(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】発電機制御デバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
H02P 9/04 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
H02P9/04 G
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017024579
(22)【出願日】2017-02-14
【審査請求日】2020-02-12
(32)【優先日】2016-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH-5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・コク・ファン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・エスターヘルト
(72)【発明者】
【氏名】クラウス-ディーター・ヴァリ
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-057510(JP,A)
【文献】国際公開第2011/158351(WO,A1)
【文献】特表2010-518320(JP,A)
【文献】特表2012-516667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力送電網に接続されたガスタービンまたは蒸気タービンであるタービン(3)によって駆動される少なくとも1つのターボ発電機(4)の出力電力を制御する発電機制御デバイス(2)であって、電力送電網に供給する電力の周波数および振幅を電力送電網の要件に適合させる静止周波数変換器(6)と、電力送電網周波数f
elを測定する周波数測定デバイス(12)と、
前記送電網周波数f
el
から、前記静止周波数変換器(6)に供給されて出力電力を制御する基準電力P
ref
と機械基準軸速度とを計算する変換器制御部(16)とを備え、前記静止周波数変換器(6)は、前記
機械基準軸速度に応じた回転速度でタービン(3)及びターボ発電機(4)を運転
し、
前記変換器制御部(16)は、前記機械基準軸速度を変換して前記基準電力P
ref
を計算し、
前記変換器制御部(16)は、前記基準電力P
ref
に基づいて前記静止周波数変換器(6)を切り換える発電機制御デバイス(2)。
【請求項2】
前記ターボ発電機(4)が、前記送電網周波数f
elが目標周波数の上限閾値を上回る場合に公称速度よりも高い速度で運転され、送電網周波数f
elが目標周波数の下限閾値を下回る場合に公称速度よりも低い速度で運転され、
前記ターボ発電機(4)に接続された前記タービン(3)が、前記静止周波数変換器(6)に可変の慣性パワーを提供することを特徴とする、請求項1に記載の発電機制御デバイス(2)。
【請求項3】
前記発電機制御デバイス(2)が、再生可能な供給源および/または低電力発電によって運転されるタービン(3)によって駆動されるいくつかのターボ発電機(4)の組の出力電力を制御し、発電機(4)の出力周波数が可変であることを特徴とする、請求項1または2に記載の発電機制御デバイス(2)。
【請求項4】
電力送電網に接続されたガスタービンまたは蒸気タービンであるタービンによって駆動される少なくとも1つのターボ発電機(4)の出力電力を制御する方法であって、
電力送電網周波数f
elを測定するステップと、
前記送電網周波数f
el
から、機械基準軸速度を計算するステップと、
前記機械基準軸速度を変換して前記静止周波数変換器(6)に供給されて出力電力を制御する基準電力P
ref
を計算するステップと、
前記測定された電力送電網周波数f
elを電力送電網に供給する電力の周波数および振幅を電力送電網の要件に適合させる静止周波数変換器(6)に供給するステップと、
前記基準電力P
ref
に基づいて前記静止周波数変換器(6)を切り換えるステップと、
前記静止周波数変換器(6)が、前記
機械基準軸速度に応じた回転速度でタービン(3)及びターボ発電機(4)を運転するステップと、
を含む方法。
【請求項5】
前記送電網周波数f
elが目標周波数の上限閾値を上回る場合に、前記ターボ発電機(4)を公称値より高い速度で運転し、送電網周波数f
elが目標周波数の下限閾値を下回る場合に、公称値よりも低い速度でターボ発電機(4)を運転することを特徴とする、請求項
4に記載の少なくとも1つのターボ発電機(4)の出力電力を制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力送電網に接続された少なくとも1つの発電機の出力電力を制御する、発電機制御デバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機は、ガスタービンまたは蒸気タービンに接続される、ターボ発電機と呼ばれる同期発電機または非同期発電機である。電力送電網は一般的に家庭や産業に電気エネルギーを供給するための公共の送電網である。
【0003】
公共の電力供給は、大規模な電力送電網によって提供される。電力を供給するための主要なシステムは、後続のターボ発電機にある、送電網に電力を供給する高発電機である。これらのターボ発電機は、通常、石炭、ガス、または風などの種々のエネルギー源によって動力が供給されるタービンによって駆動される。発生した周波数を送電網周波数に適合させる静止周波数変換器によって、ターボ発電機、特に高出力のものを電力送電網に接続することが知られている。静止周波数変換器は、公知の欠点を有する機械的変換装置を不要とする。電力送電網の運用における主な目的は、信頼性、供給の安全性を保障し、送電網効率を向上させ、市場効率を確保し、既存の電力送電網への再生可能エネルギー生産の大規模統合を可能にすることである。特に、再生可能エネルギーの統合には、周波数変動による動作安定性の問題をはらむ。これらの課題があって、システムの運用性がより複雑になる。ここでは、特に電力送電網周波数、電力送電網周波数の変動、およびこれに関連して接続されたターボ発電機の動作周波数が検討される。
【0004】
米国特許出願公開第2010/0032964号に、ガスタービン、および、ガスタービンによって直接駆動され、動作周波数で交流を発電するターボ発電機を含む、タービン軸系を有する発電所を運転する方法が開示される。ターボ発電機の出力は、所与の送電網周波数を有する電力送電網に接続される。電子的な減結合装置または可変電子変換装置が、ターボ発電機と送電網との間に配置される。減結合装置は、動作周波数を送電網周波数から切り離す。電力送電網の一時的な周波数超過または周波数不足の事象が発生した場合、ガスタービンの機械的回転速度が、電力送電網の周波数不足事象時には送電網周波数よりも下げられ、電力送電網の周波数超過事象時には送電網周波数よりも上げられる。この記載される方法は、電力送電網が要求するのに関連したいくつかの問題を解決する。この方法は、とりわけ、電力送電網が周波数不足または周波数超過状態にあるときに、数秒の範囲内の高速な応答時間を保証する。米国特許出願公開第2010/0032964号によって開示されたこの解決法は、信頼性が高く高速であることが証明されているものの、特に速度に関するそのようなシステムおよび方法に対する今後の要求はさらに高まる可能性もある。
【0005】
本発明の目的は、電力送電網周波数の不安定性を打ち消す高速な解決策を提供することである。この目的は、特許請求の範囲の独立請求項記載の発電機制御デバイスおよび方法の特徴によって解決される。
【発明の概要】
【0006】
本発明が開示するのは、電力送電網に接続されたタービンによって駆動される少なくとも1つのターボ発電機の出力電力を制御する発電機制御デバイスであって、静止周波数変換器と、電力送電網周波数felを測定する周波数測定デバイスと、を備え、静止周波数変換器(6)は、測定された電力送電網周波数felに応じてターボ発電機(4)を運転する発電機制御デバイスである。
【0007】
さらに、本発明が開示するのは、電力送電網に接続されたタービンによって駆動される少なくとも1つのターボ発電機の出力電力を制御する方法であって、電力送電網周波数felを測定し、そして、測定された電力送電網周波数felに応じて静止周波数変換器に供給するステップ、を含む方法である。
【0008】
本発明は、特に発電機動作の電力送電網周波数不安定に対する応答をより速くすることを可能にする。具体的には、本発明が開示するのは、ほぼ瞬間的である同期慣性応答と、従来の火力発電プラントの2秒より大きい一次周波数応答との間の時間枠にある、高速周波数応答を提供する制御方法論である。
【0009】
本発明のさらなる例は、特許請求の範囲の従属請求項に開示される。
【0010】
一例では、タービンおよびターボ発電機は、送電網周波数felが送電網に供給される電力を低減させる目標周波数の上限閾値を上回る場合、公称値より高い速度で運転される。
【0011】
ターボ発電機は、送電網周波数felが送電網に供給される電力を増加させる目標周波数の下限閾値を下回る場合、公称値よりも低い速度で運転される。この手段により、タービン発電機ユニット、タービン、およびターボ発電機の速度は、電力送電網の需要に適した高速な電力を供給するように調節される。
【0012】
さらなる発展として、ターボ発電機に接続されたタービンは、静止周波数変換器に可変の慣性パワーを提供する。ここで、タービンは、軸の回転速度に関して動作速度の変化を提供する。
【0013】
別の例では、発電機制御デバイスは、再生可能な供給源および/または低電力発電機によって駆動されるタービンによって駆動されるいくつかの発電機の組の出力電力を制御し、発電機は高周波変動を有する。次いで、発電機制御デバイスは、いくつかの発電機に接続され、接続されたすべての発電機の出力電力を協調して操作する。
【0014】
別の例では、電力送電網周波数felから、静止周波数変換器に供給されて出力電力を制御する基準電力が変換器制御部によって計算される。変換器制御部は、周波数測定デバイスから測定周波数felの信号を受信し、基準電力信号を静止周波数変換器に送信する。
【0015】
さらなる特徴および利点は、添付の図面に、限定されない例として示された、発電機制御デバイスおよび方法の好ましいが非限定的な実施形態の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】タービン付きの発電機と電力送電網とに接続された発電機制御デバイス、および、基準電力を計算してターボ発電機からの電力が供給される静止周波数変換器を調節する、測定された送電網周波数を変換器制御部に送信する周波数測定デバイスの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、ターボ発電機4およびタービン3に接続された、破線によって囲まれた発電機制御デバイス2の概略ブロック図を示す。タービン3およびターボ発電機4は、ここでは1つの軸で、したがって同じ軸速度で作動する。ターボ発電機4は、産業環境内で高出力発電のためにタービン3によって共通に駆動される共通発電機である。オプションとして、複数のターボ発電機4を接続し得る。発電制御デバイス2は、公共送電網である電力送電網に接続されて大規模な電気エネルギーを供給する。ターボ発電機4は、送電ケーブルを介して静止周波数変換器6に接続されて静止周波数変換器6に電力P
elを伝達する。ここで、静止周波数変換器6は一般的に変換に使用される変換器である。あるいは、発電機制御デバイス2は、記載される機能を果たすために、追加の静止周波数変換器(図示せず)を備え得る。電力伝達は、生成され転送される位相数をnとして、
図1に示される。静止周波数変換器6は高出力デバイスであり、先端技術では発生電力の周波数および振幅を送電網要件に適合させるのに適すると説明される。
図1の右側の送電網側では、送電網の現在の周波数f
elを測定する周波数測定デバイス12が接続される。電力送電網は、動作の信頼性を危険にさらすいくつかのパラメータによって変動する。重大なパラメータの1つとして、電力送電網への再生可能電力の供給が増大することがある。再生可能な発電は、安定性および予測可能性が低く、したがって従来の発電より信頼性が低い。周波数測定デバイス12によって測定されたf
elの周波数データは、この例では変換器制御部16に送信される。変換器制御部16は、基本的に、測定された周波数f
elから基準電力P
refを計算する。この目的のために、変換器制御部16は、目標周波数および測定周波数f
elからデルタ(delta)電気周波数基準を導出するプロセッサを備える。このデルタ周波数値から、変換器制御部16は、送電網事業者の所定の高速周波数応答要件に基づいて、対応する必要な機械基準軸速度を計算する。軸速度は、ターボ発電機4およびタービン3の共通軸の速度である。機械的軸速度は、実際の軸速度である。この機械的基準軸速度は、送電網周波数のサポートを提供するためにターボ発電機4が現在動作しているべき新しい目標速度である。次いで、ターボ発電機4の機械的基準軸速度および測定された実際の軸速度の信号が使用されてデルタ軸速度信号が生成される。デルタ軸速度信号は、変換器制御部16内で基準電力P
refに変換される。この基準電力P
refは、ターボ発電機4によって電力送電網に供給されるべき実際の電力よりも上または下の電力であり、周波数外乱の間、電力送電網を保持し送電網を安全な動作状態に保つ。基準電力P
refに関する算出データは、静止周波数変換器6に送信される。変換器制御部16は、基準電力P
refに基づいて静止周波数変換器6を切り換える。送電網周波数f
elが電力送電網の目標周波数または基準周波数よりも高い場合は、より少ない電力が送電網に供給されるように基準電力P
refが計算される。詳細には、変換器制御部16は、測定された送電網周波数f
elの上限または下限閾値を超えているかどうかを検知する。これらの閾値は、特定の送電網要件によって決まる。そして、対策は、電力送電網に注入される電力を減少させ、よって送電網周波数を減少させることである。この例では、静止周波数変換器6および電力送電網に接続されたターボ発電機4がこれを行う。変換器制御部16は、静止周波数変換器6を始動させて、基準電力P
refに相関するターボ発電機4の電力P
elを下げる。これは電力の減少を意味するが、タービンの機械的動力は変化しないままであり、ターボ発電機4およびタービン3の速度は増加する。ターボ発電機4によって発電された電力P
elは、静止周波数変換器6によって電力送電網に切り換えられる。静止周波数変換器6による電力送電網への電力供給がそのように低下すると、送電網容量に依存して送電網周波数がある程度減少する。反対に送電網周波数f
elが電力送電網の目標周波数または基準周波数よりも低い場合には、より多くの電力が送電網に供給されるように基準電力P
refが計算される。その場合、特に送電網周波数が下限閾値を下回る場合には、電力送電網に電力を加え、それによって送電網周波数を上げる。その目的のために、静止周波数変換器6内で、P
refで計算した値だけ電力P
elが増大される。必要とする電力の増大は、変換器制御部16によって始動され、変換器制御部16は、タービン3およびターボ発電機4の機械的な軸速度の低下を開始する。このようにして、電力送電網に供給される電力レベルが上げられる。それに対応して、安全な送電網動作を保護するために送電網周波数が上げられる。記載される発電機制御デバイス2の主な特性は、わずか1秒以下の範囲の高速な反応時間である。送電網周波数外乱に対してこのように速く反応するので、安定性が容易に改善する。発電機制御デバイス2の速い反応時間および方法は、主に、電力送電網に作用する時間遅延が周波数測定の時間に依存することに基づく。この点で、発電機制御デバイス2および方法は従来の解決策とは異なる。
【0018】
本発明をその例示的な実施形態を参照して詳細に説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能であり、均等物が採用され得ることは当業者には明らかであろう。本発明の一例の前述の説明は、例示および説明のために提示されたものである。網羅的であることを意図するものでもなく、本発明を開示する正確な形態に限定するものでもなく、変更および変形が上記の教示に照らして可能であるかまたは本発明の実施から得られてよい。この実施形態は、本発明の原理およびその実際の応用を説明するために選択され記載されて、当業者が本発明を利用できるようにする。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物によって定義されることが意図される。
【符号の説明】
【0019】
2 発電機制御デバイス
3 タービン
4 ターボ発電機
6 静止周波数変換器
12 周波数測定デバイス
16 変換器制御部