(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】繊維プリフォームの鋳造および固化のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
B29B 11/16 20060101AFI20220127BHJP
B29C 70/44 20060101ALI20220127BHJP
B29K 105/06 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
B29B11/16
B29C70/44
B29K105:06
(21)【出願番号】P 2018559722
(86)(22)【出願日】2017-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2017061240
(87)【国際公開番号】W WO2017194640
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-04-01
(32)【優先日】2016-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506304026
【氏名又は名称】ロックツール
(74)【代理人】
【識別番号】100074169
【氏名又は名称】広瀬 文彦
(72)【発明者】
【氏名】ファージェンブルム ホセ
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-218442(JP,A)
【文献】特表2011-513529(JP,A)
【文献】特開2013-136193(JP,A)
【文献】特開2013-154625(JP,A)
【文献】特開2010-120347(JP,A)
【文献】国際公開第2015/155369(WO,A1)
【文献】特開2014-116293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08-15/14
C08J 5/04-5/10;5/24
B29C 70/00-70/88
B29C 33/00-33/76
B29C 39/00-39/44
B29C 43/00-43/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーで予め含浸された繊維プリフォームの
硬化/圧密化(強化)のための装置において、前記装置は、以下の構成において特徴付けられる:
a.加熱または冷却手段を持たない金型であって、繊維プリフォームの形状を再現する成形面及び取付接点を有する金型と;
b.金型上におけるプリフォームの密封被覆体(封入体)と;
c.繊維プリフォームを内包する前記被覆体(封入体)内部への真空供給(適用)手段と;
d.誘導加熱手段と、位置決めおよび前記金型と熱ブロックとの間の熱伝達のために前記金型の前記取付接点と協動(応動)する受容(受入)接点と、を有する熱ブロックと、
からなり、前記熱ブロックは、
di.受容(受入)点と加熱接点と、を含む支持体と;
dii.誘導加熱手段により加熱された蓄熱器と;
diii.前記加熱接点を通して前記蓄熱器の熱を前記支持体に伝達する手段と
からなることを特徴とする装置。
【請求項2】
熱ブロックが冷却手段を有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記装置が、
e.密封筐体と、前記筐体を前記金型上にロックする手段と;
f.密封筐体内の圧力を上げるための手段
を有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記冷却手段が、支持体内における熱伝達流体の循環のための回路を装備することを特徴とする請求項
1記載の装置。
【請求項5】
前記冷却手段が、蓄熱器の周りに熱伝達流体の循環のための回路を装備することを特徴とする請求項
4記載の装置。
【請求項6】
前記加熱接点が、適合シートを装備することを特徴とする請求項
1記載の装置。
【請求項7】
前記金型の取付接点が、適合シートを装備することを特徴とする請求項1乃至請求項
6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項
7のいずれかに記載の装置を実装して、ポリマーで予め含浸された繊維プリフォームを硬化または圧密化(強化)する方法において、前記方法は、以下の工程において特徴付けられる:
i.金型上に最初に積層(堆積)されたプリフォームを被覆(封入)する工程と;
ii.被覆体(封入体)の内部を真空にする工程と;
iii.金型および被覆(封入)されたプリフォームを熱ブロックに移送する工程と;
iv.熱ブロックを加熱および冷却することでプリフォームの温度を制御することによって、プリフォームに硬化および圧密(強化)に係る熱サイクルを適用する工程と
からなることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項3記載の装置を実装した前記方法が、工程(ii)と(iv)の間に、密封筐体内の圧力を増加させる工程を含むことを特徴とする請求項
8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維プリフォームを鋳造しかつ固化させるための装置および方法に関する。本発明は、熱硬化性または熱可塑性ポリマーが予め含浸された繊維層の積層構造からなるプリフォームの圧密(強化 consolidation)/硬化(curing)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術によれば、プリフォームを構成する層は、手作業で、または積層(堆積)機によって、製造する部品の形状を再現する金型上に積層(堆積)される。熱硬化性または熱可塑性ポリマーが含浸された層の積層(堆積)技術は、従来技術から知られており、更なる開示はされていない。積層(堆積)工程の終わりに、このようにして得られた積層構造および金型は、ブランケット(覆い、シート)を用いた密封手段に被覆(封入)される。繊維プリフォームを内包する前記ブランケット(覆い、シート)の内側に真空が供給され、プリフォーム、金型および被覆体(封入体)の全体を、圧密(強化)または硬化の温度まで、加圧下で加熱するために、炉またはオートクレーブのいずれかに配置(搭載)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オートクレーブおよび炉は何れも、製造工場内の生産設備の一体形であることが多く、特に硬化する前における樹脂の開放時間が限定される熱硬化性マトリックス複合材の場合、生産フローのボトルネック(要所)を構成する。更に、ツーリング(生産工程・手段)の全体の温度の上昇、および、硬化/圧密(強化)温度におけるプリフォームは、そのような手段を使用すると時間がかかることである。
【0005】
また、独自の加熱手段を有する多くの独立ツールが開発されている。前記装置は、電気抵抗、オイル循環導管、またはインダクタの形式からなる統合加熱手段を備える。しかしながら、これらの加熱手段をツールに組み込むことは、機械加工の観点からコストが掛かる。
【0006】
国際公開2015/155369号では、織物プリフォーム、自律加熱および交換可能な金型を有する、繊維プリフォームの硬化/圧密(強化)のための装置が開示されている。この従来技術の装置は、特に、大きな部品の製造に適しているが、その表面が約1m2以下かそれと同等のより小さい部品の加熱および冷却の手段を一体化する構造(構想)においては複雑なままである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、先行技術の欠点を改善することを目的としており、この目的のために、ポリマーで予め含浸された繊維プリフォームの効果/圧密化(強化)のための装置に関し、以下の構成からなる:
a.加熱または冷却手段を持たない金型(die)であって、繊維プリフォームの形状を再現する成形面(molding face)及び取付接点(assembly interface)を有する金型と;
b.金型上におけるプリフォームの密封被覆体(封入体、bagging)と;
c.繊維プリフォームを内包する前記被覆体(封入体)内部への真空供給(適用)手段と;
d.誘導加熱手段と、位置決めおよび前記金型と熱ブロック(thermal block)との間の熱伝達のために前記金型の前記取付接点と協動(応動)する受容(受入)接点(receiving interface)と、を有する熱ブロックと、からなる。
【0008】
すなわち、加熱手段は、金型によって支持されず、製造が簡易のままである。取付接点は、複数の工具に対して同じ熱ブロックを使用することを可能にする。
【0009】
本発明は、有利には、個々にまたは任意の技術的に動作可能な組み合わせで考慮され得る以下の実施例、および変形実施例、によって実施(実装)される。
【0010】
有利には、熱ブロックは冷却手段を有する。熱硬化性樹脂で予め含浸された繊維プリフォームの硬化に特に適した実施例によれば、本発明に係る装置は、以下の構成を含む:
e.密封筐体(sealed enclosure)と、前記筐体を前記金型上にロックする手段と;
f.密封筐体内の圧力を上げるための手段。
【0011】
有利には、本発明に係る装置の熱ユニット(ブロック)は、以下の構成からなる:
di.受容(受入)接点と加熱接点(heating interface)と、を含む支持体(support)と;
dii.誘導加熱手段により加熱された蓄熱器と;
diii.前記加熱接点を通して前記蓄熱器の熱を前記支持体に伝達する手段。
【0012】
この実施例は、誘導加熱の利点を同時に享受しながら、熱ユニット(ブロック)の加熱手段に供給するための電力を制限することを可能にする。
【0013】
有利には、冷却手段は、支持体内における熱伝達流体の循環のための回路を装備する。
【0014】
有利には、冷却手段は、蓄熱器の周りに熱伝達流体の循環のための回路を装備する。
【0015】
有利には、加熱接点は、適合シート(構造シート)を装備する。したがって、前記適合シートは、加熱接点における完全な機械的接触を提供し、蓄熱器と支持体との間の熱接触抵抗を低減する。
【0016】
同様に、金型取付接点は、適合シート(構造シート)を装備する構成である。
【0017】
本発明はまた、本発明のそのいずれかの実施例による装置を実装して、ポリマーで予め含浸された繊維プリフォームを硬化または圧密化(強化)する方法にも関し、該方法は、以下の工程から構成される:
i.金型上に最初に積層(堆積)されたプリフォームを被覆する(封入する)工程と;
ii.被覆体(封入体)の内部を真空にする工程と;
iii.金型および被覆(封入)されたプリフォームを熱ブロックに移送する工程と;
iv.熱ブロックを加熱および冷却することでプリフォームの温度を制御することによって、プリフォームに硬化および圧密(強化)に係る熱サイクルを適用する工程。
【0018】
熱硬化性ポリマーを含浸させた繊維プリフォームの硬化に適した実装によれば、本発明に係る方法は、工程(ii)と(iv)の間に、密封筐体内の圧力を増加させる工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明を以下の好ましい実施例に従って説明するが、何らの限定をするものではない。
図1を参照すると、本発明に係る装置の断面図が、該装置のすべてのオプションとなる特徴を取りまとめた一実施例として示されている。
図1Aは冷却段階、
図1Bは加熱段階を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この典型的な実施例によれば、本発明に係る装置は、熱硬化性または熱可塑性ポリマーで予め含浸された繊維層の積層構造からなる繊維プリフォーム(100)が上に積層(堆積)された金型(110)からなる。前記プリフォーム(100)は、ブランケット(覆い、シート)(120)によって前記金型(110)の上に被覆(封入)され、プリフォーム(100)を構成する金型(110)とブランケット(覆い、シート)を密封するために密封手段(121)を使用している。この典型的な実施例によれば、金型(110)は、この空間へ開口する導管(111)を備え、この導管は、この空間を真空にする吸引ポンプ(図示せず)に接続されている。プリフォームを囲む密封筐体(130)は、適切な取付手段(132)によって金型に固定される。前記筐体は、前記筐体内の圧力を増加させるためポンプに接続された導管(132)を装備する。したがって、金型(110)を有するこの上部機構(アセンブリ)は、被覆(封入)手段および密封筐体を備える独立した機構(アセンブリ)を構成し、繊維プリフォームの圧密(強化)/硬化に対応する圧力サイクルの実施(実装)を可能にする。
【0021】
繊維プリフォームの熱圧密(強化)/硬化サイクルは、上部機構(アセンブリ)を熱ブロック上に配置(搭載)することによって引き起こされるが、この熱ブロックは、この実施例においては、以下の構成からなる:
- 例えばアルミニウム合金のような、高い熱伝導率を有する材料で構成される支持体(140)と;
- 例えばコンクリートまたはセラミックのような、好ましくは磁場に対して透過的な耐熱性を有する材料で作られたベース(150)と;
- 誘導加熱により加熱可能な材料からなる蓄熱器(160)と、を備えた構成からなる。
【0022】
ベースは、前記ベースに形成されたキャビティ内を循環する1つ以上のインダクタ(151)を有する誘導回路を装備し、典型的には10kHzから100kHzの間の幅からなる高周波電流発生器に接続される。
【0023】
支持体(140)は、前記支持体を冷却することを可能とする熱伝導流体を循環させるための伝送管(141)を装備する。金型は、同じ形状または異なる形状に対応する複数の上部機構(アセンブリ)が熱ブロック上に配置(搭載)できるように、標準プロファイルのインターフェース(標準的な外形の接点)を介して支持体(140)に接続される。金型の取付面は、支持体(140)の受容面上に前記金型を配置するものであり、有利には、適合シート(構造シート)(112)を装備する。前記適合シート(構造シート)は、例えば、金型の取付面にろう付けされ、銅やニッケルなどのように高い熱伝導率を有するが可鍛性を有する材料からなり、これにより、前記適合シート(構造シート)は、金型の取付面と支持体(140)の受容面との間の形状のわずかな違いを補償・補正する。
【0024】
支持体は、受容側の反対側(面)に、蓄熱体と接触可能な加熱面を装備する。有利には、加熱面は、前記加熱面にろう付けされ、前記蓄熱器(160)と前記支持体(140)の加熱面との間の形状のわずかな違いを補償するのに適した適合シート(構造シート)(142)を装備する。
図1Aに示すように、加熱がない場合、蓄熱器(160)は加熱面とは接触していない。しかしながら、前記蓄熱器(160)は、インダクタを介して既知の保持温度に維持される。蓄熱器(160)と加熱面との間の接触抵抗は高く、蓄熱器(160)と支持体(140)との間の熱伝達は少ない。
【0025】
図1Bに示すように、加熱の進行中に、蓄熱器の温度は上昇し、その結果、熱膨張して支持体(140)の加熱面と接触する。接触抵抗は低下し、蓄熱器はその熱を支持体に伝達する。前記蓄熱器(160)は、本発明に係る装置において、構造的機能を有さない。したがって、その構成は、誘導加熱に対する応答と、その熱を支持体(140)に伝達する能力とを最大化するように選択される。
【0026】
ある特定の実施例(詳細Z)によれば、前記蓄熱器は多孔性構造であり、各孔(165)は、潜在転移熱を有する相変化物質で充填されている。有利には、相変化物質は、その転移温度が蓄熱器の保持温度に近くなるように選択される。一例として、保持温度が200℃程度である場合、相変化物質は、例えば、ポリオールのような有機物質である。保持温度がより高く、例えば約400℃以上である場合、相変化物質は、例えば塩である。これらの実施例によれば、相変化物質は、潜在転移熱を吸収することにより、低温での固体状態から高温での液体状態に変化する。高温相から低温相に移行することにより、相変化物質は固化し、前記潜在転移熱を復元する。多孔性構造と相変化物質の存在との組み合わせにより、保持温度で維持される際に、加熱温度まで急速加熱する能力を維持しながら、蓄熱器(160)の見かけの熱慣性を増加させることが可能になる。
【0027】
金型、ひいてはプリフォームは、支持体の伝送管(141)内の熱伝導流体の循環によって冷却される。有利には、ベース(150)は、蓄熱器(160)の周囲に熱伝導流体を供給するための導管(152)を備え、加熱段階の後にその保持温度まで冷却を加速し、金型を要求温度で維持する。