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  • 特許-保持具およびステージ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】保持具およびステージ装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20220104BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
G01B21/00 L
H01L21/68 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2016059600
(22)【出願日】2016-03-24
(65)【公開番号】P2017173140
(43)【公開日】2017-09-28
【審査請求日】2018-08-10
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達矢
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 広和
【合議体】
【審判長】岡田 吉美
【審判官】清水 靖記
【審判官】濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-213418(JP,A)
【文献】特開2000-175336(JP,A)
【文献】特開2013-187432(JP,A)
【文献】特開2010-267806(JP,A)
【文献】登録実用新案第3201319(JP,U)
【文献】実開昭61-153973(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第2287860(EP,A1)
【文献】特開2002-198284(JP,A)
【文献】実開昭58-93367(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B21/00-21/32
H01L21/68
H02G 1/00-11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止部とステージ装置の可動部とに連結される紐状部材の保持具であって、
前記保持具は、前記静止部または前記可動部の一方に設けられ、
前記紐状部材は、前記保持具に拘束される拘束部と、前記静止部または前記可動部の他方に向かって延び、前記可動部の移動に伴い変形可能である非拘束部と、前記拘束部と前記非拘束部との境界部と、を有し、
前記境界部に面する第1樹脂部を有する第1部材と、
前記境界部に面する第2樹脂部を有する第2部材と、を備え、
前記第1部材は、前記紐状部材の長手方向に沿った方向において前記第1樹脂部に隣接する金属部をさらに含み、前記第1樹脂部および前記金属部と、前記第2部材とで挟み込むことにより、前記紐状部材を保持することを特徴とする保持具。
【請求項2】
前記第1樹脂部には、前記紐状部材の長手方向に沿った方向に延びる断面が円弧状の複数の第1溝が形成され、
前記第2樹脂部には、前記紐状部材の長手方向に沿った方向に延びる断面が円弧状の複数の第2溝が形成され、
前記複数の第1溝のうちのいずれかの第1溝の周面と、当該第1溝と対向する第2溝の周面とで挟み込むことにより、前記紐状部材を保持することを特徴とする請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
前記第1樹脂部はフッ素樹脂であり、
前記第2樹脂部はフッ素樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の保持具。
【請求項4】
前記可動部と、
請求項1から3のいずれかに記載の保持具と、を備えるステージ装置であって、
前記紐状部材は、前記非拘束部に円弧状湾曲を有するよう配置されており、
前記保持具に対し前記円弧状湾曲が配置される側とは反対側への前記紐状部材の変形を抑止する逆反り抑制機構を備えることを特徴とするステージ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持具およびステージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガイドに沿って可動部が移動するステージ装置が知られている。従来では、可動部にチューブが連結され、そのチューブから供給される気体により可動部がガイドに沿って非接触で直進案内されるステージ装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-187432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるようなステージ装置では、通常、可動部や所定の静止部に固定された保持具によりチューブが保持される。可動部が繰り返し移動すると、これに伴ってチューブが繰り返し変形し、チューブと保持部の角部とが繰り返し接触する。この繰り返しの接触により、チューブは損傷しうる。損傷した場合は、メンテナンスが必要となり、生産性が低下する。
【0005】
このような課題は、可動部に気体を供給するためのチューブを保持具により保持する場合に限らず、可動部に連結される他のチューブ、ケーブル、その他の紐状部材を保持具により保持する場合にも起こりうる。
【0006】
本発明は、こうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、静止部とステージ装置の可動部とに連結される紐状部材を保持する保持具において、保持具との接触により紐状部材が損傷するのを抑止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の保持具は、静止部とステージ装置の可動部とに連結される紐状部材の保持具であって、保持具は、静止部または可動部の一方に設けられ、紐状部材は、保持具に拘束される拘束部と、拘束部から静止部または可動部の他方に延び、可動部の移動に伴い変形可能である非拘束部と、拘束部と非拘束部との境界部と、を有する。境界部の少なくとも一部に面する樹脂部を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、静止部とステージ装置の可動部とに連結される紐状部材を保持する保持具において、保持具との接触により紐状部材が損傷するのを抑止する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)、(b)は、実施の形態に係るステージ装置を示す図である。
図2図2(a)、(b)は、図1の保持具を示す図である。
図3】変形例に係るステージ装置を示す図である。
図4】変形例に係るステージ装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、工程には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
図1(a)、(b)は、実施形態に係るステージ装置100を示す図である。図1(a)は、ステージ装置100の上面図である。図1(b)は、ステージ装置100の側面図である。図1(b)では、チューブ30の表示を省略している。ステージ装置100は、一軸ステージと称され、対象物を位置決めする。説明の便宜上、図示のように、ガイド20の長手方向をx軸方向、鉛直方向をz軸方向、両者に直交する方向をy軸方向とするxyz直交座標系を定める。
【0013】
ステージ装置100は、定盤10と、2つの支持部材12と、ガイド20と、スライダ22と、チューブ30と、第1保持具40aおよび第2保持具40b(以下、これらをまとめて「保持具40」とも呼ぶ)と、圧縮気体供給源70と、を備える。
【0014】
定盤10は、平面視で矩形状の板状の部材である。定盤10の上面である盤面10aは平坦に形成される。盤面10aには、2つの支持部材12がx軸方向に離間して設けられる。
【0015】
ガイド20は、四角柱状の部材である。ガイド20は、定盤10上に設けられた支持部材12により両端が支持される。
【0016】
スライダ22は、断面が四角形の筒状体であり、ガイド20が挿通される。スライダ22は、ガイド20に沿ってx軸方向に移動可能に構成される。本実施の形態では、スライダ22は、ガイド20およびチューブ30とともにエアスライドを構成し、チューブ30から圧縮気体が供給されることによってガイド20と非接触状態でガイド20に沿って移動する。
【0017】
第1保持具40aは、スライダ22の側面22aに固定される。第2保持具40bは、定盤10の盤面10aに固定される。保持具40の構成は図2で後述する。
【0018】
チューブ30は、樹脂等で形成され、軟質で可撓性を有する。チューブ30は、x軸方向に湾曲する円弧状湾曲部30aを有するよう配置され、一端側は第1保持具40aに保持されてスライダ22に連結され、他端側は第2保持具40bに保持されて圧縮気体供給源70に連結される。チューブ30は、圧縮気体供給源70からの圧縮気体をスライダ22に供給する。
【0019】
図2(a)、(b)は、第1保持具40aを示す。図2(a)は第1保持具40aをx軸方向から見た図を示し、図2(b)は、図2(a)のA-A線断面図である。なお、代表して第1保持具40aの構成を説明するが、第2保持具40bについても同様の説明が当てはまる。
【0020】
第1保持具40aは、第1部材42と、第2部材44と、を含む。第1部材42は、スライダ22の側面22aに固定される。第1部材42は、樹脂(例えばフッ素樹脂)により形成される板状の第1樹脂部46と、金属により形成される板状の第1金属部48と、を含む。第1樹脂部46と第1金属部48は、x軸方向に隣接し、ボルトや接着により互いに固定されている。
【0021】
第2部材44は、第1部材42との間でチューブ30を挟みつつ、第1部材42にボルト等で固定される。第2部材44は、樹脂(例えばフッ素樹脂)により形成される板状の第2樹脂部50と、金属により形成される板状の第2金属部52と、を含む。第2樹脂部50と第2金属部52は、互いの主面がy軸方向で向き合った状態で、ボルトや接着により互いに固定されている。第2樹脂部50は、第1部材42(すなわち第1樹脂部46および第1金属部48)と対向する。
【0022】
第2部材44と対向する第1部材42の面には、y軸方向に凹んだ4つの溝42aが形成されている。4つの溝42aは、断面が円弧状であり、x軸方向に延びる。同様に、第1部材42と対向する第2部材44の面には、y軸方向に凹んだ4つの溝44aが形成されている。溝44aは、断面が円弧状であり、x軸方向に延びている。溝42aと溝44aとはy軸方向で対向し、それらの間にチューブ30が収まる。
【0023】
第1保持具40aは、第1部材42と第2部材44とで挟み込むことにより、チューブ30の一端側を保持する。以降では、保持具40の第1部材42と第2部材44に挟み込まれて拘束されるチューブ30の部分を拘束部32、他方の保持具40に向かって延び、保持具40に拘束されずにスライダ22の移動に伴って変形可能なチューブ30の部分を非拘束部34、拘束部32と非拘束部34との間のチューブ30の部分を境界部36と呼ぶ。第1保持具40aがチューブ30を保持するとき、第1部材42の第1樹脂部46と第2部材44の第2樹脂部50が、境界部36と面する。
【0024】
以上説明した実施の形態に係る保持具40によると、チューブ30の境界部36は、第1部材42の第1樹脂部46と、第2部材44の第2樹脂部50とで挟み込まれる。ここで、スライダ22が繰り返し移動すると、これに伴って非拘束部34は繰り返し変形し、非拘束部34の繰り返しの変形に伴って境界部36は第1部材42の角部42bや第2部材44の角部44bと繰り返し接触する。これに対し、本実施の形態では、第1部材42の角部42bや第2部材44の角部44bは樹脂(すなわち金属に比べて軟らかい素材)により形成されているため、境界部36が角部42b、44bと繰り返し接触することにより境界部36が損傷するのを抑止できる。
【0025】
また、実施の形態に係る保持具40によると、第1部材42の第1金属部48もチューブ30の拘束部32と面する。すなわち、保持具40は、樹脂部だけでなく金属部も拘束部32と面する。これにより、チューブ30と保持具40との間に十分な摩擦力を得ることができ、チューブ30を強固に保持できる。
【0026】
以上、実施の形態に係る保持具を備えるステージ装置について説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下変形例を示す。
【0027】
(変形例1)
図3は、変形例に係るステージ装置を示す図である。ステージ装置のスペースの都合上、第1保持具40aと第2保持具40bのY軸方向の距離が比較的近くなる場合がある。この場合、チューブ30(すなわち非拘束部34)の円弧状湾曲部30aの曲率半径が比較的小さくなる。円弧状湾曲部30aの曲率半径が小さくなると、チューブ30の反発力(弾性力)により、非拘束部34は、保持具40に対して円弧状湾曲部30aが配置される側とは反対側に変形しようとする。具体的には、図3において左側にスライダ22が移動すると、非拘束部34の第2保持具40b側は、二点差線で示すように第2保持具40bに対して円弧状湾曲部30aとは反対側に変形しようとする。また、図3において右側にスライダ22が移動すると、非拘束部34の第1保持具40a側は、二点差線で示すように第1保持具40aに対して円弧状湾曲部30aとは反対側に変形しようとする。
【0028】
これに対し、本変形例では、ステージ装置は、2つのプレート56を備える。2つのプレート56は、壁となって、チューブ30が保持具40に対して円弧状湾曲部30aとは反対側に変形しないよう規制する。プレート56は例えば、拘束部32と、境界部36と、非拘束部34の境界部36側の部分とが実質的に真っ直ぐになっているときに、非拘束部34の境界部36側の部分に当接するよう設けられてもよい。プレート56は、例えばフッ素樹脂などの樹脂により形成されてもよい。
【0029】
本変形例によれば、チューブ30が保持具40の角部と接触するのをより抑止でき、チューブ30が損傷するのを抑止できる。
【0030】
(変形例2)
図4は、別の変形例に係るステージ装置を示す図である。本変形例では、ステージ装置は、保持具40をz軸周りに回動可能に支持する2つの回動支持部を含む。第1回動支持部60は、スライダ22の側面22aに固定され、第1保持具40aをz軸周りに回動可能に支持する。第2回動支持部62は、盤面10aに固定され、第2保持具40bをz軸周りに回動可能に支持する。2つの回動支持部は、例えばベアリングや弾性ヒンジを含んで構成される。
【0031】
本変形例によれば、スライダ22の移動に伴ってチューブ30(すなわち非拘束部34)が変形すると、チューブ30の反発力にしたがって、第1保持具40a、第2保持具40bはそれぞれ、z軸周りに回動する。第1保持具40aは特に、拘束部32、境界部36、および非拘束部34の境界部36側の端部が実質的に一直線になるようz軸周りに回動する。同様に、第2保持具40bは特に、拘束部32、境界部36、および非拘束部34の境界部36側の端部が実質的に一直線になるようz軸周りに回動する。これにより、非拘束部34の境界部36側の端部が湾曲するのを抑止でき、端部が疲労するのを抑止できる。また、境界部36が第1部材42の角部42bや第2部材44の角部44bと接触するのを抑止でき、境界部36が損傷するのが抑止できる。つまり、本変形例によれば、チューブ30が損傷するのを抑止できる。
【0032】
(変形例3)
実施の形態では、保持具40がスライダ22にエアを供給するためのチューブ30を保持する場合について説明したが、これに限られず、保持具40は、チューブ30に加えてまたはチューブ30に代えて、静止部とスライダ22とに連結されるケーブル、その他の紐状部材を保持してもよい。
【0033】
(変形例4)
実施の形態では、保持具40の第1部材42は、第1樹脂部46と第1金属部がチューブ30に面する場合について説明したが、これに限られず、第2部材44と同様に、樹脂部だけがチューブ30に面するように構成されてもよい。また、第2部材44は、第2樹脂部50だけがチューブ30と面する場合について説明したが、これに限られず、第1部材42と同様に樹脂部と金属部とがチューブ30に面するよう構成されてもよい。また、第1部材42と第2部材44の両方の樹脂部がチューブ30の境界部36に面する場合について説明したが、これに限られず、第1部材42と第2部材44のどちらか一方の樹脂部と他方の金属部が境界部36に面するよう構成されてもよい。
【0034】
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連係によって実現されることも当業者には理解されるところである。例えば、請求項に記載の静止部、可動部はそれぞれ、実施の形態に記載の圧縮気体供給源70、スライダ22により実現されてもよい。また例えば、請求項に記載の逆反り抑制機構は、変形例に記載のプレート56や第1回動支持部60、第2回動支持部62により実現されてもよい。
【符号の説明】
【0035】
20 ガイド、 22 スライダ、 30 チューブ、 32 拘束部、 34 非拘束部、 36 境界部、 40 保持具、 40a 第1保持具、 40b 第2保持具、 42 第1部材、 42b 角部、 44 第2部材、 44b 角部、 46 第1樹脂部、 48 第1金属部、 50 第2樹脂部、 52 第2金属部、 56 プレート、 60 第1回動支持部、 62 第2回動支持部、 70 圧縮気体供給源、 100 ステージ装置。
図1
図2
図3
図4