(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】マスクブランク、マスクブランクの製造方法、および転写用マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/68 20120101AFI20220104BHJP
G03F 1/24 20120101ALI20220104BHJP
G03F 1/32 20120101ALI20220104BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20220104BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220104BHJP
G03F 1/54 20120101ALI20220104BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220104BHJP
G03F 7/11 20060101ALI20220104BHJP
G03F 7/32 20060101ALI20220104BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
G03F1/68
G03F1/24
G03F1/32
H01L21/30 569E
G03F7/20 501
G03F1/54
G03F7/004 511
G03F7/11 503
G03F7/32
G03F7/038 601
(21)【出願番号】P 2017163981
(22)【出願日】2017-08-29
【審査請求日】2020-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 亨
(72)【発明者】
【氏名】小野 一法
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅広
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-070268(JP,A)
【文献】特開2012-237975(JP,A)
【文献】特開2016-040589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 1/00~1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主表面上に、パターン形成用薄膜とネガ型レジスト膜とをこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、
前記パターン形成用薄膜は、金属およびケイ素から選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成され、
前記ネガ型レジスト膜は、有機系材料からなり、前記パターン形成用薄膜の表面に接して形成され、
前記ネガ型レジスト膜を現像液で溶解させて除去したとき
に、75度に傾けた前記パターン形成用薄膜の表面
に対して純水の液滴を30μlの滴下量で滴下した場合に測定された転落速度が
、前記ネガ型レジスト膜のベーク処理の加熱条件によって9mm/秒未満
に調整されている
ことを特徴とするマスクブランク。
【請求項2】
前記パターン形成用薄膜は、クロムを含有する材料で形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のマスクブランク。
【請求項3】
前記現像液は、水酸化テトラメチルアンモニウムを含む水溶液である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
【請求項4】
前記基板と前記パターン形成用薄膜との間に、ケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素を含有する材料からなる下層膜が設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載のマスクブランク。
【請求項5】
基板の主表面上に、パターン形成用薄膜とネガ型レジスト膜とをこの順に積層した構造を備えるマスクブランクの製造方法であって、
金属およびケイ素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるパターン形成用薄膜が主表面上に設けられた基板を準備する工程と、
前記パターン形成用薄膜の表面に有機系材料からなるネガ型レジストを塗布した後、ベーク処理を行うことにより、ネガ型レジスト膜を前記パターン形成用薄膜の表面に接して形成する工程とを有し、
前記ベーク処理は、前記ベーク処理後のネガ型レジスト膜を現像液で溶解させて除去したとき
に、75度に傾けた前記パターン形成用薄膜の表面
に対して純水の液滴を30μlの滴下量で滴下した場合に測定された転落速度が9mm/秒未満となるような加熱条件で行われる
ことを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項6】
前記パターン形成用薄膜は、クロムを含有する材料で形成されている
ことを特徴とする請求項5に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項7】
前記現像液は、水酸化テトラメチルアンモニウムを含む水溶液である
ことを特徴とする請求項5または6に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項8】
前記基板と前記パターン形成用薄膜との間に、ケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素を含有する材料からなる下層膜を形成する工程を有する
ことを特徴とする請求項6に記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか1項に記載のマスクブランクの前記ネガ型レジスト膜に転写パターンを描画露光する工程と、
前記描画露光後のネガ型レジスト膜に対して前記現像液による現像処理を行って、前記ネガ型レジスト膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成されたネガ型レジスト膜をマスクとするドライエッチングを行い、前記パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程とを有する
ことを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項10】
請求項4に記載のマスクブランクの前記ネガ型レジスト膜に転写パターンを描画露光する工程と、
前記描画露光後のネガ型レジスト膜に対して前記現像液による現像処理を行って、前記ネガ型レジスト膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成されたネガ型レジスト膜をマスクとするドライエッチングを行い、前記パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成されたパターン形成用薄膜をマスクとするドライエッチングを行い、前記下層膜に転写パターンを形成する工程とを有する
ことを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項11】
請求項5から7のいずれか1項に記載のマスクブランクの製造方法によって製造されたマスクブランクの前記ネガ型レジスト膜に転写パターンを描画露光する工程と、
前記描画露光後のネガ型レジスト膜に対して前記現像液による現像処理を行って、前記ネガ型レジスト膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成されたネガ型レジスト膜をマスクとするドライエッチングを行い、前記パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程とを有する
ことを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項12】
請求項8に記載のマスクブランクの製造方法によって製造されたマスクブランクの前記ネガ型レジスト膜に転写パターンを描画露光する工程と、
前記描画露光後のネガ型レジスト膜に対して前記現像液による現像処理を行って、前記ネガ型レジスト膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成されたネガ型レジスト膜をマスクとするドライエッチングを行い、前記パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成されたパターン形成用薄膜をマスクとするドライエッチングを行い、前記下層膜に転写パターンを形成する工程とを有する
ことを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブランク、マスクブランクの製造方法、および転写用マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィー技術は、基板上に微細パターンを形成する技術であって、マスクブランクを用いた転写用マスクの製造にも適用されている。特に、レジスト膜にネガ型の化学増幅型レジストを用いたリソグラフィー技術は、微細なレジストパターンの形成が可能であるため注目されている。一方でレジスト膜にネガ型レジストを用いた場合、レジスト膜の基板側には十分に露光光(電子線)が届き難く、その結果としてレジストパターンの根元にアンダーカットが生じてパターン倒れが発生し易い問題があった。
【0003】
そこでネガ型の化学増幅型レジストを用いたレジスト膜であれば、基板側に光酸発生剤の濃度が薄い領域を設けた構成とすることが提案されている。この場合、パターン倒れが発生しない程度の細りやアンダーカットを意図的に発生させつつ平面視的に良好な形状のレジストパターンを形成し、アンダーカットを有するレジストパターンをマスクにして基板表面の薄膜をエッチングする。これにより、平面視的に良好な形状のレジストパターンの形状を、薄膜に転写することが可能であるとしている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、転写用マスクに形成される薄膜パターンは、線幅が細く複雑なパターンが増えてきている。このため、上述した特許文献1で提案されている構成であっても、さらに微細な薄膜パターンの形成を可能とするためには、レジストパターンのパターン倒れを十分に抑制する必要がある。
【0006】
そこで本発明は、レジストパターンのパターン倒れが十分に抑制されていることが、実際のリソグラフィー処理を実施することなく簡便に評価されているマスクブランク、マスクブランクの製造方法、および転写用マスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<構成1>
基板の主表面上に、パターン形成用薄膜とネガ型レジスト膜とをこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、
前記パターン形成用薄膜は、金属およびケイ素から選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成され、
前記ネガ型レジスト膜は、有機系材料からなり、前記パターン形成用薄膜の表面に接して形成され、
前記ネガ型レジスト膜を現像液で溶解させて除去したときの前記パターン形成用薄膜の表面の転落速度が9mm/秒未満である
ことを特徴とするマスクブランク。
【0008】
<構成2>
前記パターン形成用薄膜は、クロムを含有する材料で形成されている
ことを特徴とする構成1に記載のマスクブランク。
【0009】
<構成3>
前記現像液は、水酸化テトラメチルアンモニウムを含む水溶液である
ことを特徴とする構成1または2に記載のマスクブランク。
【0010】
<構成4>
前記基板と前記パターン形成用薄膜との間に、ケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素を含有する材料からなる下層膜が設けられている
ことを特徴とする構成2に記載のマスクブランク。
【0011】
<構成5>
基板の主表面上に、パターン形成用薄膜とネガ型レジスト膜とをこの順に積層した構造を備えるマスクブランクの製造方法であって、
金属およびケイ素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるパターン形成用薄膜が主表面上に設けられた基板を準備する工程と、
前記パターン形成用薄膜の表面に有機系材料からなるネガ型レジストを塗布した後、ベーク処理を行うことにより、ネガ型レジスト膜を前記パターン形成用薄膜の表面に接して形成する工程とを有し、
前記ベーク処理は、前記ベーク処理後のネガ型レジスト膜を現像液で溶解させて除去したときの前記パターン形成用薄膜の表面の転落速度が9mm/秒未満となるような加熱条件で行われる
ことを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【0012】
<構成6>
前記パターン形成用薄膜は、クロムを含有する材料で形成されている
ことを特徴とする構成5に記載のマスクブランクの製造方法。
【0013】
<構成7>
前記現像液は、水酸化テトラメチルアンモニウムを含む水溶液である
ことを特徴とする構成5または6に記載のマスクブランクの製造方法。
【0014】
<構成8>
前記基板と前記パターン形成用薄膜との間に、ケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素を含有する材料からなる下層膜を形成する工程を有する
ことを特徴とする構成6に記載のマスクブランクの製造方法。
【0015】
<構成9>
構成1から3のいずれか1項に記載のマスクブランクの前記ネガ型レジスト膜に転写パターンを描画露光する工程と、
前記描画露光後のネガ型レジスト膜に対して前記現像液による現像処理を行って、前記ネガ型レジスト膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成されたネガ型レジスト膜をマスクとするドライエッチングを行い、前記パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程とを有する
ことを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【0016】
<構成10>
構成4に記載のマスクブランクの前記ネガ型レジスト膜に転写パターンを描画露光する工程と、
前記描画露光後のネガ型レジスト膜に対して前記現像液による現像処理を行って、前記ネガ型レジスト膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成されたネガ型レジスト膜をマスクとするドライエッチングを行い、前記パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成されたパターン形成用薄膜をマスクとするドライエッチングを行い、前記下層膜に転写パターンを形成する工程とを有する
ことを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【0017】
<構成11>
構成5から7のいずれか1項に記載のマスクブランクの製造方法によって製造されたマスクブランクの前記ネガ型レジスト膜に転写パターンを描画露光する工程と、
前記描画露光後のネガ型レジスト膜に対して前記現像液による現像処理を行って、前記ネガ型レジスト膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成されたネガ型レジスト膜をマスクとするドライエッチングを行い、前記パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程とを有する
ことを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【0018】
<構成12>
構成8に記載のマスクブランクの製造方法によって製造されたマスクブランクの前記ネガ型レジスト膜に転写パターンを描画露光する工程と、
前記描画露光後のネガ型レジスト膜に対して前記現像液による現像処理を行って、前記ネガ型レジスト膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成されたネガ型レジスト膜をマスクとするドライエッチングを行い、前記パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成されたパターン形成用薄膜をマスクとするドライエッチングを行い、前記下層膜に転写パターンを形成する工程とを有する
ことを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
以上のような構成の本発明によれば、レジストパターンのパターン倒れが十分に抑制されていることが、実際のリソグラフィー処理を実施することなく簡便に評価されているマスクブランク、マスクブランクの製造方法、および転写用マスクの製造方法を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係るマスクブランクの概略構成を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態に係るマスクブランクの製造方法を説明するための断面工程図である。
【
図4】第1実施形態に係る転写用マスクの製造方法を説明するための断面工程図である。
【
図5】第2実施形態に係るマスクブランクの概略構成を示す断面図である。
【
図6】第2実施形態に係るマスクブランクの製造方法を説明するための断面工程図である。
【
図7】第2実施形態に係る転写用マスクの製造方法を説明するための断面工程図(その1)である。
【
図8】第2実施形態に係る転写用マスクの製造方法を説明するための断面工程図(その2)である。
【
図9】ネガ型レジスト膜の塗布後ベーク温度(PAB温度)と転落速度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、上述した効果を得るための本発明の詳細な構成を、図面に基づいて説明する。各実施形態においては、先ず、本発明を適用したレジスト膜付きのマスクブランク、マスクブランクの製造方法、およびこのマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法の順に説明を行う。なお、各図において同様の構成要素には同一の符号を付して説明を行う。
【0022】
≪第1実施形態≫
<マスクブランク(バイナリマスク用または反射型マスク用)>
図1は、第1実施形態に係るマスクブランク1の概略構成を示す断面図である。この図に示すマスクブランク1は、転写用マスクとして加工されるものであって、バイナリマスク用または反射型マスク用のマスクブランク1である。なお、バイナリマスク用のマスクブランク1は、掘り込みレベンソン型位相シフトマスクを製造する用途や、CPL(Chromeless Phase Lithography)マスクを製造する用途などにも用いることができる。このようなマスクブランク1は、基板11の一主面上に、下層膜13、パターン形成用薄膜15、およびネガ型レジスト膜21がこの順に設けられている。そして特に、ネガ型レジスト膜21を現像剤によって剥離除去した場合のパターン形成用薄膜15の表面(以下、剥離面Sと記す)の転落速度が、9mm/秒未満のものである。以下、マスクブランク1の詳細な構成を、基板11側の各構成要素から順に説明し、次いでパターン形成用薄膜15の剥離面Sの特性を説明する。
【0023】
[基板11]
基板11は、ケイ素を含有する材料からなるものが選択される。例えば、マスクブランク1がバイナリマスク用のものであれば、基板11は、例えば、ArFエキシマレーザー光(波長:約193nm)のような露光光に対して透過性を有する材料で構成されればよい。このような材料としては、合成石英ガラスが用いられるが、この他にも、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO2-TiO2ガラス等)などのガラス材料を用いることができる。特に、合成石英ガラス基板は、ArFエキシマレーザー光、またはそれよりも短波長の領域で透明性が高いので、基板11として好適に用いることができる。
【0024】
また、マスクブランク1が反射型マスク用のものであれば、基板11は、露光時の発熱による熱膨張が低く抑えられた低熱膨張ガラス(SiO2-TiO2ガラス等)を用いて構成される。
【0025】
以上のような基板11は、主表面の形状が例えば正方形を含む矩形であって、周端面および主表面が所定の表面粗さに研磨され、その後、所定の洗浄処理および乾燥処理が施されたものである。
【0026】
なお、ここで言うリソグラフィーにおける露光光および露光時とは、マスクブランクを用いて作製された転写用マスクを用いてのリソグラフィーにおける露光光および露光時である。転写用マスクがバイナリマスクであれば、この露光光としては、ArFエキシマレーザー光(波長:193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長:248nm)、i線光(波長:365nm)のいずれも適用可能である。また転写用マスクが反射型マスクであれば、この露光光としては、EUV光(波長:13.56nm)が適用される。
【0027】
[下層膜13]
下層膜13は、このマスクブランク1を用いて転写用マスクを作製する場合に、微細パターンが形成される膜である。このような下層膜13は、マスクブランク1がバイナリマスク用のものであれば遮光膜13aであり、マスクブランク1が反射型マスク用のものであれば吸収体膜13bである。以下、それぞれの下層膜を説明する。
【0028】
(バイナリマスク用の下層膜13-遮光膜13a-)
バイナリマスク用の下層膜13として用いられる遮光膜13aは、バイナリマスクとして使用されるときのマスクパターンの露光転写に用いられる露光光に対して遮光性能(所定以上の光学濃度)を有していれば、公知の組成で構成することができる。具体的には、クロム、タンタル、ルテニウム、タングステン、チタン、ハフニウム、モリブデン、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ロジウム等の遷移金属単体あるいはその化合物を含む材料で構成されていればよい。
【0029】
遮光膜13aは、遷移金属およびケイ素(遷移金属シリサイド、特にモリブデンシリサイドを含む)の化合物を含む材料から構成されていてもよい。この場合、遮光膜13aは、遷移金属およびケイ素の化合物を含む材料からなり、たとえば、遷移金属およびケイ素と、酸素および/または窒素と、を主たる構成要素とする材料が挙げられる。また、遮光膜13aは、遷移金属と、酸素、窒素および/またはホウ素を主たる構成要素とする材料から構成されていてもよい。遷移金属には、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、クロム等が適用可能である。
【0030】
遮光膜13aは、ケイ素及び窒素からなる材料、またはケイ素および窒素からなる材料に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料で構成されてもよい。この遮光膜13aは、ケイ素に加え、いずれの半金属元素を含有してもよい。半金属元素としては、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン及びテルル等が挙げられる。この遮光膜13aは、窒素に加え、いずれの非金属元素を含有してもよい。この非金属元素は、狭義の非金属元素(窒素、炭素、酸素、リン、硫黄、セレン)、ハロゲンおよび貴ガスを含むものをいう。この非金属元素の中でも、炭素、フッ素及び水素から選ばれる1以上の元素を含有させると好ましい。
【0031】
また、遮光膜13aは、クロムや、クロムに酸素、窒素、炭素等の元素から選ばれる1種以上の元素を添加したクロム化合物で構成してもよいし、タンタルに、酸素、窒素、ホウ素等の元素から選ばれる1種以上の元素を添加したタンタル化合物で構成してもよい。
【0032】
以上のような材料によって構成されるバイナリマスク用の遮光膜13aは、反射防止機能を備えた膜であることが好ましく、2層または3層構造であってもよい。一例として、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)と窒素(N)で構成された反射防止機能を有する層(MoSiN)を、異なる組成の下層と上層として積層した2層構造の遮光膜13aが例示される。さらに、遮光膜13aとしては、膜厚方向における組成が連続的または段階的に異なるように構成された組成傾斜膜が例示される。
【0033】
また、バイナリマスク用の遮光膜13aの膜厚は特に制限されず、たとえば、露光光に対して光学濃度(OD:Optical Density)が2.5以上となるように決定すればよい。
【0034】
(反射型マスク用の下層膜13-吸収体膜13b-)
反射型マスク用の下層膜13として用いられる吸収体膜13bは、ここでの図示を省略した多層反射膜上に設けられる膜であり、EUV光を吸収する機能を有する。このような吸収体膜13bは、例えばタンタル(Ta)単体またはタンタルを主成分とする材料(タンタル系材料)を好ましく用いることができる。このような吸収体膜13bの結晶状態は、平滑性、平坦性の点から、アモルファス状または微結晶の構造を有しているものが好ましい。
【0035】
なお、吸収体膜13bと基板11との間に設けられる多層反射膜は、EUV光を反射する機能を有する膜である。多層反射膜は、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層して形成される。多層反射膜としては、Mo膜とSi膜を交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜等が例示され、露光光の波長により、材質を適宜選択することができる。
【0036】
[パターン形成用薄膜15]
パターン形成用薄膜15は、下層膜13をエッチングする際のエッチングマスク膜として機能するものである。このようなパターン形成用薄膜15は、下層膜13をエッチングする際に用いられるエッチャントに対してエッチング耐性を有する材料で構成する。
【0037】
下層膜13が、バイナリマスク用の遮光膜13aであって、ケイ素系材料や遷移金属シリサイド系材料で構成され、フッ素系ガスによるドライエッチングでパターニングされる場合、パターン形成用薄膜15は、これらのドライエッチングに対して耐性が高い材料であるクロムや、クロムに酸素、窒素、炭素等の元素を添加したクロム化合物からなる材料で構成することが好ましい。また、下層膜13(遮光膜13a)が、クロム系材料で構成され、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスによるドライエッチングでパターニングされる場合、パターン形成用薄膜15は、ケイ素や、ケイ素に酸素、窒素、炭素等の元素を添加したケイ素化合物からなる材料で構成することが好ましい。
【0038】
一方、下層膜13が、反射型マスク用の吸収体膜13bである場合、この吸収体膜13bは、タンタル系材料で形成されるが、このような吸収体膜13bは、フッ素系ガスによるドライエッチングか、酸素を含有しない塩素系ガス(酸素非含有塩素系ガス)によるドライエッチングでパターニングする。この場合、パターン形成用薄膜15は、これらのドライエッチングに対して耐性が高い材料であるクロムや、クロムに酸素、窒素、炭素等の元素を添加したクロム化合物からなる材料で構成することが好ましい。
【0039】
なお、パターン形成用薄膜15は、さらに反射防止機能を有してもよく、これにより下層膜13上にパターン形成用薄膜15を残した状態の転写用マスクを作製してもよい。
【0040】
[ネガ型レジスト膜21]
ネガ型レジスト膜21は、リソグラフィー処理によってパターニングされる有機系材料膜であり、パターニングされたレジストパターンがパターン形成用薄膜15をエッチングする際のエッチングマスクとなる。このようなネガ型レジスト膜21は、微細なレジストパターンの形成が可能であれば、化学増幅型であってもなくてもよいが、一例として数十nm程度の微細なパターンの形成が可能な化学増幅型レジストが用いられることとする。
【0041】
化学増幅型レジストとしては、公知のものを用いることができ、例えばベースポリマーと、光酸発生剤とを含むものが例示される。ベースポリマーは、酸の発生に伴い、現像液(アルカリ性水溶液等)に対する溶解性が増大するポリマーであれば特に限定されない。光酸発生剤も、公知のものであれば特に限定されない。また化学増幅型レジストは、上記の成分以外に、界面活性剤、増感剤、光吸収剤、酸化防止剤、さらには必要に応じて塩基性物質等の他の成分を含んでもよい。
【0042】
[パターン形成用薄膜15の剥離面Sの特性]
以上のような積層構造のマスクブランク1において、ネガ型レジスト膜21を現像液によって剥離した場合のパターン形成用薄膜15の剥離面Sは、転落速度が9mm/秒未満のものである。ここで、ネガ型レジスト膜21は、以降のマスクブランク1の製造方法で説明するように、塗布成膜後のべーク処理(PAB処理:Pre Applied Bake)までを完了させた膜である。またこのネガ型レジスト膜21を剥離する現像液は、ネガ型レジスト膜21をパターン露光した後の現像処理に用いられるものであればよく、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)である。また、転落速度は、好ましくは5mm/秒以下、より好ましくは3mm/秒以下である(下限値は0mm/秒)。なお、転落速度は、滑落速度やせん断速度ということがある。
【0043】
図2は、転落速度vの測定を説明するための図である。この図に示すように、転落速度vとは、傾けた剥離面Sを液体が転落していく速度である。ここでは、自動接触角計DMo-501SA(協和界面科学社製商品名)を用い、水平面に対して75度に傾けた剥離面Sに、純水(DIW)の液滴Wを30μlの滴下量で滴下した場合に測定された転落速度vであることとする。
【0044】
ここで、ネガ型レジスト膜21を現像液で剥離した後のパターン形成用薄膜の剥離面Sの転落速度が9nm/秒未満と遅い特性を有するマスクブランク1の場合、そのネガレジスト膜21に微細パターンを形成したときに、パターンの倒れが大幅に抑制できる理由について検討したところ、以下のことに起因するものと推察される。なお、以下の推察は、出願時点における本発明者らの推測に基づくものであり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0045】
一般に、ネガ型レジスト膜21を塗布成膜する直前のパターン形成用薄膜15の表面は、有機物等の異物の付着が非常に少なく、その表面の転落速度を測定すると非常に速くなっている(例えば、20mm/秒以上)。また、パターン形成用薄膜15の表面にネガ型レジスト液をスピン塗布してから、PAB処理を行わずに現像液で剥離した場合、その剥離後のパターン形成用薄膜の表面の転落速度も非常に速くなっている。これは、未露光のネガ型レジスト材料は、現像液に対して容易に溶解し、現像液による処理でパターン形成用薄膜の表面上のネガ型レジスト材料は確実に除去されるためである。
【0046】
しかし、パターン形成用薄膜15の表面にネガ型レジスト液をスピン塗布してから、PAB処理を行ってネガ型レジスト膜を形成した後に、露光処理を行わずに現像液でネガ型レジスト膜を剥離した場合、その剥離した後のパターン形成用薄膜15の表面(剥離面)の転落速度が大きく低下する場合があることが新たに判明した。また、どの材料のネガ型レジスト膜であっても、同じPAB処理の条件を行えば同じ転落速度になるというわけではないが、どの材料のネガ型レジスト膜であっても、PAB処理の条件を調整すれば、転落速度を調整することが可能であることもわかった。そして、転落速度が遅い(9mm/秒未満)特性を有するネガ型レジスト付きのマスクブランクを用い、ネガ型レジスト膜に微細パターンを描画露光し、現像処理を行って微細なレジストパターンを形成した場合、転落速度が速い(9mm/秒以上)特性を有するネガ型レジスト付きのマスクブランクを用いた場合に比べて、パターン倒れの発生を大幅に抑制することができることが新たにわかった。
【0047】
転落速度が遅い特性を有するネガ型レジスト膜付きのマスクブランクと、転落速度が速い特性を有するネガ型レジスト膜付きのマスクブランクに対し、未露光でネガ型レジスト膜を現像液で剥離してみたところ、断面TEMで確認しても両者に相違は見られなかった。そこで、剥離した後の2つのマスクブランクのパターン形成用薄膜の表面に対して飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)を行ってみた。その結果、転落速度の遅い特性を有するマスクブランクで、転落速度の速い特性を有するマスクブランクの場合に比べて大幅に多い量の有機系化合物が検出された。ネガ型レジスト膜の材料のみに由来する有機系化合物であれば、現像液でほとんど除去できているはずである。PAB処理の条件によって、この有機系化合物の残存量が大きく変わることから、PAB処理の途上でネガ型レジスト膜のパターン形成用薄膜15との界面近傍の領域において、レジスト膜中の有機物とパターン形成用薄膜15中の元素(金属元素、ケイ素等)が結合して、現像液に対する溶解性が低い有機化合物が生成されているものと推測される。
【0048】
これらの結果から、転落速度が遅い特性を有するネガ型レジスト膜付のマスクブランクは、そのレジスト膜のパターン形成用薄膜との界面の近傍の領域に現像液に対して溶解性の低い有機系化合物の層がごく薄い厚さで形成されていると考えられる。また、現像液による処理後にこの有機系化合物の層が残っていることから、ネガ型レジスト膜に対して描画露光し、現像処理を行って微細なレジストパターンを形成した後の場合にも、パターン形成用薄膜の表面にこの有機系化合物の層が残存していると考えられる。さらに、そのレジストパターンのパターン形成用薄膜との界面近傍にも有機系化合物の層が存在しており、この現像液に対して溶解性の低い層があることによって、レジストパターンのアンダーカットが抑制され、レジストパターンの倒れの発生が抑制されているものと推測される。
【0049】
<マスクブランクの製造方法>
図3は、第1実施形態に係るマスクブランクの製造方法を説明するための断面工程図である。次に、
図3に基づいて、以上説明した構成のマスクブランク1の製造方法を説明する。
【0050】
先ず
図3(A)に示すように、基板11の一主面上に、下層膜13、およびパターン形成用薄膜15をこの順に形成する。この際、先ず、作製するマスクブランクの種類によって適切な材料からなる基板11を選択して用意する。
【0051】
次いで、用意した基板11上に下層膜13を成膜する。この際、作製するマスクブランク1がバイナリマスク用のものであれば、下層膜13として遮光膜13aを成膜する。また作製するマスクブランク1が反射型マスク用のものであれば、基板11上に多層反射膜を形成した後に、下層膜13として吸収体膜13bを成膜する。このような多層反射膜および下層膜13は、スパッタリング法によって成膜する。
【0052】
その後、下層膜13上にパターン形成用薄膜15を成膜する。この際、作製するマスクブランク1の種類によって適切な材料のものを選択して成膜する。またこのようなパターン形成用薄膜15の成膜は、スパッタリング法によって実施され、これによりパターン形成用薄膜15をパターンエッチングした場合のエッジラフネスが小さく抑えられ、側壁形状が良好なパターンを得ることが可能な膜となる。
【0053】
次に
図3(B)に示すように、パターン形成用薄膜15の上部に、ネガ型レジスト塗膜21’を形成する。この際、例えばスピンコート法のような塗布法によってパターン形成用薄膜15の上部に必要とされる膜厚のネガ型レジスト塗膜21’を形成する。
【0054】
その後
図3(C)に示すように、べーク処理(PAB処理)を実施する。このPAB処理により、ネガ型レジスト塗膜21’中の溶剤を除去し、膜中のレジスト分子を安定化させたネガ型レジスト膜21を形成する。このPAB処理においては、PAB温度の調整によって、このネガ型レジスト膜21を現像液で剥離した場合の剥離面Sの転落速度vを調整する。PAB温度の調整は、例えば115℃を越える範囲で実施し、これにより、転落速度vが9mm/秒未満とすることができる。
【0055】
<転写用マスクの製造方法>
図4は、第1実施形態に係る転写用マスクの製造方法を説明するための断面工程図であって、転写用マスクとしてバイナリマスクまたは反射型マスクを製造する方法を示す図である。以下、
図4を参照し、
図1を用いて説明した第1実施形態のマスクブランク1を用いた転写用マスクの製造方法を説明する。
【0056】
先ず
図4(A)に示すように、マスクブランク1のネガ型レジスト膜21に対して露光処理を行う。ここでは、電子線を用いた描画露光により、ネガ型レジスト膜21に対してパターン形成用薄膜15に形成すべき転写パターンを描画し、ネガ型レジスト膜21に潜在パターン21aを形成する。次に、ネガ型レジスト膜21に対してベーク処理(PEB:Post Exposure Bake)を施し、潜在パターン21aを安定化させる。
【0057】
その後
図4(B)に示すように、ネガ型レジスト膜21の現像処理を行い、ネガ型レジスト膜21に形成した潜在パターン21aのみをパターン形成用薄膜15上に残し、その他の部分を除去する。この際、ネガ型レジスト膜21の未露光部を溶解させる現像液としては、マスクブランク1におけるパターン形成用薄膜15の剥離面Sの落下速度を測定する際に、ネガ型レジスト膜21の除去に用いた現像液と同様のもの(例えばTMAH)を用いる。また現像処理の後には、リンス処理、およびスピン乾燥処理を行う。これにより、ネガ型レジスト膜21に転写パターンを形成し、パターン形成用薄膜15上に、ネガ型レジスト膜21が転写パターンの形状にパターニングされたレジストパターン21bを得る。
【0058】
以上の後には、必要に応じてベーク処理(PDB:Post Development Bake)を実施し、レジストパターン21b中の残留溶媒を除去する。
【0059】
次に
図4(C)に示すように、転写パターンが形成されたネガ型レジスト膜21、すなわちレジストパターン21bをマスクとしてパターン形成用薄膜15をエッチングする。これにより、転写パターン15aを備えるパターン形成用薄膜15を得る。ここでは、例えばレジストパターン21bをマスクにして、クロム系材料のパターン形成用薄膜15をエッチングする。この際、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガス(酸素含有塩素系ガス)をエッチングガスに用いたドライエッチングを行う。
【0060】
その後、
図4(D)に示すように、転写パターン15aを備えるパターン形成用薄膜15をマスクとして下層膜13のドライエッチングを行う。これにより、下層膜13に転写パターン(ここでは下層膜パターン13aaと記す)を形成する。この際、下層膜13がバイナリマスク用の遮光膜13aであって、ケイ素を含有する材料で形成されている場合であれば、フッ素系ガスを用いた遮光膜13aのドライエッチングを行う。また下層膜13が反射型マスク用の吸収体膜13bであって、その吸収体膜13bがタンタルを主成分とする材料で形成されている場合であれば、フッ素系ガスまたは酸素を含有しない塩素系ガス(酸素非含有塩素系ガス)を用いた吸収体膜13bのドライエッチングを行う。
【0061】
なお、以上のような下層膜13のドライエッチングにおいては、レジストパターン21bも同時に除去される。
【0062】
次に、
図4(E)に示すように、転写パターン15aが形成されたパターン形成用薄膜15を除去し、転写用マスク1aを得る。この際、クロム系材料からなるパターン形成用薄膜15の除去には、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガス(酸素含有塩素系ガス)をエッチングガスに用いる。これにより、ケイ素系材料またはタンタル系材料の下層膜13に対して、きわめて高いエッチング選択性でクロム系材料の転写パターン15aをエッチング除去することができる。
【0063】
このようにして得られた転写用マスク1aは、バイナリマスクであれば、露光光に対して透過性を有する基板11上に、露光光を遮蔽する遮光膜からなる下層膜パターン13aaが設けられたものとなる。また転写用マスク1aは、反射型マスクであれば、露光光であるEUV光による熱膨張が低く抑えられた基板11上に、ここでの図示を省略した多層反射膜を介して、露光光であるEUV光を吸収する吸収体膜からなる下層膜パターン13aaが設けられたものとなる。
【0064】
またこの転写用マスク1aの製造においては、
図1を用いて説明したマスクブランク1、すなわちネガ型レジスト膜21を現像液によって剥離した場合のパターン形成用薄膜15の剥離面Sの転落速度が9mm/秒未満のものを用いている。このため、以降の実施例で示すように、
図4(B)を用いて説明したレジストパターン21bにパターン倒れが発生することを十分に抑制できている。したがって、このレジストパターン21bをマスクにしたパターン形成用薄膜15およびさらに下層膜13のパターンエッチングを高精度に実施することが可能である。
【0065】
≪第2実施形態≫
<マスクブランク(位相シフトマスク用)>
図5は、第2実施形態に係るマスクブランク2の概略構成を示す断面図である。この図に示す、マスクブランク2は、転写用マスクとして加工されるものであって、ハーフトーン型位相シフトマスク用のマスクブランク2である。このようなマスクブランク2は、基板11の一主面上に、下層膜としての光半透過膜43、パターン形成用薄膜45、およびネガ型レジスト膜21がこの順に設けられている。そして特に、ネガ型レジスト膜21を現像剤によって剥離除去した場合のパターン形成用薄膜45の表面(以下、剥離面Sと記す)の転落速度が、9mm/秒未満のものである。マスクブランク2を構成するこれらの各要素のうち、基板11は、上述した第1実施形態のバイナリマスク用のマスクブランク1のものと同様であってよい。またネガ型レジスト膜21は、上述した第1実施形態のものと同様である。このためここでは、光半透過膜43とパターン形成用薄膜45の構成を説明する。
【0066】
[光半透過膜43]
光半透過膜43は、パターン形成用薄膜45に対する下層膜であって、このマスクブランク2を用いて転写用マスクを作製する場合に、微細パターンが形成される膜である。この光半透過膜43は、露光光を実質的に露光に寄与しない強度(たとえば、露光光に対する透過率が1%~30%)で透過させる。また光半透過膜43は、位相シフト膜でもあり、この光半透過膜43を透過する露光光に対し、その光半透過膜43の膜厚と同じ距離だけ空気中を透過した露光光との間で、所定の位相差(たとえば、150度~200度)を生じさせる機能を有していれば、公知の組成で構成されていればよい。
【0067】
具体的には、光半透過膜43は、遷移金属およびケイ素(遷移金属シリサイドを含む)の化合物を含む材料からなり、これらの遷移金属およびケイ素と、酸素および/または窒素を主たる構成要素とする材料が例示される。遷移金属としては、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、クロム等が適用可能である。以上のような光半透過膜43は、例えばスパッタ法によって形成することができる。
【0068】
また、光半透過膜43は、上記のケイ素及び窒素からなる材料、またはケイ素および窒素からなる材料に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料で構成されてもよい。
【0069】
[パターン形成用薄膜45]
パターン形成用薄膜45は、遮光膜として用いられる薄膜であって、例えばクロムを含有する材料からなる薄膜である。このようなパターン形成用薄膜45は、単層で成膜してもよく、図示したような下層45aと中間層45bと上層45cとの3層構造で成膜してもよく、さらに多層の複数層で成膜してもよい。
【0070】
また遮光膜として用いられるパターン形成用薄膜45は、クロム金属のほか、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素、水素およびフッ素から選ばれる一以上の元素を含有する材料を含有していてもよい。さらにこのパターン形成用薄膜45には、光学濃度(OD)を維持しつつも、膜全体のエッチングレートの低下を抑制することを目的として、インジウム(In)、スズ(Sn)、およびモリブデン(Mo)から選ばれる少なくとも1以上の金属元素(インジウム等金属元素)を含有していてもよい。遮光膜として用いられるパターン形成用薄膜45を複数層として成膜する場合には、クロム(Cr)の含有量を変化させた各層を成膜する。
【0071】
このような遮光膜として用いられるパターン形成用薄膜45は、酸素含有塩素系ガスを用いたドライエッチングによってパターニングが可能である。また、このパターン形成用薄膜45はケイ素(Si)を含有する材料で形成された光半透過膜43との間で十分なエッチング選択性を有しており、光半透過膜43にほとんどダメージを与えずにパターン形成用薄膜45をエッチング除去することが可能である。
【0072】
[パターン形成用薄膜45の剥離面Sの特性]
以上のような積層構成のマスクブランク2において、ネガ型レジスト膜21を現像液によって剥離した場合のパターン形成用薄膜45の剥離面Sは、第1実施形態における剥離面Sと同様であって、転落速度が9mm/秒未満のものである。
【0073】
<マスクブランクの製造方法>
図6は、第2実施形態に係るマスクブランク2の製造方法を説明するための断面工程図である。次に、
図6に基づいて、以上説明した構成のマスクブランク2の製造方法を説明する。
【0074】
先ず
図6(A)に示すように、基板11の一主面上に、下層膜としての光半透過膜43、およびパターン形成用薄膜45をこの順に形成する。この際、基板11は、作製するマスクブランクの種類によって適切な材料のものを選択して用意する。
【0075】
次いで、用意した基板11上に、例えばスパッタリング法によって光半透過膜43を成膜する。その後、光半透過膜43上にパターン形成用薄膜45を成膜する。この際、スパッタリング法によってパターン形成用薄膜45の成膜を実施することにより、パターン形成用薄膜45をパターンエッチングした場合のエッジラフネスが小さく抑えられ、側壁形状が良好なパターンを得ることが可能な膜となる。
【0076】
次に
図6(B)に示すように、パターン形成用薄膜45の上部に、ネガ型レジスト塗膜21’を形成する。この際、例えば回転塗布法によってパターン形成用薄膜45の上部に必要とされる膜厚のネガ型レジスト塗膜21’を形成する。
【0077】
その後
図6(C)に示すように、PAB処理により、ネガ型レジスト塗膜21’中の溶剤を除去し、膜中のレジスト分子を安定化させたネガ型レジスト膜21を形成する。このPAB処理においては、PAB温度の調整によって、このネガ型レジスト膜21を現像液で剥離した場合の剥離面Sの転落速度vを調整する。PAB温度の調整は、例えば115℃を越える範囲で実施し、これにより、転落速度vが9mm/秒未満とすることができる。
【0078】
<転写用マスクの製造方法>
図7および
図8は、第2実施形態に係る転写用マスクの製造方法を説明するための断面工程図であって、転写用マスクとしてハーフトーン型位相シフトマスクを製造する方法を示す図である。以下、
図7および
図8を参照し、
図5を用いて説明した第2実施形態のマスクブランク2を用いた転写用マスクの製造方法を説明する。
【0079】
先ず
図7(A)および
図7(B)に示す工程は、先の第1実施形態において
図4(A)および
図4(B)を用いて説明した工程と同様に実施する。
【0080】
すなわち、
図7(A)に示すようにマスクブランク2のネガ型レジスト膜21に対して露光処理を行うことにより潜在パターン21aを描画する。次いで
図7(B)に示すようにネガ型レジスト膜21の現像処理を行い、パターン形成用薄膜45上に、ネガ型レジスト膜21が転写パターンの形状にパターニングされたレジストパターン21bを得る。現像処理においては、マスクブランク2におけるパターン形成用薄膜15の剥離面Sの落下速度を測定する際に、ネガ型レジスト膜21の除去に用いた現像液と同様のもの(例えばTMAH)を用いる。
【0081】
以上の後、
図7(C)に示すように、転写パターンが形成されたネガ型レジスト膜21、すなわちレジストパターン21bをマスクとしてパターン形成用薄膜45をエッチングする。これにより、転写パターン45aaを備えるパターン形成用薄膜45を得る。ここでは、例えばレジストパターン21bをマスクとして、クロム系材料のパターン形成用薄膜45をエッチングする。この際、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガス(酸素含有塩素系ガス)をエッチングガスに用いたドライエッチングを行う。これにより、レジストパターン21bに対して、極めて高いエッチング選択性でクロム系材料のパターン形成用薄膜45をエッチングすることができ、レジストパターン21bの形状がパターン形成用薄膜45に対して精度良好に転写される。
【0082】
次いで
図7(D)に示すように、転写パターン45aaを備えるパターン形成用薄膜45をマスクとして、フッ素系ガスを用いた光半透過膜43のドライエッチングを行なう。これにより、基板11における光半透過パターン形成領域11aに対応して、ケイ素を含有する材料で形成された下層膜としての光半透過膜43に転写パターン(ここでは光半透過パターン43aと記す)を形成する。また、基板11における外周領域11bに対応して、パターン形成用薄膜45と光半透過膜43とを貫通する孔形状のアライメントマークパターン43bを形成する。なお、このようなケイ素を含有する材料で形成された光半透過膜43のドライエッチングにおいては、レジストパターン21bも同時に除去される。
【0083】
次に
図8(A)に示すように、転写パターン45aaが形成されたパターン形成用薄膜45上に、遮光帯パターンを含むレジストパターン47を形成する。ここでは、基板11における外周領域11bを覆う遮光帯パターンを含む形状のレジストパターン47を形成する。この際、先ず基板11上に、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、基板11における外周領域11bを覆う形状でレジスト膜が残されるように、当該レジスト膜に対して露光を行い、その後レジスト膜に対して現像処理等の所定の処理を行う。これにより、基板11における外周領域11bを覆う形状で、遮光帯パターンを含むレジストパターン47を形成する。
【0084】
次に
図8(B)に示すように、遮光帯パターンを含むレジストパターン47をマスクとして、パターン形成用薄膜45のドライエッチングを行い、外周領域11bを覆う帯状にパターン形成用薄膜45をパターニングしてなる遮光パターン45dを形成する。この際、エッチングガスとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いることにより、クロム系材料のパターン形成用薄膜45をエッチングする。
【0085】
次いで、
図8(C)に示すように、遮光パターンを含むレジストパターン47を除去し、洗浄等の所定の処理を行う。以上により、転写用マスク2aとしてハーフトーン型位相シフトマスクが得られる。
【0086】
このようにして得られた転写用マスク2aは、基板11における光半透過パターン形成領域11aに光半透過パターン43aが設けられ、基板11における外周領域11bにアライメントマークパターン43bと光半透過膜43を介して遮光パターン45dが設けられたものとなる。
【0087】
≪第3実施形態≫
<マスクブランク(インプリントモールド製造用)>
この第3実施形態に係るマスクブランクは、基板の一主方面に接してパターン形成用薄膜が設けられ、その上にネガ型レジスト膜が積層した構成を備えるものである。このマスクブランクは、インプリントモールドを製造するために用いられるものである。パターン形成用薄膜は、基板の主表面に掘り込みパターン(モールドパターン)を形成するときのエッチングマスクとして機能するものであり、掘り込みパターンが形成された後は、除去されるものである。このため、パターン形成用薄膜は、基板を掘り込むときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングに対してエッチング耐性を有する材料で形成されることが求められ、上記のクロム系材料で形成されることが好ましい。
【0088】
他の実施例と同様、ネガ型レジスト膜で形成されたレジストパターンをマスクとするドライエッチングで、パターン形成用薄膜に基板に形成すべきモールドパターンを形成する。モールドパターンは微細なパターンであるため、レジストパターンの倒れの恐れがある。このため、この第3の実施形態のマスクブランクの場合においても、パターン形成用薄膜の表面(剥離面)の転落速度が9nm/秒未満であることが求められる。この第3の実施形態のマスクブランクに係るその他の事項については、上記の各実施形態のマスクブランクの場合と同様である。
【実施例】
【0089】
≪マスクブランクの製造≫
実施例により、本発明のマスクブランクおよびマスクブランクの製造方法をさらに具体的に説明する。ここでは、
図6を参照し、下記の手順でPAB温度をファクターとして、ハーフトーン型位相シフトマスク用の各マスクブランク2を作製した。
【0090】
<基板11の用意>
先ず
図6(A)に示したように、主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.25mmの合成石英ガラスからなる透光性を有する複数枚の基板11を準備した。
【0091】
<光半透過膜43の成膜>
次いで、透光性を有する各基板11上に、光半透過膜(下層膜)43を成膜した。光半透過膜43の成膜は、先ず、枚葉式スパッタ装置を用いた反応性スパッタリング(DCスパッタリング:DC電力3.0kW)により、MoSiN膜を膜厚69nmで成膜した。スパッタターゲットは、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)との混合ターゲット(モル%比 Mo:Si=10:90)を用いた。また、スパッタリングガスは、アルゴン(Ar)、窒素(N2)およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:N2:He=5:49:46、圧力0.3Pa)を用いた。
【0092】
次いで、上記MoSiN膜が形成された基板11に対して、加熱炉を用いて大気中での加熱処理を行い、MoSiNからなる光半透過膜43を得た。加熱温度は450℃、加熱時間は1時間とした。このようにして得られた光半透過膜43は、ArFエキシマレーザー光(波長:約193nm)に対し、透過率が6.16%、位相差が184.4度となっていた。
【0093】
<パターン形成用薄膜45の成膜>
次に、光半透過膜43上に3層構造の遮光膜を、パターン形成用薄膜45として成膜した。パターン形成用薄膜45の成膜は、枚葉式DCスパッタ装置を用いた反応性スパッタリング(DCスパッタリング:DC電力1.7kW)により、下層45a、中間層45b、および上層45cの順に各層の成膜を実施した。
【0094】
先ず下層45aの成膜においては、CrOCN膜を膜厚30nmで成膜した。この際、スパッタターゲットは、クロム(Cr)ターゲットを用いた。またスパッタリングガスは、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:CO2:N2:He=20:35:10:30、圧力0.2Pa)を用いた。
【0095】
次に中間層45bの成膜においては、CrN膜を4nmの厚さで成膜した。この際、スパッタターゲットは、クロム(Cr)ターゲットを用いた。またスパッタリングガスは、アルゴン(Ar)および窒素(N2)の混合ガス(流量比Ar:N2=25:75、圧力=0.1Pa)を用いた。
【0096】
次いで上層45cの成膜においては、クロムリッチなCrOCN膜を膜厚14nmで成膜した。この際、スパッタターゲットは、クロム(Cr)ターゲットを用いた。またスパッタリングガスは、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)、およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比Ar:CO2:N2:He=20:35:5:30、圧力0.2Pa)を用いた。
【0097】
なお、光半透過膜43と、遮光膜としてのパターン形成用薄膜45とを合わせたときの光学濃度は3.0(λ=193nm)とした。また、露光光の波長(λ=193nm)に対する遮光膜としてのパターン形成用薄膜45の表面反射率は20%であった。
【0098】
<ネガ型レジスト膜21の形成>
以上の後、
図6(B)に示したように、パターン形成用薄膜45上に、ネガ型レジスト塗膜21’を形成した。この際先ず、レジスト液として、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)とPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)とを用いた混合溶媒を調整した。調整比は、PGME:PGMEA=4:6(体積比)とした。次いで、ポリスチレン系樹脂誘導体(感光性樹脂)、架橋剤、及び、4-メチルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホナート(光酸発生剤)(和光純薬社製WPAG-469)を、上記の混合溶媒に溶解させ、レジスト液を調整した。なお、光酸発生剤と感光性樹脂の質量比は、光酸発生剤:感光性樹脂=10:100とした。
【0099】
調整したレジスト液を、パターン形成用薄膜45上にスピンコート法により塗布し、その後、乾燥処理を施すことによりネガ型レジスト塗膜21’を形成した。
【0100】
次に、
図6(C)に示したように、ネガ型レジスト塗膜21’に対して、ベーク処理(PAB処理)を施してネガ型レジスト塗膜21’中の溶剤を除去し、膜中のレジスト分子を安定化させたネガ型レジスト膜21を形成した。この際、PAB温度を、45℃~135℃の間の10℃の間隔の各温度に設定し、処理時間を10分とし、PAB温度をファクターとした各ネガ型レジスト膜21付きのマスクブランク2を、2枚ずつ作製した。なお、形成されたネガ型レジスト膜21の厚さは90nmであった。
【0101】
≪レジストパターンの形成≫
以上のようにして作製した各2枚のマスクブランク2をサンプルとし、そのうちの1枚について以下のようにしてネガ型レジスト膜21にレジストパターンを形成した。
【0102】
<露光処理>
先ず、
図7(A)に示すように、マスクブランク2のネガ型レジスト膜21に対して露光処理を行った。ここでは、電子線を用いた描画露光により、ネガ型レジスト膜21に対して、50nm幅のラインアンドスペースのレジストパターンが形成されるように、潜在パターン21aを描画した。この場合、ネガ型レジスト膜21において、50nmのラインパターンとなる部分(現像処理後にレジスト膜が残る部分)に電子線を照射した。
【0103】
描画露光の後には、130℃で600秒間のベーク処理(PEB処理)を実施し、潜在パターン21aを安定化させた。
【0104】
<現像処理>
次に
図7(B)に示すように、ネガ型レジスト膜21の現像処理を行うことにより、電子線が照射された潜在パターン21aを残し、その他の部分を現像液に溶解させて除去したレジストパターン21bを形成した。この際、現像液としてTMAHを用い、レジストパターン21bの形成面上に現像液を3L/分で供給したスピン現像を60秒間実施した。スピン現像の後には、純水(DIW)によるスピン洗浄を行ってから、高速回転での乾燥を行った。
【0105】
≪評価1≫
作製した各2枚のマスクブランク2のうち、上述した露光処理および現像処理を実施していない
図5に示したマスクブランク2について、それぞれのネガ型レジスト膜21を、現像液(TMAH)を用いて除去した。この際、ネガ型レジスト膜21上に現像液を3L/分で供給したスピン現像を60秒間実施した。スピン現像の後には、純水(DIW)によるスピン洗浄を行ってから、高速回転での乾燥を行った。
【0106】
次いで、ネガ型レジスト膜21を除去した剥離面Sの転落速度vを測定した。転落速度vの測定には、自動接触角計DM0-501SA(協和界面科学社製商品名)を用い、水平面に対して75度に傾けた剥離面Sに、純水(DIW)の液滴Wを30μlの滴下量で滴下した場合の転落速度vを測定した。
【0107】
図9は、ネガ型レジスト膜の塗布後ベーク温度(PAB温度)と転落速度vとの関係を示すグラフである。この図に示すように、PAB温度と転落速度vとの間には、PAB温度が高いほど転落速度vが遅くなる関係があり、転落速度vを制御するファクターの1つとしてPAB温度が用いられることが確認された。なお、同様に製造されたネガ型レジスト膜21が形成されたマスクブランクを用い、現像液を用いたネガ型レジスト膜21の除去するときの現像液での処理時間を5倍の300秒にしてネガ型レジスト膜21の除去行い、剥離面Sの転落速度の測定を行った。その結果、上記の現像液での処理時間が60秒の場合と同様の傾向であることがわかった(PAB温度が125℃以上のPAB処理の場合に転落速度が0mm/秒になっていた。)。
【0108】
≪評価2≫
作製した各2枚のマスクブランク2のうち、レジストパターン21bを形成したサンプルについて、電子顕微鏡(CD-SEM)を用いた観察によってレジストパターン21bのパターン倒れを評価した。一辺が約2.8μmである正方形の視野の観察範囲に、レジストパターン21bのパターン倒れが全く無い場合にパターン倒れなし、レジストパターン21bのパターン倒れが1つでもあればパターン倒れ発生として評価した。この結果を、PAB温度および転落速度と共に下記表1に示した。
【0109】
【0110】
以上の表1に示すように、転落速度が9mm/秒度以上の場合、レジストパターン21bのパターン倒れが発生しており、それ以外の場合にはパターン倒れが発生していない。これにより、パターン形成用薄膜45上にネガ型レジスト膜21を設けたマスクブランク2は、ネガ型レジスト膜21を現像液で溶解させて除去したときの剥離面Sの転落速度vを9mm/秒未満とすることにより、レジストパターン21bのパターン倒れが防止されることが確認された。
【0111】
この結果、実際のリソグラフィー処理を実施することなく簡便にレジストパターンのパターン倒れ防止が評価されたマスクブランクが得られることが確認された。またこのようなマスクブランクを用いることにより、レジストパターン21bのパターン倒れが確実に防止された転写用マスクが得られることが確認された。
【符号の説明】
【0112】
1,2…マスクブランク
1a,2a…転写用マスク
11…基板
13…下層膜
13a…遮光膜(下層膜)
13b…吸収体膜(下層膜)
13aa…下層膜パターン
15…パターン形成用薄膜
15a…転写パターン
21…ネガ型レジスト膜
21b…レジストパターン
43…光半透過膜(下層膜)
43a…光半透過パターン
45…パターン形成用薄膜
45aa…転写パターン
45d…遮光パターン
S…剥離面