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特許6990818ベアリング内蔵型ゴムローラ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】ベアリング内蔵型ゴムローラ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 13/00 20060101AFI20220104BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20220104BHJP
   F16C 13/02 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
F16C13/00 B
F16C19/06
F16C13/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021089275
(22)【出願日】2021-05-27
【審査請求日】2021-07-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591221167
【氏名又は名称】ミツマ技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124280
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】西川 隆雄
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-292443(JP,A)
【文献】特開平11-51063(JP,A)
【文献】実開平5-71436(JP,U)
【文献】特開2003-176817(JP,A)
【文献】特開2002-310139(JP,A)
【文献】特開2001-187626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 13/00-15/00
F16C 19/00-19/56
F16C 33/00-33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は2つ以上のベアリングと、これらベアリングの外輪に結合され、ベアリングの回転軸線の周りで回転する合成樹脂製の回転ホルダーと、回転ホルダーの外周面に接着固定した弾性変形可能なリング状又は円筒状のゴムタイヤとを有し、
前記ゴムタイヤは、その円周方向に伸縮可能なゴム材料で構成され、当該ゴムタイヤは回転ホルダーに対してその半径方向に締め付ける収縮力を有することを特徴とするベアリング内蔵型ゴムローラ。
【請求項2】
回転軸線を共有する2つ以上のベアリングと、これらベアリングの外輪に結合され、ベアリングの回転軸線の周りで回転する合成樹脂製の回転ホルダーと、回転ホルダーの外周面に接着固定した円筒状の弾性変形可能なゴムタイヤとを有し、
前記ゴムタイヤは、伸縮可能なゴム材料で構成され、当該ゴムタイヤは回転ホルダーに対してその半径方向に締め付ける収縮力を有することを特徴とするベアリング内蔵型ゴムローラ。
【請求項3】
請求項2に記載のベアリング内蔵型ゴムローラにおいて、前記回転ホルダーは、同一形状の2つのハーフホルダーを結合することにより構成され、
前記ハーフホルダーには、ベアリングを収納する2個以上の円弧状の凹部が形成され、各ベアリングは、回転ホルダーに形成された円弧状の凹部内に収納固定したことを特徴とするベアリング内蔵型ゴムローラ。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のベアリング内蔵型ゴムローラにおいて、前記回転ホルダーとゴムタイヤとの間には、常温で硬化が進行する常温硬化性の接着剤層が介在することを特徴とするベアリング内蔵型ゴムローラ
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のベアリング内蔵型ゴムローラにおいて、前記回転ホルダーは、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンサルファイト、及びナイロンを含む合成樹脂材料から選択され、
前記ゴムタイヤは、SBRゴム、IRゴム、IIRゴム、CRゴム、NRゴム、EPDMゴム、BRゴム、NBRゴム、シリコンゴム、ウレタンゴムから選択したことを特徴とするベアリング内蔵型ゴムローラ。
【請求項6】
1つ又は2つ以上のベアリングと、これらベアリングの外輪に連結され、ベアリングの回転軸線の周りで回転する合成樹脂製の回転ホルダーと、回転ホルダーの外周面に接着固定した弾性変形可能なリング状又は円筒状のゴムタイヤとを有するベアリング内蔵型ゴムローラの製造方法であって、
拡開装置を用いて、伸縮自在なゴムタイヤをその半径方向に沿って放射状に拡張する工程と、
拡張されたゴムタイヤを真空装置を用いて拡張状態に維持する工程と、
前記拡開装置を取り外し、ベアリングを内蔵すると共に外周面に常温硬化性の接着剤が塗布された回転ホルダーをゴムタイヤの内側に位置決め配置する工程と、
前記真空装置を停止して、回転ホルダーの外周にゴムタイヤを圧着させ、圧着させながら常温雰囲気で前記接着剤を硬化させる工程とを有することを特徴とするベアリング内蔵型ゴムローラの製造方法。
【請求項7】
回転軸線を共有する2つ以上のベアリングと、これらベアリングの外輪に連結され、ベアリングの回転軸線の周りで回転する合成樹脂製の回転ホルダーと、回転ホルダーの外周面に接着固定した弾性変形可能なリング状又は円筒状のゴムタイヤとを有するベアリング内蔵型ゴムローラの製造方法であって、
前記回転ホルダーは、ベアリングを収納する円弧状の凹部が形成された同一形状の2つのハーフホルダーを結合することにより構成され、
ベアリングを位置決め用の基準シャフトに装着し、ベアリングを基準シャフトに装着した状態でハーフホルダーの凹部内にそれぞれ収納固定する工程と、
前記2つのハーフホルダーを結合する工程と、
拡開装置を用いてゴムタイヤをその半径方向に沿って放射状に拡張する工程と、
拡張されたゴムタイヤを真空装置を用いて拡張状態に維持する工程と、
前記拡開装置を取り外すと共に、外周面に常温硬化性の接着剤が塗布された回転ホルダーをゴムタイヤの内側に位置決め配置する工程と、
前記真空装置を停止して、回転ホルダーの外周にゴムタイヤを圧着させ、圧着させながら常温雰囲気で前記接着剤を硬化させる工程とを有することを特徴とするベアリング内蔵型ゴムローラの製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベアリングを内蔵したゴムローラ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物流センタでは、各種商品の搬送手段としてローラコンベアが利用されていす。ローラコンベアに用いられるローラとして、金属パイプの両端にベアリングを圧入したベアリング付き金属ローラが用いられている。金属ローラはスチール、アルミ合金、又はステンレスで構成され、表面の摩擦係数は小さい。そのため、搬送される梱包材との間に十分な摩擦力が発生せず、搬送性が低い欠点がある。この欠点を解消したローラとして、鉄製の回転ホルダーの両側にベアリングをそれぞれ連結し、鉄製の回転ホルダーの外周面に各種合成ゴムを設けたゴム巻きローラが既知である。また、ゴム巻きローラとして、ベアリングの外輪の外周面上に各種合成ゴムを直接成型したローラも既知である(例えば、特許文献1参照)。ウレタンゴムがライニングされたローラは、適度な弾性反発力及び摩擦力を有し、良好な搬送性を発揮することができる。
【0003】
また、ベアリングを内蔵した搬送ローラとして、金属製のベアリングの外輪にポリアセタール樹脂(POM)を樹脂成型し、切削加工した樹脂巻きベアリングも実用化されている。ポリアセタール樹脂は、耐摩耗性に優れ、潤滑油フリーな特性を有している。
【文献】特開2003-56550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベアリングの外輪がウレタンゴムでライニングされたゴムローラは、適度な摩擦力や低振動性を有する利点があり、直径の小さい静音性ローラとして利用されている。しかし、ローラコンベアに用いられる搬送ローラは比較的大口径である。よって、ベアリングの外輪に各種合成ゴムがライニングされたローラは小径ローラであるため、ローラコンベアの搬送ローラとして使用し難い欠点がある。
【0005】
スチール製の回転ホルダーの両側にベアリングを結合し、回転ホルダーの外周面にウレタンゴムを設けたゴムローラは大口径ローラとして利用できる利点がある。しかしながら、スチール製の回転ホルダーはその製造が煩雑であり、その価格が高価であるため、製造コストが高価になる欠点がある。これに対して、ベアリングの外周にポリアセタール樹脂が樹脂成型されたローラは、ポリアセタール樹脂の直径を所望のサイズに成型することにより、種々の用途のローラに利用することができ、しかもその製造コストはスチール製のローラよりもはるかに安価である。しかしながら、ポリアセタール樹脂のローラは、種々の利点を有するものの、ローラ表面の摩擦係数が小さいため、搬送性が低い致命的な欠陥がある。
【0006】
上記課題を解決する方法として、ポリアセタール樹脂の外周にゴム層を形成することが想定される。シリコンゴムやNBRゴムのような各種合成ゴムは、適度な弾性反発力及び摩擦係数を有するため、ローラコンベアの搬送ローラに適用した場合或いはキャスターの車輪に適用した場合、ポリアセタール樹脂の有用性を活用しながら優れた搬送性や静音性を発揮することが期待される。
【0007】
しかしながら、ポリアセタール樹脂の外周にゴム材料を接合することは極めて困難である。例えば、ポリアセタール樹脂やポリプロピレン樹脂の外周にゴム材料を加硫接着しようとすると、ポリアセタール及びナイロン樹脂が熱及び圧力に耐えられず、破損してしまう。従って、ポリアセタール樹脂等の合成樹脂材料の表面上にゴム層を形成できないのが実情である。
【0008】
また、従来のベアリング内蔵型のローラは、1つ又は2つのベアリングを内蔵したローラが主流であり、3つ或いは4つ等の多数のベアリングを内蔵したローラは実用化されていないのが実情である。しかしながら、ローラコンベアの業界では、重荷重の梱包に耐える要求に対応するため、多数のベアリングを内蔵するゴムローラの開発も強く要請されている。
【0009】
本発明の目的は、合成樹脂製の回転ホルダーの外周に弾性ゴム層が結合されたベアリング内蔵型ゴムローラを提供することにある。
また、本発明の別の目的は、多数のベアリングを内蔵できるベアリング内蔵型ゴムローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるベアリング内蔵型ゴムローラは、1つ又は2つ以上のベアリングと、これらベアリングの外輪に結合され、ベアリングの回転軸線の周りで回転する合成樹脂製の回転ホルダーと、回転ホルダーの外周面に接着固定した弾性変形可能なリング状又は円筒状のゴムタイヤとを有し、
前記ゴムタイヤは、伸縮自在なゴム材料で構成され、当該ゴムタイヤは回転ホルダーに対してその半径方向に締め付ける収縮力を有することを特徴とする。
【0011】
本発明では、ローラ外周面の特性を規定するゴムタイヤとして、伸縮自在なゴムタイヤを用い、ゴムタイヤの内径は回転ホルダーの外径よりも小さくなるように設定する。また、回転ホルダーの外周面とゴムタイヤの内周面との間には常温硬化性の接着剤層を介在させる。この設定において、リング状のゴムタイヤを半径方向に拡げて回転ホルダーの外周面上に装着した場合、自身の収縮力により回転ホルダーに対してその半径方向の押圧力を発生する。このゴムタイヤから発生する押圧力によって、接着剤層はゴムタイヤと回転ホルダーの両方に対して良好に密着し、密着した状態で接着剤の硬化が進行する。この結果、合成樹脂の回転ホルダーの外周面上にゴムタイヤを常温の雰囲気下で接着接合することができる。従って、ポリアセタールやポリプロピレン等の合成樹脂製の回転ホルダーの外周面に、熱劣化させることなくゴムタイヤを接合することができる。さらなる効果として、合成樹脂の回転ホルダーの表面がゴム材料の表面に改変されるので、ゴムローラと同等の機能を発揮でき、搬送性及び静音性に優れた車輪ないしローラが実現される。特に、常温で硬化する接着剤を用いることができるので、常温雰囲気下で、合成樹脂の回転ホルダー上にゴムタイヤを接合することができる。
【0012】
一方、回転ホルダーを省略して、金属製のベアリングの外輪上に厚さの厚いゴム層を形成することにより、所望の口径の搬送ローラを製造することが想定される。しかしながら、ゴムは弾性変形する材料であり、特に厚いゴム層は横方向(回転軸線方向)に変形し易い特性があり、搬送性能に難点がある。これに対して、ベアリングに合成樹脂の回転ホルダーを成型し、合成樹脂の外周面にゴム層を設けた場合、合成樹脂の回転ホルダーは機械的強度が高いため、横方向に変形することはない。また、ゴム層の厚さも薄くすることができ、横方向の変形量は無視できるほど微小である。従って、合成樹脂の回転ホルダーを設けることは、良好な搬送性を確保する観点からも極めて有効である。すなわち、機械的強度を備えたゴムローラが実現される。
【0013】
本発明のベアリング内蔵型ゴムローラは、回転軸線を共有する2つ以上のベアリングと、これらベアリングの外輪に結合され、ベアリングの回転軸線の周りで回転する合成樹脂製の回転ホルダーと、回転ホルダーの外周面に接着固定した円筒状の弾性変形可能なゴムタイヤとを有し、
前記ゴムタイヤは、伸縮可能なゴム材料で構成され、当該ゴムタイヤは回転ホルダーに対してその半径方向に締め付ける収縮力を有することを特徴とする。
【0014】
この実施例の変形例は、回転ホルダーは、同一形状の2つのハーフホルダーを結合することにより構成され、
前記ハーフホルダーには、ベアリングを収納する2個以上の円弧状の凹部が形成され、各ベアリングは、回転ホルダーに形成された円弧状の凹部内に収納固定したことを特徴とする。
【0015】
回転ホルダーは、ベアリングの回転軸線を含む面で2分割した2つのハーフホルダーによって構成されるので、ハーフホルダーに所望の数のベアリング収納用の凹部を形成することにより、2個、3個、4個等の所望の数のベアリングを並列配置することができる。これにより、強力な荷重支持力を有するローラが実現される。
【0016】
本発明によるベアリング内蔵型ゴムローラの製造方法は、1つ又は2つ以上のベアリングと、これらベアリングの外輪に連結され、ベアリングの回転軸線の周りで回転する合成樹脂製の回転ホルダーと、回転ホルダーの外周面に接着固定した弾性変形可能なリング状又は円筒状のゴムタイヤとを有するベアリング内蔵型ゴムローラの製造方法であって、
拡開装置を用いて、伸縮自在なゴムタイヤをその半径方向に沿って放射状に拡張する工程と、
拡張されたゴムタイヤを真空装置を用いて拡張状態に維持する工程と、
前記拡開装置を取り外し、ベアリングを内蔵すると共に外周面に常温硬化性の接着剤が塗布された回転ホルダーをゴムタイヤの内側に位置決め配置する工程と、
前記真空装置を停止して、回転ホルダーの外周にゴムタイヤを圧着させ、圧着させながら常温雰囲気で前記接着剤を硬化させる工程とを有することを特徴とする。
【0017】
本発明では、接着剤として常温硬化性の接着剤を用いると共に、回転ホルダーの外周面にゴムタイヤを圧着させながら接着剤を硬化させているので、合成樹脂製の回転ホルダーの外周面に常温雰囲気下でゴムタイヤを強固に接合することができる。
【発明の効果】
【0018】
伸縮自在なリング状又は円筒状のゴムタイヤは、回転ホルダーの外周面上に装着した際、自身の収縮力により回転ホルダーに対してその半径方向の押圧力を発生する。このゴムタイヤから発生する押圧力によって、回転ホルダーとゴムタイヤとの間に介在する接着剤層は、ゴムタイヤと回転ホルダーの両方に対して良好に密着し、密着した状態で硬化が進行する。また、接着剤として、常温で硬化する接着剤を用いる。この結果、常温の雰囲気下で合成樹脂の回転ホルダーの外周面上にゴムタイヤを強固に接合することができる。これにより、ローラ表面が弾性ゴム層で被覆されたゴムローラないしゴムローラが実現され、搬送性及び静音性に優れた搬送ローラや車輪を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明によるベアリング内蔵型ゴムローラの一例を示す断面図である。
図2】本発明によるベアリング内蔵型ゴムローラの変形例を示す断面図である。
図3】本発明によるベアリング内蔵型ゴムローラの別の変形例を示す断面図である。
図4図3に示すベアリング内蔵型ゴムローラの回転ホルダーを組み立てる工程を示す分解斜視図である。
【発明の実施するための形態】
【0020】
図1は本発明によるベアリング内蔵型ゴムローラの一例を示す断面図であり、図1Aは回転軸線を含む面で切って示す断面図、図1Bは回転軸線と直交する面で切って示す断面図である。このゴムローラは、ボールベアリング1を有する。ベアリング1は、内輪、ボール、リテーナ及び外輪を有する。ベアリングは、スチール製又はステンレス製のベアリングを用いる。ベアリングの外輪の外周に合成樹脂材料を樹脂成型することにより回転ホルダー2を結合する。従って、 回転ホルダーはベアリング1の回転軸線の周りで回転する。回転ホルダーの合成樹脂材料として、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンサルファイト、及びナイロンから選択することができる。また、回転ホルダーは、ゴムローラの用途や使用目的に応じて所望の形状及びサイズに成形することができる。例えば、回転ホルダーの直径を適切に設定することにより、所望の外径寸法のローラ又は車輪を形成することができる。
【0021】
回転ホルダー2の外周にはゴムタイヤ3を結合する。ゴムタイヤ3の材料として、例えばNBRゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、SBRゴム、IRゴム、IIRゴム、CRゴム、NRゴム、EPDMゴム、BRゴムから選択することができる。回転ホルダーは合成樹脂で構成されるため硬質であり、摩擦力及びクッション性を欠いている。よって、ベアリングに合成樹脂を樹脂成型したローラを搬送ローラとして用いた場合、搬送性が大幅に低下する。また、キャリーバッグのキャスターとして用いた場合、騒音が大きく、接地面との間の摩擦力が乏しいキャスターとなってしまう。これらの課題を解決するため、本発明では、合成樹脂製の回転ホルダーの外周にリング状の弾性ゴム層(ゴムタイヤ)を結合する。回転ホルダーの外周に厚さが数mm~数cm程度のゴム層をゴムタイヤとして設けることにより、合成樹脂のローラをゴム製のローラに改変することができる。ゴム材料は、弾性変形可能であり、クッション性、及び適度な摩擦力及び硬度を有する。よって、合成樹脂の回転ホルダーの外周にゴムタイヤを設けることによりゴム製のローラに改変され、静音性及び摩擦性に優れた搬送ローラが実現される。尚、ゴム層の厚さ、硬度及び摩擦力等のファクタは、使用目的に応じて設定する。
【0022】
合成樹脂の回転ホルダーの外周にゴムタイヤを結合する方法について説明する。ポリアセタール樹脂のような合成樹脂材料は、耐熱性に欠けるため、合成樹脂材料の表面にゴムタイヤを加硫成形することは技術的に不可能である。そこで、本発明では、常温で合成樹脂材料の表面にゴムタイヤを結合する。リング状又は円筒状のゴムタイヤの円周方向に伸縮自在な特性を利用し、接着により回転ホルダー上にゴムタイヤを接合する。すなわち、ゴムタイヤは、その円周方向に伸縮自在であると共に半径方向にも自在に変形する。例えば、ゴムタイヤに対して、その内側から半径方向外向きの力を作用すると、ゴムタイヤの直径は拡張する。一方、外向きの押圧力を除くと、拡張したゴムタイヤは半径方向内向きに収縮する。従って、ゴムタイヤを半径方向に拡張し、拡張した状態でベアリングを内蔵した回転ホルダーをゴムタイヤの内側に位置決め配置する。続いて、ゴムタイヤに対する外向きの押圧力を除去し、回転ホルダーに対してゴムタイヤを圧着させる。この処理において、回転ホルダーとゴムタイヤとの間に常温硬化性の接着剤層を介在させることにより、回転ホルダーの外周にゴムタイヤを常温で接着固定することができる。
【0023】
初めに、内径が回転ホルダーの外径よりも小さいリング状ないし円筒状のゴムタイヤを用意する。また、ゴムタイヤは、タイヤとして機能するため、相当高いゴム硬度を有する。従って、このままでは回転ホルダーの外周にゴムタイヤを嵌め込むことはできず、手作業で嵌めることは困難である。一方、ゴムタイヤは、伸縮自在であるため、拡開装置(拡管装置)を用いて半径方向に放射状に拡大することができる。拡開装置として、外径が徐々に大きくなるテーパシャフト或いは内張チャックを用いることができる。また、風船を用いた拡開装置を用いることも可能である。続いて、半径方向に放射状に拡がったゴムタイヤをその状態に保持する。例えば、ゴムタイヤの外周に真空装置を連結し、拡開したゴムタイヤの外周を真空装置によって外方向けて吸引することにより拡張状態に保持することができる。
【0024】
すなわち、ゴムタイヤはタイヤとして使用されるので、ゴムタイヤの硬度は相当高くする必要がある。そのため、成形された状態のゴムタイヤを真空装置を用いて拡張することは極めて困難である。一方、本発明者が種々の実験及び解析を行った結果、高硬度のゴムタイヤであっても、ゴムタイヤを半径方向に一旦拡張させれば、真空装置を用いて拡張状態に維持することができることが判明した。そこで、本例では、内張チャック等の拡開装置を用いてゴムタイヤを半径方向に放射状に拡張する。続いて、真空装置を用いて拡張した状態のゴムタイヤをその状態に維持する。
【0025】
続いて、ゴムタイヤを真空装置で保持しながら拡開装置を取り外す。その状態で、拡大したゴムタイヤの内側に、外周面上に接着剤が塗布されたベアリング内蔵回転ホルダーを位置決め配置する。接着剤として、ゴム材料及び合成樹脂材料の両方に対して相溶性を有する接着剤、例えばシアノアクリレート系接着剤を用いことができる。シアノアクリレート系接着剤は常温で硬化するため、加熱処理することなく常温で接合することができる。続いて、真空装置を遮断する。真空装置を遮断することによりゴムタイヤをその外方に引っ張る力が消滅し、ゴムタイヤは半径方向に収縮する。最終的に、ゴムタイヤは接着剤層を介して回転ホルダーを締め付ける。すなわち、ゴムタイヤは自身の収縮力により回転ホルダーに対してその半径方向の押圧力を発生する。この押圧力によって、回転ホルダーとゴムタイヤとの間に介在する接着剤層は、ゴムタイヤと回転ホルダーの両方に対して良好に密着し、密着した状態で、すなわち半径方向内向きの押圧力が作用した状態で硬化が進行する。この結果、合成樹脂の回転ホルダーの外周面上にゴムタイヤを強固に接着することができる。シアノアクリレート系接着剤は常温で硬化するので、加熱処理することなく接合することができる利点が達成される。
【0026】
図2は本発明によるベアリング内蔵型ゴムローラの変形例を示す断面図であり、図2Aは回転軸線を含む面で切って示す断面図、図2Bは回転軸線と直交する面で切って示す断面図である。本例では、ダブルベアリングタイプのゴムローラについて説明する。ゴムローラは、2つベアリング11a及び11bを内蔵する。これら2つのベアリングは合成樹脂製の円筒状の回転ホルダー12に結合する。回転ホルダーには、その両側の凹部がそれぞれ形成され、各凹部内にベアリングを挿入し、ベアリングの外輪を融着や熱溶着によるカシメ処理により回転ホルダー12に固定する。融着装置として、例えば超音波融着装置を用いことができる。2つのベアリング11a及び11bは回転軸線を共有し、回転軸線方向に所定の距離だけ離間する。すなわち、2つのベアリングの外輪は回転ホルダー12に結合されるので、回転軸線を共有する2つのベアリングは回転ホルダー12によって保持される。よって、2つのベアリング11a及び11bと回転ホルダー12は回転軸線を共有する。
【0027】
回転ホルダー12の外周には、上述した方法により、円筒状のゴムタイヤ13を接着固定する。さらに、ゴムタイヤ13の外周について研磨処理を行う。
【0028】
図3は本発明によるゴムローラの変形例を示す断面図であり、図3Aは回転軸線を含む面で切って示す断面図、図3Bは回転軸線と直交する面で切って示す断面図である。また、図4は、回転ホルダーにベアリングを結合する状態を示す分解斜視図である。本例では、多数のベアリングを内蔵したゴムローラについて説明する。本例では、一例として、3個のベアリングを用いるトリップルベアリングタイプのゴムローラについて説明する。3個のベアリング21a、21b及び21cは回転ホルダー22に結合する。図4に示すように、回転ホルダー22は、回転軸線を含む面で2分割された2分割構造をベースにし、同一形状の2個のハーフホルダー22aと22bにより構成する。これらハーフホルダーは、例えばポリアセタールのような合成樹脂で構成する。第1のハーフホルダー22a及び第2のハーフホルダー22bは、それぞれベアリングを収納する半円形の3つ凹部を有し、これらの凹部内にベアリング21a~21cをそれぞれ収納する。ハーフホルダー22a及び22bの3個の凹部の内周面又は3個のベアリングの外輪の外周面或いはこれらの両方に接着剤を塗布する。
【0029】
図4に示すように、ゴムローラを組み立てるに際し、3個のベアリング21a~21cを基準シャフト30に所定の距離だけ離間させて嵌め込む。ベアリングを基準シャフトに嵌め込むことにより、3個のベアリングの回転軸線を相互に一致させることができる。ベアリングの外周には接着剤を塗布しておく。また、ハーフホルダー22a及び22bの外縁にも接着剤を塗布する。接着剤として、常温硬化性のシアノアクリレート系接着剤を用いことができる。続いて、基準シャフトに嵌め込まれた状態で3個のベアリングを第1のハーフホルダー22aの対応する凹部内にそれぞれ挿入する。続いて、第2のハーフホルダー22bを第1のハーフホルダー上に位置決め固定する。これにより、3つのベアリングの外輪は回転ホルダーに結合されると共に、2つのハーフホルダーが接合されて回転ホルダー22が形成される。この際、3個のベアリングは基準シャフト30により位置決めされた状態で、すなわち、同一軸線上に位置決めされた状態でハーフホルダーに固定されるので、3つの回転軸線を高精度に一致させることができる。 その後、基準シャフトを引き抜き、回転軸線を共有する3個のベアリングを内蔵する回転ホルダーが形成される。尚、図3において、2つハーフホルダー22aと22bとの接合面を符号31で示す。
【0030】
次に、前述した方法により、回転ホルダーの外周にゴムタイヤ23を装着する。すなわち、拡開装置を用いてゴムタイヤ23を半径方向に拡張する。続いて、真空装置を用いて拡張した状態のゴムタイヤを拡張状態に維持する。続いて、真空装置で保持しながら拡開装置を取り外す。その状態で、拡大したゴムタイヤの内側に、外周面上に接着剤が塗布されたベアリング内蔵回転ホルダーを位置決め配置する。続いて、真空装置を遮断する。真空装置を遮断することにより、ゴムタイヤは円周方向に収縮し、この収縮により半径方向にも収縮する。最終的に、ゴムタイヤは接着剤層を介して回転ホルダーを締め付け、接着が完了する。
【0031】
本例では、3個のベアリングを保持したゴムローラについて説明したが、勿論、4個、5個等の無数のベアリングを有するゴムローラとすることができる。
【0032】
本発明は上述した実施例に限定されず種々の変形や変更が可能である。例えば、外輪が合成樹脂で出来たベアリングを用いる場合、合成樹脂製の外輪の外周に直接ゴムタイヤを接着接合することができる。
【符号の説明】
【0033】
1、11a、11b、21a、21b、21c ベアリング
2,12,22 回転ホルダー
3、13,23 ゴムタイヤ
30 基準シャフト
31 接合面

【要約】
【課題】合成樹脂製の回転ホルダーの外周に弾性ゴム層が結合されたベアリング内蔵型ゴムローラを提供する。
【解決手段】本発明によるベアリング内蔵型ゴムローラは、1つ又は2つ以上のベアリング(1)と、これらベアリングの外輪に結合されると共にベアリングと回転軸線を共有する回転ホルダー(2)と、回転ホルダーの外周面に接着固定した弾性変形可能なリング状又は円筒状のゴムタイヤ(3)とを有する。回転ホルダーは合成樹脂材料で構成し、ゴムタイヤは、その円周方向に伸縮可能なゴム材料で構成する。リング状のゴムタイヤを回転ホルダーの外周面上に装着した場合、自身の収縮力により回転ホルダーに対してその半径方向の押圧力を発生する。このゴムタイヤから発生する押圧力によって、接着剤層はゴムタイヤと回転ホルダーの両方に対して良好に密着し、密着した状態で硬化が進行する。この結果、合成樹脂の回転ホルダーの外周面上にゴムタイヤを強固に接着接合することができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4