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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】発泡ダクト及びその成形方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20220127BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20220127BHJP
   B60H 1/00 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
F24F13/02 A
F24F13/02 E
B29C49/04
B60H1/00 102L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017184657
(22)【出願日】2017-09-26
(65)【公開番号】P2019060523
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 正明
(72)【発明者】
【氏名】藤井 素晴
(72)【発明者】
【氏名】松原 礼宗
(72)【発明者】
【氏名】狩野 直也
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-104992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/02
B29C 49/04
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂がブロー成形されてなりエアコンユニットから供給される冷暖風を流通させるための発泡ダクトであって、
少なくとも開口端が略円形であり、少なくとも当該開口端近傍において、パーティングライン近傍の外周面が平坦面とされており、
前記平坦面は、パーティングラインを接点とする第1の接線に対応する平坦面と、パーティングラインから離間した位置を接点とする第2の接線に対応する平坦面とから構成され、略円形の断面形状において、これら接線で囲まれる領域が拡大されており、
パーティングライン近傍の内周面は平坦面を有していないことを特徴とする発泡ダクト。
【請求項2】
発泡樹脂の発泡倍率が2倍~4倍であり、平均肉厚が2mm~6mmであることを特徴とする請求項1記載の発泡ダクト。
【請求項3】
発泡溶融樹脂を一対の金型で挟み込んでブロー成形する発泡ダクトの成形方法であって、
前記発泡ダクトはエアコンユニットから供給される冷暖風を流通させるための発泡ダクトであり、
前記金型の断面形状をそれぞれ略半円形状とするとともに、パーティングラインに対応する互いの突き合わせ面近傍は断面直線状の平坦面とし、
前記断面直線状の平坦面は、パーティングラインを接点とする第1の接線に対応する平坦面と、パーティングラインから離間した位置を接点とする第2の接線に対応する平坦面とから構成され、
成形される発泡ダクトは、パーティングライン近傍の内周面に平坦面を有していないことを特徴とする発泡ダクトの成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の空調用ダクト等に用いられる発泡ダクトに関するものであり、さらには、その成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエアコンからの空気を通風させるための自動車用ダクトの製造方法としては、発泡溶融樹脂を分割金型で型締めして成形するブロー方法が広く採用されている。ブロー成形では、種々の形態のダクトを簡単に成形することができ、複雑な形状のダクトを量産することが可能である。
【0003】
また、前述のダクトにおいては、2以上のダクトを連結して配管を構築することも行われている。ダクトを繋ぎ合わせることで、多様な配管形態に対応することが可能である。
【0004】
例えば特許文献1には、ダクトの連結構造として、空気流通用の差込み口を一端部に形成したダクトと、差込み口の内側に設けられて該差込み口の形状を保持する補強部材と、空気流通用の受け口を形成した別部材とからなり、差込み口を受け口へ差込むことでダクトと別部材とを連結するようにしたダクト連結構造が開示されている。特許文献1に記載されるダクトの連結構造は、シールを施すことに主眼が置かれたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-38322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、発泡ダクトのブロー成形においては、パーティングラインにおいて発泡樹脂が押し出される形になり、その結果、パーティングライン近傍に肉厚の大きな部分が形成されることがある。図7は、断面円形の発泡ダクト101において、パーティングラインPL近傍に形成される肉厚部102を示すものである。
【0007】
ブロー成形で発泡ダクト101を成形する場合、図7(A)に示すように一対の金型111,112間にパリソンPを供給し、図7(B)及び図7(C)に示すように型締をして、パリソン内にエアーを吹き込んでこれを賦形する。賦形に際しては、金型111,112の対向面111a,112a間にパリソンPが挟みこまれ、ピンチオフされるが、この時、挟み込まれたパリソン(溶融樹脂)が押し潰されて押し出される形になる。その結果、図7(D)に示すように、金型111,112の内側に向かって押し出された樹脂により前記肉厚部102が形成される。
【0008】
前記のような肉厚部102が形成されると、発泡ダクト101の内面形状が本来の円形ではなくなり、他のダクトと組み合わせたり、レジスターを装着する際に、嵌合不良が発生するという問題がある。
【0009】
このような不都合を解消するために、例えば図8に示すように、パーティングラインPLが外側に突出するように突起部を設けて成形することが考えられるが、この場合には、パーティングラインPLに沿ってダクト内面に溝部103が形成される結果となり、ここからエア漏れが発生するという不都合が生ずる。
【0010】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、レジスターや他のダクト等を容易に嵌合装着することが可能で、エア漏れが発生することもない、嵌合性の良好な発泡ダクトを提供することを目的とし、さらには、その成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的を達成するために、本発明の発泡ダクトは、発泡樹脂がブロー成形されてなりエアコンユニットから供給される冷暖風を流通させるための発泡ダクトであって、少なくとも開口端が略円形であり、少なくとも当該開口端近傍において、パーティングライン近傍の外周面が平坦面とされており、前記平坦面は、パーティングラインを接点とする第1の接線に対応する平坦面と、パーティングラインから離間した位置を接点とする第2の接線に対応する平坦面とから構成され、略円形の断面形状において、これら接線で囲まれる領域が拡大されており、パーティングライン近傍の内周面は平坦面を有していないことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の発泡ダクトの成形方法は、発泡溶融樹脂を一対の金型で挟み込んでブロー成形する発泡ダクトの成形方法であって、前記発泡ダクトはエアコンユニットから供給される冷暖風を流通させるための発泡ダクトであり、前記金型の断面形状をそれぞれ略半円形状とするとともに、パーティングラインに対応する互いの突き合わせ面近傍は断面直線状の平坦面とし、前記断面直線状の平坦面は、パーティングラインを接点とする第1の接線に対応する平坦面と、パーティングラインから離間した位置を接点とする第2の接線に対応する平坦面とから構成され、成形される発泡ダクトは、パーティングライン近傍の内周面に平坦面を有していないことを特徴とする。
【0013】
例えば円筒形状の発泡ダクトにおいて、パーティングライン近傍の少なくとも外周面を平坦面とすることで、溶融樹脂の内方への押し出しが緩和され、肉厚部が形成され難くなる。また、パーティングラインを後退されることもないため、ダクト内面に溝部が形成されることもない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、嵌合性に優れ、レジスターや他のダクト等を容易に嵌合装着することが可能で、エア漏れが発生することのない発泡ダクトを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】発泡ダクトの一例を示す概略斜視図である。
図2】発泡ダクトの断面形状の一例を示す図である。
図3図2の発泡ダクトのパーティングライン近傍を拡大して示す図である。
図4図2,3に示す発泡ダクトの断面形状を説明する図である。
図5】発泡ダクトの断面形状の他の例を模式的に示す図である。
図6】発泡ダクトを成形する金型の一例を示す図である。
図7】従来の発泡ダクトの断面形状が形成される過程を示すものであり、(A)はパリソン供給状態、(B)は型締開始状態、(C)は型締状態、(D)は肉厚部が形成された発泡ダクトの断面形状を示す図である。
図8】従来の発泡ダクトの断面形状の他の例を示すであり、内面に溝部が形成された発泡ダクトの断面形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した発泡ダクト及びその成形方法の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
本実施形態の発泡ダクトは、例えば断面円形の発泡ダクトであり、エアコンユニットから供給される冷暖風を所望の部位へ流通させるための軽量な自動車用ダクトである。図1は、発泡ダクト1の一形態例を示すものであり、主流路部2から分岐する形で、レジスター嵌合部3,3が形成されている。本実施形態の場合、主流路2、レジスター嵌合部3,3のいずれもが円筒形状に成形されているが、レジスター嵌合部3,3の開口部が円形であれば本発明を適用可能であり、他の部分は円筒形状でなくともよい。また、前記の通りレジスター嵌合部3,3の開口部が円形である場合に本発明が適用されるが、この場合の円形とは、真円形状に限られるものではなく、例えば楕円形状等も含まれる。
【0018】
係る発泡ダクト1は、例えば発泡剤を混合させた熱可塑性樹脂を分割金型で型締めし、ブロー成形することで成形される。使用する前記熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレン系樹脂等を挙げることができ、1~20質量%のポリオレフィン系重合体や5~40質量%の水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーを混合させたブレンド樹脂等を用いることもできる。
【0019】
発泡剤としては、物理発泡剤、化学発泡剤及びその混合物が挙げられる。物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、及び、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、更には、それらの超臨界流体を適用することができる。超臨界流体としては、二酸化炭素、窒素等を用いて作ることが好ましく、窒素であれば臨界温度-149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上、二酸化炭素であれば臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすることで作ることができる。
【0020】
ブロー成形により形成される発泡ダクトの発泡倍率は任意であり、複数の気泡セルを有する独立気泡構造(独立気泡率が70%以上)により構成される。本発明は、発泡倍率が高く、ある程度の厚みを有する発泡ダクトの成形において効果的であり、係る観点から、発泡倍率は2~4倍、好ましくは2.5倍以上(例えば2.8倍)、厚みは2mm~6mm、好ましくは3mm以上(例えば4mm)とする場合に効果が高い。厚み方向における気泡セルの平均気泡径は例えば300μm未満、好ましくは、100μm未満である。
【0021】
前述のような発泡樹脂をブロー成形することで形成される発泡ダクト1においては、パーティングラインの近傍において樹脂が内面側に押し出され、パーティングライン近傍に肉厚の大きな肉厚部が形成される。肉厚部が形成されると、発泡ダクトの内面形状が変わってしまうことになり、嵌合不良の原因となる。あるいは、これを解消するために、パーティングラインが外側に突出するように突起部を設け、パーティングラインを円形の内壁面から後退させると、パーティングラインに沿ってダクト内面に溝部が形成され、ここからエア漏れが発生する。
【0022】
そこで、本実施形態の発泡ダクト1においては、レジスター嵌合部3,3の少なくとも開口部近傍において、パーティングライン近傍の外周面に平坦面部を形成することで、これを解消する。
【0023】
レジスター嵌合部3の開口部近傍におけるパーティングライン近傍部の形態としては、例えば、図2及び図3に示すように、内面形状は円形のままとし、外面のみを平坦面(直線状部)とすることが考えられる。
【0024】
図2,3に示す断面形状を説明すると、本例では、レジスター嵌合部3の断面の基本的な形状は円形のままとし、パーティングラインPL近傍において、形状を直線状に拡大する形としている。これを詳細に説明したものが図4である。
【0025】
すなわち、本例では、円形のレジスター嵌合部3の断面形状において、パーティングラインPLを接点とする接線(図中、点Aを接点とする接線S1)と、パーティングラインPLから離間した点を接点とする接線(図中、点Bを接点とする接線S2)を引き、これら接線S1と接線S2で囲まれる領域(図中、破線領域)を拡大する形としている。したがって、レジスター嵌合部3は、パーティングラインPLの近傍において、その外面に接線S1に対応する平坦面31と、接線S2に対応する平坦面32を有することになり、これら平坦面によって直線状部が構成されることになる。
【0026】
図2乃至図4に示すような断面形状とすることにより、パーティングラインPLにおいて樹脂容量が拡大されることになる。具体的には、図4の斜線で示す領域が拡大される。この拡大された領域において、パーティングラインPL近傍の樹脂の押し出しが吸収され、肉厚部の形成が抑制される。
【0027】
ただし、前記形態において、接線S1に対応する平坦面31の寸法があまり大きくあまり大きくなり過ぎると、発泡ダクト1の形状が大きく変わることになるので、樹脂の押し出しを吸収し得る最低限での変更とすることが好ましい。例えば、発泡ダクト1の半径Rが50mmである場合、平坦面31のパーティングラインPLからの寸法L1は、10mm程度とすることが好ましい。半径Rと寸法L1との比(L1/R)は、0.05~0.4であることが好ましく、0.1~0.3であることがより好ましい。
【0028】
なお、パーティングライン近傍の形状としては、これに限られるものではなく、種々の変更が可能である
【0029】
図5は、レジスター嵌合部3の開口部近傍の断面形状の他の例を示すものである。本実施形態の発泡ダクト1においては、レジスター嵌合部3は円筒形に成形されており、開口部近傍の断面形状は円形である。本例では、このような円形の断面形状の一部を形状変更し、前記肉厚部や溝部が形成されないようにしている。
【0030】
具体的には、円形の断面形状を有するレジスター嵌合部3において、パーティングラインPLの近傍部分を直線状部としている。本実施形態の場合、図5に示すように、パーティングラインPLの近傍部分をストレート形状(内面と外面のいずれもが直線状の平坦面となるような直線形状)としている。このストレート形状部33は、パーティングラインPLを挟んで両側に連ねるように形成されており、2箇所のパーティングラインPLのいずれにおいても形成されている。
【0031】
ストレート形状部33のパーティングラインPLからの長さL2は、任意に設定することができるが、長さLがあまり大きすぎると断面円形から形状が大きく変わることになり、好ましくない。したがって、前記長さLは3mm~20mm程度(例えば10mm)とすることが好ましい。
【0032】
レジスター嵌合部3,3の少なくとも開口部近傍に前記ストレート形状部33を形成すると、パーティングラインPLにおいて押し出された樹脂が肉厚部を形成することなく、内面形状が維持される。したがって、レジスター等の嵌合を容易に行うことができる。また、前記ストレート形状部33を形成することで、パーティングラインPL近傍に溝部が形成されることもなく、エア漏れ等の心配もない。
【0033】
前述の発泡ダクト1は、発泡溶融樹脂を半円形状のキャビティを有する一対の金型で挟み込んでブロー成形することにより成形される。この時、例えば図2図4に断面形状を示す発泡ダクト1を成形するには、図4に示すパーティングラインPL近傍の平坦面31,32に対応して、図6に示すように、各金型11,12の円弧の一部(互いの付き合わせ面近傍部分)を直線状とすればよい。各金型11,12に平坦面31に対応する平坦面11a,12aと、平坦面32に対応する平坦面11b,12bを形成しておけば、図4に示す形状での成形が可能である。
【0034】
本実施形態の発泡ダクトにおいては、パーティングラインに沿って直線状部を形成しているので、樹脂の内面側への押し出しが緩和され、内壁に突出する肉厚部が形成されることがない。その結果、レジスターや他のダクト等との嵌合を容易に行うことができる。また、嵌合した時に隙間等が形成されることもないので、エア漏れが発生することもない。
【0035】
以上、本発明を適用した実施形態についてを説明してきたが、本発明が前述の実施形態に限られるものでないことは言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 発泡ダクト
2 主流路部
3 レジスター嵌合部
11,12 金型
31,32 平坦面
33 ストレート部
PL パーティングライン
A,B 接点
S1 第1の接線
S2 第2の接線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8