(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】配管加熱用被覆体
(51)【国際特許分類】
F16L 53/00 20180101AFI20220104BHJP
F16L 59/05 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
F16L53/00
F16L59/05
(21)【出願番号】P 2018046221
(22)【出願日】2018-03-14
【審査請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】518087661
【氏名又は名称】株式会社シンワバネス
(74)【代理人】
【識別番号】230100022
【氏名又は名称】山田 勝重
(74)【代理人】
【識別番号】100084319
【氏名又は名称】山田 智重
(74)【代理人】
【識別番号】100120204
【氏名又は名称】平山 巌
(72)【発明者】
【氏名】石川 智之
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/161013(WO,A1)
【文献】特開平09-126390(JP,A)
【文献】特開2016-118227(JP,A)
【文献】特開2011-231832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 53/00
F16L 59/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に熱媒体を流通させる配管の外側に装着され、前記配管を加熱する配管加熱用被覆体であって、
前記配管加熱用被覆体は、第1の配管加熱用被覆体と、第2の配管加熱用被覆体と、を備え、
前記第1の配管加熱用被覆体は、前記配管のうちの第1の配管の軸線が延びる方向に沿って延びるとともに、前記第1の配管を囲む第1の囲繞体を備え、
前記第2の配管加熱用被覆体は、前記配管のうちの第2の配管の軸線が延びる方向に沿って延びるとともに、前記第2の配管を囲む第2の囲繞体を備え、
前記
第1の囲繞体は、前記
第1の配管の軸線に沿って少なくとも2つに分割され、
前記第2の囲繞体は、前記第2の配管の軸線に沿って少なくとも2つに分割され、
前記分割された
前記第1の囲繞体のそれぞれには、前記
第1の配管の軸線に沿った方向において互いに対応する位置に磁石が配置されており、それぞれが備える前記磁石間の吸引によって、前記配管を囲むように互いに固定され、
前記分割された前記第2の囲繞体のそれぞれには、前記第2の配管の軸線に沿った方向において互いに対応する位置に磁石が配置されており、それぞれが備える前記磁石間の吸引によって、前記配管を囲むように互いに固定され、
前記第1の囲繞体は、その延出方向の両端面に第1の係合部を備え、
前記第2の囲繞体は、前記第1の配管加熱用被覆体が延びる方向に直交する外側面を備え、前記外側面には、前記第1の配管加熱用被覆体が延びる方向に凹んだ第2の係合部が設けられ、
前記第1の囲繞体と前記第2の囲繞体は、前記第1の係合部と、前記第2の係合部とを互いに嵌合させることによって、互いに係合されることを特徴とする配管加熱用被覆体。
【請求項2】
前記第1の配管加熱用被覆体と前記第2配管加熱用被覆体はそれぞれ、延出方向に直交する断面が略矩形状をなしている請求項1に記載の配管加熱用被覆体。
【請求項3】
前記第1の係合部は、前記第1の囲繞体の幅方向における半分が、前記第1の配管加熱用被覆体の延出方向に突出する形状を有し、
前記第2の係合部は、前記第2の配管加熱用被覆体の延出方向に凹んだ形状を有し、この形状は、前記第1の係合部において突出する形状に対応する凹み形状を有する請求項2に記載の配管加熱用被覆体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置などで用いる、熱媒体を流す配管を加熱するための配管加熱用被覆体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置などにおいては、ガスや液体などの熱媒体を流す配管が用いられている。そして、配管の内部を流れる熱媒体を所定温度に維持して流通させるために、配管を囲む囲繞体を備えた被覆体を設け、この被覆体から配管へ熱を与える構成が広く採用されつつある。
【0003】
一方、上記配管は、継手部分や曲がり部分などにおいて外径が変化する場合があり、これらの部分も含めて配管全体を所望の温度に維持するために、例えば特許文献1に記載の配管加熱用被覆体のように、筒状の配管の軸線に沿って分割された囲繞体を用いるものがある。この囲繞体においては、その外周面に、長手方向に延びる凹溝が設けられ、この凹溝に一対の嵌合板を開閉自在とする蝶番が収容される。この状態の一対の嵌合板の一方の延出部を、他方の嵌合板の切り欠きに収容させることによって、配管を囲むように、分割された囲繞体が一体となって装着される。これらの嵌合板は、ステンレス鋼製のバネ材で構成され、その弾性によって、分割された囲繞体が一体となって配管の周りに確実に保持される。このような構成の囲繞体を用いると、配管形状に合わせた形で被覆体を熱的に適切に配置することが可能となるため、配管全体に渡ってムラのない加熱状態を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記配管においては、内部を流れる熱媒体の目詰まりの防止などの観点から定期的なメインテナンスが行われる。メインテナンスは、被覆体及び囲繞体を取り外した状態で行われる。ここで、特許文献1の被覆体の構成においては、嵌合板として弾性を有する材料が用いられているため、メインテナンスを繰り返すことにより弾性劣化が生じる。このため、メインテナンスの回数が増えるにつれて配管に対する囲繞体の保持強度が徐々に低下し、これに伴って、被覆体から配管への熱伝導効率が低減するおそれがある。また、分割された囲繞体を一体に組み立てるときには、嵌合板の弾性に逆らって伸ばす力を加えつつ、分割された囲繞体を配管の軸線に沿った方向において微調整するため、作業に時間を要する場合があり、また、長い時間に渡って嵌合板を伸ばした状態に維持することで弾性を低下させてしまうおそれがある。さらに、囲繞体に密着する嵌合板は、長期間に渡って高温に晒されるため、熱によっても弾性劣化が進むことが懸念される。
【0006】
そこで本発明は、分割された囲繞体を容易かつ確実に配管の周りに配置することができ、かつ、メインテナンスなどによって繰り返し脱着操作を行っても配管に対する囲繞体の保持強度を所望のレベルに維持することができる配管加熱用被覆体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の配管加熱用被覆体は、内部に熱媒体を流通させる配管の外側に装着され、配管を加熱する配管加熱用被覆体であって、配管を囲む囲繞体を備え、囲繞体は、配管の軸線に沿って少なくとも2つに分割され、分割された囲繞体のそれぞれには、軸線に沿った方向において互いに対応する位置に磁石が配置されており、分割された囲繞体は、それぞれが備える磁石間の吸引によって、配管を囲むように互いに固定されることを特徴としている。
【0008】
本発明の配管加熱用被覆体において、分割された囲繞体は、磁石間の吸引によって互いに固定されたときに、配管の外径に対応する内径を有する貫通孔を形成する内周面、及び、軸線に沿った方向に直交する断面において略矩形状をなす外側面をそれぞれ有することが好ましい。
【0009】
本発明の配管加熱用被覆体において、磁石は、外側面に設けた凹部内に配置され、囲繞体の外側面と略同一平面となるようにカバー部材によって覆われることが好ましい。
【0010】
本発明の配管加熱用被覆体において、囲繞体は、囲繞体の軸線に沿った方向における端面、及び、外側面の少なくとも一方に、隣り合う囲繞体と互いに係合しあう係合部を備えることが好ましい。
【0011】
本発明の配管加熱用被覆体において、磁石は、囲繞体の外側面において軸線に沿った方向の両端部に1つずつ配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、分割された囲繞体を容易かつ確実に配管の周りに配置することができ、かつ、メインテナンスなどによって繰り返し脱着操作を行っても配管に対する囲繞体の保持強度を所望のレベルに維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る配管加熱用被覆体を配管上に設置した構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す配管加熱用被覆体及び配管をマントルヒータで覆った状態を示す斜視図である。
【
図3】(a)は
図2に示すマントルヒータの展開図、(b)は(a)に示すマントルヒータにおいて電熱線の配置を示す図である。
【
図4】(a)は
図1に示す第1の配管加熱用被覆体の分解斜視図、(b)は
図1のA-A’線における断面図である。
【
図5】(a)は
図1に示す第2の配管加熱用被覆体の分解斜視図、(b)は
図1のB-B’線における断面図である。
【
図6】(a)は変形例1に係る配管加熱用被覆体の構成を示す斜視図、(b)は変形例2に係る配管加熱用被覆体の構成を示す斜視図、(c)は変形例3に係る配管加熱用被覆体の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る配管加熱用被覆体について図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係る配管加熱用被覆体10、20を配管30上に設置した構成例を示す斜視図、
図2は、
図1に示す配管加熱用被覆体10、20及び配管30をマントルヒータ40で覆った状態を示す斜視図である。
図3は
図2に示すマントルヒータ40の展開図である。
【0015】
<全体構成>
図1に示す例では、第1の配管加熱用被覆体10と第2の配管加熱用被覆体20が配管30の径方向30rの外側に装着されている。これらの第1の配管加熱用被覆体10、第2の配管加熱用被覆体20、及び、配管30上には、
図2に示すように、マントルヒータ40が設けられる。マントルヒータ40が発した熱は、第1の配管加熱用被覆体10及び第2の配管加熱用被覆体20を介して配管30へ伝達され、これによって、第1の配管加熱用被覆体10の内部を流通する熱媒体が加熱される。
【0016】
図1に示す構成においては、第2の配管加熱用被覆体20が延びるX方向、すなわち、第2の配管加熱用被覆体20内に配置された第1の配管30aの軸線30xが延びる方向の両側に、このX方向に沿って延びるように、2つの第1の配管加熱用被覆体10(第1の被覆体10aと第2の被覆体10b)が設けられている。また、軸線30xに直交するY方向、すなわち、第2の配管30bの軸線30yが延びる方向に沿って延びるように、第3の被覆体10cとしての第1の配管加熱用被覆体10が設けられている。以下の説明において、X方向及びY方向の両方に直交する上下方向をZ方向と称することがある。
【0017】
<配管>
配管30は、中空円筒状をなしており、その内部にガス、液体その他の熱媒体が流通される。配管30は、耐熱性と耐食性を備えた材料として、例えばステンレス鋼で形成される。隣り合う複数の配管30は、
図5(a)に例示する継手31などによって互いに連結される。
【0018】
本実施形態においては、中空円筒状の配管30の例を挙げているが、複数の配管30の間、または、配管30の途中に配置される、継手、バルブ、クランプ、フィルタなどの構成部品も、内部に熱媒体を流通させる配管の一部に含み得るものであり、以下に説明する配管加熱用被覆体を適用可能である。これらの構成部品に配管加熱用被覆体を適用する場合、第1の囲繞体と第2の囲繞体には、構成部品の外形形状に合わせた内周面(内面)を形成し、また、外形形状に合わせて適切な数・配置の磁石を設けることが好ましい。
【0019】
<配管加熱用被覆体>
図1に示す構成においては、配管加熱用被覆体として、第1の配管加熱用被覆体10と第2の配管加熱用被覆体20を用いている。以下順に詳細に説明する。
【0020】
<第1の配管加熱用被覆体10>
図4(a)は
図1に示す第1の配管加熱用被覆体10(第1の被覆体10a)の分解斜視図、(b)は
図1のA-A’線における断面図である。
図4(a)、(b)では配管30も同時に示している。ここでは第1の被覆体10aを例に挙げて説明するが、第2の被覆体10bと第3の被覆体10cも同様の構成である。
【0021】
第1の配管加熱用被覆体10は囲繞体11を備え、この囲繞体11は、その組み付け対象となる配管30の軸線30xに沿って、第1の囲繞体120と第2の囲繞体130とに分割される。第1の囲繞体120と第2の囲繞体130を互いに固定することによって、配管30が囲繞体11で囲まれる。すなわち、配管30の径方向30rにおいて、配管30の外側に囲繞体11が配置される。第1の囲繞体120と第2の囲繞体130は、所定の伝熱性と耐久性を備えた材料、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金で構成する。
【0022】
囲繞体11は、その延出方向であるX方向の両端面に、係合部としての段差部12を備えている。この段差部12は、Y方向において手前側又は奥側の半分がX方向に突出する形状とされている。この突出形状は、囲繞体11のX方向の一方の端面と他方の端面とで互い違いになるように設定されている。このため、X方向に沿って2つの囲繞体11を並べて配置すると、隣り合う囲繞体11の段差部12同士が互いに嵌合され、これによって囲繞体11同士が互いに係合される。
【0023】
第1の囲繞体120と第2の囲繞体130は、配管30の軸線30xに沿ったX方向の位置が一致するように互いに固定させたときに、配管30の外径に対応する内径を有する貫通孔を形成する内周面120a、130aと、X方向に直交する断面において略矩形状をなす外側面120b、130bとをそれぞれ有する。
【0024】
第1の囲繞体120の外側面120bには、配管30の軸線30xに沿ったX方向の両端部に一対の磁石がそれぞれ設けられている。
具体的には、軸線30xに沿ったX方向の一方の端部において、軸線30xに直交するY方向において互いに対向するように2つの凹部121a、122aがそれぞれ形成され、それぞれの内部に、第1磁石としての磁石121b、122bが配置されている。これらの磁石121b、122bは、その外側に配置されるカバー部材121c、122cによって第1の囲繞体120に対して固定される。カバー部材121c、122cは第1の囲繞体120の外側面120bと略同一平面をなす。また、カバー部材121c、122cは、第1の囲繞体120と同じ材料で構成することが好ましい。
【0025】
第1の囲繞体120に対する磁石121b、122bの固定は、例えば、レーザービーム溶接、アーク溶接、又は、ねじ止めによって行う。
レーザービーム溶接としてはYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザーを用いた開先溶接が好ましく、例えば、カバー部材121c、122cの周縁部と、それぞれに対応する凹部121a、122aの周縁部とに開先を加工して、この開先に対して溶接を行う。また、アーク溶接としては、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接が挙げられる。さらにまた、ねじ止めによる固定では、ねじが磁石121b、122bを通らないように固定することによって、ねじの破損を防止できるため好ましい。
【0026】
第1の囲繞体120において、軸線30xに沿ったX方向の他方の端部においても、軸線30xに直交するY方向において互いに対向するように2つの凹部123a、124aがそれぞれ形成され、それぞれの内部に、第1磁石としての磁石123b、124bが配置されている。これらの磁石123b、124bも、その外側に配置されるカバー部材123c、124cによって第1の囲繞体120に対して固定される。カバー部材123c、124cは第1の囲繞体120の外側面120bと略同一平面をなす。また、カバー部材123c、124cは、第1の囲繞体120と同じ材料で構成することが好ましい。第1の囲繞体120に対する磁石123b、124bの固定は、第1の囲繞体120に対する磁石121b、122bの固定と同様に行う。
【0027】
第2の囲繞体130の外側面130bにおいても、配管30の軸線30xに沿ったX方向の両端部に一対の磁石がそれぞれ設けられている。これらの磁石は、第1の囲繞体120と第2の囲繞体130とを、配管30の軸線30xに沿ったX方向の位置が一致するように、すなわちZ方向において対向するように互いに固定させたときに、X方向において、第1の囲繞体120に設けた磁石と互いに対応する位置に配置されている。
【0028】
より具体的には、第2の囲繞体130において、軸線30xに沿ったX方向の一方の端部において、軸線30xに直交するY方向において互いに対向するように2つの凹部131a、132aがそれぞれ形成され、それぞれの内部に、第1磁石としての磁石131b、132bが配置されている。これらの磁石131b、132bは、その外側に配置されるカバー部材131c、132cによって第2の囲繞体130に対して固定される。カバー部材131c、132cは第2の囲繞体130の外側面130bと略同一平面をなす。また、カバー部材131c、132cは、第2の囲繞体130と同じ材料で構成することが好ましい。第2の囲繞体130に対する磁石131b、132bの固定は、第1の囲繞体120に対する磁石121b、122bの固定と同様に行う。
【0029】
第2の囲繞体130において、軸線30xに沿ったX方向の他方の端部においても、軸線30xに直交するY方向において互いに対向するように2つの凹部133a、134a(不図示)がそれぞれ形成され、それぞれの内部に、第1磁石としての磁石133b、134bが配置されている。これらの磁石133b、134bも、その外側に配置されるカバー部材133c、134cによって第2の囲繞体130に対して固定される。カバー部材133c、134cは第2の囲繞体130の外側面130bと略同一平面をなす。カバー部材133c、134cは、第2の囲繞体130と同じ材料で構成することが好ましい。第2の囲繞体130に対する磁石133b、134bの固定は、第1の囲繞体120に対する磁石121b、122bの固定と同様に行う。
【0030】
第1の囲繞体120の一方の端部に設けた2つの磁石121b、122bと、第2の囲繞体130に設けられた2つ磁石131b、132bとは、それぞれがX方向において互いに対応する位置に配置されており、互いに吸引しあうようにそれぞれの磁極が設定されている。同様に、第1の囲繞体120の他方の端部に設けた磁石123b、124bと、第2の囲繞体130に設けられた磁石133b、134bとについても、それぞれがX方向において互いに対応する位置に配置されており、互いに吸引しあうようにそれぞれの磁極が設定されている。
【0031】
このような配置で第1の囲繞体120と第2の囲繞体130に4つずつの磁石を設けたことにより、分割された第1の囲繞体120と第2の囲繞体130を容易に互いに固定することが可能となり、第1の囲繞体120と第2の囲繞体130を互いに吸着させたときに、軸線30xに沿ったX方向における位置調整も容易かつ確実に行うことができる。
【0032】
第1の囲繞体120に設ける磁石121b、122b、123b、124b、及び、第2の囲繞体130に設ける磁石131b、132b、133b、134bとしては、囲繞体11の到達温度に対応した耐熱性を有し、第1の囲繞体120と第2の囲繞体130との固定状態を維持可能な磁力を有する永久磁石が好ましく、例えば、サマリウムコバルト磁石がよい。サマリウムコバルト磁石以外には、フェライト磁石、アルニコ磁石、耐熱性を有するネオジム磁石などを用いることもできる。
【0033】
<第2の配管加熱用被覆体20>
図5(a)は
図1に示す第2の配管加熱用被覆体20の分解斜視図、(b)は
図1のB-B’線における断面図である。
図5(a)、(b)においては配管30も同時に示している。
【0034】
第2の配管加熱用被覆体20は囲繞体21を備え、この囲繞体21は、組み付け対象となる配管30の軸線30xに沿って、第1の囲繞体220と第2の囲繞体230とに分割される。これらの第1の囲繞体220と第2の囲繞体230を互いに固定することによって、配管30が囲繞体21で囲まれる。すなわち、配管30の径方向30rにおいて、配管30の外側に囲繞体21が配置される。第1の囲繞体220と第2の囲繞体230は、上述の第1の囲繞体120と第2の囲繞体130と同様の材料で構成する。
【0035】
囲繞体21は、その延出方向であるX方向の両端面に、係合部としての段差部22を備えている。この段差部22は、上述の囲繞体11の段差部12と同様に、Y方向において手前側又は奥側の半分がX方向に突出する形状とされている。この突出形状は、囲繞体21のX方向の一方の端面と他方の端面とで互い違いになるように設定されている。このため、X方向に沿って囲繞体11と囲繞体21を並べて配置すると、囲繞体11の段差部12と囲繞体21の段差部22とが互いに嵌合され、これによって囲繞体11と囲繞体21とが互いに係合される。また、X方向に沿って2つの囲繞体21を並べて配置した場合には、隣り合う囲繞体21の段差部22同士が互いに嵌合され、これによって隣り合う囲繞体21同士が係合される。
【0036】
また、囲繞体21は、Y方向における側面において、X方向の中央部に、係合部としての段差部23を備えている。この段差部23はY方向に凹んだ形状とされている。この凹み形状は、囲繞体11における段差部12の突出形状に対応するように設定されている。このため、X方向に延びる囲繞体21に対してY方向に延びる囲繞体11を配置すると、囲繞体21の段差部23に対して囲繞体11の段差部12が嵌合し、これによって囲繞体11と囲繞体21とが互いに係合される。
【0037】
第1の囲繞体220と第2の囲繞体230は、配管30の軸線30xに沿ったX方向の位置が一致するように互いに固定させたときに、配管30の外径に対応する内径を有する貫通孔を形成する内周面220a、230aと、配管30の軸線30xに沿ったX方向に直交する断面において略矩形状をなす外側面220b、230bとをそれぞれ有する。
【0038】
第1の囲繞体220の外側面220bには、配管30の軸線30xに沿ったX方向の両端部のそれぞれに一対の磁石が設けられている。
具体的には、軸線30xに沿ったX方向の一方の端部において、Y方向において互いに対向するように2つの凹部221a、222aがそれぞれ形成され、それぞれの内部に、第1磁石としての磁石221b、222bが配置されている。これらの磁石221b、222bは、その外側に配置されるカバー部材221c、222cによって第1の囲繞体220に対して固定される。カバー部材221c、222cは第1の囲繞体220の外側面220bと略同一平面をなす。また、カバー部材221c、222cは、第1の囲繞体220と同じ材料で構成することが好ましい。第1の囲繞体220に対する磁石221b、222bの固定は、第1の囲繞体120に対する磁石121b、122bの固定と同様に行う。
【0039】
第1の囲繞体220において、軸線30xに沿ったX方向の他方の端部においても、Y方向において互いに対向するように2つの凹部223a、224aがそれぞれ形成され、それぞれの内部に、第1磁石としての磁石223b、224bが配置されている。これらの磁石223b、224bも、その外側に配置されるカバー部材223c、224cによって第1の囲繞体220に対して固定される。カバー部材223c、224cは第1の囲繞体220の外側面220bと略同一平面をなす。また、カバー部材223c、224cは、第1の囲繞体220と同じ材料で構成することが好ましい。第1の囲繞体220に対する磁石223b、224bの固定についても、第1の囲繞体120に対する磁石121b、122bの固定と同様に行う。
【0040】
第2の囲繞体230の外側面230bにおいても、配管30の軸線30xに沿ったX方向の両端部のそれぞれに一対の磁石が設けられている。これらの磁石は、第1の囲繞体220と第2の囲繞体230とを、配管30の軸線30xに沿ったX方向の位置が一致するように、すなわちZ方向において対向するように、互いに固定させたときに、X方向において、第1の囲繞体220に設けた磁石と互いに対応する位置に配置されている。
【0041】
より具体的には、第2の囲繞体230において、軸線30xに沿ったX方向の一方の端部において、軸線30xに直交するY方向において互いに対向するように2つの凹部231a、232aがそれぞれ形成され、それぞれの内部に、第1磁石としての磁石231b、232bが配置されている。これらの磁石231b、232bは、その外側に配置されるカバー部材231c、232cによって第2の囲繞体230に対して固定される。カバー部材231c、232cは第2の囲繞体230の外側面230bと略同一平面をなす。また、カバー部材231c、232cは、第2の囲繞体230と同じ材料で構成することが好ましい。第2の囲繞体230に対する磁石231b、232bの固定についても、第1の囲繞体120に対する磁石121b、122bの固定と同様に行う。
【0042】
第2の囲繞体230において、軸線30xに沿ったX方向の他方の端部においても、軸線30xに直交するY方向において互いに対向するように2つの凹部233a、234a(不図示)がそれぞれ形成され、それぞれの内部に、第1磁石としての磁石233b、234bが配置されている。これらの磁石233b、234bも、その外側に配置されるカバー部材233c、234cによって第2の囲繞体230に対して固定される。カバー部材233c、234cは第2の囲繞体230の外側面230bと略同一平面をなす。また、カバー部材233c、234cは、第2の囲繞体230と同じ材料で構成することが好ましい。第2の囲繞体230に対する磁石233b、234bの固定についても、第1の囲繞体120に対する磁石121b、122bの固定と同様に行う。
【0043】
第1の囲繞体220の一方の端部に設けた2つの磁石221b、222bと、第2の囲繞体230に設けられた2つ磁石231b、232bとは、それぞれがX方向において互いに対応する位置に配置されており、互いに吸引しあうようにそれぞれの磁極が設定されている。同様に、第1の囲繞体220の他方の端部に設けた磁石223b、224bと、第2の囲繞体230に設けられた磁石233b、234bとについても、それぞれがX方向において互いに対応する位置に配置されており、互いに吸引しあうようにそれぞれの磁極が設定されている。
【0044】
このような配置で第1の囲繞体220と第2の囲繞体230に4つずつの磁石を設けたことにより、分割された第1の囲繞体220と第2の囲繞体230を容易に互いに固定することができ、そのときに軸線30xに沿った方向における位置調整も容易かつ確実に行うことができる。
ここで、第1の囲繞体220に設ける磁石221b、222b、223b、224b、及び、第2の囲繞体230に設ける磁石231b、232b、233b、234bは、上述の第1の囲繞体120と第2の囲繞体130に設けた磁石と同様のものを用いる。
【0045】
以上説明した第1の配管加熱用被覆体10と第2の配管加熱用被覆体20は、任意の組み合わせで、配管30に沿って、配管30の径方向の外側に、例えば
図1に示すように配置される。第1の配管加熱用被覆体10と第2の配管加熱用被覆体20は、その延出方向の直交断面が矩形状であり、端面や側面に段差部12、22、23が設けられているため、所定の位置に嵌合して組み立てることが容易であり、位置ずれがあったとしても迅速に調整することができる。さらに、嵌合部分において隙間を生じることがないため、マントルヒータ40からの熱が、効率よく、かつ、確実に広がり、その内部に位置する配管30へ伝達される。
【0046】
<マントルヒータ>
マントルヒータ40は、
図3(a)、(b)に示す平面形状を有し、非導電性で耐熱性を有する布状材料41、例えばガラス繊維を備える。この布状材料41内には、
図3(b)に示すパターンで電熱線42、例えばニクロム線が配置されている。この電熱線42に対して、不図示の外部電源に接続されたライン43(
図2)を通じて電流を供給することによって電熱線42が発熱する。
【0047】
マントルヒータ40の布状材料41は、
図1に示す3つの被覆体10a、10b、10cにそれぞれ対応する、平面視略矩形状の3つの領域41a、41b、41cを備え、さらに、これらの領域を互いに接続するとともに第2の配管加熱用被覆体20に対応する領域41dを備える。領域41aは第1の配管30aの軸線30xを略中心として第1の被覆体10aを覆うように配置され、軸線30xに沿うように領域41aの外側に配置された面ファスナ43aによって閉じられる。同様に、領域41bは第1の配管30aの軸線30xを略中心として第2の被覆体10bを覆うように配置され、軸線30xに沿うように領域41bの外側に配置された面ファスナ43bによって閉じられる。さらに、領域41cは第2の配管30bの軸線30yを略中心として第3の被覆体10cを覆うように配置され、軸線30yに沿うように領域41cの外側に配置された面ファスナ43cによって閉じられる。
【0048】
このように布状材料41を3つの被覆体10a、10b、10cの径方向の外側を囲むように配置すると、領域41aと領域41bの間に位置する領域41dによって第2の配管加熱用被覆体20も径方向の外側が囲まれる。上述のように第1の配管加熱用被覆体10と第2の配管加熱用被覆体20は、配管30の軸線(第1の配管30aの軸線30x又は第2の配管30bの軸線30y)に沿った方向(X方向又はY方向)に直交する断面が略矩形状をなしている。このため、
図3に示すようにX方向とY方向に沿って延びる平面形状の布状材料41を周囲に巻いて配置すると、隙間なく第1の配管加熱用被覆体10と第2の配管加熱用被覆体20を覆うことが可能となる。
【0049】
図3(b)に示すように、電熱線42は、布状材料41の領域41a、41b、41dにおいては主にX方向に沿って延びるように配置され、領域41cにおいては主にY方向に沿って延びるように配置されている。このため、第1の配管加熱用被覆体10と第2の配管加熱用被覆体20の周りを囲んだときに、電熱線42が屈曲する部分が少なくなるため、断線が発生する可能性を低く抑えることができる。また、電熱線42は、主に、第1の配管加熱用被覆体10や第2の配管加熱用被覆体20が延びる方向に沿って延びるように配置されるため、電熱線42のほぼ全域が第1の配管加熱用被覆体10と第2の配管加熱用被覆体20上に配置されることから、電熱線42が発生する熱が無駄なく第1の配管加熱用被覆体10と第2の配管加熱用被覆体20に伝達される。さらに、電熱線42がねじれることなく、第1の配管加熱用被覆体10と第2の配管加熱用被覆体20上に配置されるため、第1の配管加熱用被覆体10と第2の配管加熱用被覆体20に対して電熱線42からの熱が均等に与えられる。
【0050】
さらに、第1の配管加熱用被覆体10と第2の配管加熱用被覆体20において磁石を覆うカバー部材が、囲繞体の外側面120b、130b、220b、230bに対して略同一平面をなすように設けられているため、これらの外側面の表面に凹凸がほとんど形成されない。これにより、布状材料41と、上記外側面との密着性を高めることができるため、マントルヒータ40から、第1の配管加熱用被覆体10と第2の配管加熱用被覆体20へ、均等に効率良く熱を伝えることができる。
【0051】
以下に変形例について説明する。
図6(a)は変形例1に係る配管加熱用被覆体の構成を示す斜視図、(b)は変形例2に係る配管加熱用被覆体の構成を示す斜視図、(c)は変形例3に係る配管加熱用被覆体の構成を示す斜視図である。
図6(a)、(b)、(c)のいずれにおいても配管30を示している。
【0052】
図1に示す配管加熱用被覆体10、20においては、上下方向(Z方向)に沿って見たときに略矩形状をなす囲繞体11、21の4つの角部のそれぞれに磁石を配置していたが、分割された囲繞体を互いに固定するための第1磁石としては、この配置に限定されない。例えば、分割された2つの囲繞体をZ方向で互いに対向させたときに、互いに対向しあう1つ以上の位置に第1磁石を配置してもよい。
【0053】
このような第1磁石の配置として、例えば
図6(a)に示す変形例1では、分割された2つの囲繞体310、320において、上下方向に沿って見たときの対角線上の2つの角部に第1磁石(不図示)がそれぞれ配置され、上側の第1の囲繞体310側の2つの磁石はカバー部材311、312でそれぞれ覆われ、下側の第2の囲繞体320側の2つの磁石もカバー部材321(不図示)、322でそれぞれ覆われている。
【0054】
また、
図6(b)に示す変形例2では、分割された2つの囲繞体410、420において、上下方向に沿って見て、X方向の中央部において、Y方向で互いに対向する2つの第1磁石(不図示)が配置され、上側の第1の囲繞体410側の2つの磁石はカバー部材411、412でそれぞれ覆われ、下側の第2の囲繞体420側の2つの磁石もカバー部材421、422(不図示)でそれぞれ覆われている。
【0055】
上述の第1磁石に加えて、隣り合う配管加熱用被覆体同士を第2磁石を用いて互いに固定することもできる。
図6(c)に示す変形例3では、
図6(b)と同様に、分割された2つの囲繞体510、520のそれぞれにおいて、上下方向に沿って見て、X方向の中央部において、Y方向で互いに対向する2つの第1磁石(不図示)が配置され、上側の第1の囲繞体510側の2つの磁石はカバー部材511、512でそれぞれ覆われ、下側の第2の囲繞体520側の2つの磁石もカバー部材521、522(不図示)でそれぞれ覆われている。これらの第1磁石は、Z方向において互いに対向しあう第1磁石と吸引し合うように磁極が設定されている。
【0056】
さらに、第1の囲繞体510においては、X方向の両端に第2磁石(不図示)がそれぞれ配置されており、カバー部材513、514で覆われている。囲繞体520においても同様である。これらの第2磁石は、X方向において隣り合う囲繞体510、520における第2磁石と互いに吸引しあうように磁極が設定されているため、隣り合う配管加熱用被覆体同士を容易かつ確実に固定することができる。ここで、第1磁石と第2磁石は磁極の配置方向が互いに直交するように設定されているため、Z方向における第1の囲繞体510と第2の囲繞体520の吸引と、X方向において隣り合う配管加熱用被覆体同士の吸引とを両立させることができる。
【0057】
第2磁石の配置は、
図6(c)に示す例には限定されない。例えば、
図1に示すように、上下方向(Z方向)に沿って見たときに、囲繞体11、21の4つの角部に磁石を配置し、一方の対角線上に位置する2つの磁石を第1磁石とし、他方の対角線上に位置する2つの磁石を第2磁石としてもよい。
【0058】
また、
図1に示すように、Y方向に沿って延びる第1の配管加熱用被覆体10と、X方向に延びる第2の配管加熱用被覆体20とを互いに固定する構成において、第2の配管加熱用被覆体20のX方向の中央部に第2磁石を設け、第1の配管加熱用被覆体10においても第2の配管加熱用被覆体20に固定される端部に第2磁石を設けると第1の配管加熱用被覆体10と第2の配管加熱用被覆体20とを容易かつ確実に固定することができる。この場合は第1の配管加熱用被覆体10のY方向の中央部に第1磁石を設けることが好ましい。
【0059】
配管加熱用被覆体の端面における係合部は、上述の段差部に限定されない。また、段差部(係合部)のない平面とすることもできる。
また、配管加熱用被覆体の分割数は2つに限定されない。
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的又は本発明の思想の範囲内において改良又は変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明に係る配管加熱用被覆体は、分割された囲繞体を容易かつ確実に配管の周りに配置することができ、かつ、メインテナンスなどによって繰り返し脱着操作を行っても配管に対する囲繞体の保持強度を所望のレベルに維持することができる点で有用である。
【符号の説明】
【0061】
10 第1の配管加熱用被覆体
10a 第1の被覆体
10b 第2の被覆体
10c 第3の被覆体
11 囲繞体
12 段差部(係合部)
20 第2の配管加熱用被覆体
21 囲繞体
22、23 段差部(係合部)
30 配管
30a 第1の配管
30b 第2の配管
30r 径方向
30x、30v 軸線
31 継手
40 マントルヒータ
41 布状材料
41a、41b、41c、41d 領域
42 電熱線
43 ライン
43a、43b、43c 面ファスナ
120 第1の囲繞体
120a 内周面
120b 外側面
121a、122a、123a、124a 凹部
121b、122b、123b、124b 磁石(第1磁石)
121c、122c、123c、124c カバー部材
130 第2の囲繞体
130a 内周面
130b 外側面
131a、132a、133a、134a 凹部
131b、132b、133b、134b 磁石(第1磁石)
131c、132c、133c、134c カバー部材
220 第1の囲繞体
220a 内周面
220b 外側面
221a、222a、223a、224a 凹部
221b、222b、223b、224b 磁石(第1磁石)
221c、222c、223c、224c カバー部材
230 第2の囲繞体
230a 内周面
230b 外側面
231a、232a、233a、234a 凹部
231b、232b、233b、234b 磁石(第1磁石)
231c、232c、233c、234c カバー部材
310 第1の囲繞体
311、312 カバー部材
320 第2の囲繞体
321、322 カバー部材
410 第1の囲繞体
411、412 カバー部材
420 第2の囲繞体
421、422 カバー部材
510 第1の囲繞体
511、512、513、514 カバー部材
520 第2の囲繞体
521、522 カバー部材