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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】塗布装置及び化粧板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/02 20060101AFI20220104BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20220104BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B05C1/02 104
B05C1/02 102
B05D5/00 F
B05D7/00 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020200028
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2021-06-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 達哉
(72)【発明者】
【氏名】久保 耕平
(72)【発明者】
【氏名】濱口 真一
【審査官】團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-124505(JP,A)
【文献】特開2017-124513(JP,A)
【文献】実開昭52-153766(JP,U)
【文献】特開2014-217801(JP,A)
【文献】特開2009-184305(JP,A)
【文献】特表2011-515827(JP,A)
【文献】特開2014-221452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B05C 1/00-21/00
B05D 1/00- 7/26
B27D 1/00- 5/00
B27K 1/00- 9/00
B27M 1/00- 3/00
E04F 1/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に搬送される化粧基材の側方端部の被塗布面に塗料を塗布する塗布装置であって、
上記化粧基材の搬送経路の側方に設けられ、鉛直軸周りに回転する回転体と、
上記回転体を回転駆動する駆動部と、
上記駆動部によって回転駆動される上記回転体の外周面に上記塗料を定量供給する塗料供給部とを備え、
上記塗料は、上記化粧基材に塗布された際に、該化粧基材に浸透するような粘度に希釈された浸透性塗料であり、
上記回転体は、上記化粧基材の被塗布面に当接せず、上記回転体が回転することによって作用する遠心力によって上記回転体の外周面において径方向外側に膨らんだ上記塗料が上記化粧基材の被塗布面の一部に接触する位置に配置され、
上記回転体の外周面において径方向外側に膨らんだ上記塗料が上記被塗布面の一部に接触して変形して上記化粧基材の被塗布面全体に拡がることにより、上記化粧基材の被塗布面に上記塗料が塗布されるように、上記塗料の粘度と上記塗料の上記回転体への供給量とが調整され
上記塗料の粘度は、25℃での粘度が20mPa・s以上60mPa・s以下である
ことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
所定方向に搬送される化粧基材の側方端部の被塗布面に塗料を塗布する塗布装置であって、
上記化粧基材の搬送経路の側方に設けられ、鉛直軸周りに回転する回転体と、
上記回転体を回転駆動する駆動部と、
上記駆動部によって回転駆動される上記回転体の外周面に上記塗料を定量供給する塗料供給部とを備え、
上記塗料は、上記化粧基材に塗布された際に、該化粧基材に浸透するような粘度に希釈された浸透性塗料であり、
上記化粧基材の被塗布面が、上記回転体が回転することによって作用する遠心力によって上記回転体の外周面において径方向外側に膨らんだ上記塗料に接触することにより、上記化粧基材の被塗布面に上記塗料が塗布されるように構成され、
上記回転体は、上記化粧基材に当接しても変形しない硬質材によって形成されると共に、外周面が上記化粧基材の被塗布面の一部のみに当接するように構成され、
上記回転体の外周面が上記被塗布面の一部に当接する際に、上記塗料が当接面間からはみ出して上記被塗布面全体に拡がるように、上記塗料の粘度と上記塗料の上記回転体への供給量とが調整されている
ことを特徴とする塗布装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塗布装置において、
上記塗料を上記化粧基材に塗布した後、上記回転体の外周面に残った上記塗料を、新たな上記塗料が供給される前に除去する除去部を備えている
ことを特徴とする塗布装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の塗布装置において、
上記塗料供給部は、上記塗料を、上記回転体の外周面の高さの異なる複数箇所に供給するように構成されている
ことを特徴とする塗布装置。
【請求項5】
所定方向に搬送される化粧基材の側方端部の被塗布面に塗料を塗布する塗布工程を備え、側方端部に防水処理が施された化粧板を製造する化粧板の製造方法であって、
上記塗料は、上記塗布工程において上記化粧基材に塗布された際に、該化粧基材に浸透するような粘度に希釈された浸透性塗料であり、
上記塗布工程では、
上記化粧基材の搬送経路の側方に設けられて鉛直軸周りに回転する回転体の外周面に上記塗料を定量供給し、
上記回転体は、上記化粧基材の被塗布面に当接せず、
上記回転体が回転することによって作用する遠心力によって上記回転体の外周面において径方向外側に膨らんだ上記塗料が上記化粧基材の被塗布面の一部に接触して変形することにより、上記塗料が該化粧基材の被塗布面全体拡がるように、上記塗料の粘度と上記塗料の上記回転体への供給量とを調整し、
上記塗料の粘度を、25℃での粘度が20mPa・s以上60mPa・s以下とする
ことを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項6】
所定方向に搬送される化粧基材の側方端部の被塗布面に塗料を塗布する塗布工程を備え、側方端部に防水処理が施された化粧板を製造する化粧板の製造方法であって、
上記塗料は、上記塗布工程において上記化粧基材に塗布された際に、該化粧基材に浸透するような粘度に希釈された浸透性塗料であり、
上記塗布工程では、
上記化粧基材の搬送経路の側方に設けられて鉛直軸周りに回転する回転体の外周面に上記塗料を定量供給し、
上記回転体が回転することによって作用する遠心力によって上記回転体の外周面において径方向外側に膨らんだ上記塗料に上記化粧基材の被塗布面を接触させることにより、該化粧基材の被塗布面に上記塗料を塗布し、
上記塗布工程では、
上記化粧基材に当接しても変形しない硬質材によって形成された上記回転体の外周面を、上記化粧基材の被塗布面の一部のみに当接させると共に、
上記回転体の外周面が上記被塗布面の一部に当接する際に、上記塗料が当接面間からはみ出して上記被塗布面全体に拡がるように、上記塗料の粘度と上記塗料の上記回転体への供給量とを調整する
ことを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の化粧板の製造方法において、
上記化粧基材は、化粧面と、該化粧面に連続する面取り面と、該面取り面に連続する上記化粧面に垂直な垂直端面とを有するものであり、
上記被塗布面は、上記垂直端面と上記面取り面の少なくとも一部であり、
上記回転体の外周面を当接させる上記被塗布面の一部は、上記垂直端面である
ことを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の化粧板の製造方法において、
上記塗布工程では、上記化粧面を下向きにした状態で上記化粧基材を搬送して上記塗料を塗布する
ことを特徴とする化粧板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の側方端部に浸透性塗料を塗布する塗布装置及び化粧板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧基材の側方端部に防水塗装を施すことにより、側方端部からの吸水に起因する化粧面の退色、基材の反り等を抑制することが提案されている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1には、基材のコンベア路の両脇に設けられ、搬送されてくる基材の側方端面に密接可能なテーパ面を有する従動式のテーパロールと、各テーパロールの下部に設けられ、各テーパロールの一部分が浸漬される塗料溜めとを備えた端面塗装装置が開示されている。
【0004】
上記端面塗装装置では、コンベア路による基材の走行に従動してテーパロールが回転し、塗料溜めにおいてテーパロールのテーパ面に付着した塗料が、テーパ面が密接する基材の側方端面に転写される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭52-153766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記端面塗装装置では、テーパロールのテーパ面が当接する部分にしか塗料を塗布(転写)することができない。そのため、化粧基材の側方端部において塗料の塗布対象である被塗布面が湾曲面で構成されている場合には、塗料を塗布することができなかった。
【0007】
また、上記端面塗装装置では、面取り加工が施された化粧基材に対して化粧面に垂直な垂直端面だけでなく該垂直端面に連続する面取り面にも塗料を塗布したい場合、垂直端面と面取り面とに同時に塗料を塗布することができず、2つの端面塗装装置を用意して垂直端面と面取り面とに別々に塗料を塗布する必要があった。
【0008】
上述の課題を解決する手段として、外周縁部が柔軟性を有する素材で構成されたスポンジロールを使用し、塗料が供給されたスポンジロールの外周縁部を強く化粧基材の側方端部に押し当てて化粧基材の側方端部に沿う形状に変形させることにより、垂直端面と面取り面とに塗料を塗布する方法も考えられる。しかしながら、このような方法では、スポンジロールを狙った形状に変形させることは難しく、また、化粧基材が木質基材等の硬い基材である場合には、側方端部に押してられるスポンジロールがすぐに摩耗してしまうため、面取り面へ狙い通りに塗料を塗布できないという問題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、化粧基材の被塗布面の形状に拘わらず、一度の塗布処理で被塗布面全体に塗料を安定して塗布可能な塗布装置及び化粧板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、この発明では、回転体の外周面に塗料を多量に供給し、遠心力を利用して回転体の外周面において塗料を径方向外側に膨らませ、膨らませた塗料を化粧基材の被塗布面に接触させることにより、被塗布面に塗料を塗布するようにした。
【0011】
具体的には、第1の発明は、所定方向に搬送される化粧基材の側方端部の被塗布面に塗料を塗布する塗布装置であって、上記化粧基材の搬送経路の側方に設けられ、鉛直軸周りに回転する回転体と、上記回転体を回転駆動する駆動部と、上記駆動部によって回転駆動される上記回転体の外周面に上記塗料を定量供給する塗料供給部とを備え、上記塗料は、上記化粧基材に塗布された際に、該化粧基材に浸透するような粘度に希釈された浸透性塗料であり、上記回転体は、上記化粧基材の被塗布面に当接せず、上記回転体が回転することによって作用する遠心力によって上記回転体の外周面において径方向外側に膨らんだ上記塗料が上記化粧基材の被塗布面の一部に接触する位置に配置され、上記回転体の外周面において径方向外側に膨らんだ上記塗料が上記被塗布面の一部に接触して変形して上記化粧基材の被塗布面全体に拡がることにより、上記化粧基材の被塗布面に上記塗料が塗布されるように、上記塗料の粘度と上記塗料の上記回転体への供給量とが調整され、上記塗料の粘度は、25℃での粘度が20mPa・s以上60mPa・s以下であることを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明では、化粧基材の搬送経路の側方において鉛直軸周りに回転する回転体の外周面に定量供給した塗料を、遠心力によって回転体の径方向外側に膨らませ、膨らんだ塗料が化粧基材の側方端部の被塗布面に接触することにより、該被塗布面に塗料が塗布されるように、塗布装置を構成することとしている。塗布ロールの外周面を被塗布面に当接させることにより、塗料を化粧基材の塗布ロールの外周面と当接する部分に転写する従来の塗布装置と異なり、回転体の外周面において径方向外側に膨らんだ塗料の塊を化粧基材の側方端部に接触させることにより、塗料を被塗布面に塗布することとしているため、化粧基材の被塗布面が湾曲面等いかなる形状であっても、一度の塗布処理で被塗布面全体に塗料を塗布することができる。従って、第1の発明によれば、化粧基材の被塗布面の形状に拘わらず、一度の塗布処理で被塗布面全体に塗料を安定して塗布可能な塗布装置を提供することができる。
【0013】
第2の発明は、所定方向に搬送される化粧基材の側方端部の被塗布面に塗料を塗布する塗布装置であって、上記化粧基材の搬送経路の側方に設けられ、鉛直軸周りに回転する回転体と、上記回転体を回転駆動する駆動部と、上記駆動部によって回転駆動される上記回転体の外周面に上記塗料を定量供給する塗料供給部とを備え、上記塗料は、上記化粧基材に塗布された際に、該化粧基材に浸透するような粘度に希釈された浸透性塗料であり、上記化粧基材の被塗布面が、上記回転体が回転することによって作用する遠心力によって上記回転体の外周面において径方向外側に膨らんだ上記塗料に接触することにより、上記化粧基材の被塗布面に上記塗料が塗布されるように構成され、上記回転体は、上記化粧基材に当接しても変形しない硬質材によって形成されると共に、外周面が上記化粧基材の被塗布面の一部のみに当接するように構成され、上記回転体の外周面が上記被塗布面の一部に当接する際に、上記塗料が当接面間からはみ出して上記被塗布面全体に拡がるように、上記塗料の粘度と上記塗料の上記回転体への供給量とが調整されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、第2の発明では、従来の塗布装置と異なり、回転体の外周面が、化粧基材の被塗布面の一部にしか当接しない一方、当接時に塗料が当接面間からはみ出して被塗布面全体に拡がるように塗料の粘度と塗料の回転体への供給量とが調整されている。そのため、第2の発明によれば、面取り加工が施された化粧基材に対して化粧面に垂直な垂直端面だけでなく面取り面も被塗布面とする場合であっても、一度の塗布処理で被塗布面全体に塗料を塗布することができる。
【0015】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記塗料を上記化粧基材に塗布した後、上記回転体の外周面に残った上記塗料を、新たな上記塗料が供給される前に除去する除去部を備えていることを特徴とするものである。
【0016】
第3の発明では、塗布装置が除去部を備えることにより、化粧基材に塗料を塗布した後、回転体の外周面に残った塗料が、新たな塗料が供給される前に、除去部によって除去される。このように回転体に残った塗料を除去することにより、回転体に残った塗料の上に新たに定量供給される塗料が積み重ねられることがない。よって、回転体の外周面に常に同じ分量の塗料が存在することとなる。つまり、常時、同じように膨らませた一定量の塗料を化粧基材の被塗布面に接触させる(塗布する)ことができる。
【0017】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、上記塗料供給部は、上記塗料を、上記回転体の外周面の高さの異なる複数箇所に供給するように構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
第4の発明では、塗料供給部によって回転体の外周面の高さの異なる複数箇所に塗料が供給される。そのため、化粧基材の側方端部には、回転体の外周面の異なる高さ位置において径方向外側に膨らんだ複数の塗料の塊が接触する。複数の塗料の塊は、化粧基材の側方端部に接触することによって変形し、被塗布面全体に拡がることにより、被塗布面全体に塗料が塗布される。第4の発明によれば、塗料供給部が回転体の外周面の所定の高さ位置のみに塗料を供給する場合に比べて、回転体の外周面において径方向外側に膨らむ塗料の塊が小さくなるため、化粧基材に浸透するような低粘度の浸透性塗料を用いても、塗料が下方に垂れ難くなる。
【0019】
また、第4の発明によれば、被塗布面の上下方向の長さが比較的長い場合であっても、回転体の外周面の異なる高さの複数箇所に複数の塗料の塊を形成することにより、塗布量が多くなりすぎることなく、塗料を均等に塗布することができる。
【0020】
第5の発明は、所定方向に搬送される化粧基材の側方端部の被塗布面に塗料を塗布する塗布工程を備え、側方端部に防水処理が施された化粧板を製造する化粧板の製造方法であって、上記塗料は、上記塗布工程において上記化粧基材に塗布された際に、該化粧基材に浸透するような粘度に希釈された浸透性塗料であり、上記塗布工程では、上記化粧基材の搬送経路の側方に設けられて鉛直軸周りに回転する回転体の外周面に上記塗料を定量供給し、上記回転体は、上記化粧基材の被塗布面に当接せず、上記回転体が回転することによって作用する遠心力によって上記回転体の外周面において径方向外側に膨らんだ上記塗料が上記化粧基材の被塗布面の一部に接触して変形することにより、上記塗料が該化粧基材の被塗布面全体拡がるように、上記塗料の粘度と上記塗料の上記回転体への供給量とを調整し、上記塗料の粘度を、25℃での粘度が20mPa・s以上60mPa・s以下とすることを特徴とするものである。
【0021】
第5の発明では、塗布工程において、化粧基材の搬送経路の側方において鉛直軸周りに回転する回転体の外周面に定量供給した塗料を、遠心力によって回転体の径方向外側に膨らませ、膨らんだ塗料を化粧基材の側方端部の被塗布面に接触させることにより、該被塗布面に塗料を塗布するようにしている。このように、第5の発明では、塗布ロールの外周面を被塗布面に当接させることにより、塗料を化粧基材の塗布ロールの外周面と当接する部分に転写する従来の塗布方法と異なり、回転体の外周面において径方向外側に膨らんだ塗料の塊を化粧基材の側方端部に接触させることにより、塗料を被塗布面に塗布することとしているため、化粧基材の被塗布面が湾曲面等いかなる形状であっても、一度の塗布処理で被塗布面全体に塗料を塗布することができる。従って、第5の発明によれば、化粧基材の被塗布面の形状に拘わらず、一度の塗布処理で被塗布面全体に塗料を安定して塗布可能な塗布工程を備えた化粧板の製造方法を提供することができる。
【0022】
第6の発明は、所定方向に搬送される化粧基材の側方端部の被塗布面に塗料を塗布する塗布工程を備え、側方端部に防水処理が施された化粧板を製造する化粧板の製造方法であって、上記塗料は、上記塗布工程において上記化粧基材に塗布された際に、該化粧基材に浸透するような粘度に希釈された浸透性塗料であり、上記塗布工程では、上記化粧基材の搬送経路の側方に設けられて鉛直軸周りに回転する回転体の外周面に上記塗料を定量供給し、上記回転体が回転することによって作用する遠心力によって上記回転体の外周面において径方向外側に膨らんだ上記塗料に上記化粧基材の被塗布面を接触させることにより、該化粧基材の被塗布面に上記塗料を塗布し、上記塗布工程では、上記化粧基材に当接しても変形しない硬質材によって形成された上記回転体の外周面を、上記化粧基材の被塗布面の一部のみに当接させると共に、上記回転体の外周面が上記被塗布面の一部に当接する際に、上記塗料が当接面間からはみ出して上記被塗布面全体に拡がるように、上記塗料の粘度と上記塗料の上記回転体への供給量とを調整することを特徴とするものである。
【0023】
第7の発明は、第6の発明において、上記化粧基材は、化粧面と、該化粧面に連続する面取り面と、該面取り面に連続する上記化粧面に垂直な垂直端面とを有するものであり、上記被塗布面は、上記垂直端面と上記面取り面の少なくとも一部であり、上記回転体の外周面を当接させる上記被塗布面の一部は、上記垂直端面であることを特徴とするものである。
【0024】
また、第6及び第7の発明では、従来の化粧板の製造方法と異なり、塗布工程において、回転体の外周面を化粧基材の被塗布面の一部(垂直端面)にしか当接させない一方、当接時に塗料が当接面間からはみ出して被塗布面全体(垂直端面及び面取り面の少なくとも一部)に拡がるように塗料の粘度と塗料の回転体への供給量とを調整することとしている。そのため、第6及び第7の発明によれば、面取り加工が施された化粧基材に対して化粧面に垂直な垂直端面だけでなく面取り面も被塗布面とする場合であっても、塗布工程において、一度の塗布処理で被塗布面全体に塗料を塗布することができる。
【0025】
第8の発明は、第7の発明において、上記塗布工程では、上記化粧面を下向きにした状態で上記化粧基材を搬送して上記塗料を塗布することを特徴とするものである。
【0026】
第8の発明では、塗布工程において、化粧面が下向きの状態の化粧基材に対して塗料を塗布することとしている。これにより、回転体の外周面が化粧基材の垂直端面に当接する際に、当接面間からはみ出した塗料が、当接面の下方の面取り面に拡がり易くなる。よって、第8の発明によれば、回転体の外周面に定量供給する塗料の供給量を増大させることなく容易に化粧基材の垂直端面と面取り面とに塗料を塗り拡げることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によると、回転体の外周面に塗料を多量に供給し、遠心力を利用して回転体の外周面において塗料を径方向外側に膨らませ、膨らませた塗料を化粧基材の被塗布面に接触させることにより、被塗布面に塗料を塗布するようにしたため、化粧基材の被塗布面の形状に拘わらず、一度の塗布処理で被塗布面全体に塗料を安定して塗布可能な塗布装置及び化粧板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、実施形態1の塗布装置及び塗布方法を用いた化粧板の製造方法によって製造される化粧板の平面図である。
図2図2は、図1の化粧板のA-A’断面図である。
図3図3は、実施形態1の塗布装置の概略構成を示す平面図である。
図4図4は、実施形態1の塗布装置の概略構成を示す側面図である。
図5図5は、実施形態1の塗布装置で浸透性塗料を塗布する前後の様子を示す図であり、(a)は、塗布直前の塗布ロールの外周部の様子を示す図であり、(b)は、塗布中における塗布ロールの外周部と化粧基材の被塗布部分の様子を示す図であり、(c)は、塗布後の浸透性塗料が完全に浸透した化粧基材の様子を示す図である。
図6図6は、実施形態1の化粧板の製造方法の化粧基材形成工程から第2塗布工程が終了するまでの化粧基材の平面形状の変化を説明するための説明図である。
図7図7は、実施形態1の化粧板の製造方法の化粧基材形成工程から第2塗布工程が終了するまでの化粧基材の断面形状の変化を説明するための説明図である。
図8図8は、実施形態2の塗布装置で浸透性塗料を塗布する前後の様子を示す図であり、(a)は、塗布直前の塗布ロールの外周部の様子を示す図であり、(b)は、塗布中における塗布ロールの外周部と化粧基材の被塗布部分の様子を示す図であり、(c)は、塗布後の浸透性塗料が完全に浸透した化粧基材の様子を示す図である。
図9図9は、実施形態3の塗布装置で浸透性塗料を塗布する前後の様子を示す図であり、(a)は、塗布直前の塗布ロールの外周部の様子を示す図であり、(b)は、塗布中における塗布ロールの外周部と化粧基材の被塗布部分の様子を示す図であり、(c)は、塗布後の浸透性塗料が完全に浸透した化粧基材の様子を示す図である。
図10図10は、実施形態4の塗布装置で浸透性塗料を塗布する前後の様子を示す図であり、(a)は、塗布直前の塗布ロールの外周部の様子を示す図であり、(b)は、塗布中における塗布ロールの外周部と化粧基材の被塗布部分の様子を示す図であり、(c)は、塗布後の浸透性塗料が完全に浸透した化粧基材の様子を示す図である。
図11図11は、実施形態5の塗布装置の一部を示す側面図である。
図12図12は、実施形態6の塗布装置で浸透性塗料を塗布する前後の様子を示す図であり、(a)は、塗布直前の塗布ロールの外周部の様子を示す図であり、(b)は、塗布中における塗布ロールの外周部と化粧基材の被塗布部分の様子を示す図であり、(c)は、塗布後の浸透性塗料が完全に浸透した化粧基材の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態は、本質的に好ましい例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0030】
《発明の実施形態1》
[化粧板]
図1及び図2は、本発明の実施形態1に係る塗布装置及び塗布方法を用いて製造される化粧板1を示す。この化粧板1は、例えば床材等として使用される。化粧板1は、化粧基材10と、塗膜層20とを備えている。
【0031】
〈化粧基材〉
化粧基材10は、基材本体11と表面化粧材12とを積層して接着剤で接着一体化することによって構成されている。
【0032】
本実施形態1では、基材本体11は、木質材料によって構成されている。基材本体11は、表面側の第1基材11aと裏面側の第2基材11bとを積層して接着剤で接着一体化することによって構成されている。本実施形態1では、第1基材11aは、密度が0.35~0.85g/cmの木質繊維板(中密度繊維板(MDF)又はハードボード)で構成され、第2基材11bは、合板で構成されている。基材本体11は、平面視において950mm×1850mmの長方形状に形成されている。
【0033】
なお、基材本体11は、後述する浸透性塗料が塗布される被塗布面(本実施形態1では、第1基材11aの表側端面17b,18b及び面取部16の外表面16a)が浸透性塗料の浸透を妨げない材料で構成されていれば、いかなるものであってもよい。例えば、被塗布面を有する第1基材11aが、ケイ酸カルシウム板、ロックウール等の無機質繊維板で構成されていてもよい。また、基材本体11は、第1基材11aと第2基材11bとで構成されず、木質繊維板、ケイ酸カルシウム板、無機質繊維板のみで形成されるものであってもよい。また、基材本体11は、第1基材11aと第2基材11bとの間に他の材料からなる層を有するものであってもよく、第2基材11bのさらに裏面側に樹脂不織布や樹脂系発泡板材が接着一体化されるものであってもよい。さらに、第1基材11aと第2基材11bとが同じ素材で構成されて積層一体化されていてもよい。
【0034】
表面化粧材12は、薄板又はシート状に形成され、基材本体11の表面(第1基材11aの表面)を覆うように接着剤で接着されている。表面化粧材12は、例えば、オレフィン樹脂等の防水性を有する樹脂製の化粧シートによって構成されている。表面化粧材12の厚みは、0.15~0.6mm程度に形成されている。本実施形態1では、表面化粧材12の表面が、化粧基材10の化粧面13となる。
【0035】
なお、表面化粧材12の材質及び厚みに特に制限はなく、樹脂製の化粧シートの他、コート紙、樹脂含浸紙等の化粧紙、不織布、織布、木質薄化粧突き板等であってもよい。紙の場合、例えば、0.05~0.3mm程度のもの、木質薄化粧突板であれば、0.15~0.3mm程度のものが好適に用いられる。
【0036】
化粧基材10の化粧面13と周囲側面(長辺側面対14,14及び短辺側面対15,15)との間には、面取部16が形成されている。
【0037】
面取部16は、化粧基材10の化粧面13と各側面14,15との間の角部を斜め(又は円弧状)に切り欠くことによって形成されている。そのため、面取部16の外表面16aは、化粧面13及び各側面14,15に対して傾斜している。面取部16の大きさに特に制限はないが、面取部16の水平方向及び垂直方向の幅は、それぞれ0.5~1.0mm程度に形成されている。本実施形態1では、面取部16は、化粧基材10の表面化粧材12と基材本体11の第1基材11aとに亘って形成されている。つまり、本実施形態1では、化粧基材10は、面取部16の外表面16aにおいて木質繊維板が露出するように面取り加工が施されている。
【0038】
化粧基材10の各側面14,15には雌実17又は雄実18が形成されている。化粧基材10の短辺方向に対向する長辺側面対(第1側面対)14,14の一方には雌実17が形成され、他方には雌実17に嵌合可能な雄実18が形成されている。また、化粧基材10の長辺方向に対向する短辺側面対(第2側面対)15,15の一方には雌実17が形成され、他方には雌実17に嵌合可能な雄実18が形成されている。
【0039】
上記長辺側面14及び短辺側面15の雌実17は、同様に構成されている。雌実17は、化粧基材10の長辺側面14及び短辺側面15の厚み方向(表裏方向)の中間部分が凹溝部17aになるように化粧基材10の側辺部を切り欠くことによって形成されている。また、本実施形態1では、雌実17は、凹溝部17aより裏面側の部分が、凹溝部17aより表面側の部分よりも外側に突出するように形成された所謂あご実に構成されている。そのため、雌実17では、面取部16の外表面16aに連続し、化粧面13に対して垂直な表側端面(垂直端面)17bが、裏面19に対して垂直に連続する裏側端面17cよりも内側に位置している。
【0040】
なお、本実施形態1では、凹溝部17a及び裏側端面17cは、第2基材11bに形成され、表側端面17bは、第1基材11aから第2基材11bに亘って形成されている。つまり、本実施形態1では、化粧基材10は、雌実17の表側端面17bにおいて木質繊維板が露出するように実加工が施されている。
【0041】
上記長辺側面14及び短辺側面15の雄実18は、同様に構成されている。雄実18は、化粧基材10の長辺側面14及び短辺側面15の表裏方向の中間部分が凸条部18aになるように化粧基材10の側辺部を切り欠くことによって形成されている。また、本実施形態1では、雄実18は、あご実に構成された雌実17に対応するように、凸条部18aより裏面側の凹み部分が、凸条部18aより表面側の凹み部分よりも内側に位置するように形成されている。そのため、雄実18では、面取部16の外表面16aに連続し、化粧面13に対して垂直な表側端面(垂直端面)18bが、裏面19に対して垂直に連続する裏側端面18cよりも外側に位置している。
【0042】
なお、本実施形態1では、凸条部18a及び裏側端面18cは、第2基材11bに形成され、表側端面17bは、第1基材11aから第2基材11bに亘って形成されている。つまり、本実施形態1では、化粧基材10は、雄実18の表側端面18bにおいて木質繊維板が露出するように実加工が施されている。
【0043】
このように、本実施形態では、隣り合う化粧板1の側辺部が嵌合するように、化粧基材10に、雌実17と雄実18とを形成する所謂本実加工を施している。しかしながら、隣り合う化粧板1の側辺部を嵌合させる構造はこれに限らない。例えば、化粧基材10の長辺側面14及び短辺側面15の一方では化粧基材10の厚み方向の表側の部分を切り欠き、他方では化粧基材10の厚み方向の裏側の部分を切り欠くことにより、所謂合決り構造としてもよい。
【0044】
また、化粧基材10の各側面14,15の木質繊維板(第1基材11a)が露出する表側端面(垂直端面)17b,18b及び面取部16の外表面(面取り面)16aの一部の表層には、後述する浸透性塗料30を塗布して浸透させることにより、樹脂含浸層31が形成されている。
【0045】
本実施形態1では、湿気硬化型樹脂組成物を希釈剤で希釈することによって低粘度に調整したものを浸透性塗料30として用いている。また、湿気硬化型樹脂組成物として分子量1000~5000のポリオールとヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とを使用し、希釈剤として酢酸ブチルを使用している。例えば、ポリオールの溶液100に対し、10~300のHDIを添加し、25℃での粘度が20mPa・s以上60mPa・s以下(より好ましくは、40mPa・s以上60mPa・s以下)になるように、酢酸ブチルで希釈することによって浸透性塗料30を生成する。
【0046】
なお、上記浸透性塗料30として、塗布してから1~2秒、好ましくは1秒以内に概ね化粧基材10の内部に浸透する粘度の浸透性塗料30を用いれば、その後の加工処理を問題なく行えることが種々の実験により確認できている。ところで、浸透速度を上げるためには、できる限り希釈剤の添加量を増やし、浸透性塗料30の粘度を低下させるのが好ましいが、希釈剤の添加量が増えすぎると、含まれる湿気硬化型樹脂組成物の量が相対的に減るため、防水性の観点からは好ましくない。このような観点より、浸透性塗料30は、上述のように、25℃での粘度が20mPa・s以上60mPa・s以下(より好ましくは、40mPa・s以上60mPa・s以下)になるように希釈するのが好ましい。
【0047】
〈塗膜層〉
塗膜層20は、着色層21と透明樹脂層22とを有している。
【0048】
着色層21は、着色塗料によって形成された塗膜層である。着色層21は、化粧基材10の木質繊維板(第1基材11a)が露出する面取部16の外表面16aを覆うように、外表面16a上に形成されている。
【0049】
なお、着色層21の形成に使用する着色塗料は特に限定されるものではないが、水性のアクリル系樹脂に顔料粉末を均一分散させた水性着色剤を含むシール性(造膜性)を有する塗料を用いることができる。
【0050】
透明樹脂層22は、透明塗料によって形成された透明の塗膜層である。透明樹脂層22は、化粧基材10の化粧面13及び面取部16の外表面16aを覆うように、化粧面13及び着色層21上に形成されている。
【0051】
なお、透明樹脂層22の形成に使用する透明塗料は特に限定されるものではないが、揮発性有機化合物(VOC)の問題がなく、また、化粧板1を床材として用いる場合に、耐傷性、耐磨耗性が良い塗料として、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等の無溶剤紫外線硬化型塗料を用いるのが好適である。
【0052】
[塗布装置]
次に、塗布装置40の構成について説明する。
【0053】
図3及び図4に示すように、塗布装置40は、一対の塗布ロール(回転体)41,41と、一対の駆動部42,42と、一対の塗料供給部43,43と、一対の掻き取りブレード(除去部)44,44とを備えている。
【0054】
一対の塗布ロール41,41は、同様に構成され、化粧基材10の搬送経路の側方に1つずつ設けられている。より具体的には、一対の塗布ロール41,41は、化粧基材10の搬送経路において、化粧面13を下向きにした状態で化粧基材10を搬送する部分の両側に設けられている。各塗布ロール41は、少なくとも外周面が浸透性塗料を浸透させない材料からなる円板状部材によって形成されている。本実施形態1では、塗布ロール41は、表側端面17b,18bに当接させても変形しない硬質ゴムによって形成されている。なお、塗布ロール41は、表側端面17b,18bに当接させても変形しない材質であればいかなるものであってもよく、金属によって形成されていてもよい。本実施形態1では、各塗布ロール41は、化粧基材10の表側端面17b,18bの鉛直方向の長さ(例えば、5.0mm)よりも薄い厚さ(例えば、3.0mm)に形成されている。
【0055】
一対の駆動部42,42は、化粧基材10の搬送経路の側方に1つずつ設けられている。一対の駆動部42,42は、同様に化粧基材10の搬送経路の側方に1つずつ設けられた塗布ロール41の回転軸(鉛直軸)に連結されたモータによって構成されている。各駆動部42は、連結された塗布ロール41を回転駆動する。なお、本実施形態1では、図3に示すように、各駆動部42は、各塗布ロール41と化粧基材10との当接部において、各塗布ロール41の回転方向と化粧基材10の搬送方向とが一致するように、各塗布ロール41を回転駆動する。
【0056】
一対の塗料供給部43,43は、一対の塗布ロール41,41の側方に1つずつ設けられている。塗料供給部43は、図3及び図4に示すように、水平方向に延び、対応する塗布ロール41の外周面41aに向かって開口する筒状部分43aを有している。塗料供給部43は、筒状部分43aから所定流量の浸透性塗料30を流出させる。塗料供給部43は、筒状部分43aから流出させた浸透性塗料30が、下方に垂れることなく塗布ロール41の外周面41aに供給される位置に設けられている。なお、各塗料供給部43は、対応する塗布ロール41の外周面41aに浸透性塗料を定量供給することができるものであればいかなるものであってもよい。各塗料供給部43,43は、浸透性塗料の供給量を変更可能に構成されている。
【0057】
一対の掻き取りブレード44,44は、一対の塗布ロール41,41の側方に1つずつ設けられている。塗布ロール41の周方向において、塗布ロール41の回転方向を前方、逆方向を後方とすると、各掻き取りブレード44は、塗布ロール41の周方向において、塗料供給位置よりも後方に設けられている。また、各掻き取りブレード44は、対応する塗布ロール41の外周面41aに当接するように設けられている。各掻き取りブレード44は、化粧基材10に浸透性塗料30を塗布した後、塗布ロール41の外周面41aに残った浸透性塗料30を、新たな浸透性塗料30が供給されるまでの間に掻き取る(除去する)。
【0058】
[塗布方法]
次に、化粧基材10の側方端部の被塗布面(表側端面17b,18b及び面取部16の外表面16aの一部)に浸透性塗料30を塗布する塗布方法について説明する。
【0059】
図4に示すように、化粧基材10の被塗布面への浸透性塗料30の塗布は、ベルトコンベア等の搬送装置50によって化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で搬送しながら塗布装置40を用いて行われる。
【0060】
まず、塗布装置40の一対の駆動部42,42を起動して、化粧基材10の搬送経路の側方に設けられた一対の塗布ロール41,41を所定速度で回転させる。また、一対の塗料供給部43,43を作動させ、対応する塗布ロール41の外周面41aに浸透性塗料30を定量供給させる。
【0061】
図5(a)に示すように、各塗布ロール41では、塗布ロール41が回転することによって作用する遠心力により、外周面に供給された浸透性塗料30が塗布ロール41の径方向外側に膨らむように変形する。このように外周面において浸透性塗料30が径方向外側に膨らんだ状態の一対の塗布ロール41,41間に、化粧基材10が搬送されて浸透性塗料30が化粧基材10の被塗布面に接触することにより、浸透性塗料30が化粧基材10の被塗布面に塗布される。
【0062】
具体的には、まず、各塗布ロール41の外周面41aにおいて径方向外側に膨らんだ浸透性塗料30は、各塗布ロール41の外周面41aが化粧基材10の表側端面17b、18bに当接する前に、先に表側端面17b、18bに接触する。そして、図5(b)に示すように、各塗布ロール41の外周面41aが化粧基材10の表側端面17b、18bに当接すると、浸透性塗料30は、各塗布ロール41と化粧基材10の当接面間からはみ出して表側端面17b,18bだけでなく面取部16の外表面16aにも拡がる。このようにして、表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部からなる被塗布面全体に浸透性塗料30が塗布される。
【0063】
上述のように、本実施形態1では、浸透性塗料30として、湿気硬化型樹脂組成物を希釈剤で希釈することによって低粘度(25℃での粘度が60mPa・s以下)に調整したものを用いている。このように低粘度の浸透性塗料30を、化粧基材10の被塗布面(表側端面17b,18b及び面取部16の外表面16aの一部)に塗布すると、浸透性塗料30は、瞬間的に被塗布面から内部に浸透する(図5(c)を参照)。
【0064】
ところで、従来の塗布ロールを用いた塗布装置及び塗布方法は、塗布ロールの外周面を被塗布面に当接させることにより、塗料を化粧基材の塗布ロールの外周面と当接する部分に転写するものであり、化粧基材の塗布ロールとの当接部分にしか塗料を塗布できないものである。これに対し、本願の塗布装置40及び塗布方法は、上述のように、各塗布ロール41の外周面41aを被塗布面の一部(表側端面17b、18b)のみに当接させ、当接時に浸透性塗料30を当接面間からはみ出させることにより、浸透性塗料30を被塗布面全体に塗布するものである。
【0065】
そのため、本願では、各塗布ロール41の外周面41aが化粧基材10の表側端面17b、18bに当接する際に、当接面間から浸透性塗料30をはみ出させる必要があり、従来の当接面にのみ塗料が転写される塗布装置及び塗布方法を用いた場合に比べて多量の浸透性塗料30を各塗布ロール41に供給する必要がある。
【0066】
一方、上述のように、浸透性塗料30の粘度は、速やかに化粧基材10の被塗布面から内部に浸透させるには、低い方が好ましいが、低すぎると、塗布ロール41の外周面41aから垂れないように保持するために塗布ロール41を高速回転させる必要が生じ、浸透性塗料30に作用する遠心力が増大して塗布ロール41の外周面41aで保持できず、飛散するおそれがある。
【0067】
そのため、本実施形態1では、浸透性塗料30として、湿気硬化型樹脂組成物を希釈剤で希釈することにより、25℃での粘度が20mPa・s以上60mPa・s以下に調整したものを用いている。
【0068】
つまり、本実施形態1では、各塗布ロール41の外周面41aが化粧基材10の被塗布面の一部(表側端面17b、18b)に当接する際に、浸透性塗料30が当接面間からはみ出して被塗布面(表側端面17b,18b及び面取部16の外表面16aの一部)全体に拡がるように、浸透性塗料30の粘度と浸透性塗料30の各塗布ロール41への供給量とを調整するようにしている。
【0069】
また、本実施形態1では、各塗布ロール41の外周面41aに供給された浸透性塗料30が、径方向外側に膨らんだ状態で塗布ロール41の外周面41aで保持され、飛散しないように、各塗布ロール41の回転速度を調整するようにしている。
【0070】
本実施形態1では、以上のようにして、化粧基材10の側方端部の被塗布面(表側端面17b,18b及び面取部16の外表面16aの一部)に浸透性塗料30が塗布される。
【0071】
また、本実施形態1では、化粧基材10の被塗布面に浸透性塗料30を塗布した後、各塗布ロール41の外周面41aに残った浸透性塗料30は、新たな浸透性塗料30が供給されるまでの間に、各塗布ロール41の側方に設けられた掻き取りブレード44によって掻き取られる(除去される)。
【0072】
このように塗布ロール41に残った浸透性塗料30を除去することにより、残った浸透性塗料30の上に新たに定量供給される浸透性塗料30が積み重ねられることがない。よって、各塗布ロール41の外周面41aに常に同じ分量の浸透性塗料30が存在することとなる。つまり、常時、同じように膨らませた一定量の浸透性塗料30を化粧基材10の被塗布面に接触させて浸透させることができる。
【0073】
-製造方法-
次に、上記化粧板1の製造方法について説明する。この製造方法は、(1)化粧基材形成工程、(2)第1切削工程、(3)第1塗布工程、(4)第2切削工程、(5)第2塗布工程、(6)加熱工程、(7)着色層形成工程、(8)透明樹脂層形成工程を有する。各工程は、搬送装置50によって所定方向に搬送される化粧基材10に対して行われる。
【0074】
本実施形態1では、(2)第1切削工程及び(3)第1塗布工程は、長辺側面対14,14に加工処理を施す長辺加工工程であり、(4)第2切削工程及び(5)第2塗布工程は、化粧基材10の短辺側面対15,15に加工処理を施す短辺加工工程である。本実施形態1では、図6に示すように、搬送装置50によって化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で長辺方向に搬送しながら長辺加工工程を行った後、化粧基材10の搬送方向を短辺方向に変更し、化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で短辺方向に搬送しながら短辺加工工程を行う。
【0075】
なお、以下で説明する工程の順序は、一例にすぎず、本発明に係る製造方法はこれに限られない。
【0076】
(1)化粧基材形成工程
まず、基材本体11の表面に化粧を施すことによって化粧基材10を形成する化粧基材形成工程を行う。本実施形態1では、基材本体11の表面に樹脂製の化粧シートからなる表面化粧材12を積層して接着剤で一体化することによって化粧基材10を形成する。
【0077】
(2)第1切削工程
次に、化粧基材10の長辺側面対14,14に切削加工を施す第1切削工程を行う。第1切削工程は、搬送装置50によって化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で長辺方向に搬送しながら行われる(図6の長辺加工時の図を参照)。
【0078】
本実施形態1では、第1切削工程では、実加工工程と面取り加工工程とを行う。なお、実加工と面取り加工とは同時に行ってもよく、順に行ってもよい。第1切削工程では、刃に対して化粧基材10が位置ずれしないように固定する固定治具を備えた切削加工装置が用いられる。
【0079】
第1切削工程の実加工工程では、搬送装置50によって搬送される化粧基材10を固定治具で位置ずれしないように化粧面13が下向きの状態で固定した状態で、切削加工装置の刃で、化粧基材10の長辺側面対14,14の一方を凹溝部17aが形成されるように切り欠き、他方を凸条部18aが形成されるように切り欠く。このようにして、化粧基材10の長辺側面対14,14の一方に雌実17を形成し、他方に雄実18を形成する(図6の長辺加工時の図及び図7の長辺加工時のA-A’断面図を参照)。なお、実加工工程では、上述のような切削加工により、化粧基材10の長辺側面対14,14の表側端面17b,18bにおいて木質繊維板が露出するように雌実17と雄実18とが形成される。
【0080】
第1切削工程の面取り加工工程では、引き続き搬送装置50によって搬送される化粧基材10を固定治具で位置ずれしないように化粧面13が下向きの状態で固定した状態で、切削加工装置の刃で、化粧基材10の化粧面13と各長辺側面14との間の各角部を斜め(又は円弧状)に切り欠く。このようにして、化粧基材10の化粧面13と各長辺側面14との間に面取部16を形成する(図6の長辺加工時の図及び図7の長辺加工時のA-A’断面図を参照)。なお、面取り加工工程では、上述のような切削加工により、化粧基材10の長辺側面対14,14の面取部16の外表面16aにおいて木質繊維板が露出するように面取部16が形成される。
【0081】
以上のように、本実施形態1では、化粧基材10は、化粧面13が下向きの状態で固定治具によって位置ずれしないように固定された状態で搬送されながら、下端基準で(化粧面13を基準として)切削加工が施される。そのため、化粧基材10には、厚みの誤差に関係なく、化粧面13側から面取部16、雌実17及び雄実18の切削加工を精度良く行うことができる。
【0082】
(3)第1塗布工程
第1切削工程の後、即ち、長辺側面対14,14に対する切削加工の後、長辺側面対14,14に浸透性塗料30を塗布して浸透させる第1塗布工程を行う。第1塗布工程は、搬送装置50によって化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で長辺方向に搬送しながら、切削加工装置の固定治具で化粧基材10が位置ずれしないように固定した状態で行われる(図6の長辺加工時の図を参照)。
【0083】
第1塗布工程では、切削加工装置の固定治具で化粧基材10が位置ずれしないように化粧面13が下向きの状態で固定した状態で、塗布装置40を用いて上述の塗布方法で化粧基材10の被塗布面(長辺側面対14,14の表側端面17b,18b及びこれに面取部16の外表面16aの少なくとも一部)に浸透性塗料30を塗布する(図5(a),(b)を参照)。化粧基材10の被塗布面に塗布された浸透性塗料30は、瞬間的に被塗布面から内部に浸透する。
(4)第2切削工程
第1塗布工程の後、化粧基材10の搬送方向を短辺方向に変更して、化粧基材10の短辺側面対15,15に切削加工を施す第2切削工程を行う。第2切削工程は、搬送装置50によって化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で短辺方向に搬送しながら行われる(図6の長辺加工時の図を参照)。
【0084】
第2切削工程では、第1切削工程と同様に、実加工工程と面取り加工工程とを行う。なお、実加工と面取り加工とは同時に行ってもよく、順に行ってもよい。第2切削工程でも、刃に対して化粧基材10が位置ずれしないように固定する固定治具を備えた切削加工装置が用いられる。
【0085】
第2切削工程の実加工工程では、搬送装置50によって搬送される化粧基材10を固定治具で位置ずれしないように化粧面13が下向きの状態で固定した状態で、切削加工装置の刃で、化粧基材10の短辺側面対15,15の一方を凹溝部17aが形成されるように切り欠き、他方を凸条部18aが形成されるように切り欠く。このようにして、化粧基材10の短辺側面対15,15の一方に雌実17を形成し、他方に雄実18を形成する(図6の短辺加工時の図及び図7の短辺加工時のB-B’断面図を参照)。なお、実加工工程では、上述のような切削加工により、化粧基材10の短辺側面対15,15の表側端面17b,18bにおいて木質繊維板が露出するように雌実17と雄実18とが形成される。
【0086】
第2切削工程の面取り加工工程では、引き続き搬送装置50によって搬送される化粧基材10を固定治具で位置ずれしないように化粧面13が下向きの状態で固定した状態で、切削加工装置の刃で、化粧基材10の化粧面13と各短辺側面15との間の各角部を斜め(又は円弧状)に切り欠く。このようにして、化粧基材10の化粧面13と各短辺側面15との間に面取部16を形成する(図6の短辺加工時の図及び図7の短辺加工時のB-B’断面図を参照)。なお、面取り加工工程では、上述のような切削加工により、化粧基材10の短辺側面対15,15の面取部16の外表面16aにおいて木質繊維板が露出するように面取部16が形成される。
【0087】
以上のように、第2切削工程においても、第1切削工程と同様に、化粧基材10は、化粧面13が下向きの状態で固定治具によって位置ずれしないように固定された状態で搬送されながら、下端基準で(化粧面13を基準として)切削加工が施される。そのため、化粧基材10には、厚みの誤差に関係なく、化粧面13側から面取部16、雌実17及び雄実18の切削加工を精度良く行うことができる。
【0088】
(5)第2塗布工程
第2切削工程の後、即ち、短辺側面対15,15に対する切削加工の後、短辺側面対15,15に浸透性塗料30を塗布して浸透させる第2塗布工程を行う。第2塗布工程は、搬送装置50によって化粧基材10を化粧面13が下向きの状態で短辺方向に搬送しながら、切削加工装置の固定治具で化粧基材10が位置ずれしないように固定した状態で行われる(図6の短辺加工時の図を参照)。
【0089】
第2塗布工程では、切削加工装置の固定治具で化粧基材10が位置ずれしないように化粧面13が下向きの状態で固定した状態で、塗布装置40を用いて上述の塗布方法で化粧基材10の被塗布面(短辺側面対15,15の表側端面17b,18b及びこれに面取部16の外表面16aの少なくとも一部)に浸透性塗料30を塗布する(図5(a),(b)を参照)。化粧基材10の被塗布面に塗布された浸透性塗料30は、瞬間的に被塗布面から内部に浸透する。
【0090】
(6)加熱工程
第2塗布工程の後、即ち、短辺側面対15,15の加工処理後、化粧基材10を加熱して浸透性塗料30の溶剤を揮発させる加熱工程を行う。加熱手段は、特に限定されず、公知の加熱手段を用いることができる。また、加熱工程では、化粧基材10全体を加熱してもよく、化粧基材10において浸透性塗料30が浸透した被塗布面の表層を局所的に加熱してもよい。
【0091】
このように、加熱工程において、化粧基材10に浸透した浸透性塗料30の溶剤を揮発させることにより、最終製品である化粧板1に含まれる揮発性化学物質の総量を低減する。なお、加熱工程は、後述する着色層形成工程において着色層21を加熱して硬化させる硬化工程と共に行ってもよい。
【0092】
(7)着色層形成工程
加熱工程の後、化粧基材10の四周の面取部16の外表面16aに着色塗装を施す着色工程を行う。着色工程では、例えば、ゴムロールコーターを用いることができる。着色層形成工程では、化粧基材10の四周の面取部16の木質繊維板が露出する外表面16aに着色塗料を塗布する着色塗料塗布工程と、着色塗料塗布工程において化粧基材10の化粧面13に付着した着色塗料を除去する着色塗料除去工程と、硬化工程とを行う。
【0093】
具体的には、着色塗料塗布工程では、着色塗料が定量供給されるゴムロールが、化粧基材10の面取部16の外表面16aに当接しながら回転軸周りに正回転(化粧基材10とゴムロールの当接部で化粧基材10の搬送方向とゴムロールの回転方向が一致する回転)する。これにより、ゴムロールの着色塗料が面取部16の外表面16aに塗布(転写)される。
【0094】
着色塗料除去工程では、ゴムロールが、化粧基材10の化粧面13に当接しながら回転軸周りに逆回転(化粧基材10とゴムロールの当接部で化粧基材10の搬送方向とゴムロールの回転方向が逆向きになる回転)する。これにより、化粧基材10の化粧面13に付着した水系の着色塗料がゴムロールに吸収され、化粧面13から除去される。
【0095】
その後、化粧基材10の四周の面取部16の外表面16aに塗布された着色塗料を加熱することによって硬化させる硬化工程が行われる。硬化工程によって着色塗料が硬化することにより、四周の面取部16の外表面16a上に、着色層21(塗膜層)が形成される。
【0096】
(8)透明樹脂層形成工程
着色層形成工程の後、化粧基材10の化粧面13及び四周の面取部16の外表面16aを一体的に覆う透明樹脂層22を形成する透明樹脂層形成工程を行う。透明樹脂層形成工程では、例えば、ロールコーターやフローコーターを用いることができる。透明樹脂層形成工程では、化粧基材10の化粧面13及び四周の面取部16の外表面16aに透明塗料を塗布する透明塗料塗布工程と、透明塗料塗布工程において化粧基材10の化粧面13及び面取部16の外表面16aに塗布された透明塗料を硬化させる硬化工程とを行う。
【0097】
具体的には、透明塗料塗布工程では、ロールコーターを用いることにより、搬送装置によって所定方向に搬送される化粧基材10の化粧面13及び面取部16の外表面16aに透明塗料が塗布される。
【0098】
本実施形態1では、紫外線硬化樹脂塗料を透明塗料として用いる。そのため、硬化工程では、紫外線照射装置を用いて、化粧基材10の化粧面13及び四周の面取部16の外表面16aに塗布された透明塗料に紫外線を照射する。これにより、透明塗料が硬化して、化粧基材10の化粧面13及び四周の面取部16の外表面16a上に、これらの面を一体的に覆う透明樹脂層22が形成される。
【0099】
以上の工程を経過することにより、上記化粧板1が得られる。
【0100】
なお、第1及び第2塗布工程で化粧基材10の被塗布面に塗布されて内部に浸透した浸透性塗料30は、浸透性塗料30の溶剤が揮発した後、ポリオールとHDIとが反応することにより、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを形成する。このウレタンプレポリマーが、空気中の水分や化粧基材10に含有されている水分と反応してウレア結合を生成することにより、浸透性塗料30が硬化する。このように浸透性塗料30が硬化することにより、化粧基材10の四周側面14,14,15,15の表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部の表層は、ウレタン樹脂が含浸した防水性に優れた樹脂含浸層31となる。
【0101】
-実施形態1の効果-
上記実施形態1では、化粧基材10の搬送経路の側方において鉛直軸周りに回転する塗布ロール(回転体)41の外周面41aに定量供給した浸透性塗料30を、遠心力によって塗布ロール41の径方向外側に膨らませ、膨らんだ浸透性塗料30が化粧基材10の側方端部の被塗布面(表側端面17b、18b及び面取部16の外表面16a)に接触することにより、該被塗布面に浸透性塗料30が塗布されるように、塗布装置40を構成することとしている。塗布ロール41の外周面41aを被塗布面に当接させることにより、塗料を化粧基材の塗布ロールの外周面と当接する部分に転写する従来の塗布装置と異なり、塗布ロール41の外周面41aにおいて径方向外側に膨らんだ浸透性塗料30の塊を化粧基材10の側方端部の被塗布面に接触させることにより、浸透性塗料30を被塗布面に塗布することとしているため、化粧基材10の被塗布面が湾曲面等いかなる形状であっても、一度の塗布処理で被塗布面全体に浸透性塗料30を塗布することができる。従って、実施形態1によれば、化粧基材10の被塗布面の形状に拘わらず、一度の塗布処理で被塗布面全体に塗料を安定して塗布可能な塗布装置40を提供することができる。
【0102】
また、本実施形態1の塗布装置40では、従来の塗布装置と異なり、塗布ロール41の外周面41aが、化粧基材10の被塗布面の一部(表側端面17b、18b)にしか当接しない一方、当接時に浸透性塗料30が当接面間からはみ出して被塗布面全体(表側端面17b、18b及び面取部16の外表面16aの少なくとも一部)に拡がるように浸透性塗料30の粘度と浸透性塗料30の各塗布ロール41への供給量とが調整されている。そのため、本実施形態1の塗布装置40によれば、面取り加工が施された化粧基材10に対し、化粧面13に垂直な表側端面17b、18bだけでなく面取部16の外表面16aも被塗布面とする場合であっても、一度の塗布処理で被塗布面全体に塗料を塗布することができる。
【0103】
また、本実施形態1の塗布装置40では、塗布ロール41の外周面41aが化粧基材10と当接した際に、当接面間から浸透性塗料30をはみ出させることによって当接面よりも広い被塗布面に拡がるように構成されている。そのため、本実施形態1の塗布装置40によれば、化粧基材の塗布ロールとの当接部分にしか塗料を塗布できない従来の塗布装置と異なり、浸透性塗料30の粘度と浸透性塗料30の各塗布ロール41への供給量とを調整することにより、1種類の塗布ロール41で様々な大きさの被塗布面に対して浸透性塗料30を塗布することができる。
【0104】
また、本実施形態1では、塗布装置40が掻き取りブレード(除去部)44を備えている。そのため、化粧基材10に浸透性塗料30を塗布した後、塗布ロール41の外周面41aに残った浸透性塗料30が、新たな浸透性塗料30が供給される前に、掻き取りブレード44によって除去される。このように塗布ロール41に残った浸透性塗料30を除去することにより、塗布ロール41に残った浸透性塗料30の上に新たに定量供給される浸透性塗料30が積み重ねられることがない。よって、塗布ロール41の外周面41aに常に同じ分量の浸透性塗料30が存在することとなる。つまり、常時、同じように膨らませた一定量の浸透性塗料30を化粧基材10の被塗布面に接触させる(塗布する)ことができる。
【0105】
また、本実施形態1の化粧板の製造方法では、塗布工程(第1及び第2塗布工程)において、化粧基材10の搬送経路の側方において鉛直軸周りに回転する塗布ロール41の外周面41aに定量供給した浸透性塗料30を、遠心力によって塗布ロール41の径方向外側に膨らませ、膨らんだ浸透性塗料30を化粧基材10の側方端部の被塗布面(表側端面17b、18b及び面取部16の外表面16a)に接触させることにより、該被塗布面に浸透性塗料30を塗布するようにしている。塗布ロールの外周面を被塗布面に当接させることにより、塗料を化粧基材の塗布ロールの外周面と当接する部分に転写する従来の塗布方法と異なり、塗布ロール41の外周面41aにおいて径方向外側に膨らんだ浸透性塗料30の塊を化粧基材10の側方端部に接触させることにより、浸透性塗料30を被塗布面に塗布することとしているため、化粧基材10の被塗布面が湾曲面等いかなる形状であっても、一度の塗布処理で被塗布面全体に浸透性塗料30を塗布することができる。従って、本実施形態1によれば、化粧基材10の被塗布面の形状に拘わらず、一度の塗布処理で被塗布面全体に浸透性塗料30を安定して塗布可能な塗布工程を備えた化粧板の製造方法を提供することができる。
【0106】
また、本実施形態1の化粧板の製造方法では、従来の化粧板の製造方法と異なり、塗布工程において、塗布ロール41の外周面41aを化粧基材10の被塗布面の一部(表側端面17b、18b)にしか当接させない一方、当接時に浸透性塗料30が当接面間からはみ出して被塗布面全体(表側端面17b、18b及び面取部16の外表面16aの少なくとも一部)に拡がるように浸透性塗料30の粘度と浸透性塗料30の各塗布ロール41への供給量とを調整することとしている。そのため、本実施形態1によれば、面取り加工が施された化粧基材10に対して化粧面13に垂直な表側端面17b、18bだけでなく面取部16の外表面16aの少なくとも一部も被塗布面とする場合であっても、塗布工程において、一度の塗布処理で被塗布面全体に浸透性塗料30を塗布することができる。
【0107】
また、本実施形態1の化粧板の製造方法では、塗布工程において、化粧面13が下向きの状態の化粧基材10に対して浸透性塗料30を塗布することとしている。これにより、塗布ロール41の外周面41aが化粧基材10の表側端面17b、18bに当接する際に、当接面間からはみ出した浸透性塗料30が、当接面の下方の面取部16の外表面16aに拡がり易くなる。よって、本実施形態1の化粧板の製造方法によれば、塗布ロール41の外周面41aに定量供給する浸透性塗料30の供給量を増大させることなく容易に化粧基材10の表側端面17b、18b及び面取部16の外表面16aの少なくとも一部に浸透性塗料30を塗り拡げることができる。
【0108】
《発明の実施形態2》
実施形態2は、実施形態1の塗布装置40及び塗布方法を一部変更するものである。
【0109】
実施形態2では、塗布装置40は、図8に示すように、一対の塗布ロール41,41の距離が実施形態1よりも若干大きくなるように形成されている。そして、実施形態2では、図8に示すように、塗布装置40の一対の塗布ロール41,41が、化粧基材10の被塗布面の一部である表側端面17b,18bに当接しないが、近接する位置に配置されている。具体的には、一対の塗布ロール41,41は、回転時に、遠心力によって外周面において径方向外側に膨らむ浸透性塗料30が、表側端面17b,18bに接触すると共に、表側端面17b,18bに接触した浸透性塗料30が変形して塗布ロール41,41の外周面から上下にはみ出して面取部16の外表面16aにも拡がるような位置に設けられている。
【0110】
このような塗布装置40により、実施形態2では、一対の塗布ロール41,41の外周面41a,41aを化粧基材10の被塗布面に当接させることなく浸透性塗料30が被塗布面に塗布される。具体的には、図8(a),(b)に示すように、実施形態2では、各塗布ロール41の外周面41aにおいて径方向外側に膨らんだ浸透性塗料30が、表側端面17b,18bに接触することにより変形して表側端面17b,18bだけでなく面取部16の外表面16aにも拡がる。このようにして、表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部からなる被塗布面全体に浸透性塗料30が塗布される。なお、実施形態2においても、低粘度の浸透性塗料30を用いているため、化粧基材10の被塗布面に塗布された浸透性塗料30は、瞬間的に被塗布面から内部に浸透する(図8(c)を参照)。
【0111】
以上のように、実施形態2においても、各塗布ロール41の外周面41aに塗料を多量に供給し、遠心力を利用して各塗布ロール41の外周面41aにおいて浸透性塗料30を径方向外側に膨らませ、膨らませた浸透性塗料30を化粧基材10の被塗布面に接触させることにより、被塗布面に浸透性塗料30を塗布するようにしたため、実施形態1と同様に、化粧基材10の被塗布面の形状に拘わらず、一度の塗布処理で被塗布面全体に浸透性塗料30を安定して塗布可能な塗布装置40及び塗布方法、並びにこれらを用いた化粧板の製造方法を提供することができる。
【0112】
《発明の実施形態3》
実施形態3は、図9に示すように、実施形態1の塗布装置40及び塗布方法を用いて、面取部16の外表面(面取り面)16aが湾曲面で形成された化粧基材10に対して浸透性塗料30を塗布するものである。
【0113】
実施形態3では、化粧基材10は、面取部16の外表面16aが、断面形状が円弧形状の湾曲面で形成されている。このように、実施形態3では、化粧基材10の側方端面の形状が実施形態1と異なる以外は、実施形態1と同様に構成され、実施形態1と同様の塗布装置40及び塗布方法によって浸透性塗料30が化粧基材10の側方端部に塗布される。
【0114】
即ち、図9(a)に示すように、各塗布ロール41では、塗布ロール41が回転することによって作用する遠心力により、外周面に供給された浸透性塗料30が塗布ロール41の径方向外側に膨らむように変形する。このように外周面において浸透性塗料30が径方向外側に膨らんだ状態の一対の塗布ロール41,41間に、化粧基材10が搬送されて浸透性塗料30が化粧基材10の被塗布面に接触することにより、浸透性塗料30が化粧基材10の被塗布面に塗布される。
【0115】
具体的には、まず、各塗布ロール41の外周面41aにおいて径方向外側に膨らんだ浸透性塗料30は、各塗布ロール41の外周面41aが化粧基材10の表側端面17b、18bに当接する前に、先に表側端面17b、18bに接触する。そして、図9(b)に示すように、各塗布ロール41の外周面41aが化粧基材10の表側端面17b、18bに当接すると、浸透性塗料30は、各塗布ロール41と化粧基材10の当接面間からはみ出して表側端面17b,18bだけでなく面取部16の外表面16aにも拡がる。このようにして、表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の外表面16aの一部からなる被塗布面全体に浸透性塗料30が塗布される。なお、実施形態3においても、低粘度の浸透性塗料30を用いているため、化粧基材10の被塗布面に塗布された浸透性塗料30は、瞬間的に被塗布面から内部に浸透する(図9(c)を参照)。
【0116】
以上により、本発明に係る塗布装置40及び塗布方法によれば、面取部16の外表面(面取り面)16aが湾曲面で形成された化粧基材10に対しても、一度の塗布処理で被塗布面全体に浸透性塗料30を塗布することができる。
【0117】
《発明の実施形態4》
実施形態4は、図10に示すように、実施形態1の塗布装置40及び塗布方法を用いて、側方端面全体が湾曲面で形成された化粧基材10に対して浸透性塗料30を塗布するものである。
【0118】
実施形態4では、化粧基材10は、側方端部に化粧面13に垂直な垂直端面(実施形態1の表側端面17b,18b)を有さず、各側方端面(各長辺側面14,各短辺側面15)全体が、断面形状が円弧形状の湾曲面で形成されている。このように、実施形態4では、化粧基材10の側方端面の形状が実施形態1と異なる以外は、実施形態1と同様に構成され、実施形態1と同様の塗布装置40及び塗布方法によって浸透性塗料30が化粧基材10の側方端部に塗布される。
【0119】
即ち、図10(a)に示すように、各塗布ロール41では、塗布ロール41が回転することによって作用する遠心力により、外周面に供給された浸透性塗料30が塗布ロール41の径方向外側に膨らむように変形する。このように外周面において浸透性塗料30が径方向外側に膨らんだ状態の一対の塗布ロール41,41間に、化粧基材10が搬送されて浸透性塗料30が化粧基材10の被塗布面に接触することにより、浸透性塗料30が化粧基材10の被塗布面に塗布される。
【0120】
具体的には、まず、各塗布ロール41の外周面41aにおいて径方向外側に膨らんだ浸透性塗料30は、各塗布ロール41の外周面41aが化粧基材10の湾曲面からなる側方端面14,15に当接する前に、先に側方端面14,15に接触する。そして、図10(b)に示すように、各塗布ロール41の外周面41aが化粧基材10の側方端面14,15に当接すると、浸透性塗料30は、各塗布ロール41と化粧基材10の当接部間からはみ出して側方端面14,15全体に拡がる。このようにして、側方端面14,15からなる被塗布面全体に浸透性塗料30が塗布される。なお、実施形態4においても、低粘度の浸透性塗料30を用いているため、化粧基材10の被塗布面に塗布された浸透性塗料30は、瞬間的に被塗布面から内部に浸透する(図10(c)を参照)。
【0121】
以上により、本発明に係る塗布装置40及び塗布方法によれば、側方端面全体が湾曲面で形成された化粧基材10に対しても、一度の塗布処理で被塗布面全体に浸透性塗料30を塗布することができる。
【0122】
《発明の実施形態5》
実施形態5は、実施形態1の塗布装置40及び塗布方法を一部変更するものである。
【0123】
実施形態5では、各塗布ロール41が分厚く形成され、塗布装置40の各塗料供給部43が、対応する塗布ロール41の外周面41aの化粧基材10の被塗布面に対応する部分であって高さの異なる複数箇所(図11では3箇所)に供給するように構成されている。
【0124】
具体的には、図11に示すように、実施形態5では、各塗布ロール41は、化粧基材10の表側端面17b,18bの鉛直方向の長さ(例えば、5.0mm)よりも分厚い厚さに形成されている。各塗料供給部43は、水平方向に延び、対応する塗布ロール41の外周面41aに向かって開口する筒状部分43aを、3本有している。3本の筒状部分43aは、上下方向に等間隔に配置されている。各筒状部分43aは、実施形態1の筒状部分43aよりも小径に形成されている。塗料供給部43は、筒状部分43aから流出させた浸透性塗料30が、下方に垂れることなく塗布ロール41の外周面41aに供給される位置に設けられている。
【0125】
実施形態5では、各塗料供給部43は、3本の筒状部分43aから所定流量の浸透性塗料30を流出させる。3本の筒状部分43aから流出した浸透性塗料30は、対応する塗布ロール41の外周面41aの高さの異なる箇所に接触する。これにより、塗布ロール41の外周面41aの高さの異なる複数箇所(図11では3箇所)に、浸透性塗料30が供給されることとなる。
【0126】
以上のように、実施形態5では、塗料供給部43によって塗布ロール41の外周面41aの化粧基材10の被塗布面に対応する部分であって高さの異なる複数箇所に浸透性塗料30が供給される。図11中の拡大図に示すように、各塗布ロール41の外周面41aの複数箇所に供給された浸透性塗料30は、塗布ロール41が回転することによって作用する遠心力により、塗布ロール41の径方向外側に膨らむように変形し、化粧基材10の側方端部には、塗布ロール41の外周面41aの異なる高さ位置において径方向外側に膨らんだ複数(3つ)の浸透性塗料30の塊が接触する。複数(3つ)の浸透性塗料30の塊は、化粧基材10の側方端部に接触することによって変形し、被塗布面全体に拡がることにより、被塗布面全体に浸透性塗料30が塗布される。
【0127】
ところで、被塗布面の上下方向の長さが比較的長い化粧基材10に対して浸透性塗料30を塗布する場合、分厚い塗布ロール41の1箇所に浸透性塗料30を供給して化粧基材10に塗布する塗布方法では、塗布ロール41の外周面41aにおいて径方向外側に膨らむ浸透性塗料30の塊が大きくなり過ぎて垂れてしまう虞がある。特に、本願のように化粧基材10に浸透するような低粘度の浸透性塗料30を用いる場合、浸透性塗料30が垂れる虞が高くなる。
【0128】
しかしながら、実施形態5によれば、被塗布面の上下方向の長さが比較的長い化粧基材10に対して浸透性塗料30を塗布する場合であっても、塗布ロール41の外周面41aの被塗布面に対応する部分であって高さの異なる複数箇所に浸透性塗料30を供給し、異なる高さの複数箇所に複数の浸透性塗料30の小さい塊を形成してこれを被塗布面に接触させて浸透性塗料30を塗布するようにしているため、化粧基材10に浸透するような低粘度の浸透性塗料30を用いても、浸透性塗料30が下方に垂れてしまうのを防止することができる。また、実施形態5によれば、浸透性塗料30の大きな塊を形成するのではなく、小さな複数の塊を形成することにより、塗布量が多くなりすぎることなく、広い被塗布面に浸透性塗料30を均等に塗布することができる。
【0129】
《発明の実施形態6》
実施形態6は、実施形態5の塗布装置40を用いて実施形態4と同様の側方端面全体が湾曲面で形成された化粧基材10に対して浸透性塗料30を塗布するものである。
【0130】
実施形態6では、実施形態5と同様に、各塗布ロール41が分厚く形成され、塗布装置40の各塗料供給部43が、対応する塗布ロール41の外周面41aの高さの異なる複数箇所(図12では3箇所)に供給するように構成されている。
【0131】
実施形態6では、実施形態4と同様に、化粧基材10は、側方端部に化粧面13に垂直な垂直端面(実施形態1の表側端面17b,18b)を有さず、各側方端面(各長辺側面14,各短辺側面15)全体が、断面形状が円弧形状の湾曲面で形成されている。
【0132】
実施形態6では、実施形態5と同様の塗布装置40及び塗布方法によって浸透性塗料30が化粧基材10の側方端部に塗布される。
【0133】
具体的には、実施形態6では、塗料供給部43によって塗布ロール41の外周面41aの化粧基材10の被塗布面に対応する部分であって高さの異なる複数箇所に浸透性塗料30が供給される。図12(a)に示すように、各塗布ロール41では、塗布ロール41が回転することによって作用する遠心力により、外周面に供給された浸透性塗料30が塗布ロール41の径方向外側に膨らむように変形する。そして、化粧基材10の側方端部には、塗布ロール41の外周面41aの異なる高さ位置において径方向外側に膨らんだ複数(3つ)の浸透性塗料30の塊が接触する。図12(b)に示すように、複数(3つ)の浸透性塗料30の塊は、化粧基材10の側方端部に接触することによって変形し、被塗布面全体に拡がる。図12(c)に示すように、実施形態6では、このようにして被塗布面全体に浸透性塗料30が塗布される。
【0134】
以上により、実施形態6によっても、実施形態4と同様に、側方端面全体が湾曲面で形成された化粧基材10に対しても、一度の塗布処理で被塗布面全体に浸透性塗料30を塗布することができる。また、実施形態6によれば、実施形態5と同様に、被塗布面の上下方向の長さが比較的長い化粧基材10に対して浸透性塗料30を塗布する場合であっても、各塗布ロール41の外周面41aにおいて浸透性塗料30が下方に垂れてしまうのを防止することができ、化粧基材10の被塗布面に確実に浸透性塗料30を塗布することができる。
【0135】
《その他の実施形態》
本発明の塗布装置40で浸透性塗料30を塗布する対象は、実施形態1~5のような側方端面形状を有する化粧基材10に限られない。本発明の塗布装置40は、いかなる形状の側方端面を有する化粧基材10にも適用可能である。例えば、側方端面に凹みを有するような化粧基材10に対しても、一度の塗布処理で被塗布面全体に浸透性塗料30を塗布することができる。
【0136】
また、上記実施形態1~4では、塗布ロール41を、化粧基材10の被塗布面の鉛直方向の長さよりも薄い厚さに形成し、塗布ロール41の外周面の厚さ方向の全域に浸透性塗料30を供給すると共に、化粧基材10に接触した浸透性塗料30が塗布ロール41の外周面から上下にはみ出して被塗布面全体に塗り拡がるように浸透性塗料30の粘度と供給量を調整していた。しかしながら、塗布ロール41は、化粧基材10の被塗布面の鉛直方向の長さと同等の厚さになるように形成されていてもよく、実施形態5,6のように、化粧基材10の被塗布面の鉛直方向の長さよりも厚い厚さになるように形成されていてもよい。分厚い塗布ロール41を用いる場合、塗布ロール41の外周面41aへの浸透性塗料30の供給位置(高さ)を変更することにより、被塗布面の高さ位置(下端の化粧面13を基準とした高さ)の異なる複数種の化粧基材10に対して浸透性塗料30の塗布が可能になる。
【0137】
なお、浸透性塗料30の供給位置の変更は、例えば、塗料供給部43の筒状部分43aの高さを変更することでもよく、塗料供給部43が高さの異なる複数の筒状部分43aを有している場合には、使用する筒状部分43aを変更することでもよい。
【0138】
また、上記実施形態1,2では、上記塗布装置40及び上記塗布方法を用いて、面取り加工が施された化粧基材10の化粧面13に垂直な表側端面17b、18bだけでなく面取部16の外表面16aも被塗布面として浸透性塗料30を塗布する場合について説明した。しかしながら、本発明に係る塗布装置によって浸透性塗料30が塗布される被塗布面は、化粧基材10の面取部16の外表面16aの少なくとも一部が含まれないものであってもよい。つまり、上記実施形態1,2において、上記塗布装置40を用いて、化粧面13に垂直な表側端面17b、18bの面取部16に連続する部分のみに浸透性塗料30を塗布することとしてもよい。
【0139】
また、上記各実施形態では、化粧基材10の長辺側面対14,14を先に切削加工処理及び塗布処理が施される第1側面対、短辺側面対15,15を後で切削加工処理及び塗布処理が施される第2側面対としていた。しかしながら、本発明に係る化粧基材の第1側面対と第2側面対は、上記各実施形態と逆であってもよい。即ち、化粧基材10の短辺側面対15,15を先に切削加工処理及び塗布処理が施される第1側面対、長辺側面対14,14を後で切削加工処理及び塗布処理が施される第2側面対としてもよい。
【0140】
また、上記実施形態1~3では、第1及び第2塗布工程において、化粧基材10の四周側面14,14,15,15の表側端面17b,18b及び該表側端面17b,18bに連続する面取部16の一部に浸透性塗料30を塗布して浸透させていたが、本発明の実施形態はこれに限られない。第1及び第2塗布工程において、化粧基材10の四周側面14,14,15,15の表側端面17b,18bのみに浸透性塗料30を塗布して浸透させることとしてもよく、また、化粧基材10の四周側面14,14,15,15の外表面全体に浸透性塗料30を塗布して浸透させてもよい。なお、いずれの場合も、面取部16の外表面16aに浸透性塗料30を塗布する場合には、浸透性塗料30が化粧基材10の化粧面13に付着しないように浸透性塗料30の粘度と浸透性塗料30の各塗布ロール41への供給量を調整して塗布する。
【0141】
また、上記各実施形態では、第1及び第2塗布工程では、化粧基材10の被塗布面に浸透性塗料30を塗布して浸透させる塗布浸透処理を1回のみ行うこととしていたが、本発明の実施形態はこれに限られない。本発明に係る塗布装置40及び塗布方法は、第1及び第2塗布工程において、塗布浸透処理を複数回ずつ行うものであってもよい。その場合、塗布装置40は、化粧基材10の搬送方向に順に並ぶ複数の塗布ロール対41,41を備え、塗布浸透処理を複数回連続して行うことができるように構成されていればよい。なお、一の塗布ロール対41,41によって塗布された浸透性塗料30が完全に浸透した後に(浸透性塗料30が被塗布面に残っていない状態で)、次の塗布ロール対41,41によって浸透性塗料30が塗布されるように、所定の間隔を空けて複数の塗布ロール対41,41を配置する。
【0142】
ところで、第1及び第2塗布工程において、希釈剤で希釈した低粘度の浸透性塗料30を一度に多量に塗布すると、浸透性塗料30が化粧基材10の内部深くまで浸透してしまい、被塗布面の表層に樹脂(シール剤)を集中させることができない。また、低粘度の浸透性塗料30を一度に多量に塗布すると、塗布された浸透性塗料30が被塗布面(面取部16の外表面16a)を超えて化粧面13に食み出し、化粧基材10の化粧面13を汚してしまう虞がある。
【0143】
これに対し、上述のように、第1及び第2塗布工程において、1度に多量に浸透性塗料30を塗布するのではなく、複数回に分けて浸透性塗料30を塗布浸透させることとすれば、化粧基材10の化粧面13を汚すことなく、化粧基材10の被塗布面の表層に樹脂(シール剤)を集中させることができる。よって、より防水性に優れた化粧板1を製造することができる。
【0144】
また、上記各実施形態では、第1及び第2塗布工程において塗布浸透処理を1度しか行わないため、防水性の観点からは、25℃での粘度が40~60mPa・s程度に希釈された浸透性塗料30を用いることが好ましいが、塗布浸透処理を複数回行うのであれば、25℃での粘度が20~40mPa・s程度に希釈した浸透性塗料30を用いても、25℃での粘度が40~60mPa・sの1度塗りと同等の防水性を有する樹脂含浸層31を形成することが可能である。
【0145】
また、上記各実施形態では、着色層形成工程と透明樹脂層形成工程とを行って着色層21と透明樹脂層22とを形成することとしていたが、着色層形成工程は省略して着色層21を形成しないこととしてもよい。
【0146】
また、上記各実施形態では、着色層形成工程において、化粧基材10の四周の面取部16の外表面16aのみに着色層21を形成することとしていたが、着色層21は、化粧面13と面取部16の外表面16aの両方に形成してもよい。
【0147】
また、上記各実施形態では、透明樹脂層形成工程において、化粧基材10の化粧面13及び面取部16を一体的に覆うように透明樹脂層22を形成していたが、透明樹脂層22は、化粧面13及び面取部16だけでなく表側端面17b,18bの面取部16に連続する一部まで一体的に覆うものであってもよい。
【0148】
また、上記各実施形態では、化粧板1を床材として用いることとしていたが、化粧板1の用途は床材に限られない。その他、例えば、壁材等に用いることも勿論可能である。
【0149】
また、上記各実施形態では、ポリオールとHDIとを組み合わせたものを湿気硬化型樹脂組成物として用いていたが、HDIのみ、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)のみ、HDIとMDI、ポリオールとMDI、ポリオールとHDIとMDI等を湿気硬化型樹脂組成物として用いることができる。また、希釈剤としては、酢酸ブチルの他、ウレタンシンナー等のHDIやMDIの溶解性に優れた揮発性の高い溶剤を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明は、塗布装置、塗布方法及び化粧板の製造方法に有用である。
【符号の説明】
【0151】
1 化粧板
10 化粧基材
13 化粧面
16 面取部
16a 外表面(面取り面)
17 雌実
17b 表側端面(垂直端面)
18 雄実
18b 表側端面(垂直端面)
30 浸透性塗料(塗料)
40 塗布装置
41 塗布ロール(回転体)
42 駆動部
43 塗料供給部
44 掻き取りブレード(除去部)
【要約】
【課題】化粧基材の被塗布面の形状に拘わらず、一度の塗布処理で被塗布面全体に塗料を安定して塗布可能な塗布装置及び化粧板の製造方法を提供する。
【解決手段】塗布装置40は、化粧基材10の搬送経路の側方に設けられ、鉛直軸周りに回転する塗布ロール41と、塗布ロール41を回転駆動する駆動部42と、駆動部42によって回転駆動される塗布ロール41の外周面41aに浸透性塗料30を定量供給する塗料供給部43とを備えている。塗布装置40は、化粧基材10の被塗布面が、塗布ロール41が回転することによって作用する遠心力によって塗布ロール41の外周面41aにおいて径方向外側に膨らんだ浸透性塗料30に接触することにより、化粧基材10の被塗布面に浸透性塗料30が塗布されるように構成されている。
【選択図】図4
図1
図2
図3
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