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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】半導体ウェハ容器
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20220127BHJP
   B65D 85/30 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
H01L21/68 V
B65D85/30 500
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017071320
(22)【出願日】2017-03-31
(65)【公開番号】P2018174222
(43)【公開日】2018-11-08
【審査請求日】2020-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西島 正敬
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 賢一
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス クリスティー
【審査官】馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-105116(JP,A)
【文献】特開2003-168731(JP,A)
【文献】特開2002-002695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65D 85/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの略平面で且つ同一形状の略正方形の外殻を上下方向で重ね合せて1枚の半導体ウェハを収納する半導体ウェハ容器であって、
前記外殻は、その本体の他、ウェハ保持手段及び外壁形成手段を有し、
前記ウェハ保持手段は、ウェハの上下面を実質的に非接触で収容し、固定保持するためのものであり、半導体ウェハの外周縁と下側から線接触にて接触する外殻の上面に形成される傾斜面と、半導体ウェハの外周縁と上側から面接触にて接触する外殻の下面に形成されるウェハ接触面と、外殻の上下両面の夫々中央部に形成されるウェハの上半分又は下半分を収容し得る底浅の空隙部とを有してなり、
前記外壁形成手段は、2つの外殻を上下方向で重ね合せて半導体ウェハを収納したときに、収容された半導体ウェハの外側に閉じられた外壁を形成するように外殻の下面の外周縁に形成される垂下り部を有してなり、そして
前記外殻は、更に位置決め手段を有し、該位置決め手段は、互いに係合可能なボスとボス穴を、外殻の上下面の4隅に、そして2つの外殻を同じ向きで上下方向で重ね合せたときに一方の外殻のボスが他方の外殻のボス穴に係合することができる配置で設けており、
前記半導体ウェハ容器は、2つの外殻を上下方向で重ねそしてその上方の外殻を上下反転し重ね合せたとき、容器内に収容されるウェハについて面対称となる外形を有し、かつ、前記ボスと前記ボス穴を、外殻の上下面側にそれぞれ、そして該上方の外殻を上下反転し重ね合せたとき、一方の外殻のボスが他方の外殻のボス穴に係合することができる配置で設けてなる、半導体ウェハ容器。
【請求項2】
前記傾斜面は、外殻の上面に等間隔で4箇所形成される請求項1に記載の半導体ウェハ容器。
【請求項3】
前記ウェハ接触面における半導体ウェハ外周縁との接触幅は、0.5mm乃至1.5mmの範囲である請求項1又は請求項2に記載の半導体ウェハ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハの上下面を実質的に非接触で収容することができる、2つの略平面で且つ同一形状の外殻を上下方向で重ね合せることにより形成される半導体ウェハ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハをテスト・パッケージング等の工程へ輸送する際、複数枚のウェハを積み重ねるコインスタック式(横置き)搬送容器とウェハの周縁部を縦に支持する支持溝を複数形成する縦置き搬送容器が一般的に使用されている。
ただ、半導体ウェハの開発及びその立上げ時の製造においては、様々な最終製品の仕様や要求性能に対応するためや少量ロットでの生産になるため、そのウェハを一枚かぎり収納する個別容器(シングルジッパー)が使用される場合が多い。
【0003】
このような目的に使用されるウェハの個別容器として、底部と蓋部を区別する必要が無いように設計されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1に記載の個別容器は、一対の外殻を底部と蓋部とに使い分け、該一対の外殻の開口を互いに向き合わせた状態で、半導体ウエハを対のシート間に挟んで収納する容器である。
特許文献1の明細書には、外殻の板面に、内部にウェハの収納空間を形成する内側立上り部とその周囲に容器の外側立上り部を設けて衝撃吸収用の空間を形成させ、ウェハを容器に加わる衝撃から保護すると述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】再表2004/087535公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の容器は、外部衝撃からのウェハ保護に着眼点を置いているだけであるため収納するウェハ表面のケアが不十分であり、具体的には、該文献に記載の容器が採用する、層間紙で挟み込んでウェハを保護するという構成では、イメージセンサー表面のカバーガラスや3DS-IC構造を持つウェハの表面保護には対応することができない。それらのウェハ表面はマイクロバンプの形成やTSV端子の露出等で非常に繊細な構造を有していることからも、保管や搬送時においては汚染やキズ付着防止のため部材との接触を回避しなければならない。
ウェハと直接接触する部材(層間紙や容器自体)がウェハを擦り、キズやワレ等による破損、発塵、そして化学成分によるウェハへの汚染が問題視されていることからも、非接触状態でウェハを保持しなければならず、量産工程で使用されている複数枚の収納が可能な縦置き容器を使用せざるを得ない状況もある。しかし、その縦置き容器においては、容器体積が大きくなってしまう関係から、保管スペースや輸送コストの問題、そして薄化ウェハではその保持力から破損する課題もある。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決し得る、ウェハの上下面を実質的に非接触で収容することができる、2つの略平面で且つ同一形状の外殻を上下方向で重ね合せることにより形成される半導体ウェハ容器の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、2つの略平面で且つ同一形状の外殻を上下方向で重ね合せて1枚の半導体ウェハを収納する半導体ウェハ容器において、該容器を構成する外殻の上面に、半導体ウェハの外周縁と下側から線接触にて接触する傾斜面を形成し、外殻の下面に、半導体ウェハの外周縁と上側から面接触にて接触するウェハ接触面を形成し、外殻の上下両面の夫々中央部にウェハの上半分又は下半分を収容し得る底浅の空隙部を形成し、2つの外殻を上下方向で重ね合せて半導体ウェハを収納したときに、収容された半導体ウェハの外側に閉じられた外壁を形成する垂下り部を外殻の下面の外周縁に形成すると、該半導体ウェハ容器は、2つの外殻を上下方向で重ね合せて半導体ウエハを収納した際、上下面を実質的に非接触で半導体ウェハ収容することができ、これにより、両面に回路が形成された半導体ウェハにおいても、保管や搬送時の汚染やキズ付着を防止でき、また、ゴミや埃の侵入・付着を防止できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
従って、本発明は、
[1]2つの略平面で且つ同一形状の外殻を上下方向で重ね合せて1枚の半導体ウェハを収納する半導体ウェハ容器であって、
前記外殻は、その本体の他、ウェハ保持手段及び外壁形成手段を有し、
前記ウェハ保持手段は、ウェハの上下面を実質的に非接触で収容し、固定保持するためのものであり、半導体ウェハの外周縁と下側から線接触にて接触する外殻の上面に形成される傾斜面と、半導体ウェハの外周縁と上側から面接触にて接触する外殻の下面に形成されるウェハ接触面と、外殻の上下両面の夫々中央部に形成されるウェハの上半分又は下半分を収容し得る底浅の空隙部とを有してなり、
前記外壁形成手段は、2つの外殻を上下方向で重ね合せて半導体ウェハを収納したときに、収容された半導体ウェハの外側に閉じられた外壁を形成するように外殻の下面の外周縁に形成される垂下り部を有してなる、半導体ウェハ容器、
[2]前記外殻は、更に位置決め手段を有し、該位置決め手段は、互いに係合可能なボスとボス穴を、外殻の表面上において外殻の中心を通る線について線対称位置に、そして2つの外殻を上下方向で重ね合せたときに、一方の外殻のボスが他方の外殻のボス穴に係合することができる配置で設けている、前記[1]記載の半導体ウェハ容器、
[3]前記半導体ウェハ容器は、2つ外殻を上下方向で重ねそしてその上方の外殻を上下反転し重ね合せたとき、容器内に収容されるウェハについて面対称となる外形を有し、かつ、前記ボスと前記ボス穴を、外殻の上下面側にそれぞれ、そして該上方の外殻を上下反転し重ね合せたとき、一方の外殻のボスが他方の外殻のボス穴に係合することができる配置で設けてなる、前記[2]記載の半導体ウェハ容器、
[4]前記傾斜面は、外殻の上面に等間隔で4箇所形成される前記[1]乃至前記[3]の何れか1つに記載の半導体ウェハ容器、
[5]前記ウェハ接触面における半導体ウェハ外周縁との接触幅は、0.5mm乃至1.5mmの範囲である前記[1]乃至前記[4]の何れか1つに記載の半導体ウェハ容器
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ウェハの上下面を実質的に非接触で収容することができ、これにより、両面に回路が形成された半導体ウェハにおいても、保管や搬送時の汚染やキズ付着を防止でき、また、ゴミや埃の侵入・付着を防止できる、2つの略平面で且つ同一形状の外殻を上下方向で重ね合せることにより形成される半導体ウェハ容器が提供される。
本発明の半導体ウェハ容器は、マイクロバンプの形成やTSV端子の露出等で非常に繊細な構造を有する半導体ウェハ表面、例えば、イメージセンサー表面のカバーガラスや3DS-IC構造を持つウェハの表面を保管や搬送時において保護することができるため有利に使用し得る。
【0010】
また、本発明の半導体ウェハ容器は、好ましい態様において、位置決め手段としてのボスとボス穴を有し、更に、該ボスとボス穴を、外殻の上下面側にそれぞれ、そして該上方の外殻を上下反転し重ね合せたとき、一方の外殻のボスが他方の外殻のボス穴に係合することができる配置で設けられる。
上記の半導体ウェハ容器は、直接ウェハを容器から移動させることなく、上方の外殻を上下反転し重ね合せるだけで、一方の外殻のボスが他方の外殻のボス穴に係合してウェハを固定でき、これにより、ウェハの表裏両面に形成された回路形成面を観察できるという特長を有する。
結果として、上記の半導体ウェハ容器は、ウェハの表裏両面の検査観察を、非接触状態を常に確保しつつ、自動化設備における容器自体のハンドリングにより実施することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の半導体ウェハ容器を構成する外殻の外観図であって、1-Aは上面図を示し、1-Bは下面図を示し、1-Cは下面図の部分拡大図を示す。
図2】2つの外殻を上下方向で重ね合せて半導体ウェハを収納する際の本発明の半導体ウェハ容器の組立図を示す。
図3】本発明の半導体ウェハ容器の部分端面図であって、3-Aは、図2に示されるA-A´で切断した際の端面形状を示し、3-Bは、図2に示されるB-B´で切断した際の端面形状を示し、3-Cは、図2に示されるC-C´で切断した際の端面形状を示す。3-Dは、3-Aの部分拡大図を示す。
図4】本発明の半導体ウェハ容器において、上方の外殻を上下反転して重ね合せて半導体ウェハを収納する際の組立図を示す。
図5】上方の外殻を上下反転して重ね合せて半導体ウェハを収納する際の本発明の半導体ウェハ容器の部分端面図であって、5-Aは、図4に示されるD-D´で切断した際の端面形状を示し、5-Bは、図4に示されるE-E´で切断した際の端面形状を示し、5-Cは、図4に示されるF-F´で切断した際の端面形状を示す。
図6】本発明の半導体ウェハ容器の部分端面図であって、6-Aは、1つの外殻をG-G´で切断した際の端面形状を示し、6-Bは、上下方向で重ね合せた2つの外殻をG-G´で切断した際の端面形状を示し、6-Cは、上方の外殻を上下反転して重ね合せた2つの外殻をG-G´で切断した際の端面形状を示す。
図7】本発明の半導体ウェハ容器におけるボスとボス穴が係合する際の係合状態を説明する図であって、7-Aは、2つの外殻を上下方向で重ね合せた際のボスとボス穴の係合状態を示し、7-Bは、上方の外殻を上下反転して重ね合せた際のボスとボス穴の係合状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、2つの略平面で且つ同一形状の外殻を上下方向で重ね合せて1枚の半導体ウェハを収納する半導体ウェハ容器であって、
前記外殻は、その本体の他、ウェハ保持手段及び外壁形成手段を有し、
前記ウェハ保持手段は、ウェハの上下面を実質的に非接触で収容し、固定保持するためのものであり、半導体ウェハの外周縁と下側から線接触にて接触する外殻の上面に形成される傾斜面と、半導体ウェハの外周縁と上側から面接触にて接触する外殻の下面に形成されるウェハ接触面と、外殻の上下両面の夫々中央部に形成されるウェハの上半分又は下半分を収容し得る底浅の空隙部とを有してなり、
前記外壁形成手段は、2つの外殻を上下方向で重ね合せて半導体ウェハを収納したときに、収容された半導体ウェハの外側に閉じられた外壁を形成するように外殻の下面の外周縁に形成される垂下り部を有してなる、半導体ウェハ容器に関する。
【0013】
本発明の半導体ウェハ容器を構成する外殻は、熱可塑性樹脂を射出成形・真空成形・圧空成形などで一体成形することにより製造することができる。
上記の熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS 系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフタルアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、液晶ポリマー系樹脂及びポリエーテルエーテルケトン系樹脂等が挙げられ、ポリプロピレン系樹脂及びポリカーボネート系樹脂等が好ましい。
【0014】
また、本発明の半導体ウェハ容器を構成する外殻は、静電気対策を施した導電性(帯電防止性)の熱可塑性樹脂により形成することが好ましい。導電性の熱可塑性樹脂としては、導電性フィラーを添加した熱可塑性樹脂やポリマーアロイ処理した熱可塑性樹脂等が挙げられる。導電性フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイトカーボン、グラファイト、炭素繊維、金属粉末、金属繊維、金属酸化物の粉末、金属コートした無機質微粉末、有機質微粉末や繊維等が挙げられる。ポリピロールやポリアニリン等の導電性ポリマーで表面を被覆させることが帯電防止や透明性の点で有利である。
本発明の半導体ウェハ容器が収容し得る半導体ウェハのサイズとしては、特に限定されるものではなく、公称5インチ、6インチ、8インチ、12インチ等のサイズが挙げられ、本発明の半導体ウェハ容器は、半導体ウェハのサイズに応じた大きさに形成される。
【0015】
本発明の半導体ウェハ容器を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の半導体ウェハ容器を構成する外殻の外観図を示す。
図1中の1-Aで示されるように、外殻2の上面は略正方形であり、該面には、半導体ウェハの外周縁と下側から線接触にて接触する傾斜面3が等間隔で4箇所形成されており、外殻2の中央部には、隆起部13が形成され、隆起部13から外殻2の周囲へリブ状突条12が延びている。また、外殻2の上面の4隅には、ボス5とボス穴6が形成されている。
図1中の1-Bで示されるように、外殻2の下面も略正方形であり、該面には、2つの外殻2を上下方向で重ね合せたときに、半導体ウェハ容器の外壁を形成する垂下り部16、放射状のリブ状突条14及び同心状のリブ状突条15が形成され、外殻2の下面の4隅には、ボス7とボス穴8が形成されている。
また、1-Bの部分拡大図1-Cで示されるように、外殻2の下面には、半導体ウェハの外周縁と上側から面接触にて接触するウェハ接触面4が形成されている。
【0016】
図2は、2つの外殻2を上下方向で重ね合せて半導体ウェハ9を収納する際の本発明の半導体ウェハ容器の組立図を示す。
図2で示されるように、本発明の半導体ウェハ容器は、半導体ウェハ9を挟んで、2つの外殻2を上下方向で重ね合せることで半導体ウェハ9を収納する。
図2に示されるA-A´で切断した際の端面形状を図3中の3-Aに示した。3-Aに示されるように、半導体ウェハ9は、半導体ウェハ9の外周縁と下側から線接触にて接触する傾斜面3と、半導体ウェハ9の外周縁と上側から面接触にて接触するウェハ接触面4に挟まれ、これにより、半導体ウェハ9の上半分を収容し得る底浅の空隙部10及び半導体ウェハ9の下半分を収容し得る底浅の空隙部11が形成され、結果として、半導体ウェハ9は、上下面を実質的に非接触で収容され、固定保持される。
また、3-Aの部分拡大図3-Dで示されるように、半導体ウェハ9の外周縁は、上側から面接触にてウェハ接触面4と接触しており、ウェハ接触面4における半導体ウェハ外周縁との接触幅aは、0.5mm乃至1.5mmの範囲であるのが好ましい。また、半導体ウェハ9の上半分を収容し得る底浅の空隙部10における上側の外殻2と半導体ウェハ9との間の距離bは、1.0mm乃至2.0mmの範囲であるのが好ましい。ウェハの下半分を収容し得る底浅の空隙部11における下側の外殻2と半導体ウェハ9との間の距離cは、4.0mm乃至5.0mmの範囲であるのが好ましいが、隆起部13が形成されている部位における距離は、2.0mm乃至3.0mmの範囲であるのが好ましい。
また、外殻2の下面の外周縁には、垂下り部16が形成され2つの外殻を上下方向で重ね合せた際に、収容された半導体ウェハの外側に閉じられた外壁を形成する。
【0017】
図2に示されるB-B´で切断した際の端面形状を図3中の3-Bに示した。3-Bに示される端面形状から明らかなように、B-B´で示される切断位置には、半導体ウェハ9の外周縁と下側から線接触にて接触する傾斜面3は形成されているものの、半導体ウェハ9の外周縁と上側から面接触にて接触するウェハ接触面4は形成されていない。
図2に示されるC-C´で切断した際の端面形状を図3中の3-Cに示した。3-Cに示される端面形状から明らかなように、C-C´で示される切断位置には、半導体ウェハ9の外周縁と上側から面接触にて接触するウェハ接触面4は形成されているものの、半導体ウェハ9の外周縁と下側から線接触にて接触する傾斜面3は形成されていない。
図3中の3-B及び3-Cで示されるように、傾斜面3及びウェハ接触面4は、何れも半導体ウェハ9の外周縁の全体に亘って形成されているわけではなく、欠損部分が存在する。このような欠損部分は、半導体ウェハ9を容器から出し入れする際の自動移載装置のアームの挿入口または作業オペレータのハンドリングの把持口となり得る。
【0018】
本発明の半導体ウェハ容器は、位置決め手段としてのボスとボス穴を有し、更に、該ボスとボス穴を、外殻の上下面側にそれぞれ、そして該上方の外殻を上下反転し重ね合せたとき、一方の外殻のボスが他方の外殻のボス穴に係合することができる配置で設けられ得る。
図4は、2つの外殻のうち上方の外殻を上下反転して上下方向で重ね合せて半導体ウェハを収納する際の本発明の半導体ウェハ容器の組立図を示す。
ここで、半導体ウェハ9は、上下反転した上方の外殻2と、上下反転していない下方の外殻2の間に挟まれて収納される。
図4に示されるD-D´で切断した際の端面形状を図5中の5-Aに示した。5-Aに示されるように、半導体ウェハ9は、下方の外殻2に形成された傾斜面3と、上方の外殻2に形成された傾斜面3との間に挟まれ、これにより、半導体ウェハ9は、傾斜面3との線接触により、その両面が固定されることとなる。この場合、半導体ウェハ9の上方及び下方には、底浅の空隙部11が形成されることとなる。そして、これにより、半導体ウェハ9の表裏両面に形成された回路形成面を観察することができる。尚、上記による半導体ウェハ9の保持・固定は、半導体ウェハ9の両面の外縁部の1部を、傾斜面3との線接触のみにより行うものであるため、半導体ウェハ9を搬送することを想定するならば、必ずしも十分なものではない。
尚、上記の重ね合せの場合、外殻2の下面の外周縁に形成された垂下り部16は、外壁を形成するものとはならない。
【0019】
図4に示されるE-E´で切断した際の端面形状を図5中の5-Bに示した。5-Bに示される端面形状から明らかなように、E-E´で示される切断位置における端面形状は、D-D´で示される切断位置における端面形状と同様に、半導体ウェハ9は、下方の外殻2に形成された傾斜面3と、上方の外殻2に形成された傾斜面3との間に挟まれて固定されている。
図4に示されるF-F´で切断した際の端面形状を図5中の5-Cに示した。5-Cに示される端面形状から明らかなように、F-F´で示される切断位置には、上方及び下方の両方の外殻2に、半導体ウェハ9の外周縁と線接触にて接触する傾斜面3は形成されていない。
【0020】
図4で示される重ね合せは、ウェハの表裏両面の検査観察を、非接触状態を常に確保しつつ、自動化設備における容器自体のハンドリングにより実施することを可能とする。尚、該重ね合せは、半導体ウェハ9を搬送することを想定するならば、キズやワレ等による破損を十分に回避し得る構成とはなっていない。
本発明の半導体ウェハ容器は、位置決め手段として、互いに係合可能なボスとボス穴が、外殻の表面上において外殻の中心を通る線について線対称位置に、そして2つの外殻を上下方向で重ね合せたときに、一方の外殻のボスが他方の外殻のボス穴に係合することができる配置で設けられ得る。
図6は、本発明の半導体ウェハ容器を構成する外殻の部分端面図であって、ボス5及びボス穴6が存在するG-G´の位置で切断した際の端面形状を示す。
そして、図6中の6-Aは、1つの外殻2をG-G´で切断した際の端面形状を示し、6-Bは、上下方向で重ね合せた2つの外殻2をG-G´で切断した際の端面形状を示し、6-Cは、上方の外殻を上下反転して重ね合せた2つの外殻2をG-G´で切断した際の端面形状を示す。
【0021】
6-Aに示されるように、ボス5が形成された箇所の裏側には、ボス穴8が形成され、ボス穴6が形成された箇所の裏側には、ボス7が形成されている。
6-Bに示される、2つの外殻2を上下方向で重ね合せた際の係合状態は、図7中の7-Aで説明される。即ち、7-Aに示されるように、2つの外殻2を同じ向きで上下に重ね合せる場合、上方の外殻2のボス穴8が下方の外殻2のボス5と係合し、これにより位置決めがなされる。
また、6-Cに示される、2つの外殻2のうち上方の外殻2のみを上下反転させて上下方向で重ね合せた際の係合状態は、図7中の7-Bで説明される。即ち、7-Bに示されるように、2つの外殻2のうち上方の外殻2のみを上下反転させて上下方向で重ね合せる場合、上方の外殻2のボス穴6が下方の外殻2のボス5と係合し且つ上方の外殻2のボス5が下方の外殻2のボス穴6と係合し、これにより位置決めがなされる。
【0022】
本発明の半導体ウェハ容器は、搬送中に2つの外殻が分離しないように該2つの外殻を結合し、そして、搬送後には容易に外すことができる留め具を備えることが好ましい。
上記留め具としては、上記の目的が達成されるものであれば特に限定されない。
【0023】
本発明のウェハ容器は、上述の構成を備えることで、ウェハの上下面を実質的に非接触で収容することができ、これにより、両面に回路が形成された半導体ウェハにおいても、保管や搬送時の汚染やキズ付着を防止でき、また、ゴミや埃の侵入・付着を防止できる、2つの略平面で且つ同一形状の外殻を上下方向で重ね合せることにより形成される半導体ウェハ容器が提供される。
本発明の半導体ウェハ容器は、マイクロバンプの形成やTSV端子の露出等で非常に繊細な構造を有する半導体ウェハ表面、例えば、イメージセンサー表面のカバーガラスや3DS-IC構造を持つウェハの表面を保管や搬送時において保護することができるため有利に使用し得る。
【0024】
また、本発明の半導体ウェハ容器は、2つの外殻のうち、上方の外殻のみを上下反転して重ね合せて半導体ウェハを収容することで、ウェハの表裏両面に形成された回路形成面を観察できるという特長を有する。
また、本発明の半導体ウェハ容器は、2つの同一の形状の外殻を同一方向で上下に重ね合せるものであるため、該容器を段組みすることが可能であり、そしてこれを用いることで、複数の半導体ウェハを同時に保管・搬送することができる。
【実施例
【0025】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1
ポリカーボネート樹脂100重量部に帯電防止剤15重量部を添加した帯電防止性プラスチックスのペレットを用い、射出成形にて図1で示される外観を有する透明な外殻を形
成した。外殻は、直径300mmの半導体ウェハが収容できる1辺32cmの略正方形の板状の形状を有し、ほぼ全体に渡って2mmの厚さを有していた(板面にゆがみが発生しないように、リブ状突条12(幅2mm高さ(厚さ)2mm)、隆起部13(高さ(厚さ)2mmで直径21cmの円盤状の隆起)、放射状のリブ状突条14(幅2mm高さ(厚さ)2mm)及び同心状のリブ状突条15(幅2mm高さ(厚さ)2mm)等が形成されている。)。
上記で形成した2つの外殻を同一方向で上下に重ね合せて直径300mmの半導体ウェハを収容すると、ウェハ接触面4における半導体ウェハ外周縁との接触幅aは、平均で1.0mmであり、半導体ウェハの上半分を収容し得る底浅の空隙部10における上側の外殻と半導体ウェハとの間の距離bは、1.5mmであり、ウェハの下半分を収容し得る底浅の空隙部11における下側の外殻と半導体ウェハとの間の距離cは、4.0mmであり、隆起部13が形成されている部位における距離は、2.0mmであった。
また、得られた容器は透明でウェハの収納状況を透視でき、垂直方向、水平方向にウェハの収納容器として十分に耐えうる強度を有し、防塵効果があり、長期間の使用後もねじれはほとんど生じなかった。また、容器は、2段以上を段積みしても安定して積み重ねることができ、取り扱い中に容器の隅に多少の衝撃が加えられた程度では、内部のウェハに損傷を受けることはなかった。
次に、上記で形成した2つの外殻のうち上方の外殻のみを上下反転して上下に重ね合せて直径300mmの半導体ウェハを収容してみると、半導体ウェハを非接触状態に保ちながら半導体ウェハの表裏両面の検査観察を行うことができた。
【符号の説明】
【0026】
2:外殻
3:傾斜面
4:ウェハ接触面
5:ボス
6:ボス穴
7:ボス
8:ボス穴
9:半導体ウェハ
10:底浅の空隙部(半導体ウェハの上半分を収容し得る)
11:底浅の空隙部(半導体ウェハの下半分を収容し得る)
12:リブ状突条
13:隆起部
14:放射状のリブ状突条
15:同心状のリブ状突条
16:垂下り部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7