(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】塗料主剤組成物、塗料組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 133/14 20060101AFI20220104BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220104BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220104BHJP
C09D 127/06 20060101ALI20220104BHJP
C09D 131/04 20060101ALI20220104BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20220104BHJP
C09D 193/04 20060101ALI20220104BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D7/61
C09D7/65
C09D127/06
C09D131/04
C09D175/04
C09D193/04
B32B27/18 Z
(21)【出願番号】P 2021092837
(22)【出願日】2021-06-02
【審査請求日】2021-06-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100209347
【氏名又は名称】内田 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】山本 斉
(72)【発明者】
【氏名】水間 友磨
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-214673(JP,A)
【文献】特開2018-070847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D, B65D, B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート系硬化剤と混合されて塗料組成物とされる塗料主剤組成物であって、
バインダー樹脂と、光拡散性粒子とを含み、
前記バインダー樹脂が、水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂(A)
と、前記(メタ)アクリル樹脂(A)以外の樹脂(B)とを含み、
前記(メタ)アクリル樹脂(A)のガラス転移温度が15℃以上、水酸基価が30~130mgKOH/g
、重量平均分子量が3万~25万であ
り、
前記樹脂(B)が、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂及び変性ロジン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、塗料主剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量が、前記バインダー樹脂の総質量に対し、40質量%以上である請求項
1に記載の塗料主剤組成物。
【請求項3】
前記光拡散性粒子が、無機粒子を含む請求項1
又は2に記載の塗料主剤組成物。
【請求項4】
前記無機粒子が、硫酸バリウム粒子、炭酸カルシウム粒子及び二酸化ケイ素粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項
3に記載の塗料主剤組成物。
【請求項5】
前記光拡散性粒子が、有機粒子をさらに含む請求項
3又は
4に記載の塗料主剤組成物。
【請求項6】
前記有機粒子が、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子及び(メタ)アクリル樹脂粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項
5に記載の塗料主剤組成物。
【請求項7】
沈降防止剤、帯電防止剤及びアンチブロッキング剤からなる少なくとも1種をさらに含む請求項1~6のいずれか一項に記載の塗料主剤組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の塗料主剤組成物と、イソシアネート系硬化剤とを含む、塗料組成物。
【請求項9】
基材と、前記基材上に設けられた請求項
8に記載の塗料組成物の塗膜とを有する、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料主剤組成物、塗料組成物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
レトルトパウチ等の袋状の包装容器は、例えば、フィルム状の基材にシーラント層が積層された積層体をヒートシールにより袋状に加工して製造される。包装容器には一般に、印刷層が設けられる。また、包装容器にマットコート層を設けて艶消し感(マット感)を付与することが検討されている。
【0003】
特許文献1には、イソシアネート基と反応可能な官能基を有するバインダー樹脂、イソシアネート系架橋剤、マット化剤、ブロッキング防止剤および有機溶剤を含有し、バインダー樹脂がポリウレタン樹脂とその他の樹脂とを特定の質量比で含有するマットコート剤が提案されている。このマットコート剤によれば、レトルト殺菌処理の際、高温熱水に直接曝されても基材から剥離せず、印刷層に対する耐ブロッキング性を有するマットコート層を形成できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のマットコート剤から形成されたマットコート層は、マットコート層間の耐ブロッキング性が充分ではなく、マットコート層を最表層に有する積層体をマットコート層同士が接触した状態で保管すると、マットコート層同士の貼り付きが生じることがある。また、上記マットコート層は耐熱性、耐熱水性が低く、高温時や熱水処理時(特にレトルト処理時)にマットコート層同士が接触すると、マットコート層同士の貼り付きが生じやすい。
【0006】
本発明は、高温時や熱水処理時においても塗膜同士の貼り付きが生じにくい塗膜を形成できる塗料組成物が得られる塗料主剤組成物、高温時や熱水処理時においても塗膜同士の貼り付きが生じにくい塗膜を形成できる塗料組成物、及び高温時や熱水処理時においても塗膜同士の貼り付きが生じにくい積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
[1]イソシアネート系硬化剤と混合されて塗料組成物とされる塗料主剤組成物であって、
バインダー樹脂と、光拡散性粒子とを含み、
前記バインダー樹脂が、水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂(A)を含み、
前記(メタ)アクリル樹脂(A)のガラス転移温度が15℃以上、水酸基価が30~130mgKOH/gである、塗料主剤組成物。
[2]前記(メタ)アクリル樹脂(A)の重量平均分子量が3万~25万である前記[1]の塗料主剤組成物。
[3]前記バインダー樹脂が、前記(メタ)アクリル樹脂(A)以外の樹脂(B)をさらに含む前記[1]又は[2]の塗料主剤組成物。
[4]前記樹脂(B)が、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂及び変性ロジン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む前記[3]の塗料主剤組成物。
[5]前記(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量が、前記バインダー樹脂の総質量に対し、40質量%以上である前記[1]~[5]のいずれかの塗料主剤組成物。
[6]前記光拡散性粒子が、無機粒子を含む前記[1]~[5]のいずれかの塗料主剤組成物。
[7]前記無機粒子が、硫酸バリウム粒子、炭酸カルシウム粒子及び二酸化ケイ素粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む前記[6]の塗料主剤組成物。
[8]前記光拡散性粒子が、有機粒子をさらに含む前記[6]又は[7]の塗料主剤組成物。
[9]前記有機粒子が、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子及び(メタ)アクリル樹脂粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む前記[8]の塗料主剤組成物。
[10]前記[1]~[9]のいずれかの塗料主剤組成物と、イソシアネート系硬化剤とを含む、塗料組成物。
[11]基材と、前記基材上に設けられた前記[10]の塗料組成物の塗膜とを有する、積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温時や熱水処理時においても塗膜同士の貼り付きが生じにくい塗膜を形成できる塗料組成物が得られる塗料主剤組成物、高温時や熱水処理時においても塗膜同士の貼り付きが生じにくい塗膜を形成できる塗料組成物、及び高温時や熱水処理時においても塗膜同士の貼り付きが生じにくい積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の積層体の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
〔塗料主剤組成物〕
本発明の一態様に係る塗料主剤組成物は、バインダー樹脂と、光拡散性粒子とを含む。光拡散性粒子はバインダー樹脂に分散されている。
本態様の塗料主剤組成物は、必要に応じて、ワックスをさらに含んでいてもよい。
本態様の塗料主剤組成物は、必要に応じて、有機溶剤をさらに含んでいてもよい。
本態様の塗料主剤組成物は、必要に応じて、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、バインダー樹脂、光拡散性粒子、ワックス及び有機溶剤以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0012】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂(A)を含む。
バインダー樹脂は、(メタ)アクリル樹脂(A)以外の樹脂(B)をさらに含んでいてもよい。
(メタ)アクリル樹脂(A)及び樹脂(B)については後で詳しく説明する。
【0013】
バインダー樹脂において、(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量は、バインダー樹脂の総質量に対し、40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。また、(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量は、バインダー樹脂の総質量に対し、100質量%以下であり、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量が40質量%以上であれば、塗膜の耐ブロッキング性、耐熱性、耐熱水性がより優れ、高温時、熱水処理時等における塗膜同士の貼り付き抑制効果がより優れる。(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量が95質量%以下、つまり樹脂(B)の含有量が5質量%以上であれば、基材密着性がより優れる。
なお、バインダー樹脂の総質量は、(メタ)アクリル樹脂(A)と樹脂(B)との合計質量である。
【0014】
<(メタ)アクリル樹脂(A)>
(メタ)アクリル樹脂(A)は、水酸基を有する。
本発明において「(メタ)アクリル樹脂」は、樹脂を構成する構成単位の少なくとも一部が(メタ)アクリレート単位である樹脂である。(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを示す。
(メタ)アクリル樹脂(A)は、(メタ)アクリレート以外の重合性単量体単位をさらに含んでいてもよい。
【0015】
(メタ)アクリル樹脂(A)としては、例えば、水酸基含有重合性単量体とその他の重合性単量体との共重合体が挙げられる。水酸基含有重合性単量体、その他の重合性単量体はそれぞれ、(メタ)アクリレートであってもよく、(メタ)アクリレート以外の重合性単量体であってもよい。ただし、水酸基含有重合性単量体及びその他の重合性単量体のうちの少なくとも一部は(メタ)アクリレートである。
【0016】
水酸基含有重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロポキシプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルコキシアルキル;ε-カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル;N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド等のヒドロキアルキル(メタ)アクリルアミド;イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸のジヒドロキシアルキルエステル;ヒドロキシアルキルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル等が挙げられる。これらの重合性単量体は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0017】
その他の重合性単量体としては、水酸基含有重合性単量体と共重合可能であればよく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチル等の芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;ビニルアルコールと酢酸とのエステル等のビニルアルコールカルボン酸エステル;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体;ブタジエン、イソプレン等の多価不飽和脂肪族単量体等が挙げられる。これらの重合性単量体は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0018】
(メタ)アクリル樹脂(A)のガラス転移温度(以下、「Tg」とも記す。)は、15℃以上であり、20℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。また、(メタ)アクリル樹脂(A)のTgは、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。(メタ)アクリル樹脂(A)のTgが上記下限値以上であれば、バインダー樹脂の耐熱性が充分に高くなり、高温時や熱水処理時においても塗膜同士の貼り付きが生じにくい塗膜を形成できる。(メタ)アクリル樹脂(A)のTgが上記上限値以下であれば、塗膜の基材への密着性、塗膜の可撓性がより優れる。
Tgは、示差熱分析により求められる。
(メタ)アクリル樹脂(A)のTgは、(メタ)アクリル樹脂(A)を構成する重合性単量体の種類及び比率により調整できる。
【0019】
(メタ)アクリル樹脂(A)の水酸基価は、30~130mgKOH/gであり、70~110mgKOH/gが好ましく、80~105mgKOH/gがより好ましい。(メタ)アクリル樹脂(A)の水酸基価が上記下限値以上であれば、塗膜の架橋密度が充分に高くなり、高温時や熱水処理時においても塗膜同士の貼り付きが生じにくい塗膜を形成できる。(メタ)アクリル樹脂(A)の水酸基価が上記上限値以下であれば、耐ブロッキング性に優れる。
水酸基価は、水酸基をアセチル化した後、過剰のアセチル化剤を水酸化カリウムで滴定することによって求められる。
【0020】
(メタ)アクリル樹脂(A)の重量平均分子量(以下、「Mw」とも記す。)は、3万~25万が好ましく、5万~23万がより好ましく、7万~22万がさらに好ましい。(メタ)アクリル樹脂(A)のMwが上記下限値以上であれば、塗膜の架橋密度が充分に高くなり、耐熱性、耐ブロッキング性がより優れる。(メタ)アクリル樹脂(A)のMwが上記上限値以下であれば、基材密着性がより優れる。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0021】
<樹脂(B)>
樹脂(B)は、(メタ)アクリル樹脂(A)以外の樹脂である。
樹脂(B)は、イソシアネート基と反応可能な官能基を有しても有さなくてもよい。
イソシアネート基と反応可能な官能基としては、水酸基、アミノ基等が挙げられる。
【0022】
樹脂(B)の例としては、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン、変性ロジン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
樹脂(B)としては、(メタ)アクリル樹脂(A)と相溶可能なものが好ましい。
【0023】
樹脂(B)としては、上記の中でも、耐熱性、基材密着性の観点から、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂及び変性ロジン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらのうち、耐熱性がより優れる点では、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体がより好ましく、基材密着性がより優れる点では、ポリウレタン樹脂がより好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体とポリウレタン樹脂とを併用してもよい。
【0024】
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体は、塩化ビニル単位と酢酸ビニル単位とを有する。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体は、他の単量体単位をさらに含んでいてもよい。他の単量体谷としては、例えば、ビニルアルコール単位が挙げられる。
塩化ビニル単位/酢酸ビニル単位で表される質量比は、塗膜の耐熱水性及び耐ブロッキング性、基材への密着性の観点から、70/30~98/2が好ましく、80/20~95/5がより好ましい。
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体は、例えば、塩化ビニルと酢酸ビニルとを共重合することにより得られる。必要に応じて、得られた共重合体の酢酸ビニル単位の一部をケン化によりビニルアルコール単位としてもよい。
【0025】
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の水酸基価は、塗膜の基材への密着性、耐熱性の観点から、60mgKOH/g以上が好ましく、100mgKOH/g以上がより好ましい。また、イソシアネート硬化剤混合後の粘度上昇抑制の観点から、230mgKOH/g以下が好ましく、180mgKOH/g以下がより好ましい。
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量は、5,000~50,000が好ましく、10,000~35,000がより好ましい。
【0026】
ポリウレタン樹脂としては、例えば、ジイソシアネート化合物とジオール化合物との反応物であるウレタンプレポリマーに、鎖伸長剤及び反応停止剤を反応させたものが挙げられる。
【0027】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物;キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物;トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0028】
ジオール化合物としては、例えば、ポリエステルジオール化合物、ポリエーテルジオール化合物、ポリカーボネート化合物、ポリブタジエングリコール化合物が挙げられる。これらのジオール化合物は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
ジオール化合物の数平均分子量は、耐ブロッキング性の観点から、400以上が好ましく、1,000以上がより好ましい。また、ジイソシアネート化合物との反応性の観点から、10,000以下が好ましく、6,000以下がより好ましい。
【0029】
鎖伸長剤としては、例えば、分子内にイソシアネート基と反応可能な官能基(アミノ基、水酸基等)を2つ以上有する化合物が挙げられる。このような化合物としては、例えば、1級アミノ基を2つ有するジアミン類(エチレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,4-ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン等)、1級アミノ基と2級アミノ基を1つずつ有するジアミン類(2-エチルアミノエチルアミン)、1級アミノ基を2つと2級アミノ基を1つ以上有するポリアミン類(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等)等の分子内にアミノ基を2つ以上含有化合物;低分子ジオール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等)等の分子内に水酸基を2つ以上含有する水酸基含有化合物;アミノエチルエタノールアミン、アミノプロピルエタノールアミン、上記1級アミノ基を2つ有するジアミン類のエチレンオキサイド1モル付加物等の分子内にアミノ基を2つと水酸基を1つ有する化合物等が挙げられる。これらの鎖伸長剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0030】
反応停止剤としては、例えば、分子内にイソシアネート基と反応可能な官能基(アミノ基、水酸基等)を1つ以上有する化合物が挙げられる。このような化合物としては、例えば、モノアルコール類(メタノール、エタノール等)、モノアミン類(n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等)、分子内にアミノ基と水酸基と1つずつ有するアルカノールアミン類(モノエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン等)が挙げられる。また、鎖伸長剤として挙げた化合物も反応停止剤として利用できる。これらの反応停止剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
ポリウレタン樹脂の分子内にイソシアネート基と反応可能な官能基を導入する場合、反応停止剤としては、分子内にアミノ基と水酸基と1つずつ有するアルカノールアミン類や、前記鎖伸長剤として例示した、1級アミノ基を2つ有するジアミン類や、低分子ジオール類が好ましい。
【0031】
ウレタンプレポリマーの製造において、ジイソシアネート化合物のNCOとジオール化合物のOHのモル当量比(ジイソシアネート化合物のNCOのモル当量/ジオール化合物のOHのモル当量)は、1.3~3が好ましく、1.5~2がより好ましい。
鎖伸長剤は、プレポリマーの残存するイソシアネート基に対して、0.5~0.95当量程度の範囲で反応させることが好ましい。
反応停止剤は、鎖伸長後のポリウレタン樹脂1モルに対して、2モル程度の比率で反応させることが好ましい。
【0032】
ポリウレタン樹脂の水酸基価又はアミン価は、イソシアネート硬化剤配合後の粘度上昇抑制の観点から、5.0mgKOH/g以下が好ましく、1.0mgKOH/g以下がより好ましい。ポリウレタン樹脂の水酸基価又はアミン価は0mgKOH/gであってもよい。
ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、5,000~50,000が好ましく、10,000~30,000がより好ましい。
【0033】
セルロース系樹脂としては、例えば、セルロースの水酸基の一部が置換基で置換された置換体が挙げられる。具体的には、ニトロセルロース(ニトロ基置換体)、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のアシル基置換体、メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキル基置換体、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース等のヒドロキシアルキル基置換体、ベンジルセルロース等が挙げられる。これらのセルロース系樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
セルロース系樹脂の水酸基の置換度は30~85%程度が好ましい。
セルロース系樹脂の重量平均分子量は、10,000~500,000が好ましく、10,000~300,000がより好ましい。
【0034】
(光拡散性粒子)
光拡散性粒子は、マット化剤として機能する。
光拡散性粒子としては、無機粒子、有機粒子等が挙げられる。無機粒子、有機粒子はそれぞれ、典型的には、25℃において固体である。
無機粒子としては、例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、クレー、カオリン等が挙げられる。
有機粒子としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル系単量体とスチレン系単量体との共重合体、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフッ化エチレン等の樹脂粒子が挙げられる。有機粒子は架橋、非架橋のいずれであってもよい。
これらの光拡散性粒子は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0035】
光拡散性粒子は、無機粒子を含むことが好ましい。光拡散性粒子が無機粒子を含むと、耐ブロッキング性、耐熱性がより優れる。
【0036】
無機粒子としては、耐ブロッキング性、意匠性の観点から、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及び二酸化ケイ素からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。耐ブロッキング性の観点から、硫酸バリウムがより好ましく、塗膜の意匠性の観点から、二酸化ケイ素がより好ましい。硫酸バリウムと二酸化ケイ素とを併用してもよい。
硫酸バリウムと二酸化ケイ素とを併用する場合、硫酸バリウム/二酸化ケイ素で表される質量比は、99/1~50/50が好ましく、95/5~70/30がより好ましい。
【0037】
光拡散性粒子が無機粒子を含む場合、有機粒子をさらに含んでいてもよい。無機粒子と有機粒子とを併用することで、無機粒子のみを用いる場合に比べて、耐爪引っ掻き性が向上する。
【0038】
有機粒子としては、耐爪引っ掻き性の観点から、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子及び(メタ)アクリル樹脂粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、塗膜のヘイズが高くなり、塗膜が傷付いたときに傷が目立ちにくくなる点、塗膜の下側に印刷層が設けられている場合は、塗膜の透明性が高くなり、印刷層の視認性が良好になる点等の観点から、ベンゾグアナミン樹脂粒子がより好ましい。
【0039】
光拡散性粒子の平均粒子径は、1~10μmが好ましく、1~5μmがより好ましく、1~3μmがさらに好ましい。平均粒子径が上記下限値以上であれば、光が散乱され易く、艶消し感が得られ易い。平均粒子径が上記上限値以下であれば、平滑性がより優れる。
塗料主剤組成物中の光拡散性粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により求められる。
【0040】
(ワックス)
ワックスは、マット化剤として機能する。
ワックスとしては、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、アマイドワックス等が挙げられる。これらのワックスは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アンチブロッキング剤としての性能も有する観点から、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックスが好ましい。
【0041】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、例えば、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル系溶剤(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル等)、脂肪族炭化水素系溶剤(n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等)、芳香族炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン等)、脂環族炭化水素系溶剤(シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン等)、アルコール系溶剤(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等)、グリコール系溶剤(エチレングリコール、プロピレングリコール等)、エーテル系溶剤(ブチルジグリコール等)等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
有機溶剤としては、グラビア印刷での乾燥性等を考慮すると、メチルエチルケトン、酢酸エチル、イソプロパノールが好ましい。
【0042】
(他の成分)
他の成分としては、例えば、アンチブロッキング剤(ただし、光拡散性粒子及びワックスを除く。)、帯電防止剤、沈降防止剤、分散剤等の各種の添加剤が挙げられる。
【0043】
アンチブロッキング剤としては、公知のものを使用でき、例えば、脂肪酸アミドが挙げられる。脂肪酸アミドとしては、ラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド、各種変性脂肪酸アミド等が挙げられる。アンチブロッキング剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0044】
帯電防止剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤が挙げられる。ポリカルボン酸型高分子界面活性剤の製品としては、花王ホモゲノールL-1820が挙げられる。帯電防止剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0045】
沈降防止剤は、塗料主剤組成物が有機溶剤を含む場合に、塗料主剤組成物中に分散した光拡散性粒子が沈降するのを防止するために用いられる。
沈降防止剤としては、公知のものを使用できる。また、上述の帯電防止剤やアンチブロッキング剤(脂肪酸アミド等)を沈降防止剤として用いることもできる。沈降防止剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0046】
(各成分の含有量)
バインダー樹脂の含有量は、塗料主剤組成物の不揮発分100質量%に対し、30~70質量%が好ましく、35~65質量%がより好ましく、40~60質量%がさらに好ましい。バインダー樹脂の含有量が上記下限値以上であれば、基材密着性がより優れ、上記上限値以下であれば、得られる塗膜の艶消し感がより優れる。
不揮発分は、JIS K 5601-1-2:2008(100℃×3時間)により求められる。
【0047】
光拡散性粒子の含有量は、塗料主剤組成物の不揮発分100質量%に対し、10~70質量%が好ましく、15~65質量%がより好ましく、20~60質量%がさらに好ましい。光拡散性粒子の含有量が上記下限値以上であれば、得られる塗膜の艶消し感、耐爪引っ掻き性がより優れる。
光拡散性粒子として、無機粒子と有機粒子を併用する場合、無機粒子と有機粒子の質量比(無機粒子:有機粒子)は10:90~99:1が好ましく、20:80~97:3がより好ましく、30:70~95:5がさらに好ましい。
【0048】
塗料主剤組成物がワックスを含む場合、ワックスの含有量は、塗料主剤組成物の不揮発分100質量%に対し、1~20質量%が好ましく、2~15質量%がより好ましく、3~10質量%がさらに好ましい。ワックスの含有量が上記下限値以上であれば、より良好な艶消し感が得られ易く、上記上限値以下であれば、耐熱性がより優れる。
【0049】
塗料主剤組成物が有機溶剤を含む場合、有機溶剤の含有量は、塗料主剤組成物の不揮発分濃度に応じて適宜設定される。
塗料主剤組成物の不揮発分濃度は、塗料主剤組成物の総質量に対し、20~50質量%が好ましく、25~45質量%がより好ましく、30~40質量%がさらに好ましい。不揮発分濃度が上記下限値以上であれば、流動性がより優れ、上記上限値以下であれば、得られる塗料組成物の塗布性、沈降防止効果がより優れる。
【0050】
塗料主剤組成物が沈降防止剤(帯電防止剤やアンチブロッキング剤であってもよい)を含む場合、沈降防止剤の含有量は、塗料組成物の総質量に対し、0.5~8.0質量%が好ましく、1.0~5.0質量%がより好ましい。沈降防止剤の含有量が上記下限値以上であれば、光拡散性粒子の沈降防止効果が得られ易く、上記上限値以下であれば、流動性がより優れる。
【0051】
本態様の塗料主剤組成物は、上記の成分を混合することにより調製できる。混合方法に特に制限はなく、公知の混合方法を用いることができる。
【0052】
本態様の塗料主剤組成物は、イソシアネート系硬化剤(架橋剤)と混合されて塗料組成物とされる。イソシアネート系硬化剤については後で詳しく説明する。
塗料主剤組成物とイソシアネート系硬化剤とを含む塗料組成物を基材上に塗布すると、バインダー樹脂中のイソシアネート基と反応可能な官能基(例えば(メタ)アクリル樹脂(A)の水酸基)とイソシアネート系硬化剤のイソシアネート基との反応(架橋反応)が進行し、塗料組成物の硬化物からなる塗膜が形成される。
【0053】
〔塗料組成物〕
本発明の一態様に係る塗料組成物は、前記の塗料主剤組成物とイソシアネート系硬化剤とを含む。
換言すれば、本態様の塗料組成物は、バインダー樹脂と光拡散性粒子とイソシアネート系硬化剤とを含み、ワックス、有機溶剤及び他の成分のいずれか1以上をさらに含んでいてもよい。
【0054】
(イソシアネート系硬化剤)
イソシアネート系硬化剤は、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化などにより一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に2つ以上有する化合物である。
イソシアネート系硬化剤としては、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリメチロールプロパン-トリレンジイソシアネート3量体付加物、トリメチロールプロパン-ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体等のイソシアネート付加物;キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物;ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、及びこれらと各種のポリオールとの付加物;イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合等で多官能化したポリイソシアネート等が挙げられる。これらのイソシアネート系硬化剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0055】
塗料組成物において、イソシアネート系硬化剤の含有量は、塗料主剤組成物の不揮発分100質量%に対し、1.0~20.0質量%が好ましく、2.0~15.0質量%がより好ましく、4.0~10.0質量%がさらに好ましい。イソシアネート系硬化剤の含有量が上記下限値以上であれば、耐熱性、レトルト殺菌適性がより優れ、上記上限値以下であれば、耐ブロッキング性がより優れる。
【0056】
本態様の塗料組成物は、塗料主剤組成物とイソシアネート系硬化剤とを混合することにより調製できる。混合方法に特に制限はなく、公知の混合方法を用いることができる。
イソシアネート系硬化剤は、塗料主剤組成物との混合前に予め、有機溶剤で希釈されていてもよい。希釈液中のイソシアネート系硬化剤の含有量は、例えば、希釈液の総質量に対し、0.5~5.0質量%とすることができる。
【0057】
なお、塗料主剤組成物とイソシアネート系硬化剤とを混合すると、バインダー樹脂中のイソシアネート基と反応可能な官能基とイソシアネート系硬化剤のイソシアネート基との反応が進行するので、塗料主剤組成物とイソシアネート系硬化剤との混合は、塗料組成物を塗布する直前に行うことが好ましい。塗料主剤組成物とイソシアネート系硬化剤との混合から塗料組成物の塗布までの時間は、4時間以内が好ましい。
【0058】
〔積層体〕
本発明の一態様に係る積層体は、基材と、基材上に設けられた前記の塗料組成物の塗膜とを有する。
以下、本態様の積層体について、添付の図面を参照し、実施形態例を示して説明する。なお、
図1における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
【0059】
図1は、本態様の積層体の一例を示す模式断面図である。
この例の積層体1は、フィルム状の基材11と、塗料組成物の塗膜13とを有する。
塗膜13は、基材11の一方の表面上に設けられている。
基材11の他方の表面上には、印刷層15、接着層17及びシーラント層19がこの順に積層されている。
【0060】
(基材)
基材11としては、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリシクロオレフィン、ポリアセテート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、(メタ)アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、セルロース系樹脂(ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等)が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
積層体1が食品用包装容器として用いられる場合、基材11としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ナイロン等のポリアミドフィルムが好ましい。
基材11の表面に、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0061】
(塗膜)
塗膜13は、前記した塗料組成物の硬化物からなる。
塗膜13の厚さは、0.5~5.0μmが好ましく、1.0~3.0μmがより好ましい。塗膜13の厚さが上記下限値以上であれば、艶消し意匠性がより優れ、上記下限値以下であれば、透明性がより優れる。
【0062】
(印刷層)
印刷層15は、インキから形成された層である。
インキとしては、特に制限は無く、公知のインキを使用できる。
印刷層15の厚さは、例えば1.0~3.0μmである。
【0063】
(接着層)
接着層17は、接着剤から形成された層である。
接着剤としては、印刷層15とシーラント層19とを接着可能なものであればよく、公知の接着剤を使用できる。接着剤の例としては、ポリオール化合物を含む主剤とポリイソシアネート系硬化剤とを備えた二液硬化型ラミネート用接着剤が挙げられる。当該接着剤は、必要に応じて、エポキシ化合物やシランカップリング剤を含んでいてもよい。
【0064】
(シーラント層)
シーラント層19としては、例えば、積層フィルムの製袋時のヒートシールとして用いられる熱可塑性樹脂フィルム(シーラントフィルム)を使用できる。
シーラントフィルムの例としては、無延伸ポリエチレン(CPP)フィルム、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、ナイロン-ポリプロピレン共押し出しフィルム等が挙げられる。
【0065】
(積層体の製造方法)
積層体1は、基材11の一方の表面上に塗膜13を形成する工程(塗膜形成工程)と、基材11の他方の表面上に印刷層15を形成する工程(印刷工程)と、印刷層15が形成された基材11の印刷層15側の面とシーラント層19とを接着剤を介して貼り合わせる工程(接着工程)とを含む製造方法により製造できる。
塗膜形成工程は、印刷工程の前に行ってもよく、印刷工程の後かつ接着工程の前に行ってもよく、接着工程の後に行ってもよい。
【0066】
塗膜形成工程では、例えば、基材11の一方の表面上に前記した塗料組成物を塗布し、必要に応じて乾燥(有機溶剤を除去)し、必要に応じてエージングする。
塗布方法としては、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、コンマコーター等の公知の塗布方法を適宜採用できる。
乾燥方法としては、熱風乾燥、遠赤外線乾燥等の公知の乾燥方法を適宜採用できる。乾燥条件は、有機溶剤の種類、基材の耐熱性や熱変形性等に応じて適宜調整すればよいが、例えば熱風乾燥の場合、乾燥温度は40℃以上100℃以下が好ましく、50℃以上70℃以下がより好ましい。
エージングでは、バインダー樹脂中のイソシアネート基と反応可能な官能基とイソシアネート系硬化剤のイソシアネート基との反応を促進させるために、塗料組成物が塗布された基材を加温下で保存する。エージングの温度は、例えば30~60℃である。エージングの時間は、例えば24~72時間である。
【0067】
印刷工程は、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等の公知の印刷方法により行うことができる。
接着工程は、ドライラミネート法、溶融ラミネート法等の公知のラミネート法により行うことができる。ドライラミネート法の場合、例えば、印刷層15の表面に接着剤を塗工して接着層17を形成し、接着層17を介してシーラントフィルムを貼り合わせればよい。
【0068】
積層体1は、例えば、包装材料として用いられる。
例えば、積層体1を所定の形状に裁断し、シーラント層19同士が対向するように配置し、その外縁部を、内容物の充填口となる部分を除いてヒートシールすることにより袋状の包装容器が得られる。
かかる包装容器は、充填口から食品等の内容物を充填した後、充填口をヒートシールすることで、包装容器に内容物が充填された包装体とされる。
【0069】
積層体1を用いた包装容器は、例えば、ボイル処理、レトルト処理等の熱水処理が行われる用途で利用可能である。
熱水処理が行われる用途としては、例えば、食品用途が挙げられる。食品用途において熱水処理は、主に殺菌処理を目的として行われる。ボイル処理により殺菌処理するかレトルト処理により殺菌するかは、内容物となる食品によって条件は異なる。ボイル処理の場合、60~100℃の熱水中で数分~60分程度、レトルト処理では、105~135℃の(加圧)熱水中(水蒸気も含む)で数分~1時間程度の浸漬処理等が行われる。
【0070】
以上、本態様の積層体について、実施形態を示して説明したが、本態様の積層体は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。
【0071】
例えば、塗膜13は、基材11の全面に形成されてもよく、一部に形成されてもよい。印刷層15も同様である。
基材11と塗膜13との間に印刷層15が設けられてもよい。
印刷層15を有さなくてもよく、接着層17及びシーラント層19を有さなくてもよい。接着層17を有さず、印刷層15とシーラント層19とが直接積層されていてもよい。
積層体は、基材11と塗膜13との間、又は基材11と印刷層15との間、又は印刷層15とシーラント層19との間に、他の機能層をさらに有していてもよい。他の機能層としては、例えば、積層体のガスバリア性の向上を目的としたもの(ガスバリア層)、積層体の強度の向上を目的としたもの(強度補強層)、それらの両方を目的としたもの等が挙げられる。これらはそれぞれ公知のものを使用できる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例によって本発明を詳細に示す。ただし、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。以下において、「部」、「%」はそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。実施例9は参考例である。
【0073】
〔測定方法〕
平均粒子径:レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場社製「LA-960」)により求めた。
不揮発分(NV):JIS K 5601-1-2:2008(100℃×3時間)により求めた。
ガラス転移温度(Tg):示差熱分析法により求めた。
固形水酸基価(固形OH価):電位差測定法 により求めた。
重量平均分子量(Mw):以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を行い、標準ポリスチレン換算の値を求めた。
(GPC測定条件)
装置 :東ソー社製8220GPC、
カラム :昭和電工社製SHODEX LF-804×3、
測定液濃度 :0.2%THF(テトラヒドロフラン)溶液、
測定溶媒 :THF、
流速 :1.0mL/分、
温調条件 :40℃、
検出器 :RI(示差屈折率検出器)。
【0074】
〔使用材料〕
A-1:(メタ)アクリル樹脂のワニス(溶剤:酢酸エチル)、東栄化成社製「アクリナール #6600」、NV35%、(メタ)アクリル樹脂のTg25℃、Mw20.0万、固形OH価100mgKOH/g。
A-2:(メタ)アクリル樹脂のワニス(溶剤:酢酸ブチル)、東栄化成社製「アクリナール TZ#9503」、NV50%、(メタ)アクリル樹脂のTg22℃、Mw4万、固形OH価70mgKOH/g。
A-3:(メタ)アクリル樹脂のワニス(溶剤:酢酸エチル)、大成ファインケミカル社製「アクリット 6BT-501」、NV41%、(メタ)アクリル樹脂のTg76℃、Mw5.0万、固形OH価40mgKOH/g。
A-4:(メタ)アクリル樹脂のワニス(溶剤:メチルエチルケトン)、大成ファインケミカル社製「アクリット 6DY-169F」、NV53%、(メタ)アクリル樹脂のTg90℃、Mw1.7万、固形OH価50mgKOH/g。
A-5:(メタ)アクリル樹脂のワニス(溶剤:キシレン、ブタノール)、東栄化成社製「アクリナール PC#5984」、NV50%、(メタ)アクリル樹脂のTg10℃、Mw4万、固形OH価53mgKOH/g。
【0075】
B-1:ポリウレタン樹脂、浮間合成社製「セイカボンドU-507」。
B-2:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、日信化学工業社製「ソルバイン」。
B-3:セルロースアセテートブチレート(CAB)。
B-4:塩素化ポリプロピレン、日本製紙社製「スーパークロン814HS」。
【0076】
C1-1:沈降性硫酸バリウム粒子、堺化学工業社製「沈降性硫酸バリウム200」、平均粒子径0.8μm。
C1-2:炭酸カルシウム粒子、白石工業社製「ホモカルD」、平均粒子径80nm。
C1-3:二酸化ケイ素粒子、東ソー・シリカ社製「E-220」、平均粒子径2μm。
C2-1:ベンゾグアナミン樹脂粒子、日本触媒社製「エポスターMS」、平均粒子径2μm。
C2-2:(メタ)アクリル樹脂粒子、大日精化工業社製「ラブコロール010(F)ホワイト」、平均粒子径20μm。
【0077】
WAX:ポリエチレンワックスのワニス(溶剤:2-プロパノール)、NV15%、三井化学社製「ハイワックス220MP」。
帯電防止剤:花王社製「ホモゲノール L-1820」。
沈降防止剤:楠本化成社製「ディスパロン PFA-220」。
【0078】
〔実施例1~9、比較例1~4〕
<塗料主剤組成物の調製>
表1~2に示す配合に従って各材料を、ペイントコンディショナーにより混合して塗料主剤組成物を得た。
表1~2中、(メタ)アクリル樹脂、他の樹脂、WAXの配合量はNV換算の量である。「溶剤」の欄には、(メタ)アクリル樹脂、他の樹脂、WAXそれぞれの溶剤の合計量を示した。「A/B比」は、(メタ)アクリル樹脂と他の樹脂との質量比((メタ)アクリル樹脂/他の樹脂)である。
【0079】
<積層体の作製>
下記3種のフィルムそれぞれの表面にコロナ処理を施して基材とした。
OPP:2軸延伸ポリプロピレンフィルム、厚さ25μm。
PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ12μm。
ONY:二軸延伸ナイロンフィルム、厚さ25μm。
別途、塗料主剤組成物に、硬化剤溶液(硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート、不揮発分30%)を添加し、ホモディスパーにより混合して塗料組成物を得た。硬化剤溶液の添加量は、塗料主剤組成物の総質量に対する硬化剤溶液の総質量の割合が10%になる量とした。
得られた塗料組成物を、上記3種の基材それぞれの一方の表面に、グラビア印刷により塗布し、80℃で1分間熱風乾燥し、その後、40℃で48時間のエージングを行って塗膜を形成し、積層体を得た。
【0080】
<基材密着性>
得られた積層体の塗膜にセロハン粘着テープ(ニチバン社製、幅18mm)を貼付し、その後、セロハン粘着テープを剥離し、以下の基準で塗膜の基材密着性を評価した。塗膜残留率は、セロハン粘着テープ貼付面積100%に対する、セロハン粘着テープ剥離後の残留塗膜面積(セロハン粘着テープと共に剥離されずに基材上に残留した塗膜の面積)の割合である。結果を表1~2に示す。
○:基材への塗膜残留率が90%以上。
○-:基材への塗膜残留率が70%以上90%未満。
△:基材への塗膜残留率が50%以上70%未満。
×:基材への塗膜残留率が50%未満。
【0081】
<耐ブロッキング性>
エージング前の積層体を裁断して2枚の試験片を作製した。2枚の試験片の塗膜面同士を重ね合わせ、7kg/cm2の荷重をかけた状態で40℃の恒温機にて48時間保管した。その後、2枚の試験片の塗膜面同士を剥がしたときの塗膜面同士の付着状態から以下の基準で耐ブロッキング性を評価した。塗膜の取られ面積は、重ね合わせた塗膜面積100%に対する、反対側の塗膜面に転移した塗膜面積(塗膜面同士を剥がしたときに反対側の塗膜から剥がれず、基材から剥がれた塗膜の面積)の割合である(以下同様)。結果を表1~2に示す。
○:塗膜面同士を剥がす際の剥離抵抗なし。
○-:塗膜面同士を剥がす際の剥離抵抗はあるが、塗膜の取られなし。
△:塗膜の取られ面積が0%超50%以下。
×:塗膜の取られ面積が50%超。
【0082】
<耐熱性>
エージング後の積層体を裁断して2枚の試験片を作製した。2枚の試験片の塗膜面同士を重ね合わせ、その上からヒートバーを用い、120~240℃×2kg/cm2×1秒の条件で加熱した。その後、2枚の試験片の塗膜面同士の付着状態から以下の基準で耐熱性を評価した。結果を表1~2に示す。
◎:240℃まで塗膜面同士の貼りつきなし。
○:200℃まで塗膜面同士の貼りつきなし。
△:180℃まで塗膜面同士の貼りつきなし。
×:180℃以下で塗膜面同士の貼りつきあり。
【0083】
<耐ボイル性>
エージング後の積層体を裁断して2枚の試験片を作製した。2枚の試験片の塗膜面同士を重ね合わせ、95℃の温水で30分間のボイル処理を行った。その後、2枚の試験片の塗膜面同士の付着状態から以下の基準で耐ボイル性を評価した。結果を表1~2に示す。
◎:塗膜面同士を剥がす際の剥離抵抗なし。
○:塗膜面同士を剥がす際の剥離抵抗はあるが、塗膜の取られなし。
△:塗膜面同士を剥がす際の塗膜の取られ面積が0%超10%以下。
×:塗膜面同士を剥がす際の塗膜の取られ面積が10%超。
【0084】
<耐レトルト性>
エージング後の積層体を裁断して2枚の試験片を作製した。2枚の試験片の塗膜面同士を重ね合わせ、オートクレーブにて130℃で30分間のレトルト処理を行った。その後、2枚の試験片の塗膜面同士の付着状態から以下の基準で耐レトルト性を評価した。結果を表1~2に示す。
◎:塗膜面同士を剥がす際の剥離抵抗なし。
○:塗膜面同士を剥がす際の剥離抵抗はあるが、塗膜の取られなし。
△:塗膜面同士を剥がす際の塗膜の取られ面積が0%超10%以下。
×:塗膜面同士を剥がす際の塗膜の取られ面積が10%超。
【0085】
【0086】
【0087】
実施例1~9の塗膜は、耐ブロッキング性、耐熱性、耐ボイル性、耐レトルト性に優れていた。特に、(メタ)アクリル樹脂のTgが22~76℃の実施例1~8の塗膜は、基材密着性にも優れていた。
一方、バインダー樹脂としてポリウレタン樹脂のみを用いた比較例1の塗膜は、耐ブロッキング性、耐熱性、耐ボイル性、耐レトルト性に劣っていた。
バインダー樹脂としてポリウレタン樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体とCABとを併用した比較例2の塗膜は、耐熱性、耐ボイル性、耐レトルト性に劣っていた。
バインダー樹脂としてポリウレタン樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体と塩素化ポリプロピレンとを併用した比較例3の塗膜は、耐ボイル性、耐レトルト性に劣っていた。
実施例2における(メタ)アクリル樹脂の代わりにTgが10℃の(メタ)アクリル樹脂を用いた比較例4の塗膜は、耐ブロッキング性、耐熱性、耐ボイル性、耐レトルト性に劣っていた。
【符号の説明】
【0088】
1 積層体
11 基材
13 塗膜
15 印刷層
17 接着層
19 シーラント層
【要約】
【課題】高温時や熱水処理時においても塗膜同士の貼り付きが生じにくい塗膜を形成できる塗料組成物が得られる塗料主剤組成物を提供する。
【解決手段】イソシアネート系硬化剤と混合されて塗料組成物とされる塗料主剤組成物であって、バインダー樹脂と、光拡散性粒子とを含み、前記バインダー樹脂が、水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂(A)を含み、前記(メタ)アクリル樹脂(A)のガラス転移温度が15℃以上、水酸基価が30~130mgKOH/gである、塗料主剤組成物。
【選択図】なし