(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】2次元光偏向器
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20220104BHJP
G02B 26/02 20060101ALI20220104BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20220104BHJP
H01L 41/113 20060101ALI20220104BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20220104BHJP
H01L 41/053 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/02 E
B81B3/00
H01L41/113
H01L41/09
H01L41/053
(21)【出願番号】P 2018021884
(22)【出願日】2018-02-09
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 誠
(72)【発明者】
【氏名】小山 孝明
(72)【発明者】
【氏名】浅利 友隆
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-258339(JP,A)
【文献】特開2011-013621(JP,A)
【文献】特開2015-169745(JP,A)
【文献】国際公開第2014/068846(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/172652(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0069754(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104755992(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10
G02B 26/02
B81B 3/00
H01L 41/113
H01L 41/09
H01L 41/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーと、
前記ミラーを囲むインナフレームと、
前記ミラーと前記インナフレームとの間に設けられ、前記ミラーを第1の軸に沿って駆動するためのインナアクチュエータと、
前記ミラーと前記インナアクチュエータとを連結し前記第1の軸に沿って設けられたトーションバーと、
前記インナアクチュエータと前記インナフレームとを連結し前記第1の軸に沿って設けられたフィックス部と、
前記インナフレームを囲むアウタフレームと、
前記アウタフレームの第2の軸に沿った連結部と前記インナフレームの前記第2の軸に沿った外側連結部とを連結して前記インナフレームを前記第2の軸に沿って駆動するためのアウタアクチュエータと
を具備する2次元光偏向器において、
前記トーションバーの幅及び前記フィックス部の幅は、前記2次元光偏向器が動作したときに前記ミラーの振動と前記インナフレームの振動とがほぼ逆相となるように、定められたことを特徴とする2次元光偏向器。
【請求項2】
前記フィックス部の幅は前記トーションバーの幅より大きい請求項1に記載の2次元光偏向器。
【請求項3】
前記トーションバーの幅は約130μmであり、前記フィックス部の幅は約130~300μmである請求項1に記載の2次元光偏向器。
【請求項4】
さらに、前記
インナアクチュエータの前記フィックス部の近傍に設けられた圧電センサを具備し、
前記圧電センサの信号線を前記フィックス部上に設けた請求項1~3のいずれかに記載の2次元光偏向器。
【請求項5】
前記インナアクチュエータは連結された2つの半リング状圧電アクチュエータを具備し、
前記アウタアクチュエータはミアンダ状圧電アクチュエータを具備する請求項1~4のいずれかに記載の2次元光偏向器。
【請求項6】
ミラーと、
前記ミラーを囲むインナフレームと、
前記ミラーと前記インナフレームとの間に設けられ、前記ミラーを第1の軸に沿って駆動するためのインナアクチュエータと、
前記ミラーと前記インナアクチュエータとを連結し前記第1の軸に沿って設けられたトーションバーと、
前記インナアクチュエータと前記インナフレームとを連結し前記第1の軸に沿って設けられたフィックス部と、
前記インナフレームを囲むアウタフレームと、
前記アウタフレームの第2の軸に沿った連結部と前記インナフレームの前記第2の軸に沿った外側連結部とを連結して前記インナフレームを前記第2の軸に沿って駆動するためのアウタアクチュエータと
を備えた2次元光偏向器と、
前記2次元光偏向器を制御する制御ユニットとを
具備し、
前記インナアクチュエータ
は、前記トーションバーを中心として一方の側に設けた第1のインナアクチュエータおよび第1のセンサと、他方の側に設けた第2のインナアクチュエータおよび第2のセンサ
とを備え、
前記制御ユニットは、前記第1のインナアクチュエータと前記第2のインナアクチュエータに逆位相の駆動信号を加えるとともに、前記第1のセンサおよび前記第2のセンサからのセンサ信号を受信してフィードバック制御を実施し、
前記トーションバーの幅
は約130μmであり、前記フィックス部の幅は
約130~300μmであり、
前記2次元光偏向器が動作したときに前記ミラーの振動と前記インナフレームの振動とがほぼ逆相である2次元光偏向装置。
【請求項7】
前記インナフレームの幅は、前記インナアクチュエータの幅よりも小さい請求項6に記載の2次元光偏向装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2次元光偏向器に関する。
【背景技術】
【0002】
2次元光偏向器は、光走査器として、ピコプロジェクタ、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、レーザレーダ、バーコードリーダ、エリアセンサ、ヘッドランプ等に適用され、半導体製造プロセス及びマイクロマシン技術を用いて製造されたマイクロ電気機械システム(MEMS)構造で構成されている。
【0003】
図9は従来の2次元光偏向器を示す斜視図である(参照:特許文献1の
図5、特許文献2の
図3)。
図9において、10は2次元光偏向器、20は2次元光偏向器10を制御するための制御ユニット、30はレーザ光L1を発生するためのレーザ光源である。L2はレーザ光L1の2次元光偏向器10からの反射光である。
【0004】
図9において、2次元光偏向器10は円形または楕円形のミラー1の水平駆動系及び垂直駆動系よりなる。
【0005】
水平駆動系は、ミラー1を囲む可動のインナフレーム2と、ミラー1とインナフレーム2との間に設けられ、ミラー1を水平走査軸(Y軸)に沿って駆動するために、インナフレーム2の内側連結部2a、2bによって支持され、連結された2つの半リング状圧電アクチュエータ3a、3b(インナ圧電アクチュエータ)とによって構成されている。また、ミラー1と半リング状圧電アクチュエータ3a、3bとはY軸に沿ったトーションバー4a、4bによって連結され、さらに、半リング状圧電アクチュエータ3a、3bとインナフレーム2とはY軸に沿ったフィックス部5a、5bによって連結されている。
【0006】
半リング状圧電アクチュエータ3a、3b間には圧電センサ6a、6bが設けられ、フィックス部5a、5bは、後述の
図10に示すごとく、圧電センサ6a、6bのセンサ信号線L
6a、L
6bを通過させるためのものである。尚、センサ信号線L
6a、L
6bは後述のミアンダ状圧電アクチュエータ8a、8bのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)層とは図示しない絶縁層によって電気的に絶縁されている。これにより、圧電センサ6a、6bの電圧V
sa、V
sbと半リング状圧電アクチュエータ3a、3bの電圧V
Y1、V
Y2とのクロストークを避けることができる。
【0007】
他方、ミラー1の垂直駆動系は、偏光器の基準面を構成する固定のアウタフレーム7と、ミラー1を垂直走査軸(X軸)に沿って駆動するためにアウタフレーム7の連結部7a、7bとインナフレーム2の外側連結部2c、2dとの間に連結されたミアンダ状(蛇腹状)圧電アクチュエータ(アウタ圧電アクチュエータ)8a、8bとによって構成されている。ミアンダ状圧電アクチュエータ8a、8bはアウタフレーム7の連結部7a、7bとインナフレーム2の外側連結部2c、2dとを結ぶX軸に対称に設けられているので、ミラー1のX軸からのずれを抑制できる。
【0008】
半リング状圧電アクチュエータ3a、3bには、周波数fyの互いに逆位相の正弦波電圧Vya、Vybが電極パッドPya、Pybを介して印加される。これにより、ミラー1はY軸回りに揺動する。このとき、制御ユニット20は電極パッドPsa、Psbを介して得られる圧電センサ6a、6bのセンサ電圧Vsa、Vsbが最大となるように正弦波電圧Vya、Vybの周波数fyをフィードバック制御して共振周波数fyを実現する。
【0009】
他方、ミアンダ状圧電アクチュエータ8a、8bには、非共振周波数fxの互いに逆位相の鋸歯波電圧Vx1、Vx2が電極パッドPx1a、Px2a;Px1b、Px2bを介して印加される。具体的には、鋸歯波電圧Vx1はミアンダ状圧電アクチュエータ8a、8bの奇数番目圧電カンチレバー8a-1、8a-3、8a-5;8b-1、8b-3、8b-5に印加され、他方、鋸歯波電圧Vx2はミアンダ状圧電アクチュエータ8a、8bの偶数番目圧電カンチレバー8a-2、8a-4;8b-2、8b-4に印加される。従って、たとえば、奇数番目圧電カンチレバー8a-1、8a-3、8a-5;8b-1、8b-3、8b-5は下方向に屈曲し、偶数番目圧電カンチレバー8a-2、8a-4;8b-2、8b-4は上方向に屈曲する。この結果、ミラー1がX軸回りに揺動する。
【0010】
図9においては、ミラー1のX軸回りの揺動によるインナフレーム2の振動を抑制するために、インナフレーム2は上面視で矩形として面積を大きくして質量を大きくしてある。しかし、この場合、インナフレーム2の垂直走査軸(X軸)回りの慣性モーメントが大きくなり、ミラー1の垂直走査軸(X軸)回りの振れ角が小さくなる。このため、
図10に示すごとく、インナフレーム2は上面視で細くし、垂直走査軸(X軸)回りの慣性モーメントを小さくすることが提案されている(参照:特許文献3の
図1)。この場合、インナフレーム2の幅は半リング状圧電アクチュエータ3a、3bの幅より小さくたとえば1000μmで一様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2015-184592号公報
【文献】特開2016-9050号公報
【文献】特開2017-207630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、
図11の(A)に示すごとく、ミラー1の振れ角αがトーションバー4aの振れ角βを超えて共振によるΔβが上乗せされた振れ角領域に入ると、トーションバー4aは半リング状圧電アクチュエータ3a、3bの変形動作に対して位相遅れを伴いながらフィックス部5aを介してインナフレーム2の振動γを誘発する。つまり、
図11の(B)に示すごとく、ミラー1の捩り応力S1は、半リング状圧電アクチュエータ3a、3bの捩り応力S2、インナフレーム2の捩り応力S3として伝播する。
【0013】
たとえば、トーションバー4a、4bの幅W1及びフィックス部5a、5bの幅W2を同一の1000μmとすると、
図12に示すごとく、トーションバー4a、4bの幅W1及びフィックス部5a、5bの幅W2が大きいためにフィックス部5a、5bからインナフレーム2に伝播される回転トルクは大きくなる。従って、インナフレーム2の振動と半リング状圧電アクチュエータ3a、3bの振動とは位相遅れなく同相となり、ミラー1の振動もインナフレーム2に対して同相となる。この結果、ミラー1のアウタフレーム7に対する振れ角効率は小さくなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題を解決するために、本発明に係る2次元光偏向器は、ミラーと、ミラーを囲むインナフレームと、ミラーとインナフレームとの間に設けられ、ミラーを第1の軸に沿って駆動するためのインナアクチュエータと、ミラーとインナアクチュエータとを連結し第1の軸に沿って設けられたトーションバーと、インナアクチュエータとインナフレームとを連結し第1の軸に沿って設けられたフィックス部と、インナフレームを囲むアウタフレームと、アウタフレームの第2の軸に沿った連結部とインナフレームの第2の軸に沿った外側連結部とを連結してインナフレームを第2の軸に沿って駆動するためのアウタアクチュエータとを具備する2次元光偏向器において、トーションバーの幅及びフィックス部の幅は、2次元光偏向器が動作したときにミラーの振動とインナフレームの振動とがほぼ逆相となるように、定められたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ミラーの振動とインナフレームの振動とがほぼ逆相となるので、ミラーの振れ角効率を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る2次元光偏向器の実施の形態を示す部分上面図である。
【
図2】
図1の2次元光偏向器の動作を説明するための部分上面図である。
【
図3】
図1の2次元光偏向器の動作を説明するための部分断面図である。
【
図4】
図1の2次元光偏向器の動作を示す表である。
【
図5】W1’=130μm、W2’=130μmの場合の
図1の2次元光偏向器の動作を説明するためのタイミング図である。
【
図6】W1’=130μm、W2’=150μmの場合の
図1の2次元光偏向器の動作を説明するためのタイミング図である。
【
図7】W1’=1000μm、W2’=1000μmの場合の
図1の2次元光偏向器の動作を説明するためのタイミング図である。
【
図8】
図1の2次元光偏向器の製造方法を説明するための断面図である。
【
図11】課題を説明するための
図10のミラー、半リング状圧電アクチュエータ及びインナフレームを示す図であって、(A)は断面図、(B)は部分上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明に係る2次元光偏向器の実施の形態を示す部分上面図である。
【0018】
図1においては、
図10のトーションバー4a、4bの代りに、幅W1’(
図2参照)を有するトーションバー4a’、4b’を設け、また、
図10のフィックス部5a、5bの代りに幅W2’(
図2参照)を有するフィックス部5a’、5b’を設けてある。幅W1’、W2’は1000μmより十分小さい。従って、
図2に示すごとく、ミラー1の捩り応力S1’は、幅W1’の小さいトーションバー4a’、4b’により位相遅れで半リング状圧電アクチュエータ3a、3bの捩り応力S2’として伝播し、さらに、幅W2’の小さいフィックス部5a’、5b’により位相遅れでインナフレーム2の捩り応力S3’として伝播する。また、ミラー1、インナフレーム2、半リング状圧電アクチュエータ3a、3b、ミアンダ状圧電アクチュエータ8a、8bおよびアウタフレーム7等は、
図10の2次元光偏向器と同じである。すなわち、インナフレーム2は上面視で細い幅とし、垂直走査軸(X軸)回りの慣性モーメントを小さくするために、たとえば1000μmで一様の円環形状である。また、半リング状圧電アクチュエータ3a、3b(第1のインナアクチュエータ、第2のインナアクチュエータ)の間には、Y軸を挟んで第1のセンサ6aおよび第2のセンサ6bを設けている。
【0019】
たとえば、トーションバー4a’、4b’の幅W1’を130μmとし、フィックス部5a’、5b’の幅W2’を130~300μmとすると、
図3に示すごとく、トーションバー4a’、4b’の幅W1’及びフィックス部5a’、5b’の幅W2’が小さいためにインナフレーム2に伝播される回転トルクは小さくなる。従って、インナフレーム2の振動と半リング状圧電アクチュエータ3a、3bの振動とは位相遅れして逆相とすることができ、この場合、ミラー1の振動もインナフレーム2に対して逆相となる。この結果、ミラー1のアウタフレーム7に対する振れ角効率は大きくなる。
【0020】
図4はトーションバー4a’、4b’の幅W1’(μm)、フィックス部5a’、5b’の幅W2’(μm)とアウタフレーム7に対するミラー1の振れ角(deg/V)との関係を示す表である。
【0021】
図4に示すように、トーションバー4a’、4b’の幅W1’が約130μmのときには、フィックス部5a’、5b’の幅W2’が約130~300μmのときに、アウタフレーム7に対するミラー1の振れ角は0.64~0.654と大きくなる。これは後述の
図5、
図6に示すごとく、ミラー1の振動とインナフレーム2の振動とがほぼ逆位相となるためである(
図3参照)。また、
図4に示すように、トーションバー4a’、4b’の幅W1’が約130μmのときでも、フィックス部5a’、5b’の幅W2’が約70μmとなると、アウタフレーム7に対するミラー1の振れ角はやや小さくなる。従って、フィックス部5a’、5b’の幅は、少なくとも50μm以上とすることが好ましい。これはミラー1の振動とインナフレーム2の振動との逆相が少し崩れるためである。また、この場合に、フィックス部5a’、5b’の幅W2’が約70μmになると、フィックス部5a’、5b’が破損し易くなる。他方、
図4に示すように、トーションバー4a’、4b’の幅W1’が共に1000μmのときには、つまり、
図11のW1=W2=1000μmのときには、アウタフレーム7に対するミラー1の振れ角は0.412と小さくなる。これは後述の
図7に示すごとく、ミラー1の振動とインナフレーム2の振動とが同相となるためである(
図12参照)。
【0022】
トーションバー4a’、4b’の幅W1’が130μmかつフィックス部5a’、5b’の幅W2’が130μmの場合について
図5を参照して説明する。
【0023】
図5の(A)に示すごとく、アウタフレーム7に対する半リング状PZTアクチュエータ3a、3bの振れ角が変化すると、ミラー1のアウタフレーム7に対する振れ角が
図5の(B)に示すごとく同相で変化する。このとき、インナフレーム2のミラー1に対する振れ角は
図5の(B)に示すごとく逆相で変化する。この結果、ミラー1の振れ角とインナフレーム2の振れ角とが逆相で変化する。
【0024】
トーションバー4a’、4b’の幅W1’が130μmかつフィックス部5a’、5b’の幅W2’が300μmの場合について
図6を参照して説明する。なお、
図6において振動の波形は、簡素化して示している。
【0025】
図6の(A)に示すごとく、アウタフレーム7に対する半リング状PZTアクチュエータ3a、3bの振れ角が変化すると、ミラー1のアウタフレーム7に対する振れ角が
図6の(B)に示すごとく逆相で変化する。このとき、インナフレーム2のミラー1に対する振れ角は
図6の(B)に示すごとく同相で変化する。この結果、ミラー1の振れ角とインナフレーム2の振れ角とが逆相で変化する。
【0026】
トーションバー4a’、4b’の幅W1’が1000μmかつフィックス部5a’、5b’の幅W2’が1000μmの場合について
図7を参照して説明する。
【0027】
図7の(A)に示すごとく、アウタフレーム7に対する半リング状PZTアクチュエータ3a、3bの振れ角が変化すると、ミラー1のアウタフレーム7に対する振れ角が
図7の(B)に示すごとく同相で変化する。このとき、インナフレーム2のミラー1に対する振れ角も
図7の(B)に示すごとく同相で変化する。この結果、ミラー1の振れ角とインナフレーム2の振れ角とが同相で変化する。
【0028】
図1の光偏向器10の製造方法を
図8を参照して説明する。
【0029】
始めに、単結晶シリコンサポート層(ハンドル層ともいう)801、酸化シリコン中間層(埋込層、ボックス層ともいう)802及び単結晶シリコン活性層(デバイス層ともいう)803よりなるSOI(Silicon-On-Insulator)構造を準備する。次いで、単結晶シリコンサポート層801及び単結晶シリコン活性層803を熱酸化して酸化シリコン層804及び酸化シリコン層805を形成する。
【0030】
次に、酸化シリコン層805上に、インナフレーム2、圧電カンチレバー8a-1、8a-2、8a-3、8a-4、8a-5;8b-1、8b-2、8b-3、8b-4、8b-5を形成する。すなわち、スパッタリング法による約50nmのTi及びその上の約150nmのPtよりなるTi/Pt下部電極層806、アーク放電反応性イオンプレーティング(ADRIP)法による約3μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)層807、及びスパッタリング法による約150nmのTi上部電極層808を形成する。
【0031】
次に、上部電極層808、PZT層807をフォトリソグラフィ及びエッチング法によってパターン化し、次いで、下部電極層806及び酸化シリコン層805をフォトリソグラフィ及びエッチング法によってパターン化する。
【0032】
次に、プラズマ化学的気相析出(PCVD)法により約500nmの層間酸化シリコン層809を形成する。次いで、層間酸化シリコン層809のうち偶数番目圧電カンチレバー8a-2、8a-4;8b-2、8b-4の領域をフォトリソグラフィ及びドライエッチング法により除去し、当該領域にPCVD法により約500nmの層間窒化シリコン層(図示せず)を形成する。
【0033】
次に、フォトリソグラフィ及びドライエッチング法により層間酸化シリコン層809にコンタクトホールを開孔する。このコンタクトホールはインナ圧電アクチュエータ3a、3b、圧電センサ6a、6b、圧電カンチレバー8a-1、8a-3、8a-5;8b-1、8b-3、8b-5及び電極パッドP(Px1a、…)に相当する。
【0034】
次に、フォトリソグラフィ、スパッタリング及びソフトオフ法によりAlCu(1%Cu)よりなる配線層810を形成する。配線層810はインナ圧電アクチュエータ3a、3b、圧電センサ6a、6b及び圧電カンチレバー8a-1、8a-3、8a-5;8b-1、8b-3、8b-5の上部電極層808並びにこれらの電極パッドP(Px1a、…)間を電気的に接続する。
【0035】
同様に、層間窒化シリコン層にコンタクトホールを開孔し、配線層を形成し、圧電カンチレバー8a-2、8a-4;8b-2、8b-4と電極パッドとの間を電気的に接続する。
【0036】
次に、フォトリソグラフィ及びドライエッチング法により酸化シリコン層804をエッチングし、インナフレーム2、アウタフレーム7及びミラー1の補強リブ1aの領域のみに酸化シリコン層804を残す。
【0037】
次に、酸化シリコン層804をエッチングマスクとしてドライエッチング法により単結晶シリコンサポート層801をエッチングする。次いで、単結晶シリコンサポート層801をエッチングマスクとしてウェットエッチング法により酸化シリコン層802をエッチングする。
【0038】
最後に、蒸着法によりAl反射層811を単結晶シリコン活性層803上に形成し、フォトリソグラフィ及びエッチング法によりAl反射層811をパターン化し、これにより、2次元光偏向器10は完成する。この場合、内側連結部2a、2b、外側連結部2c、2d、トーションバー4a’、4b’、フィックス部5a’、5b’及び連結部7a、7bは単結晶シリコン活性層803よりなる。
【0039】
尚、上述の実施形態において、半リング状圧電アクチュエータ3a,3bの形状は、円形状のミラー1の外縁に相似する半円形からフィックス部5a,5bと上辺および下辺にて接続し、内側連結部2a、2bと左辺および右辺にて接続する八角形に近似する形状としている。これにより、インナ圧電アクチュエータを円形状とした場合に比べて長く形成することができるので、ミラー1の振り角を大きくすることができるからである。また、インナフレーム2の幅は、剛性が確保できる範囲で半リング状圧電アクチュエータ3a,3bの幅よりも細くする。細幅とすることでX軸を中心として揺動する際に可動部の大きさを小さく(軽量化)することができる。
【0040】
また、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲のいかなる変更に適用し得る。
【符号の説明】
【0041】
10:2次元光偏向器
20:制御ユニット
30:レーザ光源
1:ミラー
1a:補強リブ
2:インナフレーム
2a、2b:内側連結部
2c、2d:外側連結部
3a、3b:半リング状圧電アクチュエータ(インナ圧電アクチュエータ)
4a、4b;4a’、4b’:トーションバー
5a、5b;5a’、5b’:フィックス部
6a、6b:圧電センサ
7:アウタフレーム
7a、7b:連結部
8a、8b:ミアンダ状圧電アクチュエータ(アウタ圧電アクチュエータ)
Px1a、Px2a、Px1b、Px2b、Psa、Psb:電極パッド