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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】嚥下障害を治療するためのカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20220127BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20220127BHJP
   A61M 25/02 20060101ALI20220127BHJP
   A61J 15/00 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
A61M25/00 500
A61M25/14 518
A61M25/02 510
A61J15/00 A
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020010568
(22)【出願日】2020-01-27
(62)【分割の表示】P 2017523356の分割
【原出願日】2015-11-06
(65)【公開番号】P2020078571
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2020-01-28
(31)【優先権主張番号】1419792.5
(32)【優先日】2014-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513239977
【氏名又は名称】ファジェネシス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Phagenesis Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ムルルーニー,コナー
(72)【発明者】
【氏名】マテイ,ヴェロニカ
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0200524(US,A1)
【文献】特表2014-513617(JP,A)
【文献】特開昭63-038470(JP,A)
【文献】米国特許第5165540(US,A)
【文献】特表2001-509416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00-25/18
A61M 39/00-39/28
A61J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嚥下障害の治療を支援するためのカテーテルを製造する方法において:
カテーテルを梱包するための予め形成された収納容器を提供するステップであって、当該収納容器が、カテーテルの少なくとも一部を受け入れる1以上の構造を有するものであるステップと
カテーテルを提供するステップであって、当該カテーテルが:供給管と;前記供給管を受け入れて当該供給管に対して長手方向に移動可能なスリーブと;リビングヒンジにより連結された第1の部分および第2の部分を有する保持構造であって、当該保持構造が前記スリーブの前記供給管に対する位置を固定するために前記スリーブに取り付けられ、前記第2の部分が、前記スリーブが前記供給管に対して長手方向に移動可能である開位置と、前記供給管が前記第1の部分と第2の部分との間に固定されて前記供給管に対する前記スリーブの位置を固定する閉位置と、の間で前記第1の部分に対して移動可能である保持構造と;を有するものであるステップと;
前記カテーテルを前記収納容器の中に挿入するステップであって、前記カテーテルの少なくとも一部が、前記収納容器の1以上の構造によって受け入れられ変形されるように挿入するステップと;
次いで、最終的な殺菌工程において、前記収納容器内のカテーテルの少なくとも一部を、加熱処理、加湿処理、加圧処理、および真空処理のうちのいずれか1つの処理を所定の時間行うステップであって、前記収納容器は、前記カテーテルの少なくとも一部を、加熱処理、加湿処理、加圧処理、または真空処理にかけることができるように構成されており、当該処理が完了することによって、前記収納容器から取り外されたときに前記カテーテルの少なくとも一部が変形した形状を保つものであるステップと;を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたカテーテルを製造する方法において、前記収納容器の1以上の構造によって変形された前記カテーテルの少なくとも一部が、前記供給管および/または前記スリーブであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載されたカテーテルを製造する方法において、前記供給管および/または前記スリーブの材料のポリマー結合を破壊することにより、変形が起こることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載されたカテーテルを製造する方法において、前記供給管および/または前記スリーブを1つの前記処理を行って取り外したときに、前記材料のポリマー結合が改変されて、前記供給管および/または前記スリーブの少なくとも一部が、前記収納容器内の梱包空間の形状に自然となることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載されたカテーテルを製造する方法において、前記最終的な殺菌工程が、EtO殺菌を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカテーテルに関し、排他的ではないが、特に嚥下障害の治療を容易にするカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
嚥下障害は、飲み込むことが困難、または、安全に飲み込むことができない患者の状態をいう。嚥下障害は、例えば、病気による発作、神経変性疾患、脳腫瘍、またいくつかのケースにおいては、呼吸器疾患のような別の合併症によって引き起こされる可能性がある。
【0003】
嚥下は、口から咽頭および食道を通して胃へと食べ物を進める、厳格に順序づけられた一連の事象である。同時に呼吸が抑制され、食べ物が気管に入るのを防ぐ。嚥下は自発的に起こるが、その後ほとんど全体が反射調節となる。嚥下反射は、触覚受容器(特に、咽頭の開口部近くに位置する)からの知覚インパルスによって起こり、特に骨髄のある領域に伝えられる。嚥下のための中枢統合領域は、骨髄および橋の下部にあり、それらはひとまとめに嚥下中枢と呼ばれる。運動インパルスは様々な脳神経を介して、嚥下中枢から咽頭の筋肉組織や食道上部へと移動する。この脳幹内の下部の嚥下中枢は、大脳皮質内上部の中枢による規制制御下におかれる。これらの上部の嚥下中枢または領域は、嚥下の自発的開始および調整を制御する。
【0004】
嚥下は3段階で起こる。経口または自発の段階において、食べ物は舌によって口の背面に向かって動き、咽頭に入れられる。そこで、嚥下反射を起こす触覚受容体を刺激する。
【0005】
嚥下の咽頭の段階において、咽頭壁の収縮、喉頭蓋の後方への曲がり、そして喉頭および気管の上方および前方への動きにより食べ物が咽頭を通る。咽頭の段階において、呼吸は反射的に抑制される。
【0006】
嚥下の食道の段階において、食べ物は食道を降り、1またはそれ以上の蠕動波によって胃へと移送される。
【0007】
嚥下の主な機能は口から胃への食べ物の推進であるが、嚥下はまた、上気道ための保護反射として働き、望まない小片が上気道に入るのを防ぐ。気道に入る食べ物または液体は感染源となる可能性があり、この種の感染は命に関わる。例えば、発作後の嚥下障害は致命的な問題であり、誤嚥性肺炎のリスクを6倍上昇する。
【0008】
国際特許出願番号PCT/GB2005/003289号は、咽頭の電気的な刺激で嚥下障害を処理する方法を記載している。胃に栄養を運ぶためにカテーテルを患者の体に挿入可能である。電極がカテーテルの外面に配置され、咽頭に接するよう配置されると、電気的な刺激が加えられる。
【0009】
国際特許出願番号WO2012/131303号は、嚥下障害を処理するためのカテーテルを記載している。このカテーテルは、患者の胃に栄養を運ぶための供給管と、カテーテルの周りに配置され、カテーテルに対して動かすことが可能なスリーブとを具えている。電極がスリーブの外面に配置され、供給管に対してスリーブの位置を調整することによって咽頭と接触するように動かすことができる。
【0010】
本発明の目的は、咽頭の電気的な刺激を通して嚥下障害を治療するための改良点を提供することである。特にこの目的のため、改良されたカテーテルとそれに付随する装置とを提供する。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1態様は、嚥下障害の治療を支援するカテーテルを提供することであり、このカテーテルは、供給管と、供給管を受容し供給管に対して縦に動かすことが可能であるスリーブと、供給管に関してスリーブの位置を固定するためのスリーブに取付けられた保持構造とを具えており、この保持構造はリビングヒンジによって接続された第1部分と第2部分を具えており、第2部分は開位置と閉位置の間で第1部分に対して動かすことが可能であり、開位置ではスリーブを供給管に関して縦に動かすことができ、閉位置では供給管が保持構造の第1部分および第2部分の間にクランプされ、供給管に関してスリーブが位置的に固定される。
【0012】
例えば、腔内電気咽頭刺激のような、いくつかの医療処理において、患者内のスリーブの位置は、治療の効果的な適用において重要となる。本発明は必要に応じて、供給管に対してスリーブが動くことを可能にする。スリーブが所望の位置にあるとき、供給管はスリーブにクランプされ、組み立てられたカテーテルが構成される。これにより、患者の外側で組立カテーテルの供給および治療機能両方の最適な相対配置が可能となる。その後患者内に挿入されると、カテーテルの供給管部分は供給における正しい位置となり(例えば、胃の中)、スリーブの外面上に位置する電極は、電気的な刺激のため中咽頭において正しい位置となる。その後、全てのカテーテルが患者の正しい位置に固定され、例えば患者の外部組織にテープを貼ることによって固定され、そのことは、スリーブと供給管機能両方の位置が常に正しいことを意味する。
【0013】
保持構造の第2部分は、熱可塑性エラストマライナーを具えていてもよい。
【0014】
患者への挿入を容易にするため、通常カテーテルは可撓性がある。クランプ力をかけると、供給管が潰れ、そこを通る流体の妨げとなるというリスクがある。熱可塑性エラストマライナーを有する保持構造を用いると、供給管と接するライナーの従順な動きによる圧縮力および摩擦力の組み合わせが、供給管に対するスリーブの縦の動きが抑制される。
【0015】
カテーテルは、スリーブの一部を受け入れるためコネクタを具えてもよく、そのコネクタは保持構造を受け入れるための取付け要素を具えてもよい。
【0016】
取付け要素はコネクタと保持構造間の摺動インターフェースの一部であり、コネクタと協働動作可能なスナップフィット要素を含んでもよい。
【0017】
スナップフィット要素は保持構造の一部であって、弾性的なフィンガ形状であってもよい。
【0018】
保持構造はさらに閉じた状態のとき、保持構造の第1部分および第2部分を取り外し可能に一緒にロックするためのクロージャーを更に具えてもよい。
【0019】
保持構造の第1部分および第2部分を一緒にロックするための、好ましくは留め金であるクロージャーを使用することは、スリーブに対して既知の圧縮力を加える繰り返し可能な手段を提供する。この制御された圧縮力は、高い摩擦力のエラストマライナーの使用を組み合わせることで、供給管の内腔を介して供給材料の通路を制限することなく、スリーブに関する供給管の望まない動きを防ぐための正しいバランスを提供する。
【0020】
本発明の第2の態様は、嚥下障害の治療を支援するカテーテルを提供し、このカテーテルは、供給管と、供給管を受容して供給管に対して縦に動かすことが可能であるスリーブと、スリーブ上に配置され、供給管の外面上に作用するシールとを具え、当該シールは、第1端部と第2端部を具え、それらの間に管腔が延在している。シールの第1端部はスリーブの近位端を受け入れ、シールの第2端部は供給管を受け入れる。管腔は供給管の外面上に作用する内部フランジを有しており、当該フランジはスリーブと供給管の間に入る患者からの液体を阻止するとともに、前記供給管が患者から引き抜かれた場合に供給管の表面を清掃する手段を提供する。
【0021】
使用時に、通常供給管は長期間患者に挿入されたままになる。この長期間の中で、供給管が管腔内の物質により回復できない程閉塞した場合、スリーブ上の保持構造のクロージャーを開け、患者内にスリーブを残したまま、患者から供給管を引き抜くことができる。供給管が患者内にある間に、生物学上の、潜在的な感染物質で覆われる場合があり、そのような物質は供給管を取り除く過程で落ちないことが望ましい。供給管の表面に作用するシールの対策がこのリスクを減らす。閉塞した供給管は、未だ患者内にあるスリーブを介して新たな供給管を患者内に供給することによって取り替えることができる。
【0022】
さらに、スリーブが供給管上に通常配置されているとき、スリーブの内腔および供給管の外面の間に狭い間隙が形成される。使用にあたり、スリーブの終端は食道の上部領域に配置される。患者内からの液体が、毛管現象によって供給管の外面とスリーブの内面との間の間隙を上がる可能性がある。供給管とシール間のシール対策は、毛管現象が起こるリスクを低減する。
【0023】
本発明の第3態様は、嚥下障害の治療を支援するカテーテルを提供し、このカテーテルは、供給管と、供給管を受容して供給管に対して縦に動かすことが可能な、近位端と遠位端を有するスリーブとを具えており、そのスリーブは内側層および外側層から構成され、内側層は、第1の材料特性を有するように選択された第1材料から形成され、外側層は、第1の材料特性とは違った第2の材料特性を有するように選択された第2材料で構成される。
【0024】
第1材料特性は低い摩擦係数を有し、第2材料特性は可撓性であることが好ましい。好ましくは、第2材料は第1材料よりもカテーテルの遠位端部側にさらに延在している。
【0025】
スリーブの内側層を形成している第1材料の低い摩擦係数は、患者の外側にあるとき、供給管の表面に沿ったスリーブの動きを容易にする。また必要に応じて、組立カテーテルが患者内にあったとしても、スリーブから供給管の取外しを容易にする。求められる低い摩擦係数(例えばフッ素重合体)は比較的堅い特性があり、したがって、供給管よりも堅いスリーブとなる。
【0026】
第1材料はフッ化エチレンプロプレン(FEP)で、第2材料はポリウレタンであることができる。
【0027】
FEPの使用が有利なのは、非常に高い絶縁強度、したがって高い抵抗値を提供するからである。また、FEPの摩擦力は非常に低く、供給管がスリーブ内をほとんど抵抗なく動くことができる。さらにFEPは光透過性がある。この特徴の組合せにより、製造されるカテーテル内での使用時多機能スリーブを実現する。
【0028】
スリーブはそれぞれが患者の特徴を示す印刷されたウィンドウまたはリングの形態の位置インジケータを有してもよい。
【0029】
患者への挿入前に、組立カテーテルをつくるためスリーブおよび供給管の相対位置が、患者の解剖学的計測に基づき調整される。これにより、組立カテーテルが、固定ユニットとして挿入された、供給および刺激機能の双方が特定の患者の最適な位置となることが保証される。
【0030】
組立カテーテルは、鼻から咽頭を通して患者に挿入される。供給管はさらに食道に挿入され、その終端は胃の中に配置される。供給管の表面上の、定位置に固定されたスリーブはともに挿入され、その遠位端は少なくとも上部食道括約筋(UOS)内またはUOS下の上部食道内に配置される。供給管およびスリーブの外側層はともに、挿入を容易にするとともに、配置されたときに患者の不快さを最小にするため、ポリウレタンのような可撓性の高い熱可塑性材料から形成される。
【0031】
組立カテーテルの挿入の間、例えば鼻腔の後部や鼻腔から鼻咽頭への遷移部といったいくつかの内部解剖学的曲線を通らなければならない。カテーテルがその曲線を通るため曲がるとき、スリーブの終端は、FEP内側層本来の不撓性によって供給管のようには容易に曲がらない。これにより、内部の患者組織に接触する鋭いエッジを作りだし、機械的なダメージを与える場合がある。これは本発明の第3態様にて対処されており、そこでスリーブは延長された先端を形成する遠位端に追加の部分を有し、スリーブの外側層として同じ材料を有する。
【0032】
伸長された先端の遠位端はテーパ形とし、先端の壁がより薄く、または、内径が小さくなるようにして、スリーブから供給管への変遷をスムーズにするようにしてもよい。
【0033】
先細りの先端は患者組織をこするのを防ぐだけでなく、挿入中の快適さを高める。この柔軟な先端部分のさらなる利点は、スリーブがUOS内へと伸びることである。これにより、供給管が引き抜かれ取り替えられたとき、取り替えられた供給管が気管ではなく食道へと、そしてその後胃へと正しく向かう。実際、UOS内にあるスリーブや先端は、供給管を取り替えたり挿入したりするためのガイドとして作用する。伸長された先端の先細りの遠位端のさらなる利点は、スリーブの終端と供給管の外面との間隙に進入する望まない液体生体物質進入のリスクが減ることである。
【0034】
本発明の第1、第2および第3態様における各カテーテルは、鼻から患者の体に挿入してもよい。
【0035】
本発明の第4態様は、カテーテルの製造方法であって、少なくともカテーテルの一部を受け入れる、1またはそれ以上の形態を有する予め形成された収納容器を提供するステップと、請求項1乃至34の何れかに記載のカテーテルを提供するステップと、カテーテルの少なくとも一部が収納容器の1またはそれ以上の形態によって受け入れられ変形させられるよう収納容器にカテーテルを挿入するステップと、所定条件の温度、湿度、圧力、真空、ガスまたは放射のうちの1またはそれ以上に収納容器を所定時間さらすステップとを具え、これらの条件適用が完了したら、収納容器から取り外したとき、カテーテルの少なくとも一部が変形した形状を保つことを特徴とする。
【0036】
本発明の第5態様は、嚥下障害の治療を支援するカテーテルを提供し、管腔が通る管を具え、当該管は第1の曲率半径を有する第1セクションと、第2の曲率半径を有する第2セクションとを具えている。
【0037】
好ましくは、前記管は、患者の組織に電気的刺激を与える少なくとも1つの電極を具えている。
【0038】
カテーテルを患者に挿入するとき、最終的な位置に配置される前に、一定の解剖学的特徴を通り抜けなければならない場合がある。さらに、最終位置にあるときに、機械的圧力や力がかかることよる不快さを最小にし、組織へのダメージを引き起こさないほうがよい。これはカテーテルが長期間同じ場所になければならないときに特に重要である。カテーテルの形状が、挿入経路または好ましい最終位置の一般的な解剖学的特徴に正確に適合する場合、それはより容易に患者によって許容されるものとなり、また組織外傷のリスクを減少できる。予め形成された形状はまた、カテーテルを容易に定位置に固定でき、少なくとも1つの電極が患者の組織とより良く接する利点がある。
【0039】
カテーテルに形状を与えるのに使用される収納容器がカテーテルの最後のパッケージであることは特に利点である。さらに、形状変更を実現する条件がカテーテルの製造工程の一部である場合に特に利点があり、例えば、カテーテルの終末殺菌やEtO殺菌を使用するパッケージは、その形状を構成するための必要な条件を提供する。
【0040】
本発明の第6態様は絶縁ワイヤを提供し、1またはそれ以上のストランド、またはケーブルを具えており、それぞれ異なる材料の第1、第2および第3絶縁体によって包まれている。
【0041】
医療電気機器は、意図しない放電から患者や使用者を保護する強く効果的な電気絶縁性を必要とする。規制基準を満たすため、この絶縁性は規定された方法で提供および構成されなければならない。本発明の第5態様は、導電ワイヤに適応される2つの異なる絶縁体と、この絶縁ワイヤのある物理的環境によって提供される第3の手段との3つの電気的絶縁手段を提供することにより、適切な絶縁性を提供する。
【0042】
導電ワイヤに直接適用される第1絶縁体(エナメル層)は、選択的にポリアミド/ポリイミドのポリマーフィルムを具えてもよい。これは20ミクロンよりも小さい厚さで1500V以上の絶縁性を提供する第1高誘電性コーティングである。第2層は選択的にパリレンであり、エナメル層に適用される。パリレンの成膜プロセスの性質は、下にあるエナメルを破壊しないことにある。これにより15ミクロンよりも小さい厚さで、さらに1500V以上の絶縁性を提供する第2高誘電性コーティングが提供される。
【0043】
第3の絶縁体は、二重に絶縁されたワイヤが配置された環境により提供される。ワイヤはスリーブ壁内にある管腔に挿入される。したがってこの絶縁体は、スリーブの外側層(ポリウレタン)またはスリーブの内側層(FEP)によって提供される。これら両層は更に1500V以上の電気絶縁性を提供することができる。挿入後、スリーブ内の管腔は、スリーブを加熱し、材料をリフローすることによって閉じられる。リフローされた物質は、スリーブ内のワイヤの位置を有利に固定する第2絶縁体と結合する。
【0044】
適用可能な規制基準の必要条件を満たすため、それぞれ1500V以上の絶縁性を提供する三層の絶縁体がなければならない。このレベルの絶縁では多くの材料が必要な絶縁強度を有するが、限定された厚さの複数の個別の層が、下の層を破壊しないようにすることは自明ではない。選択された材料はすぐれた絶縁値を提供し、代替材料の徹底したテスト後に選択されている。
【0045】
本発明の第7態様は、管腔が通る管を具えるカテーテル用のスリーブを提供し、前記管はフッ化エチレンプロピレン(FEP)から構成される第1の内側層と、ポリウレタンから構成される第2の外側層とを具えている。
【0046】
FEPの使用は、FEPが非常に高い絶縁強度を提供し、結果的として高抵抗値を提供するため有利である。また、FEPの摩擦は非常に低く、供給管がスリーブ内で抵抗が殆どないか、まったくない状態で動くことができる。FEPはまた光学的に透明である。この特徴の組合せにより、製造されるカテーテルで使用される多機能なスリーブとなる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
本発明の特定の実施形態を添付の図面を参照しながら、実施例として、以下に説明する。
図1図1は、本発明の実施形態に係るカテーテルの斜視図である。
図2図2は、本発明の第3および第6形態に係るスリーブを示す図である。
図3図3は、本発明の第1形態に係る供給管およびスリーブをともにロックする保持クリップの断面図である。
図4図4は、図1の保持クリップの斜視図である。
図5図5は、本発明の第2形態に係る供給管およびスリーブの間を密閉するシールの断面図である。
図6図6は、図3のシールの斜視図である。
図7図7は、本発明の第4形態に係る図1のカテーテルのパッケージを示す図である。
図8図8は、本発明の第5形態に係るワイヤ構造の図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるカテーテル10を示しており、この実施形態は嚥下障害を患っている患者に腔内電気咽頭神経筋刺激を提供するのに適している。
【0049】
カテーテル10は、ポリウレタン、または他の高可撓性材料から形成された供給管12と、フッ化エチレンプロピレンおよびポリウレタンスリーブ14とを具えている。カテーテル10は患者への鼻孔挿入に適した大きさとなっている。カテーテル10の供給管12の長さは、その端部が患者の鼻または口を通り、咽頭および食道を介して患者の胃に入るのに十分な長さとなっている。
【0050】
カテーテル10の供給管12は、遠位端12aおよび近位端12bを有している。供給管12の近位端12bは、供給管12を介して胃へ栄養を導入するためのY字形のコネクタ16によって拘束されている。供給管12の遠位端12aは拘束されていない。カテーテル10のスリーブ14は、遠位端14aおよび近位端14bを有している。スリーブの近位端14aは、カテーテル10とベースステーション(図示せず)間の電気的インターフェースを提供するためのS字形のコネクタ18によって拘束されている。スリーブ14の遠位端14bは拘束されていない。供給管12およびスリーブ14は、同軸上に供給管12をスリーブ14が取り囲むように配置されている。
【0051】
供給管12は、患者が快適なように、および、患者への挿入を容易にするため、その遠位端12bに丸い先端12cを有する。栄養分は、供給管12の遠位端12aにおける供給管12の外周壁の1またはそれ以上の開口部12dを介して、および、開放端である供給管12の遠位端12aを通って供給管12から分散される。供給管12にはその長さに沿って複数の視覚インジケータ12eが設けられており、スリーブ14とともに、患者への解剖学的測定を考慮した供給管12に対するスリーブ14の調整手段を提供している。供給管12に1cmのディスタンスガイドを印刷してもよい。
【0052】
ポリウレタンの供給管の材料は20%の硫酸バリウムを含んでおり、当該供給管12はX線不透過である。
【0053】
コネクタ16はY字形で、管腔が通っている。コネクタ16の一端は、供給管12の近位端12bを受け入れる。コネクタ16の他端は、外部の供給セット(図示せず)への接続を可能にする第1ポート16aを提供する。容器のY部分上の第2ポート16bは、シリンジへの接続が可能である。この第2ポート16bは、コネクタ16の本体にヒンジ連結されたキャップ16cによって閉じることができる。
【0054】
コネクタ16の第1ポート16aはまた、カテーテル10の患者への挿入を支援するため、ガイドワイヤ20を受け入れる。ガイドワイヤ20はステンレスで形成され、ツイストケーブル構造となっている。ガイドワイヤは近位端20aと遠位端(図示せず)を有する。近位端20aはガイドワイヤグリップ22によって受け入れられる。遠位端は拘束されておらず、ビードによって終端している。ガイドワイヤグリップ22は、ガイドワイヤを受け入れる管腔を有する成形部品である。
【0055】
ハウジング18によって拘束されているスリーブ14の近位端14bは、歪み緩和要素14gによって囲まれており、スリーブ14とコネクタ18との間のインターフェースでスリーブ14上の歪みが軽減される。
【0056】
図2を参照すると、スリーブ14は2つの異なる層14c、14dから構成される。第1の内側層14cはフッ化エチレンプロピレンから形成され、第2の外側層14dはポリウレタンから形成される。管腔14eがスリーブ14の中心を通って縦に延び、供給管12を受け入れる。一対のリング電極24がスリーブ14の外壁に圧着される。この電極24はおよそ3mm幅であり、およそ10mm離れて配置され、医療用ステンレスまたはプラチナから形成される。2本のワイヤ26、28がこれらの電極から延在し、スリーブ14の外側層14dのポリウレタン層内の管腔30、32に受容される。ワイヤ26、28はカテーテル10とベースステーションとの間の電気インターフェースを提供するコネクタ18に連結される。
【0057】
ワイヤ26、28はそれぞれ、図8に示すように、2つの異なる種類の絶縁体によって包まれた、単一のストランド26a、28a、またはケーブルを具えている。
【0058】
基礎絶縁体26b、28bは、20kV/mmのオーダーの絶縁強度を有するポリウレタンと、60kV/mmのオーダーの絶縁強度を有するフッ化エチレンプロピレンとを含む。基礎絶縁体のポリウレタン部分は最小厚さ0.075mmであり、基礎絶縁体のFEP部分は最小厚さ0.038mmである。基礎絶縁体のポリウレタンとFEP部分は、組み合わせると少なくとも1500Vの絶縁性を提供する。
【0059】
補助絶縁体26c、28cは、170から230kV/mmの絶縁強度を有するエナメル層と、200kV/mmのオーダーの絶縁強度を有するパリレンの層を具えている。エナメル層は0.01mmと0.014mmの間の厚さであり、パリレン層は0.01mmと0.02mmの間の厚さである。エナメル層とパリレン層の組合せで、補助絶縁体は3700Vから7080Vの絶縁性を提供する。
【0060】
補助絶縁体は、2段階の蒸着を用いて単一のストランドまたはケーブルに成膜される。エナメルは単一のストランドまたはケーブルに直接成膜され、パリレンはエナメル層に成膜される。所望の厚さは、チャンバ内の蒸着物質密度に対する時間関数として達成される。基礎絶縁体は補助絶縁体に成膜される。
【0061】
スリーブの外側層14dであるポリウレタン層の厚さは、スリーブ14の壁の厚さのおよそ88-92%を占める。スリーブの内側層14cの厚さは、スリーブ14の壁の厚さのおよそ8から12%を占める。スリーブの外側層14dは、スリーブ14の内側層14cよりもスリーブ14の遠位端14aに向かってさらに延在している。外側層14eの最遠位端は可撓性の先端を形成する。
【0062】
スリーブ14の外側層14dのポリウレタン層には、3つのガイドウィンドウまたはリング14f(図1参照)が設けられ、これらは1、2、または3つのドット、またはその他の視認できる記号でマークされ、患者の背の高さや他の解剖学的特徴の違いを表す。ガイドウィンドウ14fは、供給管12の視覚インジケータとともに用いられ、カテーテルが患者に挿入される前に、患者の解剖学的特徴に従って供給管12に対してスリーブ14を配置する。
【0063】
供給管12に対するスリーブ14の縦の位置は、図3および図4に示す保持クリップ34によって拘束可能である。保持クリップ34は、リビングヒンジ40によって一緒に接続された第1部分36および第2部分38を具える。リビングヒンジは当業者にとって通常のリビングヒンジを意味する。保持クリップ34はポリプロピレンから製造されている。
【0064】
保持クリップ34の第1部分36は、断面図でみたとき、供給管12の一部を受容するための、供給管が通る半円切り欠き部36bを有する平坦な上面36aを有する。底面36cは上面36aと平行に構成されている。底面36cは、底面36cの端から上面36aの端へと上側かつ外側に延在するカーブした対の側壁36dによって上面に接続されている。各側壁36dは、保持クリップ34の第1部分36内の凹部36eによって、実質的にL字形に形成されている。凹部36eは、保持クリップ34が側壁36dのL形状により横の動きが妨げられた状態で取付け構造(図示せず)上をスライドすることを可能にする。保持クリップ34の第1部分36上の弾性フィンガ36gは、コネクタ18内にある凹部と係合して、コネクタ18に対する保持クリップ34の縦の動きを抑制する。リビングヒンジ40から最も離れた側壁36dにはリッジ36fが設けられ、それにより、保持クリップ34が閉じられたとき、供給管12を係合した状態で保持クリップ34の第1部分36および第2部分38の状態を保持する。
【0065】
保持クリップ34の第2部分38は、カーブした底壁38bから間隔の開いた、カーブした上壁38aを有している。カーブした上壁38aの一方の端部は、リビングヒンジ40に合流している。カーブした底壁38bは、外側に向かって延びている複数のリブ38cを規定している。リビングヒンジ40の反対側にあるカーブした底壁38bの端部には、スプリングクリップ38dが設けられ、保持クリップ34が閉じられたとき、保持クリップ34の第1部分36のリッジ36fと協働可能である。
【0066】
好ましい実施形態において、複数のリブ38cは、保持クリップ34の第2部分38に挿入可能なエラストマ挿入物38eによって覆われている。当該挿入物38eは変形可能であり、保持クリップ34が閉じられた時スリーブ14に対して係合する溝38fを具えている。エラストマ挿入物38eの摩擦係数は高く、保持クリップ34および供給管12に対するスリーブ14の縦の動きを抑制する。エラストマ挿入物38eは図4には示されていない。
【0067】
スリーブ14の近位端には更に、図5および図6に示されるように、その先端部がスリーブ14の近位端14aの外側面に結合される円筒シール44が設けられている。シールは第1端部44aおよび第2端部44bを有し、その間に管腔44cを有する。シール44の第1端部44aは第1外径を有し、シール44の第2端部44bは第1外形よりも小さい第2外形を有する。フランジ44dが、第1端部44aと第2端部44bの間の位置でシールの外面から延在している。フランジ44dはシール44の円周に延在し、ハウジング18内で取付け構造(図示せず)と協働して、シール44の縦の動き、したがってハウジング18内のスリーブ14の縦の動きを抑制する。
【0068】
シール44の第1端部44aは管腔44cの中にテーパした開口部を有している。管腔44cは、シール44の第1端部44aでテーパ開口部から導かれる第1内径を有する。第1内径は管腔44c内の肩部44eへと小さくなる。スリーブ14の近位端14bは管腔の肩部44eに当接する。管腔の第2内径は、肩部44eからシール44の第2端部44bに向かって延在する。
【0069】
シール44の第2端部44bは管腔44cの中にテーパした開口部を有している。テーパした開口部は管腔44cの第2内径へと延在する。第2内径は、中間地点において、その内周まわりの実質的に全体に延在するフランジ44fを有している。フランジ44fは、その最小内径で供給管の外面に対して作用し、これによりスリーブ14と供給管12の間にシールを提供するサイズとなっている。
【0070】
使用時に、供給管12はシール44の第2端部44bに挿入され、したがってスリーブ14に挿入される。管腔44c内のフランジ44fが、供給管12の外面とスリーブ14の内面との間にシールを提供し、したがってスリーブ12が患者から引き抜かれたとき、その間の間隙に毛管現象によって患者内からの液体が引かれるのを防ぐ。また、フランジ44fは、供給管12が患者から引き抜かれる際に、供給管12の物質を落としてきれいにするよう作用する。
【0071】
S字形コネクタ18は、スナップフィット接続によって接合される実質的に2つのミラー部品から形成されている。このS字形コネクタ18は、スリーブ14の歪み緩和要素14gと、シール44と、いくつかの電気部品とを収容する。ハウジング18は、医療用アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体から形成されている。S字形コネクタ18の一方の端部はスリーブ14の近位端14aを受け入れ、S字形コネクタ18の他方の端部は、カテーテル10とベースステーションとの間のインターフェースを提供する電気コネクタを収容する。保護キャップ46がラニヤードとリングによりS字形コネクタ18に取付けられ、液体や埃から電気コネクタを保護する。キャップは熱可塑性エラストマから形成される。S字形コネクタ18は、保持クリップ34を当該S字形コネクタに保持するための、レール形状の設置構造(図示せず)を含んでいる。
【0072】
組みたてると、図7に示されるように、カテーテル10は特定のカテーテル10の構成部分を受容するようモジュール化された収納トレイ48に梱包される。収納トレイ48は、供給管12および/またはスリーブ14の所望の輪郭に一致する実装空間を提供する複数の構成48aを具える。カテーテル10が収納トレイ48に梱包されると、供給管12および/またはスリーブ14は実装空間の輪郭となる。カテーテル10が収容トレイ48に梱包されると、梱包されたカテーテル10は、少なくともその一部が所定条件の温度、湿度、圧力、真空、ガスまたは放射の1またはそれ以上に所定期間さらされることにより殺菌消毒される。それらの条件の適応が完了すると、収納容器から取り外されたとき、カテーテルの少なくとも一部はその変形形状を維持する。曝露中、供給管12および/またはスリーブ14は材料のポリマ結合を壊して軟化する。供給管12および/またはスリーブ14が前記条件の1またはそれ以上の曝露から外されたとき、材料のポリマ結合は改質され、供給管12および/またはスリーブ14の少なくとも一部が、収納トレイ48から取り出されたとき、実装空間の輪郭を自然にとるようになる。
【0073】
カテーテル10の形状は、このように、それぞれが異なる曲率半径を有する個別のセクションを有して構成される。第1セクションは鼻腔および鼻咽頭間の患者の解剖学的遷移と一致する第1曲率半径を有する。第2セクションは、鼻腔と鼻孔との間の患者の解剖学的遷移と一致する第2曲率半径を有する。
【0074】
上記記載は、実施例のみによって与えられ、本発明の範囲の限定を意図するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8