(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】引戸装置
(51)【国際特許分類】
E05D 15/10 20060101AFI20220104BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20220104BHJP
E05F 1/16 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
E05D15/10
E05D15/06 119
E05F1/16 B
(21)【出願番号】P 2020549720
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2020020896
(87)【国際公開番号】W WO2021029120
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2019147829
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【氏名又は名称】塩島 利之
(72)【発明者】
【氏名】飯島 忠
(72)【発明者】
【氏名】森 一真
(72)【発明者】
【氏名】河本 拓真
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-285942(JP,A)
【文献】特開2012-107415(JP,A)
【文献】特表2015-519490(JP,A)
【文献】特許第5952970(JP,B2)
【文献】米国特許第9388622(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/10
E05D 15/06
E05F 1/00-3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸に取り付けた支持軸を直線的に誘導する直線部、及び前記直線部に対して傾斜して前記支持軸を斜めに誘導する傾斜部を有するレールと、
引戸を閉じる際、前記レールに設けたトリガを捕捉して、前記レールの前記直線部に沿って直線的に移動する引込装置と、
前記引込装置に連結され、前記引込装置の直線的な移動に伴って前記支持軸を前記傾斜部に沿って移動させる引込力伝達部と、を備える引戸装置。
【請求項2】
引戸に取り付けた支持軸を直線的に誘導する直線部、及び前記直線部に対して傾斜して前記支持軸を斜めに誘導する傾斜部を有するレールと、
引戸を閉じる際、引込装置によって捕捉されて、前記レールの前記直線部に沿って直線的に移動するトリガと、
前記トリガに連結され、前記トリガの直線的な移動に伴って前記支持軸を前記傾斜部に沿って移動させる引込力伝達部と、を備える引戸装置。
【請求項3】
前記引込力伝達部は、
前記レールの少なくとも前記傾斜部を走行するローラ走行体と、
前記ローラ走行体と前記引込装置に回転可能に連結されるアームと、を備えることを特徴とする請求項
1に記載の引戸装置。
【請求項4】
前記アームが1つ又は複数のリンクを備えることを特徴とする請求項3に記載の引戸装置。
【請求項5】
前記支持軸が前記ローラ走行体又は前記アームに支持されることを特徴とする請求項3又は4に記載の引戸装置。
【請求項6】
前記引込力伝達部は、
前記レールを走行し、前記引込装置に回転可能に連結されるローラ走行体を備え、
前記支持軸が前記ローラ走行体に支持されることを特徴とする請求項1に記載の引戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸を、開口を塞ぐ閉じ位置と開口に隣接する壁等に対面する開き位置との間を移動させる引戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の引戸装置として、出願人は、特許文献1に記載の引戸装置を提案している。この引戸装置は、引戸に取り付けた支持軸を誘導するレールを備える。レールは、支持軸を直線的に誘導する直線部と、直線部に対して傾斜して支持軸を斜めに誘導する傾斜部と、を備える。レールが支持軸を揺動することにより、引戸が開口を塞ぐ閉じ位置と開口に隣接する壁に対面する開き位置との間を移動する。この引戸装置によれば、引戸を閉じたときに、引戸と壁面がフラットになるので、すっきりとしたスマートな空間を演出することができる。また、引戸を開いたときに、大きな開口を形成することができる。
【0003】
引戸装置には、引戸を閉じ位置に引き込む引込装置が設けられる。引込装置は、レール側、すなわちレールの傾斜部に配置されており、直線部から傾斜部に移動したローラ走行体を捕捉し、ローラ走行体に取り付けた支持軸を閉じ位置に引き込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の引戸装置においては、上記のように引込装置がレールの傾斜部に配置されるので、レールの傾斜部が大型化したり、レールの傾斜部の見栄えが悪くなるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、レールの直線部に沿って直線的に移動する引込装置又はレールの直線部に沿って直線的に移動するトリガを用いて、引戸に取り付けた支持軸をレールの傾斜部に沿って移動させることができる引戸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、引戸に取り付けた支持軸を直線的に誘導する直線部、及び前記直線部に対して傾斜して前記支持軸を斜めに誘導する傾斜部を有するレールと、引戸を閉じる際、前記レールに設けたトリガを捕捉して、前記レールの前記直線部に沿って直線的に移動する引込装置と、前記引込装置に連結され、前記引込装置の直線的な移動に伴って前記支持軸を前記傾斜部に沿って移動させる引込力伝達部と、を備える引戸装置である。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の他の態様は、引戸に取り付けた支持軸を直線的に誘導する直線部、及び前記直線部に対して傾斜して前記支持軸を斜めに誘導する傾斜部を有するレールと、引戸を閉じる際、引込装置によって捕捉されて、前記レールの前記直線部に沿って直線的に移動するトリガと、前記トリガに連結され、前記トリガの直線的な移動に伴って前記支持軸を前記傾斜部に沿って移動させる引込力伝達部と、を備える引戸装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、レールの直線部に沿って直線的に移動する引込装置を用いて、引戸に取り付けた支持軸をレールの傾斜部に沿って移動させることができる。
【0010】
本発明の他の態様によれば、レールの直線部に沿って直線的に移動するトリガを用いて、引戸に取り付けた支持軸をレールの傾斜部に沿って移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態の引戸装置の斜視図である(引戸が閉じ位置にある状態)。
【
図2】本実施形態の引戸装置の斜視図である(引戸が所定位置まで開いた状態)。
【
図3】レールの斜視図である(
図3(a)はレールの上面側斜視図、
図3(b-1)は傾斜部の上面側斜視図、
図3(b-2)は傾斜部の下面側斜視図、
図3(c)は直線部の上面側斜視図)。
【
図4】レール、引込装置、引込力伝達部の上面側斜視図である。
【
図5】引込装置、引込力伝達部の上面側斜視図である。
【
図6】
図6(a)はアームとローラ走行体との連結部の斜視図であり、
図6(b)はアームと引込装置の連結部の斜視図である。
【
図7】本実施形態の引戸装置の動作図である(引込装置がトリガを捕捉する前の状態、
図7(a)は水平断面図であり、
図7(b)は
図7(a)のb-b線断面図である)。
【
図8】本実施形態の引戸装置の動作図である(引込装置がトリガを捕捉した状態、
図8(a)は水平断面図であり、
図8(b)は
図8(a)のb-b線断面図である)。
【
図9】本実施形態の引戸装置の動作図である(引戸が閉じ位置にある状態、
図9(a)は水平断面図であり、
図9(b)は
図9(a)のb-b線断面図である)。
【
図12】ローラ走行体とブラケットの斜視図である。
【
図14】ブラケットの上下調節を示す図である(
図14(a)は調節後のブラケットの正面図を示し、
図14(b)は調節前のブラケットの正面図を示す)。
【
図15】ブラケットの左右調節を示す図である(
図15(a)は左方向に移動させたブラケットの正面図を示し、
図15(b)はブラケットの側面図を示し、
図15(c)は右方向に移動させたブラケットの側面図を示す)。
【
図16】ブラケットの前後調節を示す図である(
図16(a)は
図16(b)のa-a線断面図を示し、
図16(b)はブラケットの正面図を示す)。
【
図17】本発明の第2の実施形態の引戸装置(引込装置と引込力伝達部)を示す斜視図である。
【
図18】本発明の第3の実施形態の引戸装置(引込装置と引込力伝達部)を示す斜視図である。
【
図19】本発明の第4の実施形態の引戸装置(引込装置と引込力伝達部)を示す斜視図である。
【
図20】本発明の第5の実施形態の引戸装置の斜視図である(引戸が閉じ位置にある状態)。
【
図21】本発明の第5の実施形態の引戸装置の斜視図である(引戸が所定位置まで開いた状態)。
【
図22】本発明の第5の実施形態の引戸装置のトリガ、引込力伝達部の上面側斜視図である。
【
図23】本発明の第5の実施形態の引戸装置の動作図である(引込装置がトリガを捕捉する前の状態、
図23(a)は水平断面図であり、
図23(b)は側面図である)。
【
図24】本発明の第5の実施形態の引戸装置の動作図である(引込装置がトリガを捕捉した状態、
図24(a)は水平断面図であり、
図24(b)は側面図である)。
【
図25】本発明の第5の実施形態の引戸装置の動作図である(引戸が閉じ位置にある状態、
図25(a)は水平断面図であり、
図25(b)は側面図である)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態の引戸装置を説明する。ただし、本発明の引戸装置は種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明の範囲を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
(第1の実施形態)
【0013】
図1及び
図2は、本発明の第1の実施形態の引戸装置1(引戸2の上面側斜視図)を示す。
図1は引戸2が閉じ位置にある状態を示し、
図2は閉じ位置から開き方向に所定位置まで引戸2が開いた状態を示す。なお、以下では、説明の便宜上、引戸を正面視したときの方向、すなわち
図1に示す戸先・戸尻方向及び奥行方向を用いて引戸装置1の構成を説明する。
【0014】
3は枠、4は開口、5は壁、6a,6bはレール、7a,7bは支持軸である。レール6a,6bが引戸2に取り付けた支持軸7a,7bを誘導することにより、引戸2は、開口4を塞ぐ閉じ位置(
図1参照)と開口4に隣接する壁5に対面する開き位置との間を移動する。なお、引戸2は、
図2に示す所定位置から
図2の戸尻方向にある開き位置まで移動する。枠3の開口4の上部には、レールを隠すための目隠し板8が設けられる。
【0015】
レール6a,6bは、枠3の戸先側に配置される戸先側のレール6aと、枠3の戸尻側に配置される戸尻側のレール6bと、を備える。レール6aは、直線部11と、直線部11の端部に接続され、直線部11に対して傾斜する傾斜部12と、を備える。レール6bも、直線部11と、直線部11の端部に接続され、直線部11に対して傾斜する傾斜部12と、を備える。レール6aがレール6bよりも奥側にかつ戸先側に配置される。レール6aの直線部11とレール6bの直線部11とは平行である。
【0016】
支持軸7a,7bは、レール6aを移動する戸先側の支持軸7aと、レール6bを移動する戸尻側の支持軸7bと、を備える。支持軸7aは、レール6aを走行するローラ走行体21aに支持される(
図9参照)。支持軸7bは、レール6bを走行するローラ走行体21bに支持される(
図9参照)。支持軸7aは、ブラケット13aを介して引戸2の戸先側に取り付けられる。支持軸7bは、ブラケット13bを介して引戸2の戸尻側に取り付けられる。ブラケット13aの奥行方向の長さは、ブラケット13bの奥行方向の長さよりも長い。
【0017】
図1に示すように、引戸2が閉じ位置にあるとき、正面視した引戸2と壁5の前面がフラットになる(
図9(a)参照)。引戸2を開けば、レール6a,6bの傾斜部12が支持軸7a,7bを揺動し、引戸2が奥側にかつ戸尻側に移動する。その後、レール6a,6bの直線部11が支持軸7a,7bを揺動し、引戸2が直線的に開き位置まで移動する。
【0018】
図3は、レール6aの詳細図を示す。
図3(a)(c)に示すように、レール6aの直線部11は、断面略C字状の筒状に形成される。直線部11の下部には、長さ方向に延びる溝11aが形成される。溝11aの両脇を引込装置15(
図5参照)のローラ16が走行し、またローラ走行体21a(
図5参照)のローラ22が走行する。また、溝11aの内側を引込装置15(
図5参照)の振止めローラ17が走行し、またローラ走行体21a(
図5参照)の振止めローラ23が走行する。
【0019】
図3(a)に示すように、レール6aの直線部11には、傾斜部12が接続される。傾斜部12も、断面略C字状に形成される。傾斜部12の上部には、フランジ12aが形成される。
図3(b-2)に示すように、傾斜部12の下部には、湾曲した溝12bが形成される。この溝12bは、直線部11の溝11aに繋がる円弧溝12b1と、溝11aに対して傾斜する直線溝12b2と、を備える。なお、溝12bの全体を円弧溝にしてもよい。溝12bの両脇をローラ走行体21a(
図5参照)のローラ22が走行する。溝12bの内側をローラ走行体21a(
図5参照)の振止めローラ23が走行する。
【0020】
レール6b(
図1参照)は、レール6aと略同様な構成であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0021】
図4はレール6aと引込装置15を示し、
図5は引込装置15を示す。引込装置15はレール6aにのみ配置されていて、レール6bに配置されていない(
図9(a)参照)。なお、引込装置15をレール6bにのみ配置してもよいし、引込装置15をレール6aとレール6bの両方に配置してもよい。
【0022】
18はレール6aに設けたトリガである。トリガ18は図示しないねじ等によりレール6a又は枠3に締結される。引戸2を閉じる際、引込装置15は、トリガ18を捕捉して、レール6aの直線部11に沿って直線的に移動する。引込装置15の移動方向と引込力の伝達方向を矢印Aで示す。引込装置15は、トリガ18を捕捉した後、
図4に示す閉じ位置まで移動する。
【0023】
図5に示すように、引込力伝達部20は、ローラ走行体21aと、ローラ走行体21aと引込装置15に回転可能に連結されるアーム19と、を備える。アーム19は1つのリンクから構成される。
図6(b)に示すように、アーム19の一端部は、引込装置15の端部に垂直軸26の回りを回転可能に連結される。
図6(a)に示すように、アーム19の他端部は、ローラ走行体21aに垂直軸25の回りを回転可能に連結される。
【0024】
図7ないし
図9は、引戸2を閉じる際の引戸装置1の動作図を示す。
図7に示すように、引戸2を閉じる際、引戸2と一緒に引込装置15がレール6aの直線部11に沿って移動する。
図7は、引込装置15がトリガ18を捕捉する前の状態を示す。
【0025】
図8に示すように、引込装置15がトリガ18の軸部18aを捕捉すると、引込装置15は矢印A方向に引込力を発生させ、矢印A方向に直線的に移動する。引込装置15の引込力は、アーム19を介してローラ走行体21aに伝わる。ローラ走行体21aは、レール6aの傾斜部12に沿って矢印B方向へ移動する。ローラ走行体21aの矢印B方向への移動に伴って、ローラ走行体21bも移動する。ローラ走行体21a,21bには、支持軸7a,7b(
図1参照)が取り付けられるので、支持軸7a,7bが傾斜部12に沿って移動する。このため、引戸2を矢印B方向に斜めに引き込むことが可能になる。
【0026】
図9に示すように、引込装置15が矢印A方向にさらに移動すると、ローラ走行体21aが傾斜部12の先端近傍まで移動し、引戸2が閉じ位置に移動する。引戸2の閉じ位置は、引込装置15の引込力によって保持される。引戸2を開く際には、上記と逆の動作が行われる。
【0027】
以下に引込装置15の構成の一例を説明する。
図10は、引込装置15の分解図である。引込装置15は、ベース30、ベース30に対して相対的にスライド可能なキャッチャ31a、ベース30とキャッチャ31aとの間に配置されるばね32aを基本構成とする。キャッチャ31aがトリガ18を捕捉すると、キャッチャ31aが回転してキャッチャ31aとベース30の湾曲溝30aとの係合が外れ、ばね32aのばね力によってベース30が図中戸先方向に移動する。ベース30の移動は、第1リニアダンパ33、第2リニアダンパ34によって制動される。
【0028】
この実施形態では、引戸2を閉じる際だけでなく、開く際にも引込力を発生させるように、キャッチャ31a,31b、ばね32a,32bが2つ設けられる。なお、引戸2を閉じる際にのみ引込力を発生させるように、キャッチャ31a、ばね32aを1つ設けてもよい。
【0029】
以下に引込装置15のより詳細な構成を説明する。ベース30には、第1スライダアッシ35と第2スライダアッシ36がスライド可能に設けられる。第1スライダアッシ35と第2スライダアッシ36との間には、ダンパアッシ37がスライド可能に設けられる。ベース30には、カバー39(
図5参照)が取り付けられる。カバー39には、トリガ18の軸部18aを受け入れる溝39aが形成される。
【0030】
図11は、第1スライダアッシ35、第2スライダアッシ36、ダンパアッシ37の分解図を示す。第1スライダアッシ35は、スライダ本体41、キャッチャ31a、プッシャ43、誤動作防止カム44を備える。
【0031】
上記のように、キャッチャ31aがベース30の湾曲溝30aに係合することにより、キャッチャ31aの待機位置が保持される。プッシャ43は、キャッチャ31aを待機位置に保持するようにキャッチャ31aを押す。スライダ本体41は、ベース30に対するキャッチャ31aの相対的なスライドを安定させるために設けられる。誤動作防止カム44は、誤動作によりキャッチャ31aが待機位置から外れた場合、キャッチャ31aを待機位置に復帰させるために設けられる。
【0032】
第2スライダアッシ36は、第1スライダアッシ35と同様に、スライダ本体41、キャッチャ31b、プッシャ43、誤動作防止カム44を備える。これらの構成は、第1スライダアッシ35と略同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0033】
図11に示すように、ダンパアッシ37は、第1リニアダンパ33と、第2リニアダンパ34と、第1リニアダンパ33と第2リニアダンパ34が配置されるダンパベース38と、を備える。ダンパベース38には、ダンパロック38a、38bが設けられる。
【0034】
第1スライダアッシ35がベース30に対して相対的にスライドする際、最初にダンパベース38と第1スライダアッシ35との間隔が縮まり、第1リニアダンパ33が作動する。その後、ダンパロック38aが解除されて、ダンパベース38が第1スライダアッシ35と一緒にスライドし、第2スライダアッシ36とダンパベース38との間隔が縮まり、第2リニアダンパ34が作動する。第2スライダアッシ36がベース30に対して相対的にスライドする際は、最初に第2リニアダンパ34が作動し、その後、第1リニアダンパ33が作動する。
【0035】
なお、上記の引込装置15の構成は、あくまで一例である。プッシャ43、誤動作防止カム44、スライダ本体41、ダンパアッシ37を省略してもよい。
【0036】
以下にローラ走行体21aの構成の一例を説明する。
図12は、ローラ走行体21aとブラケット13aを示す。
図13は、ローラ走行体21aの分解図を示す。ローラ走行体21aは、本体40と、本体40の側面に回転可能に配置される左右一対のローラ22と、本体40の下面に回転可能に配置される振止めローラ23と、を備える。本体40には、上述のアーム19が連結される。
【0037】
本体40には、支持軸7aが支持される。支持軸7aは、本体40に対して中心線cの回りを回転可能である。本体40には、支持軸7aの回転を滑らかにするブッシュ42が組み込まれる。
【0038】
支持軸7aには、ブラケット13a(
図12参照)が3次元(
図13の上下、左右、前後)の位置調節可能に取り付けられる。57は前後調節ねじ、44a,44bは左右調節ねじである。45は支持軸7aに形成された上下調節ねじである。46はプレート、47はブラケット支持体である。ブラケット13aは、プレート46とブラケット支持体47との間に挟まれる(
図14(a)参照)。
【0039】
ブラケット13aの上下調節は、以下のように行われる。
図14(b)に示すように、支持軸7aの上下調節ねじ45をプレート46のねじ穴に嵌め、支持軸7aを回転させれば、プレート46が上下に移動する。
図14(a)に示すように、ナット48を締め、プレート46とブラケット支持体47との間でブラケット13aを挟めば、ブラケット13aがプレート46に固定される。
【0040】
ブラケット13aの左右調節は、以下のように行われる。
図15(a)に示すように、ブラケット支持体47に嵌まる右側の左右調節ねじ44bを締め、左側の左右調節ねじ44aを締めると、ブラケット支持体47に対してブラケット13aが左方向に移動する。
図15(c)に示すように、ブラケット支持体47に嵌まる左側の左右調節ねじ44aを締め、右側の左右調節ねじ44bを締めると、ブラケット支持体47に対してブラケット13aが図中右方向に移動する。
【0041】
ブラケット13aの前後調節は、以下のように行われる。
図16(a)に示すように、前後調節ねじ57は、中央部が窪んだ鼓状に形成される。前後調節ねじ57の窪んだ部分に支持軸7aが係合する。ブラケット支持体47に嵌まる前後調節ねじ57を締めたり、緩めたりすると、支持軸7aに対してブラケット支持体47及びブラケット13aが前後方向に移動する。
【0042】
ブラケット13aの上下、左右、前後の位置調節が完了したら、
図14(a)に示すように、固定ねじ49をプレート46に締め、ブラケット13aをプレート46に固定する。なお、上記の3次元調節構造を設けることなく、支持軸7aにブラケット13aを直接的に固定してもよい。
【0043】
ローラ走行体21b(
図9参照)は、ローラ走行体21aと略同一の構成であるので、その説明を省略する。
【0044】
以上に本実施形態の引戸装置1の構成を説明した。本実施形態の引戸装置1によれば、以下の効果を奏する。
【0045】
引込装置15に引込力伝達部20を連結するので、レール6aの直線部11に沿って直線的に移動する引込装置15を用いて、引戸2に取り付けた支持軸7aをレール6aの傾斜部12に沿って移動させることができる。
【0046】
引込力伝達部20が、ローラ走行体21aと引込装置15に回転可能に連結されるアーム19を備えるので、ローラ走行体21aをレール6aの傾斜部12の先端近傍まで移動させることができる。
【0047】
アーム19が1つのリンクから構成されるので、アーム19の構成をシンプルにすることができる。
【0048】
支持軸7aをローラ走行体21aで支持するので、ローラ走行体21aと一緒に支持軸7aをレール6aの傾斜部12の先端近傍まで移動させることができる。
(第2の実施形態)
【0049】
図17は、本発明の第2の実施形態の引込装置15と引込力伝達部50を示す。第1の実施形態では、支持軸7aがローラ走行体21aに支持されるのに対し、第2の実施形態では、支持軸7aがアーム19に支持される。その他の構成は、第1の実施形態と略同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
(第3の実施形態)
【0050】
図18は、本発明の第3の実施形態の引込装置15と引込力伝達部51を示す。第1の実施形態では、アーム19が1つのリンクから構成されるのに対し、第3の実施形態では、アーム52が複数のリンク53a,53b,53cから構成される。複数のリンク53a,53b,53cは、垂直軸55の回りを回転可能に連結される。第3の実施形態によれば、アーム52を複数のリンク53a,53b,53cから構成するので、レール6aの傾斜部12の傾きが急でも、支持軸7aを傾斜部12に沿って移動させることができる。
(第4の実施形態)
【0051】
図19は、本発明の第4の実施形態の引込装置15と引込力伝達部56を示す。第1の実施形態では、引込力伝達部20がローラ走行体21aとアーム19から構成されるのに対し、第4の実施形態では、引込力伝達部56がローラ走行体21aから構成される。ローラ走行体21aは、アームを介することなく、引込装置15に垂直軸54の回りを回転可能に連結される。ローラ走行体21aの構成は、第1の実施形態のローラ走行体21aと略同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
(第5の実施形態)
【0052】
図20及び
図21は、本発明の第5の実施形態の引戸装置61を示す。
図20は引戸2が閉じ位置にある状態を示し、
図21は閉じ位置から開き方向に所定位置まで引戸2が開いた状態を示す。
【0053】
3は枠、4は開口、5は壁、8は目隠し板、6a,6bはレール、7a,7bは支持軸である。レール6a,6bは、枠3の戸先側に配置される戸先側のレール6aと、枠3の戸尻側に配置される戸尻側のレール6bと、を備える。レール6aは、直線部11と、直線部11の端部に接続され、直線部11に対して傾斜する傾斜部12と、を備える。レール6bも、直線部11と、直線部11の端部に接続され、直線部11に対して傾斜する傾斜部12と、を備える。支持軸7a,7bは、レール6aを移動する戸先側の支持軸7aと、レール6bを移動する戸尻側の支持軸7bと、を備える。支持軸7aは、レール6aを走行するローラ走行体21aに支持される(
図22参照)。支持軸7bは、レール6bを走行するローラ走行体に支持される。支持軸7aは、ブラケット13aを介して引戸2の戸先側に取り付けられる。支持軸7bは、ブラケット13bを介して引戸2の戸先側に取り付けられる。これらの構成は、第1の実施形態の引戸装置1と同一であるので、同一の符号を附してその詳しい説明を省略する。
【0054】
第1の実施形態の引戸装置1では、レール6aの直線部11に沿って直線的に移動する引込装置15を用いて、引戸2に取り付けた支持軸7aをレール6aの傾斜部12に沿って移動させるのに対し、第5の実施形態の引戸装置61では、レール6aの直線部11に沿って直線的に移動するトリガ62を用いて、引戸2に取り付けた支持軸7aをレール6aの傾斜部12に沿って移動させる。レール6aには、トリガ62を捕捉してトリガ62を引き込む引込装置63aが取り付けられる。
【0055】
図23(a)は引戸装置61の水平断面図を示し、
図23(b)は引戸装置61の側面図を示す。引込装置63aは、レール6aの直線部11に取り付けられる。引込装置63aは、直線部11に沿って延びるベース69と、ベース69にその長さ方向にスライド可能に設けられるキャッチャ70と、ベース69とキャッチャ70との間に配置されるばね(図示せず)と、を備える。引込装置63aは、キャッチャ70がトリガ62を捕捉すると、キャッチャ70が回転し、キャッチャ70とベース69との係合が外れ、ばねのばね力によってキャッチャ70が戸先方向に移動するように構成される。キャッチャ70の戸先方向への移動を制動するリニアダンパを設けることもできる。引込装置63a自体の構成は公知であるので、これ以上の詳しい説明を省略する。
【0056】
図20、
図21に示すように、引戸2を閉じる際、トリガ62は引込装置63aによって捕捉されて、レール6aの直線部11に沿って直線的に移動する。
図22に示すように、トリガ62には、引込力伝達部20が連結される。引込力伝達部20は、トリガ62の直線的な移動に伴って支持軸7aを傾斜部12に沿って移動させる。なお、
図20の63bは、トリガ62を捕捉してトリガ62を戸尻側に引き込む引込装置である。引込装置63bは引込装置63aと左右対称であり、引込装置63aと略同一の構成を有する。引込装置63bは引戸2を開く際に引込み力を発生させる。
【0057】
図22に示すように、トリガ62は、トリガ本体64と、例えば4つのローラ65と、例えば2つの振止めローラ66と、を備える。トリガ本体64は、レール6aの直線部11に収容される細長い直方体状の本体部64aと、本体部64aからレール6aの直線部11の外部に突出し、引込装置63aのキャッチャ70(
図23(b)参照)と係合可能な係合部64bと、を有する。ローラ65はトリガ本体64の側面に回転可能に取り付けられ、レール6aの直線部11の溝11a(
図23(a)参照)の両脇を走行する。振止めローラ66は、トリガ本体64の底面に回転可能に取り付けられ、直線部11の溝11a内を走行する。
【0058】
引込力伝達部20は、ローラ走行体21aと、ローラ走行体21aとトリガ62に回転可能に連結されるアーム19と、を備える。アーム19の一端部は、トリガ62に垂直軸67の回りを回転可能に連結される。アーム19の他端部は、ローラ走行体21aに垂直軸68の回りを回転可能に連結される。ローラ走行体21aの構成は、第1の実施形態のローラ走行体21a(
図12参照)と同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0059】
図23ないし
図25は、引戸2を閉じる際の引戸装置61の動作図を示す。
図23は、引込装置63aがトリガ62を捕捉する前の状態を示す。
図23に示すように、引戸2を閉じる際、引戸2と一緒にトリガ62がレール6aの直線部11に沿って移動する。
【0060】
図24に示すように、引込装置63aがトリガ62を捕捉すると、引込装置63aは矢印A方向に引込力を発生させ、トリガ62が矢印A方向に直線的に移動する。トリガ62に働く引込力は、アーム19を介してローラ走行体21aに伝わる。ローラ走行体21aは、レール6aの傾斜部12に沿って矢印B方向へ移動する。ローラ走行体21aには、支持軸7aが取り付けられるので、支持軸7aが傾斜部12に沿って移動する。このため、引戸2を矢印B方向に斜めに引き込むことが可能になる。
【0061】
図25に示すように、トリガ62が矢印A方向にさらに移動すると、ローラ走行体21aが傾斜部12の先端近傍まで移動し、引戸2が閉じ位置に移動する。引戸2の閉じ位置は、引込装置63aの引込力によって保持される。引戸2を開く際には、上記と逆の動作が行われる。
【0062】
以上に本実施形態の引戸装置61の構成を説明した。本実施形態の引戸装置61によれば、以下の効果を奏する。
【0063】
トリガ62に引込力伝達部20を連結するので、レール6aの直線部11に沿って直線的に移動するトリガ62を用いて、引戸2に取り付けた支持軸7aをレール6aの傾斜部12に沿って移動させることができる。
【0064】
引込力伝達部20が、ローラ走行体21aと引込装置63aに回転可能に連結されるアーム19を備えるので、ローラ走行体21aをレール6aの傾斜部12の先端近傍まで移動させることができる。
【0065】
アーム19が1つのリンクから構成されるので、アーム19の構成をシンプルにすることができる。
【0066】
支持軸7aをローラ走行体21aで支持するので、ローラ走行体21aと一緒に支持軸7aをレール6aの傾斜部12の先端近傍まで移動させることができる。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な実施形態に変更できる。
【0068】
上記実施形態では、引戸を閉じる際、引戸を前方に移動させているが、引戸を後方に移動させてもよい。
【0069】
上記実施形態では、引戸の閉じ位置において引戸と開口に隣接する壁面とをフラットにしているが、引戸と隣接する引戸とをフラットにしてもよい。
【0070】
上記実施形態では、引戸の閉じ位置において引戸と壁面とをフラットにしているが、フラットにしなくてもよい。例えば、開口の気密性を向上させるために、引戸が開口の枠のパッキンに密着するようにしてもよい。
【0071】
本明細書は、2019年8月9日出願の特願2019-147829に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
【符号の説明】
【0072】
1,61…引戸装置
2…引戸
6a…レール
7a…支持軸
11…直線部
12…傾斜部
15,63a…引込装置
18,62…トリガ
19,52…アーム
20,50,51,56…引込力伝達部
21a…ローラ走行体
53a,53b,53c…リンク