(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】モータ制御回路、及びモータ装置
(51)【国際特許分類】
H02P 6/26 20160101AFI20220104BHJP
【FI】
H02P6/26
(21)【出願番号】P 2017154502
(22)【出願日】2017-08-09
【審査請求日】2020-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】新井田 亮
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼森 康之
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-517593(JP,A)
【文献】特開2004-153921(JP,A)
【文献】実開平06-021398(JP,U)
【文献】特開2004-104951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/14
H02P 6/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシレスモータの駆動コイルの一端にそれぞれ接続された第1ハイサイドスイッチ及び第1ローサイドスイッチと、前記駆動コイルの他端にそれぞれ接続された第2ハイサイドスイッチ及び第2ローサイドスイッチとを備え、前記第1ハイサイドスイッチと、前記第1ローサイドスイッチと、前記第2ハイサイドスイッチと、前記第2ローサイドスイッチとをそれぞれ導通状態又は遮断状態にすることにより、ブラシレスモータを回転駆動するモータ制御回路であって、
前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとを導通状態にし、前記第2ハイサイドスイッチと前記第1ローサイドスイッチとを遮断状態にして、前記駆動コイルに正方向の駆動電流を供給する第1通電状態と、
前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとを遮断状態にし、第2ハイサイドスイッチと前記第1ローサイドスイッチとを導通状態にして、前記駆動コイルに負方向の駆動電流を供給する第2通電状態と、
前記第1通電状態の後に、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとを遮断状態にし、前記第1ローサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとのうち少なくとも前記第2ローサイドスイッチを導通状態にして、又は、前記第1ローサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチを遮断状態にし、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとのうち少なくとも前記第1ハイサイドスイッチを導通状態にして、前記駆動コイルに正方向の還流電流を流す第1還流状態と、
前記第2通電状態の後に、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとを遮断状態にし、前記第1ローサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとのうち少なくとも前記第1ローサイドスイッチを導通状態にして、又は、前記第1ローサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチを遮断状態にし、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとのうち少なくとも前記第2ハイサイドスイッチを導通状態にして、前記駆動コイルに負方向の還流電流を流す第2還流状態と、
前記第1還流状態と当該第1還流状態の後の前記第2通電状態との間において、前記第1ハイサイドスイッチと、前記第1ローサイドスイッチと、前記第2ハイサイドスイッチと、前記第2ローサイドスイッチとのうち前記第1還流状態において遮断状態であったスイッチを含む少なくとも3つのスイッチを遮断状態にする第1無通電状態と
、
前記第2還流状態と当該第2還流状態の後の前記第1通電状態との間において、前記第1ハイサイドスイッチと、前記第1ローサイドスイッチと、前記第2ハイサイドスイッチと、前記第2ローサイドスイッチとのうち前記第2還流状態において遮断状態であったスイッチを含む少なくとも3つのスイッチを遮断状態にする第2無通電状態と
を有
し、
前記還流電流を流し始めてからマイナストルクが発生するまでの限界時間を実験的に求めておくと共に、当該限界時間と前記ブラシレスモータのロータ回転数との関係に基づいて、前記ブラシレスモータの負荷状態と還流状態継続電気角との関係を求めておき、前記第1還流状態が継続している期間の電気角の変化量が、前記ブラシレスモータの前記負荷状態に応じた前記還流状態継続電気角に達したタイミングで、前記第1還流状態から前記第1無通電状態に切り替え、前記第2還流状態が継続している期間の電気角の変化量が、前記ブラシレスモータの前記負荷状態に応じた前記還流状態継続電気角に達したタイミングで、前記第2還流状態から前記第2無通電状態に切り替える
モータ制御回路。
【請求項2】
ブラシレスモータの駆動コイルの一端にそれぞれ接続された第1ハイサイドスイッチ及び第1ローサイドスイッチと、前記駆動コイルの他端にそれぞれ接続された第2ハイサイドスイッチ及び第2ローサイドスイッチとを備え、前記第1ハイサイドスイッチと、前記第1ローサイドスイッチと、前記第2ハイサイドスイッチと、前記第2ローサイドスイッチとをそれぞれ導通状態又は遮断状態にすることにより、ブラシレスモータを回転駆動するモータ制御回路であって、
前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとを導通状態にし、前記第2ハイサイドスイッチと前記第1ローサイドスイッチとを遮断状態にして、前記駆動コイルに正方向の駆動電流を供給する第1通電状態と、
前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとを遮断状態にし、第2ハイサイドスイッチと前記第1ローサイドスイッチとを導通状態にして、前記駆動コイルに負方向の駆動電流を供給する第2通電状態と、
前記第1通電状態の後に、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとを遮断状態にし、前記第1ローサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとのうち少なくとも前記第2ローサイドスイッチを導通状態にして、又は、前記第1ローサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチを遮断状態にし、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとのうち少なくとも前記第1ハイサイドスイッチを導通状態にして、前記駆動コイルに正方向の還流電流を流す第1還流状態と、
前記第2通電状態の後に、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとを遮断状態にし、前記第1ローサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとのうち少なくとも前記第1ローサイドスイッチを導通状態にして、又は、前記第1ローサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチを遮断状態にし、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとのうち少なくとも前記第2ハイサイドスイッチを導通状態にして、前記駆動コイルに負方向の還流電流を流す第2還流状態と、
前記第1還流状態と当該第1還流状態の後の前記第2通電状態との間において、前記第1ハイサイドスイッチと、前記第1ローサイドスイッチと、前記第2ハイサイドスイッチと、前記第2ローサイドスイッチとのうち前記第1還流状態において遮断状態であったスイッチを含む少なくとも3つのスイッチを遮断状態にする第1無通電状態と、
前記第2還流状態と当該第2還流状態の後の前記第1通電状態との間において、前記第1ハイサイドスイッチと、前記第1ローサイドスイッチと、前記第2ハイサイドスイッチと、前記第2ローサイドスイッチとのうち前記第2還流状態において遮断状態であったスイッチを含む少なくとも3つのスイッチを遮断状態にする第2無通電状態と
を有し、
前記第1通電状態から前記第1還流状態に切り替わる直前の駆動電流値と前記駆動コイルのインダクタンス値とに基づいて、前記駆動コイルに蓄積されているエネルギを算出し、当該エネルギに基づいて、前記第1還流状態の継続時間を算出し、実測した前記第1還流状態の継続時間が算出した前記第1還流状態の継続時間に達したタイミングで、前記第1還流状態から前記第1無通電状態に切り替え、前記第2通電状態から前記第2還流状態に切り替わる直前の駆動電流値と前記駆動コイルのインダクタンス値とに基づいて、前記駆動コイルに蓄積されているエネルギを算出し、当該エネルギに基づいて、前記第2還流状態の継続時間を算出し、実測した前記第2還流状態の継続時間が算出した前記第2還流状態の継続時間に達したタイミングで、前記第2還流状態から前記第2無通電状態に切り替える
モータ制御回路。
【請求項3】
前記第1還流状態及び前記第2還流状態において、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとを遮断状態にし、前記第1ローサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとを導通状態にして、前記駆動コイルに還流電流を流し、
前記第1無通電状態及び前記第2無通電状態において、前記第1ハイサイドスイッチと、前記第1ローサイドスイッチと、前記第2ハイサイドスイッチと、前記第2ローサイドスイッチと遮断状態にする
請求項1
または請求項2に記載のモータ制御回路。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載のモータ制御回路と、
前記モータ制御回路によって駆動されるブラシレスモータと
を備えるモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御回路、及びモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレスモータの効率を改善する方法として、ブラシレスモータを制御する際に、導通期間の後に惰性回転期間を設けることがある。従来、この惰性回転期間において、スイッチに備えられた寄生ダイオードを利用し電流を流し続けていた。寄生ダイオードを利用し電流を流し続ける場合、ブラシレスモータの損失が大きくなり、また寄生ダイオードから発熱が発生してしまう。慣性回転期間において還流電流を流す方法として、寄生ダイオードを利用し電流を流し続ける代わりに、寄生ダイオードが備えられるスイッチをON状態にすることにより還流電流を流す方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるような従来技術によると、惰性回転期間が比較的長い場合には、モータの逆起電力により逆回転方向のトルク(いわゆるマイナストルク)が生じ、効率の改善の程度が抑制されてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、ブラシレスモータの駆動コイルの一端にそれぞれ接続された第1ハイサイドスイッチ及び第1ローサイドスイッチと、前記駆動コイルの他端にそれぞれ接続された第2ハイサイドスイッチ及び第2ローサイドスイッチとを備え、前記第1ハイサイドスイッチと、前記第1ローサイドスイッチと、前記第2ハイサイドスイッチと、前記第2ローサイドスイッチとをそれぞれ導通状態又は遮断状態にすることにより、ブラシレスモータを回転駆動するモータ制御回路であって、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとを導通状態にし、前記第2ハイサイドスイッチと前記第1ローサイドスイッチとを遮断状態にして、前記駆動コイルに正方向の駆動電流を供給する第1通電状態と、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとを遮断状態にし、第2ハイサイドスイッチと前記第1ローサイドスイッチとを導通状態にして、前記駆動コイルに負方向の駆動電流を供給する第2通電状態と、前記第1通電状態の後に、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとを遮断状態にし、前記第1ローサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとのうち少なくとも前記第2ローサイドスイッチを導通状態にして、又は、前記第1ローサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチを遮断状態にし、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとのうち少なくとも前記第1ハイサイドスイッチを導通状態にして、前記駆動コイルに還流電流を流す第1還流状態と、前記第2通電状態の後に、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとを遮断状態にし、前記第1ローサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとのうち少なくとも前記第1ローサイドスイッチを導通状態にして、又は、前記第1ローサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチを遮断状態にし、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとのうち少なくとも前記第2ハイサイドスイッチを導通状態にして、前記駆動コイルに還流電流を流す第2還流状態と、前記第1還流状態と当該第1還流状態の後の前記第2通電状態との間において、前記第1ハイサイドスイッチと、前記第1ローサイドスイッチと、前記第2ハイサイドスイッチと、前記第2ローサイドスイッチとのうち前記第1還流状態において遮断状態であったスイッチを含む少なくとも3つのスイッチを遮断状態にする第1無通電状態と前記第2還流状態と当該第2還流状態の後の前記第1通電状態との間において、前記第1ハイサイドスイッチと、前記第1ローサイドスイッチと、前記第2ハイサイドスイッチと、前記第2ローサイドスイッチとのうち前記第2還流状態において遮断状態であったスイッチを含む少なくとも3つのスイッチを遮断状態にする第2無通電状態とを有し、前記還流電流を流し始めてからマイナストルクが発生するまでの限界時間を実験的に求めておくと共に、当該限界時間と前記ブラシレスモータのロータ回転数との関係に基づいて、前記ブラシレスモータの負荷状態と還流状態継続電気角との関係を求めておき、前記第1還流状態が継続している期間の電気角の変化量が、前記ブラシレスモータの前記負荷状態に応じた前記還流状態継続電気角に達したタイミングで、前記第1還流状態から前記第1無通電状態に切り替え、前記第2還流状態が継続している期間の電気角の変化量が、前記ブラシレスモータの前記負荷状態に応じた前記還流状態継続電気角に達したタイミングで、前記第2還流状態から前記第2無通電状態に切り替えるモータ制御回路である。
本発明の一実施形態は、ブラシレスモータの駆動コイルの一端にそれぞれ接続された第1ハイサイドスイッチ及び第1ローサイドスイッチと、前記駆動コイルの他端にそれぞれ接続された第2ハイサイドスイッチ及び第2ローサイドスイッチとを備え、前記第1ハイサイドスイッチと、前記第1ローサイドスイッチと、前記第2ハイサイドスイッチと、前記第2ローサイドスイッチとをそれぞれ導通状態又は遮断状態にすることにより、ブラシレスモータを回転駆動するモータ制御回路であって、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとを導通状態にし、前記第2ハイサイドスイッチと前記第1ローサイドスイッチとを遮断状態にして、前記駆動コイルに正方向の駆動電流を供給する第1通電状態と、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとを遮断状態にし、第2ハイサイドスイッチと前記第1ローサイドスイッチとを導通状態にして、前記駆動コイルに負方向の駆動電流を供給する第2通電状態と、前記第1通電状態の後に、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとを遮断状態にし、前記第1ローサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとのうち少なくとも前記第2ローサイドスイッチを導通状態にして、又は、前記第1ローサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチを遮断状態にし、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとのうち少なくとも前記第1ハイサイドスイッチを導通状態にして、前記駆動コイルに正方向の還流電流を流す第1還流状態と、前記第2通電状態の後に、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとを遮断状態にし、前記第1ローサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとのうち少なくとも前記第1ローサイドスイッチを導通状態にして、又は、前記第1ローサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチを遮断状態にし、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとのうち少なくとも前記第2ハイサイドスイッチを導通状態にして、前記駆動コイルに負方向の還流電流を流す第2還流状態と、前記第1還流状態と当該第1還流状態の後の前記第2通電状態との間において、前記第1ハイサイドスイッチと、前記第1ローサイドスイッチと、前記第2ハイサイドスイッチと、前記第2ローサイドスイッチとのうち前記第1還流状態において遮断状態であったスイッチを含む少なくとも3つのスイッチを遮断状態にする第1無通電状態と、前記第2還流状態と当該第2還流状態の後の前記第1通電状態との間において、前記第1ハイサイドスイッチと、前記第1ローサイドスイッチと、前記第2ハイサイドスイッチと、前記第2ローサイドスイッチとのうち前記第2還流状態において遮断状態であったスイッチを含む少なくとも3つのスイッチを遮断状態にする第2無通電状態とを有し、前記第1通電状態から前記第1還流状態に切り替わる直前の駆動電流値と前記駆動コイルのインダクタンス値とに基づいて、前記駆動コイルに蓄積されているエネルギを算出し、当該エネルギに基づいて、前記第1還流状態の継続時間を算出し、実測した前記第1還流状態の継続時間が算出した前記第1還流状態の継続時間に達したタイミングで、前記第1還流状態から前記第1無通電状態に切り替え、前記第2通電状態から前記第2還流状態に切り替わる直前の駆動電流値と前記駆動コイルのインダクタンス値とに基づいて、前記駆動コイルに蓄積されているエネルギを算出し、当該エネルギに基づいて、前記第2還流状態の継続時間を算出し、実測した前記第2還流状態の継続時間が算出した前記第2還流状態の継続時間に達したタイミングで、前記第2還流状態から前記第2無通電状態に切り替えるモータ制御回路である。
【0006】
本発明の一実施形態は、上述のモータ制御回路において、前記第1還流状態及び前記第2還流状態において、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとを遮断状態にし、前記第1ローサイドスイッチと前記第2ローサイドスイッチとを導通状態にして、前記駆動コイルに還流電流を流し、前記第1無通電状態及び前記第2無通電状態において、前記第1ハイサイドスイッチと、前記第1ローサイドスイッチと、前記第2ハイサイドスイッチと、前記第2ローサイドスイッチと遮断状態にする。
【0011】
本発明の一実施形態は、上述のモータ制御回路と、前記モータ制御回路によって駆動されるブラシレスモータとを備えるモータ装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、いわゆるマイナストルクの発生を低減して、ブラシレスモータの効率を改善することができるモータ制御回路、及びモータ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態のモータ装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態の制御部によるスイッチの制御状態の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態の還流状態継続電気角の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態の電流検出部を備えるモータ制御回路の構成の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態の電流検出部を備えるモータ制御回路の構成の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態のモータ装置1の構成の一例を示す図である。このモータ装置1は、例えば、掃除機や電動ドライバなどの電動機器、特に可搬型の電動機器に備えられる。モータ装置1は、ブラシレスモータMTRと、位置検出部HSと、バッテリBATと、モータ制御回路10とを備える。
ブラシレスモータMTRは、ロータRTと駆動コイルCLとを備えている。このブラシレスモータMTRとは、例えば単相ブラシレスモータである。ブラシレスモータMTRは、駆動コイルCLに供給される電流によって生じる磁力と、ロータRTが備える永久磁石の磁力とによる吸引力又は反発力により、ロータRTを回転させる。
位置検出部HSは、例えばホール素子などの磁気センサを備えており、ロータRTの回転位置(例えば、電気角)を検出する。位置検出部HSは、検出したロータRTの回転位置を示す回転位置情報をモータ制御回路10に対して出力する。
バッテリBATは、例えば、ニッケルカドミウム電池やリチウムイオン電池などの二次電池であり、モータ制御回路10に対して電力を供給する。なお、このバッテリBATは、二次電池に限られず、乾電池などの一次電池であってもよい。
モータ制御回路10は、バッテリBATから供給される電力を駆動コイルCLに供給することにより、ロータRTを回転させる。モータ制御回路10は、位置検出部HSが出力するロータRTの回転位置情報に応じて駆動コイルCLに供給される電流の向きを変化させることにより、ロータRTを一方向に回転させる。以下、このモータ制御回路10のより具体的な構成について説明する。
【0015】
[モータ制御回路10の構成]
モータ制御回路10は、端子T1~T4を備える。端子T1は、バッテリBATの正極に接続される。端子T2は、バッテリBATの負極に接続される。端子T3は、ブラシレスモータMTRの駆動コイルCLの一端に接続される。端子T4は、駆動コイルCLの他端に接続される。
【0016】
また、モータ制御回路10は、第1ハイサイドスイッチQ1と、第1ローサイドスイッチQ2と、第2ハイサイドスイッチQ3と、第2ローサイドスイッチQ4とを備える。第1ハイサイドスイッチQ1は、モータ制御回路10内の接続点CP11と接続点CP13との間に接続される。第1ローサイドスイッチQ2は、接続点CP13と接続点CP12との間に接続される。第2ハイサイドスイッチQ3は、接続点CP11と接続点CP14との間に接続される。第2ローサイドスイッチQ4は、接続点CP14と接続点CP12との間に接続される。なお以下の説明において、これら4個のスイッチを区別しない場合には、スイッチQと総称する。これらのスイッチQは、いわゆるH(エイチ)・ブリッジを構成する。
【0017】
また、モータ制御回路10は、制御部110と、記憶部120を備える。記憶部120には、制御部110による制御用のプログラムやデータが予め記憶されている。
制御部110は、位置検出部HSが検出するロータRTの回転位置情報に基づいて、上述の各スイッチQをON状態(導通状態)又はOFF状態(遮断状態)に切り替える。
例えば、第1ハイサイドスイッチQ1及び第2ローサイドスイッチQ4がいずれもON状態であり、第1ローサイドスイッチQ2及び第2ハイサイドスイッチQ3がいずれもOFF状態である場合、端子T3から駆動コイルCLを介して端子T4に戻る駆動電流iaが流れる。この駆動電流iaを正方向の駆動電流とも称する。
また例えば、第1ハイサイドスイッチQ1及び第2ローサイドスイッチQ4がいずれもOFF状態であり、第1ローサイドスイッチQ2及び第2ハイサイドスイッチQ3がいずれもON状態である場合、端子T4から駆動コイルCLを介して端子T3に駆動電流ibが流れる。この駆動電流ibを負方向の駆動電流とも称する。
以下、
図2を参照して制御部110によるスイッチQの制御状態について説明する。
【0018】
[制御状態]
図2は、本実施形態の制御部110によるスイッチQの制御状態の一例を示す図である。制御部110によるスイッチQの制御状態は、(1)駆動状態、(2)還流状態、(3)無通電状態の3種類に分けられる。
【0019】
(1)駆動状態
駆動状態とは、バッテリBATから駆動コイルCLに駆動電流を供給してロータRTに回転力を与える状態である。この駆動状態には、上述した駆動電流ia(正方向の駆動電流)が流れる状態と、駆動電流ib(負方向の駆動電流)が流れる状態とがある。以下の説明では、駆動電流iaが流れる状態を第1駆動状態ST1-1とも称し、駆動電流ibが流れる状態を第2駆動状態ST1-2とも称する。
図2に示す一例において、時刻t11から時刻t12までの区間、及び時刻t21から時刻t22までの区間が第1駆動状態ST1-1である。また、同図に示す一例において、時刻t14から時刻t15までの区間、及び時刻t24から時刻t25までの区間が第2駆動状態ST1-2である。
【0020】
(2)還流状態
還流状態ST2とは、バッテリBATから駆動コイルCLに駆動電流を供給せずに、駆動コイルCLに還流電流を流す状態である。この還流状態ST2において、制御部110は、第1ハイサイドスイッチQ1及び第2ハイサイドスイッチQ3をいずれもOFF状態にし、第1ローサイドスイッチQ2及び第2ローサイドスイッチQ4をいずれもON状態にする。
図2に示す一例において、時刻t12から時刻t13までの区間、時刻t15から時刻t16までの区間、時刻t22から時刻t23までの区間、及び時刻t25から時刻t26までの区間が還流状態ST2である。
【0021】
上述した駆動状態(第1駆動状態ST1-1及び第2駆動状態ST1-2)において駆動コイルCLに駆動電流が供給されると、駆動コイルCLには、そのインダクタンスによってエネルギが蓄積される。
ここで、第1駆動状態ST1-1の後、還流状態ST2に切り替わると、第1ローサイドスイッチQ2及び第2ローサイドスイッチQ4がいずれもON状態にされることにより、接続点CP13から端子T3、駆動コイルCL、端子T4、接続点CP14、第2ローサイドスイッチQ4、接続点CP12及び第1ローサイドスイッチQ2を経由して接続点CP13に戻る還流回路が形成される。還流回路が形成されると、駆動コイルCLに蓄積されたエネルギによって還流電流が生じる。この還流電流の流れる方向は、第1駆動状態ST1-1における駆動電流iaと同方向である。この還流電流によってロータRTには回転力が生じる。
なお、第2駆動状態ST1-2の後に還流状態ST2に切り替わる場合においては、第2駆動状態ST1-2における駆動電流ibと同方向に流れる還流電流が生じる。この場合においても、還流電流によってロータRTには回転力が生じる。
モータ制御回路10は、駆動状態の後に還流状態ST2を有することにより、バッテリBATから駆動電流を供給することなく、ロータRTに回転力を与えることができる。つまり、モータ制御回路10は、バッテリBATの消費電力を低減することができる。
【0022】
なお、本実施形態の具体例では、還流状態ST2において、第1ローサイドスイッチQ2及び第2ローサイドスイッチQ4がいずれもON状態にされる場合を一例にして説明するがこれに限られない。第1ローサイドスイッチQ2及び第2ローサイドスイッチQ4には、それぞれ寄生ダイオードが存在する。第1ローサイドスイッチQ2の寄生ダイオードは、接続点CP12から接続点CP13の方向に電流を流すことが可能である。また、第2ローサイドスイッチQ4の寄生ダイオードは、接続点CP12から接続点CP14の方向に電流を流すことが可能である。したがって、駆動電流iaと同一方向に還流電流を流す場合には、第2ローサイドスイッチQ4がON状態であれば、第1ローサイドスイッチQ2がOFF状態であっても還流電流が流れる。また、駆動電流ibと同一方向に還流電流を流す場合には、第1ローサイドスイッチQ2がON状態であれば、第2ローサイドスイッチQ4がOFF状態であっても還流電流が流れる。すなわち、還流状態ST2において、還流電流の方向に応じて、第1ローサイドスイッチQ2又は第2ローサイドスイッチQ4のいずれか一方がON状態にされれば、還流電流を流すことができる。
【0023】
なお、本実施形態の具体例では、還流状態ST2において、第1ハイサイドスイッチQ1及び第2ハイサイドスイッチQ3がいずれもOFF状態にされる場合、すなわち、第1ローサイドスイッチQ2及び第2ローサイドスイッチQ4を還流回路として利用する場合を一例にして説明するがこれに限られない。
還流状態ST2において、第1ローサイドスイッチQ2及び第2ローサイドスイッチQ4を還流回路として利用せずに、第1ハイサイドスイッチQ1及び第2ハイサイドスイッチQ3を還流回路として利用してもよい。この場合、第1ハイサイドスイッチQ1及び第2ハイサイドスイッチQ3がいずれもON状態にされる。また、第1ハイサイドスイッチQ1及び第2ハイサイドスイッチQ3にそれぞれ存在する寄生ダイオードを還流回路として利用する場合には、第1ハイサイドスイッチQ1及び第2ハイサイドスイッチQ3のうちいずれか一方のみがON状態にされてもよい。
【0024】
(3)無通電状態
無通電状態ST3とは、還流状態ST2の後に、各スイッチQがいずれもOFF状態にされる状態である。
図2に示す一例において、時刻t13から時刻t14までの区間、時刻t16から時刻t21までの区間、時刻t23から時刻t24までの区間、及び時刻t26から時刻t31までの区間が無通電状態ST3である。
【0025】
上述したように還流電流は、駆動状態において駆動コイルCLに蓄えられたエネルギによって生じる。駆動コイルCLに蓄えられたエネルギは、還流電流を生じさせることにより消費される。ここで、駆動コイルCLには、ロータRTの回転によって生じる逆起電力が発生する。駆動コイルCLに蓄えられたエネルギが還流電流を生じさせることができない程度まで消費されると、上述した逆起電力により、駆動コイルCLには、これまで流れていた還流電流とは逆方向の電流が流れることになる。駆動コイルCLに、この逆方向の電流が流れると、ロータRTにはブレーキ力、いわゆるマイナストルクが発生する。このマイナストルクは、ブラシレスモータMTRの効率を低下させる要因となるため、発生しないことが望ましい。
【0026】
そこで、本実施形態の制御部110は、還流状態ST2の後に無通電状態ST3を有する。この無通電状態ST3を有することにより、制御部110は、還流電流とは逆方向の電流が駆動コイルCLに流れることを抑止し、マイナストルクの発生を低減する。以下、制御部110が行う還流状態ST2から無通電状態ST3への切り替えについて説明する。
【0027】
なお、本実施形態の具体例では、無通電状態ST3において、各スイッチQがいずれもOFF状態にされる場合を一例にして説明するがこれに限られない。
無通電状態ST3においては、ロータRTの回転が妨げられる方向の電流(マイナストルクを発生させる電流)が駆動コイルCLに流れないのであれば、いずれかのスイッチQがON状態にされていてもよい。
例えば、
図2に示す一例において、第1駆動状態ST1-1から、還流状態ST2を経て無通電状態ST3になる場合には、第1ローサイドスイッチQ2がOFF状態にされていれば、第2ローサイドスイッチQ4がON状態であったとしても、マイナストルクを発生させる電流は流れない。すなわち、第1駆動状態ST1-1から、還流状態ST2を経て無通電状態ST3になる場合の無通電状態ST3を「第1無通電状態ST3-1」とすると、第1無通電状態ST3-1においては、第2ローサイドスイッチQ4がON状態にされていてもよい。
また、
図2に示す一例において、第2駆動状態ST1-2から、還流状態ST2を経て無通電状態ST3になる場合には、第2ローサイドスイッチQ4がOFF状態にされていれば、第1ローサイドスイッチQ2がON状態であったとしても、マイナストルク電流は流れない。すなわち、第2駆動状態ST1-2から、還流状態ST2を経て無通電状態ST3になる場合の無通電状態ST3を「第2無通電状態ST3-2」とすると、第2無通電状態ST3-2においては、第1ローサイドスイッチQ2がON状態にされていてもよい。
【0028】
なお、還流回路に寄生ダイオードを利用する場合には、還流状態ST2から第1無通電状態ST3-1への切り替わり、及び還流状態ST2から第1無通電状態ST3-1への切り替わりは、いずれも還流電流の消滅によって発生する。すなわち、この場合において、還流状態ST2から第1無通電状態ST3-1への切り替わり、及び還流状態ST2から第2無通電状態ST3-2への切り替わりにおいて、各スイッチQのON状態・OFF状態が変化しない。
【0029】
[還流状態から無通電状態への切り替え]
制御部110は、還流状態ST2から無通電状態ST3への切り替えを、(1)予め定められたタイミングに基づいて行う場合、及び(2)還流電流の検出結果に基づいて行う場合がある。これらについて、以下順に説明する。
【0030】
(1)予め定められたタイミングに基づく切り替え
制御部110は、予め定められたタイミングに基づいて、還流状態ST2から無通電状態ST3に切り替える。この場合、制御部110は、駆動状態から還流状態ST2に切り替えた後、予め定められた還流状態継続電気角分の角度変化がロータRTに生じたタイミングにおいて、還流状態ST2から無通電状態ST3に切り替える。この還流状態継続電気角は、例えば、ブラシレスモータMTRを掃除機などの製品に組み込んだ場合のロータRTの回転状態の実験結果に基づいて定められる。この還流状態継続電気角の一例を
図3に示す。
【0031】
図3は、本実施形態の還流状態継続電気角の一例を示す図である。駆動状態において駆動コイルCLに蓄えられるエネルギは、駆動電流の大きさに依存している。したがって、駆動コイルCLが還流電流を流し続けられる時間は、駆動電流の大きさ、すなわちブラシレスモータMTRの負荷状態に依存している。この駆動コイルCLが還流電流を流し続けられる時間、つまりマイナストルクが発生するまでの限界の時間を実験的に求め、求めた時間とロータRTの回転数との関係に基づいて、
図3に示す負荷状態と還流状態継続電気角との関係を得る。例えば、ブラシレスモータMTRが高負荷状態である場合の還流状態継続電気角a_highは、低負荷状態である場合の還流状態継続電気角a_lowに比べて大きい。
【0032】
(1-1)高負荷状態の測定結果に基づく場合
記憶部120には、還流状態継続電気角a_highが記憶されている。制御部110は、還流状態継続電気角a_highに基づいて、還流状態ST2から無通電状態ST3への切り替えを行う。具体的には、制御部110は、駆動状態から還流状態ST2に切り替えた後、還流状態ST2の継続時間を計時する。制御部110は、還流状態ST2が継続している期間の電気角の変化量を算出する。制御部110は、還流状態ST2が継続している期間の電気角の変化量が還流状態継続電気角a_highに達したタイミングで、還流状態ST2から無通電状態ST3に切り替える。
なお、制御部110は、還流状態継続電気角a_lowとロータRTの回転数とに基づいて、還流状態を継続させる時間を算出してもよい。この場合には、制御部110は、実測した還流状態ST2の継続時間が、算出した時間に達したタイミングで、還流状態ST2から無通電状態ST3に切り替える。
【0033】
(1-2)低負荷状態の測定結果に基づく場合
記憶部120には、還流状態継続電気角a_lowが記憶されている。制御部110は、還流状態継続電気角a_lowに基づいて、還流状態ST2から無通電状態ST3への切り替えを行う。具体的には、制御部110は、駆動状態から還流状態ST2に切り替えた後、還流状態ST2の継続時間を計時する。制御部110は、還流状態ST2が継続している期間の電気角の変化量を算出する。制御部110は、還流状態ST2が継続している期間の電気角の変化量が還流状態継続電気角a_lowに達したタイミングで、還流状態ST2から無通電状態ST3に切り替える。
なお、制御部110は、還流状態継続電気角a_highの場合と同様にして、還流状態継続電気角a_highとロータRTの回転数とに基づいて、還流状態を継続させる時間を算出してもよい。この場合には、制御部110は、実測した還流状態ST2の継続時間が、算出した時間に達したタイミングで、還流状態ST2から無通電状態ST3に切り替える。
【0034】
ここで、ブラシレスモータMTRが組み込まれる電気機器の種類により、ブラシレスモータMTRの負荷の発生状況が互いに異なることがある。
例えば、ブラシレスモータMTRが備えられる電気機器が電動ドライバである場合には、ネジやボルトなどの締め込み動作をしている場合のほうが、締め込み動作をせずに空転させている場合よりも負荷が高い。つまり、電動ドライバの場合、仕事中の動作のほうが空転動作よりも高負荷である。この場合には、制御部110は、高負荷状態の還流状態継続電気角a_highに基づいて切り替える。このように構成することにより、制御部110は、還流状態継続電気角a_lowに基づいて切り替える場合に比べて還流状態ST2が長くなり、還流電流を有効に利用することができる。
【0035】
一方、ブラシレスモータMTRが備えられる電気機器が掃除機である場合には、吸引ファンの形状によっては、床面等に吸い込み口を接して吸引動作をしている場合のほうが、空中で吸引動作をしている場合よりも負荷が低い場合がある。例えば、吸引ファンの形状が斜流ファンである掃除機の場合、仕事中の動作のほうが空転動作よりも低負荷である。この場合には、制御部110は、低負荷状態の還流状態継続電気角a_lowに基づいて切り替える。
【0036】
ここで、掃除機のように仕事中の動作のほうが空転動作よりも低負荷である場合において、仮に高負荷状態の還流状態継続電気角a_highに基づいて切り替えを行った場合について説明する。上述したように、還流状態継続電気角a_highは、還流状態継続電気角a_lowに比べて長時間である。ブラシレスモータMTRが低負荷の場合には駆動コイルCLに蓄えられているエネルギが高負荷の場合に比べて少ないため、還流状態ST2をより長時間継続するとマイナストルクが生じやすくなる。したがって、ブラシレスモータMTRが低負荷の場合に、還流状態ST2を高負荷時の還流状態継続電気角a_high分だけ継続させると、マイナストルクが生じやすい。つまり、掃除機のように仕事中の動作のほうが空転動作よりも低負荷である電気機器の場合に、還流状態ST2を高負荷時の還流状態継続電気角a_highだけ継続させると、空転時にはマイナストルクが発生しにくく、仕事中の動作においてはマイナストルクが発生しやすい状況になる。
【0037】
そこで、掃除機のように仕事中の動作のほうが空転動作よりも低負荷である電気機器の場合には、本実施形態の制御部110は、低負荷状態の還流状態継続電気角a_lowに基づいて無通電状態ST3に切り替えることにより、仕事中の動作においてマイナストルクの発生を抑制する。
【0038】
この一例の場合、上述した還流状態継続電気角(還流状態継続電気角a_highや、還流状態継続電気角a_lowなど)は、記憶部120に記憶されている。例えば、ブラシレスモータMTRが電動ドライバに組み込まれる場合には、記憶部120には還流状態継続電気角a_highが記憶されている。また、ブラシレスモータMTRが掃除機に組み込まれる場合には、記憶部120には還流状態継続電気角a_lowが記憶されている。
制御部110は、記憶部120に記憶されている還流状態継続電気角に基づいて、還流状態ST2から無通電状態ST3への切り替えを行う。
【0039】
(2)還流電流の検出結果に基づく切り替え
これまで、制御部110が予め定められたタイミング(例えば、記憶部120に記憶されている還流状態継続電気角)に基づいて、還流状態ST2から無通電状態ST3に切り替える場合について説明した。以下では、制御部110が還流電流の検出結果に基づいて還流状態ST2から無通電状態ST3に切り替える場合について、
図4を参照して説明する。
【0040】
図4は、本実施形態の電流検出部130を備えるモータ制御回路10aの構成の一例を示す図である。モータ制御回路10aは、シャント抵抗R1と電流検出部130とを備える点において、上述したモータ制御回路10と異なる。なお、上述したモータ制御回路10の構成と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
シャント抵抗R1は、端子T4と接続点CP14との間に接続される。シャント抵抗R1には、端子T4と接続点CP14との間を流れる電流(例えば、還流電流)が流れる。電流検出部130は、シャント抵抗R1の両端の電位差を検出することにより、シャント抵抗R1を流れる電流を検出する。
制御部110aは、還流状態ST2において電流検出部130が検出した電流、すなわち還流電流の大きさを判定する。制御部110aは、電流検出部130が検出した還流電流の大きさが低下し、例えば0(ゼロ)付近になった場合に、還流状態ST2から無通電状態ST3に切り替える。
【0042】
このように構成することにより、モータ制御回路10aは、ブラシレスモータMTRの負荷状態によらず、マイナストルクが発生するタイミングを検出することができる。すなわち、モータ制御回路10aは、ブラシレスモータMTRの負荷状態によらず、還流状態ST2から無通電状態ST3に切り替えタイミングを判定することができる。また、モータ制御回路10aは、上述した掃除機のように仕事中の動作のほうが空転動作よりも低負荷である電気機器の場合に、予め定められたタイミングによって制御状態を切り替える場合に比べ、還流電流をより有効に利用することができる。
【0043】
なお、上述の一例では、シャント抵抗R1が端子T4と接続点CP14との間に接続されているとして説明したがこれに限られず、シャント抵抗R1は、還流回路のいずれかの位置に接続されていればよい。
【0044】
(3)駆動電流の検出結果に基づく切り替え
駆動コイルCLのインダクタンスの値が既知である場合には、制御部110は、駆動電流によって駆動コイルCLに蓄積されるエネルギを算出することにより、還流状態ST2の継続時間を算出してもよい。この場合、記憶部120には、駆動コイルCLのインダクタンスの値が記憶されている。制御部110は、上述した駆動状態(第1駆動状態ST1-1及び第2駆動状態ST1-2)から還流状態ST2に切り替わる直前の駆動電流値と、記憶部120に記憶されているインダクタンスの値とに基づいて、駆動コイルCLに蓄積されているエネルギを算出する。
一例として、駆動電流が流れる経路にシャント抵抗が存在する場合には、制御部110は、このシャント抵抗の両端の電位差に基づいて駆動電流値を算出する。例えば、駆動電流が流れる経路である端子T2と接続点CP12との間にシャント抵抗(不図示)が備えられている場合がある。この場合には、制御部110は、駆動状態から還流状態ST2に切り替わる直前のシャント抵抗の両端の電位差に基づいて駆動電流値を算出する。制御部110は、算出した駆動電流値と、駆動コイルCLのインダクタンスの値とに基づいて、駆動状態から還流状態ST2に切り替わる直前の駆動コイルCLに蓄積されているエネルギを算出する。制御部110は、算出したエネルギに基づいて、還流状態ST2の継続時間を算出する。
【0045】
[変形例]
図5は、本実施形態の電流検出部130bを備えるモータ制御回路10bの構成の一例を示す図である。モータ制御回路10bは、シャント抵抗R2、シャント抵抗R3と電流検出部130bとを備える点において、上述したモータ制御回路10及びモータ制御回路10aと異なる。なお、上述したモータ制御回路10の構成と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0046】
シャント抵抗R2は、第1ローサイドスイッチQ2と接続点CP12との間に接続される。シャント抵抗R3は、第2ローサイドスイッチQ4と接続点CP12との間に接続される。
電流検出部130bは、シャント抵抗R2の両端の電位差を検出することにより、シャント抵抗R2を流れる電流を検出する。また、電流検出部130bは、シャント抵抗R3の両端の電位差を検出することにより、シャント抵抗R3を流れる電流を検出する。
制御部110bは、還流状態ST2において電流検出部130bが検出した電流、すなわち還流電流の大きさを判定する。ここで、制御部110bは、シャント抵抗R2を流れる電流の大きさと、シャント抵抗R3を流れる電流の大きさとのうち、いずれかを還流電流の大きさとして、その大きさを判定すればよい。制御部110bは、電流検出部130が検出した還流電流の大きさが低下し、例えば0(ゼロ)付近になった場合に、還流状態ST2から無通電状態ST3に切り替える。
【0047】
同図のように構成することにより、モータ制御回路10bは、第1ハイサイドスイッチQ1及び第1ローサイドスイッチQ2がいずれもON状態になった場合に流れる過電流をシャント抵抗R2によって検出することができる。また、モータ制御回路10bは、第2ハイサイドスイッチQ3及び第2ローサイドスイッチQ4がいずれもON状態になった場合に流れる過電流をシャント抵抗R3によって検出することができる。
このシャント抵抗R2及びシャント抵抗R3は、還流回路内に接続されているため、シャント抵抗R2及びシャント抵抗R3によって還流電流を検出することができる。
【0048】
従来、電流検出用のシャント抵抗は、例えば、接続点CP12と端子T2との間に接続されていた。つまり、この従来の手法によると、シャント抵抗が還流回路の外側に接続されるため、還流電流を検出するためには、電流検出用のシャント抵抗の他に、還流電流検出用のシャント抵抗を接続することが求められた。
【0049】
一方、モータ制御回路10bは、シャント抵抗R2及びシャント抵抗R3に、還流電流検出と過電流検出との2つの機能を持たせることができる。
【0050】
なお、シャント抵抗R2及びシャント抵抗R3が接続される位置は上述の位置に限られず、還流回路内において過電流をも検出可能な位置に配置されればよい。
【0051】
また、モータ制御回路10a及びモータ制御回路10bにおいて還流電流の検出にシャント抵抗を用いる例を示したがこれに限られず、電流検出部130及び電流検出部130bは、シャント抵抗を用いずに還流電流を検出してもよい。例えば、電流検出部130及び電流検出部130bは、第1ローサイドスイッチQ2のソース端子とドレイン端子との間の電位差や、第2ローサイドスイッチQ4のソース端子とドレイン端子との間の電位差を検出することにより、還流電流を検出してもよい。また、電流検出部130及び電流検出部130bは、シャント抵抗やスイッチの端子間の電位差を検出すること以外の他の既知の手段によって還流電流を検出してもよい。
【0052】
以上、本発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【0053】
なお、上述の各装置は内部にコンピュータを有している。そして、上述した各装置の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0054】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…モータ装置、10…モータ制御回路、20…位置検出部、110…制御部、120…記憶部、130…電流検出部、Q1…第1ハイサイドスイッチ、Q2…第1ローサイドスイッチ、Q3…第2ハイサイドスイッチ、Q4…第2ローサイドスイッチ、ia…駆動電流(正方向の駆動電流)、ib…駆動電流(負方向の駆動電流)、ST1-1…第1駆動状態、ST1-2…第2駆動状態、ST2…還流状態、ST3…無通電状態、BAT…バッテリ、MTR…ブラシレスモータ、RT…ロータ、CL…駆動コイル、R…シャント抵抗、T…端子