そしてPD-L1又はそのフラグメントを含有するサンプルをチップ上に通す。次いで当業者は、このような実験により得られた結果を読み取り、PD-L1に対するポリペプチドの結合親和性の少なくとも定性的尺度を確立し得る。例えば相互作用についてKD値を決定するために定量的尺度が望まれる場合、表面プラズモン共鳴法も使用され得る。結合値は、例えばBiacore (GE Healthcare)又はProteOn XPR 36 (Bio-Rad)機器で規定され得る。PD-L1を機器のセンサーチップ上に適切に固定し、そしてその親和性を決定しようとするポリペプチドのサンプルを段階希釈により調製し、そして無作為な順序で注入する。次いでKD値は、例えばBIAevaluation 4.1ソフトウェア又は機器製造者により提供される他の適切なソフトウェアの1:1ラングミュア結合モデルを使用した結果から計算され得る。
【0057】
この開示において使用される用語「アルブミン結合」及び「アルブミンに対する結合親和性」は、例えば、PD-L1について上で記載した例と類似した方法で、Biacore機器又はProteOn XPR36機器においてSPR技術の使用により試験され得るポリペプチドの特性を指す。
【0058】
一実施態様において、PD-L1結合ポリペプチドは、PD-L1との相互作用のKD値が多くとも1×10-6M、例えば多くとも6×10-7 M、例えば多くとも1×10-7 M、例えば多くとも5×10-8 M、例えば多くとも1×10-8 M、例えば多くとも5×10-8 M、例えば多くとも1×10-9 Mであるように、PD-L1に結合することができる。
【0059】
一実施態様において、相互作用のEC50値が多くとも1×10-9 M、例えば多くとも5×10-10 M、例えば多くとも2×10-10 MであるようにPD-L1に結合することができるいずれかの前記の項目に従うPD-L1結合ポリペプチドが提供される。
【0060】
本明細書において定義されるポリペプチドのPD-L1への結合は、インビボ又はインビトロでPD-L1を介するシグナル伝達のいずれかを妨害し得る。PD-L1がPD-1に結合する場合、リガンド/受容体相互作用は、例えば、Tリンパ球活性化に関与するキナーゼを阻害することによりTリンパ球応答を抑制する。従って、PD-1へのPD-L1の結合の遮断はT細胞応答を回復する。遮断活性は、例えば、特定の生物学的又は生化学的機能を阻害する際の物質の有効性の尺度である最大半量阻害濃度(IC50)により定量化され得る。この定量的尺度は、所定の生物学的プロセスを半分阻害するために特定の物質がどれだけ必要かを示し、当該分野で一般的に使用される。
【0061】
従って、一実施態様において、PD-L1依存性シグナル伝達を遮断することができる本明細書において定義されたPD-L1結合ポリペプチドが提供される。一実施態様において、遮断の最大半量阻害濃度(IC50)は、多くとも1×10-8 M、例えば多くとも7×10-9 M、例えば多くとも5×10-9 Mである。
【0062】
一実施態様において、上記PD-L1はヒトPD-L1である。
【0063】
当業者には当然のことながら、本開示の範囲から逸脱することなく特定の適用に対してポリペプチドを調整するために、本明細書に開示されるいずれかの局面に従うPD-L1結合ポリペプチドに様々な改変及び/又は付加を行うことができる。
【0064】
例えば、一実施態様において、C末端及び/又はN末端でさらなるアミノ酸により伸長されるか、かつ/又はさらなるアミノ酸を含む、本明細書に記載される結合ポリペプチドが提供される。このようなポリペプチドは、ポリペプチド鎖における一番最初及び/又は一番最後の位置に1つ又はそれ以上のさらなるアミノ酸残基を有するポリペプチドとして理解されるべきである。従って、PD-L1結合ポリペプチドは、いずれかの適切な数のさらなるアミノ酸残基、例えば少なくとも1つのさらなるアミノ酸残基を含み得る。それぞれのさらなるアミノ酸残基は、例えば、ポリペプチドの製造、精製、インビボ若しくはインビトロでの安定性、カップリング又は検出を改善及び/又は単純化するために、個々に又は集合的に付加され得る。このようなさらなるアミノ酸残基は、化学カップリングの目的のために付加された1つ又はそれ以上のアミノ酸残基を含み得る。この一例はシステイン残基の付加である。さらなるアミノ酸残基はまた、ポリペプチドの精製又は検出のための「タグ」、例えば、タグに対して特異的な抗体との相互作用又はHis6-タグの場合は固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)のための、His6タグ、(HisGlu)3タグ(「HEHEHE」タグ)又は「myc」(c-myc)タグ若しくは「FLAG」タグを提供し得る。
【0065】
一実施態様において、C末端及び/又はN末端にさらなるアミノ酸を含む本明細書に記載されるPD-L1結合ポリペプチドが提供される。例えば、本明細書に開示されるPD-L1結合ポリペプチドの一実施態様において、0~15個のさらなるC末端及び/又はN末端残基を有する、例えば0~7個のさらなるC末端及び/又はN末端残基を有する、本明細書に開示される配列のいずれか1つからなる。一実施態様において、PD-L1結合ポリペプチドは、0~15、例えば0~4、例えば3個のC末端残基を有する、本明細書に開示される配列のいずれか1つからなる。1つの特定の実施態様において、本明細書に記載されるPD-L1結合ポリペプチドは、さらなるC末端残基VDC又はVECを含む。
【0066】
上で考察されるさらなるアミノ酸は、化学結合を用いて(公知の有機化学法を使用して)又は融合タンパク質としてのPD-L1結合ポリペプチドの発現若しくは直接的若しくはリンカー、例えばアミノ酸リンカーを介していずれかの他の様式のようないずれかの他の手段により、PD-L1結合ポリペプチドにカップリングされ得る。
【0067】
さらなるポリペプチドドメインは、別のPD-L1結合部分をさらに提供し得る。従って、さらなる実施態様において、多量体形態のPD-L1結合ポリペプチドが提供される。上記多量体は、少なくとも2つの本明細書に開示されるPD-L1結合ポリペプチドを単量体単位として含むと理解され、これらのアミノ酸配列は、同じであっても異なっていてもよい。ポリペプチドの多量体形態は、適切な数のドメインを含み得、それぞれPD-L1結合モチーフを有し、そしてそれぞれ多量体内の単量体を形成する。これらのドメインは、同じアミノ酸配列を有していてもよいが、あるいは、それらは異なるアミノ酸配列を有してもよい。換言すれば、本発明のPD-L1結合ポリペプチドは、ホモ-又はヘテロ多量体、例えばホモ-又はヘテロ二量体を形成し得る。一実施態様において、上記単量体単位が共有結合で一緒にカップリングされるPD-L1結合ポリペプチドが提供される。別の実施態様において、上記PD-L1結合ポリペプチド単量体単位は、融合タンパク質として発現される。一実施態様において、二量体形態のPD-L1結合ポリペプチドが提供される。1つの特定の実施態様において、上記二量体形態は、ホモ二量体形態である。別の実施態様において、上記二量体形態は、ヘテロ二量体形態である。明瞭さのために、本開示全体を通して、用語「PD-L1結合ポリペプチド」は、全ての形態、すなわち単量体及び多量体形態のPD-L1結合ポリペプチドを包含するように使用される。
【0068】
上で考察されるさらなるアミノ酸は、例えば、1つ又はそれ以上のさらなるポリペプチドドメインを含み得る。さらなるポリペプチドドメインは、別の機能、例えば別の結合機能、又は酵素機能、又は毒性機能又は蛍光シグナル伝達機能、又はそれらの組み合わせを有するPD-L1結合二量体を提供し得る。
【0069】
さらに、本明細書において定義されるPD-L1結合ポリペプチドが、第二の部分又はさらなる部分を含む融合タンパク質又は結合体の一部であることは有益であり得る。このようなタンパク質における融合ポリペプチド又は結合体の第二の部分及びさらなる部分は、望ましい生物学的活性を適切に有し得る。
【0070】
従って、本開示の第二の局面において、第一の局面に従うPD-L1結合ポリペプチドからなる第一の部分、及び所望の生物学的活性を有するポリペプチドからなる第二の部分を含む、融合タンパク質又は結合体が提供される。別の実施態様において、上記融合タンパク質又は結合体は、第二の部分の生物学的活性と同じかでも異なっていてもよい所望の生物学的活性を含むさらなる部分を含み得る。
【0071】
所望の生物学的活性の非限定的な例は、治療的活性、結合活性及び酵素活性を含む。一実施態様において、所望の生物学的活性を有する第二の部分は、治療的に活性なポリペプチドである。一実施態様において、上記第二の部分は、免疫反応調整剤(immune response modifying agent)である。別の実施態様において、上記第二の部分は抗癌剤である。
【0072】
本開示の第一又は第二の局面のいずれかの一実施態様において、免疫反応調整剤を含むPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質又は結合体が提供される。さらなる免疫反応調整剤の非限定的な例としては、免疫調節剤又は他の抗炎症剤が挙げられる。
【0073】
本開示の第一又は第二の局面のいずれかの一実施態様において、抗癌剤を含むPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質又は結合体が提供される。抗癌剤の非限定的な例としては、アウリスタチン(auristatin)、アントラサイクリン、カリケアミシン、コンブレタスタチン、ドキソルビシン、デュオカルマイシン、CC-1065抗腫瘍抗生物質、エクテイナシジン(ecteinsascidin)、ゲルダナマイシン、マイタンシノイド、メトトレキサート、マイコトキシン、タキソール、リシン、ボウガニン(bouganin)、ゲロニン、緑膿菌外毒素(pseudomonas exotoxin)38(PE38)、ジフテリア毒素(DT)、及びそれらのアナログ、及びそれらの誘導体及びそれらの組み合わせからなる群より選択される薬剤が挙げられる。当業者には当然のことながら、抗癌剤の非限定的な例は、上記薬剤の全ての可能な変異体を含み、例えば、薬剤アウリスタチンは、例えばアウリスタチンE、アウリスタチンF、アウリスタチンPE、及びそれらの誘導体を含むことを意図される。
【0074】
治療的に活性なポリペプチドの非限定的な例は、ヒト内在性酵素、ホルモン、成長因子、ケモカイン、サイトカイン及びリンホカインからなる群より選択される分子のような生体分子である。
【0075】
結合活性の非限定的な例は、融合タンパク質又は結合体のインビボ半減期を増加させる結合活性、及び生物学的活性を遮断するように作用する結合活性である。このような結合活性の一例は、融合タンパク質又は結合体のインビボ半減期を増加させる結合活性である。上記融合タンパク質又は結合体の一実施態様において、上記融合タンパク質又は結合体のインビボ半減期は、それ自体所望の生物学的活性を有するポリペプチドのインビボ半減期より長い。一実施態様において、上記インビボ半減期は、融合タンパク質又は結合体それ自体のインビボ半減期と比較して、少なくとも10倍、例えば少なくとも25倍、例えば少なくとも50倍、例えば少なくとも75倍、例えば少なくとも100倍増加する。
【0076】
融合タンパク質又は結合体は、少なくとも1つのさらなる部分を含み得る。1つの特定の実施態様において、上記標的はアルブミンであり、それへの結合は、上記融合タンパク質又は結合体のインビボ半減期を増加させる。一実施態様において、上記アルブミン結合活性は、連鎖球菌プロテインG又はその誘導体のアルブミン結合ドメイン(ABD)により生じる。従って、上記融合タンパク質は、例えば本明細書で定義されるような単量体又は多量体形態(例えば、ホモ二量体又はヘテロ二量体形態)のPD-L1結合ポリペプチド及び連鎖球菌プロテインG又はその誘導体のアルブミン結合ドメインを含み得る。
【0077】
別の実施態様において、融合タンパク質又は結合体が提供され、ここで所望の結合活性を有する上記第二の部分は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来のプロテインAのBドメインから誘導されるプロテインZに基づくタンパク質であり、これはPD-L1以外の標的に対する結合活性を有する。
【0078】
例えば、少なくとも1つのさらなる部分を含む上記融合タンパク質又は結合体は、[PD-L1結合ポリペプチド] - [アルブミン結合部分] - [選択された標的に対する親和性を有する部分]を含み得る。当然のことながら、この例における3つの部分は、ポリペプチドのN末端からC末端へのいずれの順序でも配置され得る。
【0079】
当業者は、融合タンパク質の構築が、融合しようとする機能的部分の間のリンカーの使用をしばしば含み、そして可動性アミノ酸リンカー、剛性アミノ酸リンカー及び切断可能アミノ酸リンカーのような様々な特性を有する様々な種類のリンカーがあるということを知っている。リンカーは、例えば融合タンパク質の安定性を増加させるため又は折り畳みを改善するため、融合タンパク質の発現を増加させるため、生物学的活性を改善するため、標的化を可能にするため、及び薬物動態を変更するために使用された。従って、一実施態様において、本明細書に開示されるいずれかの局面に従うポリペプチドは、可動性アミノ酸リンカー、剛性アミノ酸リンカー及び切断可能アミノ酸リンカーから選択される少なくとも1つのリンカーのような、少なくとも1つのリンカーをさらに含む。一実施態様において、上記リンカーは、上記PD-L1結合ポリペプチドとさらなるポリペプチドドメインとの間、例えば本明細書に開示されるPD-L1結合ドメインと抗体又はその抗原結合フラグメント(以下にさらに詳細に記載される)との間に配置される。可動性リンカーは、接続されたドメインがある程度の移動又は相互作用を必要とする場合に当該分野でしばしば使用され、そして複合体のいくつかの実施態様において特に有用であり得る。このようなリンカーは、一般的には小さな非極性のアミノ酸(例えばG)又は極性のアミノ酸(例えばS又はT)から構成される。いくつかの可動性リンカーは、主にG及びS残基の鎖からなる、例えば(GGGGS)p。コピー数「p」を調整することにより、機能的部分の間の適切な分離を達成するため、又は必要な部分間相互作用を維持するためにリンカーの最適化が可能となる。G及びSリンカーとは別に、他の可動性リンカーが当該分野で公知であり、例えば可動性を維持するためのT及びAのようなさらなるアミノ酸残基、さらには溶解性を改善するための極性アミノ酸残基を含有するG及びSリンカー。リンカーのさらなる非限定的な例としては、それぞれ配列番号6~22に対応する、GGGGSLVPRGSGGGGS、(GS)3、(GS)4、(GS)8、GGSGGHMGSGG、GGSGGSGGSGG、GGSGG、GGSGGGGG、GGGSEGGGSEGGGSEGGG、AAGAATAA、GGGGG、GGSSG、GSGGGTGGGSG、GSGGGTGGGSG、GSGSGSGSGGSG、GSGGSGGSGGSGGS及びGSGGSGSGGSGGSG、並びにGTが挙げられる。当業者は他の適切なリンカーを知っている。
【0080】
一実施態様において、上記リンカーは、グリシン(G)、セリン(S)及び/又はスレオニン(T)残基を含む可動性リンカーである。一実施態様において、上記リンカーは、(GnSm)p及び(SnGm)p[式中、独立して、n=1-7、m=0-7、n+m≦8及びp=1~7である]から選択される一般式を有する。一実施態様において、n=1~5である。一実施態様において、m=0~5である。一実施態様において、p=1~5である。より特定の実施態様において、n=4、m=1及びp=1~4である。一実施態様において、上記リンカーは、S4G、(S4G)3及び(S4G)4からなる群より選択される。一実施態様において、上記リンカーは、G4S及び(G4S)3からなる群より選択される。1つの特定の実施態様において、上記リンカーはG4Sであり、そして別の実施態様において上記リンカーは(G4S)3である。
【0081】
本開示に従うPD-L1結合ポリペプチドを組み込んだ融合タンパク質又は結合体の上の記載に関して、第一、第二及びさらなる部分の指定は、一方では本発明に従うPD-L1結合ポリペプチドと、他方で他の機能を示す部分とを区別するための明瞭さの理由のために行われるということに留意すべきである。これらの指定は、融合タンパク質又は結合体のポリペプチド鎖における異なるドメインの実際の順序を指すことを意図されない。同様に、第一及び第二の単量体単位の指定は、上記単位間を区別するための明瞭さの理由のために行われる。従って、例えば、上記第一の部分(又は単量体単位)は、制限なく、融合タンパク質又は結合体のN末端に現れても、中央に現れても、C末端に現れてもよい。
【0082】
近年、例えば、単一の抗体結合部位において2つの抗原に対処するように相補性決定領域(CDR)を操作することにより(Bostrom et al、2009、Science 323(5921):1610-1614;Schaefer et al、2011、Cancer Cell 20(4):472-486)、操作されたFc単位を使用したヘテロ二量体抗体の構築により(Carter、2001、J Immunol Methods 248(1-2):7-15;Schaefer
et al、2011、Proc Natl Acad Sci USA 108(27):11187-11192)、及び全長抗体の軽鎖又は重鎖のN末端又はC末端に補助認識単位を遺伝子融合することにより(Kanakaraj et al、2012、MAbs 4(5):600-613;LaFleur et al、2013、MAbs 5(2):208-218)、1つより多くの抗原に結合する能力を有する抗体のような多選択性薬剤の開発においてかなりの進展があった。従って、本明細書に開示されるPD-L1に対する親和性を組み込んだ分子が、癌に関連する因子又は免疫応答関連因子のような別の因子に対する親和性も示すことは有益であり得る。
【0083】
従って、本開示の第三の局面において、少なくとも1つのPD-L1結合ポリペプチド及び少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントを含む複合体が提供され、ここでPD-L1結合ポリペプチドは本明細書に記載されるとおりである。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語「複合体」は、2つ若しくはそれ以上の結合したポリペプチド鎖を指すことを意図され、少なくとも1つはPD-L1に対する親和性を有し、そして少なくとも1つは抗体又はその抗原結合フラグメントである。これらのポリペプチド鎖は、異なるタンパク質ドメインをそれぞれ含み得、そして得られた多タンパク質複合体は、複数の機能を有することができる。「複合体」は、共有結合により接続された2つ又はそれ以上のポリペプチド、例えば、組み換え融合タンパク質としてのその発現により共有結合により、又は化学結合により接続された2つ又はそれ以上のポリペプチドを指すことを意図する。
【0085】
周知のように、抗体は、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド又はその他のような標的(抗原)に、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を通して特異的結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書で使用される用語「抗体又はその抗原結合フラグメント」は、全長又はインタクトなポリクローナル又はモノクローナル抗体だけでなく、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fab3、Fv及びそれらの変異体のような抗原結合フラグメント、1つ又はそれ以上の抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、ミニボディ(minibodies)、二特異性抗体(diabodies)、三特異性抗体(triabodies)、四特異性抗体(tetrabodies)、鎖状抗体、単鎖抗体、多選択性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び必要な特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子のいずれかの他の改変された構成を包含し、これには、抗体のグリコシル化変異体、抗体のアミノ酸配列変異体及び共有結合により改変された抗体が含まれる。改変された抗体及びその抗原結合フラグメントのさらなる例としては、ナノボディ、AlbudAbs、DART(二重親和性再標的化(dual affinity re-targeting))、BiTE(二重特異性T細胞エンゲージャー(engager))、TandAb(タンデム二特異性抗体)、DAF(二重作用性Fab)、ツー・イン・ワン(two-in-one)抗体、SMIP(小モジュール免疫薬剤)、FynomAb(抗体に融合されたfynomer)、DVD-Ig(二重可変ドメイン免疫グロブリン)、CovX-ボディ(ペプチド改変抗体)、duobody及びtriomAbが挙げられる。抗体及びその抗原結合フラグメントの変異体のこのリストは、限定とは見られず、そして当業者は他の適切な変異体を知っている。
【0086】
全長抗体は2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)並びに第一、第二及び第三の定常領域(CH1、CH2及びCH3)を含有する。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)を含有する。その重鎖の定常領域のアミノ酸配列に依存して、抗体は異なるクラスに帰属される。抗体の6つの主要なクラスがある: IgA、IgD、IgE、IgG、IgM及びIgY、そしてこれらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)にさらに分けられる、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2。本明細書で使用される用語「全長抗体」は、IgD、IgE、IgG、IgA、IgM又はIgY(又はそれらのいずれかのサブクラス)のようないずれかのクラスの抗体を指す。異なるクラスの抗体のサブユニット構造及び3次元構成は周知である。
【0087】
「抗原結合フラグメント」は、対応する全長抗体の抗原結合の全て又は重大な部分を保持する、抗体分子又はその誘導体の一部又は領域である。抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、又は両方を含み得る。VH及びVLはそれぞれ典型的に、3つの相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3を含有する。VH又はVLにおける3つのCDRは、フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)と隣接する。上に短くリストに記載したように、抗原結合フラグメントの例としては、限定されないが: (1) Fabフラグメント[これはVL-CL鎖及びVH-CH1鎖を有する一価フラグメントである];(2) Fab’フラグメント[これは重鎖ヒンジ領域を有するFabフラグメントである]、(3) F(ab’)2フラグメント[これは重鎖ヒンジ領域により結合された、例えばヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された、Fab’フラグメントの二量体である];(4) Fcフラグメント;(5) Fvフラグメント[これは、抗体の単一のアームのVL及びVHドメインを有する最小抗体フラグメントである];(6) 単鎖Fv(scFv)フラグメント[これは、scFvのVH及びVLドメインがペプチドリンカーにより連結された単一ポリペプチド鎖である];(7) (scFv)2[これは2つのVHドメイン及び2つのVLドメインを含み、これらは2つのVHドメインを通してジスルフィド架橋を介して結合される]及び(8)ドメイン抗体[これは、抗原に特異的に結合する抗体の単一可変ドメイン(VH又はVL)ポリペプチドであり得る]が挙げられる。
【0088】
抗原結合フラグメントは、慣用の方法により製造することができる。例えば、F(ab’)2
フラグメントは、全長抗体分子のペプシン消化により製造することができ、そしてFabフラグメントは、F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより生成され得る。あるいは、フラグメントは、適切な宿主細胞(例えば、E. coli、酵母、哺乳動物、植物又は昆虫細胞)において重鎖及び軽鎖フラグメントを発現させ、そしてそれらをインビボ又はインビトロのいずれかで所望の抗原結合フラグメントを形成するように構築することにより組み換え技術を介して製造され得る。単鎖抗体は、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列及び軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を連結することにより組み換え技術を介して製造され得る。例えば、可動性リンカーは、2つの可変領域の間に組み込まれ得る。当業者は、全長抗体及びその抗原結合フラグメントの両方の製造のための方法を知っている。
【0089】
従って、一実施態様において、本開示のこの局面は本明細書において定義される複合体を提供し、ここで上記少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントは、全長抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fcフラグメント、Fvフラグメント、単鎖Fvフラグメント、(scFv)2及びドメイン抗体からなる群より選択される。一実施態様において、上記少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントは、全長抗体、Fabフラグメント及びscFvフラグメントから選択される。1つの特定の実施態様において、上記少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントは、全長抗体である。
【0090】
本明細書において定義される上記複合体の一実施態様において、抗体又はその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及びその抗原結合フラグメントからなる群より選択される。
【0091】
本明細書において使用される用語「モノクローナル抗体」は、一価の親和性を有する抗体を指し、これは、モノクローナル抗体のサンプル中の抗体分子が、抗原上の同じエピトープに結合するということを意味し、一方で本明細書において使用される用語「ポリクローナル抗体」は、特定の抗原に対して反応する抗体の集合を指すが、その集合において、例えば、抗原上の異なるエピトープを識別する異なる抗体分子が存在し得る。ポリクローナル抗体は、典型的には適切な哺乳動物の接種により製造され、そして哺乳動物の血清から精製される。モノクローナル抗体は、固有の親細胞のクローン(例えば、ハイブリドーマ細胞株)である同一の免疫細胞により作製される。本明細書で使用される用語「ヒト抗体」は、ヒト被験体から得られた抗体に実質的に相当するか又はヒト被験体から得られた抗体から誘導される可変領域及び定常領域を有する抗体を指す。本明細書で使用される用語「キメラ抗体」は、抗体の免疫原性を低減するために導入された、異なる種、例えばヒト由来のポリペプチド又はドメインを含有する、組み換え又は遺伝子操作された抗体、例えばマウスモノクローナル抗体を指す。用語「ヒト化抗体」は、そのタンパク質配列が、免疫原性を低減するために、天然でヒトにおいて産生される抗体変異体に対するそれらの類似性を増加させるように改変された、非ヒト種由来の抗体を指す。
【0092】
本明細書に記載される複合体は、例えば融合タンパク質又は結合体の形態で存在し得る。従って、上記少なくとも1つのPD-L1結合ポリペプチド及び上記少なくとも1つの抗体、又はその抗原結合フラグメントは、化学結合を用いて(公知の有機化学方法を使用して)又は融合タンパク質としての複合体の発現のようないずれかの他の手段を用いてカップリングされても、又はいずれかの他のやり方で直接的に若しくはリンカー、例えばアミノ酸リンカーを介して接続されてもよい。当業者には当然のことながら、融合ポリペプチドに関連したリンカー配列の上記の記載は、本明細書に開示される複合体に等しく関連する。
【0093】
従って、一実施態様において、本明細書において定義される複合体が提供され、ここで上記複合体は、融合タンパク質又は結合体である。一実施態様において、上記複合体は融合タンパク質である。別の実施態様において、上記複合体は結合体である。上記複合体の一実施態様において、上記PD-L1結合ポリペプチドは、上記抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖のN末端又はC末端に結合される。別の実施態様において、上記PD-L1結合ポリペプチドは、抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖のN末端又はC末端に結合される。一実施態様において、上記PD-L1結合ポリペプチドは、上記抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖及び重鎖のN末端及び/又はC末端に結合される。例えば、PD-L1結合ポリペプチドは、抗体又はその抗原結合フラグメントの、重鎖のN末端のみ、軽鎖のN末端のみ、重鎖のC末端のみ、軽鎖のC末端のみ、重鎖のN末端及びC末端の両方、軽鎖のN末端及びC末端の両方、軽鎖のC末端及び重鎖のN末端のみ、重鎖のC末端及び軽鎖のN末端のみに結合され得る。
【0094】
一実施態様において、上記PD-L1結合ポリペプチドが、上記抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖又は軽鎖のC末端又はN末端のいずれかに結合される複合体が提供される。
【0095】
1つの特定の実施態様において、上記抗体又はその抗原結合フラグメントが、抗原、例えば感染性疾患に関連する抗原、又は癌に関連する抗原に対して親和性を有する、いずれかの前記項目に従う複合体が提供される。例えば、上記抗原はPD-1でもCTLA-4でもよい。
【0096】
一実施態様において、上記第二の又はさらなる部分又は抗体若しくはその抗原結合フラグメントが: PD-1、CTLA-4、T細胞免疫グロブリン及びムチン含有タンパク質-3(TIM-3)、ガレクチン-9(GAL-9)、リンパ球活性化遺伝子-3 (LAG-3)、PD-L2、B7ホモログ3(B7-H3)、B7ホモログ4(B7-H4)、T細胞活性化のVドメインIg抑制因子(VISTA)、癌胎児抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)、B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)、ヘルペスウイルス進入メディエーター(HVEM)、キラー免疫グロブリン受容体(KIR)、アデノシン、アデノシンA2a受容体(A2aR)、CD200-CD200R及びT細胞Ig及びITIMドメインの阻害剤からなる群より選択される阻害剤である、本明細書に記載される融合タンパク質、結合体又は複合体が提供される。
【0097】
一実施態様において、上記第二の部分又は抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、ニボルマブ、ピディリズマブ、BMS 936559、MPDL328OA (Roche)及びペンブロリズマブからなる群より選択される阻害剤のような、PD-1の阻害剤である。特定の実施態様において、阻害剤はペンブロリズマブである。
【0098】
一実施態様において、上記第二の部分又は抗体若しくはその抗原結合フラグメントは、ベラタセプト、アバタセプト、トレメリムマブ及びイピリムマブからなる群より選択される阻害剤のような、CTLA-4の阻害剤である。特定の実施態様において、阻害剤はイピリムマブである。
【0099】
一実施態様において、上記第二の部分又は抗体若しくはその抗原結合フラグメントが、CD134、CD40、4-1BB及びグルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)のアゴニストからなる群より選択されるアゴニストである、本明細書に記載される融合タンパク質、結合体又は複合体が提供される。
【0100】
上記の局面は、第一の局面に従うPD-L1結合ポリペプチド、第二の局面に従う融合タンパク質若しくは結合体に含まれるか又は第三の局面に従う複合体に含まれるPD-L1結合ポリペプチドが、蛍光色素及び金属、発色色素、化学発光化合物、生物発光タンパク質、酵素、放射性核種、放射性粒子及びプレターゲティング認識タグからなる群より選択される標識のような標識をさらに含むポリペプチドをさらに包含する。このような標識は、例えばポリペプチドの検出に使用され得る。例えば、いくつかの実施態様において、このような標識されたポリペプチドは、例えばPD-L1の高い発現を有する腫瘍を標識又は標的化するために使用され得る。
【0101】
Z変異ポリペプチドの間接的標識は、近年、プレターゲティング認識タグを使用して示された(Westerlund et al (2015)、Bioconjugate Chem 26:1724-1736)。同様に、本開示は、プレターゲティング部分で標識された本明細書に記載されるPD-L1結合ポリペプチドを提供し、次いで、これはプレターゲティング部分に対して相補的な部分を用いた間接的標識のために使用され得る。プレターゲティング部分を含む場合、本開示のPD-L1結合剤は、相補的なプレターゲティング部分と結合することができ、次いでこのような相補的プレターゲティング部分は、適切な放射性核種を含むか又は適切な放射性核種に結合され得る。当業者は、治療、診断及び/又は予後の目的のために適した放射性核種を知っている。このような放射性核種は、以下でPD-L1結合剤について一般的に記載されるようなキレート化環境を介して上記相補的プレターゲティング部分にキレートされ得る。
【0102】
一実施態様において、プレターゲティング部分の相補対は、ステプト(stept)(アビジン)/ビオチン、オルゴヌクレオチド/相補的オリゴヌクレオチド、例えばDNA/相補的DNA、RNA/相補的RNA、ホスホロチオエート核酸/相補的ホスホロチオエート核酸及びペプチド核酸(PNA)/相補的ペプチド核酸(cPNA)及びモルホリノ(morpholinos)/相補的モルホリノを含む。1つの特定の実施態様において、上記プレターゲティング部分は、PNAオリゴヌクレオチド、例えば10~20量体PNA配列、例えば15量体PNA配列である。
【0103】
ポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は複合体が、直接的又は間接的に(例えば、上記のプレターゲティングを介して)、造影剤(例えば、放射性薬剤)で標識される実施態様において、腫瘍に存在する標識されたポリペプチドの量を測定することは、放射能計数又は放射線密度若しくは放射線濃度のようなその派生物の画像を取得することによるような、画像化装置を使用して行われ得る。本明細書に開示されるいずれかの局面に従うPD-L1結合剤の直接標識、又は相補的プレターゲティング部分の標識による間接的標識に適した放射性核種の非限定的な例としては、68Ga、110mIn、18F、45Ti、44Sc、61Cu、66Ga、64Cu、55Co、72As、86Y、89Zr、124I、76Br、111In、99mTc、123I、131I及び67Gaが挙げられる。
【0104】
一実施態様において、このような測定において使用される画像化装置は、陽電子放出断層撮影(PET)装置であり、この場合、放射性核種はPETに適するように選択される。当業者は、PETでの使用に適した放射性核種を知っている。例えば、PET放射性核種は、68Ga、110mIn、18F、45Ti、44Sc、61Cu、66Ga、64Cu、55Co、72As、86Y、89Zr、124I及び76Brからなる群より選択される。
【0105】
別の実施態様において、使用される画像化装置は、単一光子放射断層撮影(SPECT)装置であり、この場合、放射性核種はSPECTに適するように選択される。当業者は、SPECTでの使用に適した放射性核種を知っている。例えば、SPECT放射性核種は、111In、99mTc、123I、131I及び67Gaからなる群より選択される。
【0106】
従って、一実施態様において、68Ga、110mIn、18F、45Ti、44Sc、61Cu、66Ga、64Cu、55Co、72As、86Y、89Zr、124I、76Br、111In、99mTc、123I、131I及び67Gaからなる群、例えば68Ga、110mIn、18F、45Ti、44Sc、61Cu、66Ga、64Cu、55Co、72As、86Y、89Zr、124I及び76Brからなる群より選択される放射性核種、例えば18Fのような、直接又は間接放射性核種標識を含む、本明細書に記載されるPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質又は複合体が提供される。
【0107】
いくつかの実施態様において、標識されたPD-L1結合ポリペプチドは、所望の生物学的活性を有する第二の部分も含む融合タンパク質、結合体又は複合体中の部分として存在する。標識は、いくつかの例において、PD-L1結合ポリペプチドにのみカップリングされ得、そしていくつかの例では、PD-L1結合ポリペプチド並びに融合タンパク質又は結合体及び/又は抗体若しくはその抗原結合フラグメントの第二の部分の両方にカップリングされ得る。さらに、標識を、第二の部分又は抗体若しくはその抗原結合フラグメントのみにカップリングし得、そしてPD-L1結合部分にはカップリングしないこともまた可能である。それ故、さらに別の実施態様において、上記標識が第二の部分のみにカップリングされる、第二の部分を含むPD-L1結合ポリペプチドが提供される。別の実施態様において、上記標識が抗体又はその抗原結合フラグメントのみにカップリングされる、本明細書において定義される複合体が提供される。
【0108】
標識されたポリペプチドに言及される場合、これは、PD-L1結合ポリペプチド、PD-L1結合ポリペプチドを含む融合タンパク質、結合体及び複合体を含む本明細書に記載されるポリペプチドの全ての局面への言及として理解されるべきである。従って、標識されたポリペプチドは、PD-L1結合ポリペプチド及び例えば治療用放射性核種のみを含有していてもよく、これはPD-L1結合ポリペプチドにキレートされるか若しくは共有結合でカップリングされていてもよく、又はPD-L1結合ポリペプチド、治療用放射性核種及び所望の生物学的活性、例えば治療有効性を有する小分子のような第二の部分を含有していてもよい。標識されたポリペプチドは、ヘテロ二量体形態のPD-L1結合ポリペプチド及び例えば治療用放射性核種を含有し得、これはPD-L1結合ポリペプチドにキレートされても共有結合でカップリングされてもよく、又はヘテロ二量体形態のPD-L1結合ポリペプチド、治療用放射性核種及び例えば治療有効性のような所望の生物学的活性を有する小分子のような第二の部分を含有し得る。本明細書において定義されるPD-L1結合ポリペプチド、抗体又はその抗原結合フラグメント、及び例えば治療用放射性核種を含有する複合体も想定され、この治療用放射性核種は、PD-L1結合ポリペプチド又は抗体若しくはその抗原結合フラグメントにキレートされても共有結合でカップリングされてもよい。当業者は他の可能な変形を知っている。
【0109】
PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は複合体が放射標識されている実施態様において、このような放射標識されたポリペプチドは放射性核種を含み得る。放射性核種の大部分は金属性を有し、そして金属は典型的にはタンパク質及びペプチドに存在する元素と安定な共有結合を形成することができない。この理由のために、タンパク質及びペプチドの放射性金属での標識は、キレート剤、すなわち多座リガンドを使用して行われ、これはキレートと呼ばれる非共有結合化合物を金属イオンとともに形成する。PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は複合体の実施態様において、放射性核種の組み込みは、それを通して放射性核種がポリペプチドに配位されるか、キレートされるか又は錯化され得るキレート環境の提供により可能にされる。キレート剤の一例は、ポリアミノポリカルボキシレート型のキレート剤である。このようなポリアミノポリカルボキシレートキレート剤の2つのクラスが区別され得る: 大環状及び非環状キレート剤。
【0110】
一実施態様において、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は複合体は、システイン残基のチオール基又はリジン残基のイプシロンアミノ基を介してPD-L1結合ポリペプチドに結合されたポリアミノポリカルボキシレートキレート剤により提供されるキレート環境を含む。
【0111】
インジウム、ガリウム、イットリウム、ビスマス、放射性アクチニド(radioactinides)及び放射性ランタニド(radiolanthanides)の放射性同位体のために最も一般的に使用される大環状キレート剤は、DOTA (1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)の様々な誘導体である。一実施態様において、PD-L1結合ポリペプチド、ヘテロ二量体形態のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は複合体のキレート環境は、DOTA又はその誘導体により提供される。より詳細には、一実施態様において、本開示により包含されるキレートポリペプチドは、DOTA誘導体1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリス-酢酸-10-マレイミドエチルアセトアミド (マレイミドモノアミド-DOTA)を上記ポリペプチドと反応させることにより得られる。一実施態様において、本開示に包含されるキレートポリペプチドは、DOTA誘導体 DOTAGA (2,2’,2’’-(10-(2,6-ジオキソテトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)三酢酸)を上記ポリペプチドと反応させることにより得られる。さらに、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)及びその誘導体は、キレート剤として使用され得る。それ故、一実施態様において、PD-L1結合ポリペプチド、ヘテロ二量体形態のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は複合体のキレート環境は、NOTA又はその誘導体により提供される。一実施態様において、本開示により包含されるキレートポリペプチドは、NOTA誘導体 NODAGA (2,2’-(7-(1-カルボキシ-4-((2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ)-4-オキソブチル)-1,4,7-トリアゾナン-1,4-ジイル)二酢酸)を上記ポリペプチドと反応させることにより得られる。最も一般的に使用される非環状ポリアミノポリカルボキシレートキレート剤は、DTPA (ジエチレントリアミン-五酢酸)の異なる誘導体である。それ故、ジエチレントリアミン五酢酸又はその誘導体により提供されるキレート環境を有するポリペプチドもまた本開示に包含される。
【0112】
本開示のさらなる局面において、本明細書に記載されるPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質又は複合体をコードするポリヌクレオチド;上記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター;及び上記発現ベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0113】
上記のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質又は複合体を製造する方法も本開示により包含され、該方法は、上記ポリペプチドのその発現ベクターからの発現を可能にする条件下で上記宿主細胞を培養すること、及びポリペプチドを単離することを含む。
【0114】
あるいは、本開示のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質又は複合体は、アミノ酸及び/又は保護された反応性側鎖を有するアミノ酸誘導体を使用する非生物学的ペプチド合成により製造され得、非生物学的ペプチド合成は、
- アミノ酸及び/又はアミノ酸誘導体を段階的カップリングして、保護された反応性側鎖を有する本明細書に記載されるポリペプチド、融合タンパク質又は複合体を形成すること、
- ポリペプチド、融合タンパク質又は複合体の反応性側鎖から保護基を除去すること、並びに
- 水溶液中でのポリペプチドの折り畳み
を含む。
【0115】
本明細書に開示される複合体はまた、本明細書に記載される少なくとも1つのPD-L1結合ポリペプチド又は融合タンパク質の、少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントへの結合により製造され得る。当業者は、例えば、荷電したスクシンイミジルエステル又はカルボジイミドを使用する従来の化学的結合方法のような結合方法を知っている。
【0116】
当然のことながら、本開示に従うPD-L1結合ポリペプチドは、それ自体で治療用、診断用、及び/若しくは予後用薬剤として、又は例えばPD-L1に対して直接的又は間接的な効果を有する他の治療剤若しくは診断薬を標的とするための手段として有用であり得る。直接的治療効果は、例えば、PD-L1シグナル伝達を阻害することにより達成され得る。間接的治療効果は、例えば、上記のPD-L1結合ポリペプチドを使用してプレターゲティングすることにより達成され得る。
【0117】
従って、別の局面において、本明細書に記載されるPD-L1結合ポリペプチド、融合タン
パク質、結合体又は複合体、及び少なくとも1つの薬学的に許容しうる賦形剤又は担体を含む組成物が提供される。一実施態様において、上記組成物はさらに、少なくとも1つのさらなる活性薬剤、例えば少なくとも2つのさらなる活性薬剤、例えば少なくとも3つのさらなる活性薬剤を含む。このような組み合わせにおいて有用であると分かり得るさらなる活性薬剤の非限定的な例は、本明細書に記載されるような免疫反応調整剤及び抗癌剤である。
【0118】
本開示のPD-L1結合ポリペプチドの小さいサイズ及び堅牢性は、従来のモノクローナル抗体ベースの治療に勝るいくつかの利点を与える。このような利点としては、製剤化、投与様式における利点、例えば、代替の投与経路、抗体よりも高い用量での投与及びFc媒介副作用がないことが挙げられる。本開示の薬剤は、経口、局所、静脈内、腹腔内、皮下、肺、経皮、筋内、鼻腔内、頬側、舌下又は局所投与のためのような坐剤投与が想定される。また、癌及び感染性疾患のような多くの疾患及び障害が、1つより多くの因子と関連する。従って、本明細書において定義される複合体は、PD-L1とともにさらなる抗原を標的化する利点を与える。
【0119】
本開示の別の局面において、薬剤、予後用薬及び/又は診断用薬としての使用のための、本明細書において記載されるPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物が提供される。一実施態様において、PD-L1関連障害の処置、診断又は予後における使用のための、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物が提供される。
【0120】
一実施態様において、薬剤としての使用のための、上記PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物が提供される。より特定の実施態様において、インビボでPD-L1機能を調節するための薬剤としての使用のための、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物が提供される。本明細書で使用される用語「調節する」は、PD-L1機能ハイポモルフの状態にすること、PD-L1機能を部分的に阻害するか又は完全に阻害することにような、活性を変化させることを指す。
【0121】
一実施態様において、PD-L1関連障害の処置における使用のための、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物が提供される。
【0122】
一実施態様において、PD-L1関連障害の診断における使用のための、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物が提供される。
【0123】
一実施態様において、PD-L1関連障害の予後における使用のための、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物が提供される。
【0124】
本明細書で使用される用語「PD-L1関連障害」は、PD-L1シグナル伝達が制御的役割を果たすいずれかの障害、疾患又は状態を指す。このようなPD-L1関連障害の例としては、感染性疾患及び癌が挙げられる。
【0125】
当然のことながら、上記PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物は、単独の診断若しくは予後用薬として使用されても、コンパニオン薬及び/又は予後用薬として使用されてもよい。
【0126】
一実施態様において、上記PD-L1関連障害は、感染性疾患及び癌からなる群より選択される。感染性疾患の非限定的な例としては、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)及びC型肝炎ウイルス(HCV)からなる群より選択される慢性ウイルス感染が挙げられる。当業者には当然のことながら、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、
結合体、複合体又は組成物を使用した処置、診断及び/又は予後に適した癌は、PD-L1の過剰発現を特徴とする固形腫瘍癌又は非固形腫瘍癌であり得る。このような癌の非限定的な例としては、皮膚癌;例えば黒色腫及び非黒色腫皮膚癌(NMSC);小細胞肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)のような肺癌;頭頚部癌、腎細胞癌(RCC)、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、神経膠腫、神経膠芽腫、肝臓癌、胆嚢癌、甲状腺癌、骨癌、子宮頸癌、子宮癌、外陰癌、子宮内膜癌、精巣癌、腎臓癌、食道癌、脳/CNSの癌、神経の癌、中皮腫、肉腫、小腸腺癌及び小児悪性腫瘍;白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病及び多発性骨髄腫が挙げられる。
【0127】
1つの特定の実施態様において、上記癌は、黒色腫、NSCLC、頭頚部癌、RCC、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌及び前立腺癌からなる群より選択され、例えば、癌は、黒色腫、NSCLC、頭頚部癌、RCC及び膀胱癌からなる群より選択される。
【0128】
一実施態様において、治療有効量の、本明細書に記載されるPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物を、抗癌剤又は免疫反応調整剤のような少なくとも1つの第二の薬物物質とともに投与することが有益であり得る。
【0129】
一実施態様において、少なくとも1つの細胞増殖マーカーとともに予後及び/又は診断における使用のための、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物が提供される。検討される細胞増殖マーカーの非限定的な例は、Ki-67、AgNOR、コリン、クラスピン、サイクリンA、CYR61、Cdk1、ヒストンH3、HsMCM2、IL-2、Ki-S1、Ki-S2、LigI、MCM2、MCM6、MCM7、マイトシン、p120、PCNA、PDPK、PLK、STK1、TK-1、トポイソメラーゼIIアルファ及びTPSからなる群より選択されるものである。
【0130】
関連する局面において、PD-L1関連障害の処置方法が提供され、該方法は、有効量の、本明細書に記載されるPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む。該方法のより特定の実施態様において、本明細書に記載されるPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物は、インビボでPD-L1機能を調節する。当業者には当然のことながら、本明細書に記載されるPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物の疾患又は障害の処置のための使用に関連するいずれの記載も、関連する治療方法に等しく関連する。簡潔さのために、このような記載は本明細書では繰り返されない。
【0131】
1つの特定の実施態様において、特にPD-L1関連癌の処置に関連する上記処置方法は、
- 本明細書に記載されるプレターゲティング部分を含む本明細書に記載されるPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体若しくは複合体と、又は上記プレターゲティング部分を含むPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体若しくは複合体と、被験体を接触させる工程、及び
- 放射性核種を含む相補的プレターゲティング部分と被験体を接触させる工程
を含む。
【0132】
本開示の別の局面において、PD-L1を検出する方法が提供され、該方法は、PD-L1を含有すると疑われるサンプルを提供すること、上記サンプルを、本明細書に記載されるPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物と接触させること、及びPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物の結合を検出して、サンプル中のPD-L1の存在を示すことを含む。
【0133】
一実施態様において、上記方法は、サンプルを接触させた後に、結合していないポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物を除去するための中間洗浄工程をさらに含む。
【0134】
別の実施態様において、上記方法は、被験体におけるPD-L1の存在を決定するための診断的又は予後的方法であり、該方法は:
a) 被験体、又は被験体から単離されたサンプルを、本明細書に記載されるPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物と接触させる工程、及び
b) 該被験体において又は該サンプルに結合したPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物の量に対応する値を得る工程
を含む。
【0135】
一実施態様において、上記方法は、被験体又はサンプルを接触させた後、かつ値を得る前に、結合していないポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は組成物を除去するための中間洗浄工程をさらに含む。
【0136】
この診断又は予後の方法の一実施態様において、上記PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は複合体は、本明細書に記載されるプレターゲティング部分を含み、そして方法の接触させる工程a)は、被験体を、放射性核種標識のような検出可能な標識で標識された相補的プレターゲティング部分と接触させることをさらに含む。
【0137】
一実施態様において、上記方法は、上記値を参照と比較する工程をさらに含む。上記参照は、数値、閾値又は例えば色反応に基づく視覚的指標によるものであり得る。当業者には当然のことながら、参照との比較の様々な方法が当該分野で公知であり、そして使用に適切であり得る。
【0138】
このような方法の一実施態様において、上記被験体は哺乳動物被験体、例えばヒト被験体である。一実施態様において、上記方法はインビボで行われる。別の実施態様において、上記方法はインビトロで行われる。
【0139】
一実施態様において、診断又は予後的方法は、上で考察されたようなインビボでの医用画像化のための方法である。このような方法は、本明細書において開示されるPD-L1結合実体(すなわち、ポリペプチドそれ自体、又はそれを含有する融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物)の哺乳動物被験体への全身投与を含む。PD-L1結合実体は、医用画像化に適した放射性核種(考慮される放射性核種のリストについては上を参照のこと)を含む標識で直接的又は間接的に標識される。さらに、医用画像化のための方法は、医用画像化機器を使用して被験体の身体の少なくとも一部の1つ又はそれ以上の画像を得ることを含み、該画像は、体内の放射性核種の存在を示す。
【0140】
本発明は様々な例となる局面及び実施態様に関して記載されてきたが、当業者には当然のことながら、様々な変更がなされ得、そして本発明の範囲から逸脱することなく、等価物はその要素について置換され得る。さらに、特定の状況又は分子に適合させるために、多くの改変が本発明の教示に、その本質的な範囲から逸脱することなくなされ得る。従って、本発明は、考慮されるいずれの特定の実施態様にも限定されないが、本発明は添付の特許請求の範囲内の全ての実施態様を含むということが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【
図1】
図1は、本開示のPD-L1結合ポリペプチドの例のアミノ酸配列のリストである(配列番号1~5)。推定PD-L1結合モチーフ(BM)は各配列における残基8から残基36に及ぶ。これらの各Z変異体内で完全3ヘリックスバンドルを構成すると推定される49アミノ酸残基長のポチペプチドのアミノ酸配列(BMod)は、残基7から残基55に及ぶ。
【
図2】
図2は、実施例1に記載されるようにELISAにより分析されたヒトPD-L1へのポリペプチドの特異的結合を示す。Z変異体Z13166 (配列番号1;黒いバー)、Z13359 (配列番号3、暗灰色バー)及びZ13398 (配列番号4;明るい灰色バー)はhPD-L1に結合したが、8nMの濃度で加えられたhPD-L2、hB7-H3、hB7-H7又はIgG-Fcに対しては応答が見られなかった。
【
図3】
図3は、実施例3に記載されるようにBiacoreにより分析されたヒトPD-L1へのポリペプチドの結合を示す。Z変異体 Z13166 (配列番号1)を、50 nM(黒色)、5 nM (暗灰色)及び0.5 nM(明灰色)の濃度でhPD-L1を固定化されたCM5チップ上に注入した。
【
図4】
図4は、実施例3に記載されるようにFACSにより分析されたPD-L1を発現するTHP-1細胞へのZ13166 (配列番号1)結合のヒストグラムを示す。(A)において、THP-1細胞を、10 ng/ml IFNγで終夜刺激し、そしてZ13166 10μg/mlで染色した(塗りつぶした灰色のヒストグラム)。抗PD-L1特異的抗体又はマウスIgGアイソタイプ対照での染色を比較のために示す。(B)において、刺激されたTHP-1細胞及び未刺激THP-1細胞を、PD-L1特異的抗体 1μg/mlで染色した。
【
図5】
図5は、PD-L1結合Z変異体Z15171-Cys (配列番号5)の円偏光二色性(CD)スペクトルを示す。可変温度測定(VTM)の前(破線)及び後(実線)に20℃で集められた250~195 nmの範囲に及ぶ波長でのCDスペクトルを示す。
【
図6】
図6は、(A) [
18F]AlF-NOTA-Z15171又は(B) [
18F]FBA-Z15171の投与の30~90分後のLOX腫瘍(左)及びSUDHL6腫瘍(右)を有する異種移植マウスのPET最大値投影法(MIP)画像。
【
図7】
図7は、PETデータ取得後に直接分析されたLOX及びSUDHL6マウス異種移植モデルについてのエクスビボ体内分布を示す。結果を(A) 標準化取り込み値(SUV)及び(B) 腫瘍:血液比の単位で示す。誤差バーは標準偏差を表す。
【
図8】
図8は、アカゲザルの全身スキャンの結果を示す。(A) [
18F]AlF-NOTA-Z15171及び(B) [
18F]FBA-Z15171を投与されたアカゲザルのMIP(90~180分にわたって合計;色反転画像)。(C) SUVの単位で示された異なる器官における約120~180分にわたる平均トレーサー取り込み。
【発明を実施するための形態】
【0142】
〔実施例〕
要約
以下の実施例は、ファージディスプレイ技術に基いた、ヒトプログラム死リガンド1(PD-L1)(ヒトB7ホモログ1(B7-H1)及び表面抗原分類274(CD274)としても知られる)に標的化された新規なZ変異分子の開発を開示する。本明細書に記載されるPD-L1結合ポリペプチドを配列決定し、そしてそれらのアミノ酸配列を配列番号1~4の配列識別子とともに
図1のリストに記載する。実施例はさらに、PD-L1結合ポリペプチドの特徴づけを記載し、そして該ポリペプチドのインビトロ機能性を実証する。
【0143】
実施例1
PD-L1結合Z変異体の選択及びスクリーニング
この実施例において、ヒトPD-L1(hPD-L1)を、Z変異体のファージライブラリーを使用するファージディスプレイ選択において標的として使用した。選択されたクローンをDNA配列決定し、E. coli 周辺質画分中で産生し、そしてELISA(酵素結合免疫吸着測定法)においてPD-L1に対してアッセイした。
【0144】
材料及び方法
標的タンパク質のビオチン化: hPD-L1 (ヒトPD-L1 Fcキメラ、R&D Systems、カタログ番号156-B7-100)を、No-Weigh EZ-Link スルホ-NHS-LC-ビオチン(Thermo Scentific、カタログ番号21327)を使用して10倍モル過剰で、製造者の推奨に従ってビオチン化した。反応を室温(RT)で40分間行った。次に、PBS(10 mMリン酸塩、137 mM NaCl、2.68 mM KCl、pH 7.4)への緩衝液交換を、Slide-a-lyzer透析カセット(10000 MWCO、Thermo Scientific、カタログ番号66383)を使用して製造者の指示に従って行った。
【0145】
PD-L1結合Z変異体のファージディスプレイ選択: Groenwall et al. (2007) J Biotechnol、128:162-183に本質的に記載されるように、ファージミドpAY02592において構築された、バクテリオファージ上で提示されたプロテインZのランダム変異体のライブラリーを、PD-L1結合Z変異体を選択するために使用した。このライブラリーにおいて、アルブミン結合ドメイン(ABD、連鎖球菌株G148由来のプロテインGのGA3)をZ変異体への融合パートナーとして使用した。ライブラリーをZlib006Naive.IIと示し、これは1.5x1010ライブラリーメンバー(Z変異体)のサイズを有する。ファージミドライブラリーZlib006Naive.IIを含有するグリセロールストックからのE.coli RRIΔM15細胞(Ruether et al.、(1982) Nucleic Acids Res 10:5765-5772)を、100μg/mlアンピシリンを追加した限定プロリン非含有培地20 l[3 g/l KH2PO4、2 g/l K2HPO4、0.02 g/l ウラシル、6.7 g/l YNB (DifcoTM酵母ニトロゲンベース アミノ酸非含有、Becton Dickinson)、5.5 g/l グルコース一水和物、0.3 g/l L-アラニン、0.24 g/l L-アルギニン一塩酸塩、0.11 g/l L-アスパラギン一水和物、0.1 g/l L-システイン、0.3 g/l L-グルタミン酸、0.1 g/l L-グルタミン、0.2 g/l グリシン、0.05 g/l L-ヒスチジン、0.1 g/l L-イソロイシン、0.1 g/l L-ロイシン、0.25 g/l L-リジン一塩酸塩、0.1 g/l L-メチオニン、0.2 g/l L-フェニルアラニン、0.3 g/l L-セリン、0.2 g/l L-スレオニン、0.1 g/l L-トリプトファン、0.05g/l L-チロシン、0.1 g/l L-バリン]中で播種した。培養物を37℃で発酵槽(Belach Bioteknik、BR20)にて増殖させた。細胞が光学密度600 nm (OD600) 0.75に達した場合、培養物約2.6 lを、10倍モル過剰のM13K07ヘルパーファージ(New England Biolabs、カタログ番号N0315S)を使用して感染させた。細胞を30分間インキュベートし、発現の誘導体のための100μM イソプロピル-β-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)、並びに50μg/mlアンピシリン、12.5μg/mlカルベニシリン、25μg/mlカナマイシン、1.217 M MgSO4 35 ml/l及び微量元素溶液10 ml[1.2 M HClに溶解された129 mM FeCl3;36.7 mM ZnSO4;10.6 mM CuSO4;78.1 mM MnSO4;94.1 mM CaCl2]を追加された、培地(2.5 g/l (NH4)2SO4;5.0 g/l酵母抽出物(Merck 1.03753.0500);25 g/lペプトン(Scharlau 07-119);2 g/l K2HPO4;3 g/l KH2PO4;1.25 g/l Na3C6H5O7・2 H2O;0.1 ml/l Breox FMT30消泡剤)で発酵槽が20 lまで満たされると、グルコース制限流加培養を開始し、この場合、600 g/lグルコース溶液を反応器に供給した(開始時15 g/時、17時間後培養の終わりに40 g/時)。25 % NH4OHの自動添加によりpHを7に維持し、空気を供給し(10 l/分)、そして30 %より高い溶解酸素レベルを維持するように撹拌機を設定した。培養物中の細胞をタンジェンシャルフローろ過により除去した。
【0146】
ファージ粒子を、Groenwallら(上記)に記載されるように、PEG/NaCl(ポリエチレングリコール/塩化ナトリウム)中で上清から2回沈殿させ、ろ過し、そしてPBS及びグリセロールに溶解した。ファージストックを使用前に-80℃で保存した。
【0147】
ビオチン化hPD-L1に対する選択を4回行った。子孫を含むトラック1において、Dynabeads(R) M-280ストレプトアビジン(SA-beads、Invitrogen、カタログ番号11206D)を使用してhPD-L1:Z-変異体複合体を捕捉した。選択が進むにつれて、標的濃度並びに洗浄の回数及び/又は時間に従ってさらに分割した。ファージストック製造、選択手順及び選択サイクル間のファージの増幅を、以下を除いてWO2009/077175において別のビオチン化標的に対する選択について本質的に記載されるように行った: 選択緩衝液は、10%ウシ胎仔血清(FBS、Gibco、カタログ番号10108-165)及び0.1 % Tween20 (Acros Organics、カタログ番号233362500)を追加したPBSからなるものであった。
【0148】
バックグラウンド結合剤の量を減らすために、ビオチン化ヒトIgG-Fc (Jackson ImmunoResearch Lab、カタログ番号009-060-008)で被覆したSA-ビーズを使用して各サイクルにおいて事前選択を行った。さらにサイクル1、トラック1において、hPD-L1について以前に記載されたようにビオチン化された、hPD-L2 (ヒトPD-L2 Fcキメラ;R&D Systems、カタログ番号1224-PL-100)、hB7-H3 (ヒトB7-H3 Fcキメラ;R&D Systems、カタログ番号1027-B3-100)、hB7-H4 (ヒトB7-H4;R&D Systems、カタログ番号6576-B7-50)の混合物で被覆されたSA-ビーズを使用して事前選択を行った。事前選択の間に、ファージストックを被覆ビーズとともに回転しながら30~90分間RTでインキュベートした。事前選択又は選択において使用された全てのチューブ及びビーズを、3 %ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma A3059-100G)及び0.1 % Tween20を追加したPBSを用いて予めブロックした(pre-blocked)。溶液中でRTにて選択を行い。選択時間は約120分であり、続いてPBS + 0.1 % Tween20で洗浄し、そして1.6μgビオチン化hPD-L1あたり1 mgビーズを使用してSA-ビーズ上に標的-ファージ複合体を捕獲した。
【0149】
選択サイクル1と2との間のファージ粒子の増幅のために、E.coli株ER2738細胞(Lucigen、Middleton、WI、USA)を感染のために使用し、そして20μg/mlテトラサイクリンを追加した培地中で増殖させた。細菌と比較して5倍過剰のM13K07ヘルパーファージを、対数期細菌に感染させた。
【0150】
選択サイクル2と4との間のファージ粒子の増幅を、溶液中の細菌の感染を行うことにより以下のように行った。対数期E. coli ER2738のファージ粒子での感染後に、2 %グルコース、10μg/mlテトラサイクリン及び100μg/mlアンピシリンを追加したTSBを加え、続いて回転させながら30分間37℃でインキュベートした。その後、細菌を5倍過剰のM13K07ヘルパーファージに感染させた、感染した細菌を遠心分離によりペレット化し、100μM IPTG、25μg/mlカナマイシン及び100μg/mlアンピシリンを追加したTSB-YE培地に再懸濁し、そして終夜30℃で増殖させた。終夜培養物を遠心分離し、そして上清中のファージ粒子を、PEG/NaCl緩衝液を用いて2回沈殿させた。最後に、次の選択サイクルに入る前にファージ粒子を選択緩衝液に再懸濁した。最終選択サイクルにおいて、対数期細菌を溶出液で感染させ、そして希釈した後、ELISAスクリーニングにおいて使用するための単一のコロニーを形成するために0.2 g/lアンピシリンを追加したTBABプレート(30 g/lトリプトース血液寒天基礎培地、Oxoid、カタログ番号CMO233B)上に広げた。
【0151】
【0152】
低下させた標的濃度及び増加した洗浄回数を使用するその後のサイクルにおける増加したストリンジェンシーを記載する選択ストラテジーの概要を表2に示す。表2に他に何も示されていなければ、洗浄は1分間PBST0.1% (0.1% Tween-20を追加したPBS)を使用して行われ、そしてWO2009/077175に記載されるように溶出を行った。
【0153】
ELISAのためのZ変異体の製造: Z変異体を、選択からの単一コロニーを、100μg/mlアンピシリン及び1 mM IPTGを追加した1 ml TSB-YE培地にディープウェルプレート(Nunc、カタログ番号278752)において播種することにより製造した。プレートを回転させながら24時間37℃でインキュベートした。細胞を遠心分離によりペレット化し、200μl PBST 0.05%に再懸濁し、そして細胞の周辺質画分を放出させるために-80℃で凍結した。凍結したサンプルを水浴中で解凍し、そして凍結-解凍手順を8回繰り返した。600μl PBST 0.05 %を解凍したサンプルに加え、そして細胞を遠心分離によりペレット化した。
周辺質抽出物の最終上清は、AQHDEALE-[Z#####]-VDYV-[ABD]-YVPG (Groenwallら、上記)として表される、ABDに対する関数としてZ変異体を含有していた。 Z#####は個々の、58アミノ酸残基Z変異体を指す。
【0154】
Z変異体のELISAスクリーニング: Z変異体のhPD-L1への結合をELISAアッセイで分析した。ハーフエリア96ウェルELISAプレート(Costar、カタログ番号3690)を、4℃で終夜、コーティング緩衝液(50 mM炭酸ナトリウム、pH 9.6;Sigma、カタログ番号C3041)で希釈された抗ABDヤギ抗体2μg/ml(社内で製造)でコーティングした。抗体溶液を捨てて、ウェルを水で洗浄し、そしてPBSC 100μl(0.5 %カゼインを追加したPBS;Sigma、カタログ番号C8654)で1~3時間RTにてブロッキングした。ブロッキング溶液を廃棄し、そしてPBST 0.05 %で1:1希釈された50μl周辺質溶液をウェルに加え、そして1.5~2.5時間RTにてゆっくりとした撹拌下でインキュベートした。ブランク対照として、PBST 0.05 %を周辺質サンプルの代わりに加えた。上清を捨てて、ウェルをPBST 0.05 %で4回洗浄した。次いで、PBSC中0.32 nMの濃度のビオチン化hPD-L1 50μlを各ウェルに加えた。プレートを1.0時間RTでインキュベートし、続いて上記のように洗浄した。PBSC中で1:30,000希釈したストレプトアビジン結合HRP(Thermo Scientific、カタログ番号N100)をウェルに加え、そしてプレートを約1時間インキュベートした。上記のように洗浄した後、50μl ImmunoPure TMB基質(Thermo Scientific、カタログ番号34021)をウェルに加え、そしてプレートを製造者の推奨に従って処理した。450 nmでの吸光度をマルチウェルプレートリーダー、Victor3(Perkin Elmer)を使用して測定した。
【0155】
配列決定: ELISAスクリーニングと並行して、全てのクローンを配列決定した。PCRフラグメントを単一コロニーから増幅し、配列決定し、そして本質的にWO2009/077175に記載されるように分析した。
【0156】
Z変異体のEC50分析:PD-L1結合Z変異体の選択を、上に記載される手順に従ってビオチン化hPD-L1の段階希釈に対する応答の分析にかけた。Z変異体Z13166 (配列番号1)、Z13359 (配列番号3)及びZ13398 (配列番号4)をPBST 0.05 %中で1:1希釈し、そしてビオチン化hPD-L1を40 nMの濃度で加え、そして32 pMまで段階的に1:4希釈した。Z変異体Z13178 (配列番号2)をPBST 0.05 %中で1:8希釈し、そしてビオチン化hPD-L1を15 nMの濃度で加え、そして段階的に0.25 pMまで1:3希釈した。バックグラウンド対照として、全てのZ変異体を標的タンパク質を加えずにアッセイもした。ELISAスクリーニングにおいてPD-L1に結合することが確認されたZ変異体を含有する周辺質サンプルを、ポジティブコントロールとして全てのプレートに含め、そして互いに対して異なるプレートを正規化するために使用した。ABD部分のみを含有する周辺質をネガティブコントールとして使用した。Z13166、Z13359及びZ13398に使用したアッセイと同じアッセイにおいて、Z変異体の特異性を、周辺質サンプルをそれぞれ8 nMの濃度で加えた4つの異なるビオチン化対照タンパク質hPD-L2、hB7-H3、hB7-H4及びIgGFcとともにインキュベートすることにより試験した。GraphPad Prism 5及び非線形回帰を使用してデータを分析し、そしてEC50値(有効濃度最大半量)を計算した。
【0157】
結果
PD-L1結合Z変異体のファジディスプレイ選択: 個々のクローンを、ビオチン化hPD-L1に対する4サイクルのファージディスプレイ選択後に得た。
【0158】
Z変異体のELISAスクリーニング: 4サイクルの選択後に得られたクローンを96ウェルプレートで製造し、そしてhPD-L1結合活性についてELISAでスクリーニングした。いくつかの独特なZ変異体は、hPD-L1に対して0.32 nMの濃度で0.3 AU又はそれ以上の応答(ブランク対照の少なくとも3倍に相当する)を生じることが見出された。ブランク対照の平均応答は0.067 AUであった。
【0159】
配列決定: 4サイクルの選択後に得られたクローンについて配列決定を行った各変異体に固有の識別番号#####を与え、そして個々の変異体をZ#####と呼ぶ。58アミノ酸残基長Z変異体のアミノ酸配列を
図1及び配列表に配列番号1~4としてリストに記載する。推定PD-L1結合モチーフは、各配列の残基8から残基36に及ぶ。これらの各Z変異体内の完全3ヘリックスバンドルを構成すると推測される49アミノ酸残基長ポリペプチドのアミノ酸配列は、残基7から残基55に及ぶ。
【0160】
Z変異体のEC50分析: 上記のELISAスクリーニング実験において最も高いELISA値を有するZ変異体のサブセットを選択し、そしてELISA形式で標的用量設定にかけた。周辺質サンプルを、ビオチン化hPD-L1の段階希釈とともにインキュベートした。ELISAスクリーニングにおいてPD-L1に結合することが確認されたZ変異体を含有する周辺質サンプルは、ポジティブコントロールとして全てのプレートに含まれ、そして互いに異なるプレートを正規化するために使用された。得られた値を分析し、それらの各EC50値を計算した(表3)。
【0161】
含まれたB7ファミリーの対照タンパク質(hPD-L2、hB7-H3及びhB7-H4)のいずれでも、対照タンパク質IgGFc(Fcキメラタンパク質が選択及びスクリーニングにおいて使用されたためにここで含まれる)でも、有意な結合は検出されなかった(
図2)。これらの結果は、選択されたZ変異体がPD-L1に対して特異的であるということを示す。
【0162】
【0163】
実施例2
PD-L1結合Z変異体のサブクローニング及び製造
材料及び方法
His
6
-タグを有するZ変異体のサブクローニング: 4つのPD-L1結合Z変異体、Z13166 (配列番号1)、Z13178 (配列番号2)、Z13359 (配列番号3)及びZ13398 (配列番号4)のDNAを、ライブラリーベクターpAY02592から増幅した。N末端His6タグを有する単量体Z変異体分子の構築のためのサブクローニングストラテジーを、標準的な分子生物学技術を使用して適用した(本質的に、別の標的に結合するZ変異体についてWO2009/077175に詳細に記載されるとおり)。Z遺伝子フラグメントを発現ベクターpAY01448にサブクローニングし、コードされた配列MGSSHHHHHHLQ-[Z#####]-VDを生じた。
【0164】
C末端Cysを有するZ変異体のサブクローニング: Z変異体Z13166 (配列番号1)を、VDの代わりにN末端アミノ酸AEで開始するように変異させてZ15171を生じ、そして標準的な分子生物学技術を使用してC末端システインでさらにサブクローニングした。得られたコード配列はZ15171-VDCであり、Z15171-Cys (配列番号5)と呼ばれる。
【0165】
培養: E. coli T7E2細胞(GeneBridges)を、それぞれのPD-L1結合Z変異体の遺伝子フラグメントを含有するプラスミドで形質転換し、そして50μg/mlカナマイシンを追加したTSB-YE培地 940 ml中で37℃にて培養した。タンパク質発現を誘導するために、IPTGをOD600 = 2まで0.2 mMの濃度で加え、そして培養物を37℃でさらに5時間インキュベートした。細胞を遠心分離により採取した。
【0166】
His
6
-タグを有するPD-L1結合Z変異体の精製: 各細胞ペレット約1~2 gを、Benzonase(R) (Merck、カタログ番号1.01654.0001)を追加した結合緩衝液(20 mMリン酸ナトリウム、0.5 M NaCl、20 mMイミダゾール、pH 7.4) 30 mlに再懸濁して15 U/mlの濃度にした。超音波処理により細胞破壊をした後、細胞片を遠心分離により除去し、そして各上清を1 ml His GraviTrap IMACカラム(GE Healthcare、カタログ番号11-0033-99)にアプライした。洗浄緩衝液(20 mMリン酸ナトリウム、0.5 M NaCl、60 mMイミダゾール、pH 7.4)で洗浄することにより混入物を除去し、そして続いてPD-L1結合Z変異体を溶出緩衝液(20 mMリン酸ナトリウム、0.5 M NaCl、500 mMイミダゾール、pH 7.4)で溶出した。IMAC精製後に、タンパク質緩衝液を、PD-10カラム(GE Healthcare、カタログ番号17-0851-01)を使用してPBSに交換した。
【0167】
C末端Cysを有するPD-L1結合Z変異体の精製: 細胞ペレットを、20 mM Tris-HCl、pH 8に再懸濁し(10 ml緩衝液/ g細胞ペレット)、そして水浴で90℃、10分間の熱処理により溶解し、続いて氷上で約20℃まで冷却した。Benzonase(R)を加え(1μl/g細胞ペレット)、そして細胞溶解物をRTで30分間インキュベートした後、細胞片を遠心分離により除去した。ジスルフィドの還元のために、ジチオスレイトール(DTT;Acros organics、カタログ番号165680250)を最終濃度20 mMまで加え、続いてRTで1時間インキュベートした。アニオン交換、続いて逆相クロマトグラフィー(RPC)により精製を行った。20 mM HEPES、1 mM EDTA、pH 7.2への緩衝液交換を、HiPrep 26/10カラム(GE Healthcare、カタログ番号17-5087-01)を使用して行った。最後に、Z変異体をEndoTrap(R)redカラム(Hyglos、カタログ番号321063)で精製して低エンドトキシン含量を確実にした。
【0168】
上記のいずれかの方法により精製された各タンパク質について、NanoDrop(R) ND-1000分光光度計を使用して280 nmでの吸光度及びタンパク質の減衰係数を測定することにより濃度を決定した。クマシー・ブルーで染色したSDS-PAGEにより純度を分析し、そして各精製されたZ変異体のアイデンティティを、HPLC-MS分析(HPLC-MS 1100;Agilent Technologies)により確認した。
【0169】
結果
培養及び精製: His6-タグ又はC末端Cysを有するPD-L1結合Z変異体を、E. coliにおいて可溶性遺伝子産物として発現させた。各最終タンパク質調製物のSDS-PAGE分析は、これらが主にPD-L1結合Z変異体を含有していることを示した。各Z変異体の正確なアイデンティティ及び分子量をHPLC-MS分析により確認した。
【0170】
実施例3
初代PD-L1結合Z変異体の特徴づけ
この実施例において、Z変異体のサブセットを、様々なインビトロ結合特性及び安定性に関して特徴づけした。Z変異体のヒトPD-L1に対する特異性及び親和性をBiacoreにより分析し、そしてPD-L1を発現する細胞への結合を、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用して分析した。さらに、PD-L1のその受容体PD1への結合を遮断するZ変異体の能力を、AlphaLisaを使用して調べた。融点及び二次構造を円偏光二色性(CD)分光法により分析した。
【0171】
材料及び方法
Biacore動力学及び特異性分析: hPD-L1に対する速度定数(ka及びkd)及び親和性(KD)を、His6-タグ化Z変異体Z13166 (配列番号1)、Z13178 (配列番号2)、Z13359 (配列番号3)及びZ13398 (配列番号4)についてBiacore 2000機器(GE Healthcare)を使用して決定した。4つ全てのZ変異体はまた、配列が関連するタンパク質hPD-L2、hB7-H3、hB7-H4に対する結合についても試験した。Z13166及びZ13398を、mPD-L1 (マウスPD-L1 Fcキメラ、R&D Systems、カタログ番号1019-B7)に対してさらに分析し、そしてZ13178及びZ13359を、アカゲザルPD-L1(RhPD-L1;アカゲザルPD-L1/Fcキメラ、Sino Biological Inc.、カタログ番号90251-C02H)に対して分析した。
【0172】
hPD-L1、hPD-L2、hB7-H3、hB7-H4、mPD-L1及びRhPD-L1を、異なるCM5チップ表面(GE Healthcare、カタログ番号BR100012)のカルボキシル化デキストラン層上の別々のフローセルに固定化した。製造者のプロトコルに従ってアミンカップリング化学を使用して、そしてランニングバッファとしてHBS-EP (0.01 M HEPES pH 7.4、0.15 M NaCl、3 mM EDTA、0.005 % 体積/体積 Surfactant P20、GE Healthcare、カタログ番号BR100188)を使用して固定化を行った。Z13166及びZ13398を分析した実験の第一のセットにおいて、表面上のリガンド固定化レベルは、hPD-L1について468~894 RU、mPD-L1について482 RU、hPD-L2について537~742 RU、hB7-H3について383 RU、そしてhB7-H4について538~659 RUであった。各チップ上の1つのフローセル表面を活性化し、そして検体注入の間のブランクとしての使用のために不活化した。動力学的実験において、HBS-EPをランニングバッファとして使用し、そして流量は50μl/分であった。検体、すなわちZ変異体を、それぞれHBS-EP緩衝液中で1000~0.01 nMの濃度範囲内に希釈し、そして5分間注入し、続いてランニングバッファ中で15~25分間解離させた。解離後に、表面を0.1 % SDSの1回又は2回の注入で再生した。速度定数を、BiaEvaluationソフトウェア4.1(GE Healthcare)のラングミュア1:1モデルを使用してセンサーグラムから計算した。Z13178及びZ13359を分析した実験の第二のセットにおいて、表面上のリガンド固定化レベルは、hPD-L1について1030 RU、RhPD-L1について1060 RU、hPD-L2について1070 RU、hB7-H3について1090 RU、そしてhB7-H4について770 RUであった。流量30μl/分を使用し、そしてZ変異体がhPD-L1及びRhPD-L1で固定化されたチップ上で5及び50 nMの濃度で、並びにhPD-L2、hB7-H3及びhB7-H4固定化された上に500 nMの濃度で注入された事以外は、実験の第一のセットについて上で本質的に記載されるように分析を行った。
【0173】
AlphaLISA遮断アッセイ: PD-L1のPD-1への結合を阻害するZ変異体の可能性を、AlphaLISA及びEnSpireマルチプレートリーダー2300 (Perkin Elmer)における記録により分析した。hPD-1 (ヒトPD-1 Fc-キメラ;R&D Systems、カタログ番号1086-PD-050)を、製造者の推奨に従ってAlphaLISAアクセプタービーズ(Perkin Elmer、カタログ番号6772002)上に固定化した。His-タグ化Z変異体Z13166 (配列番号1)及びZ13398 (配列番号4)の最終濃度250 nM~12 pMへの段階的1:3段階希釈を、384プレート(Perkin Elmer、カタログ番号G6005350)において行い、そして10 nMビオチン化hPD-L1とともにAlphaLISA緩衝液(Perkin Elmer、カタログ番号AL000F)中で1時間インキュベートした。hPD-1-被覆アクセプタービーズを、最終濃度10μg/mlまで加え、そして1時間インキュベートした。最後に、ストレプトアビジン被覆ドナービーズ(Perkin Elmer、カタログ番号6772002)を最終濃度40μg/mlまで加え、そして30分間インキュベートした。全てのインキュベーションをRTにて暗所で行った。プレートをEnSpire機器で分析し、そしてIC50値をGraphPad Prism 5を使用して計算した。Z変異体Z13178 (配列番号2)及びZ13359 (配列番号3)のAlphaLISA分析を、以下の例外を除いて本質的に上に記載されるように行った: 例外1: Z変異体の最終濃度250 nM~4 pMへの段階的1:3段階希釈を、384SWプレート(Perkin Elmer、カタログ番号6008350)で行い、そして45分間8 nMビオチン化hPD-L1 (R&D Systems)とともにAlphaLISA緩衝液(Perkin Elmer、カタログ番号AL000F)中でインキュベートした;及び例外2: hPD-1被覆アクセプタービーズを最終濃度10μg/mlまで加え、そして50分間インキュベートした。
【0174】
FACSによる細胞結合分析: 2つの選択されたZ変異体、Z13166 (配列番号1)及びZ13398(配列番号4)の、PD-L1を発現する細胞に結合する可能性を、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用して調べた。10 % FBSを含有するRPMI (Lonza、カタログ番号BE12-702F)中で培養されたTHP-1細胞を、PD-L1の上方調節を生じる10 ng/ml IFNg (R&D Systems、カタログ番号285-IF-100)で終夜刺激した。150,000の刺激された細胞及び無刺激細胞をv底96ウェルプレート(Nunc、カタログ番号277143)のウェルごとにピペットで取り、続いてプレート中の細胞を400gで3分間RTにてペレット化した。上清を除去し、そして細胞を、10μg/mlの異なるHis-タグ化Z変異体を含有する2.5 % FBSを加えた100μl PBS(染色緩衝液)に再懸濁した。マウス抗PD-L1抗体(R&D Systems、カタログ番号MAB1561)を1μg/mlでポジティブ対照として使用した。緩衝液のみとインキュベートした細胞をネガティブ対照として使用した。細胞を1時間8℃で暗所にてインキュベートし、100μl染色緩衝液で2回洗浄し、ヤギ抗Z抗体(社内で製造)を含有する100μl染色緩衝液中に5μg/mlの濃度で再懸濁した。ポジティブ対照で染色された細胞を、緩衝液のみで処理した。細胞を1時間8℃で暗所にてインキュベートし、100μl染色緩衝液で2回洗浄し、そしてAlexa Fluor 647ニワトリ抗ヤギIgG抗体(Life technologies、カタログ番号A21469)又はAlexa Fluor 647ヤギ抗マウスIgG抗体(Life technologies カタログ番号A21236)を含有する染色緩衝液100μlに再懸濁した。細胞をもう1度1時間8℃でインキュベートし、100μl染色緩衝液で2回洗浄し、そして染色緩衝液200μlに再懸濁した。10,000細胞からのデータを、FACS Calibur (Beckman Coulter)を使用して得、そしてデータをFlowingソフトウェア2.5.0 (Turku University)を使用して解析した。平均蛍光強度(MFI)を結合能の読み出しとして使用した。
【0175】
円偏光二色性(CD)分光法分析: Z変異体Z15171-Cys (配列番号5)を、0.5 mg/mlに20 mM HEPES、1 mM EDTA、pH 7.2中で希釈した。250~195 nmでのCDスペクトルを20℃で得た。さらに、可変温度測定(VTM)を行って融点(Tm)を決定した。VTMにおいて、5℃/分の温度勾配で20℃から90℃まで温度を上昇させながら吸光度を221 nmで測定した。Z変異体の再折りたたみ能力を調べるために、加熱手順後に新しいCDスペクトルを20℃で得た。CD測定をJasco J-810 分光偏光計(Jasco Scandinavia AB)で1 mmの光路長を有する細胞を使用して行った。His-タグ化Z変異体Z13178 (配列番号2)及びZ13398 (配列番号4)を、PBSを分析緩衝液として使用し、VTMにおいて温度を80℃に上昇させたことを除いて上記のようにCD分光法により分析した。
【0176】
結果
Biacore動力学及び特異性分析: 4つのHis
6-タグ化PD-L1-結合Z変異体Z13166 (配列番号1)、Z13178 (配列番号2)、Z13359 (配列番号3)及びZ13398 (配列番号4)のhPD-L1との相互作用を、様々な濃度のZ変異体を固定化hPD-L1を含む表面上に注入することによりBiacore機器で分析した。全ての試験したZ変異体はhPD-L1への結合を示した。1:1相互作用モデルを使用して得られたZ変異体のhPD-L1への結合についてのおよその(2つの濃度、5及び50 nMの注入されたZ変異体からのデータのみに基づく)動力学的パラメーター(K
D、ka及びkd)を表4に示す。ブランク表面からの応答が差し引かれている得られた曲線を、選択されたZ変異体、Z13166 (配列番号1)について
図3に示す。
【0177】
配列の関連するタンパク質hPD-L2、hB7-H3及びhB7-H4への結合は検出されず、これは実施例1及び
図2に示されるELISAの結果と一致していた。さらに、mPD-L1に対して分析された、2つのZ変異体、Z13166及びZ13398についてはマウスPD-L1への結合は検出されなかった。しかし、アカゲザルPD-L1に対する結合について分析された両方のZ変異体、Z13178及びZ13359は、RhPD-L1への結合を示し、そしておよその(注入されたZ変異体の1つの濃度5 nMからのデータのみに基づく)動力学的パラメーターを表5に示す。
【0178】
【0179】
【0180】
AlphaLISA遮断アッセイ: hPD-1へのhPD-L1結合を阻害するHis6-タグ化Z変異体の能力を、AlphaLISA遮断アッセイにおいて試験した。Z変異体の段階希釈をビオチン化hPD-L1とともにインキュベートし、そしてそれぞれの変異体の遮断能力を、hPD-1被覆アクセプタービーズを加え、続いてストレプトアビジン被覆ドナービーズを加えた後に測定した。ポジティブZ変異体についてAlphaLISAカウントの減少として阻害を測定することができた。このアッセイにおいて全てPD-1へのPD-L1結合を遮断することが示された4つの変異体について計算されたIC50値を表6に示す。
【0181】
【0182】
FACSによる細胞結合分析: この実験は、PD-L1特異的Z変異体のPD-L1を発現する細胞への結合を確認した。PD-L1発現を増加させるIFNγで終夜刺激されたTHP-1細胞を、His-タグ化Z変異体Z13166及びZ13398の各々10μg/mlで染色した。分析を2つの異なる場合に行い、そして両方の実験に含まれたポジティブ対照Z変異体に対して正規化されたMFI値を表7に示し、Z13166についてのヒストグラムを
図4に示す。
【0183】
【0184】
CD分析: 3つのPD-L1結合Z変異体について決定されたCDスペクトルは、全ての変異体が、208及び222 nmにおける典型的な最小値から判断して20℃でα-らせん構造を有するということを示した。90℃への加熱前及び後に測定されたスペクトルを重ねた場合に、可逆折り畳みが全てのZ変異体について見られ、これは
図5においてZ15171-Cysを示して説明される。離れたUV領域において観察された ノイズシグナルは、緩衝液効果により生じたと予測される(HEPES、これは分析緩衝液として使用された、200 nM及びそれ未満における強い吸収)。融点(Tm)を表8にまとめる。
【0185】
【0186】
実施例4
PD-L1結合Z変異体の結合体化及び放射標識
材料及び方法
NOTA結合体化及び[
18
F]AlF-標識: [20 mM HEPES、1 mM EDTA、pH 7.2]中のZ変異体5 mgに、脱気した0.2 M酢酸アンモニウム緩衝液(pH 7.0) 0.5 ml中の3モル当量のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を加えた。反応混合物をRTに60分間維持した後、Ultracel 3K遠心分離フィルターに移し、そして4000 rpmで90分間遠心分離した。素通り画分を廃棄し、そして0.2 M酢酸アンモニウム緩衝液さらに1 mlを加え、そしてこのプロセスを繰り返した。次いで、還元されたZ変異体を、第二の反応容器へ無酸素0.2 M酢酸アンモニウム緩衝液(pH 7.0)2 ml中に移した。次いで、0.2 M酢酸アンモニウム緩衝液(pH 7.0)0.5 ml中のNOTA-マレイミド(Macrocyclics)4 mgを加え、そして反応容器をアルゴンでパージした後、40℃に3時間加熱し、その時点で、反応混合物をUltracel 3K遠心分離フィルターに移し、そして90分間4000 rpmで遠心分離した。素通り画分を廃棄し、そして2 ml milliQ水を加えた。遠心分離をさらに90分間行い、そして素通り画分を廃棄した。精製したNOTA-結合Z変異体を1 ml milliQ水中に集め、凍結乾燥し、そして-70℃で使用前に貯蔵した。最終生成物の純度をLC/MSにより決定した。
【0187】
[18F]-フルオリドを含有するカートリッジを、最初に超純水1.5 mlで洗浄し、次いで[18F]-フルオリドを0.4 M KHCO3 1.0 mlで溶出した。溶出された[18F]-フルオリド溶液100
μlを、10μl酢酸、50μl AlCl3 (0.1 M NaOAc緩衝液中2 mM、pH 4)及び125μl 0.1 M NaOAc pH 4を入れたステム(stem)バイアルに加えた。この溶液を2分間RTでインキュベートした後、アセトニトリル及び0.1 M NaOAc pH 4の1:1溶液400μl中のNOTA-結合体化Z変異体1 mgを加え、次いで100℃に15分間加熱した。加熱が完了した後、0.1%ギ酸0.7 mlを入れたバイアルにサンプルを移し、混合し、そして10~30% MeCNの15分にわたるグラジエントを流量5 ml/分で使用してHPLC [Waters Xselect CSH C18カラム(250×10 mm、130μm)]により精製した、バランスは0.1%ギ酸であった。[18F]AlF-NOTA-Z#####に対応するピークを集め、MeCNを真空で除去し、そしてリンスとして生理食塩水を使用して滅菌バイアルに移し、[18F]AlF-NOTA-Z#####を得た。特異的活性及び放射化学純度を、Waters Acquity LC/MSシステム(Milford、MA、USA)及びβ-RAMモデル4 Radio-HPLC検出器(IN/US Systems、Brandon、FL、USA)を使用して決定した。
【0188】
アミノオキシ結合及び[
18
F]-フルオロベンズアルデヒド([
18
F]FBA)標識: NOTA結合体化アナログについて記載された手順と同じ手順を使用して、マレイミド (E)-エチル N-2-((2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)アミノ)-2-オキソエトキシアセトイミデートをZ15171-Cysに結合し、続いてTFA脱保護を行い、アミノオキシ7結合Z15171-Cysを得た。精製されたアミノオキシ結合体化Z変異体をmilliQ水 1 ml中に集め、凍結乾燥し、そして使用前に-70℃で保存した。最終生成物の純度をLC/MSにより決定した。
【0189】
[18F]FBAを以前に記載されたように製造した(Namavari et al、2008、Mol. Imaging and Biol.、10:177-181)。反応が完了した後、[18F]FBAをHPLC [Waters Xselect CSH C18カラム(250×10 mm、130μm)]により30~50% MeCNの15分にわたるグラジエントを流量5 ml/分で使用して精製した、バランスは0.1%ギ酸であった。[18F]FBAに対応するピークを集め、10 ml milliQ水を加えて希釈し、そして6 ml Strata XポリマーC18 SPEカートリッジ(Phenomenex、Torrance、CA USA)上にロードし、そしてさらに10 ml milliQ水で洗浄した。次いで[18F]FBAを、メタノール2 mlを含む10 ml滅菌バイアルに溶出した。
【0190】
[18F]FBAのメタノール溶液500μlを、アミノオキシ-結合体化Z15171-Cys (配列番号5)100μl (約10 mg/ml)に加え、そして60℃で10分間加熱した。加熱が完了した後、0.1%ギ酸0.7 mlを含有するバイアルにサンプルを移し、混合し、そしてHPLC [Waters Xselect CSH C18カラム(250×10 mm、130μm)]により10~30% MeCNの15分にわたるグラジエントを使用して流量5 ml/分で精製した、バランスは0.1%ギ酸であった。[18F]FBA-アミノオキシ結合体化Z15171-Cysに対応するピークを集め、MeCNを真空で除去し、そしてリンスとして生理食塩水を使用して滅菌バイアルに移し、[18F]FBA-アミノオキシ-結合体化Z15171-Cysを得た。特異的活性及び放射化学純度を、Waters Acquity LC/MSシステム(Milford、MA、USA)及びβ-RAMモデル4 Radio-HPLC検出器(IN/US Systems、Brandon、FL、USA)を使用して決定した。
【0191】
結果
NOTA結合体化及び[
18
F]AlF-標識: PD-L1結合Z変異体Z15171-Cys (配列番号5)を、その固有のC末端システイン残基でNOTAと部位特異的結合させた。[18F]AlFでのその後の放射標識により、合成の終わりに放射化学純度97~100%及び特異的活性14.6±6.5 GBq/mmolが得られた。
【0192】
アミノオキシ結合体化及び[
18
F]-フルオロベンズアルデヒド([
18
F]FBA)標識: Z15171-Cysを、その固有のC末端システイン残基で部位特異的にアミノオキシ-結合体化させ、そしてその後[18F]FBAで放射標識した。[18F]FBA-Z15171の放射化学純度をLC/MSにより100%と決定し、そして特異的活性は合成の終わりに16.5 GBq/μmolであった。
【0193】
実施例5
腫瘍保有マウスにおけるインビボ画像化及び体内分布
材料及び方法
動物モデル: 雌性SCIDベージュマウス(6~8週齢、Charles River Laboratories)を、温度及び湿度を制御した室内で飼育し、そして通常食を維持した。LOXIMVI (ヒト黒色腫細胞株;PD-L1ポジティブ)又はSUDHL-6 (PD-L1ネガティブ)細胞を、10%ウシ胎仔血清を含むRPMI 1640培地を含有する完全成長培地において37℃5% CO2で培養した。成長培地を週に2又は3回交換し、そして細胞を、必要な場合は1:10の比で継代培養した。100μl PBS中の1x106 LOXIMVI細胞又は100μl PBS + グロースファクターリデューストマトリゲル(1:1)中の10x106 SUDHL-6細胞の皮下注射により右肩に腫瘍を移植した。腫瘍が100~400 mgの質量に達した場合に、それぞれLOXIMVI及びSUDHL-6細胞の注射後約5~7日及び3週にmicro-PET及びエクスビボ研究にマウスを使用した。
【0194】
PETデータ取得: マウスをイソフルラン(4~5%導入、1~3%維持)で麻酔し、尾静脈カテーテルの準備をし、そして専用の小動物PETスキャナー(microPET Focus220、Siemens Preclinical Solutions)に置いた。57Coを用いた20分の透過スキャンを得て、光子減衰及び散乱について補正した。次いで、[18F]AlF-NOTA-Z15171 0.4~0.7 MBq又は[18F]FBA-Z15171 0.03~0.3 MBqを尾静脈カテーテルを介して投与し、そしてPETデータを90分間集めた。
【0195】
エクスビボ体内分布測定: PET取得の直後に、マウスを安楽死させた。腫瘍、心臓、肺、脾臓、肝臓、腎臓、血液、血漿及び筋肉を集めて、ガンマカウンター(PerkinElmer)を使用して測定した。各マウスについて、体内分布測定値を標準取り込み値(SUV)の単位に変換した。関心領域(ROI)をPET画像において同定することができた全ての腫瘍上に描き、そして時間放射能曲線(TAC)を計算した。
【0196】
結果
それぞれ[
18F]AlF-NOTA-Z15171及び[
18F]FBA-Z15171の注射後の代表的なPET画像を
図6A~Bに示す。PD-L1ポジティブLOX腫瘍は、これらの画像において明瞭に見ることができたが、PD-L1ネガティブSUDHL6腫瘍は不可視であった[
18F]FBA-Z15171 (LOX異種移植マウスについてSUV = 3.1 ± 0.7)についての腎臓取り込みは、[
18F]AlF-NOTA-Z15171 (LOX異種移植マウスについてのSUV = 57 ± 10)よりも低かった。後者の腎臓トレーサー保持は、タンパク質の尿細管取り込みに起因するようであり、ここで[
18F]AlF標識は、Z変異体の切断後に捕捉される。反対に、肝臓取り込みは[
18F]FBA-Z15171について[
18F]AlF-NOTA-Z15171よりも高かった。
【0197】
注射の90分後のエクスビボ体内分布測定は、PET画像と一致していた(
図7A)。[
18F]AlF-NOTA-Z15171及び[
18F]FBA-Z15171のLOX腫瘍取り込みはおよそ同じであったが、腫瘍:血液比は[
18F]AlF-NOTA-Z15171についてより高く(
図7B)、[
18F]FBA-Z15171のより低いクリアランスを示していた。まとめると、結果は、Z変異体リガンドがPD-L1ポジティブ腫瘍をインビボで標的化する際に有効であり、特異的結合及び速いクリアランスを示したということを示す。
【0198】
実施例6
アカゲザルにおけるインビボ画像化
材料及び方法
絶食させたアカゲザルをケタミンで鎮静させた(10 mg/kg、筋内)。静脈内カテーテルを右及び左伏在静脈に挿入し、そして動物をプロポフォール麻酔で維持した(導入のために5 mg/kg及びスキャン手順の間中0.45 mg/kg/分)。プロポフォールの初期導入後に、動物を挿管し、そして酸素/空気混合物を約10 cm3/kg/呼吸、及び1分あたり23呼吸で供給して
維持した。動物に温度プローブ、パルスオキシメーター及び終末呼気CO2モニターを取り付けた。体温をK-モジュール加熱パッドを使用して維持した。全身輸液療法を、スキャン手順の間中、乳酸リンゲル液(10ml/kg/時 静脈内(i.v.))を用いて維持した。それぞれ[18F]AlF-NOTA-Z15171 167~199 MBq及び[18F]FBA-Z15171 42~106 MBqを2分間の注入として投与した。全身動的スキャンを、トレーサー注入の開始時から開始し、そしてSiemens Biograph 64 TPTV PET/CTスキャナーを使用して180分間取得した。全身再構成をPET/CTスキャナー業者提供ソフトウェアを使用して行った。PET画像解析を、カスタマイズしたMatlabベースのソフトウェアを使用して行った。
【0199】
結果
それぞれ[
18F]AlF-NOTA-Z15171及び[
18F]FBA-Z15171を投与されたアカゲザルの代表的な最大値投影画像を
図8A~Bに示し、そして平均トレーサー取り込みのグラフ(約120~180分)を
図8Cに示す。マウスにおけるように、[
18F]FBA-Z15171 (SUV 約30±4)の腎臓取り込みは、[
18F]AlF-NOTA-Z15171 (SUV 約114±9)についてより低く、一方で[
18F]FBA-Z15171はより高い肝臓取り込みを示した。リンパ節及び脾臓標的化が両方のトレーサーについて観察され、これはPD-L1発現と一致していた。
【0200】
実施態様の項目リスト
1. PD-L1結合モチーフBMを含むPD-L1結合ポリペプチドであって、該モチーフは:
i) ERTX4AX6WEIX10X11LPNLX16X17X18QX20GAFIX25X26LHD
[ここで、互いに独立して、
X4はI、M、V及びWから選択され;
X6はT及びVから選択され;
X10はM及びVから選択され;
X11はD及びQから選択され;
X16はN及びTから選択され;
X17はA及びSから選択され;
X18はG、R及びWから選択され;
X20はK及びRから選択され;
X25はD、N及びWから選択され;そして
X26はK及びSから選択される];
及び
ii) i)において定義される配列に対して少なくとも89%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列からなる、上記PD-L1結合ポリペプチド。
【0201】
2. 配列i)において、
X4はI、M、V及びWから選択され;
X6はT及びVから選択され;
X10はM及びVから選択され;
X11はD及びQから選択され;
X16はTであり;
X17はA及びSから選択され;
X18はG、R及びWから選択され;
X20はK及びRから選択され;
X25はD、N及びWから選択され;そして
X26はKである、
項目1に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0202】
3. 配列i)は、6つの条件I~VI:
I. X6はVである;
II. X16はTである;
III. X17はAである;
IV. X18はWである;
V. X25はNである;及び
VI. X26はKである、
の少なくとも3つを満たす、項目1又は2に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0203】
4. 配列i)は6つの条件I~VIの少なくとも4つを満たす、項目3に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0204】
5. 配列i)は6つの条件I~VIの少なくとも5つを満たす、項目4に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0205】
6. 配列i)は6つの条件I~VIの全てを満たす、項目5に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0206】
7. X6X17はVAである、項目1~6のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0207】
8. X6X10X17はVMA及びVVAから選択される、項目1~6のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0208】
9. X6X17X20はVAK及びVARから選択される、項目1~6のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0209】
10. 配列i)は、配列番号1~4からなる群より選択される配列における位置8から位置36の配列に対応する、項目1~9のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0210】
11. 配列i)は、配列番号1及び4からなる群より選択される配列における位置8から位置36の配列に対応する、項目10に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0211】
12. 配列i)は、配列番号1における位置8から位置36の配列に対応する、項目10又は11に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0212】
13. 配列i)は、配列番号2における位置8から位置36の配列に対応する、項目10に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0213】
14. 配列i)は、配列番号3における位置8から位置36の配列に対応する、項目10に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0214】
15. 配列i)は、配列番号4における位置8から位置36の配列に対応する、項目10又は11に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0215】
16. 前記PD-L1結合モチーフが、3ヘリックスバンドルタンパク質ドメインの一部を形成する、項目1~15のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0216】
17. 前記PD-L1結合モチーフが、前記3ヘリックスバンドルタンパク質ドメイン内で、相互接続ループと2つのらせんの一部を本質的に形成する、項目16に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0217】
18. 前記3ヘリックスバンドルタンパク質ドメインは、細菌受容体ドメインから選択される、項目17に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0218】
19. 前記3ヘリックスバンドルタンパク質ドメインは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来のプロテインAのドメイン又はその誘導体から選択される、項目18に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0219】
20. 結合モジュールBModを含む、項目1~19のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチドであって、該結合モジュールBModのアミノ酸配列が:
iii) K-[BM]-DPSQSXaXbLLXcEAKKLXdXeXfQ;
[ここで、
[BM]は、項目1~15のいずれか1項において定義されるPD-L1結合モチーフであり;
XaはA及びSから選択され;
XbはN及びEから選択され;
XcはA、S及びCから選択され;
XdはE、N及びSから選択され;
XeはD、E及びSから選択され;そして
XfはA及びSから選択される];及び
iv) iii)により定義される配列に対して少なくとも91%の同一性を有するアミノ酸配列
からなる群より選択される、上記PD-L1結合ポリペプチド。
【0220】
21. 配列iii)は、配列番号1~4からなる群より選択される配列における位置7から位置55の配列に対応する、項目1~20のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0221】
22. 配列iii)は、配列番号1及び4からなる群より選択される配列における位置7から位置55の配列に対応する、項目21に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0222】
23. 配列iii)は、配列番号1における位置7から位置55の配列に対応する、項目21又は22に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0223】
24. 配列iii)は、配列番号2における位置7から位置55の配列に対応する、項目21に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0224】
25. 配列iii)は、配列番号3における位置7から位置55の配列に対応する、項目21に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0225】
26. 配列iii)は、配列番号4における位置7から位置55の配列に対応する、項目21又は22に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0226】
27. v) YA-[BMod]-AP;
[ここで、[BMod]は、項目20~26のいずれか1項において定義されるPD-L1結合モジュールである];及び
vi) v)により定義される配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、項目1~26のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0227】
28. vii) FN-[BMod]-AP;
[ここで、[BMod]は、項目20~26のいずれか1項において定義されるPD-L1結合モジュールである];及び
viii) vi)により定義される配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、項目1~26のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0228】
29. ADNNFNK-[BM]-DPSQSANLLSEAKKLNESQAPK;
ADNKFNK-[BM]-DPSQSANLLAEAKKLNDAQAPK;
ADNKFNK-[BM]-DPSVSKEILAEAKKLNDAQAPK;
ADAQQNNFNK-[BM]-DPSQSTNVLGEAKKLNESQAPK;
AQHDE-[BM]-DPSQSANVLGEAQKLNDSQAPK;
VDNKFNK-[BM]-DPSQSANLLAEAKKLNDAQAPK;
AEAKYAK-[BM]-DPSESSELLSEAKKLNKSQAPK;
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLNDAQAPK;
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLNDSQAPK;
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAPK;
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAP;
AEAKFAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAPK;
AEAKFAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAP;
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLNDAQAPK;
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLSESQAPK;
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLSESQAP;
AEAKFAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLSESQAPK;
AEAKFAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLSESQAP;
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLSEAQAPK;
AEAKYAK-[BM]-QPEQSSELLSEAKKLSESQAPK;
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLESSQAPK;
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLESSQAP;
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLESAQAPK;
AEAKYAK-[BM]-QPEQSSELLSEAKKLESSQAPK;
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLSDSQAPK;
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLSDSQAP;
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLSDSQAPK;
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLSDAQAPK;
AEAKYAK-[BM]-QPEQSSELLSEAKKLSDSQAPK;
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAPK;
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLNDAQAPK;
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLSESQAPK;
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLSEAQAPK;
VDAKYAK-[BM]-QPEQSSELLSEAKKLSESQAPK;
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLESSQAPK;
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLESAQAPK;
VDAKYAK-[BM]-QPEQSSELLSEAKKLESSQAPK;
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLSDSQAPK;
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLSDSQAPK;
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLSDAQAPK;
VDAKYAK-[BM]-QPEQSSELLSEAKKLSDSQAPK;
VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLNKAQAPK;
AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLAEAKKLNKAQAPK;及び
ADAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAPK;
[ここで、[BM]は、項目1~15のいずれか1項において定義されるPD-L1結合モチーフである]
から選択されるアミノ酸配列を含む、項目1~28のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0229】
30. xvii) VDAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAPK;
[ここで、[BM]は、項目1~15のいずれか1項において定義されたPD-L1結合モチーフである];及び
xviii) xvii)において定義される配列に対して少なくとも89%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、項目1~29のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0230】
31. xix) AEAKFAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLSESQAPK;
[ここで、[BM]は、項目1~15のいずれか1項において定義されるPD-L1結合モチーフである];及び
xx) xix)において定義される配列に対して少なくとも89%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、項目1~29のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0231】
32. xxi) AEAKYAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAPK;
[ここで、[BM]は項目1~15のいずれか1項において定義されるPD-L1結合モチーフである];及び
xxii) xxi)において定義される配列に対して少なくも89%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、項目1~29のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0232】
33. xxiii) AEAKFAK-[BM]-DPSQSSELLSEAKKLNDSQAPK;
[ここで、[BM]は、項目1~15のいずれか1項において定義されるPD-L1結合モチーフである];及び
xxiv) xxiii)において定義される配列に対して少なくとも89%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、項目1~29のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0233】
34. 配列xvii)又はxxi)は、配列番号1~5からなる群より選択される配列における位置1から位置58の配列に対応する、項目1~33のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0234】
35. xvii)又はxxi)は、配列番号1、4及び5からなる群より選択される配列における位置1から位置58の配列に対応する、項目34に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0235】
36. 配列xvii)又はxxi)は、配列番号1及び5からなる群より選択される配列における位置1から位置58の配列に対応する、項目34又は35に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0236】
37. 配列xvii)は、配列番号1における位置1から位置58の配列に対応する、項目34~36のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0237】
38. 配列xvii)は、配列番号2における位置1から位置58の配列に対応する、項目34に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0238】
39. 配列xvii)は、配列番号3における位置1から位置58の配列に対応する、項目34に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0239】
40. 配列xvii)は、配列番号4における位置1から位置58の配列に対応する、項目34に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0240】
41. 配列xxi)は、配列番号5における位置1から位置58の配列に対応する、項目34~36のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0241】
42. PD-L1依存性シグナル伝達を遮断することができる、項目1~41のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0242】
43. 遮断の最大半量阻害濃度(IC50)が、多くとも1×10-8M、例えば多くとも7×10-9M、例えば多くとも5×10-9Mである、項目42に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0243】
44. PD-L1のPD-1との相互作用を遮断することができる、項目42又は43に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0244】
45. 相互作用のKD値が、多くとも1×10-6M、例えば多くとも1×10-7M、例えば多くとも5×10-8M、例えば多くとも1×10-9MであるようにPD-L1に結合することができる、項目1~44のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0245】
46. 相互作用のEC50値が、多くとも1×10-9M、例えば多くとも5×10-10M、例えば多くとも2×10-10MであるようにPD-L1に結合することができる、項目1~45のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0246】
47. 前記PD-L1がヒトPD-L1である、項目42~46のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0247】
48. C末端及び/又はN末端にさらなるアミノ酸を含む、項目1~47のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0248】
49. 前記さらなるアミノ酸が、ポリペプチドの製造、精製、インビボもしくはインビトでの安定化、カップリング又は検出を改善する、項目48に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0249】
50. それらのアミノ酸配列が同じあっても異なっていてもよい少なくとも2つのPD-L1結合ポリペプチド単量体単位を含む、多量体形態である項目1~49のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0250】
51. 前記PD-L1結合ポリペプチド単量体単位が一緒に共有結合でカップリングされている、項目50に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0251】
52. PD-L1結合ポリペプチド単量体単位が融合タンパク質として発現される、項目51に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0252】
53. 二量体形態である、項目50~52のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド。
【0253】
54. - 項目1~53のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチドからなる第一の部分;及び
- 所望の生物学的活性を有するポリペプチドからなる第二の部分
を含む、融合タンパク質又は結合体。
【0254】
55. 前記所望の生物学的活性が治療的活性である、項目54に記載の融合タンパク質又は結合体。
【0255】
56. 前記所望の生物学的活性が結合活性である、項目54に記載の融合タンパク質又は結合体。
【0256】
57. 前記所望の生物学的活性が酵素活性である、項目54に記載の融合タンパク質又は結合体。
【0257】
58. 前記結合活性が、融合タンパク質又は結合体のインビボ半減期を増加させるアルブミン結合活性である、項目56に記載の融合タンパク質又は結合体。
【0258】
59. 前記第二の部分が、連鎖球菌(streptococcal)プロテインG又はその誘導体のアルブミン結合ドメインを含む、項目58に記載の融合タンパク質又は結合体。
【0259】
60. 前記結合活性は、生物学的活性を遮断するように作用する、項目56に記載の融合タンパク質又は結合体。
【0260】
61. 第二の部分が治療的に活性なポリペプチドである、項目55に記載の融合タンパク質又は結合体。
【0261】
62. 第二の部分が免疫反応調整剤である、項目61に記載の融合タンパク質又は結合体。
【0262】
63. 第二の部分が抗癌剤である、項目61に記載の融合タンパク質又は結合体。
【0263】
64. 第二の部分が、ヒト内在性酵素、ホルモン、成長因子、ケモカイン、サイトカイン及びリンホカインからなる群より選択される、項目54~57及び60~63のいずれか1項に記載の融合タンパク質又は結合体。
【0264】
65. 第二がさらにリンカーを含む、項目54~64のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【0265】
66. 項目1~65のいずれか1項に記載の少なくとも1つのPD-L1結合ポリペプチド及び少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントを含む複合体。
【0266】
67. 前記少なくとも1つの抗体又は抗原結合フラグメントが、全長抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fcフラグメント、Fvフラグメント、単鎖Fv (scFv)フラグメント、(scFv)2及びドメイン抗体からなる群より選択される、項目66に記載の複合体。
【0267】
68. 前記少なくとも1つの抗体又はその抗原結合フラグメントが、全長抗体、Fabフラグメント及びscFvフラグメントからなる群より選択される、項目67に記載の複合体。
【0268】
69. 前記少なくとも1つの抗体又は抗原結合フラグメントが全長抗体である、項目67に記載の複合体。
【0269】
70. 前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである、項目67~69のいずれか1項に記載の複合体。
【0270】
71. 前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、ヒト抗体、ヒト化抗体及びキメラ抗体、並びにそれらの抗原結合フラグメントからなる群より選択される、項目66~70のいずれか1項に記載の複合体。
【0271】
72. 前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、ヒトもしくはヒト化抗体、又はその抗原結合フラグメントである、項目71に記載の複合体。
【0272】
73. 前記PD-L1結合ポリペプチドが、前記抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖又は軽鎖のC末端又はN末端のいずれかに結合されている、項目66~72のいずれか1項に記載の複合体。
【0273】
74. リンカーをさらに含む、項目66~73のいずれか1項に記載の複合体。
【0274】
75. 前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、抗原、例えば感染性疾患に関連する抗原、又は癌に関連する抗原に対して親和性を有する、項目66~74のいずれか1項に記載の複合体。
【0275】
76. 前記第二の部分又は抗体もしくはその抗原結合フラグメントが、PD-1、CTLA-4、T細胞免疫グロブリン及びムチン含有タンパク質-3(TIM-3)、ガレクチン-9(GAL-9)、リンパ球活性化遺伝子-3 (LAG-3)、PD-L2、B7ホモログ3(B7-H3)、B7ホモログ4(B7-H4)、T細胞活性化のVドメインIg抑制因子(VISTA)、癌胎児抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)、B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)、ヘルペスウイルス進入メディエーター(HVEM)、キラー免疫グロブリン受容体(KIR)、アデノシン、アデノシンA2a受容体(A2aR)、CD200-CD200R及びT細胞Ig及びITIMドメインの阻害剤からなる群より選択される、項目54~65のいずれか1項に記載の融合タンパク質もしくは結合体、又は項目66~75のいずれか1項に記載の複合体。
【0276】
77. 前記第二の部分、抗体又はその抗原結合フラグメントが、ニボルマブ、ピディリズマブ、BMS 936559、MPDL328OA及びペンブロリズマブからなる群より選択される阻害剤のような、ペンブロリズマブのような、PD-1の阻害剤である、項目76に記載の融合タンパク質、結合体又は複合体。
【0277】
78. 前記第二の部分、抗体又はその抗原結合フラグメントが、ベラタセプト、アバタセプト及びイピリムマブからなる群より選択される阻害剤のような、イピリムマブのような、CTLA-4の阻害剤である、項目76に記載の融合タンパク質、結合体又は複合体。
【0278】
79. 前記第二の部分又は抗体もしくはその抗原結合フラグメントが、CD134、CD40、4-1BB及びグルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)のアゴニストからなる群より選択される、項目54~65のいずれか1項に記載の融合タンパク質もしくは結合体、又は項目66~75のいずれか1項に記載の複合体。
【0279】
80. 標識をさらに含む、項目1~79のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は複合体。
【0280】
81. 前記標識が、蛍光色素及び金属、発色色素、化学発光化合物及び生物発光タンパク質、酵素、放射性核種、放射性粒子及びプレターゲティング認識タグからなる群より選択される、項目80に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は複合体。
【0281】
82. システイン残基のチオール基又はリジン残基のアミノ基を介してPD-L1結合ポリペプチドに結合されたポリアミノポリカルボキシレートキレート剤により提供されるキレート環境を含む、項目81に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は複合体。
【0282】
83. 例えば、ステプト(stept)(アビジン)/ビオチン、オリゴヌクレオチド/相補的オリゴヌクレオチド、例えばDNA/相補的DNA、RNA/相補的RNA、ホスホロチオエート核酸/相補的ホスホロチオエート核酸並びにペプチド核酸/相補的ペプチド核酸及びモルホリノ/相補的モルホリノから選択される、プレターゲティング部分の相補対のプレターゲティング認識タグ形成部分を含む、項目80に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は複合体。
【0283】
84. 前記プレターゲティング認識タグがペプチド核酸タグである、項目83に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は複合体。
【0284】
85. 前記プレターゲティング認識タグが、10~20量体ペプチド核酸配列、例えば15量体ペプチド核酸配列である、項目84に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は複合体。
【0285】
86. 項目1~79のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0286】
87. 項目86に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【0287】
88. 項目87に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【0288】
89. 項目1~79のいずれか1項に記載のポリペプチドを製造する方法であって、- 項目87に記載の宿主細胞を、該発現ベクターからの該ポリペプチドの発現を許容する条件下で培養すること、及び
- 該ポリペプチドを単離すること
を含む、上記方法。
【0289】
90. 項目1~85のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は複合体、及び少なくとも1つの薬学的に許容しうる賦形剤又は担体を含む組成物。
【0290】
91. 免疫反応調整剤及び抗癌剤から選択される薬剤のような、少なくとも1つのさらなる活性薬剤をさらに含む、項目90に記載の組成物。
【0291】
92. 経口、局所、静脈内、腹腔内、皮下、肺、経皮、筋内、鼻腔内、頬側、舌下又は坐剤投与のための、例えば局所投与のための、項目1~85のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体もしくは複合体又は項目90~91のいずれか1項に記載の組成物。
【0292】
93. 薬剤、診断用薬及び/又は予後用薬としての使用のための、項目1~85のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体もしくは複合体又は項目90~91のいずれか1項に記載の組成物。
【0293】
94. 薬剤としての使用のための、項目93に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物。
【0294】
95. 診断用薬及び/又は予後用薬としての使用のための、項目93に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物。
【0295】
96. インビボでPD-L1機能を調節する、項目94に記載の使用のためのPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物。
【0296】
97. PD-L1関連障害の処置、予後又は診断における、項目94~96のいずれか1項に記載の使用のためのPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物。
【0297】
98. 前記PD-L1関連障害が、感染性疾患及び癌からなる群より選択される、項目97に記載の使用のためのPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物。
【0298】
99. 前記PD-L1関連障害が、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)及びC型肝炎ウイルス(HCV)からなる群より選択される慢性ウイルス感染のような、慢性ウイルス感染のような、感染性疾患である、項目98に記載の使用のための、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物。
【0299】
100. 前記PD-L1関連障害が癌である、項目98に記載の使用のための、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物。
【0300】
101. 前記癌が:
- 黒色腫及び非黒色腫皮膚癌(NMSC)のような皮膚癌;小細胞肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)のような肺癌;頭頚部癌;腎細胞癌(RCC);膀胱癌;乳癌;結腸直腸癌;胃癌;卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;神経膠腫;神経膠芽腫;肝臓癌;胆嚢癌;甲状腺癌;骨癌;子宮頸癌;子宮癌;外陰癌;子宮内膜癌;精巣癌;腎臓癌;食道癌;脳/CNSの癌;神経の癌;中皮腫;肉腫;小腸腺癌;及び小児悪性腫瘍からなる群より選択される、固形腫瘍を示す癌;並びに
- 非固形腫瘍を示す癌、例えば、白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病及び多発性骨髄腫
からなる群より選択される癌である、項目100に記載の使用のためのPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物。
【0301】
102. 前記癌が、黒色腫、NSCLC、頭頚部癌、RCC及び膀胱癌からなる群より選択される癌のような、黒色腫、NSCLC、頭頚部癌、RCC、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌及び前立腺癌からなる群より選択される、項目101に記載の使用のためのPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物。
【0302】
103. PD-L1関連障害の処置方法であって、有効量の、項目1~85のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体もしくは複合体、又は項目90~91のいずれか1項に記載の組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む、上記方法。
【0303】
104. 前記PD-L1関連障害が、感染性疾患及び癌からなる群より選択される、項目103に記載の方法。
【0304】
105. 前記PD-L1関連障害が、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)及びC型肝炎ウイルス(HCV)からなる群より選択される慢性ウイルス感染のような、慢性ウイルス感染のような、感染性疾患である、項目104に記載の方法。
【0305】
106. 前記PD-L1関連障害が:
- 黒色腫及び非黒色腫皮膚癌(NMSC)のような皮膚癌;小細胞肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)のような肺癌;頭頚部癌;腎細胞癌(RCC);膀胱癌;乳癌;結腸直腸癌;胃癌;卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;神経膠腫;神経膠芽腫;肝臓癌;胆嚢癌;甲状腺癌;骨癌;子宮頸癌;子宮癌;外陰癌;子宮内膜癌;精巣癌;腎臓癌;食道癌;脳/CNSの癌;神経の癌;中皮腫;肉腫;小腸腺癌;及び小児悪性腫瘍からなる群より選択される、固形腫瘍を示す癌;並びに
- 非固形腫瘍を示す癌、例えば、白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病及び多発性骨髄腫
からなる群より選択される癌のような癌である、項目104に記載の方法。
【0306】
107. 前記癌が、黒色腫、NSCLC、頭頚部癌、RCC及び膀胱癌からなる群より選択されるような、黒色腫、NSCLC、頭頚部癌、RCC、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌及び前立腺癌からなる群より選択される、項目106に記載の方法。
【0307】
108. - プレターゲティング認識タグを含む、項目83~85のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体もしくは複合体と、又はこのようなPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体もしくは複合体を含む組成物と、被験体を接触させる工程、及び
- 放射性核種を含む相補的プレターゲティング部分と被験体を接触させる工程
を含む、項目106~107のいずれか1項に記載の方法。
【0308】
109. PD-L1を含有すると疑われるサンプルを提供すること、該サンプルを、項目1~85のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体もしくは複合体、又は項目90~91のいずれか1項に記載の組成物と接触させること、及びPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物の結合を検出して、サンプル中のPD-L1の存在を示すことを含む、PD-L1を検出する方法。
【0309】
110. 被験体におけるPD-L1の存在を決定するための方法であって:
a) 被験体、又は被験体から単離されたサンプルを、項目1~85のいずれか1項に記載のPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体もしくは複合体又は項目90~91のいずれか1項に記載の組成物と接触させる工程、及び
b) 該被験体又は該サンプルに結合した、PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体又は組成物の量に対応する値を得る工程
を含む、上記方法。
【0310】
111. 前記PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体もしくは複合体は、項目83~85のいずれか1項に記載されるものであり、又は前記組成物は、このようなPD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体もしくは複合体を含み、そして工程a)は、被験体を、放射性核種標識のような検出可能な標識で標識された相補的プレターゲティング部分と接触させることをさらに含む、項目110に記載の方法。
【0311】
112. 前記値を参照と比較する工程をさらに含む、項目110又は111に記載の方法。
【0312】
113. 前記被験体がヒト被験体のような哺乳動物被験体である、項目103~112のいずれか1項に記載の方法。
【0313】
114. インビボで行われる、項目109~112のいずれか1項に記載の方法。
【0314】
115. 医用画像化のための、項目114に記載の方法であって、
- 工程a)は、前記PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体又は組成物の哺乳動物被験体への全身投与を含み;
- 前記PD-L1結合ポリペプチド、融合タンパク質、結合体、複合体、組成物又はプレターゲティング部分は、医用画像化に適した放射性核種標識を含み;かつ
- 工程b)は、医用画像化機器を使用して被験体の身体の少なくそもt一部の1つ又はそれ以上の画像を得ることを含み、該画像は、体内の放射性核種の存在を示す、上記方法。
【配列表】