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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】アヒル腸炎ウイルス及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20220104BHJP
   C12N 15/38 20060101ALI20220104BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220104BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220104BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220104BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 39/155 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 39/17 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 39/295 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 39/245 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220104BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220104BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220104BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20220104BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C12N7/01
C12N15/38 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/00 H
A61K39/00 J
A61K39/12
A61K39/145
A61K39/155
A61K39/17
A61K39/295
A61K39/245
A61K39/39
A61P31/04 171
A61P31/14
A61P31/22
A61P37/04
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2019521512
(86)(22)【出願日】2017-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2017065987
(87)【国際公開番号】W WO2018002133
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】16176834.6
(32)【優先日】2016-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519003572
【氏名又は名称】セバ・サンテ・アニマル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サエキ ユカリ
(72)【発明者】
【氏名】サイトウ シュウジ
【審査官】西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-535798(JP,A)
【文献】特開2005-287422(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105385663(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104312982(CN,A)
【文献】国際公開第2014/036735(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102732545(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
C12N 15/38
A61K 39/245
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性なUS4及びUS5遺伝子を有する、アヒル腸炎ウイルス(DEV)。
【請求項2】
前記US4及びUS5遺伝子が、互いに独立して、変異している、欠失している、又は中断されている、請求項1に記載のDEV。
【請求項3】
前記US4及びUS5遺伝子のそれぞれのコード配列の少なくとも20%が欠失している、請求項1又は2に記載のDEV。
【請求項4】
US4とUS5遺伝子の間の遺伝子間領域が欠失している、請求項1から3のいずれか一項に記載のDEV。
【請求項5】
US4遺伝子の少なくとも50%、US4遺伝子とUS5遺伝子の間の遺伝子間領域のすべて、及びUS5遺伝子の少なくとも50%を含むヌクレオチド領域の欠失を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のDEV。
【請求項6】
不活性なUL23、US7及び/又はUL4遺伝子を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のDEV。
【請求項7】
(i)US4遺伝子の少なくとも50%、US4遺伝子とUS5遺伝子の間の遺伝子間領域のすべて、及びUS5遺伝子の少なくとも50%を含むヌクレオチド領域の欠失並びに(ii)UL23遺伝子配列の少なくとも50%の欠失を含む、請求項6に記載のDEV。
【請求項8】
(i)US4遺伝子の少なくとも50%、US4遺伝子とUS5遺伝子の間の遺伝子間領域のすべて、及びUS5遺伝子の少なくとも50%を含むヌクレオチド領域の欠失並びに(ii)US7遺伝子配列の少なくとも50%の欠失を含む、請求項6に記載のDEV。
【請求項9】
(i)US4遺伝子の少なくとも50%、US4遺伝子とUS5遺伝子の間の遺伝子間領域のすべて、及びUS5遺伝子の少なくとも50%を含むヌクレオチド領域の欠失並びに(ii)UL4遺伝子配列の少なくとも50%の欠失を含む、請求項6に記載のDEV。
【請求項10】
外来核酸を更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のDEV。
【請求項11】
外来核酸が不活性なUS4又はUS5遺伝子に位置している、請求項10に記載のDEV。
【請求項12】
前記ウイルスが、US4遺伝子の少なくとも50%、US4遺伝子とUS5遺伝子の間の遺伝子間領域のすべて、及びUS5遺伝子の少なくとも50%を含むヌクレオチド領域の欠失を含み、外来核酸が前記欠失した領域に代わって位置している、請求項11に記載のDEV。
【請求項13】
外来核酸が、UL4遺伝子、UL44遺伝子、UL27-UL26遺伝子間領域、UL23遺伝子、UL45-UL46遺伝子間領域、UL50-UL51遺伝子間領域、US7遺伝子、US7-US8遺伝子間領域、又はUS10遺伝子から選択される挿入部位に位置している、請求項10に記載のDEV。
【請求項14】
外来核酸が抗原又は免疫刺激分子をコードする、請求項10から13のいずれか一項に記載のDEV。
【請求項15】
外来核酸が鳥類病原体由来の抗原をコードする、請求項14に記載のDEV。
【請求項16】
抗原が、鳥類パラミクソウイルス1型の抗原タンパク質又はペプチド、ニューキャッスル病ウイルス(NDV)のFタンパク質又はその断片、ガンボロ病ウイルスの抗原ペプチド、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)のVP2タンパク質又はその断片、伝染性喉頭気管炎ウイルス(ILTV)の抗原ペプチド、gBタンパク質又はその断片、マイコプラズマ・ガリセプチカムの抗原ペプチド、40Kタンパク質又はその断片、及び鳥インフルエンザウイルスの抗原ペプチド、表面タンパク質ヘマグルチニン(HA)又はその断片である、請求項14又は15に記載のDEV。
【請求項17】
抗原ペプチドが、IBDVのVP2タンパク質若しくはその免疫原性断片、又はインフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)タンパク質若しくはその免疫原性断片である、請求項16に記載のDEV。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載のDEVのゲノムを含む核酸分子。
【請求項19】
請求項1から17のいずれか一項に記載のDEV又は請求項18に記載の核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項20】
請求項1から17のいずれか一項に記載のDEVを生成する又は複製する方法であって、コンピテント細胞に請求項18に記載の核酸分子を又は請求項1に記載のDEVを感染させ、DEVを収集することを含む方法。
【請求項21】
家禽にワクチン接種する又は免疫化するのに使用するための、請求項1から17のいずれか一項に記載のDEV、又は請求項18に記載の核酸。
【請求項22】
ニワトリにワクチン接種する又は免疫化するのに使用するための、請求項1から17のいずれか一項に記載のDEV、又は請求項18に記載の核酸。
【請求項23】
家禽において、防御免役を誘導するのに使用するための、請求項1から17のいずれか一項に記載のDEV、又は請求項18に記載の核酸。
【請求項24】
ニワトリにおいて、防御免役を誘導するのに使用するための、請求項1から17のいずれか一項に記載のDEV、又は請求項18に記載の核酸。
【請求項25】
注射により投与される、請求項21から24のいずれか一項に記載のDEV。
【請求項26】
in ovoで又は孵化後1日目若しくは2日目に投与される、請求項21から25のいずれか一項に記載のDEV。
【請求項27】
請求項1から17のいずれか一項に記載のDEV、請求項18に記載の核酸、又は請求項19に記載の宿主細胞、及び薬学的に若しくは獣医学的に許容される賦形剤若しくは担体を含む組成物。
【請求項28】
アジュバンドを更に含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
鳥類を免疫化するためのワクチン接種キットであって、以下の成分:
a.有効量の請求項27又は28に記載の組成物、及び
b.前記組成物を前記鳥類に投与するための手段
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規のウイルス及びその使用に関する。更に詳細には、本発明は目的のポリペプチドを発現する又は動物、特に家禽にそれを送達するための新規のアヒル腸炎ウイルス(Duck Enteritis Virus)構築物及びその使用に関する。本発明は鳥類病原体に対して家禽にワクチン接種するのに特に適している。
【背景技術】
【0002】
家禽肉及び卵は重要な食糧源であり、その消費はヒト人口の増加及び高い品質と価格とのバランスのため絶えず伸びている。鳥インフルエンザの最近の流行により、世論の関心は家禽の健康並びに食糧安全性及び保障に集中しており、家禽用ワクチン技術が世界的関心事となっている。
【0003】
病原体タンパク質を発現する組換えウイルスは、標的病原体に対する家禽用ワクチンとして一般的に使用されている。そのようなウイルスを含むワクチンは感染細胞内で外来病原体タンパク質又はその断片の発現を誘導し、これにより続いて特異的防御的な液性免疫並びに細胞性免疫を誘導することが可能になる。
【0004】
これに関して、病原体に由来する外来遺伝子が組み込まれている、いくつかのウイルスが、ウイルスベクターワクチンとして使用されるように開発されてきた。これらのウイルスベクター(又は組換えウイルス)は典型的には、鶏痘(欧州特許出願公開第0,517,292号)等のトリポックスウイルス、ヘルペスウイルス、特に、HVT(例えば、国際公開第87/04463号、米国特許第5,980,906号、米国特許第5,853,733号)、ニューキャッスル病ウイルス(NDV)又はトリアデノウイルスを基にしている。これらの組換え鳥ウイルスは、疾患及び/又は動物に応じて、変わりやすいレベルの防御を示している。
【0005】
例えば、ポックスウイルス、NDV、及びアデノウイルスはニワトリでは持続しないので、ニワトリでの長い持続期間の免疫の最良候補と見なされてはいない。抗原を発現する組換えHVTは利点を示しており、現在、ニワトリでのワクチン接種用に商品化されている(例えば、Vectormune(登録商標)IBD、Vectormune(登録商標)ND、又はVectormune(登録商標)LT)。
【0006】
しかし、病原体の数と多様性が増えており家禽消費が絶えず伸びていることを考慮すると、家禽に効果的な防御免疫を引き起こすのに使用できる代わりのワクチン投与計画及び/又はシステムの必要性が存在する。特に、非常に若い動物(3日以内)又はin ovoでの免疫を獲得する効果的なシステムの必要性が存在する。
【0007】
この点に関して、動物での、特に、家禽でのワクチン接種を改善し、安定なタンパク質発現及び効果的な防御を可能にする代わりの適合性ウイルスベクターを見つける目的で、新しいウイルスセロタイプが調査されてきた。
【0008】
国際公開第2014/0036735号は、ニワトリでのアヒル腸炎ウイルスの考えうる使用を考察している。DEVは天然にアヒル又はガチョウに感染するが、ニワトリに対して既知のトロピズムはない。この文書は、DEV構築物は、筋肉内注射により生後1週間のニワトリに投与し得ることを示唆している。しかし、この文書では後期投与のみが報告されている。
【0009】
しかし、DEVを用いた実験を更に行うことにより、発明者らは、そのようなウイルスは若いニワトリ(3日以内)に又はin ovoで投与した場合は致死性であることを見出した。驚くべきことに、孵化1週間後に野生型DEV(又は国際公開第2014/0036735号において提唱されるすべての天然の遺伝子を含有するDEV構築物)をニワトリへ投与しても十分に許容的であると思われるが、孵化後1日目に又はin ovoでそのような構築物を投与すると動物の大量死を引き起こす(すなわち、80~100%の間)。更に驚いたことに、発明者らは、極めて初期段階(3日以内)又はin ovoを含む、家禽で使用することができ、in vivoでの実質的な及び初期段階のタンパク質発現を引き起こすことが可能であるDEV構築物を作成するためにDEVの構造を改変することができるようになっていた。したがって、そのようなウイルスは家禽にワクチン接種するための新規の強力なベクターを表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許出願公開第0,517,292号
【文献】国際公開第87/04463号
【文献】米国特許第5,980,906号
【文献】米国特許第5,853,733号
【文献】国際公開第2014/0036735号
【文献】米国特許第6,764,684号
【文献】米国特許第6,866,852号
【非特許文献】
【0011】
【文献】Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 第4版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York、USA、2012年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、動物、特に、極めて初期段階で(すなわち、孵化後3日目又はそれよりも早期に、並びにin ovoで)を含む、家禽においてin vivoで遺伝子又はタンパク質を発現させるのに適した新規のウイルス構築物を提供する。詳細には、本発明は、US4及びUS5遺伝子の不活化により得られる新規のDEVを提供し、そのようなDEVが(i)in vivoで、特に、ニワトリにおいて弱毒化されており、(ii)安定していて、防御免疫を誘導するのに適した様式で外来遺伝子を発現できることを実証している。更に、これらの欠損のある弱毒化したDEVは速い成長速度を保持しており、高力価の産生を可能にしている。そのようなDEVは、例えば、ニワトリに対して既知の天然のトロピズムはないので、ニワトリにワクチン接種するためにそのようなDEV構築物を使用しても、ワクチン接種していない動物への転移又は汚染のリスクはない。更に、ニワトリはDEVに対する移行抗体又は免疫がなく、本発明のウイルスを使用すればワクチン接種された動物において極めて早期の免疫開始を誘導することが可能である。驚くべきことに、以前に示されているように、野生型DEVは若いニワトリ又はin ovoでは致死性であるが、本発明のDEVは安全でありin vivoで目的の遺伝子を効果的に発現することが可能である。したがって、そのような新規のDEVは、非ヒト動物、特に、家禽にワクチン接種するための及び早期の防御免疫を授けるための非常に強力なベクターを表す。
【0013】
本発明の対象はより詳細には、ウイルスが不活性なUS4及びUS5遺伝子を有する、アヒル腸炎ウイルス(DEV)に関する。本発明は、これらの遺伝子を不活化することにより、生存可能で、安定した複製DEVを得ることが可能であり、そのようなウイルスを使用すれば外来遺伝子材料を挿入することにより組換えDEVを作り出すことできることを実際に明らかにしている。結果によれば、そのような外来遺伝子材料は細胞感染するとそのようなウイルスから高度に発現され、そのような発現は経時的に安定したままであることが更に明らかになっている。更に、及び際立ったことに、天然のDEV並びに発明者らにより作成された他の多くの欠損DEV構築物は、(孵化後3日目又はそれよりも早期の)及びin ovoの若いニワトリでは病原性である又は致死性であることが見出されたが、US4及びUS5を不活化すると、in ovoを含む若いニワトリにタンパク質及び抗原を発現するため安全に使用することが可能な弱毒化ウイルスが作成される。そのような所見は全く驚くべきことであり、本ウイルスに大きな利点及び有用性を提供する。
【0014】
したがって、本発明の更なる対象は、ウイルスが不活性なUS4及びUS5遺伝子を有し外来核酸を含むアヒル腸炎ウイルス(DEV)に関する。
【0015】
特定の実施形態によれば、US4及びUS5遺伝子は変異している、若しくは欠失している、若しくは分断される;及び/又は外来核酸はUS4及びUS5遺伝子配列のすべて又は一部に代わって置かれている;及び/又は外来核酸は鳥類病原体をコードしている。
【0016】
更なる特定の実施形態では、本発明のDEVは不活性なUL4、UL23、又はUS7遺伝子を更に含む。
【0017】
本発明の更なる対象は、不活性なUS4及びUS5遺伝子を有するDEVのゲノムを含む核酸分子である。
【0018】
本発明は、上で定義されるDEV又は核酸を含む宿主細胞に更に関する。
【0019】
本発明は、上で定義されるDEVを産生する又は複製するための方法であって、コンピテント細胞に核酸分子を又は上で定義されるDEVを感染させ、DEVを収集することを含む、方法も提供する。
【0020】
本発明は、組換えDEVを作るための方法であって、US4及びUS5遺伝子配列のすべて又は少なくとも20%に代わって外来核酸を挿入することを含む、方法にも関する。
【0021】
本発明は、上で定義されるDEV、核酸、又は宿主細胞、薬学的に又は獣医学的に許容される賦形剤又は担体、及び、任意選択で、アジュバンドを含む組成物も提供する。
【0022】
本発明は、上で定義されるDEV、核酸、又は宿主細胞、薬学的に又は獣医学的に許容される賦形剤又は担体、及び、任意選択で、アジュバンドを含むワクチンも提供する。
【0023】
本発明の更なる対象は、鳥類、特に、家禽、更に詳細には、ニワトリ、更に詳細には、若い家禽(孵化後3日目若しくはそれよりも早期に又はin ovoで)にワクチン接種する又はこれを免疫化するのに使用するための、上で定義される組成物、DEV、核酸又は宿主細胞に関する。
【0024】
本発明の更なる対象は、鳥類、特に、家禽、更に詳細には、ニワトリ、更に詳細には、若い家禽(孵化後3日目若しくはそれよりも早期に又はin ovoで)に防御免疫を誘導するのに使用するための、上で定義される組成物、DEV、核酸又は宿主細胞に関する。
【0025】
本発明は、非ヒト動物、特に、家禽、更に詳細には、ニワトリ、更に詳細には、若い家禽(孵化後3日目若しくはそれよりも早期に又はin ovoで)にワクチン接種する方法であって、前記非ヒト動物に上で定義される組成物又はウイルスを投与することを含む方法にも関する。
【0026】
本発明の特定の対象は、家禽にワクチン接種する方法であって、上で定義される組成物又はウイルスのin ovo投与を含む方法である。
【0027】
本発明の別の特定の対象は、家禽にワクチン接種する方法であって、上で定義される組成物又はウイルスの孵化後1日目(すなわち、約24時間以内)での投与を含む方法である。
【0028】
更なる態様では、本発明は、1つ又は複数の鳥類病原体に対して非ヒト動物において免疫原性又は防御応答を誘導するための方法であって、前記非ヒト動物、特に、家禽、更に詳細には、ニワトリ、更に詳細には、若い家禽(孵化後3日目若しくはそれよりも早期に又はin ovoで)に、上で定義される組成物、ワクチン又はウイルスを投与することを含む方法を提供する。
【0029】
本発明のウイルス又は組成物はいかなる経路で投与してもよい。好ましくは、本発明のウイルス又は組成物は、極めて早期に免疫を授けるために、in ovoで又は孵化1若しくは2日後に皮下(例えば、s.c.)注射により投与される。
【0030】
本発明は、鳥類を免疫化するためのワクチン接種キットであって、以下の成分:
a.有効量の上の組成物、及び
b.前記鳥類に前記組成物を投与するための手段
を含む、ワクチン接種キットを更に提供する。
【0031】
本発明は、任意の動物においてポリペプチドを発現するために、好ましくは、鳥類のワクチン接種のために使用されてもよく、本発明は、1つ又はいくつかのポリペプチド又はペプチド、具体的には鳥類病原体の免疫原性ペプチドを発現するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】アヒル腸炎ウイルス(DEV)ゲノム及びUS遺伝子の位置の模式図を図示している。
図2】親DEVゲノムでの挿入部位の位置並びにpUC18-KAPEVAC-US4US5del-BacVP2及びDEV/US4US5del/BacVP2のゲノム構造の模式図を図示している。PCR反応での増幅のために使用されるジャンクション1、ジャンクション2、及びジャンクション3の位置が示されている。
図3】ブラックプラークアッセイ(black plaque assay)におけるDEV/US4US5del/BacVP2が感染したCEFによるVP2発現を示している。
図4】親DEVゲノムでの挿入部位の位置並びにpUC18-KAPEVAC-US4US5del及びDEV/US4US5delのゲノム構造の模式図を図示している。PCR反応での増幅のために使用されるジャンクション1の位置が示されている。
図5】親DEVゲノムでの挿入部位の位置並びにpUC18-KAPEVAC-UL23del-Coa5VP2及びDEV/US4US5del/UL23/Coa5VP2のゲノム構造の模式図を図示している。PCR反応での増幅のために使用されるジャンクション1、ジャンクション2、及びジャンクション3の位置が示されている。
図6】親DEVゲノムでの挿入部位の位置並びにpUC18-KAPEVAC-UL26-Coa5VP2及びDEV/US4US5del/UL26/Coa5VP2のゲノム構造の模式図を図示している。PCR反応での増幅のために使用されるジャンクション1、ジャンクション2、及びジャンクション3の位置が示されている。
図7】親DEVゲノムでの挿入部位の位置並びにpUC18-KAPEVAC-UL45-Coa5VP2及びDEV/US4US5del/UL45/Coa5VP2のゲノム構造の模式図を図示している。PCR反応での増幅のために使用されるジャンクション1、ジャンクション2、及びジャンクション3の位置が示されている。
図8】親DEVゲノムでの挿入部位の位置並びにpUC18-KAPEVAC-UL50-Coa5VP2及びDEV/US4US5del/UL50/Coa5VP2のゲノム構造の模式図を図示している。PCR反応での増幅のために使用されるジャンクション1、ジャンクション2、及びジャンクション3の位置が示されている。
図9】ブラックプラークアッセイにおけるDEV/US4US5del/UL23/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL26/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL45/Coa5VP2、又はDEV/US4US5del/UL50/Coa5VP2が感染したCEFによるVP2発現を示している。
図10】DEV/US4US5del/UL23/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL26/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL45/Coa5VP2、又はDEV/US4US5del/UL50/Coa5VP2によるVP2タンパク質の発現を検出するウェスタンブロットアッセイである。1: DEV/US4US5del/UL23/Coa5VP2; 2: DEV/US4US5del/UL26/Coa5VP2; 3: DEV/US4US5del/UL45/Coa5VP2; 4: DEV/US4US5del/UL50/Coa5VP2; 5: 親DEV; 6: CEF
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は一般的には、外来遺伝子配列を含む弱毒化DEVに関する。本発明は、そのようなDEVを含む組成物に、並びに動物、特に、家禽、更に詳細には若い家禽(孵化後3日目若しくはそれよりも早期に又はin ovoで)へのワクチン接種のためのその使用にも関する。
【0034】
本開示は、以下の定義を参照することによりもっともよく理解されることになる。
【0035】
定義
用語「ウイルス」は、特に、カプシド又はカプセルに包まれた核酸分子(例えば、ゲノム)を含むウイルス粒子を表す。用語「ウイルス」はウイルスベクター又は単離されたウイルスゲノムも表す。
【0036】
用語「組換え」は、遺伝子技術を使用して創造された、設計された、又は改変された分子を表す。ウイルスに関連して、用語「組換え」は更に具体的には、そのゲノム(又は、その先祖のゲノム)が、少なくとも1つの核酸配列の挿入又は欠失により改変されているウイルスを表す。
【0037】
用語「外来性核酸」は、ウイルスとの関連では、ウイルスのゲノムには天然には見出されない、又は前記ゲノム中に天然に見出されるが異なる形態で若しくは異なる位置で見出される核酸を表す。
【0038】
本記述では、用語「核酸」はデオキシリボヌクレオチド(DNA)又はリボヌクレオチド(RNA)等の任意の核酸分子又は配列を表し、これらは、例えば、一本鎖又は二本鎖でもよい。核酸はORFを含んでいても含まなくてもよい。核酸分子は、人工合成、組換え技術、酵素技術、宿主細胞での複製、又はその組合せによる等の当技術分野でそれ自体公知である技法により作成することができる。
【0039】
「遺伝子」は、ポリペプチド(例えば、ペプチド、タンパク質、等)又はRNA等の産物をコードするオープンリーディングフレームを含む核酸分子又は配列を表す。
【0040】
本発明の文脈内では、「不活性な」遺伝子を有するDEVは、前記遺伝子によりコードされた機能的タンパク質又はRNAを発現できないDEVを表す。したがって、不活性なUS4遺伝子は、野生型US4タンパク質をコードできない、変異した、欠失した、及び/又は中断されたUS4遺伝子を表す。不活性なUS5遺伝子は、野生型US5タンパク質をコードできない、変異した、欠失した、及び/又は中断されたUS5遺伝子を表す。US5遺伝子が5'US5及び3'US5コード配列を含有する場合、不活性なUS5は、前記5'US5及び3'US5コード配列にコードされるいかなる野生型タンパク質もコードできない、変異した、欠失した、及び/又は中断されたUS5遺伝子を表す、例えば、5'US5と3'US5の両方が変異又は欠失又は中断を含有する。
【0041】
本明細書で使用される用語「弱毒化した」とは、動物モデルに本質的に疾病を引き起こさないウイルスのことである。弱毒化ウイルスは典型的には、宿主において複製することができ宿主の死を引き起こさない。弱毒化ウイルスは更に詳細には、1×103プラーク形成単位(pfu)/卵の用量で注射した場合、胚では病原性がないウイルスを表す。非常に好ましい弱毒化ウイルスは、少なくとも70%の注射された卵で、更に好ましくは少なくとも80%の注射された卵で、更により好ましくは少なくとも90%、95%、97%、98%、99%又はそれよりも多くの注射された卵で1×103 pfu/卵の用量で安全である。本発明の弱毒化ウイルスは、0日目を含む(すなわち、孵化後0.1~48時間の間)孵化後注射でも安全である。
【0042】
用語「鳥類」は、鳥類の綱のトリ等のあらゆる種類の鳥類、すなわち、羽根のある、翼のある、二足歩行の、内温性の、及び産卵する脊椎動物を包含することが意図されている。本発明の文脈では、鳥類又は鳥類種は更に詳細には、家禽、更に好ましくは、ニワトリ及びシチメンチョウ等の経済的及び/又は農学的関心のあるトリ、又はハクチョウ及びオウム等の観賞用のトリのことである。
【0043】
本明細書で使用される用語「ワクチン」は、生物において免疫応答を引き起こす、刺激する又は増幅するのに使用してもよい薬剤を表す。
【0044】
「免疫応答」は、目的の組成物又はワクチンに対する細胞性及び/又は抗体媒介免疫応答の宿主での発生を表す。通常、「免疫応答」は、目的の組成物又はワクチンに含まれる抗原に特異的に向けられた抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、及び/又は細胞傷害性T細胞の産生を含む。好ましくは、免疫応答は、新しい感染に対する抵抗性が増強される及び/又は疾患の臨床的重症度が低減されるように防御的である。
【0045】
用語「in ovo」投与又は注射は一般的には、卵に含有される胚への接種又は注射を意味する。in ovo注射は好ましくは、孵化前5日目と1日目の間の任意の時間に行われる。
【0046】
アヒル腸炎ウイルス
アヒル腸炎ウイルス(DEV)は、アヒルウイルス腸炎ウイルス(DVEV)としても知られるが、天然ではアヒル及びガチョウに感染する。DEVの完全ヌクレオチド配列は確定されており、オンラインで入手可能である(例えば、JQ673560参照)。ウイルスゲノムは約162Kbを含有し、ほぼ80の異なるタンパク質をコードしている。ジャンセン株、CSC株、CHv株、VAC株、及び2085株等の、DEVのいくつかのセロタイプ及び株が単離されている。VAC株: ID EU082088.2; カモ科分離株C-KCE: ID KF263690.1; カモ科株CHv: ID JQ647509.1; カモ科株2085: ID JF999965; カモ科株CV: ID KJ549663.1又はカモ科株CSC: ID JQ673560.1等のいくつかのDEV株の完全配列がジェンバンクで入手可能である。
【0047】
DEVは特徴付けが不十分のままであり、遺伝子を発現するベクターとしてのその使用は深く調査されてはいない。例えば、Liuら、(2013年)及び国際公開第2014/0036735号は、ニワトリの中に遺伝子を発現させるために組換えDEVを使用しようと企てた。彼らは、天然の遺伝子発現を変化させることなくウイルスゲノムのUS7とUS8遺伝子の間に核酸をクローニングしているDEV構築物を利用していた。そのような構築物は筋肉内注射により生後1週間のニワトリに移されている可能性があると報告されているが、しかしながら、この文書には又は他のいかなる先行技術文書にも、家禽のin ovoワクチン接種のための、又は若い家禽、すなわち、孵化後3日目若しくは前、特に孵化後1日目若しくは2日目でのワクチン接種のためのDEVの考えられるいかなる使用の開示もない。
【0048】
DEVを用いた更なる実験を行うことにより、本発明者らは、驚くべきことに、このウイルスが若いニワトリ(3日以内)に又はin ovoで投与された場合は致死性であることを見出した。驚くべきことに、野生型DEV(又は国際公開第2014/0036735号に提唱されているあらゆる天然の遺伝子を含有するDEV構築物)のニワトリへの孵化の1週間後の投与は十分に許容的であると思われるが、実施例1で報告されているように、孵化後1日目に又はin ovoでそのような構築物を投与すると動物の大量死を引き起こす(すなわち、80~100%の間)。
【0049】
更に驚いたことに、発明者らは、極めて初期段階(3日以内)又はin ovoを含む、家禽で使用することができ、in vivoでの実質的な及び初期段階のタンパク質発現を引き起こすことが可能であるDEV構築物を作成するためにDEVの構造を改変することができるようになっていた。更に詳細には、本発明者らはDEVを用いて更に研究を行い、異なる遺伝子欠失又は変更を有する種々の組換え体を作成した。本発明者らは、驚くべきことに、US4とUS5遺伝子の両方を不活化することにより、(i)in vivoで、特にニワトリで弱毒化され、及び(ii)安定しており、防御免疫を誘導するのに適した様式で外来遺伝子を発現することができる組換えDEVを得ることが可能であることを発見した。結果によれば、そのような外来遺伝子材料は、細胞感染するとそのようなウイルスから高度に発現され、そのような発現は経時的に安定したままであることが更に示されている。更に、及び、際立ったことに、US4及びUS5を不活化すると、若い家禽に及びin ovoでタンパク質又は抗原を発現させるのに安全に使用することが可能な弱毒化DEVが作成される一方で、不活性なUS4遺伝子のみ又は不活性なUS5遺伝子のみを有するDEVは若いニワトリ(生後3日未満又はin ovoで)では依然として病原性又は致死性である。DEVは、例えば、ニワトリに対して既知の天然のトロピズムがないので、ニワトリのワクチン接種のために本発明のDEV構築物を使用しても、ワクチン接種していない動物に対する転移又は汚染のリスクを含まない。更に、ニワトリはDEVに対する移行抗体又は免疫がなく、本発明のウイルスを使用すればワクチン接種された動物において免疫の極めて早期開始を誘導することが可能である。
【0050】
したがって、本発明の対象は、前記ウイルスが不活性なUS4及びUS5遺伝子を有するアヒル腸炎ウイルス(DEV)に関する。
【0051】
本発明の更なる対象は、ウイルスが不活性なUS4及びUS5遺伝子を有し外来核酸を含有するアヒル腸炎ウイルス(DEV)に関する。
【0052】
本発明のDEVはいかなるDEV種又は株からでも調製してよい。ジャンセン株、VAC株(ID EU082088.2)、C-KCE株(ID KF263690.1)、CHv株(ID JQ647509.1)、2085株(ID JF999965)、CV株(ID KJ549663.1)又はCSC株(ID JQ673560.1)等の、DEVのいくつかの株が報告されており、公表されているコレクションから入手可能である。
【0053】
好ましい実施形態では、本発明のDEVはジャンセン株若しくはCSC株、又はジャンセン株若しくはCSC株に少なくとも90%配列同一性、更に好ましくは、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するいかなるDEV株からでも選択される親株に由来する又はそれから調製される。
【0054】
本発明は、US4及びUS5遺伝子を不活化する(すなわち、非機能的にする又は欠失する)ことにより、in ovo又は若い家禽に注射した場合でも安全であり、家禽で複製してタンパク質を発現することが可能である弱毒化DEVを作成可能であることを明らかにしている。特に、実施例で示されるように、不活性なUS4及びUS5遺伝子を有するDEV構築物は安定しており、培養で複製可能であり、家禽卵又は若い家禽に安全に投与することが可能である。したがって、そのようなウイルスを使用すれば、外来核酸材料、特に抗原性コード遺伝子を含有する組換えDEVを作成して、そのような遺伝子を家禽で発現させることができる。
【0055】
本発明の文脈内では、不活性な遺伝子を有するDEVは、前記遺伝子によりコードされた機能的タンパク質もRNAも発現できないDEVを表す。したがって、不活性な遺伝子は特に、野生型タンパク質をコードできない、変異した、欠失している、及び/又は中断された遺伝子を表す。
【0056】
特定の実施形態では、コード配列での1つ又はいくつかの変異、特に完全長タンパク質の発現を妨げるコード配列中の点変異の結果として、遺伝子は不活性である。そのような変異は配列に停止若しくはノンセンスコドンを導入する、又はコードされたタンパク質中で不可欠なアミノ酸残基の置換を引き起こし、不活性なタンパク質を生じる可能性がある。
【0057】
別の実施形態では、前記遺伝子の(コード)配列の少なくとも一部の、更に詳細には、遺伝子の(コード)配列の少なくとも20%、更に好ましくは、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも85%、100%までの欠失の結果として、遺伝子は不活性である。好ましい例では、本発明のDEVは不活化される遺伝子(のコード配列)の少なくとも300bpの欠失を有する。そのような欠失はコード配列を取り除き、したがって、野生型タンパク質の、又は任意のタンパク質でも発現を妨げる。
【0058】
これに関して、本発明の特定の実施形態は、前記ウイルスがUS4及びUS5遺伝子に/の、特にUS4及びUS5遺伝子のコード配列に/の欠失を有するアヒル腸炎ウイルス(DEV)に関する。
【0059】
DEVのUS4及びUS5遺伝子はタンパク質をコードしていると予想されている。しかし、これらの遺伝子の実際の機能は不明のままである。本発明まで、US4-US5二重欠損のあるDEVウイルスを作成する能力は知られておらず、そのようなDEVウイルスが、鳥類で致死性にならずに複製し外来遺伝子を発現する能力は全く未知であった。
【0060】
US4遺伝子は典型的には、DEVゲノムの1380bpで構成されており、おおよそ459アミノ酸残基を含むタンパク質をコードしている。US4はDEV株間では高度に保存されている。CSC株を参照すると、US4遺伝子はゲノムのnt141123からnt142502までに相当している。当業者であれば、本出願に含有される情報及び一般的周知の事実を使用して、又は配列アライメントによりいかなるDEV株でもUS4遺伝子の正確な位置を容易に同定できることは理解されている。本発明の特定のDEVでは、US4(コード)遺伝子配列の少なくとも20%、更に好ましくは、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、100%までが欠失している。好ましい例では、本発明のDEVは、US4(コード)遺伝子配列の少なくとも500bp、更に好ましくは、少なくとも600、700、800、900、1000、又はそれよりも多い欠失を有する。特定の実施形態では、本発明のDEVは、US4遺伝子配列の少なくともnt200~1000、更に好ましくは、少なくともnt150~1150、更により好ましくは、少なくともnt100~1300にまたがる欠失を有する。特定の例では、本発明のDEVは、US4遺伝子配列のnt51からnt1330(すなわち、90%超)の欠失を有する。別の特定の実施形態では、本発明のDEVは、US4遺伝子配列のすべて(nt1~1380)の欠失を有する。
【0061】
DEVのUS5遺伝子は糖タンパク質をコードし、その機能は依然未知のままである。大半のDEV株(例えば、VAC、CSC、C-KCE、CHv、CV)では、US5遺伝子はおおよそ1620bpで構成されており、おおよそ539アミノ酸残基のタンパク質をコードする。2085株及びジャンセン(又はKapevac)株等の、一部のDEV株では、US5遺伝子は、おおよそ25bpの小さな遺伝子間領域により分離されている、2つの比較的短いコード領域、おおよそ396bpの5'US5及びおおよそ1197bpの3'US5を含有する(図1参照)。CSC株を参照すると、US5遺伝子はゲノムのnt142662からnt144281までに相当している。当業者であれば、本出願に含有される情報及び一般的周知の事実を使用して、又は配列アライメントによりいかなるDEV株でもUS5遺伝子の正確な位置を容易に同定できることは理解されている。本発明の特定のDEVでは、US5(コード)遺伝子配列の少なくとも20%、更に好ましくは、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、100%までが欠失している。好ましい例では、本発明のDEVは、US5(コード)遺伝子配列の少なくとも500bp、更に好ましくは、少なくとも600、700、800、900、1000、又はそれよりも多い欠失を有する。特定の実施形態では、本発明のDEVは、US5遺伝子配列の少なくともnt200~1000、更に好ましくは、少なくともnt100~1100、更により好ましくは、少なくともnt80~1120にまたがる欠失を有する。US5遺伝子が2つのORFを含有する場合、両方のORFが不活性であることが好ましい。これに関して、DEVが単一のORFを含有するUS5遺伝子配列を有するウイルス株から調製される場合、DEVは好ましくは、US5遺伝子配列の少なくともnt51からnt1570の欠失等の、前記ORFの少なくとも90%の欠失、更に詳細には、US5遺伝子のすべての欠失を含む。DEVが2つのORFを含有するUS5遺伝子配列を有するウイルス株から調製される場合、DEVは好ましくは、前記ORFのそれぞれの少なくとも90%の欠失、更に好ましくは、第1のORFの少なくとも90%、完全遺伝子間領域、及び第2のORFの少なくとも90%を含む欠失を含む。
【0062】
特定の実施形態では、本発明のDEVは、少なくともUS4遺伝子の一部、全US4-US5遺伝子間領域、及びUS5遺伝子の一部にまたがる近接領域の欠失を有する。
【0063】
更なる特定の実施形態では、DEVは、US4遺伝子の少なくとも50%、US4遺伝子とUS5遺伝子の間の遺伝子間領域のすべて、及びUS5遺伝子の少なくとも50%を含むヌクレオチド領域の欠失を含む。
【0064】
更に好ましい実施形態では、DEVは、US4遺伝子のすべて、US4遺伝子とUS5遺伝子の間の遺伝子間領域のすべて、及びUS5遺伝子のすべてを含むヌクレオチド領域の欠失を含む。そのような構築物の特定の例は、例えば、DEV/US4US5/BacVP2である。
【0065】
上で示されるように、本発明のDEVは目的の1つ又はいくつかの外来核酸を含有することが可能である。外来核酸は一般に、転写プロモーターの制御下にある。好ましくは、プロモーターは外来核酸と一緒にクローニングされる。プロモーターは、細胞又はウイルス遺伝子に由来する、いかなる天然又は合成プロモーターでもよい。適切なプロモーターの例は、例えば、Coa5等のニワトリベータアクチン(Bac)プロモーター又はその誘導体、Pecプロモーター、マウスサイトメガロウイルス(Mcmv)最初期(ie)1プロモーター、ヒトサイトメガロウイルスプロモーター(Hcmv)、シミアンウイルス(SV)40プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、又はプロモーター活性を保持しているその任意の断片を含む。バリアントでは、外来核酸はDEVゲノムに存在する転写プロモーターの下流にクローニングされ、その転写制御下にある。
【0066】
特定の実施形態では、外来核酸は、既存のUS4遺伝子配列に加えて(したがって、遺伝子配列を中断することにより遺伝子を不活性にしている)、若しくはUS4遺伝子の欠失配列に置き換わって、DEVウイルスゲノムのUS4遺伝子配列に、又は変異US4遺伝子配列に位置している。別の実施形態では、外来核酸は、既存のUS5遺伝子配列に加えて(したがって、遺伝子配列を中断することにより遺伝子を不活性にしている)、若しくはUS5遺伝子の欠失配列に置き換わって、DEVウイルスゲノムのUS5遺伝子配列に、又は変異US5遺伝子配列に位置している。
【0067】
好ましい実施形態では、本発明のDEVはUS4及びUS5遺伝子配列に欠失を有し、欠失したヌクレオチドの代わりに位置する外来核酸を含有している。
【0068】
別の実施形態では、本発明のDEVは不活性なUS4及びUS5遺伝子を有し、UL4遺伝子、UL44遺伝子、UL27-UL26遺伝子間領域、UL23遺伝子、UL45-UL46遺伝子間領域、UL50-UL51遺伝子間領域、US7遺伝子、US7-US8遺伝子間領域、又はUS10遺伝子から選択される部位等の、異なるクローニング部位に位置する外来核酸を含有する。この場合、外来核酸は前記遺伝子のすべて若しくは一部に置き換わってクローニングされてもよく、又は前記遺伝子内に挿入されてもよい。
【0069】
更に、本発明のDEVはいくつかの外来核酸を含むことができる。これに関しては、いくつかの外来核酸は、ウイルスの同じ位置に、例えば、上記のUS4/US5領域に、単一の又はいくつかの異なるプロモーターの制御下で挿入されてもよい。代わりに、外来核酸は、典型的には、内在性遺伝子又は領域のすべて又は一部に置き換わって、上記のUS4/US5領域でのクローニング部位、及び、好ましくは、UL4遺伝子、UL44遺伝子、UL27-UL26遺伝子間領域、UL23遺伝子、UL45-UL46遺伝子間領域、UL50-UL51遺伝子間領域、US7遺伝子、US7-US8遺伝子間領域、又はUS10遺伝子から選択される異なる領域での少なくとも1つのクローニング部位、等のウイルスの異なるクローニング部位に挿入してもよい。
【0070】
UL4遺伝子は典型的にはDEVゲノムの717bpで構成されている。CSC株を参照すると、UL4遺伝子はゲノムのnt112845からnt113561までに相当する。当業者であれば、本出願に含有される情報及び一般的周知の事実を使用して、又は配列アライメントによりいかなるDEV株でもUL4遺伝子の正確な位置を容易に同定できることは理解されている。特定の実施形態では、本発明は前記ウイルスが不活性なUS4、US5及びUL4遺伝子を有するアヒル腸炎ウイルス(DEV)に関する。更に詳細には、本発明は、前記ウイルスが不活性なUS4、US5及びUL4遺伝子を有し、US4/US5遺伝子に又はUL4遺伝子に、好ましくは、前記遺伝子の少なくとも20%に置き換わってクローニングされている第1の外来核酸を含むDEVに関している。本発明の特定のDEVでは、UL4遺伝子配列の少なくとも20%、更に好ましくは、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、100%までが欠失している。好ましい例では、本発明のDEVは、UL4遺伝子配列の少なくとも500bp、更に好ましくは、少なくとも600、700、800、900、1000、又はそれよりも多い欠失を有する。
【0071】
UL23遺伝子は典型的にはDEVゲノムの1077bpで構成されている。CSC株を参照すると、UL23遺伝子はゲノムのnt77997からnt79073までに相当する。当業者であれば、本出願に含有される情報及び一般的周知の事実を使用して、又は配列アライメントによりいかなるDEV株でもUL23遺伝子の正確な位置を容易に同定できることは理解されている。特定の実施形態では、本発明は前記ウイルスが不活性なUS4、US5及びUL23遺伝子を有するアヒル腸炎ウイルス(DEV)に関する。更に詳細には、本発明は、前記ウイルスが不活性なUS4、US5及びUL23遺伝子を有し、US4/US5遺伝子に又はUL23遺伝子に、好ましくは、前記遺伝子の少なくとも20%に置き換わってクローニングされている第1の外来核酸を含むDEVに関している。本発明の特定のDEVでは、UL23遺伝子配列の少なくとも20%、更に好ましくは、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、100%までが欠失している。好ましい例では、本発明のDEVは、UL23遺伝子配列の少なくとも500bp、更に好ましくは、少なくとも600、700、800、900、1000、又はそれよりも多い欠失を有する。特定の実施形態では、本発明のDEVは、UL23遺伝子配列の少なくともnt200~900、更に好ましくは、少なくともnt100~1000、更により好ましくは、少なくともnt80~1000にまたがる欠失を有する。特定の例では、本発明のDEVは、UL23遺伝子配列のnt51からnt1027(すなわち、約90%)の欠失を有する。
【0072】
US7遺伝子は典型的にはDEVゲノムの1116bpで構成されている。CSC株を参照すると、US7遺伝子はゲノムのnt145769からnt146884までに相当する。当業者であれば、本出願に含有される情報及び一般的周知の事実を使用して、又は配列アライメントによりいかなるDEV株でもUS7遺伝子の正確な位置を容易に同定できることは理解されている。特定の実施形態では、本発明は前記ウイルスが不活性なUS4、US5及びUS7遺伝子を有するアヒル腸炎ウイルス(DEV)に関する。更に詳細には、本発明は前記ウイルスが不活性なUS4、US5及びUS7遺伝子を有し、US4/US5遺伝子に又はUS7遺伝子に、好ましくは、前記遺伝子の少なくとも20%に置き換わってクローニングされている第1の外来核酸を含むDEVに関する。本発明の特定のDEVでは、US7遺伝子配列の少なくとも20%、更に好ましくは、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、100%までが欠失している。好ましい例では、本発明のDEVは、US7遺伝子配列の少なくとも500bp、更に好ましくは、少なくとも600、700、800、900、1000、又はそれよりも多い欠失を有する。
【0073】
本発明は、前記ウイルスがUS4/US5遺伝子にクローニングされた第1の外来核酸及びUL27とUL26遺伝子の間に位置する遺伝子間領域に、好ましくは、前記遺伝子の少なくとも20%置き換えられてクローニングされた第2の外来核酸を含むDEVにも関している。本発明は、前記ウイルスが不活性なUS4及びUS5遺伝子を含み、前記ウイルスがUL27とUL26遺伝子の間に位置する遺伝子間領域にクローニングされた外来核酸を含むDEVにも関する。CSC株を参照すると、UL27とUL26の間に位置する遺伝子間領域はゲノムのnt72195からnt72646までに相当する。クローニングはそのよう等メインのいかなる位置でも、更に好ましくは、nt72300とnt72500の間、更に好ましくは、nt72350とnt72450の間で実施してもよい。特定の実施形態では、クローニングはnt72431とnt72432の間で実施される。
【0074】
本発明は、前記ウイルスが不活性なUL4遺伝子を含み、前記ウイルスが、US7とUS8遺伝子の間、又はUL45とUL46遺伝子の間、又はUL50とUL51遺伝子の間に位置する遺伝子間領域にクローニングされた外来核酸を含むDEVにも関する。CSC株を参照すると、UL45とUL46の間に位置する遺伝子間領域はゲノムのnt25132からnt25352までに相当する。クローニングはそのよう等メインのいかなる位置でも、更に好ましくは、nt25200とnt25300の間で実施してもよい。特定の実施形態では、クローニングはnt25275とnt25276の間で実施される。CSC株を参照すると、UL50とUL51の間に位置する遺伝子間領域はゲノムのnt15914からnt16063までに相当する。クローニングはそのよう等メインのいかなる位置でも、更に好ましくは、nt15970とnt16010の間で実施してもよい。特定の実施形態では、クローニングはnt15979とnt15980の間で実施される。
【0075】
ウイルス構築及びクローニングは当技術分野でそれ自体公知の技法により達成することができる。遺伝子クローニング及びプラスミド構築は当業者には周知であり、標準的な分子生物学技法(Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 第4版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York、USA、2012年)により本質的に実施することができる。典型的には、組換えウイルスはウイルスゲノムと、組換えを可能にするために挿入部位からヌクレオチドが隣接している、挿入される核酸を含む構築物(例えば、相同プラスミド)の間の相同組換えにより調製してもよい。クローニングは内在性配列の欠失があってもなくても行うことが可能である。特定の実施形態では、組換え配列は少なくとも50ヌクレオチド又はそれよりも多い等の、ゲノムの配列の少なくとも一部を置き換えてクローニングされる。そのような欠失はウイルスのクローニング能力を増す。
【0076】
構築では、標的にされた挿入領域を含有する配列は典型的には、最初に適切なベクターにクローニングされて相同ベクターを作成する。ベクターの例は、pBR322、pBR325、pBR327、pBR328、pUC18、pUC19、pUC7、pUC8、又はpUC9等のプラスミド;ラムダファージ及びM13ファージ等のファージ;又はpHC79等のコスミドを含む。標的領域配列は従来のクローニング法によりベクター内に組み込まれる。使用される標的領域配列は好ましくは、DEVウイルスゲノムとのそれに続くin vivo相同組換えを可能にするように十分に長い。好ましくは、クローニングされた標的領域配列は、少なくともおおよそ100ヌクレオチド長、典型的には500と2000ヌクレオチドの間等の、300を超えるヌクレオチド長を有するものとする。次に、外来核酸(典型的には、遺伝子及びプロモーターを含有する)はベクターにクローニングされた標的領域に挿入される。好ましくは、相同組換えを可能にするのに十分な長さの(例えば、少なくとも50ヌクレオチドの、好ましくは、少なくとも100ヌクレオチドの)クローニングされるインサートのそれぞれの側に標的領域の配列の一部を残すように挿入を行うものとする。外来核酸は、制限酵素及びライゲーション手法等の古典的な技法によりクローニングされた標的領域内に導入することが可能である。適切な場合には、変異を標的領域の特定の部位に導入して制限酵素用の新しい切断部位を作り出してもよい。例えば、in vitro変異誘発又はPCR等の、当業者には周知である従来の変異誘発法をその目的に使用してもよい。次に、外来核酸が標的領域に挿入されている相同ベクターを、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム、リポフェクチンベースの方法、又は同類の方法等の公知の技法を使用してDEV感染細胞又はDEVゲノムトランスフェクト細胞内に導入してもよい。それによって、組換えウイルスは、前記細胞中でのウイルスとベクターの間の組換えにより作成される。得られた組換えウイルスは、実施例に記載されているように、公知の技法を使用して、例えば、ハイブリダイゼーション、シークエンシング、PCR又は外来核酸によりコードされているいかなる産物でも検出する機能アッセイにより、遺伝子型的に又は表現型的に選択することができる。選択された組換え
ウイルスは、細胞培養において大規模に培養することが可能であり、その後組換えウイルスを収集することが可能である。
【0077】
外来遺伝子
本発明のDEVはいかなる外来核酸でも、好ましくは、いかなる外来遺伝子でも含有することができる。外来遺伝子は、RNA又は生物学的に活性な及び/若しくは免疫原性(例えば、抗原性)タンパク質、ポリペプチド又はペプチド等の目的のいかなる産物でもコードすることができる。好ましい実施形態では、外来遺伝子は抗原、更により好ましくは、動物、特に鳥類に感染を引き起こすことができる病原性生物の抗原由来のペプチド又はポリペプチドをコードする。鳥類に感染を引き起こす病原体の例は、ウイルス、細菌、真菌、原虫、等を含む。免疫原性(ポリ)ペプチドは好ましくは、前記病原体の表面タンパク質、分泌タンパク質、若しくは構造タンパク質、又はその断片であって(に由来して)よい。ポリペプチドは、例えば、ウイルス、原核、真核又は合成のいかなる供給源にでも由来することが可能である。
【0078】
好ましい実施形態では、外来遺伝子はトリ病原体の抗原性ペプチドをコードする。
【0079】
病原体の特定の例は、鳥インフルエンザウイルス、鳥類パラミクソウイルス1型、これはニューキャッスル病ウイルス(NDV)とも呼ばれる、鳥類メタニューモウイルス、マレックス病ウイルス、ガンボロ病ウイルス(Gumboro disease virus)、これは伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)とも呼ばれる、伝染性喉頭気管炎ウイルス(ILTV)、伝染性気管支炎ウイルス(IBV)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、サルモネラ菌種、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、リエメレラ・アナチベスチファー(Riemerella anatipestifer)、オルニソバクテリウム・ライノトラケアレ(Ornithobacterium rhinotracheale)、マイコプラズマ・ガリセプチカム(Mycoplasma gallisepticum)、マイコプラズマ・シノビエ(Mycoplasma synoviae)、鳥類種に感染するマイコプラズマ微生物又はコクシジウムを限定せずに含む。
【0080】
優先的に、外来遺伝子は、NDVのFタンパク質、NDVのHNタンパク質、IBDVのVP2タンパク質、ILTVのgBタンパク質、マイコプラズマ・ガリセプチカムの40Kタンパク質、若しくは鳥インフルエンザウイルスの表面タンパク質ヘマグルチニン(HA)、又はその免疫原性断片から選択される抗原をコードする。本発明の文脈内では、用語タンパク質の「断片」は好ましくは、前記タンパク質の少なくとも5連続アミノ酸残基、更により好ましくは、5~100アミノ酸残基を含む断片を表す。好ましい実施形態では、そのような断片は少なくとも1つのエピトープを含む及び/又はin vivoで免疫原性である、すなわち、完全長タンパク質に結合する抗体の産生を引き起こすことが可能である。
【0081】
免疫原性ペプチドの特定の例は、例えば、VP2の1~453、gBの1~469、又はFの1~540アミノ酸残基を含むペプチドを含む。
【0082】
好ましいDEV
本発明の好ましいDEVは全US4及びUS5遺伝子の欠失を含む。
【0083】
本発明の特定のDEVは、US4遺伝子配列のヌクレオチド配列の少なくとも50%、全US4-US5遺伝子間領域、及びUS5遺伝子配列のヌクレオチド配列の少なくとも50%を含む近接領域の欠失を含む。
【0084】
本発明の更なる特定のDEVは、US4遺伝子配列のヌクレオチド配列のすべて、全US4-US5遺伝子間領域、及びUS5遺伝子配列のヌクレオチド配列のすべてを含む近接領域の欠失を含む。
【0085】
本発明の好ましいDEVでは、外来核酸は鳥類抗原、更に好ましくは、VP2、HN若しくはFタンパク質又はその免疫原性断片をコードする。
【0086】
本発明の別の好ましいDEVは、不活性なUS4及びUS5遺伝子並びに
・ US7遺伝子配列の少なくともnt100~nt1000の欠失
・ UL4遺伝子配列の少なくともnt100~nt1200の欠失、及び/又は
・ UL23遺伝子配列の少なくともnt100~nt1000の欠失
から選択される少なくとも1つの更なる欠失を含む。
【0087】
本発明の別の好ましいDEVは、不活性なUS4及びUS5遺伝子並びに、好ましくは、UL4遺伝子、UL44遺伝子、UL27-UL26遺伝子間領域、UL23遺伝子、UL45-UL46遺伝子間領域、UL50-UL51遺伝子間領域、US7遺伝子、US7-US8遺伝子間領域、又はUS10遺伝子から選択される異なる領域にクローニングされた少なくとも1つの外来核酸を含む。
【0088】
核酸
本発明は、不活性なUS4及びUS5遺伝子を有するDEVのゲノムを含む核酸分子にも関する。そのような核酸は一本鎖又は二本鎖、DNA又はRNAでもよい。特定の実施形態では、核酸は上で定義されるDEVのゲノムを含有するDNA分子である。
【0089】
核酸は遊離の形態でも、プラスミド、BAC、及び同類の物等のベクター中にあってもよい。核酸は単離されていても、宿主細胞に含有されていてもよい。
【0090】
細胞培養物
本発明の組換えウイルスは、いかなるコンピテント細胞培養物においても増殖させてよい。ウイルスの要求される成長が達成された後、細胞はスクレーパーを使用して又はトリプシンを用いてウェルから引き離してもよく、感染細胞は遠心分離により上澄みから分離してもよい。
【0091】
コンピテント細胞の例は、CEF、胚発育卵、ニワトリ腎臓細胞、及び同類の物を含む。細胞又はウイルスは、約37℃で3から6日間、イーグルMEM、レイボウィッツ-L-15/McCoy5A(1対1混合物)培養培地等の培養培地で培養してもよい。感染細胞は典型的には、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する培養培地に懸濁させ、液体窒素下で凍結保存される。
【0092】
組成物及びワクチン
本発明は、本発明の1つ又は複数のDEVを含む、ワクチン等の、組成物にも関する。
【0093】
本発明の組成物及びワクチンは、薬学的に又は獣医学的に許容される媒体又は賦形剤にDEVを含んでいてもよい。組成物及びワクチンは、更に又は代わりに、適切なアジュバンドを含んでいてもよい。
【0094】
本発明に従った組成物及びワクチンは、例えば、水性緩衝液又はリン酸緩衝液等の適切な溶媒を含んでもよい。好ましくは、組成物及びワクチンは、安定化剤、保存剤、着色剤、界面活性物質、等等の添加剤も含む。
【0095】
例えば、本発明の組成物又はワクチンは、等張性、生理的pH及び安定性を維持する1つ又は複数の更なる添加剤、例えば、生理食塩水(0.85%)、リン酸緩衝食塩水(PBS)、クエン酸緩衝液、トリス(ヒドロキシメチルアミノメタン(トリス)、トリス緩衝生理食塩水及び同類の物等の緩衝液、又は抗生物質、例えば、ネオマイシン若しくはストレプトマイシン、等と一緒に処方してもよい。
【0096】
特定の実施形態では、本発明の組成物は保存剤を含む。
【0097】
別の特定の実施形態では、本発明の組成物は安定化剤を含む。
【0098】
別の特定の実施形態では、本発明の組成物はアジュバンドを含む。アジュバンドは、単独であれ組み合わせてであれ、免疫応答を増強するのに十分である、動物由来の種々のタンパク質及びペプチド(例えば、ホルモン、サイトカイン、共刺激因子)を含むいくつかの供給源並びにウイルス由来の新規の核酸及び他の供給源(例えば、二本鎖RNA、CpG)並びに同類の物のいずれから得てもよい。
【0099】
本発明の組成物は液体(溶液、懸濁液、乳濁液)又は固体(粉末、ゲル、ペースト、油)でもよく、いかなる投与経路のためにも処方することができる。好ましくは、本発明の組成物は、in ovo注射等の注射用に、又は、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、眼窩内、眼球内、皮内、及び/又は腹腔内注射用に処方される。代わりに、本発明の組成物は、例えば、エアロゾル若しくはスプレーを使用する経口、眼球、(例えば、点眼により)、鼻腔内、又は眼鼻投与用に処方してもよい。
【0100】
それぞれのワクチン投与量は鳥類種において防御的免疫応答を誘発するのに十分な適量を含有してよい。そのような投与量の最適化は当技術分野で周知である。投与量当たりの抗原の量は、抗原/抗体反応を使用する公知の方法により、例えば、ELISA法により決定してもよい。
【0101】
本発明のワクチンは、ワクチン接種プロトコルに応じて、単一用量として又は繰り返し用量で投与することが可能である。
【0102】
特定の実施形態では、本発明は、上に定義されるウイルス、核酸又は細胞及び適切な賦形剤又はアジュバンドを含むワクチンに関する。
【0103】
更なる特定の実施形態では、本発明は、上に定義されるウイルス、核酸又は細胞の液体組成物及び適切な賦形剤又はアジュバンドを含むワクチンに関する。
【0104】
本発明は、家禽等の鳥類種を免疫化するための上記のウイルス、組成物、ワクチン、核酸又は細胞の使用、及び上記のウイルス、組成物、ワクチン、核酸又は細胞の免疫学的有効量を投与することによる鳥類種の免疫化の方法に更に関する。
【0105】
本発明の更なる対象は、鳥類、特に、家禽、更に詳細にはニワトリ、更に詳細には、若い家禽(孵化後3日目又はそれよりも早期に)に又はin ovoでワクチン接種する又は免疫化するのに使用するための、上で定義される組成物、DEV、核酸又は宿主細胞に関する。
【0106】
本発明の更なる対象は、鳥類、特に、家禽、更に詳細にはニワトリ、更に詳細には、若い家禽(孵化後3日目又はそれよりも早期に)又はin ovoで防御免疫を誘導するのに使用するための、上で定義される組成物、ワクチン、DEV、核酸又は宿主細胞に関する。
【0107】
本発明は、非ヒト動物、特に、家禽、更に詳細には、ニワトリ、更に詳細には、若い家禽に(孵化後3日目若しくはそれよりも早期に又はin ovoで)ワクチン接種をする方法であって、前記非ヒト動物に上で定義される組成物、ワクチン、DEV、核酸又は宿主細胞を投与することを含む方法にも関する。
【0108】
本発明の特定の対象は、家禽にワクチン接種する方法であって、上で定義される組成物、ワクチン、DEV、核酸又は宿主細胞のin ovo投与を含む方法である。
【0109】
本発明の別の特定の対象は、家禽にワクチン接種する方法であって、孵化後1日目又は2日目の、上で定義される組成物、ワクチン、DEV、核酸又は宿主細胞の投与を含む方法である。
【0110】
更なる態様では、本発明は、1つ又は複数の鳥類病原体に対して非ヒト動物において免疫原性又は防御応答を誘導するための方法であって、前記非ヒト動物、特に、家禽、更に詳細にはニワトリ、更に詳細には、若い家禽(孵化後3日目又はそれよりも早期に)に又はin ovoで、上で定義される組成物、ワクチン、DEV、核酸又は宿主細胞を投与することを含む方法を提供する。
【0111】
実験のセクションで示されるように、本発明のウイルスは、若い家禽(孵化後1日目、2日目又は3日目)にワクチン接種するのに又はin ovoワクチン接種に特に有利である。実際、本発明は、驚くべきことに、本発明のウイルスがそのような早期投与しても安全であるが、天然の又は野生型DEVは致死性であることを明らかにしている。そのような早期投与は、これらのウイルスにより引き起こされる免疫の早期開始と組み合わせると、家禽を実質的に病原体に曝露することが可能になる前に、早期防御免疫を誘導するのに特に有利である。
【0112】
これに関して、更に一般的な態様では、本発明は、鳥類、特に、家禽、更に詳細には、ニワトリにワクチン接種する又は免疫化するための方法であって、抗原をコードする弱毒化DEVの前記鳥類へのin ovo投与を含む方法にも関する。本発明は、鳥類、特に、家禽、更に詳細には、ニワトリにおいて外来遺伝子を発現するための方法であって、前記外来遺伝子を含有する弱毒化DEVの前記鳥類へのin ovo投与を含む方法にも関する。本発明は、弱毒化DEVのin ovo投与により外来遺伝子を鳥類内に発現するための前記遺伝子を含有する前記DEVの使用にも関する。本発明は、弱毒化DEVのin ovo投与により免疫応答を誘導する又は鳥類にワクチン接種するのに使用するための、抗原をコードする前記DEVにも関する。DEVは好ましくは不活性な内在性遺伝子を含み、前記DEVは弱毒化されてin ovo注射すると十分耐容性がよくなる。
【0113】
本発明は、有効量の上記多価ワクチン及び前記成分を鳥類種に投与するための手段を含む前記種を免疫化するためのワクチン接種キットに更に関する。例えば、そのようなキットは、本発明に従ったワクチンを充填された注入装置及び皮内、皮下、筋肉内、又はin ovo注射のための使用説明書を含む。代わりに、キットは、本発明に従ったワクチンを充填されたスプレー/エロゾル又は点眼装置及び眼鼻投与、経口又は粘膜投与のための使用説明書を含む。
【0114】
本発明の更なる態様及び利点は、以下の実験のセクションで開示されることになり、このセクションは特許請求された発明を例示している。
【実施例
【0115】
(実施例1)
卵又は若い家禽における野生型DEVの毒性
異なるタイムスケジュールでの注射によるニワトリでのDEVの病原性又は毒性を調査するために臨床研究を実施した。更に詳細には、注射はin ovoで(孵化の3日前)、孵化後1日目、又は孵化後4日目に実施した。使用したDEVは野生型DEVジャンセン株であった。投与量は100又は1000pfu/用量であった。対照として、PBS溶液を投与した。病原性は孵化後日ごとに死亡率を測定することにより評価した。
【0116】
結果は以下の表に提示されている。
【0117】
【表1】
【0118】
上の結果により、孵化後4日目のwtDEVの注射は安全であり、生存率100%である(5群参照)ことが示されている。これとは際立って対照的に、DEVのin ovo注射後、トリの100%が孵化後4日までに死亡したが、PBSのin ovo注射は安全である。したがって、これらの結果によれば、wtDEVは成獣への投与に適しているが、驚くべきことに、若い動物(孵化後3日以内)に又はin ovoで投与した場合wtDEVは致死性であることが示されている。
【0119】
(実施例2)
不活性なUS4又はUS5遺伝子を有するDEVの毒性
2.1. 不活性なUS4遺伝子又はUS5遺伝子を含むDEVの構築
ニワトリ胚に対する毒性を低減しようと試みて、US4-又はUS5-不活性DEVを構築した。
【0120】
rpsLneo-DsRed2カセットの構築
rpsLneo-DsRed2カセットの2.8kb DNA断片をPCR反応によって構築した。手短に言えば、3つのPCR反応を行った。第1のPCR反応は、rpsLneo(配列番号3)の合成された断片の鋳型を用いて、配列番号1(5'-GGCCTGGTGATGATGGCGGGATCGTTGTAT-3')と配列番号2(5'-CCATGGTGCTGCGCTCAGAAGAACTCGTCA-3')のプライマー対を使用して行った。第2のPCR反応は、pSI哺乳動物発現ベクター(Promega社、カタログ番号E1721)の鋳型プラスミドを用いて、配列番号4(5'-ACGAGTTCTTCTGAGCGCAGCACCATGGCC-3')と配列番号5(5'-TCGGAGGAGGCCATCCTTAAGAGCTGTAAT-3')のプライマー対を使用して行った。第3のPCR反応は、pIRES2-DsRed2(Clontech社、カタログ番号632420)の鋳型プラスミドを用いて、配列番号6(5'-TACAGCTCTTAAGGATGGCCTCCTCCGAGA-3')及び配列番号7(5'-GCAGTGAAAAAAATGCTTTATTTGTGAAAT-3')のプライマー対を使用して行った。もう1つのPCR反応は、鋳型として第1と第2のPCR反応由来のPCR産物の混合物を、プライマーとして配列番号1及び配列番号5を使用して行った。このPCR産物と第3のPCR反応由来のPCR産物を混合し、配列番号1と配列番号7のプライマー対を用いて最終PCR反応のために使用し、rpsLneo-DsRed2カセットを得た。
【0121】
挿入カセットの構築
5'と3'末端の両方のDEV US4又はUS5領域相同配列(50bpそれぞれ)をその両末端に付加されたrpsLneo-DsRed2カセットのDNA断片はPCR反応により構築した。PCR反応は鋳型としてrpsLneo-DsRed2カセットを使用して行った。使用するプライマー対は、US4不活性DEVでは配列番号8(5'-ATGGCAACAATGATAGCTGTGGTGTTAGTTTTTTTGGGACGCGTTTTAGGGGCCTGGTGATGATGGCGGG-3')及び配列番号9(5'-TTAAACTAATGGAACGCGTTGGAATTTCAAGTCTTGGCGCCCAAACATCGGCAGTGAAAAAAATGCTTTA-3')、US5不活性DEVでは配列番号10(5'-ATGTATACAGACGTTACGGTCATGTGGGTAGCCGTGATTTTATTTACTATGGCCTGGTGATGATGGCGGG-3')及び配列番号11(5'- TCATACCATACAAAGGCATAGGTACAGCCCACAGGTTAAAAACAAAGAAAGCAGTGAAAAAAATGCTTTA-3')である。得られたPCR断片(US4-rpsLneo-DsRed2及びUS5-rpsLneo-DsRed2カセット)は電気泳動し精製した。
【0122】
rpsLneo-DsRed2遺伝子を保有する組換えDEVの構築
US4又はUS5領域にrpsLneo-DsRed2遺伝子を保有する組換えDEVの構築は、0.5μgのUS4-rpsLneoDsRed2又はUS5-rpsLneoDsRed2でトランスフェクトされた、DEVゲノムを保有する大腸菌株での相同組換えにより行った。トランスフェクションは、1.75kV、25μF、及び200ohmでGene Pulser XCell(Bio-Rad Laboratories社)を使用するエレクトロポレーションにより行った。トランスフェクション後、大腸菌はLuria-Bertani(LB)寒天プレート上に蒔き、30℃で一晩インキュベートした。US4又はUS5領域にrpsLneo-DsRed2遺伝子を含有する適切なインサートを保有する大腸菌クローンは、rpsLneo-DsRed2遺伝子とDEVゲノムの挿入部位領域の間の領域(ジャンクション1)を増幅するプライマー対を使用するPCRにより同定された。プライマーは、US4不活性DEVでは配列番号12(5'-AAGTGTATAAATTAGACAAGTAGCTATGCG-3')及び配列番号13(5'-TCAGAAGAACTCGTCAAGAAGGC-3')、US5不活性DEVでは配列番号13及び配列番号14(5'-GTTTATATTGACGCGGAATGTTGAC-3')である。DEV DNAは適切なインサートを保有する大腸菌クローンから抽出され、Nucleofector II(Lonza社、Basel、Switzerland)を使用してCEFにトランスフェクトさせた。トランスフェクトされた細胞は、Leibovitz's L-15(Life Technologies社、カタログ番号41300-39)、McCoy's 5A培地(Life Technologies社、カタログ番号21500-061)(1:1)及び4%の仔ウシ血清[LM(+)培地]に添加され、96ウェル組織培養プレートに蒔かれ、次にDEV細胞変性効果(CPE)が見えるようになるまで37℃、4~5% CO2で、5~7日間インキュベートした。US4又はUS5領域にrpsLneo-DsRed2遺伝子を保有するDEVは首尾よくレスキューされた(DEV/US4/rpsLneo-DsRed2又はDEV/US5/rpsLneo-DsRed2)。
【0123】
ゲノム構造の検証
組換えDEV/US4/rpsLneo-DsRed2又はDEV/US5/rpsLneo-DsRed2のゲノム構造は、挿入された遺伝子のそれぞれの末端でジャンクション領域(ジャンクション1、ジャンクション2、及びジャンクション3)を増幅する3つのPCR反応により検証した。ジャンクション1についてのPCR反応で使用したプライマー対は上に記載されている。DEV/US4/rpsLneo-DsRed2では、PCR反応で使用したプライマー対は、ジャンクション2では配列番号6及び配列番号15(5'-CATTTTAACCGTTTAAGTCAACATTCCGC-3')、ジャンクション3では配列番号12及び配列番号15である。DEV/US5/rpsLneo-DsRed2では、PCR反応で使用したプライマー対は、ジャンクション2では配列番号6及び配列番号16(5'-ACTGAGATGTTGGACCATCAAATCCTG-3')、ジャンクション3では配列番号14及び配列番号16である。PCR産物については予想されるサイズが観察され、DEV/US4/rpsLneo-DsRed2及びDEV/US5/rpsLneo-DsRed2が予想されるゲノム構造を有していたことが確かめられた。
【0124】
2.2. 不活性なUS4又はUS5遺伝子を有する組換えDEVによる外来遺伝子の発現
DEV/US4/rpsLneo-DsRed2又はDEV/US5/rpsLneo-DsRed2によるDsRed2タンパク質の発現はDsRed2についての励起により確かめられた。DsRed2についての励起は、DEV/US4/rpsLneo-DsRed2又はDEV/US5/rpsLneo-DsRed2を感染させたCEFを使用して行った。手短に言えば、6ウェルプレートのCEF細胞に、DEV/US4/rpsLneo-DsRed2、DEV/US5/rpsLneo-DsRed2、又は親DEV株をおおよそ0.01の感染多重度で感染させた。接種の3日後、細胞は563nmで励起すると組換えDEV/US4/rpsLneo-DsRed2又はDEV/US5/rpsLneo-DsRed2のプラークで赤色蛍光が観察され、したがって、組換えDEVによる実際のタンパク質発現が確かめられた。
【0125】
2.3. 不活性なUS4又はUS5遺伝子を有する組換えDEVの生存能及び安定性
DEV/US4/rpsLneo-DsRed2又はDEV/US5/rpsLneo-DsRed2はCEFにおいて15回継代され、rpsLneo-DsRed2の挿入された遺伝子の安定性が確かめられた。継代は3日~4日ごとに行われた。5継代ごとに、DEV/US4/rpsLneo-DsRed2又はDEV/US5/rpsLneo-DsRed2のプラークは蛍光顕微鏡により赤色蛍光をチェックし、そのゲノム構造は、実施例2に示されるプライマーを用いてジャンクション領域(ジャンクション1、ジャンクション2、及びジャンクション3)を増幅するPCR分析により確かめた。観察したウイルスすべてでPCR産物の赤色蛍光及び予想されるサイズが観察され、DEV/US4/rpsLneo-DsRed2及びDEV/US5/rpsLneo-DsRed2が少なくとも15継代の間rpsLneo-DsRed2遺伝子を保持したことが確かめられた。
【0126】
2.4 in ovo投与によるUS4又はUS5不活性DEVの毒性
DEV/US4/rpsLneo-DsRed2又はDEV/US5/rpsLneo-DsRed2をSPFニワトリの18日目の胚に接種して、ニワトリ胚に対するその病原性又は毒性を調べた。ニワトリ胚に、おおよそ1000pfu/0.1mlのDEV/US4/rpsLneo-DsRed2、DEV/US5/rpsLneo-DsRed2、親DEV、又は0.1mlのPBSを20ゲージ及び1.5インチ針を介してin ovoに投与した。ニワトリは11日間、衰弱及び死亡等のDEVに関連する臨床徴候について毎日観察された。結果は以下の表に示されている。
【0127】
【表2】
【0128】
US4又はUS5不活性DEVをin ovo接種されたニワトリはすべて孵化4日後までに死亡し、親DEVを接種されたニワトリの95%が死亡した。この結果によれば、US4又はUS5不活性DEVはin ovo投与ではニワトリ胚に対してまだ病原性及び毒性を有することが示されている。
【0129】
(実施例3)
不活性なUS4及びUS5遺伝子を含むDEVの構築
US4及びUS5不活性DEVの構築では、相同ベクターを先ず構築し、次にこれを使用して大腸菌において相同組換えによりウイルスを作成した。プラスミド構築及びDNA操作は本質的に標準的分子生物学技法(Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 第4版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York、USA、2012年)に従って実施した。
【0130】
相同ベクターの構築
US3及びUS6遺伝子に隣接するDEVゲノムの1.1kbのDNA断片を、挿入部位にSfiI認識部位を付加してPCR反応によりクローングした。手短に言えば、鋳型としてDEVから抽出したDNAを使用して、2つのPCR反応を行った。使用したプライマー対は配列番号17(5'-GCGCATGCTAGCTGATCTAACTTTAC-3')と配列番号18(5'-GGTGGCCAATAAGGCCTGACGGCAATATGT-3')及び配列番号19(5'-TCAggccttattggccACCAGCTACACAAG-3')と配列番号20(5'-GCGAATTCGATTAATTCTCCCGAACTGTTG-3')である。別のPCR反応は、鋳型として2つの以前のPCR反応由来のPCR産物の混合物並びにプライマーとして配列番号17及び配列番号20を使用して行った。得られたPCR断片は、EcoRI及びSphIを用いた消化後pUC18ベクター(ジェンバンク受託番号L09136)にクローニングし、pUC18-KAPEVAC-US4US5del-SfiIを得たが、これはDEVゲノムのUS3及びUS6領域の一部を含む。次に、標準負荷株(VP2-STC)由来のプロモーター及びIBDV VP2遺伝子を含有する相同ベクターは、プラスミドpUC18-KAPEVAC-US4US5del-SfiIを利用することにより構築した。第1に、pUC18-KAPEVAC-US4US5del-SfiIをSfiIを用いて切断し、アルカリホスファターゼシュワネラ種S1B1リコンビナント(PAP)(Funakoshi社、番号DE110)を用いて脱リン酸化した。次に、ニワトリベータアクチン(Bac)プロモーター(配列番号21)及びVP2-STC遺伝子はp45/46bacVP2-STC#11(米国特許第6,764,684号)のBg1I消化により得た。最後に、このBacプロモーターVP2-STCカセットをSfiI消化pUC18-KAPEVAC-US4US5del-SfiIに挿入し、pUC18-KAPEVAC-US4US5del-BacVP2stcを得た(図2)。このプラスミドpUC18-KAPEVAC-US4US5del-BacVP2stcを使用してDEV/US4US5del/BacVP2stcを構築した(図2)。
【0131】
DEV/US4US5del/BacVP2の構築
US4-US5領域にBacVP2遺伝子を保有するDEVの構築は、0.5μgのpUC18-KAPEVAC-US4US5del-BacVP2stcをトランスフェクトされた、DEVゲノムを保有する大腸菌株での相同組換えにより行った。トランスフェクション条件は実施例2に記載していた。BacVP2遺伝子を含有する適切なインサートを保有する大腸菌クローンは、BacVP2遺伝子とDEVゲノムの挿入部位領域の間の領域(ジャンクション1、図2)を増幅するプライマー対を使用するPCRにより同定した。プライマーは配列番号22(5'-GTCCACTATGCCATGACATAGGTG-3')及び配列番号23(5'-GAGCAACTTCGAGCTGATCC-3')である。DEV DNAは適切なインサートを保有する大腸菌クローンから抽出し、これをCEFにトランスフェクトした。トランスフェクト細胞は、DEV CPEが見えるようになるまでインキュベートした。DEV/US4US5del/BacVP2は、そのUS4及びUS5遺伝子をノックアウトされBacVP2遺伝子を有するが、構築に成功した。
【0132】
ゲノム構造の検証
DEV/US4US5del/BacVP2のゲノム構造は、挿入された遺伝子のそれぞれの末端でジャンクション領域(ジャンクション1、ジャンクション2、及びジャンクション3;図2)を増幅させる3つのPCR反応により検証した。ジャンクション1についてのPCR反応で使用したプライマー対は上に記載されている。ジャンクション2についてのPCR反応で使用したプライマー対は、配列番号24(5'-GCCAGGGAATCCAGGGAAAAAGAC-3')及び配列番号12である。ジャンクション3では、配列番号22及び配列番号12を使用した。PCR産物については予想されるサイズが観察され、DEV/US4US5del/BacVP2が予想されるゲノム構造を有していたことが確かめられた。
【0133】
(実施例4)
DEV/US4US5del/BacVP2によるVP2遺伝子の発現
組換えDEV/US4US5del/BacVP2によるVP2タンパク質の発現はブラックプラークアッセイにより確かめた。手短に言えば、DEV/US4US5del/BacVP2を感染させたCEFは、メタノール:アセトン混合物(1:2)で固定させ、抗IBDV VP2モノクローナル抗体R63(ATCC#; HB-9490)と一緒にインキュベートした。次に、ビオチン化抗マウスIgG抗体(Vector Laboratories社、カタログ番号BA-9200)と一緒に、その後VECTASTAIN ABC-APキット(Vector Laboratories社、カタログ番号AK-5000)と一緒にインキュベートし、VP2タンパク質を発現しているプラークはNBT/BCIP溶液(Roche Applied Science社、カタログ番号1681451)の添加により染色した。図3に示されるように、VP2タンパク質の発現はDEV/US4US5del/BacVP2を感染させた細胞で観察された。
【0134】
(実施例5)
DEV/US4US5del/BacVP2のin ovo投与
DEV/US4US5del/BacVP2はSPFニワトリの18日目の胚に接種した。胚のすべての群には、おおよそ1000pfu/0.1mlの組換DEV/US4US5del/BacVP2、親DEV、又は0.1mlのPBSを20ゲージ及び1.5インチ針を介してin ovoでワクチン接種した。ニワトリは35日間、衰弱及び死亡等のDEVに関連する臨床徴候について毎日観察された。孵化5週間後、ニワトリは体重増加を調べ、死体解剖し、肉眼的に観察可能な病変について観察した。結果は下の表に示されている。
【0135】
【表3】
【0136】
US4とUS5遺伝子の両方についてノックアウトされDEV/US4US5del/BacVP2を接種されたトリの死亡率は11.8%だったが、親DEVを接種されたトリの死亡率は100%であり、DEVの毒性及び病原性はUS4とUS5遺伝子の両方の不活化(例えば、欠失)により実質的に低減されたことを示している。更に、DEV/US4US5del/BacVP2を接種された生き残ったトリの平均体重はPBSを接種されたトリの平均体重に匹敵していた。これらの結果から、in ovoワクチン接種のための本発明のDEVの有効性を実証することが可能である。
【0137】
(実施例6)
不活性なUS4及びUS5遺伝子を含むDEV/Coa5VP2の構築
本セクションでは、US4とUS5遺伝子の両方に欠失がありBacプロモーター(Coa5プロモーター;配列番号25)のコア領域により駆動されるVP2遺伝子を保有するDEVを構築した。これらのDEVの構築では、先ず相同ベクターを構築し、次にこれを使用して大腸菌において相同組換えによりウイルスを作成した。
【0138】
pUC18-KAPEVAC-US4US5delの構築
US3及びUS6遺伝子に隣接するDEVゲノムの1.1kbのDNA断片を、PCR反応によりクローングした(図4)。手短に言えば、鋳型としてDEVから抽出したDNAを使用して、2つのPCR反応を行った。使用したプライマー対は配列番号17と配列番号26(5'-GCTTGTGTAGCTGGTTGACGGCAATATG-3')及び配列番号27(5'-CATATTGCCGTCAACCAGCTACACAAGC-3')と配列番号20(5'-gcGAATTCGATTAATTCTCCCGAACTGTTG-3')である。別のPCR反応は、鋳型として2つの以前のPCR反応由来のPCR産物の混合物並びにプライマーとして配列番号17及び配列番号20を使用して行った。得られたPCR断片は、EcoRI及びSphIを用いた消化後pUC18ベクターにクローニングし、pUC18-KAPEVAC-US4US5del(図4)を得た。
【0139】
DEV/US4US5delの構築
US4とUS5遺伝子の両方に欠失がある組換えDEV/US4US5delの構築は、0.5μgのpUC18-KAPEVAC-US4US5delをトランスフェクトされた、DEVゲノムを保有する大腸菌において相同組換えにより行った。適切な欠失(DH10B/ DEV/US4US5del)を保有する大腸菌クローンは、US3とUS6の間の領域(ジャンクション1;図4)を増幅するプライマー対を使用してPCRにより同定した。使用したプライマーは配列番号22及び配列番号20である。DEV DNAは大腸菌クローンから抽出し、CEFにトランスフェクトしてDEV/US4US5delをレスキューした。
【0140】
pUC18-KAPEVAC-UL23del-Coa5VP2の構築
UL24及びUL22遺伝子に隣接するDEVゲノムの1.0kbのDNA断片を、挿入部位にSfiI認識部位を付加してPCR反応によりクローングした(図5)。手短に言えば、鋳型としてDEVから抽出したDNAを使用して、2つのPCR反応を行った。使用したプライマー対は配列番号28(5'-GCGCATGCCAATTGTCTAATTCCAG-3')と配列番号29(5'-CCCGGCCAATAAGGCCACAGAAAAAGCGCG-3')及び配列番号30(5'-CTGTGGCCTTATTGGCCGGGATCTGGAAC-3')と配列番号31(5'-GCGAATTCATGTGCTACGCCCAG-3')である。別のPCR反応は、鋳型として2つの以前のPCR反応由来のPCR産物の混合物並びにプライマーとして配列番号28及び配列番号31を使用して行った。得られたPCR断片は、EcoRI及びSphIを用いた消化後pUC18ベクターにクローニングし、pUC18-KAPEVAC-UL23del-SfiIを得た。次に、プロモーター及びVP2-STCを含有する相同ベクターは、プラスミドpUC18-KAPEVAC-UL23del-SfiIを利用することにより構築した。第1に、pUC18-KAPEVAC-UL23del-SfiIをSfiIを用いて切断し、PAPを用いて脱リン酸化した。次に、Coa5プロモーターはBglI及びXbaI消化によりプラスミドpGICOA(米国特許第6,866,852号)から入手し、p45/46bacVP2-STC#11(米国特許第6,764,684号)のXbaI-EcoRI断片(6.3kb)及びEcoRI-Bg1I断片(0.1kb)を用いてライゲートし、p45/46COA5VP2-STC#11を得た。次に、Coa5プロモーター-VP2-STCカセットをBglI消化によりp45/46COA5VP2-STC#11から切り取り、SfiI消化pUC18-KAPEVAC-UL23del-SfiIを用いてライゲートし、pUC18-KAPEVAC-UL23del-Coa5VP2を得た。このプラスミドを使用してDEV/US4US5del/UL23/Coa5VP2を構築した。
【0141】
pUC18-KAPEVAC-UL26-Coa5VP2の構築
UL26及びUL27遺伝子に隣接するDEVゲノムの1.0kbのDNA断片を、挿入部位にSfiI認識部位を付加してPCR反応によりクローングした(図6)。手短に言えば、鋳型としてDEVから抽出したDNAを使用して、2つのPCR反応を行った。使用したプライマー対は配列番号32(5'-CGGTCGACACTCCCAGGGGTGAAGC-3')と配列番号33(5'-CGGCCAATAAGGCCAAGAATGCATTCGGCC-3')及び配列番号34(5'-TGGCCTTATTGGCCGCCGTATGAATTGCGC-3')と配列番号35(5'-GCGAGCTCCTGCAACCACAGACCGC-3')である。別のPCR反応は、鋳型として2つの以前のPCR反応由来のPCR産物の混合物並びにプライマーとして配列番号32及び配列番号35を使用して行った。得られたPCR断片は、SalI及びSacIを用いた消化後pUC18ベクターにクローニングし、pUC18-KAPEVAC-UL26-SfiIを得た。次に、標準負荷株由来のプロモーター及びIBDV VP2遺伝子を含有する相同ベクターは、プラスミドpUC18-KAPEVAC-UL26-SfiIを利用することにより構築した。第1に、pUC18-KAPEVAC-UL26-SfiIをSfiIを用いて切断し、PAPを用いて脱リン酸化した。Coa5プロモーター-VP2-STCカセットはSfiI消化によりpUC18-KAPEVAC-UL23del-Coa5VP2から切り取り、SfiI消化pUC18-KAPEVAC-UL26-SfiIを用いてライゲートし、pUC18-KAPEVAC-UL26-Coa5VP2を得た。このプラスミドを使用してDEV/US4US5del/UL26/Coa5VP2を構築した。
【0142】
pUC18-KAPEVAC-UL45-Coa5VP2の構築
UL45及びUL46遺伝子に隣接するDEVゲノムの1.0kbのDNA断片を、挿入部位にSfiI認識部位を付加してPCR反応によりクローングした(図7)。手短に言えば、鋳型としてDEVから抽出したDNAを使用して、2つのPCR反応を行った。使用したプライマー対は配列番号36(5'-CGGTCGACATAGAACGCGCTTCATCTAA-3')と配列番号37(5'-TGGCCAATAAGGCCGTTTATTGTTTATTAT-3')及び配列番号38(5'-CGGCCTTATTGGCCAATCTGATTCATCCAA-3')と配列番号39(5'-GCGAGCTCCGCCTAATCACAATCGGTATTG-3')である。別のPCR反応は、鋳型として2つの以前のPCR反応由来のPCR産物の混合物並びにプライマーとして配列番号36及び配列番号39を使用して行った。得られたPCR断片は、SalI及びSacIを用いた消化後pUC18ベクターにクローニングし、pUC18-KAPEVAC-UL45-SfiIを得た。次に、標準負荷株由来のプロモーター及びIBDV VP2遺伝子を含有する相同ベクターは、プラスミドpUC18-KAPEVAC-UL45-SfiIを利用することにより構築した。第1に、pUC18-KAPEVAC-UL45-SfiIをSfiIを用いて切断し、PAPを用いて脱リン酸化した。Coa5プロモーター-VP2-STCカセットはSfiI消化によりpUC18-KAPEVAC-UL23del-Coa5VP2から切り取り、SfiI消化pUC18-KAPEVAC-UL45-SfiIを用いてライゲートし、pUC18-KAPEVAC-UL45-Coa5VP2を得た。このプラスミドを使用してDEV/US4US5del/UL45/Coa5VP2を構築した。
【0143】
pUC18-KAPEVAC-UL50-Coa5VP2の構築
UL50及びUL51遺伝子に隣接するDEVゲノムの1.0kbのDNA断片を、挿入部位にSfiI認識部位を付加してPCR反応によりクローングした(図8)。手短に言えば、鋳型としてDEVから抽出したDNAを使用して、2つのPCR反応を行った。使用したプライマー対は配列番号40(5'-CCGCATGCGCAACTATATATGTCGGTC-3')と配列番号41(5'-GGGCCAATAAGGCCCAAAAGTACATTTTGT-3')及び配列番号42(5'-GGGCCTTATTGGCCCAATTTATTTACTATT-3')と配列番号43(5'-GCGAATTCTGGATATGATATACCGTTGC-3')である。別のPCR反応は、鋳型として2つの以前のPCR反応由来のPCR産物の混合物並びにプライマーとして配列番号40及び配列番号43を使用して行った。得られたPCR断片は、EcoRI及びSphIを用いた消化後pUC18ベクターにクローニングし、pUC18-KAPEVAC-UL50-SfiIを得た。次に、標準負荷株由来のプロモーター及びIBDV VP2遺伝子を含有する相同ベクターは、プラスミドpUC18-KAPEVAC-UL50-SfiIを利用することにより構築した。第1に、pUC18-KAPEVAC-UL50-SfiIをSfiIを用いて切断し、PAPを用いて脱リン酸化した。Coa5プロモーター-VP2-STCカセットはSfiI消化によりpUC18-KAPEVAC-UL23del-Coa5VP2から切り取り、SfiI消化pUC18-KAPEVAC-UL50-SfiIを用いてライゲートし、pUC18-KAPEVAC-UL50-Coa5VP2を得た。このプラスミドを使用してDEV/US4US5del/UL50/Coa5VP2を構築した。
【0144】
DEV/US4US5del/Coa5VP2stcの構築
US4及びUS5遺伝子に欠失がありUL23、UL26/UL27、UL45/UL46、又はUL50/UL51領域にCoa5VP2遺伝子を保有する組換えDEVの構築は、DEV/US4US5delを及びpUC18-KAPEVAC-UL23del-Coa5VP2、pUC18-KAPEVAC-UL26-Coa5VP2、pUC18-KAPEVAC-UL45-Coa5VP2、又はpUC18-KAPEVAC-UL50-Coa5VP2のうちの1つの0.5μgをトランスフェクトした大腸菌株において相同組換えにより行った。トランスフェクション条件は実施例2に記載した。トランスフェクション後、Coa5VP2遺伝子を含有する適切なインサートを保有する大腸菌クローンは、Coa5VP2遺伝子とDEVゲノムの挿入部位領域の間の領域(ジャンクション1、図5図8)を増幅するプライマー対を使用してPCRにより同定した。プライマーは、挿入部位UL23では配列番号23と配列番号28、挿入部位UL26/UL27では配列番号32、挿入部位UL45/UL46では配列番号36、又は挿入部位UL50/UL51では配列番号40である。改変DEV DNAは適切なインサートを保有する大腸菌クローンから抽出され、NucleofectorIIを使用してCEFにトランスフェクトした。トランスフェクト細胞はLM(+)培地に添加し、96ウェル組織培養プレートに蒔き、次にDEV CPEが見えるようになるまで5~7日間、37℃、4~5%CO2でインキュベートした。トランスフェクション後、不活性なUS4及びUS5遺伝子を有しCoa5VP2遺伝子を保有するDEVはレスキューに成功した(DEV/US4US5del/UL23/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL26/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL45/Coa5VP2、及びDEV/US4US5del/UL50/Coa5VP2)。
【0145】
ゲノム構造の検証
DEV/US4US5del/UL23/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL26/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL45/Coa5VP2、及びDEV/US4US5del/UL50/Coa5VP2のゲノム構造は、挿入された遺伝子のそれぞれの末端でジャンクション領域(ジャンクション1、ジャンクション2、及びジャンクション3;図5図8)を増幅させる3つのPCR反応により検証した。ジャンクション1についてのPCR反応で使用したプライマー対は上に記載されている。ジャンクション2についてのPCR反応で使用したプライマー対は、配列番号24と配列番号31(挿入部位UL23)、配列番号35(挿入部位UL26/UL27)、配列番号39(挿入部位UL45/UL46)、又は配列番号43(挿入部位UL50/UL51)である。ジャンクション3では、プライマー対配列番号28/配列番号31(挿入部位UL23)、配列番号32/配列番号35(挿入部位UL26/UL27)、配列番号36/配列番号39(挿入部位UL45/UL46)、又は配列番号40/配列番号43(挿入部位UL50/UL51)を使用した。PCR産物については予想されるサイズが観察され、DEV/US4US5del/UL23/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL26/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL45/Coa5VP2、及びDEV/US4US5del/UL50/Coa5VP2が予想されるゲノム構造を有していたことが確かめられた。
【0146】
(実施例7)
不活性なUS4及びUS5遺伝子を含むDEV/Coa5VP2によるVP2遺伝子の発現
DEV/US4US5del/UL23/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL26/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL45/Coa5VP2、及びDEV/US4US5del/UL50/Coa5VP2によるVP2タンパク質の発現は、ブラックプラークアッセイ及びウェスタンブロット分析により確かめた。ブラックプラークアッセイの方法は実施例4に記載した。図9に示されるように、VP2タンパク質の発現は、DEV/US4US5del/UL23/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL26/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL45/Coa5VP2、又はDEV/US4US5del/UL50/Coa5VP2を感染させた細胞で観察された。ウェスタンブロットは、DEV/US4US5del/UL23/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL26/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL45/Coa5VP2、又はDEV/US4US5del/UL50/Coa5VP2を感染させたCEF及び抗IBDV VP2モノクローナル抗体R63を使用して行った。手短に言えば、12ウェルプレート中のCEFに組換えウイルス又は親DEVのうちの1つを感染させた。接種4日後、細胞はトリプシンで収穫し、913×gで5分間遠心分離した。ペレットはPBSで洗浄して25μlのPBSで再懸濁した。同体積の2×SDSサンプルバッファー(130mMのトリス-Cl(pH6.8)、6%のSDS、20%のグリセロール、10%の2-メルカプトエタノール及び0.01%のブロモフェノールブルー)を添加後、細胞懸濁液は5分間煮沸した。試料は12.5%ポリアクリルアミドゲルを使用してSDS-PAGEにより分離し、PVDF膜(Immobilon-P、Millipore社)に移した。膜は完全に乾燥させ、次にR63モノクローナル抗体と一緒にインキュベートした。R63抗体を洗い流した後、ビオチン化抗マウスIgG抗体及び次にVECTASTAIN ABC-APキットを用いて。R63モノクローナル抗体と結合しているタンパク質は、NBT/BCIP溶液の添加により可視化した。40キロダルトンのタンパク質バンドは、予想されるサイズのVP2タンパク質であるが、組換え細胞と共にすべてのレーンで観察され(図10)、組換えウイルスが感染した細胞がVP2タンパク質を発現することが確かめられた。
【0147】
(実施例9)
不活性なUS4及びUS5遺伝子を含むDEV/Coa5VP2の安定性
DEV/US4US5del/UL23/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL26/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL45/Coa5VP2、及びDEV/US4US5del/UL50/Coa5VP2はCEFにおいて15回継代され、BacVP2の挿入された遺伝子の安定性は正しく確かめられた。継代は3から4日ごとに行った。5継代ごとに、DEV/US4US5del/UL23/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL26/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL45/Coa5VP2、又はDEV/US4US5del/UL50/Coa5VP2を感染させた細胞はVP2遺伝子の発現についてブラックプラークアッセイにより調べ、そのゲノム構造はジャンクション領域(ジャンクション1、ジャンクション2、及びジャンクション3;図5図8)を増幅させるPCR分析により確かめ、プライマーは実施例7に示されている。その結果、US4及びUS5遺伝子の復帰変異もCoa5VP2遺伝子上の欠失も観察されず、これらのウイルスがCEFにおいて安定であることが示されている。
【0148】
(実施例10)
不活性なUS4及びUS5遺伝子を含むDEV/Coa5VP2のin ovo投与
本研究では、毒性のあるIBDVに対するin ovo安全性及び防御効率を調べる。
【0149】
DEV/US4US5del/UL23/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL26/Coa5VP2、DEV/US4US5del/UL45/Coa5VP2、及びDEV/US4US5del/UL50/Coa5VP2又は親DEVをSPFニワトリの18日目の胚に接種する。胚のすべての群は、おおよそ1000pfu/0.1mlの組換えウイルス、親DEV、又は0.1mlのPBSを20ゲージ及び1.5インチ針を介してin ovoでワクチン接種した。ニワトリは42日間、衰弱及び死亡等のDEVに関連する臨床徴候について毎日観察される。ニワトリは、IBDVに対する液性免疫を評価するため及びウイルスの毒性を調べるために生後1週間から5週間の間毎週出血させ体重を調べた。抗IBDV抗体は市販のIBDV ELISAキット(ID SCREEN IBD VP2; IDVet)を用いて定量化する。群1を除くすべてのニワトリが、毒性のあるIBDV標準負荷(STC)株の103平均胚感染価(EID50)を、経口経路を介して負荷する。ニワトリは、衰弱及び死亡等のIBDに関連する臨床徴候について毎日観察される。負荷7日後、ニワトリは死体解剖され、浮腫、変色、萎縮、出血、及び黄色又はゼラチン状滲出液等の肉眼的に観察可能なブルサ病変について観察する。死体解剖時、B/B指数を計算するために体重及びブルサも測定され、この指数はブルサの重さと負荷されたトリの体重の比を非負荷トリの同じ比で割ったものである。
【0150】
本試験の結果により、in vivoでの安全性、安定性、及び効果的発現を確かめることが可能である。
【0151】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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