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特許6990695改善されたシリンジ保持力を有する自動注射装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】改善されたシリンジ保持力を有する自動注射装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
A61M5/20 510
A61M5/20 570
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019507820
(86)(22)【出願日】2017-06-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 FR2017051565
(87)【国際公開番号】W WO2018033667
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-06-05
(31)【優先権主張番号】1657764
(32)【優先日】2016-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519009817
【氏名又は名称】ヌメラ ラ ヴェルピリエール
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】デュガン パスカル
(72)【発明者】
【氏名】スタンプ ケヴィン
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-524792(JP,A)
【文献】国際公開第2011/012849(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/081103(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/081133(WO,A1)
【文献】特表2014-503302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・ エンドスリーブ(40)と、
・ エンドスリーブ(40)に対して摺動自在に取り付けられ、注射針(18)とこの注射針(18)を保護するためのキャップとを有する注射シリンジ(14)を保持するようになされたシリンジ支持体(28)と、
を備えた自動注射装置(13)であって、
少なくとも2つのロック要素(44)からなるメンブレンを備え、ロック要素(44)には注射シリンジ(14)の肩部(24)と協働するようになされた制限停止部(48)が形成されており、ロック要素(44)が、注射シリンジ(14)を保護するキャップの通過を可能にする配置、すなわちロック要素(44)が互いに離れ、制限停止部(48)同士の間隔がキャップを通過させうるように十分に広げられた配置と、注射シリンジ(14)の固定を可能にする配置、すなわちロック要素(44)が互いに近づき、制限停止部(48)同士の間隔が、制限停止部(48)および肩部(24)が協働して注射シリンジ(14)の遠位方向への移動を固定しうるように十分に狭められた配置との間でエンドスリーブ(40)内を径方向に摺動するように取り付けられている自動注射装置(13)。
【請求項2】
ロック要素(44)が注射装置(13)から引き抜かれるのをエンドスリーブ(40)と協働して防止するための可撓性逆止タブ(82)を備えている請求項1に記載の自動注射装置(13)。
【請求項3】
-ロック要素(44)に、ロック要素(44)がキャップの通過を可能にする通過配置から注射シリンジ(14)の遠位方向への移動を固定する固定配置へ半径方向の力を受ける前に早まって動くのを防止するための、エンドスリーブ(40)の相補面(90)を擦るようになされた突出面(88)が設けられている請求項1または2に記載の自動注射装置(13)。
【請求項4】
-エンドスリーブ(40)はシリンジ支持体(28)が内部を摺動する略管状の制御部材(36)の遠位端に固定され、この制御部材(36)は外側ケーシング(52)内に入れ子式に取り付けられ、ロック要素(44)には傾斜部(56)が設けられており外側ケーシング(52)が遠位方向へ移動する時に、外側ケーシング(52)の遠位端が傾斜部(56)と協働することでロック要素(44)を半径方向内側へ押し込み、ロック要素(44)がキャップを通過させうる通過配置から注射シリンジ(14)を固定する配置に移動しうるようになされている請求項1~3のいずれか一項に記載の自動注射装置(13)。
【請求項5】
複数のピン(58)が制御部材(36)内に摺動自在に取り付けられ、これらのピン(58)は戻り手段(64)によってロック要素(44)の面(60)に押し付けられ、各ロック要素(44)の面(60)にはロック要素(44)をキャップを通過させうる通過配置または注射シリンジ(14)の遠位方向への移動を固定しうる固定配置に保持するハードポイントが形成されるように凹所(62)が設けられている請求項4に記載の自動注射装置(13)。
【請求項6】
戻り手段はシリンジ支持体(28)における遠位側の面(68)とピン(58)から側方に突出した肩部(66)の近位側の面との間に収容され、戻り手段によってシリンジ支持体(28)が制御部材(36)の近位端に弾性的に戻るようになされている請求項5に記載の自動注射装置(13)。
【請求項7】
制御部材(36)および外側ケーシング(52)は、制御部材(36)が外側ケーシング(52)に対して1つの方向に摺動するのを防止する逆止ロック手段(72)を有している請求項4~6のいずれか一項に記載の自動注射装置(13)。
【請求項8】
逆止ロック手段(72)は、外側ケーシング(52)に形成されたノッチ(76)と協働する制御部材(36)のタブ(74)を有している請求項7に記載の自動注射装置(13)。
【請求項9】
ロック要素(44)の制限停止部(48)は、これらのロック要素(44)の凸状面(50)によって部分的に画定されている請求項1~8のいずれか一項に記載の自動注射装置(13)。
【請求項10】
シリンジ支持体(28)は注射シリンジ(14)を保持し、注射シリンジ(14)はシリンジ本体(16)を有し、シリンジ本体(16)の遠位端に注射針(18)が担持され、ロック要素(44)の制限停止部(48)と協働するようになされた注射シリンジ(14)の肩部(24)によってシリンジ本体(16)の遠位端が画定されるようになされている請求項1~9のいずれか一項に記載の自動注射装置(13)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体用、特に医薬品用の自動注射装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
自動注射装置は、一般に、注射を必要とする水剤の自動投与に使用される医療装置である。これらの装置は、特に、例えば、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、糖尿病に罹患している、またはアレルギーの場合にアナフィラキシーショックを受けている人が、自分自身で一回分の量の薬品を注射することを可能にする。
【0003】
自動注射装置の例は、米国特許第8734402号明細書に記載されている。この装置は注射シリンジを備え、注射シリンジは、注射される液体製品を収容し、針およびシリンジ支持体を有している。一般的には、装置を患者の皮膚に短時間押し付けて針を皮膚に突き刺し、続いて液体を注入し、次に、針が誰かを傷つけないように装置内に針を引っ込めるようになされていればよい。
【0004】
より正確には、装置が、注射シリンジを収容するように構成されたシリンジ支持体を備えていることで、装置を操作する間シリンジがシリンジ支持体内にしっかりと取り付けられる。このシリンジ支持体は2つの半管状半殻体からなり、注射シリンジが内側にはめ込まれた際に同時に組み立てられ、シリンジの周囲に管状殻体を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第8734402号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
注射シリンジは、その一方の端部にカラーを備え、他方の端部に針を保護するためのキャップ、例えば硬質針シールド(RNS)を備える。保護キャップの直径は、多くの場合、注射シリンジ本体の直径よりも大きくなされている。
【0007】
シリンジを収容するシリンジ支持体は、シリンジの中央部分の外径に近い内径を有する略管状の形状とされる。カラーとキャップはシリンジの中央部より大きく、したがってシリンジ支持体の内径より大きいため、シリンジを形成する2つの半殻体が組み立てられた後にシリンジをシリンジ支持体に挿入することは必ずしも可能ではない。しかしながら、一般に、注射シリンジは自動注射装置の製造者によってではなく製薬研究室によって自動注射装置に組み立てられるので、注射シリンジの自動注射装置への組み立てが簡単になると、製薬研究室は複雑な装置を取得する必要がなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特に、自動注射装置における注射シリンジの組み立てが単純化されている自動注射装置を提供することを目的とする。
【0009】
そして、本発明は以下を備える自動注射装置に関する。
・ エンドスリーブと、
・ エンドスリーブに対して摺動自在に取り付けられ、注射針とこの注射針を保護するためのキャップとを有する注射シリンジを保持するようになされたシリンジ支持体と、
を備えた自動注射装置であって、
自動注射装置は、少なくとも2つのロック要素からなるメンブレンを備え、ロック要素は、注射シリンジを保護するキャップの通過を可能にする配置、すなわち注射シリンジの肩部と協働するようになされたロック要素の制限停止部が互いに離れた配置と、注射シリンジの固定を可能にする配置、すなわちロック要素の制限停止部が互いに向かって動いた配置との間でエンドスリーブ内を実質的に径方向に摺動するように取り付けられている。
【0010】
したがって、そのメンブレンは保護キャップの通過を可能にする配置にすることができるので、保護キャップを最初に挿入し、注射シリンジをシリンジ支持体の一端から軸方向に挿入することによって、保護キャップを担持する注射シリンジを注射装置の一部に組み立てることができる。その結果、注射シリンジを設置した後にシリンジ支持体を組み立てる必要がなくなり、注射シリンジをシリンジ支持体に導入する前に、または、2つの半殻体から構成されないシリンジ支持体を使用することなく、シリンジ支持体を形成する2つの半殻体を組み立てることができる。
【0011】
さらに、注射シリンジがカラーによって保持される際、カラーは大きな力に耐えるのに十分な強度がないため、注射に関わる軸方向の力は制限されなければならない。しかしながら、本発明では、注射針の基部に位置する注射シリンジの肩部によって注射シリンジを保持するようにメンブレンを構成することができる。この構成では、注射シリンジにかかる軸方向の力は、針とは反対側のシリンジ本体の端部に位置するカラーには伝達されない。したがって、特に硬いばねを使用することを検討することが可能になり、それにより高粘度の製品を注入することが可能になる。特に、圧縮位置において20ニュートン、さらには50ニュートン、さらには80ニュートン以上の力を有する注射ばねを使用することができる。カラーを備えていない注射シリンジを使用することもでき、また、注射シリンジを液体を収容するためのカートリッジ形状とすることもできる。
【0012】
注射装置の異なる実施形態に対応する他の任意選択の特徴によれば、
・ ロック要素は、ロック要素が注射装置から引き抜かれるのをエンドスリーブと協働して防止するための可撓性逆止タブを備え、
・ ロック要素には、ロック要素がそれらの通過配置からそれらの固定配置へ早まって動くのを防止するためにエンドスリーブの相補面を擦るようになされた突出面が設けられ、
・ エンドスリーブは、シリンジ支持体が内部を摺動する略管状の「制御」部材の遠位端に固定され、この制御部材は外側ケーシング内に入れ子式に取り付けられ、制御部材の外側ケーシングに対する相対運動によって自動注射装置の作動が制御され、
・ ロック要素には、ロック要素が通過配置から注射シリンジを固定する配置に移動するために、外側ケーシングと協働するようになされた傾斜部が設けられ、
・ 複数のピンが制御部材内に摺動自在に取り付けられ、これらのピンは戻り手段によってロック要素のそれぞれの面に押し付けられ、面にはロック要素をその通過配置または固定配置に保持するハードポイントが形成されるように凹所が設けられ、
・ 戻り手段はシリンジ支持体のそれぞれの面とピンのそれぞれの肩部との間に収容され、戻り手段によってシリンジ支持体が制御部材の近位端に弾性的に戻るようになされ、
・ 制御部材および外側ケーシングは、制御部材が外側ケーシングに対して1つの方向に摺動するのを防止する逆止ロック手段を備え、
・ 逆止ロック手段は、外側ケーシングに形成されたノッチと協働する制御部材のタブを有し、
・ ロック要素の制限停止部は、これらのロック要素の凸状面によって部分的に画定され、
・ シリンジ支持体は注射シリンジを保持し、注射シリンジはシリンジ本体を有し、シリンジ本体の遠位端に注射針が担持され、ロック要素の制限停止部と協働するようになされた注射シリンジの肩部によってシリンジ本体の遠位端が画定されるようになされている。
【0013】
本発明は、一例として挙げられた、下記の説明を読むことで、また、添付の図面を参照することでよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一の実施形態による自動注射装置の操作前の初期配置における斜視図である。
図2図1の自動注射装置の、外側ケーシングが取り除かれた状態の斜視図である。
図3図2の自動注射装置の、制御部材およびエンドスリーブが取り除かれた状態の斜視図である。
図4図1の自動注射装置のIV―IV面に沿った断面図である。
図5図4の囲み部分Vを示す詳細図である。
図6図4の囲み部分囲み部分VIを示す詳細図である。
図7図5の自動注射装置の、注射前の、作動配置の状態を示す詳細図である。
図8図6の自動注射装置の、注射前の、作動配置の状態を示す詳細図である。
図9図5の自動注射装置の、注射後の、注射針が収容される前の状態を示す詳細図である。
図10図6の自動注射装置の、注射後の、注射針が収容される前の状態を示す詳細図である。
図11図5の自動注射装置の、注射針が収容された後の状態を示す詳細図である。
図12図6の自動注射装置の、注射針が収容された後の状態を示す詳細図である。
図13】第二の実施形態による自動注射装置の前部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1から図12は、本発明による自動注射装置13を示す。この自動注射装置13は、軸Xを中心として回転する一般的な回転形状を有する。この自動注射装置13は、一端を手で把持されるようになされており、この一端を以後近位端とする。反対側の端部は、遠位端とされ、注射領域の患者の皮膚に対して当接させられる。
【0016】
自動注射装置13は、特に図4に示されるように、注射シリンジ14を備えている。本発明のこの第一の実施形態では、注射シリンジ14は、X軸に対する略管状形状を有する注射シリンジ本体16を含むガラス製の注射シリンジ14であり、患者の体内に注射されるべき薬液(比較的粘性であり得る)を収容する。
【0017】
シリンジ本体16の遠位端には注射針18が設けられている。ピストン20がシリンジ本体16内に摺動自在に取り付けられ、ピストン20がシリンジ本体の16の遠位端に向かって移動すると、シリンジ本体16に収容されている薬液が注射針18を介して排出される。
【0018】
注射シリンジ14は注射針18を保護するために注射針18を覆う古典的なキャップ(図示せず)を有している。このキャップは自動注射装置13を使用する前に取り外されなければならない。
【0019】
シリンジ本体16の近位端には放射状カラー22が設けられている。シリンジ本体16の遠位端には遠位肩部24が設けられている。
【0020】
図4に示されるように、ピストンロッド26は、ピストン20の近位端と当接している。このピストンロッド26は、医薬品を患者の体内に注入するときに、ピストン20をシリンジ本体16の遠位端に向かって押すようになされている。
【0021】
特に図3および図4に示されるように、自動注射装置13は注射シリンジ14を担持するシリンジ支持体28を備える。シリンジ支持体28は軸Xに対して略管状の形状を有し、その遠位端および近位端に開口部を有している。
【0022】
コマンド部材30、32がシリンジ支持体28の近位端に配置されている。これらのコマンド部材30、32は、互いに、そしてシリンジ支持体28およびピストンロッド26と協働するようになされている。その協働により、コマンド部材30、32は以下のステップで作用する。
・ まず、コマンド部材30、32がシリンジ支持体28を押し、それによって注射針18が患者の皮膚に挿入され、
・ 次に、コマンド部材30、32がシリンジ本体16内のピストンロッド26およびピストン20を押して医薬品を注射し、
・ 最後に、コマンド部材30、32がピストンロッド26およびシリンジ支持体28を軸方向に解放することで、ピストンロッド26およびシリンジ支持体28が後退することができ、注射針18を収容し、患者の皮膚から離し、隔離することが可能となる。
【0023】
コマンド部材30、32は自動注射装置13の遠位端に配置された注射ばね34によって付勢されている。
【0024】
シリンジ支持体28およびコマンド部材30、32は、コマンド部材30、32を設置するために制御部材36内に摺動自在に取り付けられている。コマンド部材30、32上に形成されたカム30c、32cは、制御部材36上に形成されたカム溝36cと協働して、技術水準として知られているように、
・ コマンド部材30、32が制御部材36内を前方に移動するときに、コマンド部材30、32が旋回することを可能にし、
・ 自動注射装置13の通常の動作を可能にするクラッチ手段38を作動または非作動にする。
【0025】
制御部材36は略管状形状を有している。
エンドスリーブ40は制御部材36の遠位端に固定されている。エンドスリーブ40には、患者の皮膚と接触する遠位面42が設けられている。
【0026】
特に図3に示されるように、2つのロック要素44は、エンドスリーブ40に形成された2つのスロット46内で実質的に半径方向に滑動するように取り付けられ、メンブレンを形成する。代わりとして3つ以上のロック要素を使用することもできる。各ロック要素44のX軸に最も近い端部には、ロック要素44の凸状面50によって部分的に画定された制限停止部48が設けられている。これらのロック要素44は実質的に下記の配置の間で移動する、すなわち
・ 注射シリンジ14を保護するためのキャップの通過を可能にする配置であり、2つの制限停止部48が互いに離れ、2つの制限停止部48が注射シリンジ14の保護のためのキャップが通過するための十分な間隔となる配置と、
・ 注射シリンジ14の固定を可能にする配置であり、2つの制限停止部48が互いに向かって動き、2つの制限停止部48の間の空間が、注射シリンジ14がその遠位肩部24によって軸方向に固定されるために十分に狭められた配置である。
【0027】
したがって、ロック要素44が注射シリンジ14を保護するためのキャップの通過を可能にする位置にあるとき、ロック要素44の制限停止部48と干渉することなく注射シリンジ14を自動注射装置13内に設置することができる。同様に、ロック要素44がそれらの固定配置にあるとき、注射針18が患者の皮膚に挿入される際に注射シリンジ14は軸方向に固定される。
【0028】
制御部材36は、外側ケーシング52の内側に入れ子式に取り付けられている。制御部材36は、外側ケーシング52の遠位端から突出していることに留意されたい。外側ケーシング52は、使用者によってその近位端を把持されるようになされている。外側ケーシング52の制御部材36に対する相対的な動きは自動注射装置13の作動を制御する。自動注射装置13の初期配置では、外側ケーシング52および制御部材36は軸方向に互いに離れている、すなわち、制御部材36は外側ケーシング52に対して最も遠位の位置にある。
【0029】
自動注射装置13を作動させるために、使用者は、注射領域にエンドスリーブ40の遠位端を押しつけ、そして、この領域に対して自動注射装置13をしばらくの間押しつける。そうすると、制御部材36は外側ケーシング52内に引き込まれ、コマンド部材32のうちの1つに担持された装置作動手段54と制御部材36は自動注射装置13を作動させるように協働する。
【0030】
傾斜部56が各ロック要素44のX軸から最も離れた部分に形成されている。自動注射装置13が作動すると、これらの傾斜部56は外側ケーシング52の遠位端と協働してロック要素44を注射シリンジ14が解放される位置から注射シリンジ14が固定される位置まで移動させる。
【0031】
2つのピン58が制御部材36の遠位部分に摺動自在に取り付けられている。各ピン58はロック要素44の近位面60と協働する。2つの凹所62が各近位面60に形成され、ロック要素44がそれらの通過配置または固定配置にある時にピン58は凹所62に収容される。戻し手段64、例えば戻しばねまたは他の同等の要素は、ピン58をロック要素44の近位面60に押し付ける。そのため、ロック要素44がそれらの通過配置または固定配置にあるとき、これらのロック要素44を動かすためには力が必要とされる。言い換えれば、ピン58は、ロック要素44の近位面60と協働することによって、ロック要素44をそれらの通過配置または固定配置に保持するハードポイントを形成する。
【0032】
ピン58の戻しばね64は、ピン58に形成された肩部66と、シリンジ支持体28を案内するための2つの部材70に形成された面68との間に収容されている。そして、ピン58の戻しばね64がシリンジ支持体28を制御部材36の近位端に向かって戻らせる。次に、ピストンロッド26およびシリンジ支持体28がコマンド部材30、32から軸方向に解放されると、ピン58の戻しばね64はシリンジ支持体28を制御部材36の近位端に向かって移動させ、それによって注射針18は自動注射装置13内へ引き込まれる。
【0033】
制御部材36は、その近位端に逆止ロック手段72を備えている。これらの逆止ロック手段72は、制御部材36から半径方向に突出する2つのタブ74を有している。これらのタブ74は、外側ケーシング52に形成されたノッチ76と協働するようになされている。各タブ74は軸方向に並んだ3つのノッチと協働することができる。結果として、軸方向に配置された3対のノッチ76があり、それぞれの対となるノッチは1対のタブ74と協働することができる。タブ74は遠位制限停止部78を有し、タブ74が外側ケーシング52のノッチ76と協働する際、遠位制限停止部78は制御部材36が外側ケーシング52の遠位端に向かって摺動するのを防止する。さらに、タブ74は傾斜しており、タブ74の面80を外側ケーシング52のノッチ76と協働させることで、タブ74は弾性的に変形しうる。したがって、制御部材36が外側ケーシング52の近位端に向かって移動する際、タブ74は半径方向に後退し、この移動を妨げない。
【0034】
そして、制御部材36のタブ74が外部ケーシング52の3対のノッチ76のうちのどれに協働するかに応じて、制御部材36および外部ケーシング52は互いに対して3つの異なる位置に位置することができる。これらの3つの配置とは、
・ 初期配置、すなわち、外側ケーシング52および制御部材36が軸方向に互いに離れ、ロック要素44が通過配置であり、自動注射装置13が作動していない配置と、
・ 中間配置、すなわち、ロック要素44が注射シリンジを固定する配置にあるが、自動注射装置13が作動していない配置と、
・ 作動配置、すなわち、外側ケーシング52および制御部材36が軸方向に互いに向かって移動し、ロック要素44が注射シリンジ14を固定する配置にあり、自動注射装置13が作動している配置である。
【0035】
図5から図12は、自動注射装置13の動作のいくつかのステップに対応するいくつかの配置を示す。
【0036】
図5および図6は、注射針14を保護するためのキャップを取り外した後の自動注射装置13の初期配置を示している。この配置では、ロック要素44はそれらの通過配置にあり、制御部材36は外側ケーシング52に対して初期の位置にある。
【0037】
図7および図8は、自動注射装置13を作動させるための配置を示している。この配置では、ロック要素44は注射シリンジ14をロックするための配置にある。制御部材36は外側ケーシング52に対してその作動位置にある。制御部材36のタブ74は、外側ケーシング52の最も近位のノッチ76と協働する。外側ケーシング52および制御部材36は、自動注射装置13の残りの動作において互いに固定される。
【0038】
図9および図10は、自動注射装置13の注射終了時の配置を示している。この配置では、注射シリンジ14の遠位肩部が固定要素44の制限停止部48に押し付けられている。注射針18は患者の皮膚に挿入されており、ピストン20はシリンジ本体16の遠位部に当接している。
【0039】
図11および図12は使用後の自動注射装置13を示している。この配置では、シリンジ支持体28は軸方向に制御部材36の近位部に向かって戻される。注射針18は、患者の皮膚から引き抜かれ、エンドスリーブ40に対して突出していない。
【0040】
図13は、本発明の第2の実施形態による自動注射装置13を示している。第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の要素には同一の符号を付している。
【0041】
この実施形態において、自動注射装置13は、ロック要素44の近位面60と協働するピンを備えていない。これらのピンの代わりに、ロック要素44は、内側面84と協働してロック要素44が引き抜けれるのを防止する可撓性逆止めタブ82を有している。これらの可撓性逆止めタブ82はロック要素44が半径方向外向きに動くのを防止し、それによってロック要素44は自動注射装置13の他の部分から分離されないようになされている。
【0042】
さらに、各ロック要素44には、ロック要素44の突出面88を有する突出部86が設けられている。この突出面88は、ロック要素44がX軸に向かって半径方向に移動する際、エンドスリーブ40の相補面90と協働してこの相補面90をこするようになされている。その結果、ロック要素44は早まって移動することはできず、半径方向の力を受けたとき、特にロック要素44の傾斜部56が外側ケーシング52と協働するときにのみX軸に向かって移動することができる。
【0043】
本発明は説明された実施形態に限定されず、他の実施形態は当業者に明らかであろう。特に、2つより多いロック要素または単一のロック要素を使用することができる。さらに、注射シリンジは、針を有するカートリッジと交換することができる。

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