(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】スロッタ装置
(51)【国際特許分類】
B26D 7/18 20060101AFI20220104BHJP
B26D 1/28 20060101ALI20220104BHJP
B31B 50/22 20170101ALI20220104BHJP
【FI】
B26D7/18 E
B26D1/28 F
B26D1/28 G
B31B50/22
(21)【出願番号】P 2018149556
(22)【出願日】2018-08-08
【審査請求日】2021-01-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000147774
【氏名又は名称】株式会社石川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【氏名又は名称】木森 有平
(72)【発明者】
【氏名】浜田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】能藤 幸浩
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-245600(JP,A)
【文献】特開昭61-050797(JP,A)
【文献】実開昭60-106717(JP,U)
【文献】特開2011-016274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/18
B26D 1/00 - 3/30
B31B 50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに溝切り加工を施すスロッタと、前記スロッタの下方に対向配置された受スロッタとを備えたスロッタ装置において、前記受スロッタの外周上に、全周にわたって共に回転する
複数の突起状の屑落し手段と、前記スロッタの外周上の一部に前記屑落し手段に対応する
弾性体である屑落し受台が設けられ、前記屑落し手段が切断屑を
貫通してその先端を前記屑落し受け台で受けることで、前記屑落し手段
が配される前記受けスロッタの外周面と前記屑落し受台とによりシートにおける切断屑部分のみを挟み込み、
前記屑落し手段による係止が維持されるとともに除去される構成となっていることを特徴とするスロッタ装置。
【請求項2】
前記屑落し手段が、前記切断屑を突き刺して除去する二叉状の保持刃または針状の掛止針であることを特徴とする請求項1に記載のスロッタ装置。
【請求項3】
前記受けスロッタは、前端屑落し手段を有する前端受スロッタと後端屑落し手段を有する後端受スロッタであって、前記スロッタは前記前端屑落し手段の一部に対応した前端屑落し受台を有する前端スロッタと前記後端屑落し手段の一部に対応した後端屑落し受台を有する後端スロッタであって、後端コーナ部切断屑と前端コーナ部切断屑を挟み込み除去することを特徴とする請求項1又は2に記載のスロッタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール箱等のブランク(シート)を成形加工するスロッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、製函機は、上流側から順に、給紙ユニット、印刷ユニット、スロッタ装置、ダイカッタ、グルア、フォルダ、及びカウンタユニットを備える。給紙ユニットは、シート(シート状のワーク)を印刷ユニット側に送り出す。印刷ユニットは、シートに印刷を施す。スロッタ装置は、シートに罫線付与と溝切り加工とフラップカット等を施す。ダイカッタは、シートに抜き加工を施す。グルアは、シート同士を貼り合わせする箇所(継代f)に糊付けする。フォルダは、シートを折り曲げて接合する。カウンタユニットは、上記加工が施されたシートを揃えて積み上げる。
【0003】
一般に、製函機とは、シート(例えば段ボールシート等)に高速で上記一連の加工を施す装置を指しており、箱体(例えば段ボール箱等)に組立てる手前の状態まで加工する装置を指す。シートとしては、段ボールシートや厚紙、これらと樹脂や金属等との複合材料を含む。
【0004】
スロッタ装置には、継代貼り合せ後のシート板厚の総計を薄くする方向で調整するためのクラッシャ、シートから継代を切り出すフラップカッタ、シートに罫線付与を施す押罫部材、シートに溝切り加工を施すスロッタが備わる。
【0005】
フラップカッタの外周には、このフラップカッタと共に回転するフラップカッタ刃が取り付けられている。またスロッタの外周には、このスロッタと共に回転するスロッタ刃が取付けられている。上流から送り込まれてきたシートは、フラップカッタ刃およびスロッタ刃によりシートがカットされて、継代が形成される。
【0006】
図8は、製函機によって製造された、内貼り箱となるシートAを示す正面図である。製函機によってこのように抜き加工が施された段ボールシートは、ブランクとも呼ばれる。
【0007】
シートAは、一方向に順に、長さ面a1、幅面b1、長さ面a2、幅面b2がタテ罫線c(クリーズ)を介して交互に連成されている。各長さ面a1,a2、各幅面b1、b2の両側にはヨコ罫線d(スコア)を介してフラップeが連成されている。また、一方の幅面a1の端縁にタテ罫線cを介して継代f(糊代)が連成されている。継代fと幅面b2の端縁に位置した貼付け部gとを貼り合わせることでシートAを組み立て、箱体とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、フラップカッタ刃やスロッタ刃の刃先の摩耗などにより切断屑の切断不良が発生する場合、切断屑が長い場合、あるいは硬いシートが使用される場合に、スロッタ装置において、除去されるべき切断屑が継代に一部繋がった状態でシートと共に排出されることや切断屑回収箇所以外に飛散することがあった。
【0010】
このような状態で排出されると、シートを次工程のグルアで接着し、フォルダで扁平な箱体にする場合に、継代に一部繋がった状態の切断屑が、糊付けや接着の邪魔となり、不良な箱体が生じていた。
【0011】
特許文献1は、コーナかすを確実に除去することができるスロッタ装置を提供するものである。スロッタ装置は、段ボールシートA0の移送路上に刃物台11を設け、その下方に受スロッタ21を設ける。また刃物台11にスロット形成用のスロッタ刃12と、そのスロッタ刃12に交差する継ぎしろナイフ13とを設けて送り込まれてくる段ボールシートA0の一側前後のコーナ部を切断してジョイントフラップ6を形成する。そしてジョイントフラップ6の移送路に複数の弾性片32を有する一対のかす落し具30を上下に設け、各かす落し具30の回転により、弾性片32によってジョイントフラップ6につながるコーナかすを除去する。
【0012】
しかしこの場合、かす落とし具を新たに必要とするため装置が大型化し、モータも別に必要とする。また、上軸10や下軸20の回転動作と、かす落とし具の動作とを同期させる必要があり動作が複雑化する。
【0013】
そこで、本発明の目的は、切断屑を完全に除去することができるようにするとともに、装置構成や動作が単純でコンパクトなスロッタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のスロッタ装置は、シートに溝切り加工を施すスロッタを有するスロッタ装置であって、前記スロッタの下方に対向配置された受スロッタに、前記受スロッタと共に回転する屑落し手段が備わり、前記屑落し手段は、前記シートの切断屑を掛止して除去するものであることを特徴とする。
受スロッタは、スロッタの下方に対向配置されており、スロッタ刃でシートを切断する際にスロッタ刃を受ける目的で使用される。すなわちスロッタと受スロッタとを回転させながらシートを送り込み、スロッタ上のスロッタ刃をシートに接触させて切断するとともに、スロッタ刃を受スロッタで受けることで、シートにスロット用の溝切り加工を施す。
屑落し手段とは、切断屑を掛止して落とすためのものである。屑落し手段は、受スロッタの外周面に設けられている。前端受スロッタの外周面には前端屑落し手段が備えられ、後端スロッタの外周面には後端屑落し手段が備えられる。
切断屑とは、スロッタ装置により切断されて生じる屑を指す。例えば本発明において切断屑とはコーナ部切断屑である。コーナ部切断屑とは、前端コーナ部切断屑または後端コーナ部切断屑の少なくともいずれか一方を指す。
前端コーナ部切断屑とは、
図4で示す符号f15の部分であり、シートの継代前端の角であって、切断屑として除去される領域を指す。
後端コーナ部切断屑とは、
図4で示す符号f17の部分であり、シートの継代後端の角であって、切断屑として除去される領域を指す。
より詳細には、
図3に示すようにフラップカッタ刃によって、シートの継代側部前端f2および継代側部後端f3を切断した後、前記スロッタ刃によって、前端側のスロット形成部f4および後端側のスロット形成部f9を、その一部を切断せず繋がった状態で残すように切断する。そして
図4に示すように前記屑落し手段の保持刃や掛止針の先端を、継代領域f1上において、前端コーナ部切断屑f15および後端コーナ部切断屑f17に貫通させてこれを掛止する。その後、屑落しガイドによって前端コーナ部切断屑f15および後端コーナ部切断屑f17を除去することで、前記シートAの端縁に継代fを形成する。
本発明によれば、屑落し手段が受スロッタの外周上に備わるため、スロッタ刃によって切断するとともに切断屑を除去することができ、装置構成がコンパクトとなり、単純な動作で切断屑を完全に除去することができる。
また本発明によれば、屑落し手段が前端受スロッタに配されることで、前端コーナ部切断屑を容易に除去でき、屑落し手段が後端受スロッタに配されることで、後端コーナ部切断屑を容易に除去できる。屑落し手段は前端受スロッタと後端受スロッタの両方に配されていてもよく、両受スロッタに配されることで、前端コーナ部切断屑と後端コーナ部切断屑を同時に除去できる。
【0015】
本発明のスロッタ装置は、前記受スロッタの外周上に、全周にわたって共に回転する屑落し手段と、前記スロッタの外周上の一部に前記屑落し手段に対応する屑落し受台が設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、前端受スロッタの外周の一部にのみ屑落し手段が配されている場合、運転時に前端スロッタと前端受スロッタを回転させていくと、前端スロッタと前端受スロッタとに外周長に差があるため、屑落し手段が切り屑に当接しない場合がある。前記屑落し手段が、前記前端受スロッタの外周上に、全周にわたって配されていることで、前端スロッタと前端受スロッタとの外周差に関わらず、屑落し手段が切り屑に当接することが可能となる。同様に、屑落し手段が、後端受スロッタの外周上に、全周にわたって配されていることで、後端スロッタと後端受スロッタとの外周差に関わらず、屑落し手段が切り屑に当接することが可能となる。
【0016】
本発明のスロッタ装置は、前記屑落し手段が、前記切断屑を突き刺して除去する二叉状の保持刃または針状の掛止針であることを特徴とする。
保持刃や掛止針は金属素材からなり、その先端部分を切断屑に貫通させて掛止する。保持刃は二叉形状であり、二叉の両端の各々が刃の先端として受スロッタの半径方向外向きに配されている。掛止針は針形状であり、針の先端が受スロッタの半径方向外向きに配される。保持刃や掛止針の先端は切断屑に貫通して掛止できればよく、例えば、鋭く尖った形状や、丸みを帯びた形状、直方体形状となっている。
本発明によれば、屑落し手段をこのような形状とすることで、屑落し手段を切断屑に突き刺して除去することができ、切断屑を完全に除去することが容易となる。
【0017】
本発明のスロッタ装置は、前記スロッタが、前記屑落し手段に対向配置された屑落し受台を備え、切断屑に保持刃または掛止針を突き刺すために、前記屑落し手段と前記屑落し受台とにより前記シートを二方向から挟み込むことを特徴とする。
本発明では、屑落し受台は、この突き刺した保持刃または掛止針を受けるための台のことである。つまり、屑落し受台が対面するシート部分にのみ保持刃あるいは掛止針を突き刺し、屑落し受台が対面しないシート部分では、シートが逃げるため、突き刺さすことはない。
本発明によれば、屑落し受台を備えることにより、継代に保持刃または掛止針の貫通痕を残すことなく、切断屑となる部分だけを保持刃または掛止針で突き刺して掛止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のスロッタ装置によれば、継代につながる切断屑を完全に除去することができるようにするとともに、装置構成や動作が単純でコンパクトなスロッタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態の製函機をOP側(操作者側)から見た側面図である。
【
図2】上記実施形態のスロッタ装置の要部をOP側の側面からみた要部構造図である。
【
図3】上記実施形態の継代形成時のシートの平面図である。
【
図4】上記実施形態の継代形成時のシートの平面図である。
【
図5A】上記実施形態のスロッタ刃が配されたスロッタの斜視図である。
【
図5B】上記実施形態のスロッタ刃および屑落し受台が配されたスロッタの斜視図である。
【
図6】上記実施形態の保持刃が配された受スロッタの斜視図である。
【
図7】上記実施形態の掛止針が配された受スロッタの斜視図である。
【
図8】内貼り箱となるシート(ブランク)を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
(本発明の実施の形態)
図1は、本発明を適用した実施形態の製函機1(本発明の製函機1)をOP側(操作者側)から見た側面図である。
図2は、本実施形態の製函機1のうち、スロッタ装置13の要部をOP側の側面からみた要部構造図である。
図3,4は、本実施形態の継代形成時のシートAの平面図である。
図1,2における符号yは、シート流れ方向である。本明細書において、シート流れ方向とはシートAの進行方向のうち概ね水平な方向を指しており、シート流れ方向と直交する概ね水平な方向をシート幅方向という。またOP側の反対位置は、DR側(駆動源側)という。
【0022】
製函機1は、上流側からシート流れ方向yの順に、シートAを印刷ユニット側に送り出す給紙ユニット11、シートAに印刷を施す印刷ユニット12、シートAに罫線付与と溝切り加工とフラップカット等を施すスロッタ装置13、シートAに抜き加工を施すダイカッタ14、シートAに糊付け加工を施すグルア15、シートAを折り曲げて接合するフォルダ16、上記加工が施されたシートAを揃えて積み上げるカウンタユニット17から構成される(
図1)。
【0023】
図2に示すように、スロッタ装置13には、上流から順に、貼り合わされるシートAの板厚を薄くするためのクラッシャ(不図示)、シートAから継代を切り出すフラップカッタ31、シートAに罫線付与を施す第2押罫部材36、シートAに溝切り加工を施すスロッタ32,33、シートを加工せずに送りだす送りロール37,38が備わっている。
【0024】
シートAの移送路における上下には、互いに逆方向に回転される前端スロッタ32と前端受スロッタ34、および後端スロッタ33と後端受スロッタ35とが設けられている。スロッタ32,33には複数のスロッタ刃が備わり、他方、受スロッタ34,35には、スロッタ刃322,332に対向して刃受溝が備わる。
【0025】
なおフラップカッタ31の同軸上背後(DR側)には、シートAに別の罫線付与を施す第1押罫部材が備わる(不図示)。罫線付与は、第1押罫部材(不図示)、第2押罫部材36の順になされる。またスロッタ32,33と同軸上(DR側)には、シート端にスリット加工を施すスリッタ(不図示)が備わる。
【0026】
フラップカッタ31の外端側には、シートAから継代fを切り出す前端フラップカッタ刃311,後端フラップカッタ刃312が設けられ(
図2,3)、シートAに継代fを形成するために、シートAの継代側f1の一部である継代側部前端f2および継代側部後端f3を切断する目的で使用される。前端フラップカッタ刃311,後端フラップカッタ刃312は、シートAの継代fとなる部分の移送路上に位置し、フラップカッタ31の外周面上において、シート流れ方向yと交差する角度で取り付けられている。
【0027】
シートAの継代fの移送路上に、上流から後端スロッタ33、前端スロッタ32の順に配されている(
図2)。前端スロッタ32は上スロッタ軸321を軸心として回転し、後端スロッタ33は上スロッタ軸331を軸心として回転する。スロッタ32,33の外周面には、スロッタ刃322,332が設けられている。
【0028】
前端スロッタ刃322を有する前端スロッタ32と、後端スロッタ刃332を有する後端スロッタ33とは同様の構成であるが、
図2に示すように、前端スロッタ刃322と後端スロッタ刃332とは向かい合うように対称配置されている。すなわち端部刃322dと、端部刃332dとが向かい合うように構成されており、これによって
図3,4に示すようにシートAに前後対称な切込みを生じさせる。以下、スロッタ32,33に配されたスロッタ刃322,332の装置構成は、前端スロッタ32を用いて詳細に説明することとし、上記の理由により後端スロッタ332の図示は省略する。
【0029】
図5Aは、本実施形態の前端スロッタ刃322が配された前端スロッタ32の斜視図である。本来、
図5Bに示すように、前端スロッタ32は前端スロッタ刃322の外側に前端屑落し受台323を備えるが、前端スロッタ刃322を説明するため、
図5Aでは前端屑落し受台323を省略して図示している。
【0030】
前端スロッタ刃322は、前端スロッタ32の外周上に周方向に取り付けられており、前端スロッタ32と共に回転する。前端スロッタ刃322はシートAの継代前端のスロット形成部f4に溝切り加工を施してスロットを形成するために使用される(
図3,5A)。
【0031】
前端スロッタ刃322は、2つの刃322a,322bが周方向に沿って平行に配置されており、スロッタ刃322の一端には端部刃322dが備わる(
図5A)。OP側の刃322bには切欠き322cが備わり、他方、DR側の刃322aは、刃が途切れることなく備わり、切欠きは形成されていない。
【0032】
同様に、後端スロッタ刃332は、後端スロッタ33の外周上に周方向に取り付けられており、後端スロッタ33と共に回転する。後端スロッタ刃332は、シートAの継代後端のスロット形成部f9に溝切り加工を施してスロットを形成するために使用される(
図2,3)。
【0033】
後端スロッタ刃332は、2つの刃が周方向に沿って平行に配置されており、スロッタ刃332の一端には端部刃が備わる(不図示)。OP側の刃には切欠きが備わり、他方、DR側の刃は、刃が途切れることなく備わり、切欠きは形成されていない(不図示)。
【0034】
図6は、本実施形態の屑落し手段341(または屑落し手段351)の一例である保持刃40が配された受スロッタ34(または受スロッタ35)の斜視図である。
図7は、本実施形態の他の屑落し手段341(または屑落し手段351)の一例である掛止針41が配された受スロッタ34(または受スロッタ35)の斜視図である。
【0035】
受スロッタ34,35は、前端受スロッタ34か、後端受スロッタ35の少なくともいずれか一方を指す(
図2)。前端受スロッタ34は、前端スロッタ32の下方に対向配置されており、後端受スロッタ35は、後端スロッタ33の下方に対向配置されている。その他の部品については、前端受スロッタ34と、後端受スロッタ35は同様に構成される。
【0036】
前端受スロッタ34の外周には、その全周にわたって、前端スロッタ刃322に対向配置された刃受溝34aが備わるとともに、前端受スロッタ34と共に回転する前端屑落し手段341が配されている(
図2,6,7)。前端屑落し手段341は、継代fの移送路下流に配されている。
【0037】
同様に、後端受スロッタ35の外周には、その全周にわたって、後端スロッタ刃332に対向配置された刃受溝35aが備わるとともに、後端受スロッタ35と共に回転する後端屑落し手段351が配されている(
図2,6,7)。後端屑落し手段351は、継代の移送路上流に配されている。
【0038】
屑落し手段341,351は、前端屑落し手段341か、後端屑落し手段351の少なくともいずれか一方を指す。前端屑落し手段341は、その先端部分がシートAと接触して、
図4に示す切断屑f15を掛止して落とすために使用され、後端屑落し手段351は、その先端部分がシートAと接触して、
図4に示す切断屑f17を掛止して落とすために使用される。
【0039】
屑落し手段341,351は、その先端部分が、
図4に示す切断屑f15,f17に貫通してこれを掛止するものであれば特に限定はされない。例えば屑落し手段341,351は、二叉状の保持刃40や、針状の掛止針41である(
図6,7)。保持刃40や掛止針41は金属素材からなり、保持刃40は二叉形状であり、二叉状の両端の各々が刃の先端として受スロッタの半径方向外向きに配されている。掛止針41は針形状であり、針の先端が受スロッタの半径方向外向きに配される。
【0040】
保持刃40や、針状の掛止針41の基端部は、受スロッタ34,35の外周面に固定され、保持刃40や、針状の掛止針41の先端は、受スロッタ34,35の回転軸342,352を中心として放射状に上向きに配される。保持刃40や掛止針41の先端の形状は、例えば、鋭く尖った形状や、丸みを帯びた形状、直方体形状となっており、これにより切断屑f15,f17を貫通して掛止する。
【0041】
保持刃40または掛止針41は、所定の間隔をおいて設けた構成とされる。例えば、受スロッタ34,35の外周にわたり、1列配置か、2列並列配置か、または2列千鳥配置で各々の刃(または針)が配置される。1列配置とは、
図7に示すように周方向に沿って各々の刃(または針)が等間隔で1列に配置されたものである。2列並列配置とは、
図6に示すように周方向に沿って各々の刃(または針)が等間隔で2列が並列に配置されたものである。2列千鳥配置とは、周方向に沿って各々の刃(または針)が等間隔で2列が互い違いに配置されたものであり、例えば一方の列の刃(または針)の位置から45°ずらした位置に、他方の列の刃(または針)が配置されている(不図示)。
【0042】
屑落し手段341,351をこのような配置構成とすることで、切断屑f15,f17を容易に掛止し除去することができる。
【0043】
図5Bは、本実施形態の前端スロッタ刃322および前端屑落し受台323が配された前端スロッタ32の斜視図である。
【0044】
スロッタは屑落し受台を備える。具体的には前端スロッタ32に、前端屑落し受台323が備わり(
図2,5B)、後端スロッタ33に、後端屑落し受台333が備わる(
図2)。屑落し受台は、保持刃40または掛止針41を突き刺した際に、その刃先や針先を受けるための台(相手側)として使用される。保持刃40または掛止針41がシートAを貫通するため、屑落し受台には、例えばウレタンアンビル等の弾性体からなる。
【0045】
前端屑落し受台323は、前端スロッタ32の外周上において前端スロッタ刃322に重なるように前端スロッタ刃322の外側(OP側)に配されている(
図5B)。また前端屑落し受台323は、前端受スロッタ34に備わる前端屑落し手段341(保持刃40または掛止針41)に対面するように、前端屑落し手段341に対して対向配置される(
図2)。前端屑落し受台323は、前端スロッタ刃322の端部刃322dの外側周囲Sから離れた位置323aから周方向に配置されており(
図5B)、前端スロッタ32の全周には配置されていない。前端屑落し受台323は、前端コーナ部切断屑f15が保持刃40または掛止針41から逃げないよう背面から制限する。このように前端屑落し手段341と前端屑落し受台323によって、シートAを二方向から挟み込むように構成している。
【0046】
同様に、後端屑落し受台333は、後端スロッタ33の外周上において後端スロッタ刃332に重なるように後端スロッタ刃332の外側(OP側)に配されている(不図示)。また後端屑落し受台333は、後端受スロッタ35に備わる後端屑落し手段351(保持刃40または掛止針41)に対面するように、後端屑落し手段351に対して対向配置される(
図2)。後端屑落し受台333は、後端スロッタ刃332の端部刃332dの外側周囲から離れた位置から周方向に配置されており(不図示)、後端スロッタ33の全周には配置されていない。後端屑落し受台333は、後端コーナ部切断屑f17が保持刃40または掛止針41から逃げないよう背面から制限する。このように後端屑落し手段351と後端屑落し受台333によって、シートAを二方向から挟み込むように構成している。
【0047】
前端受スロッタ34の下流側の下方には、前端屑落しスクレーパ343、前端屑落しガイド344を備える(
図2)。前端屑落しスクレーパ343は、前端受スロッタ34の回転面に交差する所定の傾きで傾斜して設けられており、前端屑落しスクレーパ343の先端が前端受スロッタ34の外周面に当接している。同様にして、後端受スロッタ35の下流側の下方には、後端屑落しスクレーパ353を備える(
図2)。後端屑落しスクレーパ353は、後端受スロッタ35の回転面に交差する所定の傾きで傾斜して設けられており、後端屑落しスクレーパ353の先端が前端受スロッタ35の外周面に当接している。
【0048】
(本実施形態の製函機1による加工)
製函機1は、まず給紙ユニット11にてシートAを印刷ユニット側に送り出し、印刷ユニット12にてシートAに印刷をした後、スロッタ装置13にシートAを送りこむ。
【0049】
スロッタ装置13では、シートAが上流側から搬送されると、クラッシャにより、貼り合わされるシートAの板厚を薄くし、フラップカッタ31によりシートAから継代側部を切断する。この時、フラップカッタ31を回転させて、前端フラップカッタ刃311によって継代側部前端f2を切断し、後端フラップカッタ刃312は継代側部後端f3を切断する。このようにしてフラップカッタ刃311,312により、シートAがカットされて継代側部前端f2および継代側部後端f3が切断される。これと同時に、フラップカッタ31と同軸上の位置する第1押罫部材によって、シートAに罫線付与を施す。そしてシートAを続けて移送し、第2押罫部材36によってシートAに別の罫線付与を施す。
【0050】
その後、シートAは後端スロッタ33に送り込まれ、前端スロッタ32に送り込まれるが、後端スロッタ刃332と前端スロッタ刃322とがシートAを同時に切断できるよう、後端スロッタ33と、前端スロッタ32とは同期して回転している。これにより後端スロッタ刃332による切断と、前端スロッタ刃322による切断が行われる。
【0051】
前端スロッタ刃322は、前端受スロッタ34に形成された刃受溝34aとで送り込まれてくるシートAにスロットを形成する。前端スロッタ32では、
図5Aに示した刃322aによって、
図3に示す符号f7の箇所を切断する。それと同時に
図5Aに示した刃322bによって、符号f5の箇所を切断するとともに、切欠き322cによって符号f6の箇所を切断することなく残す。そして端部刃322dによって符号f8の箇所を切断する(
図3,5A)。
【0052】
これと同時に、後端スロッタ刃332は、後端受スロッタ35に形成された刃受溝35aとで送り込まれてくるシートAにスロットを形成する。後端スロッタ33では、図示しない端部刃によって
図3に示す符号f10の箇所を切断する。そしてDR側の刃(切欠きを有さない刃)によって、
図3に示す符号f11の箇所を切断する。それと同時にOP側の刃(切欠きを有する刃)によって、符号f12の箇所を切断するとともに、切欠きによって符号f13の箇所を切断することなく残す(
図3)。
【0053】
このようにして、後端スロッタ刃332により、後端側のスロット形成部f4を、その一部を切断せず繋がった状態で残すように切断し、前端スロッタ刃322により、前端側のスロット形成部f9を、その一部を切断せず繋がった状態で残すように切断する。
【0054】
さらに、これと同時に、後端スロッタ刃332の下方では、後端スロッタ刃332と後端屑落し受台333の回転に合わせて後端受スロッタ35が回転しており、後端受スロッタ35上の後端屑落し手段351の保持刃40や掛止針41の先端は、回転しながら、一部が繋がった状態の後端コーナ部切断屑f17(
図4)のf16の箇所で後端屑落し受台333と対面し、その部分を突き刺すように貫通して掛止する一方で、継代fでは貫通することなくシートAが通過する(
図3,4)。このようにして後端コーナ部切断屑f17を切断屑f17としてシートAから分離する。
【0055】
加えて、これと同時に、前端スロッタ刃322の下方では、前端スロッタ刃322と前端屑落し受台323の回転に合わせて前端受スロッタ34が回転しており、前端受スロッタ34上の前端屑落し手段341の保持刃40や掛止針41の先端は、回転しながら、一部が繋がった状態の前端コーナ部切断屑f15のf14の箇所で前端屑落し受台323と対面し、その部分を突き刺すように貫通して掛止する一方で、継代fでは貫通することなくシートAが通過する(
図3,4)。このようにして、前端コーナ部切断屑f15を切断屑f15としてシートAから分離する。
【0056】
本発明では、スロッタが屑落し受台を備えており、かつ屑落し受台は、スロッタの全周には配されず、スロッタの一部にだけ配されているため(
図5B)、切断屑の部分(f14やf16の箇所)だけを保持刃40または掛止針41で突き刺して掛止することができる(
図3,4)。一方で保持刃40または掛止針41は、継代fには貫通しないため、継代fに保持刃40または掛止針41の貫通痕が残ることがない。このようにして、シートAの端縁には継代fが形成される。なお、もしスロッタが屑落とし受台を備えない場合、シートAが逃げるため、シートAのどの部分も突き刺すことができない。
【0057】
その後、後端側の切断屑f17は、後端屑落し手段351に掛止されながら回転する(
図2)。切断屑f17は屑落しスクレーパ353の先端に接触し、なおも回転を続けることで、後端側の切断屑f17が後端屑落し手段351から剥がれ落とされる。同様に、前端側の切断屑f15は、前端屑落し手段341に掛止されながら回転する。切断屑f15は屑落しスクレーパ343の先端に接触し、なおも回転を続けることで、前端側の切断屑f15が前端屑落し手段341から剥がれ落とされる。このようにして、保持刃40や掛止針41といった、屑落し手段341,351に掛止された、前端側の継代側コーナ部切断屑f15や後端側の継代側コーナ部切断屑f17は、切断屑f15,f17として除去される。
【0058】
その後シートAは、送りロール37,38によって送り出されて、ダイカッタ14へ移送される。ダイカッタ14にてシートAに抜き加工を施し、次工程のグルア15にてシートAの継代fの糊付けエリアに糊付け加工を施し、フォルダ16にてシートAを折り曲げて接合する。その後、カウンタユニット17にてシートA(折り畳まれた状態の箱)を揃えて積み上げる。
【0059】
本発明は、上述したダブルスロッタ構成の装置の実施の形態に限定されるものではない。その他の実施の形態として、例えば、前端屑落し手段と後端屑落し手段および前端屑落し受台と後端屑落し受台をシングルスロッタに適宜配置した構成の装置でも同様に実現可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 製函機、
13 スロッタ装置、
31 フラップカッタ、
32 前端スロッタ(スロッタ)、
33 後端スロッタ(スロッタ)、
34 前端受スロッタ(受スロッタ)、
35 後端受スロッタ(受スロッタ)、
36 第2押罫部材、
37 送りロール、
38 送りロール、
311 前端フラップカッタ刃(フラップカッタ刃)、
312 後端フラップカッタ刃(フラップカッタ刃)、
322 前端スロッタ刃(スロッタ刃)、
323 前端屑落し受台(屑落し受台)、
332 後端スロッタ刃(スロッタ刃)、
333 後端屑落し受台(屑落し受台)、
341(40,41) 前端屑落し手段(保持刃、掛止針)、
343 前端屑落しスクレーパ(屑落しスクレーパ)、
344 前端屑落しガイド(屑落しガイド)、
351(40,41) 後端屑落し手段(保持刃、掛止針)、
353 後端屑落しスクレーパ(屑落しスクレーパ)、
354 後端屑落しガイド(屑落しガイド)、
A シート、
f 継代、
f2 継代側部前端、
f3 継代側部後端、
f4 前端側のスロット形成部(スロット形成部)、
f9 後端側のスロット形成部(スロット形成部)、
f15 前端コーナ部切断屑(切断屑)、
f17 後端コーナ部切断屑(切断屑)