(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】インパネリンホース及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20220127BHJP
B21D 39/04 20060101ALI20220127BHJP
B21D 39/06 20060101ALI20220127BHJP
B21D 53/88 20060101ALI20220127BHJP
B21D 39/20 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
B62D25/08 J
B21D39/04 D
B21D39/06 A
B21D53/88 Z
B21D39/20 E
(21)【出願番号】P 2018036644
(22)【出願日】2018-03-01
【審査請求日】2020-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000142115
【氏名又は名称】株式会社協豊製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 芳信
(72)【発明者】
【氏名】本田 勝喜
(72)【発明者】
【氏名】野呂 和弘
(72)【発明者】
【氏名】平田 力
【審査官】立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-264469(JP,A)
【文献】特開2004-237348(JP,A)
【文献】特開平05-212468(JP,A)
【文献】特開2006-264444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B21D 39/04
B21D 39/06
B21D 53/88
B21D 39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席側に配置されるアウターパイプと、
助手席側に配置され、前記アウターパイプの助手席側のアウター端部の内周に重なる運転席側のインナー端部を有し、前記助手席側のアウター端部と前記運転席側のインナー端部とによって二重パイプ部を形成するインナーパイプと、
前記二重パイプ部の外周に装着された装着穴縁部を有するブラケットと、を備え、
前記二重パイプ部は、前記装着穴縁部の軸方向の両側に隣接する部位に、前記アウターパイプの軸方向の一部及び前記インナーパイプの軸方向の一部が互いに密着する状態で外周側へ膨張して形成された膨張部をそれぞれ有しており、
前記膨張部における、前記装着穴縁部の端面と接触する前記アウターパイプの接触部位は、前記装着穴縁部の端面と平行に形成されている、インパネリンホース。
【請求項2】
前記装着穴縁部の軸方向の両側の端面には、内周側に向かうほど前記装着穴縁部の軸方向の幅を小さくするテーパ面が形成されており、
前記アウターパイプの接触部位は、前記テーパ面に密着して前記テーパ面と平行に形成されており、
前記アウターパイプの接触部位に接触する前記インナーパイプの接触部位は、前記装着穴縁部の前記テーパ面及び前記アウターパイプの接触部位と平行に形成されている、請求項1に記載のインパネリンホース。
【請求項3】
前記膨張部を形成する、前記アウターパイプの軸方向の一部及び前記インナーパイプの軸方向の一部は、前記軸方向に平行な平行部位として形成されている、請求項1又は2に記載のインパネリンホース。
【請求項4】
前記膨張部は、前記二重パイプ部の周方向における複数箇所に分散して形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のインパネリンホース。
【請求項5】
運転席側に配置されるアウターパイプと、
助手席側に配置され、前記アウターパイプの助手席側のアウター端部の内周に重なる運転席側のインナー端部を有し、前記助手席側のアウター端部と前記運転席側のインナー端部とによって二重パイプ部を形成するインナーパイプと、
前記二重パイプ部の外周に装着された装着穴縁部を有するブラケットと、を備え、
前記二重パイプ部は、
前記装着穴縁部の軸方向の運転席側に隣接する部位に、前記アウターパイプの軸方向の一部及び前記インナーパイプの軸方向の一部が外周側へ膨張して形成された運転席側膨張部と、
前記装着穴縁部の軸方向の助手席側に隣接する部位に、前記インナーパイプの軸方向の一部が外周側へ膨張して形成された助手席側膨張部と、を有しており、
前記運転席側膨張部における、前記装着穴縁部の端面と接触する前記アウターパイプの運転席側接触部位は、前記装着穴縁部の端面と平行に形成されており、
前記助手席側膨張部における、前記アウターパイプの端部と接触する前記インナーパイプの助手席側接触部位は、前記装着穴縁部の端面と平行に形成されている、インパネリンホース。
【請求項6】
前記装着穴縁部の軸方向の両側の端面には、内周側に向かうほど前記装着穴縁部の軸方向の幅を小さくするテーパ面が形成されており、
前記アウターパイプの運転席側接触部位は、前記テーパ面と密着して前記テーパ面と平行に形成されており、
前記アウターパイプの運転席側接触部位に接触する前記インナーパイプの運転席側接触部位は、前記装着穴縁部の前記テーパ面及び前記アウターパイプの運転席側接触部位と平行に形成されている、請求項5に記載のインパネリンホース。
【請求項7】
前記運転席側膨張部を形成する、前記アウターパイプの軸方向の一部及び前記インナーパイプの軸方向の一部は、前記軸方向に平行な平行部位として形成されており、
前記助手席側膨張部を形成する、前記インナーパイプの軸方向の一部は、前記軸方向に平行な平行部位として形成されている、請求項5又は6に記載のインパネリンホース。
【請求項8】
前記運転席側膨張部及び前記助手席側膨張部は、前記二重パイプ部の周方向における複数箇所に分散して形成されている、請求項5~7のいずれか1項に記載のインパネリンホース。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のインパネリンホースを製造する方法であって、
前記インナーパイプの前記運転席側のインナー端部の外周に、前記アウターパイプの前記助手席側のアウター端部を装着して、前記二重パイプ部を形成するとともに、前記助手席側のアウター端部の外周に、前記装着穴縁部を装着する装着工程と、
前記二重パイプ部の全周において、内周側から外周側へ圧力を加え、前記二重パイプ部における、前記装着穴縁部の軸方向の両側に隣接する部位の、前記アウターパイプの軸方向の一部及び前記インナーパイプの軸方向の一部を外周側へ膨張させて、前記装着穴縁部の軸方向の両側に膨張部を形成する膨張工程と、を含む、インパネリンホースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車体のフレームとして用いられるインパネリンホース及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車体における車室内の前方においては、スピードメータ等の各種表示機器、空調、音響等の各種操作機器が配置されたインストルメントパネル(インパネ)が用いられる。また、インパネの裏側には、インパネ、ステアリング等を支持するためのフレーム(骨組み)として、インパネリンホース(ステアリングサポートビーム)が設けられる。インパネリンホースの両端部は、車体の左右の側部に取り付けられ、インパネリンホースの中間位置には、ステアリングコラムを支持するブラケットが設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1のステアリングサポートビーム及びその製造方法においては、第1サポートビームの外周に第2サポートビームが設けられ、第2サポートビームの外周に、ステアリングコラムを取り付けるためのブラケットが設けられている。そして、第2サポートビームにおける、ブラケットの取付位置の両端部には、ブラケットを固定するための拡径部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、第1サポートビーム及び第2サポートビームに対するブラケットの固定強度をさらに高めるためには、特許文献1のステアリングサポートビームによっても十分ではない。具体的には、特許文献1においては、第1サポートビーム及び第2サポートビームを、それらの軸方向に直交する方向から見たとき、第2サポートビームの拡径部が曲面状に突出して形成されている。そのため、第2サポートビームの軸方向におけるブラケットの位置を固定できるものの、その固定の強度には改善の余地が残る。すなわち、第2サポートビームの軸方向に対してブラケットが傾斜するように加わる外力に対しては強度が十分ではない。言い換えれば、ブラケットを倒そうとする外力に対する倒れ強度を高めるためには、改善の余地が残る。
【0006】
また、特許文献1のステアリングサポートビームにおいては、曲面状に形成された拡径部によって、第1サポートビームと第2サポートビームとが固定されている。そのため、第1サポートビームに対する第2サポートビームの軸方向への抜け強度を高めるためには改善の余地が残る。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、アウターパイプ及びインナーパイプに対するブラケットの固定強度を高めることができるインパネリンホース及びその製造方法を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の一態様は、運転席側に配置されるアウターパイプと、
助手席側に配置され、前記アウターパイプの助手席側のアウター端部の内周に重なる運転席側のインナー端部を有し、前記助手席側のアウター端部と前記運転席側のインナー端部とによって二重パイプ部を形成するインナーパイプと、
前記二重パイプ部の外周に装着された装着穴縁部を有するブラケットと、を備え、
前記二重パイプ部は、前記装着穴縁部の軸方向の両側に隣接する部位に、前記アウターパイプの軸方向の一部及び前記インナーパイプの軸方向の一部が互いに密着する状態で外周側へ膨張して形成された膨張部をそれぞれ有しており、
前記膨張部における、前記装着穴縁部の端面と接触する前記アウターパイプの接触部位は、前記装着穴縁部の端面と平行に形成されている、インパネリンホースにある。
【0009】
第1発明の他の態様は、運転席側に配置されるアウターパイプと、
助手席側に配置され、前記アウターパイプの助手席側のアウター端部の内周に重なる運転席側のインナー端部を有し、前記助手席側のアウター端部と前記運転席側のインナー端部とによって二重パイプ部を形成するインナーパイプと、
前記二重パイプ部の外周に装着された装着穴縁部を有するブラケットと、を備え、
前記二重パイプ部は、
前記装着穴縁部の軸方向の運転席側に隣接する部位に、前記アウターパイプの軸方向の一部及び前記インナーパイプの軸方向の一部が外周側へ膨張して形成された運転席側膨張部と、
前記装着穴縁部の軸方向の助手席側に隣接する部位に、前記インナーパイプの軸方向の一部が外周側へ膨張して形成された助手席側膨張部と、を有しており、
前記運転席側膨張部における、前記装着穴縁部の端面と接触する前記アウターパイプの運転席側接触部位は、前記装着穴縁部の端面と平行に形成されており、
前記助手席側膨張部における、前記アウターパイプの端部と接触する前記インナーパイプの助手席側接触部位は、前記装着穴縁部の端面と平行に形成されている、インパネリンホースにある。
【0010】
第1発明の参考態様は、運転席側に配置されるアウターパイプと、
助手席側に配置され、前記アウターパイプの助手席側のアウター端部の内周に重なる運転席側のインナー端部を有し、前記助手席側のアウター端部と前記運転席側のインナー端部とによって二重パイプ部を形成するインナーパイプと、を備え、
前記二重パイプ部は、その周方向の一部又は全周に、前記アウターパイプの軸方向の一部及び前記インナーパイプの軸方向の一部が外周側へ膨張して形成された台座部を有しており、
前記台座部は、その軸方向の両側において、前記アウターパイプの軸方向の一部及び前記インナーパイプの軸方向の一部が、前記軸方向に交差する方向に沿って互いに平行な状態で接触する接触部位を有している、インパネリンホースにある。
【0011】
第2発明の一態様は、第1発明のインパネリンホースを製造する方法であって、
前記インナーパイプの前記運転席側のインナー端部の外周に、前記アウターパイプの前記助手席側のアウター端部を装着して、前記二重パイプ部を形成するとともに、前記助手席側のアウター端部の外周に、前記装着穴縁部を装着する装着工程と、
前記二重パイプ部の全周において、内周側から外周側へ圧力を加え、前記二重パイプ部における、前記装着穴縁部の軸方向の両側に隣接する部位の、前記アウターパイプの軸方向の一部及び前記インナーパイプの軸方向の一部を外周側へ膨張させて、前記装着穴縁部の軸方向の両側に膨張部を形成する膨張工程と、を含む、インパネリンホースの製造方法にある。
【発明の効果】
【0012】
(第1発明の一態様)
前記第1発明の一態様のインパネリンホースにおいては、アウターパイプ及びインナーパイプの二重パイプ部における、装着穴縁部の軸方向の両側に隣接する部位に、アウターパイプの軸方向の一部及びインナーパイプの軸方向の一部が外周側へ膨張した膨張部が形成されている。この膨張部における、装着穴縁部の端面と接触するアウターパイプの接触部位は、装着穴縁部の端面と平行に形成されている。
【0013】
そして、この膨張部の接触部位の構成により、アウターパイプ及びインナーパイプの軸方向に対してブラケットが傾斜するように、ブラケットを倒そうとする外力に対する倒れ強度を高めることができる。
また、膨張部の接触部位においては、アウターパイプの軸方向の一部とインナーパイプの軸方向の一部とが密着していることにより、インナーパイプに対するアウターパイプの軸方向への抜け強度を高めることもできる。
【0014】
それ故、前記第1発明の一態様のインパネリンホースによれば、アウターパイプ及びインナーパイプに対するブラケットの固定強度を高めることができる。
【0015】
なお、前記装着穴縁部とは、ブラケットにおいて、二重パイプ部が挿入される挿入穴が形成された部分のことをいう。装着穴縁部は、中空穴を挿入穴とした筒形状を有する部材としてもよく、ブラケットに貫通穴として形成された部分としてもよい。
【0016】
(第1発明の他の態様)
前記第1発明の他の態様のインパネリンホースは、アウターパイプの助手席側のアウター端部がブラケットの装着穴縁部と重なる位置の近傍までしか形成されていない場合において、膨張部を形成したものである。本態様における、装着穴縁部の軸方向の両側に形成された膨張部は、運転席側膨張部及び助手席側膨張部として互いに異なっている。助手席側膨張部は、アウターパイプの端部と接触するインナーパイプによって形成される。運転席側膨張部の構成は、前述した膨張部の構成と同様である。
【0017】
本態様のインパネリンホースによっても、一態様の場合と同様に、アウターパイプ及びインナーパイプに対するブラケットの固定強度を高めることができる。
【0018】
(第1発明の参考態様)
前記第1発明の参考態様のインパネリンホースにおいては、膨張部の代わりに台座部が形成されており、台座部の接触部位は、アウターパイプの軸方向の一部及びインナーパイプの軸方向の一部が、軸方向に交差する方向に沿って互いに平行な状態で接触している。そのため、本態様のインパネリンホースにおいては、台座部の形成により、インナーパイプに対するアウターパイプの軸方向への抜け強度を高めることができる。
【0019】
それ故、本態様のインパネリンホースによっても、アウターパイプ及びインナーパイプに対するブラケットの固定強度を高めることができる。
【0020】
(第2発明の一態様)
第2発明の一態様のインパネリンホースの製造方法においては、装着工程及び膨張工程を行って、アウターパイプ、インナーパイプ、及びブラケットの装着穴縁部が三重に重なった状態で、装着穴縁部の軸方向の両側に膨張部を形成する。そして、膨張部の形成によって、アウターパイプ、インナーパイプ及びブラケットの3部品を同時に組み付けることができる。
【0021】
それ故、本態様のインパネリンホースの製造方法によれば、アウターパイプへのブラケットの篏合、及びインナーパイプへのアウターパイプの篏合を別々に行う場合に比べて、インパネリンホースの製造時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態1にかかる、インパネリンホースを示す斜視図。
【
図2】実施形態1にかかる、インパネリンホースの二重パイプ部の周辺を示す断面図。
【
図3】実施形態1にかかる、
図2のIII-III断面図。
【
図4】実施形態1にかかる、インパネリンホースの成型装置の成形型を示す断面図。
【
図5】実施形態1にかかる、アウターパイプ及びインナーパイプの外周に成形型が配置された状態を示す断面図。
【
図6】実施形態1にかかる、二重パイプ部に第1膨張部が形成された状態を示す断面図。
【
図7】実施形態1にかかる、
図6の一部を拡大して示す断面図。
【
図8】実施形態1にかかる、成形型の成形面に沿って第1膨張部が形成された状態を示す、
図6のVIII-VIII断面図。
【
図9】実施形態1にかかる、二重パイプ部に他の第1膨張部が形成された状態を拡大して示す断面図。
【
図10】実施形態2にかかる、インパネリンホースの二重パイプ部の周辺を示す断面図。
【
図11】実施形態3にかかる、インパネリンホースの二重パイプ部の周辺を示す、
図2のIII-III断面相当図。
【
図12】
参考形態にかかる、インパネリンホースの二重パイプ部の周辺を示す断面図。
【
図13】
参考形態にかかる、インパネリンホースの二重パイプ部の周辺を示す、
図12のXIII-XIII断面図。
【
図14】その他の実施形態にかかる、インパネリンホースの二重パイプ部の周辺を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
前述したインパネリンホース及びその製造方法にかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
本形態のインパネリンホース1は、
図1及び
図2に示すように、アウターパイプ2、インナーパイプ3及び第1ブラケット5A等を備える。アウターパイプ2は、運転席側D1に配置される。インナーパイプ3は、助手席側D2に配置される。インナーパイプ3は、アウターパイプ2の助手席側D2のアウター端部202の内周に重なる運転席側D1のインナー端部301を有する。助手席側D2のアウター端部202と運転席側D1のインナー端部301とによって二重パイプ部4が形成されている。第1ブラケット5Aは、二重パイプ部4の外周に装着された装着穴縁部51を有する。
【0024】
図2に示すように、二重パイプ部4は、装着穴縁部51の軸方向Dの両側に隣接する部位に、アウターパイプ2の軸方向Dの一部及びインナーパイプ3の軸方向Dの一部が互いに密着する状態で外周側へ膨張して形成された第1膨張部41をそれぞれ有する。第1膨張部41は、装着穴縁部51の運転席側D1の端面511に隣接するものと、装着穴縁部51の助手席側D2の端面512に隣接するものとが一対に形成されている。
図7に示すように、第1膨張部41における、装着穴縁部51の端面511,512のテーパ面511X,512Xと接触するアウターパイプ2の接触部位411は、テーパ面511X,512Xと平行に形成されている。
【0025】
ここで、軸方向Dとは、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の中心軸線に沿った方向のことをいう。インパネリンホース1は、車幅方向に沿って車体に配置される。運転席側D1とは、インパネリンホース1が取り付けられる車体の車幅方向において、運転席が配置される側のことをいう。助手席側D2とは、運転席が配置される側と反対側のことをいう。
【0026】
以下に、本形態のインパネリンホース1及びその製造方法についてさらに詳説する。
図1に示すように、インパネリンホース1は、自動車の車体における車室内の前方に配置されたインストルメントパネル(インパネ)を、車室内から見たときの裏側から支持するためのフレームとして使用される。また、インパネリンホース1は、操舵装置の一部であるステアリングコラム11を支持するためのフレームとしても使用される。インパネリンホース1の両端部は、車体の左右の側部に取り付けられる。インパネリンホース1は、ステアリングサポートビームとも呼ばれる。アウターパイプ2、インナーパイプ3、第1ブラケット5A等は、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属材料、又はCFRP(炭素繊維強化プラスチック)によって構成される。
【0027】
(アウターパイプ2)
図1に示すように、アウターパイプ2は、インパネリンホース1の全長において、ステアリングコラム11が配置される運転席側D1の部位の強度を高めるために、運転席側D1に配置される。二重パイプ部4は、アウターパイプ2の全体においては形成されておらず、アウターパイプ2の助手席側D2のアウター端部202にのみ形成されている。また、アウターパイプ2は、車体の車幅方向において、ステアリングコラム11に対向する位置に配置される。アウターパイプ2は、インナーパイプ3の外周に重なって二重パイプ部4を形成する小径部21と、小径部21よりも拡径して小径部21の運転席側D1に隣接して形成された大径部22とを有する。
【0028】
(インナーパイプ3)
インナーパイプ3は、インパネリンホース1の全長において、助手席側D2に配置される。インナーパイプ3は、アウターパイプ2に比べて長く形成されている。
【0029】
(第1~第4ブラケット5A,5B,5C,5D)
図1に示すように、本形態のインパネリンホース1は、複数のブラケット5A,5B,5C,5Dを有する。インパネリンホース1は、二重パイプ部4に取り付けられた第1ブラケット5A、アウターパイプ2の運転席側D1のアウター端部201に取り付けられた第2ブラケット5B、アウターパイプ2の大径部22の外周に取り付けられた第3ブラケット5C、及びインナーパイプ3の助手席側D2のインナー端部302に取り付けられた第4ブラケット5Dを備える。第1ブラケット5Aは、車体の車室内の前方に位置するフレーム12に固定される。第2ブラケット5B及び第4ブラケット5Dは、車体の左右の側部に位置するフレーム12に固定される。第3ブラケット5Cには、ステアリングコラム11が固定される。
【0030】
図2及び
図3に示すように、第1ブラケット5Aは、アウターパイプ2の軸方向Dの一部とインナーパイプ3の軸方向Dの一部とによる第1膨張部41によって、アウターパイプ2及びインナーパイプ3に取り付けられている。また、
図1に示すように、第2ブラケット5Bは、アウターパイプ2の軸方向Dの一部による第2膨張部42によって、アウターパイプ2に取り付けられている。また、第3ブラケット5Cは、アウターパイプ2の軸方向Dの一部による第3膨張部43によって、アウターパイプ2に取り付けられている。また、第4ブラケット5Dは、インナーパイプ3の軸方向Dの一部による第4膨張部44によって、インナーパイプ3に取り付けられている。第1ブラケット5Aは二重パイプ部4に取り付けられたものであり、第2~第4ブラケット5B,5C,5Dは、一重パイプの部分に取り付けられたものである。
【0031】
図2に示すように、第1~第4ブラケット5A,5B,5C,5Dのそれぞれには、アウターパイプ2又はインナーパイプ3が挿通される挿通穴510が形成されている。そして、各ブラケット5A,5B,5C,5Dの挿通穴510の周りには、装着穴縁部51が形成されている。
【0032】
図7に示すように、本形態の第1ブラケット5Aの装着穴縁部51の軸方向Dの両側の端面511,512の内周側角部には、内周側に向かうほど装着穴縁部51の軸方向Dの幅を小さくするテーパ面511X,512Xが形成されている。アウターパイプ2の接触部位411は、テーパ面511X,512Xに密着してテーパ面511X,512Xと平行に形成されている。
【0033】
(二重パイプ部4の第1膨張部41)
図2及び
図3に示すように、本形態の第1膨張部41は、装着穴縁部51のテーパ面511X,512Xに接触するアウターパイプ2の接触部位411の面積が大きくなるようにしたものである。そして、アウターパイプ2の接触部位411は、装着穴縁部51のテーパ面511X,512Xに平行な状態で接触する。また、第1膨張部41は、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の周方向Cの全周に亘って形成されている。
【0034】
図2及び
図7に示すように、装着穴縁部51のテーパ面511X,512X、及び第1膨張部41におけるアウターパイプ2の接触部位411は、軸方向Dに対して傾斜して形成されている。また、アウターパイプ2の接触部位411に接触するインナーパイプ3の接触部位414も、装着穴縁部51のテーパ面511X,512X及びアウターパイプ2の接触部位411と平行に形成されている。これにより、ブラケットが軸方向Dに垂直な状態から倒れにくく、かつ軸方向Dに抜き出されにくくしている。
【0035】
また、第1膨張部41は、アウターパイプ2の接触部位411及びインナーパイプ3の接触部位414が、軸方向Dに垂直な方向に突出する量を適切に確保できる形状にしている。
図9に示すように、第1膨張部41を形成する、アウターパイプ2の軸方向Dの一部及びインナーパイプ3の軸方向Dの一部は、軸方向Dに平行な平行部位412として形成されていてもよい。この平行部位412の形成により、アウターパイプ2の第1膨張部41の内周側に、インナーパイプ3の第1膨張部41が配置されやすくなる。そして、第1ブラケット5Aの倒れ強度及び抜け強度をより高めることができる。
【0036】
第1膨張部41における、接触部位411に対して軸方向Dの反対側に位置する反対側部位413は、軸方向Dに傾斜して形成されている。なお、本形態のアウターパイプ2の第1膨張部41は、アウターパイプ2の軸方向Dの一部が変形した接触部位411及び反対側部位413によって形成されている。インナーパイプ3の第1膨張部41は、アウターパイプ2の第1膨張部41の内周側に沿った形状に形成されている。
【0037】
(第2~第4膨張部42,43,44)
図1に示すように、第2膨張部42は、アウターパイプ2の軸方向Dの一部であって第2ブラケット5Bの軸方向Dの両側に隣接する部位が外周側へ膨張して形成されたものである。第3膨張部43は、アウターパイプ2の軸方向Dの一部であって第3ブラケット5Cの軸方向Dの両側に隣接する部位が外周側へ膨張して形成されたものである。第4膨張部44は、インナーパイプ3の軸方向Dの一部であって第4ブラケット5Dの軸方向Dの両側に隣接する部位が外周側へ膨張して形成されたものである。
【0038】
第2~第4膨張部42,43,44は、アウターパイプ2又はインナーパイプ3による一重パイプの部分に形成されている。第2~第4膨張部42,43,44が外周側へ突出する形状は、第1膨張部41の場合と同様にすることができる。また、第2~第4膨張部42,43,44は、外周側へ曲面状に突出する形状に形成してもよい。
【0039】
(成形装置6)
図4~
図6に示すように、インパネリンホース1の成形装置6は、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の部分拡径加工を行うものである。そして、この部分拡径加工により、アウターパイプ2とインナーパイプ3とが互いに嵌合されるとともに、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の少なくとも一方への第1~第4ブラケット5A,5B,5C,5Dの取り付けも行われる。
【0040】
成形装置6は、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の少なくとも一方に対して、内周側から外周側へ圧力を加える加圧ユニット61と、アウターパイプ2又はインナーパイプ3の外周側に配置される成形型62とを備える。本形態の加圧ユニット61は、管形状、器形状等を有する物体に内側から圧力を加えるバルジ成形ユニットによって構成されている。バルジ成形ユニットは、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の加工部位(外周側に膨張させる加工を行う部位)に配置される、ゴム、エラストマー等の弾性材料によって構成された弾性変形部材611と、弾性変形部材611を軸方向Dの両側から加圧する一対のパンチ612とを有する。
【0041】
弾性変形部材611は、中実状の弾性材料によって形成されている。一対のパンチ612のうちの一方は、加圧ユニット61のベース台に固定し、一対のパンチ612のうちの他方は、油圧シリンダーの可動ロッドに取り付けることができる。そして、油圧シリンダーの可動ロッドをストロークさせるときに、一対のパンチ612によって弾性変形部材611を圧縮変形させ、弾性変形部材611が、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の少なくとも一方における非拘束部位Hへ膨張することによって、この非拘束部位Hを外周側へ変形させることができる。なお、非拘束部位Hとは、アウターパイプ2及びインナーパイプ3において、各ブラケット5A~5D及び成形型62のいずれによっても拘束されていない空間部位のことをいう。
【0042】
一対のパンチ612によって弾性変形部材611が圧縮されることによって、弾性変形部材611からアウターパイプ2及びインナーパイプ3の内周側には、ほぼ均一に圧力が与えられる。そして、アウターパイプ2及びインナーパイプ3における、各ブラケット5A~5D又は成形型62の成形面621と接触する部位は、ほとんど膨張しない。
【0043】
また、アウターパイプ2及びインナーパイプ3に、
図9に示す平行部位412を形成する場合には、成形型62の成形面621における、平行部位412を成形するための凹部622とアウターパイプ2との隙間Sを埋めるように、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の各素材が流動する。そして、平行部位412は、成形面621の形状が転写されて形成される。同図においては、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の成形前(変形前)の状態を二点鎖線によって示す。
【0044】
加圧ユニット61は、バルジ成形ユニットとする以外にも、圧力を発生させる種々のユニットとすることができる。例えば、加圧ユニット61は、油圧、水圧等の液体の圧力を利用して、管形状、器形状等を有する物体に内側から圧力を加えるハイドロ成形ユニットによって構成することもできる。ハイドロ成形ユニットによる成形は、ハイドロフォーミングとも呼ばれる。
【0045】
図4に示すように、成形型62は、加圧ユニット61によって加圧されたアウターパイプ2又はインナーパイプ3の変形を受け止める成形面621を有する。成形面621には、第1~第4膨張部41,42,43,44を成形する部位等が形成されている。
図8に示すように、成形型62は、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の配置及び取り出しを容易にするために、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の周方向Cに複数に分割して形成されている。
【0046】
成形型62は、第1~第4ブラケット5A,5B,5C,5Dとの干渉を避けて、第1~第4ブラケット5A,5B,5C,5Dの軸方向Dの両側に第1~第4膨張部41,42,43,44を成形する形状に形成されている。
【0047】
(製造方法)
インパネリンホース1を製造するに当たっては、成形前のアウターパイプ2(パイプ材料)と、成形前のインナーパイプ3(パイプ材料)と、第1~第4ブラケット5A,5B,5C,5Dとを準備する。そして、装着工程においては、インナーパイプ3の運転席側D1のインナー端部301の外周に、アウターパイプ2の助手席側D2のアウター端部202を装着して、二重パイプ部4を形成する。
【0048】
また、二重パイプ部4における助手席側D2のアウター端部202の外周に、第1ブラケット5Aの装着穴縁部51を装着する。また、運転席側D1のアウター端部201の外周に第2ブラケット5Bの装着穴縁部51を装着し、アウターパイプ2の大径部22の外周に第3ブラケット5Cの装着穴縁部51を装着し、助手席側D2のインナー端部302の外周に第4ブラケット5Dの装着穴縁部51を装着する。
【0049】
また、
図5に示すように、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の外周に、第1~第4ブラケット5A,5B,5C,5Dとの干渉を避けて、成形型62を配置する。このとき、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の第1~第4膨張部41,42,43,44が形成される部位には、成形型62の成形面621が外周側から対向しない。
【0050】
次いで、膨張工程においては、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の内周側に、加圧ユニット61の弾性変形部材611を配置する。次いで、
図6及び
図7に示すように、加圧ユニット61の一対のパンチ612が、弾性変形部材611を軸方向Dの両側から圧縮変形させる。このとき、一対のパンチ612による圧力を受けて弾性変形部材611が、アウターパイプ2内及びインナーパイプ3内において外周側へ膨らむ。また、弾性変形部材611が配置された二重パイプ部4においては、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の周方向Cの全周において、内周側から外周側へ圧力が加えられる。
【0051】
そして、
図6~
図8に示すように、第1ブラケット5Aの装着穴縁部51の軸方向Dの両側に隣接する部位であって、第1膨張部41が形成される部位においては、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の軸方向Dの一部における素材が、非拘束部位Hの外周側へ膨張して変形する。また、第2~第4膨張部42,43,44が形成される部位においても、アウターパイプ2又はインナーパイプ3の軸方向Dの一部における素材が、非拘束部位Hの外周側へ膨張して変形する。
【0052】
こうして、第1~第4ブラケット5A,5B,5C,5Dの装着穴縁部51の軸方向Dの両側に、アウターパイプ2又はインナーパイプ3の素材が密着して、第1~第4膨張部41,42,43,44が形成される。この第1~第4膨張部41,42,43,44においては、第1~第4ブラケット5A,5B,5C,5Dの装着穴縁部51のテーパ面511X,512Xに密着する接触部位411が形成される。そして、アウターパイプ2、インナーパイプ3及び第1~第4ブラケット5A,5B,5C,5Dが嵌合されたインパネリンホース1が製造される。
【0053】
(作用効果)
本形態のインパネリンホース1においては、第1ブラケット5Aの装着穴縁部51の軸方向Dの両側に、二重パイプ部4の第1膨張部41が形成されている。この第1膨張部41における、装着穴縁部51のテーパ面511X,512Xと接触するアウターパイプ2の接触部位411は、装着穴縁部51のテーパ面511X,512Xと平行に形成されている。また、アウターパイプ2の接触部位411に接触するインナーパイプ3の接触部位414も、装着穴縁部51のテーパ面511X,512X及びアウターパイプ2の接触部位411と平行に形成されている。
【0054】
そして、この第1膨張部41の各接触部位411,414の構成により、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の軸方向Dに対して第1ブラケット5Aが傾斜するように、第1ブラケット5Aを倒そうとする外力に対する倒れ強度を高めることができる。
また、第1膨張部41の各接触部位411,414においては、アウターパイプ2の軸方向Dの一部とインナーパイプ3の軸方向Dの一部とが密着していることにより、インナーパイプ3に対するアウターパイプ2の軸方向Dへの抜け強度を高めることもできる。
【0055】
それ故、本形態のインパネリンホース1によれば、アウターパイプ2及びインナーパイプ3に対する第1ブラケット5Aの固定強度を高めることができる。
【0056】
また、本形態のインパネリンホース1の製造方法においては、アウターパイプ2、インナーパイプ3、及び第1ブラケット5Aの装着穴縁部51が三重に重なった状態で、装着穴縁部51の軸方向Dの両側に第1膨張部41が形成される。また、アウターパイプ2又はインナーパイプ3と、第2~第4ブラケット5B,5C,5Dの装着穴縁部51とが二重に重なった状態で、この装着穴縁部51の軸方向Dの両側に第2~第4膨張部42,43,44が形成される。特に、第1膨張部41の形成によって、アウターパイプ2、インナーパイプ3及び第1ブラケット5Aの3部品を同時に組み付けることができる。
【0057】
それ故、本形態のインパネリンホース1の製造方法によれば、アウターパイプ2への第1ブラケット5Aの篏合、及びインナーパイプ3へのアウターパイプ2の篏合を別々に行う場合に比べて、インパネリンホース1の製造時間を短縮することができる。
【0058】
<実施形態2>
本形態のインパネリンホース1は、
図10に示すように、アウターパイプ2の助手席側D2のアウター端部202が第1ブラケット5Aの装着穴縁部51と重なる位置の近傍までしか形成されていない場合において、第1膨張部41A,41Bを形成したものである。本形態の第1ブラケット5Aの装着穴縁部51の軸方向Dの運転席側D1に位置する運転席側第1膨張部41Aは、アウターパイプ2及びインナーパイプ3に形成されている。運転席側第1膨張部41Aは、装着穴縁部51の軸方向Dの運転席側D1に隣接する部位において、アウターパイプ2の軸方向Dの一部及びインナーパイプ3の軸方向Dの一部が外周側へ膨張して形成されている。
【0059】
一方、第1ブラケット5Aの装着穴縁部51の軸方向Dの助手席側D2に位置する助手席側第1膨張部41Bは、インナーパイプ3に形成されている。助手席側第1膨張部41Bは、装着穴縁部51の軸方向Dの助手席側D2に隣接する部位において、インナーパイプ3の軸方向Dの一部が外周側へ膨張して形成されている。また、本形態においては、アウターパイプ2の端部203が、インナーパイプ3による助手席側第1膨張部41Bの外周に重なっている。
【0060】
同図に示すように、運転席側第1膨張部41Aにおける、第1ブラケット5Aの装着穴縁部51のテーパ面511Xと接触するアウターパイプ2の運転席側接触部位411は、装着穴縁部51のテーパ面511Xと平行に形成されている。また、アウターパイプ2の運転席側接触部位411と接触するインナーパイプ3の運転席側接触部位414は、装着穴縁部51のテーパ面511X及びアウターパイプ2の運転席側接触部位411と平行に形成されている。
【0061】
一方、助手席側第1膨張部41Bにおける、第1ブラケット5Aの装着穴縁部51のテーパ面512Xと接触する、アウターパイプ2の端部203に形成された助手席側接触部位415は、装着穴縁部51のテーパ面512Xと平行に形成されている。また、アウターパイプ2の助手席側接触部位415と接触するインナーパイプ3の助手席側接触部位416は、装着穴縁部51のテーパ面512X及びアウターパイプ2の助手席側接触部位415と平行に形成されている。
【0062】
本形態の運転席側第1膨張部41Aにおいても、実施形態1の場合と同様に、アウターパイプ2の軸方向Dの一部及びインナーパイプ3の軸方向Dの一部によって平行部位412が形成されていてもよい。また、本形態の助手席側第1膨張部41Bにおいても、実施形態1の場合と同様に、インナーパイプ3の軸方向Dの一部によって平行部位412が形成されていてもよい。
【0063】
本形態のインパネリンホース1のその他の構成、製造方法、作用効果等については、実施形態1の場合と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の場合と同様である。
【0064】
<実施形態3>
本形態のインパネリンホース1においては、
図11に示すように、第1ブラケット5Aの装着穴縁部51の軸方向Dの両側に位置する第1膨張部41が、二重パイプ部4の周方向Cにおける複数箇所に分散して形成されている。本形態の分散型の第1膨張部41は、実施形態1のインパネリンホース1に適用した場合を示す。図示は省略するが、本形態のインパネリンホース1の製造方法において用いられる成形型の成形面には、周方向Cの複数箇所に分散された第1膨張部41を形成するための凹部が形成されている。
【0065】
本形態の第1膨張部41は、周方向Cの4箇所に分散して形成されている。第1膨張部41は、例えば、周方向Cの2~6箇所に分散して形成することができる。第1膨張部41は、アウターパイプ2の外周側にオフセットした、アウターパイプ2の中心軸線を中心として描かれる円弧形状に形成してもよい。
【0066】
本形態においては、第1膨張部41が、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の周方向Cにおいて凹凸を形成する状態で配置される。これにより、アウターパイプ2とインナーパイプ3との周方向Cにおける捩じり強度を高めることができる。
【0067】
また、本形態のインパネリンホース1の製造方法においては、第1膨張部41を周方向Cの部分的に形成すればよいため、第1膨張部41を成形する面積が減少する。これにより、第1膨張部41を成形する際に、加圧ユニット61において、一対のパンチ612から弾性変形部材611に加える圧力を小さくすることができる。
【0068】
本形態のインパネリンホース1のその他の構成、製造方法、作用効果等については、実施形態1の場合と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の場合と同様である。
【0069】
なお、本形態の構成は、実施形態2のインパネリンホース1に適用してもよい。この場合には、運転席側第1膨張部41A及び助手席側第1側膨張部41Bは、二重パイプ部4の周方向Cにおける複数箇所に分散して形成される。
【0070】
<
参考形態>
本形態のインパネリンホース1においては、
図12及び
図13に示すように、種々の小物部品5Eが、二重パイプ部4に形成された台座部45に取り付けられる。二重パイプ部4においては、台座部45によって、アウターパイプ2とインナーパイプ3とが固定される。
【0071】
本形態の小物部品5Eは、二重パイプ部4の外周に取り付けられる取付部52を有する。本形態の二重パイプ部4は、その周方向Cの複数箇所に、アウターパイプ2の軸方向Dの一部及びインナーパイプ3の軸方向Dの一部が外周側へ膨張して形成された台座部45を有している。台座部45は、二重パイプ部4の周方向Cにおける複数箇所に分散して形成されている。本形態の台座部45は、周方向Cに略180°位相がずれた2箇所に形成されている。台座部45は、二重パイプ部4の周方向Cの3箇所以上に分散して形成されていてもよい。
【0072】
本形態の複数箇所の台座部45は、軸方向Dの同じ位置に形成されている。複数箇所の台座部45は、軸方向Dの互いにずれた位置に形成されていてもよい。ただし、この場合には、台座部45の一部同士が周方向Cにおいて互いに重なる位置にあることが好ましい。
【0073】
台座部45は、その軸方向Dの両側において、アウターパイプ2の軸方向Dの一部及びインナーパイプ3の軸方向Dの一部が、軸方向Dに交差(傾斜)する方向に沿って互いに平行な状態で接触する接触部位451を有する。本形態の台座部45は、軸方向Dに垂直な断面において、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の軸方向Dの一部が外周側にオフセットする状態で形成されている。
【0074】
図12及び
図13に示すように、小物部品5Eの取付部52は、台座部45における、接触部位451の軸方向D間に形成された被取付部452に取り付けられている。被取付部452は、取付部52の取り付けを容易にするために、台座部45の頂点部分として平坦状に形成されている。また、本形態の被取付部452は、軸方向Dに沿った平坦状部分として形成されている。なお、被取付部452は、必ずしも平坦状に形成する必要はなく、また、必ずしも軸方向Dに沿って形成しなくてもよい。
【0075】
小物部品5Eの取付部52は、ボルト締結、溶接による接合等を行って、台座部45の被取付部452に取り付けられる。また、小物部品5Eの取付部52は、複数箇所の台座部45における被取付部452に跨って取り付けられてもよい。
【0076】
本形態のインパネリンホース1の製造方法においては、実施形態1に示した加圧ユニット61及び成形型62を有する成形装置6を用いて、台座部45が形成される。台座部45は、第1膨張部41を形成する場合と同様にして形成される。本形態においては、成形装置6の成形型62をアウターパイプ2及びインナーパイプ3に配置する際に、小物部品5Eを避けて配置する必要がなく、その配置が容易である。
【0077】
本形態のインパネリンホース1においては、小物部品5Eの取付部52が、二重パイプ部4における台座部45の被取付部452に取り付けられている。この構成により、アウターパイプ2及びインナーパイプ3の軸方向Dに対して小物部品5Eが傾斜するように、小物部品5Eを倒そうとする外力に対する倒れ強度を高めることができる。
【0078】
また、台座部45の軸方向Dの両側に、アウターパイプ2の軸方向Dの一部及びインナーパイプ3の軸方向Dの一部による、軸方向Dに傾斜する方向に沿って互いに平行な状態で接触する接触部位451が形成されていることにより、インナーパイプ3に対するアウターパイプ2の軸方向Dへの抜け強度を高めることができる。
【0079】
なお、台座部45は、二重パイプ部4の周方向Cの全周に形成することもできる。この場合には、台座部45を、円筒状に形成することができ、軸方向Dから見たときに四角形以上の多角形状に形成することもできる。また、この場合には、台座部45の周方向Cに向けて連なる複数の平坦状の被取付部452を形成することもできる。
【0080】
本形態のインパネリンホース1のその他の構成、製造方法、作用効果等については、実施形態1の場合と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の場合と同様である。
【0081】
<その他の実施形態>
また、
図14に示すように、装着穴縁部51の軸方向Dの一方側に隣接する第1膨張部41は、平行部位412を有する形状に形成し、装着穴縁部51の軸方向Dの他方側に隣接する第1膨張部41は、平行部位412を有しない形状に形成してもよい。この場合、平行部位412には、小物部品5E等を取り付けることができる。
【0082】
本形態のインパネリンホース1のその他の構成、製造方法、作用効果等については、実施形態1の場合と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の場合と同様である。
【0083】
本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。
【符号の説明】
【0084】
1 インパネリンホース
2 アウターパイプ
3 インナーパイプ
4 二重パイプ部
41 第1膨張部(膨張部)
411 接触部位
412 平行部位
45 台座部
451 接触部位
452 被取付部
5A 第1ブラケット(ブラケット)
51 装着穴縁部
511X,512X テーパ面