(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】フライ用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
A23D9/00 506
(21)【出願番号】P 2016205938
(22)【出願日】2016-10-20
【審査請求日】2019-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000165284
【氏名又は名称】月島食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【氏名又は名称】山村 昭裕
(72)【発明者】
【氏名】加登 博文
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-119665(JP,A)
【文献】特開2015-142553(JP,A)
【文献】特開2016-093128(JP,A)
【文献】特開2011-083229(JP,A)
【文献】特開平09-299027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 9/
A23L 5/
A21D 13/
A23G 3/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するフライ用油脂組成物であって、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルがフライ用油脂組成物の全質量に対して0.01~1質量%含まれ、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸がエルカ酸を含み
、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の80質量%以上がエルカ酸であり、
生地が膨化するフライ食品用であることを特徴とする、フライ用油脂組成物。
【請求項2】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が3.5以上9未満である、請求項
1に記載されているフライ用油脂組成物。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載されているフライ用油脂組成物中で揚げ種が加熱調理される工程を含むことを特徴とする、フライ食品の調理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ種の吸油率が少ないフライ食品の製造に使用されるフライ用油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フライ食品は、揚げ種全体が150~260℃程度の食用油に包まれるように調理されて得られる食品である。「フライ」により食材から蒸発する水分量は、「焼く」、「炒める」という調理法により食材から蒸発する水分量よりかなり多い。生地から蒸発する水分が油と入れ替わり「軽くサクッと」する点が、フライ食品のおいしさの特徴である。
【0003】
食用油脂に、HLBが9.0以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する、卵黄成分を加えた生地をフライしても、フライ油の劣化の目安である酸価上昇や着色を抑制し、かつフライ製品への吸油率が少ないフライ用油脂組成物が検討された(例えば、特許文献1参照)。他にも、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤が添加されたフライ用油脂組成物が検討された(例えば、特許文献2~5参照)。更に、生地が膨化する揚げ種において、吸油を抑制し、あっさりとした風味のフライ食品が得られる、特定のHLB値のショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、又はショ糖ベヘン酸エステルからなるフライ用油脂組成物が提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-149010号公報
【文献】特開2014-77118号公報
【文献】特開2014-62175号公報
【文献】特開2016-93128号公報
【文献】特開2016-93171号公報
【文献】特開2014-14317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、一般消費者の健康志向から、フライ食品の低カロリー化の要求が増し、フライ食品中の油分の低減が求められている。特にドーナツ類、フリッター類、パフ膨化スナック類、揚げ米菓類、即席フライ麺類等の気泡を含んで生地が膨化するフライ食品は、フライ中に吸油しやすく、生地が膨化するフライ食品に含有される油分が多くなる傾向にあり、生地が膨化するフライ食品中の油分の低減がより一層要求されている。しかし、生地が膨化するフライ食品中の油分の低減は困難であった。
本発明が解決しようとする課題は、揚げ種の吸油率が少ないフライ食品の調理に使用されるフライ用油脂組成物の提供にある。
なお、特許文献1は、構成脂肪酸の一部がエルカ酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するフライ用油脂組成物を開示していない。特許文献2及び3は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するフライ用油脂組成物でフライされたフライ食品中の油分の量について開示していない。特許文献4及び5は、フライ用油脂組成物でフライされたサツマイモ天ぷら(生地が膨化しないフライ食品)に含まれる油分の量が、フライ用油脂組成物中のエルカ酸を構成脂肪酸とするポリグリセリン脂肪酸エステルの有無に影響されないこと(比較例3)を開示している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、フライ食品の調理に使用されるフライ用油脂組成物に含有される乳化剤について鋭意検討した結果、生地が膨化するフライ食品が、エルカ酸を含む脂肪酸を構成成分とするポリグリセリン脂肪酸エステルを特定範囲の量で含むフライ用油脂組成物でフライされると、揚げ種の吸油率が低く、結果的にフライ食品中の油分が低減されることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1]ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するフライ用油脂組成物であって、ポリグリセリン脂肪酸エステルがフライ用油脂組成物の全質量に対して0.01~1質量%含まれ、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸がエルカ酸を含むことを特徴とする、フライ用油脂組成物、
[2]生地が膨化するフライ食品用である、[1]に記載されているフライ用油脂組成物、
[3]ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の80質量%以上がエルカ酸である、[1]又は[2]に記載されているフライ用油脂組成物、
[4]ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が3.5以上9未満である、[1]~[3]のいずれかに記載されているフライ用油脂組成物、及び
[5][1]~[4]のいずれかに記載されているフライ用油脂組成物中で揚げ種が加熱調理される工程を含むことを特徴とする、フライ食品の調理方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフライ用油脂組成物でフライされた生地が膨化するフライ食品の吸油率は低く、当該フライ食品中の油分は少ない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のフライ用油脂組成物は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有し、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の少なくとも一部はエルカ酸である。ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するエルカ酸以外の脂肪酸の具体例は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸である。
【0010】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するエルカ酸の、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸に対する割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上であり、最も好ましくは90質量%以上である。
【0011】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値は好ましくは3.5以上9未満、より好ましくは8未満、さらに好ましくは6未満である。
【0012】
構成脂肪酸の50質量%以上がエルカ酸であり、HLB値が3.5以上9未満であるポリグリセリン脂肪酸エステルは市販されており、当該市販品の具体例は阪本薬品工業(株)製SYグリスターOE750である。
【0013】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのフライ用油脂組成物の全質量に対する含有割合は0.01~1質量%であり、好ましくは0.05~1質量%であり、より好ましくは0.1~1質量%であり、更に好ましくは0.2~1質量%である。ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量が1質量%を超えると、生地が膨化するフライ食品の揚げ種の吸油率が低下しなくなると共に、フライ食品がポリグリセリン脂肪酸エステルに由来する臭いを発生させてしまう。
【0014】
本発明のフライ用油脂組成物の調製方法は、特定の方法に限定されない。当該調製方法は、上記特定のポリグリセリン脂肪酸エステルが食用油脂に添加され、公知の方法で油脂中に均一に溶解又は分散される方法を含む。
【0015】
上記食用油脂は、なたね油、紅花油、綿実油、コーン油、こめ油、大豆油、パーム油等の植物油脂;ラード、牛脂等の動物油脂;及びこれらの水素添加油、エステル交換油からなる群から選択される1種又は2種以上を含む。更に、中鎖脂肪酸含有油脂等の栄養特性を有する油脂が使用されてよい。
【0016】
本発明の効果を奏する限りにおいて、天然フレーバー、合成フレーバー、動植物抽出エキス、シーズニングオイル等の呈味剤;トコフェロール、シリコーン樹脂等の食用油脂に一般的に添加される添加物が、本発明のフライ用油脂組成物に適宜添加されてよい。
【0017】
本発明のフライ食品の調理方法は、本発明のフライ用油脂組成物が加温され、揚げ種が所定の温度に調温された当該フライ用油脂組成物の中で加熱されてフライ食品が調理される方法であれば特に制限されない。本発明のフライ食品の調理方法は、揚げ種が本発明のフライ用油脂組成物に浸された、又は浮いた状態で加熱処理を行うフライ食品の調理方法を好適に含む。本発明のフライ食品の調理方法は、いわゆる「炒める」加熱処理を含まない。本発明のフライ用油脂組成物でフライされる揚げ種が揚げ米菓以外のフライ食品である場合、本発明のフライ用油脂組成物は150~200℃、好ましくは170~190℃、より好ましくは175~185℃、に調温される。この場合、本発明のフライ食品の調理方法は、揚げ種が投入されて、60~180秒、好ましくは90~150秒、より好ましくは110~130秒加熱される工程を含み、更に、揚げ種が1~3回又はそれ以上反転される工程を含んでもよい。
【0018】
一方、本発明のフライ用油脂組成物でフライされる揚げ種が、高温加熱が必要な揚げ米菓である場合、200~260℃、好ましくは230~240℃に調温される。この場合、本発明のフライ食品の調理方法は、揚げ種が投入されて、20~120秒、好ましくは40~80秒加熱される工程を含み、揚げ種が撹拌又は浸漬される工程が含まれる。
【0019】
上記揚げ種は、イースト、食塩、砂糖、水、牛乳、その他の副資材が、小麦粉を主原料とする穀粉類に加えられ、混捏されて得られた生地が、発酵、成形、ホイロ、フライされて調製されるイーストドーナツ;イーストの代わりにベーキングパウダーが添加された生地が発酵させられずに成形、フライされて調製されるケーキドーナツ;上記イーストドーナツ、ケーキドーナツの生地の中に具材が入れられた餡ドーナツ、クリームドーナツ、ピロシキ等の具入りドーナツ等のドーナツ類;泡立てられた卵白が、小麦粉や澱粉類などの穀粉類を主体として、卵黄、水、牛乳、食用油、塩、その他の副資材が合わされたものに混ぜられた生地に具材が包まれてフライされるフリッター類;パフ膨化スナック類;揚げ米菓類;即席フライ麺類を含む。上記揚げ種の具体例は、小麦粉が主原料とされる穀粉80~120質量部に対し、全卵5~20質量部、冷水20~50質量部を含み、一個あたりの質量が20~35gずつの生ドーナツ生地である。
【0020】
食用油脂のみが使用されてフライされた場合のフライ食品の吸油率が100%とされるとき、本発明のフライ用油脂組成物が使用されてフライされる場合のフライ食品の吸油率の相対値は100%未満、好ましくは99.5%未満、より好ましくは99%未満、更に好ましくは98.3%未満、特に好ましくは97%未満、好ましくは95%未満となる。
【0021】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されない。
【0022】
ドーナツのフライ
精製パーム油となたねサラダ油が、65:35の質量割合で混合され、食用油脂が調製された。表1に示される各種乳化剤が、当該食用油脂に添加され、各実施例及び各比較例で使用されたフライ用油脂組成物が調製された。一方、乳化剤が添加されない食用油脂はコントロール油脂とされた。なお、表1に表示されているHLB値は製造者の表示値である。
【0023】
【実施例1】
【0024】
表1に示される乳化剤Aが上記食用油脂に添加され、当該乳化剤Aの濃度が0.02質量%となるようにフライ用油脂組成物が調製された。5℃に調温された殺菌卵全卵10質量部、11℃に調温された冷水35質量部が、業務用ケーキドーナツ用ミックス粉(日本製粉(株)製C10)100質量部に添加され、ミキシング後、フロアタイムが10分間とられた後、生地がドーナツカッターにて約24gに分割されてフライ前生ドーナツが調製され、各フライ前生ドーナツの質量が測定された。1500gの上記フライ用油脂組成物がフライ用容器に搬入されて180℃に調温され、上記フライ前生ドーナツが1回につき4個投入された。生ドーナツが投入後40秒毎に2回反転されてフライ工程が行われ、120秒後にフライ工程が終了された。上記フライ工程が8回行われ、フライされた32個のドーナツが調製された。上記コントロール油脂によりフライされたコントロールドーナツも同様に調製された。
【0025】
フライ前のフライ用容器内のフライ用油脂組成物量とフライ後のフライ用容器内のフライ用油脂組成物量を測定し、各油脂組成物についてフライをした際の吸油量を以下の式により算出した。
【0026】
ドーナツ吸油量(生ドーナツ100g当たりのドーナツ吸油量)
=(フライ前油脂組成物量-フライ後油脂組成物量)/(フライ前生ドーナツ総質量)×100(g)
【0027】
次に、コントロールの吸油量を100%の吸油率として、以下の式により吸油率相対値(吸油率)を算出した。
【0028】
吸油率相対値(%)
=各実施例又は比較例のドーナツ吸油量/コントロールドーナツ吸油量×100(%)
【実施例2】
【0029】
表1に示される乳化剤Aの濃度が0.05質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した以外、実施例1と同様にして吸油率を算出した。
【実施例3】
【0030】
表1に示される乳化剤Aの濃度が0.10質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した以外、実施例1と同様にして吸油率を算出した。
【実施例4】
【0031】
表1に示される乳化剤Aの濃度が0.20質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した以外、実施例1と同様にして吸油率を算出した。
【実施例5】
【0032】
表1に示される乳化剤Aの濃度が0.40質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した以外、実施例1と同様にして吸油率を算出した。
【実施例6】
【0033】
表1に示される乳化剤Aの濃度が0.80質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した以外、実施例1と同様にして吸油率を算出した。
【実施例7】
【0034】
表1に示される乳化剤Aの濃度が1.00質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した以外、実施例1と同様にして吸油率を算出した。
【0035】
(比較例1)
表1に示される乳化剤Aの濃度が1.50質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した以外、実施例1と同様にして吸油率を算出した。
【0036】
(比較例2)
表1に示される乳化剤Aの代わりに乳化剤Bが使用され、乳化剤Bの濃度が0.20質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した以外、実施例1と同様にして吸油率を算出した。
【0037】
(比較例3)
表1に示される乳化剤Aの代わりに乳化剤Cが使用され、乳化剤Cの濃度が0.20質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した以外、実施例1と同様にして吸油率を算出した。
【0038】
(比較例4)
表1に示される乳化剤Aの代わりに乳化剤Dが使用され、乳化剤Dの濃度が0.20質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した以外、実施例1と同様にして吸油率を算出した。
【0039】
(比較例5)
表1に示される乳化剤Aの代わりに乳化剤Eが使用され、乳化剤Eの濃度が0.20質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した以外、実施例1と同様にして吸油率を算出した。
実施例1~7で算出された吸油率、比較例1~5で算出された吸油率及びコントロールドーナツの吸油率を表2に示す。
【0040】
【0041】
えびせん(パフ膨化スナック)のフライ
表1に示される乳化剤Aが、なたね油に添加され、各実施例及び各比較例で使用されたフライ用油脂組成物を調製した。一方、乳化剤が添加されないなたね油をコントロール油脂とした。
【実施例8】
【0042】
表1に示される乳化剤Aがなたね油に添加され、当該乳化剤Aの濃度が0.02質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した。約10gの市販されているえびせん生地(中国産)が、フライ鍋中で185℃に調温された上記フライ用油脂組成物1700gに沈められ、1分間フライした。フライされたえびせんはフライ鍋上で油切りされ、えびせん表面の余分な油は落とされた。これらの工程は4回行われた。上記コントロール油によりフライされたコントロールえびせんも同様に調製した。ドーナツのフライで算出された吸油率と同様にして、えびせんの吸油率を算出した。
【実施例9】
【0043】
表1に示される乳化剤Aの濃度が0.10質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した以外、実施例8と同様にして吸油率を算出した。
【実施例10】
【0044】
表1に示される乳化剤Aの濃度が0.20質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した以外、実施例8と同様にして吸油率を算出した。
【実施例11】
【0045】
表1に示される乳化剤Aの濃度が1.00質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した以外、実施例8と同様にして吸油率を算出した。
【0046】
実施例8~11で算出された吸油率及びコントロールえびせんの吸油率を表3に示す。
【0047】
【0048】
揚げおかき(米菓)のフライ
表1に示される乳化剤Aが、なたね油に添加され、各実施例及び各比較例で使用されたフライ用油脂組成物を調製した。一方、乳化剤が添加されないなたね油をコントロール油脂とした。
【実施例12】
【0049】
表1に示される乳化剤Aがなたね油に添加され、当該乳化剤Aの濃度が0.01質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した。予め40℃で15分間ホイロが取られたおかき生地約20gずつが、フライ鍋中で235℃に調温された上記フライ用油脂組成物1700gに沈められ、2分間フライされた。フライされた揚げおかきはフライ鍋上で油切りされ、揚げおかき表面の余分な油は落とされた。これらの工程は4回行われた。上記コントロール油によりフライされたコントロールおかきも同様に調製した。ドーナツのフライで算出した吸油率と同様にして、揚げおかきの吸油率を算出した。
【実施例13】
【0050】
表1に示される乳化剤Aの濃度が0.02質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した以外、実施例12と同様にして吸油率を算出した。
【実施例14】
【0051】
表1に示される乳化剤Aの濃度が0.10質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した以外、実施例12と同様にして吸油率を算出した。
【実施例15】
【0052】
表1に示される乳化剤Aの濃度が0.20質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した以外、実施例12と同様にして吸油率を算出した。
【実施例16】
【0053】
表1に示される乳化剤Aの濃度が1.00質量%となるようにフライ用油脂組成物を調製した以外、実施例12と同様にして吸油率を算出した。
実施例12~16で算出した吸油率及びコントロールおかきの吸油率を表4に示す。
【0054】
【0055】
表2~4に示されているとおり、実施例1~16で使用したフライ用油脂組成物でフライしたフライ食品の吸油率は低下していた。比較例1で使用した、構成脂肪酸の一部がエルカ酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量が多すぎるフライ用油脂組成物でフライしたフライ食品の吸油率は全く低下しておらず、当該フライ食品は、ポリグリセリン脂肪酸エステルに由来する臭いを発生させた。
【0056】
比較例2~5で使用した、構成脂肪酸の一部がエルカ酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル以外の脂肪酸エステルが乳化剤として添加されているフライ用油脂組成物でフライしたフライ食品の吸油率は増加していた。
以上の結果から、生地が膨化するフライ食品が、構成脂肪酸の一部がエルカ酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルでフライされる場合、当該フライ食品中の油分は少なくなることが確認された。この知見は、特許文献1~6の記載から得られない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のフライ用油脂組成物は、生地が膨化するフライ食品の吸油率を低下させ、当該フライ食品中の油分を少なくする油脂組成物として、生地が膨化するフライ食品の調理に好適に使用される。