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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】撚り線装置及び撚り線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/02 20060101AFI20220104BHJP
   B21F 7/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
H01B13/02 Z
B21F7/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017230293
(22)【出願日】2017-11-30
(65)【公開番号】P2019102216
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000227537
【氏名又は名称】NITTOKU株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 尚
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-130638(JP,A)
【文献】特開2017-033815(JP,A)
【文献】特開昭59-001791(JP,A)
【文献】特開2012-211404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/02
B21F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材(11)の中心を貫通して設けられた芯線(13)を前記軸部材(11)の基端側から先端側に向けて軸方向に移動させる芯線移動手段(79)と、
前記軸部材(11)に中心軸方向に所定の間隔を開けて設けられた一対の支持板(21,22)間に架設された複数の公転体(23)と、
前記複数の公転体(23)にそれぞれ設けられ線材(32)が巻回されて貯線され回転して前記線材(32)を繰り出すスプール(31)と、
制御手段(8)により制御され前記軸部材(11)を前記一対の支持板(21,22)とともに回転させて前記複数の公転体(23)を前記芯線(13)を中心として公転させる公転手段(12)と、
前記制御手段(8)により制御され前記線材(32)を巻解くように前記スプール(31)を回転させる回転駆動手段(40)とを備え、
軸方向に移動する前記芯線(13)の周囲に公転する前記複数の公転体(23)の前記スプール(31)から繰り出される前記線材(32)を前記芯線(13)の外周に螺旋状に巻回させる撚り線装置において、
前記芯線(13)に巻き付けられる前記線材(32)の速度を検出する線材速度検出手段(100)先端側の前記支持板(22)に設けられ、
前記制御手段(8)は前記線材速度検出手段(100)が検出する検出出力が所定の値となるように前記回転駆動手段(40)を制御する
ことを特徴とする撚り線装置。
【請求項2】
スプール(31)から繰り出される線材(32)を軸部材(11)に向かわせる第一転向プーリ(62)が支持板(22)に設けられ、
線材速度検出手段(50,100)は、前記第一転向プーリ(62)により転向して前記軸部材(11)に向かう前記線材(32)が掛け回される速度検出用プーリ(104)と、前記速度検出用プーリ(104)の回転速度を検出するロータリエンコーダ(105)とを備えた請求項1記載の撚り線装置。
【請求項3】
線材速度検出手段(100)は、第一転向プーリ(62)により転向して軸部材(11)に向かう線材(32)に交差する方向に移動可能に設けられ速度検出用プーリ(104)に掛け回された線材(32)が更に掛け回される補助プーリ(102)と、前記速度検出用プーリ(104)から前記補助プーリ(102)を遠ざける方向に付勢する弾性体(106)とを更に備えた請求項2記載の撚り線装置。
【請求項4】
軸部材(11)の中心を貫通して設けられて軸方向に移動する芯線(13)を中心として線材が巻回されて貯線されたスプール(31)が設けられた複数の公転体(23)を公転させ、前記複数の公転体(23)のスプール(31)から巻き解かれて前記軸部材(11)と平行に繰り出される線材(32)を前記軸部材(11)に向かわせた後に前記芯線(13)の周囲に螺旋状に巻回して撚り線(9)を得る撚り線の製造方法であって、
前記軸部材(11)に向かわせた後の前記線材(32)の速度を検出し、
前記軸部材(11)に向かわせた後の前記芯線(13)に巻き付けられる前記線材(32)の速度が所定の値になるように前記スプール(31)の回転を制御しつつ前記複数の公転体(23)を前記芯線(13)の周囲に公転させて前記スプール(31)から巻き解かれて繰り出される前記線材(32)を前記芯線(13)の周囲に螺旋状に巻回させる
ことを特徴とする撚り線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材が巻回されたスプールから巻解かれた線材を芯線の周囲に螺旋状に巻回して撚り線を得る撚り線装置及び撚り線の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、撚り線を得る装置として、線材が巻回されて貯線されたスプールを、軸方向に移動する芯線の周囲に公転させ、そのスプールを回転させることによりそのスプールから巻き解かれて繰り出される線材を芯線の周囲に螺旋状に巻回させるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この従来の撚り線装置において、スプールから巻解かれて繰り出される線材は、そのスプールから軸方向に移動する芯線に沿って延び、その後にテンション装置により所定のテンションが付与された更にその後に、軸方向に移動する芯線の周囲に達して、芯線の周囲に螺旋状に巻回されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-33815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、このような従来の撚り線装置において、得られる撚り線の製造速度を高める為には、芯線の移動速度と共にスプールの公転速度を高める必要がある。
【0006】
しかし、芯線を中心として公転するスプールの速度を高めると、そのスプールから繰り出されて芯線に沿うように延びる線材に遠心力が作用し、その遠心力により、テンション装置により付与されるテンションを超えたテンションが線材に付与されるという不具合を生じさせる。
【0007】
また、線材はスプールの円周方向に引き出される為に、スプールに貯線された線材の巻回された直径は、線材が引き出される従って小さくなる。すると、スプールの周方向に引き出される線材と芯線からの距離も変動し、そのスプールから繰り出されて芯線に沿うように延びる線材に作用する遠心力も、公転の毎に又は線材が繰り出される毎に変化することになる。
【0008】
してみると、上記従来の撚り線装置では、撚り線の製造速度を高める為に、芯線を中心とするスプールの公転速度を高めると、芯線に巻回される線材のテンションが常に変化するような事態を生じさせる。そして、線材のテンションが変化すると、単位長さあたりの芯線に螺旋状に巻回される線材の長さも変化し、撚りの程度が均一な撚り線を得ることが困難になるという未だ解決すべき課題が残存していた。
【0009】
本発明の目的は、撚りの程度を均一にしつつ、撚り線の製造速度を高め得る撚り線装置及び撚り線の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、軸部材の中心を貫通して設けられた芯線を軸部材の基端側から先端側に向けて軸方向に移動させる芯線移動手段と、軸部材に中心軸方向に所定の間隔を開けて設けられた一対の支持板間に架設された複数の公転体と、複数の公転体にそれぞれ設けられ線材が巻回されて貯線され回転して線材を繰り出すスプールと、制御手段により制御され軸部材を一対の支持板とともに回転させて複数の公転体を芯線を中心として公転させる公転手段と、制御手段により制御され線材を巻解くようにスプールを回転させる回転駆動手段とを備え、軸方向に移動する芯線の周囲に公転する複数の公転体のスプールから繰り出される線材を芯線の外周に螺旋状に巻回させる撚り線装置の改良である。
【0011】
その特徴ある構成は、芯線に巻き付けられる線材の速度を検出する線材速度検出手段が先端側の支持板に設けられ、制御手段は線材速度検出手段が検出する検出出力が所定の値となるように回転駆動手段を制御するところにある。
【0012】
スプールから繰り出される線材を軸部材に向かわせる第一転向プーリが支持板に設けられた場合、線材速度検出手段は、第一転向プーリにより転向して軸部材に向かう線材が掛け回される速度検出用プーリと、速度検出用プーリの回転速度を検出するロータリエンコーダとを備えることが好ましく、第一転向プーリにより転向して軸部材に向かう線材に交差する方向に移動可能に設けられ速度検出用プーリに掛け回された線材が更に掛け回される補助プーリと、その速度検出用プーリから補助プーリを遠ざける方向に付勢する弾性体とを備えることが更に好ましい。
【0013】
一方、別の本発明は、軸部材の中心を貫通して設けられて軸方向に移動する芯線を中心として線材が巻回されて貯線されたスプールが設けられた複数の公転体を公転させ、複数の公転体のスプールから巻き解かれて軸部材と平行に繰り出される線材を軸部材に向かわせた後に芯線の周囲に螺旋状に巻回して撚り線を得る撚り線の製造方法である。
【0014】
その特徴ある点は、軸部材に向かわせた後の線材の速度を検出し、軸部材に向かわせた後の芯線に巻き付けられる線材の速度が所定の値になるようにスプールの回転を制御しつつ複数の公転体を芯線の周囲に公転させてスプールから巻き解かれて繰り出される線材を芯線の周囲に螺旋状に巻回させるところにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の撚り線装置及び撚り線の製造方法では、芯線に巻き付けられる線材の速度が所定の値になるように、線材を繰り出すスプールの回転を制御手段が制御するので、スプールから繰り出される線材に遠心力が作用して、線材に加わるテンションが変化したとしても、単位長さあたりの芯線に螺旋状に巻回される線材の長さが変化することはない。よって、本発明の撚り線装置及び撚り線の製造方法では、撚りの程度を均一にしつつ、芯線の移動速度と芯線を中心とするスプールの公転速度を高めることにより、撚り線の製造速度を高めることが可能となる。
【0016】
また、線材速度検出手段が、速度検出用プーリとロータリエンコーダを備えるようなものであれば、芯線に巻き付けられる線材の速度を比較的安価かつ容易に検出することができ、線材が掛け回された速度検出用プーリから更に線材が掛け回された補助プーリを遠ざけるように付勢する弾性体を備えるようにすれば、速度検出用プーリに線材を所定のテンションで掛け回すことができ、その速度検出用プーリに対して線材が滑るようなことを防止して、線材の速度を確実に検出させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明実施形態の撚り線装置の側面図である。
図2図1のA部拡大側面図である。
図3】その公転体の平面図である。
図4図1のB-B線断面図である。
図5図1のC-C線断面図である。
図6】別の線材速度検出手段を示す図5に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
本発明の撚り線装置を図1に示す。本発明の撚り線装置10は、芯線13を中心としてスプール31を公転させる公転手段12を備える。この実施の形態において芯線13は軸部材11の中心を貫通して設けられるものとし、公転手段12はこの軸部材11を備えるものとする。
【0020】
軸部材11は断面が円形の棒状部材であって、軸部材11の中心軸には芯線13が通過する芯線通路11aが形成される。そして、軸部材11の先端には、この周囲を公転するスプール31から巻解かれて繰り出される線材32が挿通される複数のノズル11bが、芯線通路11aを中心に放射状に等角度に設けられる(図5)。
【0021】
この実施の形態におけるノズル11bは、軸部材11の先端に芯線通路11aと平行に形成された孔であって、図5に示すように、この孔から成るノズル11bは、芯線通路11aを中心に60度毎に6個形成される場合を示す。
【0022】
図1に戻って、軸部材11は、その基端側端縁と先端側端縁がベアリング14a,15aを介してそれぞれ台板14,15に枢支され、軸部材11が水平になるように台板14,15が基台16に立設される。基台16には、この基台16を移動可能な複数のローラ16aと、この基台16を設置可能な複数の支持脚16bとが設けられる。
【0023】
基端側台板14には、公転手段12を構成するサーボモータ12aがその回転軸12bが軸部材11と平行になるように設けられ、その回転軸12bには第一プーリ12cが設けられる。その第一プーリ12cに対応する軸部材11の基端側には第二プーリ12dが設けられ、第一プーリ12cと第二プーリ12dの間にはベルト12eが掛け回される。
【0024】
サーボモータ12aには、制御手段であるコントローラ8の制御出力が接続され、そのコントローラ8からの指令によりサーボモータ12aが駆動してその回転軸12bが第一プーリ12cとともに回転すると、その回転はベルト12eにより第二プーリ12dに伝達され、その第二プーリ12dが設けられた軸部材11が芯線通路11aを回転中心として回転するように構成される。
【0025】
軸部材11には、その中心軸方向に所定の間隔を開けて一対の支持板21,22が設けられ、この一対の支持板21,22には複数の公転体23が枢支される(図1には二台の公転体23を示す)。公転体23はスプール31を支持するものであって、複数の公転体23は、それらの回転軸C2が軸部材11の中心軸C1と平行になるよう一対の支持板21,22に枢支される。この実施の形態では、ノズル11bの数に等しい6個の公転体23が設けられるものとする(図4及び図5)。
【0026】
複数の公転体23はそれぞれ同一構造であるので、その内の1つを代表して説明する。すると、図3に示すように、この公転体23は、その平面視において、軸部材11の基端側に位置する方形部23aと、軸部材11の先端側に位置する台形部23bとから成り、それらの回転軸C2上における両端には円筒状の枢支部材23c,23dがそれぞれ設けられ、これらの枢支部材23c,23dが一対の支持板21,22にベアリング21a,22aを介してそれぞれ枢支される。このようにして、この複数の公転体23は、その回転軸C2が軸部材11と平行になるように支持板21,22に枢支され、軸部材11の回転によりその軸部材11を中心として公転するように構成される。
【0027】
図1に戻って、この撚り線装置10には、公転体23の自転を禁止する自転禁止手段25が設けられる。図4に示すように、この実施の形態における自転禁止手段25は、公転体23の基端側枢支部材23cに公転体23の回転軸C2と同軸に設けられた第一スプロケット26と、第一スプロケット26と同形同大であって軸部材11と同軸になるように基端側台板14(図1)に回転不能に取付けられた第二スプロケット27と、この第一及び第二スプロケット27を連結するチェーン28とを備える。ここで、符号27aは、第二スプロケット27を基端側台板14(図1)に取付ける取付脚27aである。
【0028】
従って、軸部材11が回転しても、第二スプロケット27は回転しないので、その第二スプロケット27にチェーン28を介して連結された第二スプロケット27と同形同大の第一スプロケット26は、軸部材11を中心として公転しても回転することは無く、この第一スプロケット26が枢支部材23cに設けられた公転体23は、その自転が禁止されることになる。
【0029】
よって、図1図4に示すように、公転体23が基台16と平行な水平状態で一対の支持板21,22間に架設されたとしたならば、その支持板21,22が軸部材11とともに回転すると、複数の公転体23は、その軸部材11の周囲を公転することになるけれども、公転体23自体の自転は禁止されるため、その複数の公転体23は、水平状態で軸部材11の周囲を公転することになる。
【0030】
なお、図4に示すように、この実施の形態では、支持板21に6個の公転体23を60度毎に設けている。このため、周方向に隣接する一対の公転体23におけるそれぞれの第一スプロケット26に単一のチェーン28を掛け回し、そのチェーン28を軸部材11と同軸に設けられた単一の第二スプロケット27に更に掛け回す。そして、補助スプロケット29によりそのチェーン28の弛みを取るようにする場合を示す。これにより、6個の公転体23を3本のチェーン28によりそれらの自転を禁止するように構成される。
【0031】
また、図1に示す様に、この自転禁止手段25並びに公転手段12を構成するプーリ12c,12d及びベルト12e等を覆う覆い部材30が軸部材11の基端が枢支された台板14に設けられる。
【0032】
図1図3に示すように、線材32が巻回されたスプール31は、複数の公転体23にそれぞれ取付けられる。このスプール31の取付け構造は、それぞれ同一であるので、その内の1つを代表して説明すると、図3に示すように、スプール31は、それが回転して線材32を巻解くようにスプール31の中心軸C3を軸部材11の中心軸C1及びそれに平行な公転体23の回転軸C2に直交する面内にして公転体23に枢支される。よって、スプール31は、この公転体23を介して軸部材11の周囲を公転可能に構成される。
【0033】
即ち、公転体23の方形部23aには、スプール31を両側から支持する一対の支持部材33,33が設けられる。これらは同一構造であるので、その内の一方を代表して説明すると、この支持部材33は、公転体23に取付けられた取付材34と、軸部材11の中心軸C1に直交する仮想面において同軸になるようにその取付材34に回転可能に設けられた回転体35と、その回転体35にスプライン結合されてその仮想面内において軸方向に移動可能に設けられた係止棒36とを備える。軸部材11の中心軸C1に直交する仮想面において係止棒36が同軸に成るように取付材34が公転体23における方形部23aの両側にそれぞれ設けられ、これにより一対の係止棒36,36は、その仮想面内において互いに離接可能に取付けられる。
【0034】
そして、この一対の係止棒36は同軸になるように設けられ、互いに近づいてスプール31をその中心軸C3の両側から挟むことにより、そのスプール31の中心軸C3を軸部材11の中心軸C1及びそれに平行な公転体23の回転軸C2に直交する面内にして、そのスプール31を公転体23に枢支するように構成される。この一対の係止棒36は、公転体23の方形部23aにおける両側から突出して設けられ、その方形部23aにはスプール31を支持した係止棒36が互いに離間することを防止する係止具37が設けられる。
【0035】
図2及び図3に示すように、この実施の形態における係止具37は、係止棒36の端縁にその係止棒36と直交するように枢支されたハンドル棒38と、係止棒36がスプール31を支持した状態でハンドル棒38を公転体23に係止する係止フック39とを備える。そして、係止フック39におけるハンドル棒38の係止を解除することにより一対の係止棒36を互いに遠ざけることが可能となり、この一対の係止棒36を互いに遠ざけると、それらの間にあったスプール31を取り外すことができるように構成される。
【0036】
また、本発明の撚り線装置10は、制御手段を構成するコントローラ8により制御されて、線材32を巻解くようにスプール31を回転させる回転駆動手段40を備える。この実施の形態における回転駆動手段は、スプール31に並列に設けられたサーボモータ40であって、図3に示すように、そのサーボモータ40は公転体23における方形部23aに設けられる場合を示す。
【0037】
このサーボモータ40は、その回転軸41aを係止棒36と平行にして、その回転軸41aが公転体23の方形部23aの外側に突出するように取付けられ、方形部23aの外側に突出した回転軸41aには第三プーリ43が設けられる。その第三プーリ43に対応する支持部材33における回転体35には第四プーリ44が設けられ、第三プーリ43と第四プーリ44の間にはベルト45が掛け回される。
【0038】
サーボモータ40には、制御手段であるコントローラ8(図1)の制御出力がそれぞれ接続され、そのコントローラ8からの指令によりサーボモータ40が回転軸41aを第三プーリ43とともに回転すると、その回転はベルト45により第四プーリ44に伝達され、その第四プーリ44が設けられた回転体35がそれにスプライン結合された係止棒36とともに回転し、係止棒36がスプール31を挟持している場合には、そのスプール31を回転させて線材32を巻解き、それにより線材32を繰り出すように構成される。
【0039】
なお、図2及び図3の符号46は、ベルト45の弛みを防止する補助プーリ46であり、符号47は、公転体23の外部に設けられた制御手段であるコントローラ8や図示しない電源等と、軸部材11の周囲において公転する公転体23に設けられたサーボモータ40等とを接続するためのコネクタ47を示す。
【0040】
図2及び図3に示すように、公転体23における台形部23bには、枢支部材23dに平行な支持板51が設けられ、この支持板51には、後述する線材速度検出手段50が設けられる。この線材速度検出手段50には、スプール31から繰り出された線材32を軸部材11の先端側支持板22に枢支された枢支部材23dに貫通させるように案内する複数のプーリ52,53が備えられる。
【0041】
図2に示すように、先端側支持板22には、枢支部材23dを貫通した線材32を軸部材11に向かわせる第一転向プーリ62が設けられ、軸部材11の先端側支持板22が設けられた部位には、第一転向プーリ62から軸部材11に向かう線材32を更に転向させてノズル11bを通過させ、その線材32を軸部材11の先端側から突出させる第二転向プーリ63がノズル11b毎に設けられる。
【0042】
従って、スプール31から巻解かれて先端側支持板22に枢支された枢支部材23dを貫通した線材32は、その後に軸部材11の先端に設けられたノズル11b(図1)にまで案内されるように構成される。
【0043】
そして、公転手段12(図1)によりこの軸部材11を回転させると、この軸部材11とともに芯線通路11aの周囲において複数のノズル11bが回転することになる。このため、芯線13を芯線通路11aにおいて軸方向に移動させとともに、その芯線通路11aを中心に軸部材11を回転させ、それら複数のノズル11bから線材32が繰り出されると、その繰り出された複数の線材32は、軸部材11の先端から繰り出された芯線13の周囲に螺旋状に巻回され、芯線13とその芯線13の周囲に螺旋状に巻き付けられた複数の線材32から成る撚り線9が得られることになる。
【0044】
このため、図1に示すように、この撚り線装置10は、芯線13を軸方向に移動させる芯線移動手段79を備える。この実施の形態における芯線移動手段79は、軸部材11の基端側から芯線通路11aに芯線13を供給する芯線供給機80と、得られた撚り線9を回収する回収手段90とを備える。
【0045】
この実施の形態における回収手段90は、撚り線9を等速でドラム91に巻き取るものであって、撚り線9を巻き取るためのドラム91と、そのドラム91を回転させる巻き取りモータ92と、ドラム91に巻き取られる撚り線9が掛け回される回収側速度検出プーリ93と、その回収側速度検出プーリ93の回転速度を検出する例えばエンコーダからなる回収側回転センサ94とを備える。
【0046】
モータ92はその回転軸92aが軸部材11の中心軸C1に直交する面内になるように基板96に取付けられ、ドラム91はその回転軸92aに同軸に取付けられる。また、回収側速度検出プーリ93は、そこに掛け回される撚り線9が芯線通路11aの延長線上に位置するように、基板96に取付けられる。基板96には、この回収手段90を移動可能な複数のローラ97と、この回収手段90を設置可能な支持脚98とが設けられる。そして、撚り線9は回収側速度検出プーリ93に掛け回された後にドラム91に巻き取られるように構成される。ここで、図の符号99は、回収側速度検出プーリ93に掛け回された撚り線9が回収側速度検出プーリ93から外れないように、その回収側速度検出プーリ93と共に撚り線9を挟む挟持ローラ99を示す。
【0047】
回収側回転センサ94の検出出力は制御手段であるコントローラ8の制御入力に接続され、コントローラ8の制御出力は巻き取りモータ92に接続される。ここで、撚り線9のドラム91への巻き取り速度は、その撚り線9が掛け回された回収側速度検出プーリ93の回転速度により決まることになり、コントローラ8は、回収側回転センサ94が出力する回収側速度検出プーリ93の回転速度が一定になるように巻き取りモータ92を制御し、撚り線9を等速でドラム91に巻き取るように構成される。
【0048】
一方、芯線供給機80は、芯線13が巻回されて貯線された繰り出しスプール81と、その繰り出しスプール81を回転させる繰り出しモータ82と、繰り出しスプール81から巻解かれた芯線13が掛け回される供給側速度検出プーリ83と、その供給側速度検出プーリ83の回転速度を検出する例えばエンコーダからなる供給側回転センサ84とを備える。
【0049】
モータ82はその回転軸82aが軸部材11の中心軸C1に直交する面内になるように基板86に取付けられ、繰り出しスプール81はその回転軸82aに同軸に取付けられる。また、供給側速度検出プーリ83は、そこに掛け回されて繰り出される芯線13が芯線通路11aに真っ直ぐに伸びてそのまま供給されるように、芯線通路11aの延長線上の基板86に取付けられる。基板86には、この芯線供給機80を移動可能な複数のローラ87と、この芯線供給機80を設置可能な支持脚88とが設けられる。そして、繰り出しスプール81が回転することにより巻解かれて繰り出された芯線13は、供給側速度検出プーリ83に掛け回された後、芯線通路11aに挿通される。
【0050】
供給側回転センサ84の検出出力は制御手段であるコントローラ8の制御入力に接続され、コントローラ8の制御出力は繰り出しモータ82に接続される。ここで、図の符号89は、供給側速度検出プーリ83に掛け回された芯線13が供給側速度検出プーリ83から外れないように、その供給側速度検出プーリ83と共に芯線13を挟む挟持ローラ89を示す。
【0051】
芯線通路11aに挿通される芯線13の繰り出しは、繰り出しモータ82による繰り出しスプール81の回転により行われ、その繰り出し速度は、供給側速度検出プーリ83の回転速度により検出される。コントローラ8は、供給側回転センサ84が出力する供給側速度検出プーリ83の回転速度が一定になるように繰り出しモータ82を制御し、芯線13を等速で繰り出しスプール81から巻解いて、芯線通路11aに供給するように構成される。
【0052】
それとともに、コントローラ8は、回収側回転センサ94が出力する回収側速度検出プーリ93の回転速度から求められる撚り線9の回収速度と、供給側速度検出プーリ83の回転速度により決まる芯線13の繰り出し速度をそれぞれ求める。そして、制御手段であるコントローラ8は、芯線13の繰り出し速度と撚り線9の巻き取り速度が目標値となるように、巻き取りモータ92及び繰り出しモータ82をそれぞれ制御するように構成される。
【0053】
これにより、芯線13の繰り出し、撚り線9の巻き取りによって繰り出しスプール81に巻回された芯線13の外径及びドラム91に巻き取られた撚り線9の外径が変化した場合でも、芯線13の繰り出し速度及び撚り線9の巻き取り速度を、目標値に保つように構成される。
【0054】
また、本発明の撚り線装置10は、芯線13に巻き付けられる線材32の巻き付き速度を検出する線材速度検出手段50が設けられる。図2及び図3に示すように、この実施の形態における線材速度検出手段50は、公転体23における台形部23bに支持板51を介して設けられた速度検出用プーリ52と、その支持板51に設けられて速度検出用プーリ52の回転速度を検出する例えばロータリエンコーダ54(図3)とを備える。
【0055】
図2では、スプール31から解き解かれて供給された線材32は速度検出用プーリ52に掛け回された後に補助プーリ53に更に掛け回され、その補助プーリ53に掛け回された線材32を枢支部材23dに貫通させる場合を示し、図3に示す様に、公転体23には速度検出用プーリ52と枢支部材23dの間の線材32を引き延ばす方向に補助プーリ53を移動させるように付勢する弾性体56が設けられる。
【0056】
具体的に、公転体23における支持板51には枢支部材23dに平行なレール57が設けられ、このレール57に枢支台58がそのレール57に沿って往復移動可能に設けられる。公転体23における方形部23aと台形部23bとの間の境部材23eには、レール57の延長線上に鳥居部材59が方形部23a側に膨出するように設けられ、その鳥居部材59の突端にはネジ部材61が軸方向に移動調節可能に取付けられる。そして、このネジ部材61と枢支台58の間に弾性体であるコイルスプリング56が引き延ばされた状態で架設される。
【0057】
補助プーリ53は枢支台58に枢支され、コイルスプリング56が枢支台58と共に補助プーリ53を方形部23a側に引っ張ると、スプール31から解き解かれて芯線13に巻回される線材32はその間で張設され、線材32が緩むことにより、その線材32が線材用プーリ52から外れるような事態を防止するように構成される。そして、ネジ部材61を長手方向に移動調整して、弾性体であるコイルスプリング56の引き延ばし長さを変更することにより、線材32を張設させる付勢力を可変可能に構成される。
【0058】
図1に示す様に、線材速度検出手段50におけるロータリエンコーダ54(図3)の検出出力は制御手段であるコントローラ8の制御入力に接続され、コントローラ8の制御出力は、スプール31を回転させて線材32を巻解く回転駆動手段であるサーボモータ40に接続される。ここで、芯線13に巻き付けられる線材32の速度は、その線材32が掛け回された線材用プーリ52の回転速度により決まることになり、コントローラ8は、ロータリエンコーダ54が出力する線材用プーリ52の回転速度が所定の値になるように回転駆動手段であるサーボモータ40を制御するように構成される。
【0059】
次に、本発明の撚り線の製造方法を説明する。
【0060】
本発明の撚り線の製造方法は、軸方向に移動する芯線13を中心として線材32が巻回されて貯線されたスプール31を公転させ、そのスプール31の回転により巻き解かれて繰り出される線材32を芯線13の周囲に螺旋状に巻回して撚り線9を得る方法である。
【0061】
その特徴ある点は、芯線13に巻き付けられる線材32の巻き付き速度を検出し、芯線13に巻き付けられる線材32の巻き付き速度が所定の値になるようにスプール31の回転を制御しつつスプール32を芯線13の周囲に公転させて、そのスプール31から巻き解かれて繰り出される線材32を芯線13の周囲に螺旋状に巻回させるところにある。
【0062】
上記撚り線装置10を用いる撚り線の製造方法にあっては、軸部材11の中心軸C1に芯線13が通過する芯線通路11aを形成したので、公転体23を公転させつつ軸部材11の基端側から芯線通路11aに芯線13を供給し、軸部材11の先端から繰り出された芯線13の周囲に線材32を螺旋状に巻き付けて撚り線9を製造することになる。
【0063】
その具体的な手順は以下のようになる。
【0064】
即ち、先ず、芯線13が巻回されて貯線された繰り出しスプール81を準備し、図1に示す様に、その繰り出しスプール81を繰り出しモータ82の回転軸82aに取付け、繰り出しスプール81の回転軸を軸部材11の中心軸C1に直交する面内にする。そして、繰り出しスプール81から巻解いた芯線13を供給側速度検出プーリ83に掛け回した後、芯線通路11aに挿通する。
【0065】
一方、線材32が巻回されて貯線された複数のスプール31を準備し、図3に示すように、それらを複数の公転体23に枢支させる。具体的には、同軸になるように設けられて互いに離間した一対の係止棒36の間にスプール31を位置させ、その後に一対の係止棒36を互いに近づけてスプール31をその中心軸C3の両側から挟む。それにより、そのスプール31の中心軸C3を軸部材11の中心軸C1に直交する面内にして、そのスプール31を公転体23に枢支する。そして、スプール31を支持した係止棒36を係止具37に係止させて互いに離間することを防止する。
【0066】
その後、図2に示すように、スプール31から線材32を巻解いて、線材速度検出手段50を構成する複数のプーリ52,53に掛け回し、軸部材11の先端側支持板22に枢支された枢支部材23dに貫通させる。そして、枢支部材23dを貫通した線材32を軸部材11の先端におけるノズル11bに貫通させる。
【0067】
このように複数のノズル11bからそれぞれ順次引き出された複数の線材32を、図1に示す様に、軸部材11の先端から引き出された芯線13と共に回収手段90である回収側速度検出プーリ93に掛け回し、その後ドラム91にそれらの端部を係止させる。
【0068】
この状態から、ドラム91が巻き取る回収速度と、芯線供給機80における芯線13の繰り出し速度が目標値となるように、巻き取りモータ92及び繰り出しモータ82をそれぞれ制御し、軸部材11の芯線通路11aにおいて芯線13を軸方向に等速度で移動させる。
【0069】
このように、芯線13を軸方向に移動させるとともに、軸部材11を回転させて複数のスプール31を軸部材11を中心として公転させ、複数のスプール31からそれぞれ巻き解かれて軸部材11の先端における複数のノズル11bから順次繰り出される複数の線材32を、軸部材11の先端から順次繰り出される芯線13の周囲に螺旋状に巻き付けて撚り線9を製造する。
【0070】
芯線13の移動に際して、制御手段であるコントローラ8は、芯線13の繰り出し速度、撚り線9の巻き取り速度が目標値となるように、巻き取りモータ92及び繰り出しモータ82をそれぞれ制御する。それとともに、制御手段であるコントローラ8は、芯線の移動速度で定められる所定の速度でスプール31が公転するように軸部材11の回転速度を制御し、芯線13の周囲に螺旋状に巻回される線材32の巻き付けピッチを均一にする。そして、製造された撚り線9を順次ドラム91に巻き付けて回収する。
【0071】
このように、制御手段であるコントローラ8は、芯線13の繰り出し速度と撚り線9の巻き取り速度が目標値となるように、巻き取りモータ92及び繰り出しモータ82をそれぞれ制御することにより、芯線13の繰り出し、撚り線9の巻き取りによって繰り出しスプール81に巻回された芯線13の外径及びドラム91に巻き取られた撚り線9の外径が変化した場合でも、軸部材11の芯線通路11aを軸方向に移動する芯線13の移動速度を、一定の目標値に保つ。
【0072】
また、軸部材11の周囲において公転する複数の公転体23の自転は、自転禁止手段25により禁止される。そして、公転体23に枢支されたスプール31にあっては、回転駆動手段40により回転して線材32を巻解き、スプール31の円周方向に引き出される線材32は、その引き出しの際に捩られるようなことはない。このように捩られていない線材32を芯線13の周囲に巻回することにより得られた撚り線9は、その線材32の捩りに起因する撚り戻しが生じることは無い。
【0073】
このため、芯線13の移動速度に対応する所望の速度でスプール31を軸部材11の周囲において公転させることにより、単位長さの芯線13の周囲に線材32が螺旋状に所定のピッチで規則正しく撚られた撚り線9を得ることができる。
【0074】
また、本発明では、芯線13の周囲に線材32を螺旋状に巻回する際に、芯線13に巻き付けられる線材32の巻き付き速度を検出し、芯線13に巻き付けられる線材32の巻き付き速度が所定の値になるようにスプール31の回転を制御する。上記撚り線装置10では、線材速度検出手段50により芯線13に巻き付けられる線材32の巻き付き速度が検出される。具体的には線材32が掛け回された速度検出用プーリ52の回転速度をロータリエンコーダ54が検出することにより線材32の巻き付き速度を検出し、スプール31の回転は、線材32の巻き付き速度の検出出力が入力されたコントローラ8からの指令に基づいてサーボモータ40により制御される。
【0075】
即ち、スプール31から巻解かれて繰り出される線材32が、当初軸方向に移動する芯線13に沿って延び、その後に、軸方向に移動する芯線13の周囲に螺旋状に巻回されるものである場合において、芯線13を中心としてスプール31を公転させると、そのスプール31から繰り出されて芯線13に沿うように延びる線材32に遠心力が作用する。
【0076】
このように、芯線13に沿って延びる線材32に遠心力が作用するような状態で、撚り線9の製造速度を高めることを目的として、芯線13を中心として公転するスプール31の公転速度を高めると、その線材32に作用する遠心力により、その遠心力に対抗する為に線材32に張力が生じる。
【0077】
また、線材32はスプール31の円周方向に引き出される為に、スプール31に貯線された線材32の巻回された直径は、線材32が引き出される従って小さくなる。すると、スプール31の周方向に引き出される線材32と芯線13からの距離も変動し、そのスプール31から繰り出されて芯線13に沿うように延びる線材32に作用する遠心力も、公転の毎に又は線材32が繰り出される毎に変化することになる。
【0078】
してみると、芯線13の繰り出し速度と共にスプール31の公転速度を高めると、遠心力に対抗する為に線材32に生じる張力もスプール31の公転の毎に又は線材32が繰り出される毎に変化し、芯線13に巻回される線材32のテンションが常に変化することになる。
【0079】
しかし、本発明では、芯線13に巻き付けられる線材32の速度を検出し、その線材32の速度が所定の値になるようにスプール31の回転を制御する。上述した撚り線装置10では、線材速度検出手段50により芯線13に巻き付けられる線材32の速度を検出し、制御手段であるコントローラ8が芯線13に巻き付けられる線材32の速度が所定の値になるように、線材32を繰り出すスプール31の回転を制御することになる。
【0080】
具体的に、例えば、スプール31から繰り出される線材32に遠心力が作用して、線材32に加わるテンションが増加すると、芯線13に巻き付けられる線材32の繰り出し速度は遅延しそうであるが、この場合には、スプール31の回転を早めて、芯線13に巻き付けられる線材32の繰り出し速度の遅延を防止し、その速度を一定に保つ。
【0081】
逆に線材32に作用する遠心力が減少すると、線材32に加わるテンションも減少して芯線13に巻き付けられる線材32の繰り出し速度が早まることになるけれども、この場合には、スプール31の回転を遅延させて、芯線13に巻き付けられる線材32の繰り出し速度が早まることを防止し、その速度を一定に保つ。
【0082】
すると、スプール31から繰り出される線材32に遠心力が作用して、線材32に加わるテンションが変化したとしても、単位長さあたりの芯線13に螺旋状に巻回される線材32の長さが変化することはなくなる。
【0083】
即ち、芯線13の単位長さあたりの移動に際して、スプール31の公転回数及び角度は変化することはないので、芯線13に巻き付けられる線材32の速度が一定値となる所定の値であれば、各ノズル11bから繰出されて単位長さあたりの芯線13に螺旋状に巻回される線材32の長さは常に一定となる。
【0084】
そして、撚り線9の製造速度を高めるには、芯線13の移動速度と共に、その芯線13を中心とするスプール31の公転速度を高めることが必要となるけれども、芯線13に巻き付けられる線材の速度が所定の値になるようにスプール31の回転を制御する本発明にあっては、芯線13の移動速度と芯線13を中心とするスプール31の公転速度を高めても、単位長さあたりの芯線13に螺旋状に巻回される線材32の長さは常に一定となるので、撚りの程度が均一な撚り線9を得ることが可能となる。
【0085】
よって、本発明の撚り線装置及び撚り線の製造方法では、撚りの程度を均一にしつつ、撚り線9の製造速度を著しく高めることが可能になるのである。
【0086】
また、線材速度検出手段50が、速度検出用プーリ52とロータリエンコーダ54を備えるので、芯線13に巻き付けられる線材32の速度を比較的安価かつ容易に検出することができ、速度検出用プーリ52に掛け回された線材32が更に掛け回される補助プーリ53と、速度検出用プーリ52から補助プーリ53を遠ざける方向に付勢する弾性体56を備えるので、速度検出用プーリ52に線材32を所定のテンションで掛け回すことができ、その速度検出用プーリ52に対して線材32が滑るようなことを防止して、線材32の速度を確実に検出させることが可能となる。
【0087】
なお、上述した実施の形態では、回転駆動手段として、サーボモータ40を備えたものを例示したけれども、この回転駆動手段は、スプール31を回転可能である限り、サーボモータに限られない。例えば、圧縮エア等の流体圧によりスプールを回転可能な流体圧モータを備えるようなものであっても良い。
【0088】
また、上述した実施の形態では、6本の線材32が芯線13の周囲に螺旋状に巻き付けられた撚り線9を得る場合を説明した。けれども、芯線13の周囲に螺旋状に巻き付けられる線材32の数は6本に限られずに、線材32の数は、3本であっても、4本であっても、5本であっても、7本以上であっても良い。
【0089】
また、上述した実施の形態では、得られた撚り線9を回収手段90であるドラム91に巻き付けて貯線する場合を説明した。けれども、得られた撚り線9は必ずしも貯線しなくても良い。例えば、得られた撚り線9を図示しない巻線機にそのまま供給して、その巻線機により直ちに巻線に使用するようにしても良い。
【0090】
また、上述した実施の形態では、線材速度検出手段50が、速度検出用プーリ52と、その速度検出用プーリ52の回転速度を検出するロータリエンコーダ54とを備える場合を説明した。けれども、芯線13に巻き付けられる線材32の速度を検出し得る限り、この線材速度検出手段50は、速度検出用プーリ52の回転速度を検出する形式に限られる物ではない。例えば、レーザ光を用いて線材32の速度を非接触で測定するようにしても良い。
【0091】
また、上述した実施の形態では、線材速度検出手段50が各公転体23にそれぞれ設けられる場合を説明した。けれども、芯線13に巻き付けられる線材32の速度を検出し得る限り、この線材速度検出手段50は、各公転体23に設けることを必要とせずに、他の部位に取付けるようにしても良い。例えば、図6に示す様に、軸部材11の先端側に設けられた支持板22に、線材速度検出手段100を設けるようにしても良い。
【0092】
この図6に示す線材速度検出手段100は、第一及び第二転向プーリ62,63間の線材32に直交する方向に延びて先端側支持板22に設けられたレール101と、そのレール101に移動可能に枢支された補助プーリ102と、先端側支持板22に設けられて第一転向プーリ62からの線材32を補助プーリ102側に転向させる第三転向プーリ103と、その補助プーリ102で折り返された線材32を第二転向プーリ63側に再び転向させる速度検出用プーリ104と、その速度検出用プーリ104の回転速度を検出するロータリエンコーダ105と、第三転向プーリ103及び速度検出用プーリ104の双方から補助プーリ102を離間させる方向に付勢する弾性体106とを備える。
【0093】
即ち、スプール31から巻解かれて枢支部材23dを貫通した線材32は第一転向プーリ62により転向して芯線13側に向かい、第三転向プーリ103において補助プーリ102側に更に転向する。第三プーリ102において転向した線材32は補助プーリ102掛け回されて折り返され、速度検出用プーリ104に向かい、その速度検出用プーリ104に掛け回された後に軸部材11のノズル11bに向かうことになる。
【0094】
この図6に示す線材速度検出手段100では、ノズル11b近傍の線材32が掛け回された速度検出用プーリ104の回転速度をロータリエンコーダ105が検出することにより線材32の巻き付き速度を検出することが可能となり、比較的安価かつ容易に線材32の巻き付け速度を検出することができる。
【0095】
そして、制御手段であるコントローラ8が芯線13に巻き付けられる線材32の速度が所定の値になるように、線材32を繰り出すスプール31の回転を制御することにより、単位長さあたりの芯線13に螺旋状に巻回される線材32の長さが変化することを防止して、均一に撚られた撚り線9を得ることができる。
【0096】
また、図6に示す線材速度検出手段100においても、速度検出用プーリ104に掛け回された線材32が更に掛け回される補助プーリ102と、速度検出用プーリ104から補助プーリ102を遠ざける方向に付勢する弾性体106を備えるので、速度検出用プーリ104に線材32を所定のテンションで掛け回すことができ、その速度検出用プーリ104に対して線材32が滑るようなことを防止して、線材32の速度を確実に検出させることが可能となる。
【符号の説明】
【0097】
8 コントローラ(制御手段)
9 撚り線
10 撚り線装置
12 公転手段
13 芯線
31 スプール
32 線材
40 サーボモータ(回転駆動手段)
50,100 線材速度検出手段
52,104 速度検出用プーリ
53,102 補助プーリ
54,105 ロータリエンコーダ
56,106 弾性体
79 芯線移動手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6