(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】プリーツ形状を有する濾材
(51)【国際特許分類】
B01D 46/52 20060101AFI20220104BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20220104BHJP
D04H 3/016 20120101ALI20220104BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B01D46/52
B01D39/16 A
D04H3/016
D04H3/16
(21)【出願番号】P 2017170466
(22)【出願日】2017-09-05
【審査請求日】2020-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷口 一歩
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-004555(JP,A)
【文献】特開平01-180213(JP,A)
【文献】特開2014-208318(JP,A)
【文献】特開2007-331739(JP,A)
【文献】特開2001-293316(JP,A)
【文献】再公表特許第2003/043717(JP,A1)
【文献】特開2000-107538(JP,A)
【文献】特開2008-043885(JP,A)
【文献】特開2009-136865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/14-18、46/00、52
D04H 3/016-16
D06J 1/00-12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構成を備える、プリーツ形状を有する濾材。
(1)プリーツ形状を有する濾材は、極細繊維と太繊維が混在してなる繊維層
のみで構成されている、
(2)前記繊維層を構成する極細繊維の平均繊維径は0.1~10μmであり、前記繊維層を構成する太繊維の平均繊維径は前記極細繊維の平均繊維径よりも太い、
(3)プリーツ形状を有する濾材のプリーツ山高さは、50mm以上である、
(4)プリーツ形状を有する濾材は、隣接するプリーツ山同士の間に形成されるプリーツ谷の角度が6.6°より大きく8.8°より小さいプリーツ形状部分を有している、
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリーツ形状を有する濾材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、気体や液体など流体中の塵埃を捕集するため、例えば、不織布や織物あるいは編物などシート状の布帛からなる濾材が使用されている。そして、濾材には初期圧力損失などの圧力損失が低く、低い圧力損失を維持した状態で高い捕集効率を発揮できることが求められている。
上述の要求を満足する濾材を提供するため、本願出願人はこれまで特開平11-104417号公報(特許文献1)、特開2014-004555号公報(特許文献2)、特開2014-184360号公報(特許文献3)などに記載されているような、以下の構成を備えたプリーツ形状を有する濾材を提案した。
(1)極細繊維と太繊維が混在してなる繊維層を備えている。
(2)繊維層を構成する極細繊維の平均繊維径は0.1~10μmであり、繊維層を構成する太繊維の平均繊維径は前記極細繊維の平均繊維径よりも太い。
上述の構成(1)~(2)を備えたプリーツ形状を有する濾材は、濾過上流側(後述する
図1における紙面上の上方向)からプリーツ形状を有する濾材を見た際の、単位面積あたりに存在する濾材面積が広いため初期圧力損失などの圧力損失が低く、また、上述した平均繊維径を有する極細繊維と太繊維が混在してなる繊維層を備えているため低い圧力損失を維持した状態で高い捕集効率を発揮できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-104417号公報
【文献】特開2014-004555号公報
【文献】特開2014-184360号公報
【0004】
しかしながら、特許文献2(段落番号0002)および特許文献3(段落番号0002)にも開示されているように、上述の構成(1)~(2)を備えた濾材を山高さが50mm以上のプリーツ形状にした場合、隣接する濾材同士が密着し易く濾材に変形が生じた。
その結果、該プリーツ形状を有する濾材に大きな構造圧損が発生して、該プリーツ形状を有する濾材は高い圧力損失を有するものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、より圧力損失が低く、また、低い圧力損失を維持した状態で高い捕集効率を発揮できる、プリーツ山高さが50mm以上のプリーツ形状を有する濾材の提供を第一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
「次の構成を備える、プリーツ形状を有する濾材。
(1)プリーツ形状を有する濾材は、極細繊維と太繊維が混在してなる繊維層のみで構成されている、
(2)前記繊維層を構成する極細繊維の平均繊維径は0.1~10μmであり、前記繊維層を構成する太繊維の平均繊維径は前記極細繊維の平均繊維径よりも太い、
(3)プリーツ形状を有する濾材のプリーツ山高さは、50mm以上である、
(4)プリーツ形状を有する濾材は、隣接するプリーツ山同士の間に形成されるプリーツ谷の角度が6.6°より大きく8.8°より小さいプリーツ形状部分を有している、」
である。
【発明の効果】
【0007】
本願発明のように(1)~(3)の構成を有するプリーツ形状を有する濾材において、隣接する濾材同士が密着するのを防ぐため、隣接するプリーツ山同士の間に形成されるプリーツ谷の角度(以降、プリーツ谷角度と称することがある)を大きくすると、単位面積あたりに存在する濾材面積が狭くなるのに伴い圧力損失は高いものとなる。
一方、本願発明のように(1)~(3)の構成を有するプリーツ形状を有する濾材において、単位面積あたりに存在する濾材面積を広くするため、プリーツ谷角度を小さくすると、隣接する濾材同士がより密着し易いため濾材により大きな変形が生じて、構造圧損の上昇に伴い圧力損失は高いものとなる。
そのため、本願発明のように(1)~(3)の構成を有するプリーツ形状を有する濾材において、プリーツ谷角度をいかに調整しても圧力損失の上昇は避けられない問題であると考えられてきた。
【0008】
しかしながら本願発明者らが検討を続けた結果、本発明に係る(1)~(3)の構成を備えるプリーツ形状を有する濾材が、プリーツ谷角度が6.6°より大きく8.8°より小さいプリーツ形状部分を有している場合、予想外にも、該プリーツ形状を有する濾材の圧力損失が低下することを見出した。
そのため本発明によって、より初期圧力損失などの圧力損失が低く、また、低い圧力損失を維持した状態で高い捕集効率を発揮できる、プリーツ山高さが50mm以上のプリーツ形状を有する濾材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るプリーツ形状を有する濾材の模式断面図である。
【
図2】本発明に係る濾材を製造できる、濾材の製造装置の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明では課題を解決するため、例えば以下など各種構成を適宜選択できる。
【0011】
本発明に係る濾材は、極細繊維と太繊維が混在してなる繊維層を備えている。
ここでいう繊維層とは、繊維ウェブや不織布あるいは編物や織物などシート状の繊維からなる層を指す。
繊維層の態様として、極細繊維と太繊維が均一に混在してなる繊維層であっても、極細繊維と太繊維が不均一に混在してなる繊維層であってもよい。該不均一に混在してなる繊維層として、たとえば、繊維層における一方の主面から他方の主面に向い、極細繊維と太繊維の存在比率(存在する繊維質量の比率あるいは繊維本数の比率など)が変化するものであってもよい。具体体には、一方の主面から他方の主面に向かい極細繊維の存在比率が減少すると共に太繊維の存在比率が増加する態様であることができる。
【0012】
繊維層の構成繊維である極細繊維は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、エポキシ系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の樹脂を備えた繊維であることができる。
上述した樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でもよい。また、樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでもよい。更には、複数の樹脂が混合してなるものでも良い。
【0013】
特に、極細繊維が体積固有抵抗値1014Ω・cm以上の樹脂を含んでいると(より好ましくは、体積固有抵抗値1014Ω・cm以上の樹脂のみから構成されていると)、帯電量を多くできるため、濾過性能に優れるプリーツ形状を有する帯電濾材を提供でき好ましい。
体積固有抵抗値が1014Ω・cm以上の樹脂として、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂など)、ポリ四フッ化エチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどを挙げることができる。
なお、極細繊維の帯電量をより多くするため、極細繊維に含まれる樹脂(特に、体積固有抵抗値1014Ω・cm以上の樹脂)に、帯電助剤を混合するのが好ましい。
【0014】
帯電助剤として、例えば、ヒンダードアミン系化合物、脂肪族金属塩(例えば、ステアリン酸のマグネシウム塩、ステアリン酸のアルミニウム塩など)、不飽和カルボン酸変性高分子のうちから選ばれた1種または2種以上の化合物を、添加剤として添加することができる。これら一連の添加剤の中でもヒンダードアミン系化合物を添加するのが好ましく、その具体例として、例えば、ポリ[{(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル){(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}}、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)などを挙げることができる。
樹脂へ添加する帯電助剤の添加質量は、特に限定されるものではないが、帯電助剤の添加質量が少な過ぎると、繊維層における帯電効果が期待するよりも小さい恐れがある。また、帯電助剤の添加質量が多過ぎると、繊維層の強度が劣る恐れがある。そのため、樹脂の質量100mass%に対し帯電助剤の添加質量は0.01mass%~5mass%が好ましい。
【0015】
極細繊維は一種類の樹脂から構成されてなるものでも、複数種類の樹脂から構成されてなるものでもよい。複数種類の樹脂から構成されてなる繊維態様として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの繊維態様であることができる。
【0016】
また、極細繊維は、横断面の形状が略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも、異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維を例示できる。
【0017】
極細繊維の繊維長は特に限定するものではないが、測定可能な特定の長さを有する短繊維や長繊維、あるいは、実質的に繊維長を測定することが困難な程度の長さの繊維長を有する連続繊維であることができる。
極細繊維が連続長を有する場合、繊維層の剛性が向上し易いため、強度に優れることで濾材に変形が生じるのを防止して、圧力損失が低い濾材を提供でき好ましい。そのため、繊維層は構成繊維として連続長を有する極細繊維を含んでいるのが好ましい。なお、連続長を有する繊維は、直接紡糸法を用いて製造することができる。
【0018】
繊維層を構成する極細繊維の平均繊維径は、0.1~10μmである。極細繊維の平均繊維径がこの範囲外であると、低い圧力損失を維持した状態で高い捕集効率を発揮できる濾材を構成可能な繊維層を提供することが困難となる。低い圧力損失を維持した状態で高い捕集効率を発揮できる濾材を構成可能な繊維層を提供できるように、繊維層を構成する極細繊維の平均繊維径は0.25~5μmであるのが好ましく、0.5~4μmであるのがより好ましい。
【0019】
ここでいう「平均繊維径」は、濾材や繊維層の表面あるいは断面など繊維を含む測定対象部分を撮影した1000倍の電子顕微鏡写真をもとに算出することができる。具体的には、電子顕微鏡写真中から平均繊維径を算出したい繊維(極細繊維あるいは太繊維など)を200点選出し、選出した繊維の各繊維径の算術平均値を平均繊維径とする。なお、繊維の断面形状が非円形である場合には、断面積と同じ面積の円の直径を繊維径とみなす。
具体例として、極細繊維が連続長を有する繊維であり太繊維が短繊維あるいは長繊維である場合、該電子顕微鏡写真中から連続長を有する繊維を200点選出し、選出した繊維の各繊維径の算術平均値を算出することで、繊維層を構成する極細繊維の平均繊維径を求めることができる。
【0020】
極細繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、遠心力を用いて紡糸する方法、特開2011-012372号公報などに記載の随伴気流を用いて紡糸する方法、特開2005-264374号公報などに記載の中和紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法など公知の方法により得ることができる。
特に、繊維径が細く目付が軽いにも関わらず、繊維が均一に分散して存在することでプリーツ形状を有する濾材の濾過性能を向上可能な繊維層を構成できるように、極細繊維は直接紡糸法を用いて調製されたものであるのが好ましい。
【0021】
繊維層の構成繊維である太繊維の構成や製造方法は、上述した極細繊維の構成と同様に適宜選択できるが、太繊維は熱可塑性樹脂を含有してなる繊維であるのが好ましい。太繊維が熱可塑性樹脂を含有すると、太繊維と極細繊維および/または太繊維同士を該熱可塑性樹脂によって繊維接着できるため、比較的粗い空間を有する繊維層を提供できる。比較的粗い空間を有する繊維層を備えることで、圧力損失が低い濾材を提供でき好ましい。
【0022】
このような熱接着性能を有する太繊維の態様として、例えば、(1)高融点の樹脂成分を芯成分とし、この高融点の樹脂成分よりも低融点の樹脂成分(融着成分)を鞘成分とする芯鞘型太繊維又は偏芯型太繊維、(2)高融点の樹脂成分とこの高融点の樹脂成分よりも低融点を有する樹脂成分とを貼り合わせたサイドバイサイド型太繊維、(3)低融点の樹脂成分中に、この低融点の樹脂成分よりも高融点を有する樹脂成分が多数点在する海島型太繊維などであることができる。これらの中でも、比較的粗い空間を有する繊維層を形成し易いように、太繊維は上述した構成を有する、芯鞘型太繊維や偏芯型太繊維あるいは海島型太繊維であるのが好ましい。
また、太繊維が紡糸後に機械的に延伸処理が施された繊維(延伸された繊維)であると、強度及び剛性に優れる繊維層を提供でき好ましい。
【0023】
太繊維の繊維長も上述した極細繊維と同様に適宜選択できるが、極細繊維と意図した態様で混在してなる繊維層を提供することができるように、太繊維は測定可能な特定の長さを有する短繊維や長繊維であるのが好ましい。特に、連続長を有する極細繊維を採用した場合であっても、該極細繊維と太繊維が混在し易いことで、極細繊維と太繊維が意図した態様で混在してなる繊維層を提供できるように、太繊維は測定可能な特定の長さを有する短繊維や長繊維であるのが好ましい。太繊維の繊維長は適宜選択できるが、極細繊維と絡みやすいように、5~160mmであるのが好ましく、25~110mmであるのがより好ましい。
【0024】
繊維層を構成する太繊維の平均繊維径は、極細繊維の平均繊維径よりも太い。平均繊維径は、上述した繊維層を構成する極細繊維の平均繊維径の算出方法と同様に算出できる。具体例として、極細繊維が連続長を有する繊維であり太繊維が短繊維あるいは長繊維である場合、該電子顕微鏡写真中から短繊維あるいは長繊維を200点選出し、選出した繊維の各繊維径の算術平均値を算出することで、繊維層を構成する太繊維の平均繊維径を求めることができる。
【0025】
太繊維の平均繊維径は極細繊維よりも太いものであれば適宜選択できるが、具体的には10μmよりも太く100μm以下であることができる。太繊維の平均繊維径が10μm以下であると、低い圧力損失を維持した状態で高い捕集効率を発揮できる濾材を構成可能な繊維層を提供することが困難となる。また、平均繊維径が100μmを越えると該空間が大き過ぎることで、微細な塵埃を捕集可能な濾材を構成可能な繊維層を提供することが困難となる傾向がある。そのため、繊維層を構成する太繊維の平均繊維径は15~70μmであるのが好ましく、15~55μmであるのがより好ましい。
【0026】
繊維層に占める極細繊維の質量百分率は2mass%以上、40mass%以下であることができる。極細繊維の質量百分率が2mass%未満であると、極細繊維の量が少ないことで微細な塵埃を捕集することができない恐れがあり、他方、40mass%を超えると、粗大な塵埃によってすぐに目詰まりしてしまう恐れがある。そのため、繊維層に占める極細繊維の質量百分率は3~35mass%であるのがより好ましく、4~30mass%であるのが更に好ましい。
【0027】
繊維層は極細繊維と太繊維が絡合することで構成されていてもよい。絡合の方法は適宜選択できるが、ニードルや水流あるいは水蒸気など気体流によって構成繊維同士が絡合してなる繊維層であることができる。
また、極細繊維および/または太繊維の一部が溶融し繊維同士が溶融一体化することで、あるいは、バインダによって繊維同士が接着一体化することで繊維層が構成されていてもよい。特に、極細繊維および/または太繊維の一部が溶融し繊維同士が溶融一体化している場合には、バインダの存在による濾材の圧力損失が上昇するのを防止でき、濾材から繊維が脱離するのを抑制して濾過性能が低下するのを防止でき好ましい。
【0028】
繊維層の厚さは適宜選択するが0.1~10mmであることができる。繊維層の厚さが0.1mm未満であると、太繊維によって比較的粗い空間を形成しにくいため圧力損失が高くなる傾向があり、厚さが10mmを越えると濾過に関与しない部分が多くなる傾向がある。そのため、厚さは0.2~5mmであるのがより好ましく、0.5~4mmであるのが更に好ましい。なお、本発明における「厚さ」は、繊維層や濾材など測定対象物の主面からもう一方の主面へ単位面積1cm2あたり20gを荷重した時の、測定対象物における荷重方向(厚さ方向)の長さをいう。
【0029】
繊維層の目付は適宜選択するが30~300g/m2であることができる。繊維層の目付が30g/m2未満であると、厚さや密度が小さくなり過ぎて微細な塵埃を捕集することが困難になる傾向があり、目付が300g/m2を超えると、厚さや密度が大きくなり過ぎて粗大な塵埃によりすぐに目詰まりを生じたり、圧力損失が上昇し易い傾向がある。そのため、目付は40~250g/m2であるのがより好ましく、50~200g/m2であるのが更に好ましい。
【0030】
繊維層の見掛密度は適宜選択するが0.003~3g/cm3であることができる。見掛密度が0.003g/cm3未満であると、微細な塵埃を捕集することが困難になる傾向があり、見掛密度が3g/cm3を越えると、粗大な塵埃によりすぐに目詰まりを生じ、圧力損失が上昇し易い傾向がある。そのため、見掛密度は0.008~1.25g/cm3であるのが好ましい。
【0031】
本発明にかかる濾材は繊維層のみから構成されていても、繊維層に別途用意した支持体(例えば、繊維ウェブや不織布あるいは編物や織物などの布帛、フィルム、多孔板など)を積層してなる積層体から構成されていてもよい。繊維層を補強することで剛性に優れる濾材を提供できることから、支持体としてスパンボンド不織布を採用するのが好ましい。繊維層が補強されることによって、濾材をプリーツ加工した際に隣接する濾材同士が密着し難く濾材に変形が生じるのを防止して、圧力損失が低いプリーツ形状を有する濾材を提供できる。
特に、山高さが50mm以上(特には、100mm以上)であるような、より変形し易いプリーツ形状を有する濾材であっても、隣接する濾材同士が密着し難く濾材に変形が生じるのを防止して、圧力損失が低いプリーツ形状を有する濾材を提供できる。
【0032】
支持体における構成繊維の繊度は適宜選択するが、繊度の値が小さいほど濾材の捕集効率が向上する傾向があるものの、繊度の値が小さ過ぎると濾材の圧力損失が過剰に高くなる恐れがある。そのため、支持体における構成繊維の繊度は1~100dtexであるのが好ましく、2~50dtexであるのが好ましく、3~30dtexであるのが好ましい。
【0033】
支持体の目付は適宜選択できるが、目付が軽いほど濾材の圧力損失を低下できるものの、目付が軽過ぎると繊維層を効果的に補強できず、剛性に優れる濾材を提供するのが困難となる可能性がある。そのため、支持体の目付は20~200g/m2であるのが好ましく、30~150g/m2であるのが好ましく、40~100g/m2であるのが好ましい。
【0034】
支持体の厚さは適宜選択できるが、0.1~2mmであることができ、0.15~1.5mmであることができ、0.2~1mmであることができる。
【0035】
繊維層と支持体の積層方法は適宜選択できるが、例えば、繊維層と支持体がただ重ね合わされているだけの態様であっても、それ以外にも、バインダウェブやバインダ液あるいは、繊維層および/または支持体の構成繊維による繊維接着によって両層が接着一体化している、あるいは、ヒートシールや超音波融着あるいはヒートロールを押し当てるなどして積層一体化した態様であることができる。
繊維層と支持体がバインダによって積層している場合、バインダの付与量は適宜選択できるが、バインダ量は1~30g/m2であることができ、2~20g/m2であることができ、3~15g/m2であることができる。
また、繊維層と支持体が、繊維層および/または支持体の構成繊維による繊維接着によって両層が接着一体化していると、繊維層と支持体の層間の通気性がバインダなどの接着成分により閉塞して、濾材の圧力損失が上昇するのを防止でき好ましい。
【0036】
繊維層および/または支持体は、機能性粒子やバインダや顔料などを含んでいてもよい。
機能性粒子として、例えば、放射性物質吸着剤(例えば、ゼオライト、活性炭、紺青(プルシアンブルー)など)、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗カビ剤、触媒(例えば、酸化チタンや二酸化マンガンあるいは白金担持アルミナなど)、調湿剤(例えば、シリカゲルやシリカマイクロカプセルなど)、活性炭やカーボンブラックなどの脱臭剤、色素、リン酸系難燃剤や水酸化アルミニウムなどの難燃剤、消臭剤、防虫剤、殺菌剤、芳香剤、陽イオン交換樹脂や陰イオン交換樹脂などの粒子を挙げることができる。
なお、機能性粒子や顔料は上述のように、繊維層および/または支持体に担持あるいは接着した態様で存在しても良いが、繊維層および/または支持体を構成する繊維中に練り込まれている態様であっても良い。
【0037】
より圧力損失が低く、また、低い圧力損失を維持した状態で高い捕集効率を発揮できる濾材を提供できるよう、濾材は帯電しているのが好ましい。濾材を帯電させる手段として、例えば、プラズマ帯電手段、コロナ帯電手段、極性液体を介して力を作用させて帯電させる手段、複数種類の繊維成分を摩擦して帯電させる手段など、公知の手段を適宜選択して、又は組み合わせて利用できる。
なお、帯電した繊維層および/または帯電した支持体を備えてなる帯電濾材であっても、調製した濾材を帯電してなる帯電濾材であってもよい。
【0038】
濾材の厚さは適宜選択できるが、厚さが薄いほど濾材の圧力損失を低下できるものの、厚さが薄過ぎると、濾過性能が低下する恐れがある。そのため、濾材の厚さは0.2~12mmであるのが好ましく、0.4~6.5mmであるのが好ましく、0.5~5mmであるのが好ましい。
【0039】
濾材の目付は適宜選択できるが、目付が重いほど剛性に優れる濾材を提供し易いものの、目付が重過ぎると、濾材の圧力損失が上昇する恐れがある。そのため、濾材の目付は35~400g/m2であるのが好ましく、50~330g/m2であるのが好ましく、60~260g/m2であるのが好ましい。
【0040】
本発明のプリーツ形状を有する濾材の形状について、模式断面図である
図1を用いて説明する。
図1は、濾材(1)における山折りと谷折りが交互に行われて行く長手方向(紙面上の左右方向)、ならびに、前記方向と紙面上において垂直をなす方向(紙面上の上下方向)の、両方と垂直をなす方向(紙面上の手前側方向)からプリーツ形状を有する濾材(10)を見た際の模式断面図を図示している。
【0041】
プリーツ形状を有する濾材(10)は、濾材(1)の長手方向(紙面上の左右方向)に対し、山折りと谷折りを交互に繰り返し加工してなるジグザグ形状を有しており、プリーツ形状を有する濾材(10)における紙面上の上方向側に存在する山折り部分をプリーツ山(2)、紙面上の下方向側に存在する谷折り部分をプリーツ谷(3)とする。
そして、プリーツ形状を有する濾材(10)を平坦な主面を有する板の上に静置した際の、該平坦な板の主面と垂直をなす方向(紙面上の上下方向)における、紙面上の左右方向に隣接しているプリーツ山(2)とプリーツ谷(3)間の長さをプリーツ山高さ(4)とする。つまり、本発明のプリーツ形状を有する濾材(10)は、50mm以上のプリーツ山高さ(4)を有する部分を備えている。
【0042】
プリーツ山高さ(4)は、より圧力損失が低く、また、低い圧力損失を維持した状態で高い捕集効率を発揮できるよう本願発明にかかる範囲内で調整するが、プリーツ山高さ(4)は60mm以上であることができ、80mm以上であるのができ、100mm以上であるのができる。
なお、プリーツ山(2)の端部(紙面上の上方向側端部)、および/または、プリーツ谷(3)の端部(紙面上の下方向側端部)は、曲面構造を有していても良い。
【0043】
本発明のプリーツ形状を有する濾材(10)は、隣接するプリーツ山(2)同士の間に形成されているプリーツ谷角度(5)が6.6°より大きく8.8°より小さいプリーツ形状部分(6)を有している。
本発明でいうプリーツ谷角度(5)とは、隣接するプリーツ山(2)同士の間にプリーツ谷(3)が存在することによって、プリーツ形状を有する濾材(10)における紙面上の上方向側に形成されている角度(5)を指す。
【0044】
なお、プリーツ形状を有する濾材(10)を
図1に図示したように配置し実測することで、プリーツ谷角度(5)を求めることができる。また、実測が困難である場合には、濾材の厚さ、プリーツ山間隔(隣接するプリーツ山(2)同士の間隔の、紙面上の左右方向における長さ)、プリーツ谷間隔(隣接するプリーツ谷(3)同士の間隔の、紙面上の左右方向における長さ)、隣接するプリーツ山とプリーツ谷の間隔(隣接するプリーツ山(2)とプリーツ谷(3)の間隔の、紙面上の左右方向における長さ)、プリーツ山高さ(4)など、プリーツ形状を有する濾材(10)の形状から、プリーツ谷角度(5)を算出できる。
【0045】
プリーツ谷角度(5)は、より圧力損失が低く、また、低い圧力損失を維持した状態で高い捕集効率を発揮できるよう本願発明にかかる範囲内で調整できるが、前述した効果がより効果的に発揮できるよう、プリーツ谷角度(5)は6.8°~8.6°であるのが好ましく、6.9°~8.5°であるのがより好ましい。
【0046】
本発明でいうプリーツ形状部分(6)とは、紙面上の左右方向における、本願発明が規定するプリーツ谷角度(5)を形成するプリーツ谷(3)を挟み隣接しているプリーツ山(2)同士の間の範囲を指す。
本発明のプリーツ形状を有する濾材(10)は、このような形状のプリーツ形状部分(6)を備えていることによって、少なくとも該部分(6)に変形が生じるのを防止でき、圧力損失が低いプリーツ形状を有する濾材(10)を提供できる。なお、プリーツ形状を有する濾材(10)が備える該部分(6)の数や割合は適宜選択できるが、1つ以上の該部分(6)を備えるプリーツ形状を有する濾材(10)であればよく、より圧力損失が低く、また、低い圧力損失を維持した状態で高い捕集効率を発揮できるという効果が、より向上するように、プリーツ形状を有する濾材(10)における全てのプリーツ谷角度(5)は、6.6°より大きく8.8°より小さいものであるのが好ましい。
【0047】
プリーツ形状を有する濾材は単体で使用することができるが、他の部材を備えた濾材であってもよい。例えば、プリーツ形状が効果的に保持されるように、濾材のプリーツ形状に沿った形状を有する櫛歯状部材を供えていても、濾材における主面上にビードを備えることで濾材のプリーツ形状が保持されていても、プリーツ形状を有する濾材の側周面における稜線と直交する両側面(
図1の紙面上における紙面手前側および紙面奥側の両側面)あるいは全側周面に端板が接着一体化することでプリーツ形状が保持されていてもよい。また、プリーツ形状を有する濾材は単体で使用することもできるが、別の通気性部材をプレフィルターやバックフィルターとして備えていてもよい。プリーツ形状を有する濾材と別の通気性部材の積層方法は適宜選択できるが、例えば、ただ重ね合わされているだけの態様であっても、それ以外にも、バインダウェブやバインダ液あるいは、構成繊維による繊維接着によって両層が接着一体化している、あるいは、ヒートシールや超音波融着あるいはヒートロールを押し当てるなどして積層一体化した態様であることができる。
【0048】
次に、本発明のプリーツ形状を有する濾材の製造方法について説明する。本発明のプリーツ形状を有する濾材の製造方法は適宜選択できるが、一例として、特許文献1~3に開示の方法、具体的には、以下の方法を用いて濾材を製造することができる。
図2は、本発明に係る濾材を製造できる、濾材の製造装置の一例を示す側面図である。
【0049】
濾材の製造装置(20)は、メルトブロー装置など直接紡糸装置用のダイ(21)を用いて直接紡糸することで極細繊維流(22)を吐出すると共に、極細繊維流(22)に対して、カード機やガーネット機などの開繊機(23)を用いて開繊し吐出した太繊維流(24)を当てることで、極細繊維と太繊維が混在してなる繊維群(25)を調製できる。
そして、調製された極細繊維と太繊維が混在してなる繊維群(25)をロールやネットあるいはコンベヤーベルトなどの捕集体(26)上に捕集することで、極細繊維と太繊維が混在してなる繊維ウェブまたは不織布(27)を製造できる。
【0050】
極細繊維流(22)に対して太繊維流(24)を当てる方向や角度は適宜選択できるが、極細繊維と太繊維が均一に混在してなる繊維層を調製しようとする場合には、極細繊維流(22)に対して、できるだけ垂直な方向から太繊維流(24)を当てる(
図2における太繊維流(24)の吐出角度(θ)が、90°に近い角度となるように当てる)のが好ましい。
また、太繊維流(24)の吐出角度(θ)を鋭角あるいは鈍角に近づけるなど調節することで、繊維ウェブまたは不織布(27)における厚み方向に存在する太繊維と極細繊維の分布を変えて、一方の主面から他方の主面に向い、極細繊維と太繊維の存在比率(存在する繊維質量の比率あるいは繊維本数の比率など)が変化し混在してなる繊維層を調製できる。
【0051】
捕集体(26)の種類は適宜選択できるが、極細繊維と太繊維が混在してなる繊維群(25)を捕集し易いように、捕集体(26)は通気性を有しているのが好ましく、更には、サクション装置(28)を捕集体(26)における捕集面の反対側へ設けるのが好ましい。
【0052】
その後、必要であれば製造した繊維ウェブまたは不織布(27)を、ニードルや水流あるいは水蒸気などの気体流を用いる絡合処理、活性炭などの機能性粒子の付与処理、バインダ付与処理、加熱処理、帯電処理、支持体との積層処理などの二次処理工程へ供することで、本発明にかかる濾材(極細繊維と太繊維が混在してなる繊維ウェブまたは不織布(27)由来の繊維層を有する濾材)を製造することができる。
帯電処理の種類は適宜選択できるが、布帛に高電圧を作用させ帯電する方法(コロナ帯電方法)や布帛へ極性液体を付与した後に該極性液体を介して布帛へ力を作用させ帯電する方法(極性液体帯電方法)、互いに擦れることで帯電可能な複数種類の繊維を含有する繊維ウェブである場合には、繊維ウェブを厚さ方向に変形させ摩擦によって帯電させる方法へ供することができる。
【0053】
このようにして製造した繊維ウェブ由来の繊維層を有する濾材を、ジグザグ形状に折りプリーツ形状を有するよう加工することで、プリーツ形状を有する濾材を製造できる。該加工方法の種類は適宜選択できるが、例えば、レシプロ式やロータリー式などのプリーツ加工機へ供する、あるいは、ジグザグ形状に成形された押型でプレスする方法へ供することで、プリーツ形状を有する濾材を製造できる。このとき、プリーツ山高さが50mm以上のプリーツ形状を有すると共に、隣接するプリーツ山同士の間に形成されるプリーツ谷の角度が6.6°より大きく8.8°より小さいプリーツ形状部分を有するように、濾材をジグザグ形状に折りプリーツ形状を有する。
【0054】
なお、上述では二次処理工程へ供した後にジグザグ形状に折りプリーツ形状を有する濾材を製造する方法を例示したが、製造したプリーツ形状を有する濾材を二次処理工程へ供しても良い。
【0055】
このようにして製造したプリーツ形状を有する濾材は、単体で使用することができるが、他の部材を備えた濾材としてもよい。例えば、プリーツ形状が効果的に保持されるように、濾材のプリーツ形状に沿った形状を有する櫛歯状部材を設けても、濾材における主面上にビードを備えることで濾材のプリーツ形状が保持されるようにしても、プリーツ形状に加工された濾材に支持体を積層一体化することによってプリーツ形状を保持するようにしても、プリーツ形状を有する濾材の側周面における稜線と直交する両側面(
図1の紙面上における紙面手前側および紙面奥側の両側面)あるいは全側周面に端板を接着一体化することでプリーツ形状を保してもよい。
また、プリーツ形状を有する濾材は単体で使用することもできるが、更に別の通気性部材をプレフィルターやバックフィルターとして設けても良い。積層方法は適宜選択できるが、例えば、ただ重ね合わされているだけの態様、バインダウェブやバインダ液あるいは繊維接着によって接着一体化している、あるいは、ヒートシールや超音波融着あるいはヒートロールを押し当てるなどして積層できる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない
【0057】
(不織布の調製方法)
ポリプロピレン樹脂96mass%に対し、ヒンダードアミン系化合物のキマソーブ(BASF・ジャパン株式会社製、型番:キマソーブ944FDL、登録商標)を4mass%配合してなる紡糸用樹脂を、加熱したメルトブロー装置用のダイから溶融射出することで、溶融紡糸(直接紡糸法)し極細繊維流を形成した。
次いで、形成された極細繊維流に対して、極細繊維が溶融射出されている方向と65°の角度(
図2における、太繊維流(24)の吐出角度(θ))をなすように、開繊機から芯成分がポリプロピレン樹脂からなり、鞘成分がポリエチレン樹脂からなる複合繊維(平均繊維径:30μm、繊維長:64mm)を吐出させてなる太繊維流を当てることで、極細繊維と太繊維が混在してなる繊維群を調製し、メッシュ状コンベア上に捕集することで不織布(目付:80g/m
2、厚さ:0.75mm、生産幅:620mm)を調製した。
なお、繊維群の捕集にあたり、メッシュ状コンベアにおける捕集面の反対側へサクション装置を設け、メッシュ状コンベアにおける捕集面の反対側から空気を吸引除去しながら繊維群を捕集した。
このようにして調製した不織布において、平均繊維径2.5μmである連続長を有する極細繊維と、平均繊維径30μmである短繊維の太繊維は、極細繊維:太繊維=7mass%:93mass%で混在してなるものであった。
また、不織布におけるメッシュ状コンベアの捕集面側の主面において、極細繊維は50mass%(太繊維:50mass%)存在しており、該捕集面側の主面と対向する主面において、極細繊維は3mass%(太繊維:97mass%)存在していた。そして、不織布における該捕集面側の主面から該対向する主面へ向かうに従って、極細繊維量が漸次減少すると共に太繊維量が漸次増加していた。
【0058】
(不織布の帯電方法)
不織布に対し、コロナ放電処理(直流電圧:8.5kV)を施すことで、帯電した不織布を調製した。
【0059】
(実施例および比較例)
上述のようにして調製した帯電した不織布をプリーツ加工機へ供することで、帯電した不織布の長手方向に対し、山折りと谷折りを交互に繰り返し加工してジグザグ形状を有するように折ることで、プリーツ形状を有する濾材を調製した。
なお、帯電した不織布の折りかたについて、表1に記載するとおり隣接するプリーツ山同士の間隔やプリーツ山高さを各々変更することで、実施例あるいは比較例となるプリーツ形状を有する帯電した濾材を調製した。
また、調製した各プリーツ形状を有する帯電した濾材を、以下に挙げる(初期圧力損失の測定方法)へ供することで、濾材としての性能を評価した。
【0060】
(初期圧力損失の測定方法)
各プリーツ形状を有する帯電した濾材の、全側周面に枠材として端板を取り付けることで、各プリーツ形状を有する帯電した濾材を610mm角の間口面積をもつフィルタユニットに仕上げた。そして、調製した各フィルタユニットを、JIS B 9908(2001)「換気用エアフィルタユニット・換気用電気集じん機の性能試験法」に規定された試験方法形式2に基づき初期圧力損失(Pa)を測定した。
【0061】
実施例および比較例となる各プリーツ形状を有する帯電した濾材の構成、および、初期圧力損失(Pa)の測定結果を表1にまとめた。
【0062】
【0063】
表1の結果から、プリーツ谷角度が6.6°より大きく8.8°より小さいプリーツ形状部分を有している場合、プリーツ形状を有する帯電した濾材は初期圧力損失が低いものであった。
そのため本発明によって、より圧力損失が低く、また、低い圧力損失を維持した状態で高い捕集効率を発揮できる、プリーツ山高さが50mm以上のプリーツ形状を有する濾材を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、例えば、食品や医療品の生産工場用途、精密機器の製造工場用途、農作物の室内栽培施設用途、一般家庭用途あるいはオフィスビルなどの産業施設用途、空気清浄機用途やOA機器用途などの電化製品用途、自動車や航空機などの各種車両用途において、気体あるいは液体濾材として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0065】
10・・・プリーツ形状を有する濾材
1・・・濾材
2・・・プリーツ山
3・・・プリーツ谷
4・・・プリーツ山高さ
5・・・隣接するプリーツ山同士の間に形成されているプリーツ谷の角度
6・・・プリーツ形状部分
20・・・濾材の製造装置
21・・・直接紡糸装置用のダイ
22・・・極細繊維流
23・・・開繊機
24・・・太繊維流
25・・・極細繊維と太繊維が混在してなる繊維群
26・・・捕集体
27・・・極細繊維と太繊維が混在してなる繊維ウェブまたは不織布
28・・・サクション装置