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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】動産総合保険の保険料算出システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/08 20120101AFI20220104BHJP
【FI】
G06Q40/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019077992
(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公開番号】P2020177356
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2019-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】518255592
【氏名又は名称】ゼアーウィンスリーサービス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518255606
【氏名又は名称】MSM株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前澤 周平
(72)【発明者】
【氏名】一戸 翼
(72)【発明者】
【氏名】山口 真司
(72)【発明者】
【氏名】関 敏樹
【審査官】藤原 拓也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0089764(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0250350(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0004935(US,A1)
【文献】特表2014-507733(JP,A)
【文献】福田昌弘ほか,"契約入力業務の革新を図る損害保険“代理店トータルイメージソリューション”",東芝レビュー,株式会社東芝,2003年 2月 1日,第58巻, 第2号,ISSN:0372-0462
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理サーバと、在庫管理/保険料データ記憶手段と、モニタ付端末と、顧客である企業の在庫管理システムとの間でデータの送受信を行う在庫管理データ受送信手段と、保険会社との間でデータの送受信を行う保険会社向けデータ受送信手段とを少なくとも備え、ソフトウェアにより作動する動産総合保険の月額保険料算出システムであって、
初期設定として、前記企業の在庫情報データを前記処理サーバへ取り込み、これに基づいて保険対象項目が表示されたマスタを作成し、
前記マスタが、保険会社向けデータ受送信手段を介して保険会社の端末に送信され、前記保険会社において前記保険対象項目ごとに保険料レートが入力された後、前記保険料レートのデータが前記処理サーバに送信され、
日毎に更新された在庫管理データを日毎に前記処理サーバへ取り込み、前記更新された在庫管理データと前記保険料レートから前記保険対象項目毎の日毎の保険料が計算され、前記保険対象項目毎の日毎の保険料が合計されて企業の日毎の保険料が計算され、前記在庫管理/保険料データ記憶手段に記憶され、
月末に前記企業の日毎の保険料を当月分積算することにより月額保険料を算出し、前記企業および前記保険会社に算出結果を送信する
月額保険料算出システム。
【請求項2】
前記在庫管理データが商品の入庫、在庫、出庫、棚卸、返品の各数量および/または金額を含む、請求項1に記載の月額保険料算出システム。
【請求項3】
前記保険対象項目が倉庫名である、請求項1または2に記載の月額保険料算出システム。
【請求項4】
前記保険対象項目が商品名である、請求項1または2に記載の月額保険料算出システム。
【請求項5】
前記保険料レートとして、顧客の契約年数あるいは大口顧客であることを考慮した割引保険料レートを用いることができるように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の月額保険料算出システム。
【請求項6】
前記企業の在庫に前記在庫管理システムに未登録の商品がある場合、前記未登録商品も含めて補償を行うため、前記マスタの作成時に、予め任意に決定した加算額を現在の登録在庫金額に加算して保険対象の在庫金額とすることができるように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の月額保険料算出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物流倉庫等の動産(物品)の火災、地震、水害等による損害を補償する動産総合保険の保険料算出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫運営会社(以下、「企業」とも言う。)は、所有する動産が火災、地震、水害等によって損害を受けた場合に備え、通常動産総合保険に加入する。従来、倉庫運営会社は、予測される次月の在庫量を保険会社(代理店)に通知し、それに基づいて月額保険料が決定され、当月末に次月の保険料を保険会社に支払う、所謂前払いが一般的であった(例えば、非特許文献1)。この理由は、従来、倉庫運営会社が毎日の在庫量を保険会社に通知することは困難であり、かつ保険会社でも毎日保険料を計算することは困難であるため、上記の方法以外に当月の保険料を算出する適当な方法がなかったからである。従って、在庫量は日々変動するにもかかわらず保険料は一定であり、その在庫量の変動が保険料に反映されていなかった。さらに、保険額は仕入原価でしか補償されないのが通常であるにもかかわらず、売価に対して保険料をかけていると錯覚している企業も多く存在していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】物流総合保険パンフレット(SOMPOホールディングス)、6ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の動産総合保険の保険料算出システムでは、予測した在庫量と実際の在庫量に乖離が生じても、保険料および補償限度額は決定済であり、実際の在庫量に対応する保険料と比較すると通常過不足が生じていた。また、在庫量が予測値よりも多い場合に事故がもし発生し、実際の損害額が予測した在庫量に相当する損害額より高額になったとしても、それは補償対象外とされてきた。これらの理由により、従来の動産総合保険の保険料は前払いで、かつ保険加入者にとって月額保険料の算出方法に不公平感、割高感が伴うものであった。
【0005】
本発明による保険料の月額算出システムは、従来の月額保険料が前払いであり、計算方法に不公平感、割高感が伴うことを解消し、より納得性のある動産総合保険の月額保険料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による動産総合保険の月額保険料算出システムは、
処理サーバと、在庫管理/保険料データ記憶手段と、モニタ付端末と、顧客である企業の在庫管理システムとの間でデータの送受信を行う在庫管理データ受送信手段と、保険会社との間でデータの送受信を行う保険会社向けデータ受送信手段とを少なくとも備えており、ソフトウェアにより作動する。
【0007】
初期設定として、前記企業の在庫情報データを前記処理サーバへ取り込み、これに基づいて保険対象項目が表示されたマスタを作成し、
前記マスタが、保険会社向けデータ受送信手段を介して保険会社の端末に送信され、前記保険会社において前記保険対象項目ごとに保険料レートが入力された後、前記保険料レートのデータが前記処理サーバに送信される。
【0008】
さらに、日毎に更新された在庫管理データを日毎に前記処理サーバへ取り込み、前記更新された在庫管理データと前記保険料レートから前記保険対象項目毎の日毎の保険料が計算され、前記保険対象項目毎の日毎の保険料が合計されて企業の日毎の保険料が計算され、計算結果は前記在庫管理/保険料データ記憶手段に記憶される。
月末に前記企業の日毎の保険料を当月分積算することにより月額保険料を算出し、前記企業および前記保険会社に算出結果を送信する。
【発明の効果】
【0009】
本発明による月額保険料算出システム(以下、「本システム」と略記する場合がある。)は、WMS(Warehouse Management System;在庫管理システム)あるいは会計システムと連携されているので、日毎の保険料を算出することが可能になる。このため、実際の在庫量(在庫金額)を反映した保険料を算出できる。従って、従来の月額保険料の算出方法と異なり、保険加入者にとって不公平感、割高感のない、より納得性のある月額保険料を提供できる。さらに、本システムにより、保険料の後払い清算(暫定保険料、確定清算方式)の採用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明による月額保険料算出システムの全体構成を模式的に示す図である。
図2図2は、本発明による月額保険料算出システムの倉庫情報の入力されたデータ(倉庫マスタ)、および計算された保険料レートのモニタ表示画面の例を示す図である。
図3図3は、本発明による月額保険料算出システムによる、日毎の保険料計算結果のモニタ表示画面の例を示す図である。
図4図4は、本発明による月額保険料算出システムによる、日別グラフによる保険料推移のモニタ表示画面の例を示す図である。
図5図5は、本発明による月額保険料算出システムによる、商品毎に日毎の保険料を算出する場合のモニタ表示画面(商品・保険料マスタ)の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
(1)本システムの構成
本発明による動産総合保険の月額保険料算出システムの構成の概略を、図1に模式的に示す。本発明の月額保険料算出システム100は、本システムを管理して月額保険料を顧客に提供する事業者が保有する。本システムは、ソフトウェアにより作動する処理サーバ110と、在庫管理システムを有する企業の在庫管理データの受信および企業へのデータの送信を行うための在庫管理データ受送信手段101と、保険会社へのデータの送信および保険会社からのデータの受信を行うための保険会社向けデータ受送信手段102と、企業の在庫管理データ、および保険料関連データを記憶するための在庫管理/保険料データ記憶手段120と、本システムにデータを入力し、また結果を閲覧するためのモニタ付端末130を備えている。処理サーバ110は、画面フォーム作成部111、保険料計算部112、および請求書作成部113を備え、在庫管理データおよび保険料データの企業および保険会社との送受信を制御し、日毎更新される在庫管理データと保険会社により入力された保険料レートを用いて月額保険料を算出する。
【0012】
企業および保険会社との間のデータの送受信には、例えばインターネット等の公衆通信ネットワークや任意の有線又は無線のネットワークを用いることができる。在庫管理/保険料データ記憶手段120は、メモリ・デバイス、ハード・ディスク、データベース・サーバ等のいずれの形式による記憶手段であってもよい。さらに、実施例では、処理サーバ110は、本発明により算出する月額保険料を企業に提供する事業者が保有するものを仮定しているが、本システムの機能の全部あるいは一部をクラウド・コンピューティングによって行ってもよい。
【0013】
現在、企業が通信販売により製品を販売する場合、在庫管理システム(WMS)によって行うことが主流となっている。在庫管理システムは、通販サイトのユーザ端末15、あるいは店舗の端末16と通信接続されており、商品の入庫、在庫、出庫、棚卸、返品等の在庫管理データを日々更新することにより、現在倉庫にある商品の種類と数量をデータとして管理している。この在庫管理システムが会計システムの一部である場合は、会計システムのデータの一部として管理されている。
【0014】
月額保険料算出システム100は、顧客である企業1の在庫管理システム10(複数の企業の場合は企業2の在庫管理システム20、企業3の在庫管理システム30・・・・)と、API(Application Programming Interface)やCSV(Comma Separated Value)形式のデータ等を用いて常時連携しており、倉庫12内の日毎の在庫金額(仕入原価)を把握することができる。本システムは企業1(以下、単に「企業」と言う。)の端末11、および保険会社の端末200と公衆通信ネットワークを介して通信接続されており、日毎の在庫管理データは企業の端末11から本システムに送信される。在庫管理データ受送信手段101を介して処理サーバ110へ送られた現在の在庫管理データおよび在庫金額のデータは、端末130のモニタに表示されると共に、在庫管理/保険料データ記憶手段120に保管される。さらに、現在の在庫管理データは、保険会社向けデータ受送信手段102を介して保険会社の端末200にも送信され、自動表示あるいは閲覧可能にされる。
【0015】
以下に、本発明の月額保険料算出システム100による月額保険料算出の工程を説明する。
(2)月額保険料の算出工程
(2-1)倉庫情報の登録
本システム100による月額保険料算出の工程の開始時の初期設定として、本システムの画面フォーム作成部111で保険対象項目の表として作成された記入フォームを企業の端末11に送信し、企業は倉庫の立地、建物の構造、取扱商品の種別、その比率等の倉庫情報を端末11から入力する、入力された倉庫情報データは本システム100へ送信され、本システムの端末130のモニタに表示されると共に、在庫管理/保険料データ記憶手段120に企業(倉庫)マスタとして記憶される。端末130のモニタに表示されるマスタ画面の一例を図2に示す。この例では、企業が保有する各倉庫の倉庫名、所在地、建物構造と共に、後で入力される保険料レートも表示されている。
【0016】
なお、企業の端末11から倉庫情報を入力する代わりに、API、CSV等の機能を利用し、企業のWMSあるいは会計システムでは別フォームで入力された倉庫データの内、本システムで必要なデータが、本システム100に自動的に送信され、処理サーバ110において倉庫マスタのフォームに変換され、本システムの管理者の端末130には図2のように表示されるようにしてもよい。
(2-2)保険料レートの算出・入力工程
【0017】
上記在庫管理データおよび在庫金額のデータは、保険会社向けデータ受送信手段102を介して保険会社の端末200にも送信され、表示される。保険会社の担当者は、このデータに基づいて、この図2の実施例では倉庫ごとに保険料レートを入力する。入力された保険料レートは、保険会社向けデータ受送信手段102を再び介して本システムの処理サーバ110へ送られ、入力結果が端末130のモニタに表示される。
(2-3)日毎の保険料計算工程
【0018】
日毎の在庫管理データおよび在庫金額データを、処理サーバ110が、企業の在庫管理システム10から在庫管理データ受送信手段101を介して受け取り、在庫管理/保険料データ記憶手段120に記憶される。倉庫ごとの日毎の保険料は、その日毎のデータに基づいて保険料計算部112で(保険料レート×在庫金額)により計算され、最後に倉庫ごとの保険料が合計されてその日の保険料が計算される。それらの計算結果は端末130のモニタ画面に例えば図3のように表示される。また同じ表示画面が企業の端末11、および保険会社の端末200に送信され、自動表示あるいは閲覧可能にされる。
(2-4)保険料推移の可視化工程
【0019】
日毎の保険料は、例えば日別グラフで随意に可視化し、端末のモニタ画面に図4のように表示することもできる。これにより、企業と保険会社は保険料の推移を共有して把握することができる。
(2-5)月額保険料の確定工程
【0020】
当月の最終日に、当月の日毎の保険料のそれぞれが保険料計算部112で積算され、保険料の月額が確定される。この確定した月額保険料は在庫管理/保険料データ記憶手段120に記憶されると共に、本システムの端末130、企業の端末11、および保険会社の端末200の各モニタに表示される。
(2-6)月額保険料の請求工程
【0021】
月額保険料の請求には、上述の日毎の保険料の積算値を請求してもよいが、実績値に基づいた月間の在庫総額に基づいて当月の暫定保険料を予め決めておき、月末に確定した月額保険料との差額を清算する確定清算方式で決済することもできる。確定した月額保険料に基づいて、この月額保険料の請求書が請求書作成部113で自動生成され、企業の端末11に送付されるとともに、プリンタで印刷し各企業に郵送される。
【0022】
実施例1では、本システムによる基本的な月額保険料算出工程を示したが、これに加えて、以下の機能を代替で、あるいは付加的に備えることができる。
【実施例2】
【0023】
実施例1では、初期設定として、一つの企業の在庫管理データを、保有する倉庫毎に最終的にまとめて表示させた倉庫マスタを作成した。しかし、顧客である企業がより詳細な保険料算出を希望する場合、倉庫マスタを作成する代わりに、WMSのサーバにおいて記憶されている商品名、仕入原価、商品種別等のデータに基づいて、商品の在庫量毎に保険料を算出する形式の商品マスタを画面フォーム作成部111で作成し、これに保険会社により保険料レートが算出、入力された商品・保険料マスタを用いて月額保険料を算出することもできる。商品・保険料マスタのモニタ画面表示の例を図5に示す。この機能は、倉庫の数は少ないが扱う商品が多品種である場合に適用できる。
【実施例3】
【0024】
実施例1では、日毎の保険料レートの計算は単に(保険料レート×在庫金額)で行っているが、顧客の契約年数に応じて、あるいは大口顧客であること等によりディスカウントを適用したい場合、保険料レートに(1-割引率)をかけた割引保険料レートを用いて日毎の保険料を計算させることもできる。この割引率は、倉庫マスタ、あるいは商品・保険料マスタ作成時に保険会社の端末200から設定する。
【実施例4】
【0025】
ある企業において、商品は入荷済みだが、在庫管理システムまたは会計ソフトには未だ登録していない状態の商品があり、この未登録商品も含めて損害を受けた場合、本システムではこの未登録商品に対しても補償を行うようにすることもできる。それには、保険の契約時に企業が任意に決定した加算額を、マスタ作成時に現在の在庫金額に加算して保険対象の在庫金額とし、実施例1と同様な工程によりこの金額に対して月額保険料を算出する。例えば、データ登録された在庫金額が¥4,500,000であり、予め設定した加算額が¥1,000,000の場合、両者の合計額¥5,500,000に対する保険料を算出する。この機能は、商品の種類が多く商品の登録をリアルタイムに行うことが困難な場合に適用できる。
【0026】
上記記載は実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の原理と添付の請求の範囲の範囲内で種々の変更および修正をすることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0027】
10 企業1のWMS(在庫管理システム)
12 企業1の倉庫
15 ユーザ端末
16 店舗の端末
20 企業2のWMS
30 企業3のWMS
100 月額保険料算出システム
101 在庫管理データ受送信手段
102 保険会社向けデータ受送信手段
110 処理サーバ
111 画面フォーム作成部
112 保険料計算部
113 請求書作成部
120 在庫管理/保険料データ記憶手段
130 モニタ付端末
200 保険会社の端末
図1
図2
図3
図4
図5