(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】運動訓練装置
(51)【国際特許分類】
A63B 24/00 20060101AFI20220104BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20220104BHJP
A63B 23/04 20060101ALI20220104BHJP
A63B 23/12 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A63B24/00
A61H1/02 G
A63B23/04 A
A63B23/12
(21)【出願番号】P 2017228051
(22)【出願日】2017-11-28
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【氏名又は名称】梅田 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】久保田 剛
(72)【発明者】
【氏名】大森 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐直 洋介
【審査官】大隈 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-126019(JP,A)
【文献】特開2009-56184(JP,A)
【文献】特開平10-258102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 1/00~26/00
A61H 1/00~5/00
A61H 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の運動機能の向上を図るための運動訓練装置であって、
装置フレームと、
前記装置フレーム内の位置を移動可能な操作部と、
前記操作部を第1の方向に沿って直線状に移動させるための第1ガイド部と、前記第1ガイド部に沿って前記操作部を駆動し又はその移動に負荷を与えるための第1駆動モーターとを有する第1アクチュエーター部と、
前記第1アクチュエーター部を、前記第1の方向と交差する第2の方向に沿って直線状に案内するための第2ガイド部と、前記第2ガイド部に沿って前記第1操作ガイド部を駆動するための第2駆動モーターとを有する第2アクチュエーター部と、
前記第1駆動モーター及び/又は第2駆動モーターの駆動又は負荷を制御するための制御部と、
前記第1アクチュエーター部における前記操作部の移動又は前記第2アクチュエーター部における前記第1ガイド部の移動を選択的に阻止するように動作可能なアクチュエーター切換機構とを備え、
前記制御部は、前記アクチュエーター切換機構の動作状態に対応した前記第1駆動モーター及び第2駆動モーターの制御を行うことを特徴とする運動訓練装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記アクチュエーター切換機構を制御して、前記第1アクチュエーター部における前記操作部の移動又は前記第2アクチュエーター部における前記第1ガイド部の移動を選択的に阻止することを特徴とする請求項1に記載の運動訓練装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記アクチュエーター切換機構の動作状態を検知して、前記第1アクチュエーター部における前記操作部の移動又は前記第2アクチュエーター部における前記第1ガイド部の移動を選択的に阻止する請求項1に記載の運動訓練装置。
【請求項4】
前記第1及び/又は第2アクチュエーター部を前記第1及び/又は第2の方向に沿って傾斜させるための傾斜支持機構を更に備え、前記制御部は、前記傾斜支持機構による前記第1及び/又は第2アクチュエーター部の傾斜に対応して、前記アクチュエーター切換機構を制御することを特徴とする請求項2に記載の運動訓練装置。
【請求項5】
前記傾斜支持機構が、前記装置フレームに設けられた支持脚構造であることを特徴とする請求項4に記載の運動訓練装置。
【請求項6】
前記第1及び/又は第2アクチュエーター部の前記第1及び/又は第2の方向に沿った傾斜を検知するための傾斜検知部を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の運動訓練装置。
【請求項7】
前記傾斜検知部が前記傾斜支持機構に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の運動訓練装置。
【請求項8】
前記操作部又はその近傍に設けられて、前記操作部が前記第1ガイド部及び/又は第2ガイド部に沿って、前記第1駆動モーター並びに/若しくは第2駆動モーターの駆動力に抗して使用者の上肢若しくは下肢によって動かされ、又は前記第1駆動モーター並びに/若しくは第2駆動モーターの駆動力によって使用者の上肢若しくは下肢を動かす際に、前記操作部が使用者の上肢又は下肢から受ける力を検知するための力センサーを更に備えることを特徴とする運動訓練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に使用者の運動機能向上を図るための運動訓練装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人の運動機能を向上させるために、その運動機能に応じた様々な運動訓練が行われている。例えば、使用者の上肢や下肢の運動機能を向上させるために、机上を拭くような動作で肩や肘を屈曲、伸展させるワイピング動作訓練、上肢の筋力強化や関節の可動域改善のために、傾斜したボード上で手を上下方向に滑らせて動かすサンディング動作訓練が広く行われている。そして、これらの運動を支援するために様々な訓練装置が開発、提案されている。
【0003】
例えば、十字状に架設した2本のガイド部材の交叉部から吊下げられた上肢吊下支持装置を、該ガイド部材及び交叉部に設けた可逆回転モータを含む直線駆動装置により前後左右及び上下方向に移動可能にした上肢機能回復訓練支援装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。上肢吊下支持装置に支持された使用者の上肢の動作軌道をセンサ装置で検出し、該動作軌道と目標軌道との差分をコンピュータで演算処理して画像表示装置にフィードバックするので、使用者は、視覚を通じて訓練状態を認識することができる。
【0004】
また、装置本体の往復運動機構部により、使用者の下肢又は上肢を固定した台部材を往復運動させ、股、膝、足又は肩、肘、手の屈曲及び伸展を行う訓練装置が知られている(例えば、特許文献2を参照)。装置本体は、長手方向の両側面に取り付けたアームを立てて固定することにより、水平位置だけでなく、傾斜位置及び垂直位置でも使用可能である。往復運動機構部には、台部材を固定するスライドテーブルを、モータにより回転駆動される送りねじに螺合させて軸方向に案内したり、空気圧によりシリンダチューブ内を軸方向に摺動するロッドレスシリンダのピストンに一体的に取り付けた構造が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-271180号公報
【文献】特開2002-119555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の訓練装置は、いずれも1台で実行し得る運動訓練の種類が実質的に1つに限られている。特許文献1に記載の装置は、使用者の上肢を支持する上肢吊下支持装置が、十字状に架設した2本のガイド部材によって前後左右方向に移動するので、特にワイピング動作訓練に適している。
【0007】
しかしながら、サンディング動作訓練を行う場合、上肢吊下支持装置を傾斜方向に移動させるために、前後(又は左右)方向の直線駆動装置とガイド部材を有しない上下方向の直線駆動装置とを同期させねばならず、複雑な駆動制御が要求されるので容易ではない。
【0008】
特許文献2に記載の装置は、使用者の下肢又は上肢を固定する台部材が一方向にのみ直線運動し、装置本体を傾斜させて使用できるので、特にサンディング動作訓練に適している。しかしながら、台部材を交差する2方向に同時に直線運動させる、即ち平面内で運動させることはできないので、ワイピング動作訓練に使用することはできない。
【0009】
複数の種類が異なる運動訓練を行うために、その種類毎に別個の訓練装置を用意することになれば、多大な設置スペースが必要であり、コストが増大する。
【0010】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用者の上肢及び/又は下肢の運動機能を向上させる訓練を支援するために、電動モーターにより駆動されて、交差する2つの方向にそれぞれ直線運動可能な操作部に、使用者の上肢又は下肢を係合させて運動させる運動訓練装置において、操作部の運動方向を選択することができ、それにより1台の装置で複数の種類が異なる訓練を実行できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の運動訓練装置は、上記目的を達成するためになされたものであり、
人の運動機能の向上を図るための運動訓練装置であって、
装置フレームと、
装置フレーム内の位置を移動可能な操作部と、
操作部を第1の方向に沿って直線状に移動させるための第1ガイド部と、第1ガイド部に沿って操作部を駆動し又はその移動に負荷を与えるための第1駆動モーターとを有する第1アクチュエーター部と、
第1アクチュエーター部を、第1の方向と交差する第2の方向に沿って直線状に案内するための第2ガイド部と、第2ガイド部に沿って第1操作ガイド部を駆動するための第2駆動モーターとを有する第2アクチュエーター部と、
第1駆動モーター及び/又は第2駆動モーターの駆動又は負荷を制御するための制御部と、
第1アクチュエーター部における操作部の移動又は前記第2アクチュエーター部における第1ガイド部の移動を選択的に阻止するように動作可能なアクチュエーター切換機構とを備え、
制御部は、アクチュエーター切換機構の動作状態に対応した第1駆動モーター及び第2駆動モーターの制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の運動訓練装置によれば、制御部が、第1アクチュエーター部における操作部の移動又は前記第2アクチュエーター部における第1ガイド部の移動を選択的に阻止するアクチュエーター切換機構の動作状態に対応して、操作部に係合させた使用者の上肢又は下肢を、第1及び第2の方向双方に直線運動させる、即ち第1及び第2の方向を含む平面内で運動させる訓練と、第1及び第2の方向のいずれか一方に直線運動させる訓練とを、1台の装置で使用者の必要に応じて選択的に行うことができ、しかも、これらいずれの訓練においても、第1駆動モーター及び/又は第2駆動モーターを最適に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の運動訓練装置の第1実施形態を示す斜視図。
【
図3】
図2のIII-III線における装置本体の断面図。
【
図4】
図2のIV-IV線における装置本体の断面図。
【
図5】装置本体のアクチュエーター機構の分解斜視図。
【
図6】
図3における第1アクチュエーター部の部分拡大図。
【
図7】
図4における第2アクチュエーター部の部分拡大図。
【
図8】操作部のホームポジションを示すアクチュエーター機構の上面図。
【
図9】操作部の移動範囲を示すアクチュエーター機構の上面図。
【
図11】第1実施形態における駆動モーターの出力の基本的制御を示す線図。
【
図12】本発明の第2実施形態の装置本体を示す斜視図。
【
図13】第2実施形態の支持脚構造を示す装置本体の側部断面図。
【
図16】第2実施形態の使用状態を概念的に示す説明図。
【
図17】第2実施形態における駆動モーターの出力制御の説明図。
【
図18】本発明の第3実施形態の運動訓練装置の制御部のブロック図。
【
図19】第3実施形態の第1動作モードにおける操作部の移動方向を示す図。
【
図20】第3実施形態の第2動作モードにおける操作部の移動方向を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
図1に示す第1実施形態の運動訓練装置1は、特に使用者Uの運動機能向上を目的として行われる運動訓練に使用される。尚、添付図面及び本明細書全体を通して、類似の構成要素は、同様の参照符号を付して表す。
【0015】
運動訓練装置1は、全体として比較的高さの低い矩形箱状の装置本体2から構成され、水平な設置面に載置して使用される。
図1に示すように、運動訓練装置1は、装置本体2の上面から突出する操作部3を有し、該操作部の周囲は、上面カバー4a~4dで略全面的に覆われている。
図1において、使用者Uは運動訓練装置1の前側に位置し、例えばワイピング動作訓練を行うために、右腕ULを前方に伸ばして操作部3を右手HRで把持している。尚、本明細書中では、
図1の運動訓練装置1における使用者Uの手前側を前側、奥側を後側と称することとする。
【0016】
図2は、
図1の運動訓練装置1から上面カバー4a~4d、前部カバー5、後部カバー6、及び左右側部カバー7,8を取り外した状態の装置本体2を示している。尚、
図2では、図中手前側即ち正面側が装置本体2の前側であり、奥側即ち背面側が後側である。
【0017】
上面カバー4a~4dは、それぞれ操作部3の前後方向及び左右方向に配置され、操作部3の移動に合わせて前記上面カバーの面内で伸縮可能な蛇腹構造のシートで構成されている。別の実施例において、前記上面カバーは、例えば樹脂又は布製の比較的柔軟なシートで形成し、装置本体2の前後左右各側縁部の内側に配置されたロール機構(図示せず)に、巻取方向に付勢するばね構造によって巻取・引出自在に収納することができる。この種のロール機構は、従来より車両や建物の窓を覆うスクリーン等に広く採用されている。また、前記上面カバーには、前記蛇腹構造、ロール機構以外に、従来公知の様々な構造のものを使用することができる。
【0018】
装置本体2は、
図2に示すように、概ね矩形枠状の外側フレーム11からなるフレーム構造を有する。外側フレーム11の左右外側面には、運動訓練装置1を手で持ち上げたり持ち運ぶために、水平な棒状のハンドル部12がそれぞれ固定されている。
【0019】
外側フレーム11の内側には、
図2~
図4に示すように、前後方向に延長する3つの前後固定フレーム13a~13cが、左右方向に離隔して平行に配置され、それらの両端がそれぞれ外側フレーム11の内壁下端付近に固定されている。前後固定フレーム13a~13cの上には、それらと直交して外側フレーム11内を左右方向に延長する2つの左右固定フレーム14a,14bが前後方向に離隔して平行に配置され、それらの両端がそれぞれ外側フレーム11の内壁下端付近に固定されている。
【0020】
本実施形態では、左右固定フレーム14a,14bは前後固定フレーム13a~13cの上に載置して、止めねじで一体に固定される。別の実施形態では、左右固定フレーム14a,14bと前後固定フレーム13a~13cとは、一体に結合しなくてもよく、また上下方向に離隔してもよい。また、外側フレーム11の下面、より詳細には前後固定フレーム13a~13cの下面及び外側フレーム11の右側部の下面には、運動訓練装置1を前記設置面に載置するために、複数の短い脚部15が突設されている。
【0021】
外側フレーム11の前側及び後側内壁には、その上端から少し下がった高さ位置に、左右方向の略全長に亘って一定幅の段差面16a,16bが、それぞれ内側に向けて延設されている。更に、外側フレーム11の前側及び後側内壁は、それぞれ上端が内側へ直角に折曲されて、左右方向の略全長に亘って一定幅の折曲板部17a,17bを形成し、その下方の段差面16a,16bとの間に高さの低い隙間を画定している。この隙間は、上面カバー4a,4bの左右側辺部が前後方向の略全長に亘って挿入され、後述するように操作部3が左右方向に移動するとき、その移動に合わせて前記上面カバーの蛇腹を伸縮させるためのガイドとなる。
【0022】
装置本体2は、操作部3を外側フレーム11内の所定の平面上で前後方向及び左右方向に移動させるためのアクチュエーター機構20を備える。前記所定の平面は、本実施形態において、前記設置面と平行な水平面である。アクチュエーター機構20は、
図2に示すように、外側フレーム11の内側に前後固定フレーム13a~13c及び左右固定フレーム14a,14bの上に設けられる。アクチュエーター機構20は、操作部3を前後方向に沿って直線往復運動させるための第1アクチュエーター部21と、それに直交する左右方向に沿って直線往復運動させるための第2アクチュエーター部22とを備える。第1及び第2アクチュエーター部21、22は、それぞれ駆動部の回転運動を被動部の直線運動に変換する所謂直動アクチュエーターである。
【0023】
第1アクチュエーター部21は、操作部3を前後方向に直線状に案内するための第1ガイド部23と、前記操作部を第1ガイド部23に沿って駆動するための第1駆動部24とを有する。第1駆動部24は、第1ガイド部23の一方の端部(本実施形態では、
図2及び
図4に示すように後側の端部)に前記第1ガイド部と一体に設けられる。
【0024】
本実施形態において、第1ガイド部23は、
図5に示すように、上向きに開放された矩形チャネル形状の第1ガイドフレーム25と、その内部を長手方向に延長するロッド状の送りねじ26と、スライダーブロック27とからなる。第1ガイドフレーム25の長手方向の両側部上面は、その長手方向にスライダーブロック27を案内するためのスライドレールを提供する。スライダーブロック27は、複数の鋼球からなるボールを介して送りねじ26のねじ溝と螺合するナット部を有し、該送りねじと組み合わされて公知のボールねじ構造を構成している。
【0025】
図4及び
図5に示すように、第1駆動部24は、正逆回転可能な第1駆動モーター30と、該第1駆動モーターの回転軸と送りねじ26との間に介装された減速ギア31とからなる。第1駆動モーター30には、その回転方向及び回転量を検出して制御するために、公知のロータリーエンコーダー等のセンサーが取り付けられている。減速ギア31は、第1駆動モーター30の回転を減速して送りねじ26に伝達する歯車列からなる。減速ギア31のギア比は、操作部3を介して使用者の上肢又は下肢に第1駆動モーター30の駆動力を伝達するのに十分なトルクを発生し得るように設定される。
【0026】
減速ギア31のギア比は、第1駆動モーター30がその電源遮断時に、送りねじ26側からの逆入力によって容易に回転しないように、比較的高く設定することが好ましい。別の実施例では、第1駆動モーター30への電源遮断時に、その回転を停止させかつ保持するように、電磁ブレーキ等のブレーキ手段を設けることができる。
【0027】
第2アクチュエーター部22は、第1アクチュエーター部21を左右方向に直線状に案内するための第2ガイド部33と、前記第1アクチュエーター部を第2ガイド部33に沿って駆動するための第2駆動部34とを有する。第2駆動部34は、第2ガイド部33の一方の端部(本実施形態では、
図2及び
図3の右側の端部)に前記第2ガイド部と一体に設けられる。
【0028】
第1ガイド部23と同様に、第2ガイド部33は、上向きに開放された矩形チャネル形状の第2ガイドフレーム35と、その内部を長手方向に延長するロッド状の送りねじ36と、スライダーブロック37とからなる。第2ガイドフレーム35の長手方向の両側部上面は、その長手方向にスライダーブロック37を案内するためのスライドレールを提供する。スライダーブロック37は、複数の鋼球からなるボールを介して送りねじ36のねじ溝と螺合するナット部を有し、該送りねじと組み合わされて公知のボールねじ構造を構成している。
【0029】
図3及び
図5に示すように、第2駆動部34は、正逆回転可能な第2駆動モーター38と、該第2駆動モーターの回転軸と送りねじ36との間に介装された減速ギア39とからなる。第2駆動モーター38には、その回転方向及び回転量を検出して制御するために、公知のロータリーエンコーダー等のセンサーが取り付けられている。減速ギア39は、第2駆動モーター38の回転を減速して送りねじ36に伝達する歯車列からなる。減速ギア39のギア比は、第1アクチュエーター部21及び操作部3を介して使用者の上肢又は下肢に第2駆動モーター38の駆動力を伝達するのに十分なトルクを発生し得るように設定される。
【0030】
減速ギア39のギア比は、第2駆動モーター38がその電源遮断時に、送りねじ36側からの逆入力によって容易に回転しないように、比較的高く設定することが好ましい。別の実施例では、第2駆動モーター38への電源遮断時に、その回転を停止させかつ保持するように、電磁ブレーキ等のブレーキ手段を設けることができる。
【0031】
第1アクチュエーター部21には、
図2~
図4に示すように、外側フレーム11の内側を前後方向に略全長に亘って延長する可動フレーム41が一体に設けられている。可動フレーム41は、第1ガイド部23の長手方向に沿って延長する、
図6に示すように断面概ねL字形の1対の可動フレーム部材41a,41bからなる。可動フレーム部材41a,41bは、それぞれL字の内側を第1ガイド部23側に向けて第1ガイドフレーム25の長手方向両側部に、止めねじ等で固定されている。これにより、第1ガイド部23と可動フレーム部材41a,41bとの間には、第1ガイドフレーム25の側面から側方に延出する一定幅の水平面42a,42bと、断面矩形の溝状空間Sa,Sbとが画定される。
【0032】
第1ガイドフレーム25に固定された可動フレーム部材41a,41bの上端は、長手方向の全長に亘って、内側即ち前記第1ガイドフレーム側に直角に折曲され、一定狭幅の折曲板部43a,43bを形成している。可動フレーム部材41a,41bの前記L字の垂直な内面には、その上端から少し下がった高さ位置に、前記内面から第1ガイドフレーム25側に直角に延出する一定狭幅の突板部44a,44bが、長手方向の両端部を除く略全長に亘って一体に形成されている。これにより、可動フレーム部材41a,41bの上端内側には、折曲板部43a,43bと突板部44a,44bとの間に高さの低い隙間が、長手方向の両端部を除く略全長に亘って画定される。この隙間は、上面カバー4c,4dの前後側辺部が左右方向の略全長に亘って挿入され、後述するように操作部3が前後方向に移動するとき、その移動に合わせて前記上面カバーの蛇腹を伸縮させるためのガイドとなる。
【0033】
可動フレーム部材41a,41bの長手方向の両端部は、
図2及び
図4に示すように、突板部44a,44bより下側の部分が切除され、残された部分が長手方向の突出部45a,45bを形成している。各突出部45a,45bは、アクチュエーター機構20を外側フレーム11内に装着したとき、それぞれ該外側フレームの前記前側及び後側内壁の折曲板部17a,17bと段差面16a,16bとの間に画定される前記隙間内に、その内面との間に余裕をもって挿入される。
【0034】
操作部3は、
図5に示すように、比較的短い垂直な操作ロッド48と、その上端に設けられたハンドル部材49とからなる。本実施形態のハンドル部材49は、使用者Uの上肢ULの運動機能を訓練するために片手で掴むことができるように、比較的厚い小型の円形ディスク状に形成されている。ハンドル部材49は、使用者が掴んだ手で回すことができるように、操作ロッド48を中心に回動可能に取り付けられる。別の実施例では、ハンドル部材49を操作ロッド48に対して回動しないように固定することも可能である。
【0035】
ハンドル部材49は、操作ロッド48に対して取外可能に取り付けられる。それによって、ハンドル部材49は、運動訓練装置1の使用目的、使用者の状態等に対応して、使用者の上肢又は下肢を係合させるのに適した様々な係合部材と交換することができる。例えば、使用者の手がハンドル部材49を上手く掴むことができない場合、その手(又は上肢)を固定するベルト付きの係合部材を用いることができる。これにより、使用者の手(又は上肢)から操作ロッド48に力を伝達して操作部3を移動させ、又は移動する操作部3から操作ロッド48を介して力を受けて手(又は上肢)を動かすことができる。使用者の下肢を訓練する場合、同様にハンドル部材49に代えて、使用者の足を載せる台や足を固定するベルト付きの係合部材を用いることができる。
【0036】
操作部3は、操作ロッド48に一体に設けられた力センサー51を有する。力センサー51は、使用者が自力で操作部3を動かす自動動作及び操作部3の力で上肢又は下肢を動かす他動動作のいずれにおいても、ハンドル部材49から操作ロッド48に作用する使用者の力を検出する。本実施形態では、力センサー51として、歪みゲートを用いた市販の6軸力覚センサーが採用されている。
【0037】
一般に、6軸力覚センサーは、直交する3軸方向x,y,zの力(Fx,Fy,Fz)とx,y,z3軸周りのモーメント(Mx,My,Mz)とを検出することができる。本実施形態では、6軸力覚センサーを、そのx軸及びy軸が、アクチュエーター機構の前後方向及び左右方向とそれぞれ一致するように配向する。
【0038】
通常市販の力覚センサーは、固定側の基部と、検出すべき外力を受けるための検知部とを備えている。本実施形態では、
図5に示すように、力センサー51が概ね短円柱状の基部とその上面に設けられた検知部とを備える。力センサー51の前記検知部には、その上面中央に操作ロッド48が、垂直上向きに一体に固定されている。力センサー51の前記基部は、取付プレート52を介して、第1アクチュエーター部21のスライダーブロック27上に一体に固定されている。
【0039】
これにより、力センサー51は、使用者の上肢又は下肢が操作部3を動かし又は該操作部により動かされるとき、操作ロッド48が使用者の上肢又は下肢から直接受ける力を、前後方向の力成分と左右方向の力成分とそれらに直交する垂直方向の力成分とに分けて、更に前後方向、左右方向及び垂直方向の各軸周りにそれぞれ作用するモーメントとして、検出することができる。
【0040】
実際の運動訓練装置1の使用において、力センサー51が検出する前後方向、左右方向及び垂直方向の力成分は、第1及び/又は第2アクチュエーター部21,22の第1及び/又は第2駆動モーター30、38の回転力と使用者が操作部3に及ぼす力との差分、即ち操作部3が使用者の上肢又は下肢から受ける抗力として検出される。例えば、他動動作の訓練において、使用者の力は、操作部3の移動に対する抵抗として、第1及び/又は第2駆動モーター30、38に作用する負荷即ち回転抗力である。自動動作の訓練では、使用者の力による操作部3の移動に対して、第1及び/又は第2駆動モーター30、38の回転力が抵抗として即ち使用者に負荷を与えるように作用する。
【0041】
従来より、力覚センサーには、歪みゲートを用いたもの以外に、静電容量式や光学式のものが広く使用されている。本発明の力センサー51には、いずれのタイプの力覚センサーも採用することができる。別の実施形態では、市販の力各センサーを使用せず、操作ロッド48又は該操作ロッドと取付プレート52との連結部に歪みゲージ等のセンサーデバイスを直接取り付けて、使用者が操作部3に及ぼす力を検出することもできる。
【0042】
操作部3の一部を構成する取付プレート52は、矩形のプレート部材からなり、
図6に示すように、可動フレーム41の長手方向に直交する幅方向に、該可動フレームの内幅より少し小さい寸法を有する。取付プレート52の、可動フレーム41の長手方向に沿う両側部は、下面側が直角に切除されて、折曲板部43a,43bと突板部44a,44bとの隙間の高さより薄い側辺部53a,53bを形成している。
【0043】
取付プレート52は、第1ガイド部23と可動フレーム部材41a,41bとの間に画定される溝状空間Sa,Sbを横断し、側辺部53a,53bを折曲板部43a,43bと突板部44a,44bとの前記隙間内に余裕をもって挿入させて、スライダーブロック27に取り付けられる。これにより、取付プレート52は、操作部3を前後方向に移動させたとき、第1ガイドフレーム25及び溝状空間Sa,Sbの直上をその長手方向に沿って走行する。
【0044】
第1アクチュエーター部21は、
図5に示すように、連結部材53を介して第2アクチュエーター部22上に取り付けられる。連結部材53は、矩形のプレート部材からなり、第1ガイドフレーム25の下面に結合されて、第1ガイド部23を第2アクチュエーター部22のスライダーブロック37上に一体に固定する。これにより、第1アクチュエーター部21は、操作部3を左右方向に移動させたとき、第2ガイドフレーム35の直上をその長手方向に沿って走行する。
【0045】
第1アクチュエーター部21は、操作部3の前後方向の移動範囲を制限するために、1対のリミットセンサー55a,55bを有する。
図2に示すように、リミットセンサー55a,55bは、第1ガイド部23と一方(図中右側)の可動フレーム部材41bとの間の水平面42b上に、それぞれ外側フレーム11の前部及び後部より手前の位置に配置されている。
【0046】
本実施形態のリミットセンサー55a,55bは、アームレバーを水平方向に揺動可能にばね付勢した公知の構造を有する。取付プレート52の下面には、リミットセンサー55a,55bの前記アームレバーを作動させるための作動ブロック56が一体に突設されている。これにより、操作部3が前後方向に移動してその限界位置に到達すると、作動ブロック56が前記アームレバーを回転させて、リミットセンサー55a,55bをオンにする。
【0047】
第1アクチュエーター部21は更に、操作部3を前後方向のホームポジションに停止/維持するためのホームポジションセンサー57を有する。ホームポジションセンサー57は、
図2に示すように、可動フレーム部材41bとの間の水平面42b上に、一方(図中前側)のリミットセンサー55aより少し前方に配置されている。
【0048】
本実施形態のホームポジションセンサー57は、小さな隙間をもって対向配置した投光部と受光部とを有する透過型のフォトセンサーであり、例えば前記投光部から前記受光部に光が通過するとオフ状態に、前記受光部が遮光されるとオン状態になる。取付プレート52には、垂直下向きに突出する板状のセンサーフラグ部材58が、操作部3を前後方向に移動させたとき、ホームポジションセンサー57の前記投光部と前記受光部の間隙を通過し得るように取り付けられている。
【0049】
第2アクチュエーター部22は、同様に、第1アクチュエーター部21の左右方向の移動範囲を制限するために、1対のリミットセンサー61a,61bを有する。
図2に示すように、リミットセンサー61a,61bは、奥側の左右固定フレーム14a上に、それぞれ外側フレーム11の左右側部より手前の位置に配置されている。
【0050】
本実施形態のリミットセンサー61a,61bも、アームレバーを水平方向に揺動可能にばね付勢した公知の構造を有する。
図7に示すように、一方(
図2の左側)の可動フレーム部材41aの下面には、リミットセンサー61a,61bの前記アームレバーを作動させるための作動ブロック62が、取付プレート63を介して一体に突設されている。これにより、操作部3が第1アクチュエーター部21と共に左右方向に移動してその限界位置に到達すると、作動ブロック62が前記アームレバーを回転させて、リミットセンサー61a,61bをオンにする。
【0051】
第2アクチュエーター部22は更に、操作部3を左右方向のホームポジションに停止/維持するためのホームポジションセンサー64を有する。ホームポジションセンサー64は、
図2に示すように、奥側の左右固定フレーム14a上に、一方(図中右側)のリミットセンサー61bより少し中央寄りに配置されている。
【0052】
本実施形態のホームポジションセンサー64は、同様に小さな隙間をもって対向配置した投光部と受光部とを有する透過型のフォトセンサーであり、例えば前記投光部から前記受光部に光が通過するとオフ状態に、前記受光部が遮光されるとオン状態になる。可動フレーム部材41aの下面には、垂直下向きに突出する板状のセンサーフラグ部材65が、操作部3を左右方向に移動させたとき、ホームポジションセンサー64の前記投光部と前記受光部の間隙を通過し得るように、取付プレート63によって取り付けられている。
【0053】
図8は、操作部3がホームポジションに配置されている状態を示している。同図に示すように、操作部3のホームポジションは、運動訓練装置1の上面中央位置よりも前後方向に手前側かつ左右方向に右側に設定されている。これにより、使用者Uは、
図1に示すように運動訓練装置1の前に位置したとき、右手を前に伸ばすと直ぐに操作部3のハンドル部材49に触れることができる。しかしながら、本発明において、操作部3のホームポジションは、
図8の位置に限定されるものではない。
【0054】
図9は、アクチュエーター機構20における操作部3の前後方向及び左右方向の移動可能な範囲を示している。同図に示すように、操作部3の前後方向の移動範囲は、第1ガイドフレーム25によって直接決定されている。操作部3の左右方向の移動範囲は、第1アクチュエーター部21を介して第2ガイドフレーム35によって決定されている。
【0055】
更に運動訓練装置1は、第1及び第2アクチュエーター部21,22を制御するための制御部70を備える。制御部70は、
図10に示すように、駆動制御部71と、信号制御部72と、表示制御部73と、メモリー74と、それらを制御管理するための制御CPU75とを備える。
【0056】
駆動制御部71は、第1及び第2駆動モーター30,38に接続され、それらの駆動を制御する。信号制御部72は、力センサー51、各リミットセンサー55a,55b,61a,61b、及び各ホームポジションセンサー57,64に接続され、前記各センサーから出力される信号を受信する。表示制御部73は、モニター装置76に接続され、該モニター装置の表示を制御する。メモリー74は、運動訓練装置1を動作させるためのプログラムに加えて、例えば使用者の個人データや訓練履歴等の訓練に関するデータを保存する。
【0057】
本発明の運動訓練装置1において、使用者の訓練を行う際に、第1及び第2アクチュエーター部21,22の第1及び第2駆動モーター30,38の出力を制御するための基本的な概念を以下に説明する。説明を簡単にするために、第2アクチュエーター部22を停止させて、第1アクチュエーター部21のみを使用する場合を考える。
【0058】
図11は、力センサー51が検出した使用者の力の変動と、前記使用者の力に応じて制御部70によって制御される第1駆動モーター30の出力の変動とを、時間軸に沿って示している。同図において、操作部3が受ける使用者の力及び第1駆動モーター30の回転力は、該第1駆動モーターの出力(kW)に置き換えて示している。尚、同図の縦軸は、上向き(+)が操作部3を前方へ押す力、下向き(-)が手前側に引く力を表している。
【0059】
図11に示すように、時刻t1に力センサー51が出力値5の力を検出すると、その出力信号が制御部70の信号制御部72に入力され、制御CPU75は、時刻t2に第1駆動モーター30が同じ出力値5の回転力を発生するように駆動制御部71を制御する。時刻t3に力センサー51からの入力信号が0になると、制御CPU75は、時刻t4に第1駆動モーター30の出力が0になるように駆動制御部71を制御する。
【0060】
本発明によれば、力センサー51が実質的に操作部3に設けられているので、検出した使用者の力をそのまま直接制御部70に出力することができる。従って、力センサー51が信号を出力する時刻t1から、それが第1駆動モーター30に反映される時刻t2までの時間遅れを、使用者が体感し得ない程度に短くすることができる。更に、力センサー51からの出力信号は、制御部70内で増幅したり信号変換する必要が無いので、第1駆動モーター30に使用者の力に応じた回転力を出力させるように最適に駆動することができる。
【0061】
運動訓練装置1は、例えばサンディング動作訓練を行うために、装置本体2を前後方向又は左右方向に傾斜させた状態で使用することができる。そのために、装置本体2は、その傾斜状態、即ち傾斜方向及び傾斜角度を検出するための傾斜センサー77を備えることができる。この場合、運動訓練装置1は、傾斜角度を調整可能な別個の支持構造上に設置される。傾斜センサー77の出力信号は制御部70に入力され、装置本体2の傾斜方向及び傾斜角度の大きさに対応して、第1及び/又は第2駆動モーター30,38の出力を制御するために使用される。
【0062】
傾斜センサー77には、例えば従来公知のジャイロセンサーを用いることができるが、これに限定されるものではない。例えば、運動訓練装置1を別個の支持構造上に傾斜させて支持する場合、該支持構造に傾斜センサーを備えることができる。この場合、傾斜センサーとして、前記支持構造を傾動させる電動モーターのエンコーダーやモーター駆動パルスカウンターを用いたり、前記支持構造の設置面を傾斜させるヒンジ部分にその傾斜を特定するセンサーや目盛りを設けることができる。
【0063】
図12及び
図13は、装置本体2を前後方向に傾斜した状態で使用するのに適した本発明の第2実施形態を示している。特に
図12は、装置本体2の後部側を高く傾斜した状態を背面側から示している。
【0064】
第2実施形態の運動訓練装置81は、第1実施形態の脚部15に代えて、伸縮式の支持脚機構82と、装置本体2がその傾斜状態、即ち傾斜方向及び傾斜角度を検出するための傾斜センサーとを備える点において、第1実施形態と異なる。それらの点以外は、第1実施形態の運動訓練装置1と同一であるので、詳細な説明を省略する。
【0065】
支持脚機構82は、装置本体2の下面に取り付けられた前後左右4本の支持脚83a~83dを有する。各支持脚83a~83dは、断面矩形筒状の外側下部脚部分84a~84dと内側上部脚部分85a~85dとを有する。内側上部脚部分85a~85dは、その外法寸法が外側下部脚部分84a~84dの内法寸法より幾分小さく形成され、該外側下部脚部分の上端開口から上下に抜き差し可能に挿入されている。
【0066】
前側の内側上部脚部分85a、85bは、その上端が前側の左右固定フレーム14bの下面に、左右方向に離隔して、前後方向に回動可能に結合されている。後側の内側上部脚部分85c、85dは、その上端が後側の左右固定フレーム14aの下面に、左右方向に離隔して、前後方向に回動可能に結合されている。外側下部脚部分84a~84dの下端には、運動訓練装置81を設置面に安定して設置するために、平坦なベースプレートが設けられている。
【0067】
内側上部脚部分85a~85dには、その対向する左右側面を水平に貫通する複数の位置決め孔86a~86dが、それぞれ上下方向に一列に概ね等間隔で形成されている。所望高さの位置決め孔86a~86dには、それぞれ位置決めピン87a~87dが水平方向に前記左右側面を貫通するように挿通される。位置決めピン87a~87dは、内側上部脚部分85a~85dの前記左右側面から外側に突出する部分が、外側下部脚部分84a~84dの上端に係合する。これにより、各支持脚83a~83dが所望の高さに設定される。
【0068】
第2実施形態の運動訓練装置81において、装置本体2の傾斜状態を検出するための傾斜センサーは、支持脚機構82に設けることができる。
図14は、一方の後側の支持脚83cに装着された傾斜センサー88を例示している。傾斜センサー88は、内側上部脚部分85cの内面に上下方向に設けられたラック89と、これに噛合させて外側下部脚部分84c内に固定されたピニオン90と、該ピニオンに設けられたセンサーデバイス(図示せず)とからなる。このセンサーデバイスとして、例えばロータリーボリュームのような可変抵抗器を用いることができ、ピニオン90の回転量によって、最下位置から上昇させた内側上部脚部分85cの長さ即ち支持脚83cの高さを検出することができる。
【0069】
別の実施形態では、装置本体2の傾斜状態を検出するための傾斜センサーには、
図1に示す第1実施形態の傾斜センサー77を用いることができる。その場合、支持脚機構82の構造をより簡単にし、装置本体2の傾斜状態をより高精度に検出することができる。
【0070】
図15は、第2実施形態の運動訓練装置81において、第1及び第2アクチュエーター部21,22を制御するための制御部91の構成を示している。同図に示すように、制御部91は、信号制御部72が、傾斜センサー88にも接続されており、該傾斜センサーが検出する装置本体の傾斜状態にも対応して、駆動制御部71が、第1及び第2駆動モーター30,38の駆動を制御する。
【0071】
図16は、使用者Uが運動訓練装置81を使用して訓練を行う状態を概念的に示している。同図に示すように、操作部3には、第1実施形態の円形ディスク状のハンドル部材49に代えて、左右のハンドル部94aを設けた係合部材94が、操作ロッド48に取り付けられている。操作部3を左右方向に動かすことができないように、第2アクチュエーター部22は、第2駆動モーター38がロックされている。使用者Uは、ハンドル部94aを両手で掴んで、操作部3を第1ガイド部23に沿って前後方向にのみ動かすことができる。
【0072】
この場合、係合部材94は、操作ロッド48に対してその周りに回動しないように固定することが、運動の性質上好ましい。しかしながら、使用者の上肢(又は下肢)の状態や運動機能等に応じて、係合部材94を操作ロッド48に対して回動可能に取り付けることも可能である。また別の実施例では、1つの係合部材94を操作ロッド48に対して回動可能に又は回動不能に切り換えて使用できるように、操作ロッド48及び/又は係合部材94の取付構造を構成することもできる。
【0073】
第2実施形態における第1駆動モーター30の出力の制御について、
図17を用いて説明する。
図17は、装置本体2を前後方向に或る角度θで傾斜させたとき、操作部3に作用する力を示している。ここで、操作部3は、使用者の力が作用していないフリー状態である。同図において、mは操作部の質量、gは重力加速度、μは操作部3と第1アクチュエーター部21との間における摩擦係数である。図中、傾斜面における力の作用方向は、使用者が操作部3を押し上げる方向の上向きを正(+)、該操作部を引き下げる方向の下向きを負(-)とする。
【0074】
この場合、操作部3を傾斜面に沿って上向きに動かすために必要な力F(+)は、F(+)=mg・sinθ+μmg・cosθである。逆に、操作部3を傾斜面に沿って下向きに動かすために必要な力F(-)は、F(-)=-mg・sinθ+μmg・cosθである。
【0075】
装置本体2を水平に設置した場合(θ=0°)、操作部3を前後方向に動かすために必要な力は、操作部3と第1アクチュエーター部21との間に生じる摩擦力μmgだけである。これに対し、装置本体2を傾斜させた場合(θ≠0°)、操作部3の重量mgの一部が傾斜角度θに対応した大きさ(sinθ倍)で+方向又は-方向に作用する。その大きさは、例えばθ=30°の場合、操作部3の重量mgの1/2である。通常、操作部3と第1アクチュエーター部21間の摩擦力μmgは、操作部3の重量mgに比して非常に小さい。
【0076】
従って、操作部3を傾斜面に沿って上向きに動かす場合、操作部3の重量mgの約sinθ倍だけ、第1駆動モーター30の回転力を増加させるように、その出力を制御する。操作部3を傾斜面に沿って下向きに動かす場合には、逆に操作部3の重量mgの約sinθ倍だけ、第1駆動モーター30の回転力を減少させるように、その出力を制御する。
【0077】
本実施形態の運動訓練装置81によれば、傾斜センサーが検知した装置本体の傾斜の度合いに応じて、制御部91が第1駆動モーター30を制御して、操作部3の駆動力を調節することができる。従って、使用者や訓練の目的・条件等によらず常に、使用者に不快感を与えることなく、使用者に対して最適な負荷をもって上肢又は下肢の運動訓練を実行することができる。
【0078】
本発明の第3実施形態によれば、第1アクチュエーター部21又は第2アクチュエーター部22を選択的に機能停止させることができる。機能停止状態の第1及び第2アクチュエーター部21,22は、第1及び第2ガイド部23、33が、予め設定された所定の位置、例えば前記ホームポジション又は装置本体2の中央位置に停止し、第1及び第2駆動モーターは回転不能にロックされる。尚、第3実施形態の運動訓練装置は、第1又は第2実施形態の装置本体2を使用するので、その詳細な説明は省略する。
【0079】
図18は、第3実施形態の運動訓練装置の制御部101の構成を示している。制御部101は、アクチュエーター部切換制御部102を更に備える点において、第2実施形態の制御部91と異なる。その他の構成は、制御部91と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0080】
アクチュエーター部切換制御部102は、制御CPU75からの指令に基づいて、第1アクチュエーター部21又は第2アクチュエーター部22を選択的に機能停止させ、又は停止した機能を回復する。前記アクチュエーター部の機能停止は、例えば該アクチュエーター部への電源を遮断することによって実行される。第1及び第2駆動モーター30,38が電磁ブレーキ回路等のブレーキ手段を備えている場合は、該ブレーキ手段を作動させて、機能停止させた前記アクチュエーター部の駆動モーターの回転をロックさせる。これによって、操作部3は、機能停止していない第1又は第2アクチュエーター部21,22においてのみ動かすことができる。
【0081】
第3実施形態の運動訓練装置は、使用者又はその支援者が、第1アクチュエーター部21のみを作動させて第2アクチュエーター部22を機能停止させる第1動作モードと、第2アクチュエーター部22のみを作動させて第1アクチュエーター部21を機能停止させる第2動作モードのいすれかを選択するための入力手段を備え、又はそのような外部の入力手段に接続して使用することができる。この場合、前記入力手段は制御部101に接続され、該入力手段からの入力に対応して、制御CPU75がアクチュエーター部切換制御部102を制御する。前記入力手段からの入力がない場合、制御部101は、第1及び第2アクチュエーター部21,22をその両方が動作可能な基準動作モードで制御する。
【0082】
図19は、第1動作モードにおける操作部3の移動方向を示している。この場合、第1アクチュエーター部21が、第1及び第2実施形態と同様に、前後方向に沿って配置される。この配置で装置本体2を前後方向に傾斜させることによって、サンディング動作訓練を行うことができる。このとき、操作部3には、装置本体2の傾斜角度に対応して、操作部3の重量の一部が、
図17における+方向又は-方向の負荷として作用する。この場合に操作部3に作用する力は、第2実施形態について
図17に関連して上述したので、説明を省略する。
【0083】
図20は、第2動作モードにおける操作部3の移動方向を示している。この場合、第2アクチュエーター部22が前後方向に沿って配置される。この配置で装置本体2を前後方向に傾斜させることによって、同様にサンディング動作訓練を行うことができる。この場合、操作部3には、装置本体2の傾斜角度に対応して、該操作部及び第1アクチュエーター部21の重量の一部が作用する。
【0084】
従って、第2動作モードにおいて、操作部3を傾斜面に沿って上向きに動かす場合、操作部3の重量及び第1アクチュエーター部21の重量の約sinθ倍だけ、第1駆動モーター30の回転力を増加させるように、その出力を制御する。操作部3を傾斜面に沿って下向きに動かす場合には、逆に操作部3の重量及び第1アクチュエーター部21の重量の約sinθ倍だけ、第2駆動モーター38の回転力を減少させるように、その出力を制御する。
【0085】
第1動作モードでは、第1駆動モーター30にかかる負荷が小さいので、その出力は比較的低くて済む。それに対し、第2動作モードでは、第1動作モードに比して、第2駆動モーター38にかかる負荷が大きいので、その出力も増大する。このように、本実施形態では、使用者にかける負荷に応じて、それに必要な駆動モーターの出力も増減するので、使用時にはその点にも留意する必要がある。
【0086】
第3実施形態によれば、制御部101が、アクチュエーター部切換制御部102を制御して第1アクチュエーター部21又は第2アクチュエーター部22を選択的に機能停止させることによって、1台の装置で、使用者に作用する負荷等、その条件に応じた訓練を選択的に行うことができる。
【0087】
別の実施形態において、アクチュエーター部切換制御部102は、装置本体2の傾斜に連動させることができる。制御部101は、前記傾斜センサーからの入力によって、装置本体2の傾斜方向を決定することができる。例えば、制御部101は、装置本体2が前後方向に傾斜している場合、第2アクチュエーター部22を機能停止させるように、又は装置本体2が左右方向に傾斜している場合、第1アクチュエーター部21を機能停止させるように、アクチュエーター部切換制御部102を制御する。
【0088】
更に別の実施形態では、第1及び/又は第2アクチュエーター部21,22に機械的なロック機構を設けて、第1ガイド部23の第2ガイド部33に関する移動と、第1ガイド部23における操作部3の移動をロックさせることができる。この場合、第1及び第2アクチュエーター部21,22、又は前記機械的なロック機構にセンサーを設け、第1又は第2アクチュエーター部21,22がロック状態になると、これを検出して制御部101に出力させることができる。
【0089】
以上、本発明を好適な実施形態に関連して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その技術的範囲において、様々な変更又は変形を加えて実施し得ることは言うまでもない。例えば、第1アクチュエーター部21の第1ガイド部23と第2アクチュエーター部22の第2ガイド部33とは、直角以外の角度で交差するように配置することができる。また、第1及び第2駆動モーター30、38の制御が、前後方向及び左右方向の力成分、又は前後方向及び左右方向の力成分と垂直軸周りのモーメントを検出できれば良い場合、力センサー51には、上記実施形態の6軸力覚センサーに代えて、直交する2軸方向x,yの力(Fx,Fy)とそれらに直交するz軸周りのモーメントMzとを検出する3軸力覚センサーを用いることができる。
【符号の説明】
【0090】
1,81 運動訓練装置
2 装置本体
3 操作部
11 外側フレーム
20 アクチュエーター機構
21 第1アクチュエーター部
22 第2アクチュエーター部
23 第1ガイド部
24 第1駆動部
25 第1ガイドフレーム
26,36 送りねじ
27,37 スライダーブロック
30 第1駆動モーター
33 第2ガイド部
34 第2駆動部
35 第2ガイドフレーム
38 第2駆動モーター
41 可動フレーム
48 操作ロッド
49 ハンドル部材
51 力センサー
52 取付プレート
53 連結部材
70,91,101 制御部
71 駆動制御部
72 信号制御部
73 表示制御部
74 メモリー
75 制御CPU
77,88 傾斜センサー
82 支持脚機構
83a~83d 支持脚
94 係合部材
102 アクチュエーター部切換制御部