(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】Cu-SAPO分子篩、合成方法及びその触媒としての使用
(51)【国際特許分類】
C01B 39/54 20060101AFI20220127BHJP
B01J 29/85 20060101ALI20220127BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20220127BHJP
B01D 53/86 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
C01B39/54
B01J29/85 A ZAB
B01J37/10
B01D53/86 223
(21)【出願番号】P 2019543950
(86)(22)【出願日】2017-02-27
(86)【国際出願番号】 CN2017074985
(87)【国際公開番号】W WO2018152829
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2019-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】503190796
【氏名又は名称】中国科学院大▲連▼化学物理研究所
【氏名又は名称原語表記】DALIAN INSTITUTE OF CHEMICAL PHYSICS,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ティアン,ペン
(72)【発明者】
【氏名】シャン,シャオ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,チョンミン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,レイ
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/211237(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/54
B01J 29/85
B01J 37/10
B01D 53/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CHA及びGMEの共存晶相を有する銅含有シリコアルミノホスフェート(SAPO)分子篩であって、該分子篩のX線回折パターンが、少なくとも下記の回折ピーク
【表1】
を有し、
分子篩の無機骨格は下記の化学組成
【化1】
(式中、x、y、zはそれぞれSi、Al、Pのモル分率を表し、それらの範囲はそれぞれx=0.01~0.28、y=0.35~0.55、z=0.28~0.50であり、かつx+y+z=1であり、wは1モル当たりの(SixAlyPz)O
2に対応するCuのモル数であり、w=0.001~0.124である)
を有することを特徴とする分子篩。
【請求項2】
テンプレート剤を含む分子篩の無水化学組成は下記の式
【化2】
(式中、R1はジイソプロパノールアミン
(DIPA)又はジエタノールアミン
(DEOA)であり、R2はトリメチルアミン
(TMA)であり;mは1モル当たりの(SixAlyPz)O
2中のR1テンプレート剤のモル数であり、nは1モル当たりの(SixAlyPz)O
2中のR2テンプレート剤のモル数であり、m=0.01~0.20、n=0.01~0.10であり;x、y、zはそれぞれSi、Al、Pのモル分率を表し、それらの範囲はそれぞれx=0.01~0.28、y=0.35~0.55、z=0.28~0.50であり、かつ、x+y+z=1であり;wは1モル当たりの(SixAlyPz)O
2に対応するCuのモル数であり、w=0.001~0.124である)
で表されることを特徴とする請求項1に記載の分子篩。
【請求項3】
請求項1または2に記載の分子篩の合成方法であって、
a)下記モル比
Cu/Al
2O
3=0.01~0.25
SiO
2/Al
2O
3=0.05~2.0
P
2O
5/Al
2O
3=0.5~1.5
H
2O/Al
2O
3=8~40
R1/Al
2O
3=5~20
R2
’/Al
2O
3=0.1~1.5
(式中、R1はジイソプロパノールアミン(DIPA)又はジエタノールアミン(DEOA)であり、R2
’はトリメチルアミン(TMA)、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(BTACl)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BTAOH)のうちのいずれか1種又は2種以上の混合物である)
を有する初期のゲル混合物を得るように、銅源、脱イオン水、テンプレート剤R1とR2
’、ケイ素源、アルミニウム源、及びリン源を一定の割合で混合する工程と、
b)工程a)で得られた初期のゲル混合物を高圧合成釜に仕込んで、密閉し、160~220℃に昇温して、5~72時間結晶化させる工程と、
c)結晶化終了後、固体生成物を分離し、洗浄し、乾燥して、前記分子篩を得る工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
工程a)において、銅源をまず水と混合し、その後、R1及びR2
’を添加して、室温で0.5~5h撹拌した後、混合液にアルミニウム源、ケイ素源及びリン源をこの順に添加して、混合ゲルを室温で1~5h撹拌するという手順で調和することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程a)において、前記ケイ素源は、シリカゾル、活性シリカ、オルトケイ酸エチル、メタカオリンの中から選ばれた1種又は2種以上であり、
前記アルミニウム源は、アルミニウム塩、活性アルミナ、擬ベーマイト、アルミニウムアルコキシド、メタカオリンの中から選ばれた1種又は2種以上であり、
前記リン源は、オルトリン酸、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、有機リン化物、リン酸化物の中から選ばれた1種又は2種以上であり、
前記銅源は、Cu(OAc)
2、CuSO
4、Cu(NO
3)
2、CuCl
2の中から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記工程b)における結晶化過程は、静的又は動的に行われることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程a)における初期のゲル混合物は、R1/Al
2O
3=5.0~10であることを特徴とする請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程a)における初期のゲル混合物は、R2
’/Al
2O
3=0.25~1.0であることを特徴とする請求項3から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項3~8のいずれか一項に記載の方法により合成された分子篩を550~700℃、空気中で焼成することを含む、NO
x選択還元脱去反応用の触媒の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な銅含有SAPO分子篩、合成方法及びその脱硝反応への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物(NOx)は、主な大気汚染物質の1つとして、酸性雨、光化学スモッグ等の諸問題を引き起こすことができ、かつ、人体の健康への危害がひどく、窒素酸化物による汚染は、主に移動元である自動車排気ガスの排出及び固定元である工場排気の排出に由来し、NOx汚染の処理方法は、NH3、尿素又は炭化水素化合物を還元剤として選択的触媒還元反応を行い、それを無害な窒素ガスに転換することである。従来の脱硝触媒は、主にV-Ti-W系であるが、エンジン技術にリーンバーン技術が広く用いられることにつれて、リーンバーン排気ガスの排出温度が低下し、V-Ti-W系の触媒の狭い温度適用範囲が要求を満足できなくなり、そして環境を汚染する潜在的可能性もその使用を制限している。現在、分子篩触媒系に対する研究が盛んになっている。分子篩系の触媒のうち、銅系触媒及び鉄系触媒は2種類の代表的な系であり、銅系触媒は優れた低温活性を示すが、担持量が高すぎるため、高温側に激しいNH3酸化反応が発生してしまう。鉄系触媒は優れた高温活性を有するが、低温側の転換率が低いため、幾つかの分野への使用が制限されている。
【0003】
1986年、Iwamotoらは、Cu2+交換のZSM-5がNOをN2及びO2に直接に分解させる触媒とすることができることを初めて報告し、その後の研究において、研究者は炭化水素化合物を還元剤としたSCR反応により関心を寄せているので、Fe-ZSM-5の研究が盛んになった。酸化物触媒と比べて、分子篩系触媒のメリットは広い反応温度領域、良好な熱安定性を有し、かつ、高温下での耐硫黄被毒能力が強いが、それらにも、例えば、高温での水熱安定性が悪く、低温での耐硫黄性能が悪い等の問題が存在する。
【0004】
SSZ-13及びSAPO-34のような細孔分子篩を担体材料とすることで、触媒の高温水熱安定性を効果的に高めることができ、かつ、銅を活性金属として担持している場合、広い温度範囲内で高いNO転換活性及び高いN2選択率を有する。硫黄に対する感度が高い等の問題が存在しているが、この問題は油質の改善と共に解決されてきた。
【0005】
通常、SAPO分子篩の合成には、有機アミン/アンモニウムを構造規定剤とし、水熱又はソルボサーマルの方法により合成する必要がある。合成方法の創新及びテンプレート剤の選択は、生成物の構造及び性能の制御に対して極めて重要な影響を与えている。銅アミン系錯体をテンプレート剤とすることによってCu-SAPO-18及びCu-SAPO-34をワンステップ法で合成することができる。このようなワンステップ法で合成されたCu-SAPO触媒は、触媒の製造過程を簡略化し、重要な意義を有する。かつ、このようなワンステップ法で合成されたCu-SAPO型触媒は、優れたNH3-SCR触媒活性、及び組成の調整可能性を示し、一定の工業使用見込みを有する。
【0006】
本発明は、Cu含有量が制御可能なワンステップ法でCu-SAPO分子篩触媒を合成する方法を提供し、かつ、この方法は優れたdeNOx触媒活性を示し、潜在的な使用価値を有する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、GME及びCHAの共晶構造を有するCu-SAPO分子篩を提供することにある。
【0008】
本発明が合成する新規な分子篩は、鈍いピーク及び鋭いピークが共存する特徴を示し、そのXRD回折パターンが文献(Microporous and Mesoporous Materials, 30(1999) 335-346;国際分子篩協会の公式サイトhttp://www.iza-structure.org/databases/Catalog/ABC_6.pdf)におけるGME/CHA共存構造を有するアルミノシリケートゼオライトのパターンと類似性を有する。我々が分析したところ、このような分子篩はGME/CHA共存構造を有する新規なSAPO分子篩である。
【0009】
本発明の実施態様によれば、CHA及びGMEの共存晶相(coexisting crystal phases)を有するCu-SAPO分子篩であって、X線回折パターンが少なくとも下記の回折ピークを有することを特徴とする分子篩を提供する。
【表1】
【0010】
分子篩の無機骨格は下記の化学組成を有する。
【化1】
式中、x、y、zはそれぞれSi、Al、Pのモル分率を表し、それらの範囲はそれぞれx=0.01~0.28、y=0.35~0.55、z=0.28~0.50であり、かつx+y+z=1であり、wは1モル当たりの(SixAlyPz)O
2に対応するCuのモル数であり、w=0.001~0.124である。
【0011】
分子篩がテンプレート剤を含む場合の無水化学組成は下記の式で表されてもよい。
【化2】
式中、R1はジイソプロパノールアミン又はジエタノールアミンであり、R
2はトリメチルアミンであり;mは1モル当たりの(SixAlyPz)O
2中のR1テンプレート剤のモル数であり、nは1モル当たりの(SixAlyPz)O
2中のR
2テンプレート剤のモル数であり、m=0.01~0.20、n=0.01~0.10であり;x、y、zはそれぞれSi、Al、Pのモル分率を表し、それらの範囲はそれぞれx=0.01~0.28、y=0.35~0.55、z=0.28~0.50であり、かつ、x+y+z=1であり;wは1モル当たりの(SixAlyPz)O
2に対応するCuのモル数であり、w=0.001~0.124である。幾つかの実施態様において、mは0.02~0.15であってもよく;nは0.01~0.09であってもよく;xは0.05~0.28であってもよく;yは0.40~0.50であってもよく;zは0.30~0.50であってもよく;wは0.005~0.100であってもよい。
【0012】
本発明のもう1つの目的は、下記工程a)~c)を含むことを特徴とする上記Cu-SAPO分子篩の合成方法を提供することにある。
a)銅源、脱イオン水、テンプレート剤R1とR2’、ケイ素源、アルミニウム源、及びリン源を一定の割合で混合して、下記モル比を有する初期のゲル混合物を得る。
Cu/Al2O3=0.01~0.25;
SiO2/Al2O3=0.05~2.0;
P2O5/Al2O3=0.5~1.5;
H2O/Al2O3=8~40;
R1/Al2O3=5~20;
R2’/Al2O3=0.1~1.5;
式中、R1はジイソプロパノールアミン(DIPA)又はジエタノールアミン(DEOA)であり、R2’はトリメチルアミン(TMA)、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(BTACl)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BTAOH)のうちのいずれか1種又は2種以上の混合物である。
具体的には下記の調合の手順であってもよい。
銅源をまず水と混合して溶解し、その後、さらにR1及びR2’を添加し、室温で0.5~5h撹拌する。その後、混合液にアルミニウム源、ケイ素源及びリン源をこの順に添加し、混合ゲルを室温で1~5h撹拌する。
b)工程a)で得られた初期のゲル混合物を高圧合成釜に仕込んで、密閉し、160~220℃に昇温して、5~72時間結晶化させる。
c)結晶化終了後、固体生成物を分離、洗浄、乾燥した後、前記分子篩を得る。
【0013】
工程a)において前記ケイ素源は、シリカゾル、活性シリカ、オルトケイ酸エチル、メタカオリンからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、前記アルミニウム源は、アルミニウム塩、活性アルミナ、擬ベーマイト、アルミニウムアルコキシド、メタカオリンからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、前記リン源は、オルトリン酸、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、有機リン化物、リン酸化物からなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、前記銅源は、Cu(OAc)2、CuSO4、Cu(NO3)2、CuCl2等の銅含有無機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上である。
【0014】
前記工程b)における結晶化過程は、静的又は動的に行われる。
好ましくは、前記工程a)における初期のゲル混合物は、SiO2/Al2O3 =0.20~1.8である。
好ましくは、前記工程a)における初期のゲル混合物は、P2O5/Al2O3 =0.8~1.5である。
好ましくは、前記工程a)における初期のゲル混合物は、R1/Al2O3 =5.0~10である。
好ましくは、前記工程a)における初期のゲル混合物は、R2’/Al2O3 =0.25~1.0である。
【0015】
R2’における有機テンプレート剤であるベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(BTACl)及びベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BTAOH)は分子篩の合成において分解され、トリメチルアミンを生成し、分子篩のケージ内に入る。
【0016】
上記分子篩の合成方法において、R1がジエタノールアミンである場合、R1/R2’モル比の好適な範囲が16~60である。R1がジイソプロパノールアミンである場合、好適な結晶化温度が195~220℃である。
【0017】
本願のもう1つの目的は、上記の方法により合成された分子篩及び/又は上記の方法により合成された分子篩を550~700℃、空気中で焼成して得られる、NOx選択還元脱去反応用の触媒を提供することにある。
【0018】
本発明は、下記の有益な効果を奏することができる。
(1)新規なCu-SAPO分子篩を提供する。
(2)製造された分子篩は、触媒として窒素酸化物の脱去反応を促進するために使用可能であり、良好な触媒性能を示している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1で合成した生成物のXRDパターンである。
【
図2】実施例1で合成した生成物の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【
図3】実施例11及び比較例2のNH
3-SCR反応の評価結果である。
【
図4】異なる銅含有量(実施例11~13)の触媒のNH
3-SCR反応の評価結果の比較である。
【
図5】実施例1の試料の高温水熱処理前後(実施例11及び実施例14)のNH
3-SCR反応の評価結果の比較である。
【
図6】比較例3~8に対応する試料のXRD結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施例を参照しながら、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を制限するものではなく、単に本発明を説明するものであると理解されうるであろう。以下の実施例において具体的な条件が明記されなかった実験方法は、通常、一般的な条件又はメーカが提案した条件に従って行われる。特に説明がない限り、本願が用いた原料は、いずれも市販で購入され、特別な処理を行わずに直接に使用する。
【0021】
特に説明がない限り、本願の測定条件は以下の通りである。
元素組成はPhilips社のMagix 2424蛍光X線分析装置(XRF)で測定される。
FT-IRはドイツBRUKERのTENSOR 27装置で採集される。
X線粉末回折物相分析(XRD)にはオランダのパナリティカル(PANalytical)社のX’Pert PRO X線回折装置、Cuターゲット、Kα放射源(λ=0.15418 nm)を用い、電圧が40KVで、電流が40mAである。
アメリカのMicromeritics社のASAP 2020型物理吸着装置で試料の比表面積及び孔径分布を測定する。分析する前に、試料を350℃で6h真空吸引加熱して前処理し、Heを媒体として試料管の自由体積を測定する。試料を分析する際に、窒素ガスを吸着ガスとして、液体窒素温度(77K)において物理吸着及び脱着測定を行う。BET公式により材料の比表面積を確定する。相対圧力(P/P0)が0.99である場合のN2の吸着量を用いて材料の総孔容積を算出する。t-plot方法により微細孔の表面積及び微細孔の孔容積を算出する。計算する際に、N2分子の断面積を0.162nm2とする。
SEM形状測定にはHitachi(SU8020)型走査型電子顕微鏡を用いる。
炭素-核磁気共鳴(13CMAS NMR)分析にはアメリカのVarian社のInfinity plus 400WB固体核磁気スペクトル分析装置、BBO MASプローブを用い、作動磁場強度が9.4Tである。
CHN元素分析にはドイツ製のVario EL Cube元素分析装置を用いる。
【0022】
以下、実施例によって本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限られない。
【0023】
実施例1
各原料のモル比及び結晶化条件を表2に示す。具体的な調和過程は、銅源をまず水と混合して溶解し、その後、R1及びR2
’を添加し、室温で2h撹拌した。その後、混合液にアルミニウム源、ケイ素源及びリン源をこの順に添加し、混合ゲルを室温で5h撹拌し、ゲルに調製し、ゲルをステンレス反応釜に移送した。反応釜をオーブンに入れた後、2℃/minの速度で200℃に昇温して回転条件下で36h結晶化した。結晶化終了後、固体生成物を遠心、洗浄し、100℃、空気中で乾燥した後、前記分子篩原粉試料を得た。試料をXRD分析し、ピーク形状は鈍いピーク及び鋭いピークが共存する特徴を示し、XRD回折パターンを
図1に示し、XRD回折データを表3に示す。試料を焼成してテンプレート剤を除去した後、その比表面積及び孔容積を測定し、試料は高いBET比表面積602m
2g
-1、及び大きい孔体積0.27cm
3g
-1を有し、ただし、t-plot方法により算出された微細孔比表面積及び微細孔容積はそれぞれ533m
2g
-1及び0.26cm
3g
-1であった。
【0024】
得られた試料の走査型電子顕微鏡写真を
図2に示し、得られた試料の形状は層状に堆積したウェハ状であり、粒子径範囲が3~5μmであった。
【表2-1】
【表2-2】
【0025】
【0026】
実施例2
具体的な調和割合及び結晶化条件を表2に示し、具体的な調和過程が実施例1と同様であった。
【0027】
合成した試料をXRD分析し、代表的なデータ結果を表4に示す。
走査型電子顕微鏡写真から、得られた試料の形状が実施例1の試料と類似することが示されている。
【表4】
【0028】
実施例3
具体的な調和割合及び結晶化条件を表2に示し、具体的な調和過程は実施例1と同様であった。
【0029】
合成した試料をXRD分析し、代表的なデータ結果を表5に示す。
走査型電子顕微鏡写真から、得られた試料の形状は実施例1試料と類似する。
【表5】
【0030】
実施例4~9
具体的な調和割合及び結晶化条件を表2に示し、具体的な調和過程は実施例1と同様であった。
【0031】
合成した試料をXRD分析し、実施例4、9のXRDデータ結果が表3と近く、実施例5、6のXRDデータ結果が表4と近く、実施例7、8のXRDデータ結果が表5と近い。
国際分子篩協会の公式サイトに掲載されている、異なる割合のGME/CHA共存アルミノシリケートゼオライト結晶相の回折パターンと比較すると、実施例1~9はシリコンリンアルミニウム分子篩中のCHA結晶相の含有量がGME結晶相より明らかに高い。
【0032】
実施例10
実施例1~9の粉末試料に対して13CMAS NMR分析を行い、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン及びトリメチルアミンの13CMAS NMR標準パターンと対照すると、ジイソプロパノールアミンを溶媒として合成された試料はジイソプロパノールアミン及びトリメチルアミンの共鳴ピークを同時に有し、ジエタノールアミンを溶媒として合成された試料はジエタノールアミン及びトリメチルアミンの共鳴ピークを有することが明らかになった。2種類の物質に特有の重なり合わないNMRピークにより定量分析を行い、両者の割合を確定した。
【0033】
XRFにより分子篩製品のバルク相元素組成を分析し、実施例1~9の原粉試料に対してCHN元素分析を行った。CHN元素分析、XRF及び
13CMAS NMRの分析結果をまとめて、得られた分子篩原粉の組成を表6に示す。
【表6】
【0034】
実施例1~9の原粉試料をそれぞれ臭化カリウムと混合して研磨押圧し、FT-IR分析を行い、それらはいずれも637cm-1において非常に明らかな二重六員環に帰属する特定振動吸収ピークが現れ、試料中に二重六員環が存在することがわかった。
【0035】
実施例11
実施例1で得られた試料は、650℃の高温で2h焼成し、テンプレート剤を除去した後、NH
3を選択的還元してNO
xを脱去する反応に用いられる際の触媒としての性能が、分析される。具体的な実験過程及び条件は以下の通りである。焼成後の試料を押圧して選別し、60から80メッシュの試料を0.1g秤量して0.4gの石英砂(60~80メッシュ)と混合し、固定床反応器に入れた。600℃で窒素ガスを導入して40min活性化し、その後、120℃に降温して反応を開始し、550℃にプログラム昇温した。反応原料ガスは、NO:500ppm、NH
3:500ppm、O
2:5%、H
2O:5%であり、N
2をバランスガスとし、ガス流速が300mL/minであった。反応排気ガスを、Bruker社のTensor 27型装置により、オンラインFTIR分析し、結果を
図3及び
図4に示す。反応が150℃におけるNOの転換率が77%に達し、180~450℃の広い温度範囲内で、NOの転換率が90%を超えたことがわかった。これに類似して、実施例2~8で得られた試料は、実施例1の試料と同様に処理された後、良好な選択的還元NO
x脱去触媒性能を示している。
【0036】
実施例12
実施例3で得られた試料は、650℃の高温で2h焼成し、テンプレート剤を除去した後、NH
3を選択的還元してNO
xを脱去する反応に用いられる際の触媒としての性能が、分析される。具体的な実験過程及び条件は以下の通りである。焼成後の試料を押圧して選別し、60から80メッシュの試料を0.1g秤量して0.4gの石英砂(60~80メッシュ)と混合し、固定床反応器に入れた。600℃で窒素ガスを導入して40min活性化し、その後、120℃に降温して反応を開始し、550℃にプログラム昇温した。反応原料ガスは、NO:500ppm、NH
3:500ppm、O
2:5%、H
2O:5%であり、N
2をバランスガスとし、ガス流速が300mL/minであった。反応排気ガスを、Bruker社のTensor 27型装置により、オンラインFTIR分析し、反応結果を
図4に示す。
【0037】
実施例13
実施例8で得られた試料を650℃の高温で2h焼成し、テンプレート剤を除去した後、NH
3を選択的還元してNO
xを脱去する反応用に用いられる際の触媒としての性能が、分析される。具体的な実験過程及び条件は以下の通りである。焼成後の試料を押圧して選別し、60から80メッシュの試料を0.1g秤量して0.4gの石英砂(60~80メッシュ)と混合し、固定床反応器に入れた。600℃で窒素ガスを導入して40min活性化し、その後、120℃に降温して反応を開始し、550℃にプログラム昇温した。反応原料ガスは、NO:500ppm、NH
3:500ppm、O
2:5%、H
2O:5%であり、N
2をバランスガスとし、ガス流速が300mL/minであった。反応排気ガスを、Bruker社のTensor 27型装置により、オンラインFTIR分析し、反応結果を
図4に示す。
【0038】
実施例14
実施例1で得られた試料を650℃の高温で2h焼成し、テンプレート剤を除去した後、800℃で水熱老化処理を行い、水蒸気の含有量が100%であり、処理時間が24hであり、処理終了後、100℃で乾燥した。
【0039】
XRD方法により試料の相対結晶度を測定し、試料の結晶度は実施例1試料の95%であり、実施例1で製造された試料はより高い水熱安定性を有することがわかり、水処理後、その構造の完全性をより良く維持することができる。
【0040】
NH
3を選択的還元してNO
xを脱去する反応の触媒性能の特徴付けに用いる。具体的な実験過程及び条件は以下の通りである。試料を押圧選別し、60から80メッシュの試料を0.1g秤量して0.4gの石英砂(60~80メッシュ)と混合し、固定床反応器に入れた。600℃で窒素ガスを導入して40min活性化し、その後、120℃に降温して反応を開始し、550℃にプログラム昇温した。反応原料ガスは、NO:500ppm、NH
3:500ppm、O
2:5%、H
2O:5%であり、N
2をバランスガスとし、ガス流速が300mL/minであった。反応排気ガスを、Bruker社のTensor 27型装置により、オンラインFTIR分析し、反応結果を
図5に示す。
【0041】
比較例1:
実施例9で得られた試料分子篩原粉10gを前駆体とし、2℃/minの速度で600℃に昇温して4h定温焼成し、その中に含まれる有機テンプレート剤及び水を除去した。
【0042】
焼成された試料を1:10の固液比(質量比)で3.66mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液に投入し、5分間撹拌した後、80℃に昇温して2hイオン交換した。その後、遠心分離して、脱イオン水で3回洗浄し、80℃で乾燥させ、NH4
+型分子篩を得た。
7gのNH4
+型分子篩を1:25の固液比で0.03mol/LのCu(CH3COO)2 ・H2O溶液に投入し、5分間撹拌し、50℃に昇温して4hイオン交換した。その後、遠心分離し、脱イオン水で3回洗浄し、80℃で乾燥させ、得られた試料をCu-9/Tと記した。XRF元素分析結果から、製品の酸化銅含有量が3.2%であり、実施例1と近いことがわかった。N2物理吸着により焼成型の実施例9の試料及びCu-9/T試料の比表面積と孔容積を測定し、得られた微細孔比表面積と微細孔容積との積をt-plot方法に算出した。実施例9の試料の微細孔比表面積と微細孔容積との積がそれぞれ559m2g-1及び0.28cm3g-1であり、Cu-9/T試料の微細孔比表面積と微細孔容積との積がそれぞれ520m2g-1及び0.25cm3g-1であった。これらの結果から、実施例1の方法により製造された触媒は、試料骨格構造の規則性をより良く維持できることがわかった。
【0043】
比較例2
比較例1で得られた試料を650℃の高温で2h焼成し、NH
3を選択的還元してNO
xを脱去する反応の触媒として用いた。具体的な実験過程及び条件は以下の通りである。焼成後の試料を押圧して選別し、60から80メッシュの試料を0.1g秤量して0.4gの石英砂(60~80メッシュ)と混合し、固定床反応器に入れた。600℃で窒素ガスを導入して40min活性化し、その後、120℃に降温して反応を開始し、550℃にプログラム昇温した。反応原料ガスは、NO:500ppm、NH
3:500ppm、O
2:5%、H
2O:5%であり、N
2はバランスガスであり、ガスの総流速が300mL/minであった。反応の総空間速度GHSVが180000h
-1であった。反応排気ガスを、Bruker社のTensor 27型装置により、オンラインFTIR分析し、具体的な結果を
図3に示す。
【0044】
比較例3
具体的な成分のモル比、原料及び結晶化条件が実施例1と同様であるが、相違点は、原料中のジエタノールアミンの代わりにトリエチルアミンを用いたことにある。合成した試料はSAPO-34分子篩であり、XRD分析結果を
図6に示す。
【0045】
比較例4
具体的な成分のモル比、原料及び結晶化条件が実施例2と同様であるが、相違点は、原料中のベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドの代わりに1,6-ヘキサンジアミンを用いたことにある。合成した試料は層状相であり、XRD結果を
図6に示す。
【0046】
比較例5
具体的な成分のモル比、原料及び結晶化条件が実施例3と同様であるが、相違点は、原料中のトリメチルアミンの添加を省略したことにある。合成した試料はSAPO-34とSAPO-5との物理混合物であり、XRD結果を
図6に示す。
【0047】
比較例6
具体的な成分のモル比、原料及び結晶化条件が実施例4と同様であるが、相違点は、原料中のジエタノールアミンの代わりにジエチルアミンを用いたことにある。合成した試料は少量のSAPO-34のDNL-6(RHO構造を有するSAPO分子篩)の物理混合物であり、XRD結果を
図6に示す。
【0048】
比較例7
具体的な成分のモル比、原料及び結晶化条件が実施例5と同様であるが、相違点は、原料中のトリメチルアミンの代わりにトリエタノールアミンを用いたことにある。合成した試料はSAPO-5とSAPO-34との物理混合物であり、XRD結果を
図6に示す。
【0049】
比較例8
具体的な成分のモル比、原料及び結晶化条件が実施例5と同様であり、相違点は、原料中のトリメチルアミンの添加を省略したことにある。合成した試料はアモルファスであり、XRD分析結果を
図6に示す。
【0050】
比較例3~8の合成結果から、本特許出願のGME及びCHAの共晶を有するCu-SAPO分子篩は、特定のテンプレート剤の組み合わせ及び適宜な結晶化条件下でしか得られないことがわかった。
【0051】
本願は、好適な実施例で上記のように公開しているが、請求の範囲を制限するためではなく、当業者であれば、本願の構想から逸脱しない限り、幾つかの変更及び変化を行うことができるので、本願の保護範囲は本願の請求の範囲に画定されている範囲に準ずるべきである。