(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】表示制御装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20220127BHJP
A61B 5/0295 20060101ALI20220127BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20220127BHJP
A61B 5/0535 20210101ALI20220127BHJP
【FI】
A61B5/022 500L
A61B5/0295
A61B5/02 310V
A61B5/022 400
A61B5/022 300F
A61B5/0535
(21)【出願番号】P 2017175113
(22)【出願日】2017-09-12
【審査請求日】2020-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 大資
(72)【発明者】
【氏名】川端 康大
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-222814(JP,A)
【文献】特開平01-249036(JP,A)
【文献】特開2017-063884(JP,A)
【文献】特開2014-171513(JP,A)
【文献】特開2009-297235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置に備えられる表示制御装置であって、
前記測定装置は、
脈波伝搬時間の測定部位に巻き付け装着されるベルトと、
前記ベルトが装着される場合に、前記ベルトの前記測定部位の側となる面である内周面に設けられるセンサ部と、
前記ベルトの前記内周面とは反対側の面である外周面に設けられるディスプレイと、を備え、
前記ディスプレイは、前記外周面において、前記ベルトが装着される場合に前記センサ部が位置する部位と対向し得る部位に設けられ、
前記センサ部は、前記ベルトの幅方向に互いに離間した配置で設けられる第1脈波センサおよび第2脈波センサを含み、
前記表示制御装置は、
前記ディスプレイにおいて、離間して配置された前記第1脈波センサおよび前記第2脈波センサのそれぞれに対応した位置で、前記第1脈波センサの出力が示す第1脈波振幅の大きさを表す第1インジケータ情報および前記第2脈波センサの出力が示す第2脈波振幅の大きさを表す第2インジケータ情報をそれぞれ表示する、表示制御装置。
【請求項2】
前記表示制御装置は、
前記第1脈波振幅の大きさ、および前記第2脈波振幅の大きさに従うガイド情報であって、前記センサ部と前記測定部位との相対的な位置関係を調整するためのガイド情報を、前記ディスプレイに表示する、請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記表示制御装置は、
前記ガイド情報を、前記ディスプレイにおいて、前記第1インジケータ情報および前記第2インジケータ情報と同一画面に表示する、請求項2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記ガイド情報は、
前記測定部位に対する前記センサ部の位置を移動させる方向をガイドする情報を含む、請求項2または3に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記ガイド情報は、
前記測定部位に対する前記センサ部の位置を移動させる方向をガイドする情報を含み、
前記第1脈波振幅の大きさ、または前記第2脈波振幅の大きさが予め定められた大きさを示さない場合、前記ガイド情報は前記移動させる方向をガイドする情報を含む、請求項2から4のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記第1脈波振幅の大きさ、および前記第2脈波振幅の大きさが前記予め定められた大きさを示す場合、前記ガイド情報は前記センサ部の位置を固定することをガイドする情報を含む、請求項5に記載の表示制御装置。
【請求項7】
前記第1脈波振幅の大きさ、および前記第2脈波振幅の大きさが前記予め定められた大きさを示す場合、前記ガイド情報は、前記移動させる方向をガイドする情報に代えて、前記センサ部の位置を固定することをガイドする情報を含む、請求項6に記載の表示制御装置。
【請求項8】
前記第1脈波振幅の大きさを示す情報および前記第2脈波振幅の大きさを示す情報は、それぞれ、当該脈波振幅の大きさが前記予め定められた大きさを示す場合の表示態様と、当該予め定められた大きさを示さない場合の表示態様とは異なる、請求項5に記載の表示制御装置。
【請求項9】
前記ガイド情報は、
前記測定部位に対する前記装着の状態を評価する情報を含み、
前記評価する情報は、
前記第1脈波振幅の大きさ、および前記第2脈波振幅の大きさが前記予め定められた大きさを示す場合と、前記第1脈波振幅の大きさ、または前記第2脈波振幅の大きさが前記予め定められた大きさを示さない場合とで異なる評価を示す、請求項
5から8のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項10】
前記第1脈波振幅の大きさ、または前記第2脈波振幅の大きさが前記予め定められた大きさを示さない場合、前記ガイド情報は、前記巻き付け装着のし直しを促す情報を含む、請求項9に記載の表示制御装置。
【請求項11】
前記測定装置は、
表示部を備える外部の情報処理装置と通信する通信部を、さらに備え、
前記ガイド情報を、前記表示部に表示させるために前記通信部を介して前記情報処理装置に送信する、請求項9または10に記載の表示制御装置。
【請求項12】
前記脈波伝搬時間は、前記第1脈波振幅の大きさおよび前記第2脈波振幅の大きさから算出され、
前記測定装置は、
前記脈波伝搬時間に基づく血圧を算出する、請求項2から11のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項13】
前記ガイド情報は、
前記測定部位に対する前記装着の状態を評価する情報を含み、
前記表示制御装置は、
前記装着の状態を評価する情報を、算出された前記血圧を評価する情報と関連づけて表示する、請求項12に記載の表示制御装置。
【請求項14】
前記表示制御装置は、さらに、
前記ガイド情報を表示する場合、前記第1脈波振幅の大きさまたは前記第2脈波振幅の大きさが変化したとき、当該ガイド情報に当該変化を報知する情報を含める、請求項2から13のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項15】
装置における表示制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記装置は、
脈波伝搬時間の測定部位に巻き付け装着されるベルトと、
前記ベルトが装着される場合に前記ベルトの前記測定部位の側となる面である内周面に設けられるセンサ部と、
前記ベルトの前記内周面とは反対側の面である外周面に設けられるディスプレイと、を備え、
前記ディスプレイは、前記外周面において、前記ベルトが装着される場合に前記センサ部が位置する部位と対向し得る部位に設けられ、
前記センサ部は、前記ベルトの幅方向に互いに離間した配置で設けられる第1脈波センサおよび第2脈波センサを含み、
前記表示制御方法は、
前記第1脈波センサの出力が示す第1脈波振幅の大きさを表す第1インジケータ情報、および前記第2脈波センサの出力が示す第2脈波振幅の大きさを表す第2インジケータ情報を取得し、
前記ディスプレイにおいて、離間して配置された前記第1脈波センサおよび前記第2脈波センサのそれぞれに対応した位置で、前記第1インジケータ情報および前記第2インジケータ情報をそれぞれ表示する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示制御装置およびプログラムに関し、特に、脈波情報の表示制御装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
脈波を検出するために、脈波検出センサを動脈上に位置合わせするための方法が提案されている。例えば、特許文献1(特開2004-222814号公報)は、一列に配列された圧力検出素子による検出圧脈波の大きさが表示器に表示される点を開示する。また、特許文献2(国際公開第98/51025号)は、検出脈波の振幅値の表示を見ながら脈波検出回路の位置調整を行う構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-222814号公報
【文献】国際公開第98/51025号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、動脈を伝搬する脈波の伝搬時間(脈波伝搬時間;Pulse Transit Time;PTT)から血圧を推定(測定)する方法が知られている。PTTは、動脈上の異なる2点のそれぞれで脈波センサにより脈波信号を検出し、2点間で脈波振幅のピーク(最大)が検出される時間差から求められる。したがって、高い血圧測定精度を得るために、脈波センサを動脈上に確実に位置合わせするための情報の提示が望まれる。しかし、特許文献1および特許文献2は、脈波伝搬時間を測定する場合の脈波センサを位置合わせするための情報を提示しない。
【0005】
本開示のある局面における目的は、脈波伝搬時間を測定する場合に、測定部位に対する脈波センサを位置合わせするための情報を提示する表示制御装置およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のある局面に従うと、測定装置に備えられる表示制御装置が提供される。測定装置は、脈波伝搬時間の測定部位に巻き付け装着されるベルトと、ベルトが装着される場合にベルトの測定部位の側となる面である内周面に設けられるセンサ部と、ベルトの内周面とは反対側の面である外周面に設けられるディスプレイと、を備える。
【0007】
ディスプレイは、外周面において、ベルトが装着される場合にセンサ部が位置する部位と対向し得る部位に設けられ、センサ部は、ベルトの幅方向に互いに離間した配置で設けられる第1脈波センサおよび第2脈波センサを含む。
【0008】
表示制御装置は、ディスプレイにおいて、離間して配置された第1脈波センサおよび第2脈波センサのそれぞれに対応した位置で、第1脈波センサの出力が示す第1脈波振幅の大きさを表す第1インジケータ情報および第2脈波センサの出力が示す第2脈波振幅の大きさを表す第2インジケータ情報をそれぞれ表示する。
【0009】
好ましくは、表示制御装置は、第1脈波振幅の大きさ、および第2脈波振幅の大きさに従うガイド情報であって、センサ部と測定部位との相対的な位置関係を調整するためのガイド情報を、ディスプレイに表示する。
【0010】
好ましくは、表示制御装置は、ガイド情報を、ディスプレイにおいて、第1インジケータ情報および第2インジケータ情報と同一画面に表示する。
【0011】
好ましくは、ガイド情報は、測定部位に対するセンサ部の位置を移動させる方向をガイドする情報を含む。
【0012】
好ましくは、第1脈波振幅の大きさ、または第2脈波振幅の大きさが予め定められた大きさを示さない場合、ガイド情報は移動させる方向をガイドする情報を表示する。
【0013】
好ましくは、第1脈波振幅の大きさ、および第2脈波振幅の大きさが予め定められた大きさを示す場合、ガイド情報はセンサ部の位置を固定することをガイドする情報を含む。
【0014】
好ましくは、第1脈波振幅の大きさ、および第2脈波振幅の大きさが予め定められた大きさを示す場合、ガイド情報は、移動させる方向をガイドする情報に代えて、センサ部の位置を固定することをガイドする情報を含む。
【0015】
好ましくは、第1脈波振幅の大きさを示す情報および第2脈波振幅の大きさを示す情報は、それぞれ、当該脈波振幅の大きさが予め定められた大きさを示す場合の表示態様と、当該予め定められた大きさを示さない場合の表示態様とは異なる。
【0016】
好ましくは、ガイド情報は、測定部位に対する装着の状態を評価する情報を含み、評価する情報は、装着中に、第1脈波振幅の大きさ、および第2脈波振幅の大きさが予め定められた大きさを示す場合と、第1脈波振幅の大きさ、または第2脈波振幅の大きさが予め定められた大きさを示さない場合とで異なる評価を示す。
【0017】
好ましくは、第1脈波振幅の大きさ、または第2脈波振幅の大きさが予め定められた大きさを示さない場合、ガイド情報は、巻き付け装着のしなおしを促す情報を含む。
【0018】
好ましくは、測定装置は、表示部を備える外部の情報処理装置と通信する通信部を、さらに備え、ガイド情報を、表示部に表示させるために通信部を介して情報処理装置に送信する。
【0019】
好ましくは、脈波伝搬時間は、第1脈波振幅の大きさおよび第2脈波振幅の大きさから算出され、測定装置は、脈波伝搬時間に基づく血圧を算出する。
【0020】
好ましくは、ガイド情報は、測定部位に対する装着の状態を評価する情報を含み、表示制御装置は、装着の状態を評価する情報を、算出された血圧を評価する情報と関連づけて表示する。
【0021】
好ましくは、表示制御装置は、さらに、ガイド情報を表示する場合、第1脈波振幅の大きさまたは第2脈波振幅の大きさが変化したとき、当該ガイド情報に当該変化を報知する情報を含める。
【0022】
この発明の他の局面に従うと、装置における表示制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。この装置は、脈波伝搬時間の測定部位に巻き付け装着されるベルトと、ベルトが装着される場合にベルトの測定部位の側となる面である内周面に設けられるセンサ部と、ベルトの内周面とは反対側の面である外周面に設けられるディスプレイと、を備え、ディスプレイは、外周面において、ベルトが装着される場合にセンサ部が位置する部位と対向し得る部位に設けられ、センサ部は、ベルトの幅方向に互いに離間した配置で設けられる第1脈波センサおよび第2脈波センサを含む。表示制御方法は、ディスプレイにおいて、離間して配置された第1脈波センサおよび第2脈波センサのそれぞれに対応した位置で、第1インジケータ情報および第第2インジケータ情報をそれぞれ表示する。
【発明の効果】
【0023】
本開示によると、脈波伝搬時間を測定する場合に脈波センサを位置合わせするための情報を提示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施の形態1に従う血圧計1の外観斜視図である。
【
図2】実施の形態1に従う血圧計1が左の手首90に装着された状態を示す図である。
【
図3】
図1の血圧計1が左の手首90に装着された状態における、インピーダンス測定用の電極群の平面レイアウトを示す図である。
【
図4】実施の形態1に従う血圧計1の制御系のブロック構成を示す図である。
【
図5】実施の形態1に従う脈波伝
搬時間に基づく血圧測定を説明するための模式図である。
【
図6】実施の形態1に従うオシロメトリック法による血圧測定を行なう場合において、血圧計1が手首90に装着された状態での、手首の長手方向に沿った模式断面図である。
【
図7】実施の形態1に係るセンサ部の装着状態の判定を説明する図である。
【
図8】実施の形態1に係るガイド情報を出力するための機能の構成を、血圧測定機能と関連づけて模式的に示す図である。
【
図9】実施の形態1に係るガイド情報の出力と脈波伝搬時間に基づく血圧測定の処理を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態1に係るガイド情報の他の表示例を示す図である。
【
図11】実施の形態1に係るガイド情報の他の表示例を示す図である。
【
図12】実施の形態1に係るガイド情報の他の表示例を示す図である。
【
図13】実施の形態1に係る測定結果の格納例を示す図である。
【
図14】実施の形態1に係る他の表示例を示す図である。
【
図15】実施の形態1に係る更なる他の表示例を示す図である。
【
図16】実施の形態1に係る更なる他の表示例を示す図である。
【
図17】実施の形態1に係る更なる他の表示例を示す図である。
【
図18】実施の形態2に従うシステムの概略的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0026】
以下では、脈波伝搬時間(以下、PTTと称する)を測定する装置としてウェアラブル端末である血圧計を例示し、血圧計に「表示制御装置」を搭載するケースを説明する。ただし、「表示制御装置」を搭載する装置は、脈波信号を検出するセンサと、当該センサにより検出された信号を処理する処理装置とを含む装置であればよく、血圧計に限られない。また、血圧計は、ウェアラブル型の端末に限定されない。
【0027】
[実施の形態1]
<血圧計の構成>
図1は、実施の形態1に係る血圧計1の外観斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る血圧計1が左の手首90に装着された状態(以下、「装着状態」とも称する。)で、手首90の長手方向に対して垂直な断面を模式的に示す図である。本実施の形態では、左の手首90が測定部位となる。なお、「測定部位」は、動脈が通っている部位であればよく、手首に限定されない。測定部位は、例えば、右手首、上腕、足首、大腿などの下肢であってもよい。
【0028】
図1および
図2を参照して、ベルト20は、帯状の部材である。ベルト20は、その長手方向が手首90を周方向に対応するようにして、装着状態では、摺動可能に巻き付け装着される。ベルト20の幅方向Yの寸法(幅寸法)は、例えば、約30mmである。ベルト20は、帯状体23と、圧迫カフ21とを含む。帯状体23は、測定部位側の面である内周面23aおよび内周面23aの反対側の面である外周面20bを有する。実施の形態1では、ベルト20が測定部位に巻き付けが装着される場合、血圧計1の状態は「装着状態」となる。また、「装着中」は、この「装着状態」が継続する場合を示す。
【0029】
圧迫カフ21は、帯状体23の内周面23aに沿って取り付けられ、手首90に接する内周面20aを有する(
図2参照)。圧迫カフ21は、伸縮可能な2枚のポリウレタンシートを厚さ方向に対向させ、それらの周縁部を溶着して、流体袋として構成されている。本実施の形態では、圧迫カフ21の流体袋は、流体を収容可能な袋状の部材であればよい。圧迫カフ21は、流体が供給されると膨張し、膨張に伴い測定部位は加圧される。また、流体が排出されると圧迫カフ21は収縮し、測定部位の加圧状態は解消される。
【0030】
本体10は、ベルト20のうちの一方の端部20eと一体に設けられる。なお、ベルト20と本体10とを別々に形成し、ベルト20に対して本体10を、係合部材(例えば、ヒンジ)を介して、一体に取り付ける構成でもよい。本実施の形態では、本体10が配置された部位は、装着状態において手首90の背側面(手の甲側の面)90bに対応する(
図2参照)。
図2中には、手首90内で掌側面(手の平側の面)90a近傍を通る橈骨動脈91が示されている。
【0031】
図1に示すように、本体10は、ベルト20の外周面20bに対して垂直な方向に厚さを有する立体的形状を有する。本体10は、ユーザの日常活動を妨げないように、小型で、薄厚に形成される。本体10は、ベルト20から外向きに突起した四角錐台状の輪郭を有する。
【0032】
本体10の頂面(測定部位から最も遠い側の面)10aには、ディスプレイ50が設けられる。本体10の側面(
図1における左手前側の側面)10fに沿って、ユーザからの指示を入力するための操作部52が設けられる。
【0033】
ベルト20の一方の端部20eと他方の端部20fとの間の部位であって、ベルト20の内周面20a(すなわち、圧迫カフ21の内周面20a)上には、センサ部40が設けられる。センサ部40は、インピーダンス測定機能を用いて脈波を検出する機能を備える。
【0034】
センサ部40が配置された部位の内周面20aには、電極群40Eが配置される。電極群40Eは、ベルト20の幅方向Yに関して互いに離間した状態で配置された6個の板状(またはシート状)の電極41~46を有する。電極群40Eが配置された部位は、装着状態において手首90の橈骨動脈91に対応する。
【0035】
外周面21aにおける、電極群40Eに対応する位置には、固形物22が配置されてもよい。固形物22の外周側には、押圧カフ24が配置される。押圧カフ24は、圧迫カフ21の周方向に関して電極群40Eに対応する領域を局所的に抑圧する拡張部材である。押圧カフ24は、ベルト20を構成する帯状体23の内周面23aに配置される(
図2参照)。帯状体23は、厚さ方向に関して可撓性を有し、周方向(長手方向)に関して非伸縮性を有するプラスチック材料から構成される。
【0036】
押圧カフ24は、ベルト20の厚さ方向に伸縮する流体袋であり、流体の供給により加圧状態となり、流体の排出により非加圧状態となる。押圧カフ24は、例えば、伸縮可能な2枚のポリウレタンシートを厚さ方向に対向させ、それらの周縁部を溶着して、流体袋として構成されている。
【0037】
押圧カフ24の内周面24aのうち、電極群40Eに対応する位置には、固形物22が配置されている。固形物22は、例えば、厚さ1~2mm程度の板状の樹脂(例えば、ポリプロピレン)で構成されている。本実施の形態では、押圧部として、ベルト20、押圧カフ24、および固形物22を用いている。
【0038】
図1に示すように、本体10の底面(測定部位に最も近い側の面)10bと、ベルト20の端部20fとは、三つ折れバックル15(以下、単に「バックル15」とも称する。)によって接続されている。
【0039】
バックル15は、外周側に配置された板状部材25と、内周側に配置された板状部材26とを含む。板状部材25の一方の端部25eは、幅方向Yに沿って延びる連結棒27を介して本体10に対して回動自在に取り付けられる。板状部材25の他方の端部25fは、幅方向Yに沿って延びる連結棒28を介して、板状部材26の一方の端部26eに対して回動自在に取り付けられる。板状部材26の他方の端部26fは、固定部29によってベルト20の端部20f近傍に固定されている。
【0040】
ベルト20の周方向に関して、固定部29の取り付け位置は、ユーザの手首90の周囲長に合わせて予め可変して設定されている。これにより、血圧計1(ベルト20)は、全体として略環状に構成されるとともに、本体10の底面10bとベルト20の端部20fとが、バックル15によって
図1中の矢印B方向に開閉可能に構成される。
【0041】
ユーザは、血圧計1を手首90に装着する際、バックル15を開いてベルト20の環の径を大きくした状態で、
図1中の矢印Aで示す方向からベルト20に左手を通す。次に、
図2に示すように、ユーザは、手首90の周りのベルト20の角度位置を摺動させる等して調節し、橈骨動脈91上に位置するようにセンサ部40を移動させる。これにより、センサ部40の電極群40Eは、手首90の掌側面90aのうち橈骨動脈91に対応する部分90a1に当接する状態となる。この状態で、ユーザは、バックル15を閉じて固定する。このようにして、ユーザは血圧計1(ベルト20)を手首90に巻き付け装着する。
【0042】
図3は、実施の形態1に係る血圧計1が手首90に装着された状態における、インピーダンス測定用の電極群の平面レイアウトを示す図である。
図3を参照して、装着状態においては、センサ部40の電極群40Eは、左の手首90の橈骨動脈91に対応して、手首の長手方向に沿って並んだ状態となる。電極群40Eは、幅方向Yに関して、両側に配置された通電用の電流電極対41,46と、当該電流電極対41,46の間に配置された検出電極対42,43および検出電極対44,45とを含む。第1脈波センサ40-1は検出電極対42,43を含み、第2脈波センサ40-2は検出電極対44,45を含む。
【0043】
検出電極対42,43に対して、橈骨動脈91の血流のより下流側の部分に対応して、検出電極対44,45が配置されている。幅方向Yに関して、検出電極対42,43の中央と検出電極対44,45の中央との間の間隔D(後述する
図5(A)参照)は、例えば、20mmに設定される。間隔Dは、第1脈波センサ40-1と第2脈波センサ40-2との間隔に相当する。また、幅方向Yに関して、検出電極対42,43間の間隔、および検出電極対44,45の間隔は、例えば、いずれも2mmに設定される。
【0044】
このような電極群40Eは偏平に構成され得るため、血圧計1では、ベルト20を全体として薄厚に構成できる。また、電極群40Eは、柔軟に構成され得るため、電極群40Eは、圧迫カフ21による左の手首90の圧迫を妨げず、後述のオシロメトリック法による血圧測定の精度を損なわない。
【0045】
図4は、実施の形態1に係る血圧計1の制御系のブロック構成を示す図である。血圧計1は、オシロメトリック法による血圧測定機能と、PTTに基づく血圧測定機能とを備える。
図4の血圧計1では、流体として空気を用いる構成を例示する。
【0046】
図4を参照して、本体10は、制御部として機能するCPU(Central Processing Unit)100と、ディスプレイ50と、記憶部として機能するメモリ51と、操作部52と、電池53と、通信部59とを含む。また、本体10は、圧力センサ31と、ポンプ32と、弁33と、圧力センサ34と、切替弁35とを含む。切替弁35は、ポンプ32および弁33の接続先を、圧迫カフ21または押圧カフ24に切り替える。
【0047】
さらに、本体10は、圧力センサ31および圧力センサ34のそれぞれからの出力を周波数に変換する発振回路310および発振回路340と、ポンプ32を駆動するポンプ駆動回路320とを含む。センサ部40は、電極群40Eと、通電および電圧検出回路49とを含む。
【0048】
ディスプレイ50は、例えば、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイで構成され、CPU100からの制御信号に従って情報を表示する。この情報は、測定結果を含む。なお、ディスプレイ50は、有機ELディスプレイに限られず、例えば、LCD(Liquid Cristal Display)など、他のタイプのディスプレイで構成されてもよい。
【0049】
操作部52は、例えば、プッシュ式スイッチで構成され、ユーザによる血圧測定開始または停止の指示に応じた操作信号をCPU100に入力する。なお、操作部52は、プッシュ式スイッチに限られず、例えば、感圧式(抵抗式)または近接式(静電容量式)のタッチパネル式スイッチなどであってもよい。また、本体10がマイクロフォン(図示しない)を含んでおり、ユーザの音声によって血圧測定開始の指示を受け付けてもよい。
【0050】
メモリ51は、血圧計1を制御するためのプログラムのデータ、血圧計1を制御するために用いられるデータ、血圧計1の各種機能を設定するための設定データ、血圧値の測定結果のデータなどを非一時的に記憶する。また、メモリ51は、プログラムが実行されるときのワークメモリなどとして用いられる。
【0051】
CPU100は、メモリ51に記憶された血圧計1を制御するためのプログラムに従って、制御部として各種機能を実行する。例えば、オシロメトリック法による血圧測定を実行する場合は、CPU100は、操作部52からの血圧測定開始の指示を受付けたとき、圧力センサ31からの信号に基づいて、ポンプ32(および弁33)を駆動する。また、CPU100は、圧力センサ31からの信号に基づいて、血圧値(最高血圧(収縮期血圧:Systolic Blood Pressure)と最低血圧(拡張期血圧:Diastolic Blood Pressure))を算出するとともに、脈拍数を算出する。
【0052】
CPU100は、PTTに基づく血圧測定を実行する場合、操作部52からの血圧測定開始の指示に応じて、圧迫カフ21内の空気を排出させるために弁33を駆動する制御を行なう。また、CPU100は、切替弁35を駆動して、ポンプ32(および弁33)の接続先を押圧カフ24に切り替える制御を行なう。さらに、CPU100は、圧力センサ34からの信号に基づいて、血圧値を算出する制御を行なう。
【0053】
通信部59は、CPU100によって制御されて、ネットワーク900を介して外部の情報処理装置と通信する。外部の情報処理装置は、後述する携帯型端末10Bおよびサーバ30を含み得るが、これら装置に限定されない。ネットワーク900を介した通信は、無線または有線を含み得る。例えば、ネットワーク900は、インターネットおよびLAN(Local Area Network)を含み得る。または、USBケーブルを用いた1対1の通信も含み得る。通信部59は、マイクロUSBコネクタを含み得る。
【0054】
ポンプ32および弁33は、切替弁35、エア配管39a,39bを介して、圧迫カフ21および押圧カフ24に接続されている。圧力センサ31はエア配管38aを介して、圧力センサ34はエア配管38bを介して、それぞれ圧迫力フ21および押圧カフ24に接続されている。圧力センサ31は、エア配管38aを介して、圧迫カフ21内の圧力を検出する。切替弁35は、CPU100から与えられる制御信号に基づいて駆動し、ポンプ32および弁33の接続先を圧迫カフ21または押圧カフ24に切り替える。
【0055】
ポンプ32は、例えば、圧電ポンプで構成される。切替弁35により、ポンプ32および弁33の接続先が圧迫カフ21に切り替えられている場合には、ポンプ32は、圧迫カフ21内の圧力(カフ圧)を加圧するために、エア配管39aを通して圧迫カフ21に加圧用の流体としての空気を供給する。切替弁35により、ポンプ32および弁33の接続先が押圧カフ24に切り替えられている場合には、ポンプ32は、押圧カフ24内の圧力(カフ圧)を加圧するために、エア配管39bを通して押圧カフ24に空気を供給する。
【0056】
弁33は、ポンプ32に搭載され、ポンプ32のオン/オフに伴って開閉が制御される構成になっている。具体的には、切替弁35により、ポンプ32および弁33の接続先が圧迫カフ21に切り替えられている場合には、弁33は、ポンプ32がオンされると閉じて、圧迫カフ21内に空気を封入する一方、ポンプ32がオフされると開いて、圧迫カフ21の空気をエア配管39aを通して大気中へ排出させる。
【0057】
切替弁35により、ポンプ32および弁33の接続先が押圧カフ24に切り替えられている場合には、弁33は、ポンプ32がオンされると閉じて、押圧カフ24内に空気を封入する一方、ポンプ32がオフされると開いて、押圧カフ24の空気を、エア配管39bを通して大気中へ排出させる。弁33は、逆止弁の機能を有し、排出されるエアが逆流することはない。ポンプ駆動回路320は、ポンプ32をCPU100から与えられる制御信号に基づいて駆動する。
【0058】
圧力センサ31は、例えば、ピエゾ抵抗式圧力センサであり、エア配管38aを介して、ポンプ32、弁33および圧迫カフ21に接続されている。圧力センサ31は、エア配管38aを介して、ベルト20(圧迫カフ21)の圧力、例えば、大気圧を基準(ゼロ)とした圧力を検出して時系列の信号として出力する。
【0059】
発振回路310は、圧力センサ31からのピエゾ抵抗効果による電気抵抗の変化に基づく電気信号値に応じた周波数を有する周波数信号をCPU100に出力する。圧力センサ31の出力は、圧迫力フ21の圧力を制御するため、および、オシロメトリック法によって血圧値を算出するために用いられる。
【0060】
圧力センサ34は、例えば、ピエゾ抵抗式圧力センサであり、エア配管38bを介して、ポンプ32、弁33および押圧カフ24に接続されている。圧力センサ34は、エア配管38bを介して、押圧カフ24の圧力、例えば、大気圧を基準(ゼロ)とした圧力を検出して時系列の信号として出力する。
【0061】
発振回路340は、圧力センサ34からのピエゾ抵抗効果による電気抵抗の変化に基づく電気信号値に応じて発振し、圧力センサ34の電気信号値に応じた周波数を有する周波数信号をCPU100に出力する。圧力センサ34の出力は、押圧カフ24の圧力を制御するため、および、PTTに基づく血圧を算出するために用いられる。PTTに基づく血圧測定のために押圧カフ24の圧力を制御する場合には、CPU100は、ポンプ32および弁33を制御して、種々の条件に応じてカフ圧の加圧と減圧を行なう。
【0062】
電池53は、本体10に搭載された各種要素に電力を供給する。電池53は、配線71を通して、センサ部40の通電および電圧検出回路49へも電力を供給する。配線71は、信号用の配線72とともに、ベルト20の帯状体23と圧迫カフ21との間に挟まれた状態で、ベルト20の周方向に沿って本体10とセンサ部40との間に延在して設けられている。
【0063】
(脈波伝
搬時間に基づく血圧測定の概要)
図5は、実施の形態1に係る脈波伝
搬時間に基づく血圧測定を説明するための模式図である。具体的には、
図5(A)は、血圧計1が手首90に装着された状態における、脈波伝
搬時間に基づく血圧測定を行う際の手首の長手方向に沿った模式断面図である。
図5(B)は、脈波信号PS1,PS2の波形を示す図である。なお、
図5では、センサ部40は測定部位の橈骨動脈91の上に位置している。
【0064】
図5(A)を参照して、電圧検出回路49は、昇圧回路および電圧調整回路等を用いて、所定電圧を電流電極対41,46間に印加することにより、例えば、周波数50kHz、電流値1mAの高周波定電流iを流す。
【0065】
また、電圧検出回路49は、第1脈波センサ40-1を構成する検出電極対42,43間の電圧信号v1と、第2脈波センサ40-2を構成する検出電極対44,45間の電圧信号v2とを検出する。電圧信号v1,v2は、左の手首90の掌側面90aのうち、それぞれ第1脈波センサ40-1、第2脈波センサ40-2が対向する部分における、橈骨動脈91の血流の脈波による電気インピーダンスの変化を表す。
【0066】
具体的には、電圧検出回路49の増幅器401は、例えば、オペアンプを含んで構成され、電圧信号v1,v2を増幅する。アナログフィルタ403は、増幅された電圧信号v1,v2に対してフィルタリング処理を行なう。具体的には、アナログフィルタ403は、電圧信号v1,v2(脈波信号)を特徴づける周波数以外のノイズを除去し、S/Nを向上するためのフィルタリング処理を行なう。A/Dコンバータ405は、フィルタリング処理された電圧信号v1,v2をアナログデータからディジタルデータに変換して、配線72を介してCPU100へ出力する。
【0067】
CPU100は、入力された電圧信号v1,v2(ディジタルデータ)に対して、所定の信号処理を施して、
図5(B)中に示すような山状の波形を有する脈波信号PS1,PS2を生成する。
【0068】
なお、電圧信号v1,v2は、例えば、1mv程度である。また、脈波信号PS1,PS2のそれぞれのピークA1,A2は、例えば、約1Vである。橈骨動脈91の血流の脈波伝搬速度(Pulse Wave Velocity ; PWV)が1000cm/s~2000cm/sの範囲であるとすると、第1脈波センサ40-1と第2脈波センサ40-2との間の間隔D=20mmであることから、脈波信号PS1および脈波信号PS2間の時間差Δtは、1.0ms~2.0msの範囲となる。
【0069】
図5(A)に示すように、押圧カフ24は加圧状態となっており、圧迫カフ21は内部の空気が排出されて非加圧状態になっている。押圧カフ24および固形物22は、橈骨動脈91の動脈方向に関して、第1脈波センサ40-1、第2脈波センサ40-2、および電流電極対41,46に跨って配置されている。そのため、押圧カフ24は、ポンプ32により加圧されると、第1脈波センサ40-1、第2脈波センサ40-2、および電流電極対41,46を固形物22を介して、手首90の掌側面90aに押圧する。
【0070】
手首90の掌側面90aに対する、電流電極対41,46、第1脈波センサ40-1、および第2脈波センサ40-2のそれぞれの押圧力は、適宜の値に設定することができる。本実施の形態では、押圧部として流体袋の押圧カフ24を用いているため、ポンプ32および弁33を圧迫カフ21と共通に使用することができ、構成の簡略化を図ることができる。また、固形物22を介して第1脈波センサ40-1、第2脈波センサ40-2、および電流電極対41,46を押圧できるため、測定部位に対する押圧力が均一になり、精度よく脈波伝搬時間に基づく血圧測定を行なうことができる。
【0071】
(PTTに基づく血圧測定動作)
ユーザが操作部52を介してPTTに基づく血圧測定を指示すると、CPU100は、指示に従い切替弁35を駆動して、ポンプ32および弁33の接続先を押圧カフ24に切替える。その後、CPU100は弁33を閉じてポンプ駆動回路320を介してポンプ32を駆動し、押圧カフ24に空気を送り、押圧カフ24内の圧力であるカフ圧Pcを一定速度で高くする。
【0072】
この加圧過程で、CPU100は、第1脈波センサ40-1および第2脈波センサ40-2のそれぞれが時系列に出力する第1および第2脈波信号PS1およびPS2を取得し、第1および第2脈波信号PS1およびPS2の波形間の相互相関係数rをリアルタイムに算出する。CPU100は、加圧過程にリアルタイムに算出される相互相関係数rが閾値Th(例えばTh=0.99)を超えると判断すると、その時点のカフ圧Pcにおいて検出される第1および第2脈波信号PS1およびPS2について、第1および第2脈波信号PS1およびPS2の振幅のピークA1およびA2の時間差ΔtをPTT(脈波伝搬時間)として算出する。
【0073】
また、CPU100は、公知の式(EBP=(α/(DT2)+β)に従い、PTTに基づく血圧EBPを算出(推定)する。この式中のαとβは所定の係数であり、DTは脈波伝搬時間を示す。これにより、PTTに基づく血圧が測定される。
【0074】
CPU100は、操作部52を介して測定停止の指示がなされない間は、PTTの算出と血圧EBPの算出を繰返し実施する。CPU100は、血圧EBPをディスプレイ50に表示するとともに、メモリ51に格納する。CPU100は、操作部52を介して測定停止の指示を入力すると、測定動作を終了するように各部を制御する。
【0075】
なお、センサ部40は、脈波信号を測定するためにインピーダンス測定用の電極を利用したが、これに限定されない。例えば、センサ部40は、脈波信号を測定するために圧力センサまたは光センサを含み得る。
【0076】
(オシロメトリック法による血圧測定の概要)
図6は、実施の形態1に係るオシロメトリック法による血圧測定を行なう場合において、血圧計1が手首90に装着された状態での、手首の長手方向に沿った模式断面図である。
【0077】
図6を参照して、押圧カフ24は、内部の空気が排出されて非加圧状態となっており、圧迫カフ21は空気が供給された加圧状態になっている。圧迫カフ21は、手首90の周方向に延在しており、ポンプ32により加圧されると、左の手首90の周方向を一様に圧迫する。圧迫カフ21の内周面と左の手首90との間には、電極群40Eしか存在していないので、圧迫カフ21による圧迫が他の部材により阻害されることがなく、血管を充分に閉じることができる。
【0078】
オシロメトリック法による血圧測定では、CPU100は、測定部位に対する圧迫カフ21の加圧過程または減圧過程で検出される発振回路310を介した第1圧力センサ31からの出力波形に従い、血圧を算出(推定)する。本実施の形態に係るオシロメトリック法による血圧の算出方法は、公知の方法に従うので、ここでは説明を繰返さない。
【0079】
(装着状態の判定)
実施の形態1では、CPU100は、血圧計1が装着状態であるか否かを判定する。具体的には、ベルト20が測定部位に巻き付け装着されている場合、測定部位に対してベルト20(圧迫カフ21)が押圧される。第1圧力センサ31は、この押圧力を、エア配管38aを介して検出する。
【0080】
CPU100は、発振回路310を介した第1圧力センサ31の出力から押圧力を検出する。CPU100は、第1圧力センサ31を介し検出される押圧力を、予め定められた閾値Pと比較する。比較の結果が(押圧力の大きさ>閾値P)の条件を満たすとき、CPU100は、血圧計1は装着状態であると判定し、また、比較の結果が(押圧力の大きさ≦閾値P)の条件を満たすとき、CPU100は、血圧計1は装着状態ではないと判定する。したがって、CPU100は、血圧計1が継続して装着状態であると判定する間は、装着中であると決定する。ここで、閾値Pは予め実験等により取得される。
【0081】
上記に述べた装着状態の判定方法は、第1圧力センサ31により検出される押圧力を用いる方法であったが、第2圧力センサ34により検出される押圧力を用いる方法であってもよい。または、第1圧力センサ31と第2圧力センサ34の両方が検出する押圧力に基づき判定する方法であってもよい。
【0082】
また、装着状態の判定は、上記に述べた押圧力の大きさに限定されない。例えば、ユーザが操作部52を介して入力する信号に基づき、CPU100は、装着状態(または装着中)であるか否かを判定してもよい。
【0083】
(センサ部の装着位置の判定)
上記に述べたPTTに基づく血圧測定動作から理解されるように、PTTに基づく測定血圧の精度は、脈波センサから出力される脈波信号の波形の特徴(相互相関係数rおよび振幅のピークA1,A2)の検出精度に依存する。したがって、脈波信号を正確に検知することが要求される。すなわち、センサ部40の第1脈波センサ40-1と第2脈波センサ40-2を測定部位(より特定的には橈骨動脈91)の上に配置することが必要とされる。
【0084】
上記の背景に鑑みて、本実施の形態では、CPU100は、第1脈波センサ40-1と第2脈波センサ40-2を橈骨動脈91の上に配置するために、位置調整のガイド情報をディスプレイ50に表示する。ガイド情報は、第1脈波センサ40-1の第1脈波信号PS1の振幅のピークA1、および第2脈波センサの第2脈波信号PS2の振幅のピークA2が予め定められた大きさとなるように、センサ部40と測定部位との相対的な位置関係を調整するのを支援するための情報を含む。
【0085】
ユーザは、ガイド情報に支援されて、装着状態においてセンサ部40の位置を調整する。この位置調整では、ユーザは、装着状態においてディスプレイ50の筐体を、幅方向Yに押してずらす(摺動させる)ことで、センサ部40の位置を測定部位に対し上下方向(左腕が延びる方向)に移動させることができる。また、ユーザは、装着状態においてディスプレイ50の筐体を、幅方向Yと交差する方向に押してずらす(摺動させる)ことで、センサ部40の位置を測定部位に対し左右方向(左腕が伸びる方向と略交差する方向)に移動させることができる。
【0086】
本実施の形態では、ガイド情報は、装着状態を評価する情報を含む。具体的には、第1脈波信号PS1および第2脈波信号PS2の振幅の大きさが、閾値TAを超える場合、CPU100は、装着状態を「OK」と評価する。一方、第1脈波信号PS1および第2脈波信号PS2の少なくとも一方の振幅の大きさが、閾値TA以下である場合、CPU100は、装着状態を「NG」と評価する。なお、閾値TAは、PTTに基づく測定血圧の予め定められた精度に相当する値であって、実験で取得された値を示す。ユーザは「OK」を確認することで、位置調整が成功したことを把握することができ、また「NG」を確認することで位置調整は成功しておらず調整を継続する必要があると判断することができる。装着状態が「NG」と判断される間は、CPU100は血圧測定の処理を起動せず、「OK」と判断されたときCPU100は血圧測定処理を起動し得る(後述の
図9のステップS8を参照)。したがって、装着状態の評価結果を、血圧測定処理の起動の判断に利用することができる。
【0087】
装着状態が「OK」の評価は、センサ部40と測定部位との相対的な位置関係がPTTに基づく血圧測定の精度を得ることができる関係であることを示す。より特定的には第1脈波センサ40-1および第2脈波センサ40-2が橈骨動脈91の真上に位置する状態を示す。一方、装着状態が「NG」の評価は、センサ部40と測定部位との相対的な位置関係がPTTに基づく血圧測定の精度が得られない関係であることを示す。より特定的には第1脈波センサ40-1および第2脈波センサ40-2の両方または一方が橈骨動脈91の真上に位置していない状態を示す。なお、ここでは、装着状態の評価は「OK」または「NG」の2種類としているが、3種類以上であってもよい。具体的には、「NG」のケースであっても、第1脈波信号PS1および第2脈波信号PS2の振幅の大きさと、閾値TAとの差の大きさに基づき、差が小さい順に「NG-1」、「NG-2」・・・と分類してよい。また、「OK」のケースにおいても、第1脈波信号PS1および第2脈波信号PS2の振幅の大きさと、閾値TAとの差の大きさに基づき、差が大きい順に「OK-1」、「OK-2」・・・と分類してよい。
【0088】
図7は、実施の形態1に係るセンサ部40の装着状態の判定を説明する図である。
図7(A)に示されるように、実施の形態1では、装着状態において、左腕の延びる方向が身体の前面と並行となる状態で、ユーザはディスプレイ50のガイド情報を上方向から視認する。
図7(A)の状態では、上記の間隔Dの離間配置によれば、ユーザの左側に第1脈波センサ40-1が位置し、同様に向かって右側に第2脈波センサ40-2が位置することになる。この背景のもと、CPU100は、第1脈波信号PS1の振幅の大きさを表す第1インジケータ情報G1をディスプレイ50の画面においてユーザの左側に表示し、第2脈波信号PS2の振幅の大きさを表す第2インジケータ情報G2をディスプレイ50の画面においてユーザの右側に表示する(後述の
図7(D)および
図7(E)を参照)。
【0089】
このように、CPU100は、
図7(A)のユーザがディスプレイ50の情報を視認する方向に従い、第1および第2インジケータ情報G1およびG2を、第1脈波センサ40-1および第2脈波センサ40-2の上記に述べた離間配置に整合した位置で表示する。すなわち「整合した位置で表示する」とは、ディスプレイ50の画面において、間隔Dで離間配置された第1脈波センサ40-1および第2脈波センサ40-2のそれぞれに対応した位置で、第1インジケータ情報G1および第2インジケータ情報G2をそれぞれ表示することに相当する。
【0090】
装着状態で、
図7(B)に示すように、第1脈波センサ40-1は橈骨動脈91の真上に位置し、第2脈波センサ40-2が橈骨動脈91の真上に位置しないときは、
図7(D)の下段に示すように第1脈波信号PS1の振幅は閾値TAを超える大きさを示すが、第2脈波信号PS2の振幅の大きさは閾値TAを超えない。したがって、CPU100は、
図7(B)の装着状態を「NG」と評価する。
【0091】
図7(B)の装着状態が「NG」と評価される場合、CPU100は、
図7(D)の上段に示すように、ディスプレイ50に第1脈波信号PS1および第2脈波信号PS2のそれぞれに対応した第1インジケータ情報G1,第2インジケータ情報G2を、ピクトグラム群で表示する。ピクトグラム群は、複数の矩形状のピクトグラムからなる列であって、CPU100は、ピクトグラム群をY方向と交差する方向に延びるように表示する。CPU100は、第1脈波信号PS1および第2脈波信号PS2の振幅の大きさを検出し、対応のピクトグラム群のうち、脈波信号の振幅の大きさに従う1つ以上のピクトグラムを点灯する。これにより、ピクトグラム群の列において点灯しているピクトグラムの数により、対応する脈波信号の振幅の大きさが示される。
【0092】
ピクトグラム群の点灯態様として、振幅が閾値TAを超えることを示すピクトグラムと、閾値TA以下を示すピクトグラムとでは、表示態様を異ならせることが望ましい。
図7では、例えば、振幅が閾値TAを超えることを示すピクトグラムは点灯を継続し、閾値TA以下を示すピクトグラムは点滅する。表示態様は、点灯/点滅の他に、表示色を変更しても良い。なお、ピクトグラムの形状は、矩形に限定されない。
【0093】
さらに、CPU100は、各ピクトグラム群の第1インジケータ情報G1,第2インジケータ情報G2に関連付けて、対応の脈波センサの位置としてユーザの「左」または「右」の側を示す文字CHを表示する。
図7(D)上段の表示では、CPU100は、ユーザに対して、例えば、第1脈波センサ40-1と第2脈波センサ40-2が検出する脈波振幅値がアンバランスであること、または脈波振幅値が相対的に高い/低いことをガイダンスできて、ユーザに対して、センサ部40の位置を移動させること
を動機
づけすることができる。動機づけされたユーザは、「右」の文字CHが関連付けされたインジケータ情報G2が示す脈波信号の振幅を大きくするよう、ディスプレイ50の筐体を右方向に押す。
【0094】
ディスプレイ50が右方向に押されると、センサ部40の位置は、ユーザの左方向に移動する。この移動に連動して、センサ部40(第1脈波センサ40-1および第2脈波センサ40-2)の位置は、
図7(B)から
図7(C)に示すように、橈骨動脈91の真上に移動する。
【0095】
センサ部40が橈骨動脈91の真上に位置すると、第1脈波信号PS1および第2脈波信号PS2の振幅は十分に大きくなり、第1インジケータ情報G1および第2インジケータ情報G2は、
図7(E)の下段に示す閾値TAを超える。このとき、
図7(E)上段に示すように、第1インジケータ情報G1および第2インジケータ情報G2は、第1脈波信号PS1および第2脈波信号PS2の振幅が十分に大きくなったことを表示する。このとき、CPU100は、
図7(C)の装着状態を「OK」と判定する。ユーザは、
図7(E)上段の第1インジケータ情報G1,第2インジケータ情報G2を確認することにより、装着状態が良好になったことがガイドされる。
【0096】
CPU100は、装着状態を「OK」と判定したときに検出される第1脈波信号PS1および第2脈波信号PS2の波形の特徴と、上記に述べた公知の式に従い、PTTに基づいた血圧測定(推定)を実施する。
【0097】
このように、ユーザは、第1インジケータ情報G1,第2インジケータ情報G2から、センサ部40と測定部位との相対的な位置関係の調整をすることが動機づけされるとともに、第1インジケータ情報G1,第2インジケータ情報G2および文字CHから調整のためのガイダンスがなされる。また、文字CHは、インジケータ情報に関連付けて同一画面に表示されるので、ユーザは画面を切替えずとも、位置調整のためのガイド情報を確認することができる。
【0098】
(CPU100の機能構成)
図8は、実施の形態1に係るガイド情報を出力するための機能の構成を、血圧測定機能と関連づけて模式的に示す図である。
図8を参照して、CPU100は、ガイド情報を出力するための機能として、脈波判定部101、メモリ51の画像データ54を用いてガイド情報を決定するガイド情報決定部102および表示制御部103を備える。また、CPU100は、血圧測定機能として、上記に述べた処理に従いPTTを算出するPTT算出部111、上記の公知の式に従いPTTに基づく血圧を算出(推定)するPTTに基づく血圧算出部112、上記に述べたオシロメトリック法に基づく血圧を算出(推定)するオシロメトリック法に従う血圧算出部113、および血圧出力制御部114を備える。
【0099】
メモリ51には、検出され得る(第1脈波信号PS1の振幅の大きさ、第2脈波信号PS2の振幅の大きさ)の組のそれぞれに対応して画像データ54が格納される。画像データ54の対応する組は、当該画像データ54に割当られるID(identification)により示される。画像データ54は、第1脈波信号PS1および第2脈波信号PS2の振幅の大きさを示すピクトグラム群と、「左」,「右」の文字CHの画像とを含む。(第1脈波信号PS1の振幅の大きさ、第2脈波信号PS2に振幅の大きさ)の組に対応する画像データ54は、実験等に基づき生成されて、メモリ51に、当該組に対応付けて格納される。
【0100】
脈波判定部101は、第1脈波信号PS1および第2脈波信号PS2の振幅の大きさを閾値TAと比較し、比較結果に基づき(振幅の大きさ>閾値TA)の条件が満たされるか否かを判定する。第1脈波信号PS1および第2脈波信号PS2の振幅の大きさについて、当該条件が満たされているときは、装着状態は、PTTに基づく血圧測定のための望ましい装着状態である、すなわち測定精度を維持できる装着状態である。
【0101】
ガイド情報決定部102は、脈波判定部101により上記の条件が満たされないと判定されたとき、出力するべきガイド情報を決定する。具体的には、ガイド情報決定部102は、第1脈波信号PS1および第2脈波信号PS2の振幅を検出し、検出された(第1脈波信号PS1の振幅の大きさ、第2脈波信号PS2に振幅の大きさ)の組合せに基づき、メモリ51を検索する。ガイド情報決定部102は、当該組合せに一致するIDが割当てられた画像データ54をメモリ51から読出す。
【0102】
表示制御部103は、ガイド情報決定部102からの画像データ54に基づき、ディスプレイ50に表示させるための制御信号を生成する。制御信号に従いディスプレイ50が駆動されることで、ディスプレイ50に、検出される第1脈波信号PS1および第2脈波信号PS2の振幅の大きさに基づく第1インジケータ情報G1および第2インジケータ情報G2が表示される。
【0103】
図8の各部の機能は、メモリ51にプログラムとして格納される。CPU100は、メモリ51からプログラムを読出し実行することにより、各部の機能が実現される。なお、各部の機能はプログラムで実現する方法に限定されない。例えば、ASIC(application specific integrated circuit:特定用途向け集積回路)またはFPGA(field-programmable gate array)を含む回路により実現されてもよい。さらには、プログラムと回路の組合せにより実現されてもよい。
【0104】
なお、ガイド情報は、メモリ51に格納される画像データ54に限定されない。例えばスクリプトプログラムを含む画像生成プログラムを実行することで表示制御のための画像データを生成するとしてもよい。この場合、上記に述べた(第1脈波信号PS1の振幅の大きさ、第2脈波信号PS2に振幅の大きさ)の組合せが、スクリプトプログラムのパラメータ(引数など)となる。
【0105】
(処理フローチャート)
図9は、実施の形態1に係るガイド情報の出力とPTTに基づく血圧測定の処理を示すフローチャートである。このフローチャートに従うプログラムは、メモリ51に格納されて、CPU100により読出されて、実行される。
【0106】
図9を参照して、まず、CPU100は、装着状態において、操作部52でユーザがPTTの血圧測定開始のスイッチ操作をしたとき、開始指示を受付ける(ステップS1)。CPU100は、血圧測定を開始する際に、初期化処理を実施する(ステップS2)。例えば、カフから空気を排気する。
【0107】
CPU100は、PTTのための脈波測定の処理を開始する(ステップS3)。脈波判定部101は、センサ部40から測定される第1脈波信号PS1および第2脈波信号PS2を取得し、取得された第1および第2脈波信号PS1およびPS2の振幅の大きさについて(振幅>閾値TA)の条件が満たされるかを判定する(ステップS4)。
【0108】
CPU100は、脈波判定部101の出力に基づき、上記の条件が満たされているか否かを判定する(ステップS5)。条件が満たされていると判定されたとき(ステップS5でYES)、CPU100は、装着状態「OK」と評価し、後述するステップS8のPTTに基づく血圧測定を実施する。
【0109】
一方、条件が満たされないと判定されると(ステップS5でNO)、CPU100は、装着状態「NG」と評価する。また、ガイド情報決定部102は、ガイド情報を決定し(ステップS6)、表示制御部103はガイド情報に従いディスプレイ50の表示を制御する(ステップS7)。その後、ステップS3に移行し、以下の処理を上記と同様に実施する。
【0110】
PTTに基づく血圧測定が実施されると(ステップS8)、測定された血圧はディスプレイ50に表示される(ステップS9)。また、測定結果は、メモリ51に格納される。ステップS8では、PTT算出部111によりPTTが算出され、PTTに基づく血圧算出部112により、算出されたPTTに基づく血圧が算出(推定)される。
【0111】
なお、
図9では、装着状態が「NG」と評価される間は、PTTに基づく血圧測定(ステップS8)は実施されないとしているが、装着状態が「NG」と評価される場合でも、PTT算出部111によるPTTの算出と、PTTに基づく血圧算出部112によるPTTに基づく血圧の算出(推定)が実施されるとしてもよい。例えば、予め定められた回数連続して装着状態「NG」と評価されるとき、または装着状態「NG」と評価される時間が、継続して予め定められた時間を超えたとき(例えば、開始指示を受付けたとき(ステップS1)から予め定められた時間が経過したとき)、装着状態が「NG」の評価においてPPTに基づく血圧測定(ステップS8)が実施されるとしてもよい。
【0112】
(ガイド情報の表示例)
図10、
図11および
図12は、実施の形態1に係るガイド情報の他の表示例を示す図である。
図10では、ディスプレイ50の筐体(画面)が円形であるケースが示される。
図10(A)と
図10(B)は装着状態が「NG」である場合の表示例であり、ディスプレイ50の画面には、装着状態の評価(「NG」)を表す情報93、および測定部位に対するセンサ部40の位置を移動させる方向をガイドする情報94を、他の情報(インジケータ情報G1,G2および文字CH)と同一画面で表示する。
図10(A)の情報94は、ディスプレイ50の円形の筐体を、円の中心で同心円状に回転させることをガイドする情報であり、回転方向を示す矢印マークで示される。これに対して
図10(B)の情報94は、ディスプレイ50の筐体を上下方向に動かすことをガイドする情報であり、上下方向を示す矢印マークで示される。
【0113】
図10(C)は装着状態が「OK」と評価される場合の表示例であり、ディスプレイ50には、装着状態の評価(「OK」)を表す情報93、および上記の移動方向の情報94に代えて、センサ部40の位置を固定することをガイドする情報95が、他の情報(インジケータ情報G1,G2および文字CH)とともに同一画面で表示される。固定ガイドの情報95は、例えば“固定して下さい”のメッセージであるが、これに限定されない。
【0114】
なお、装着状態が「OK」と評価される時、センサ部40の位置を固定することをガイドする情報95は、装着状態が「NG」と評価されるときの情報93および情報94に代わって、ディスプレイ50に表示される。
【0115】
図11では、ディスプレイ50の筐体(画面)が矩形であるケースが示される。
図11(A)と
図11(B)は装着状態が「NG」と評価される場合の表示例である。
図11(A)の情報94は、ディスプレイ50の矩形の筐体を、矩形の中心で同心円状に回転させることをガイドする情報であり、回転方向を示す矢印マーク(向きが異なる2つの矢印の組)で示される。
図11(C)は装着状態が「OK」と評価される場合の表示例である。
【0116】
図12は、
図11の変形例である。
図12(A)では、情報94は、
図11(A)の情報94の向きが異なる2つの矢印マークからなる組ではなく、両方向の1個の矢印で示される。
【0117】
このように、ユーザは、センサ部40の測定部位に対する位置を調整することが必要であることが情報93でガイドされるとき、同一画面の情報94により、移動は上下方向の移動または回転移動のいずれで行うべきかについてもガイドされる。したがって、ユーザは、情報94の移動方向に従いディスプレイ50の筐体を操作することで、装着状態「OK」となるように、センサ部40と測定部位との相対的な位置関係を効率的に調整することができる。なお、上下方向の移動または回転移動のいずれで行うべきかについてのガイド情報(矢印マークのアイコンに相当)も、(第1脈波信号PS1の振幅の大きさ、第2脈波信号PS2に振幅の大きさ)の組合せに基づき決定される情報であり、当該組に対応付けて上記に述べた画像データ54の中に予め含まれている。
【0118】
上記の表示は、血圧計1を左の手首90に装着した場合であったが、右の手首に装着する場合でも同様に実施することができる。その場合は、第1脈波センサ40-1と第2脈波センサ40-2の測定部位に対する配置態様が、左の手首90に装着する場合と逆となるから、各脈波センサの出力に対応する第1インジケータ情報G1,第2インジケータ情報G2のディスプレイ50における表示位置も逆となる。また、CPU100は、血圧計1が装着された部位が左手首または右手首のいずれであるかは、操作部52からのユーザ入力で判定することができる。または、血圧計1に加速度センサを備えて、CPU100は、加速度センサの出力から、左右のいずれの側に装着されているかを判断するとしてもよい。
【0119】
(測定結果の格納例)
図13は、実施の形態1に係る測定結果の格納例を示す図である。
図13を参照して、メモリ51は血圧計1の測定結果を記録するテーブル394を格納する。
図13を参照して、テーブル394は、測定のデータをレコード単位で格納する。各レコードは、当該レコードを一意に識別するためのID(identification)のデータ39E、測定日時のデータ39G、オシロメトリック法に従う血圧算出部113による算出(推定)された血圧値(収縮期血圧SBPと拡張期血圧DBP)および脈拍数PLSを含むデータ39H、PTTに基づく血圧測定時の装着状態の評価である「OK」または「NG」を表すデータ39I、およびPTTに基づく血圧算出部112により算出(推定)された血圧値を示すデータ39Jを関連付けて含む。
【0120】
血圧出力制御部114は、メモリ51に測定日時のデータ39Gに関連付けて、当該日時に測定されたオシロメトリック法に従う血圧および脈拍数のデータ39H、およびPTTに基づく血圧値のデータ39Jを格納する。
【0121】
テーブル394における測定データの記憶の態様は、
図13に示すようなレコード単位には限定されない。血圧が測定される毎に、検出されたデータ39E~39Jが関連付け(紐付け)される態様であればよい。
【0122】
(他の表示例)
図14は、実施の形態1に係る他の表示例を示す図である。
図14(A)を参照して、ディスプレイ50の画面には、測定結果として、装着状態の評価40Bと、収縮期血圧SBP、拡張期血圧DBPおよび脈拍数PLSと、PTTに基づく測定血圧EBPと、測定日時のデータが表示される。
図14(A)では装着状態の評価40Bにより、装着状態の評価が「OK」であったことが「GOOD」の文字によって表示される。ユーザは、装着状態の評価40Bの情報から、表示される血圧EBPが信頼できる値であるかに関する信頼度の目安を得ることもできる。
【0123】
図14(A)の表示例は、例えば、血圧測定が終了するとき(ステップS9)の表示例、または
図13のテーブル394から読出されたデータの表示例に相当する。
図14(A)の血圧の情報は、血圧出力制御部114がディスプレイ50を制御することにより表示される。具体的には、血圧出力制御部114は、PTTに基づく血圧算出部112により算出された血圧、またはオシロメトリック法に基づく血圧算出部113により算出された血圧の値に基づく表示データを生成し、表示データに基づき、ディスプレイ50を駆動する。または、血圧出力制御部114が、
図13のテーブル394の関連付けられたデータ39Hおよびデータ39Jに基づき表示データを生成し、生成した表示データに基づき、ディスプレイ50を駆動する。これにより、血圧出力制御部114は、測定された血圧のデータまたはテーブル394に格納された血圧のデータをディスプレイ50に表示することができる。
【0124】
(更なる他の表示例)
図15は、実施の形態1に係る更なる他の表示例を示す図である。
図15のガイド情報は、第1脈波センサ40-1または第2脈波センサ40-2からの第1脈波信号PS1または第2脈波信号PS2の振幅値(信号強度)だけでなく、振幅値の変化も提示する。
【0125】
具体的には、
図15では、ガイド情報に従いユーザが行うセンサ部40の位置調整に伴なって、振幅値に基づくガイド情報が
図15(A)→
図15(B)→
図15(C)と変化するケースが示される。具体的には、
図15(A)では、例えば、第1脈波信号PS1の振幅値(信号強度)は閾値TA(ここでは、4個分のピクトグラムに相当)を超えているが、第2脈波信号PS2の振幅値は閾値TA未満である。
【0126】
ユーザは、
図15(A)のガイド情報に従い、ディスプレイ50を右方向に押してセンサ部40の位置調整を行う。この結果、CPU100は、第2脈波信号PS2の振幅値が
図15(A)に示す移動前の振幅値から変化し小さくなったと判断したときは、CPU100は、
図15(B)のように、第2インジケータ情報G2のピクトグラムの色を変化させる。この表示色の変化により、ユーザに対して、位置調整が適切でないことをガイドすることができる。
【0127】
ユーザは、
図15(B)の第2インジケータ情報G2の色の変化に従い、ディスプレイ50を左方向に押してセンサ部40の位置調整を行う。この結果、センサ部40(第1脈波センサ40-1および第2脈波センサ40-2)の位置が、橈骨動脈91の真上に移動する。この場合は、CPU100は、第2脈波信号PS2の振幅値は、
図15(B)の移動前の振幅値よりも変化し大きくなったと判断し、判断に基づき、
図15(C)のように、第2インジケータ情報G2のピクトグラムを元の色に変化させる。
図15(C)のガイド情報により、ユーザに対して、位置調整が適切であったことをガイドすることができる。
【0128】
(更なる他の表示例)
図16は、実施の形態1に係る更なる他の表示例を示す図である。
図16では、第1脈波信号PS1と第2脈波信号PS2の信号強度(脈波振幅値)の時間経過に従う変化と、これに関連付けて、装着状態の評価を示すアイコン50-4の表示態様の変化が示される。
【0129】
具体的には、装着開始から時刻T1までは第1脈波信号PS1および第2脈波信号PS2の信号強度(脈波振幅値)は閾値TAを超えている。したがって、装着開始から時刻T1までは、CPU100は、ディスプレイ50のアイコン50-4を、装着状態「OK」を表す文字と色で表示する。時刻T1で第2脈波信号PS2の脈波振幅値が閾値TA以下となったとき、CPU100は、ディスプレイ50のアイコン50-4を、装着状態「注意」を表す文字と色に変化させる。さらに、CPU100は、当該脈波振幅値が閾値TA以下である状態が時刻T1から予め定められた時間(例えば、時間TM)継続したと判断したとき、CPU100は、ディスプレイ50のアイコン50-4を、装着状態「NG」を表す文字と色に変化させる。
【0130】
図15または
図16によれば、ガイド情報を表示する場合、第1脈波信号PS1の脈波信号の振幅の大きさまたは第2脈波信号PS2の脈波信号の振幅の大きさが変化したとき、当該ガイド情報に当該変化を報知する情報を含めることもできる。したがって、ユーザに対して装着状態の評価の変化を、アイコン50-4による文字と色の変化でガイドすることが可能になる。
【0131】
なお、機器(血圧計1または後述する携帯型端末10B)を振動させてガイドする場合には、アイコン50-4によるガイド情報の変化に連動して、当該振動の強さまたは周期を変化させてもよい。
【0132】
(更なる他の表示例)
実施の形態1では、装着の状態を評価する情報を、PTTに基づき測定された血圧EBPを評価する情報と関連づけて表示する。
図17は、実施の形態1に係る更なる他の表示例を示す図である。
図17では、ディスプレイ50に表示されるアイコン50-5は、装着状態の評価を示す部分50-1と、PTTに基づき測定された血圧EBPの評価を示す部分50-2を有する。CPU100は、アイコン50-5の装着状態の評価の部分50-1の色と、血圧EBPの評価の部分50-2の色を、対応する評価の内容に従い変化させる。これにより、ユーザに対して、装着状態の評価(「OK」、「NG」、「装着しなおし」等)と、測定された血圧EBPの評価(正常血圧、高血圧など)を関連付けながらガイドすることができる。
【0133】
(装着状態の判定時期の変形例)
血圧計1の装着状態の判定を実施する時間は、上記に述べたPTTに従う血圧測定時(
図9参照)に限定されない。例えば、CPU100は、ユーザが血圧計1を装着中と判定する間は、定期的に装着状態を判定し、判定結果に基づき上記のガイド情報を表示してもよい。
【0134】
より具体的には、CPU100の脈波判定部101は、血圧計1が装着中と判定される間は、常に(例えば、定期の一定間隔で)、(振幅の大きさ>閾値TA)の条件が満たされるかを判定する。そして、ガイド情報決定部102は、装着状態の評価(OKまたはNG)を含むガイド情報を設定し、表示制御部103はガイド情報をディスプレイ50に表示する。この表示態様は、例えば、
図10(A),(B)、または
図11(A),(B)、または
図12(A),(B)に示される。
【0135】
また、CPU100は、血圧計1の装着状態において検出される脈波信号PS1のピークA1または脈波信号PS2のピークA2が、閾値TA未満であると判定したときは、または閾値TA未満であると判定した回数が、予め定められた回数連続したときは、装着のしなおしを促すアラーム40C(またはエラー)を、ディスプレイ50に表示する(
図14(B)参照)。
【0136】
または、脈波信号PS1のピークA1または脈波信号PS2のピークA2が閾値TA1(<TA)未満となったときは、または脈波信号PS1のピークA1または脈波信号PS2のピークA2が閾値TA1(<TA)未満となった回数が予め定められた回数連続しときは、CPU100は、アラーム40C(またはエラー)を、ディスプレイ50に表示する(
図14(B)参照)。
【0137】
図14(B)では、アラーム40Cとして‘装着しなおし’の文字メッセージを示したが、文字メッセージに限定されず、予め定められた画像(動画,静止画)を含む他の情報であってもよい。
【0138】
ユーザは、血圧計1の装着中は、ディスプレイ50の画面を確認することにより、常に、装着状態の適否または装着しなおしの要否を確認することが可能となる。なお、装着中における装着状態の評価(「OK」または「NG」)を表す情報93またはアラーム40Cの出力態様は、ディスプレイ50の表示に限定されず、音声の出力または振動を含む他の態様であってもよい。
[実施の形態2]
図18は、実施の形態2に係るシステムの概略的な構成を示す図である。上記の血圧計1は、外部の情報処理装置であるサーバ30または携帯型端末10Bと、ネットワーク900を介し通信する。
図18のシステムでは、血圧計1はLANを介して携帯型端末10Bと通信し、携帯型端末10Bはインターネットを介してサーバ30と通信する。これにより、血圧計1は携帯型端末10Bを経由してサーバ30と通信することができる。なお、血圧計1は、携帯型端末10Bを経由せずに、サーバ30と通信してもよい。
【0139】
上記の実施の形態1では、装着中における装着状態の評価を表す「OK」または「NG」の情報93、またはアラーム40Cは血圧計1のディスプレイ50に表示されたが、CPU100は装着状態の評価の情報93、またはアラーム40Cを携帯型端末10Bに送信し、表示部158に表示させるようにしてもよい。これにより、血圧計1は、携帯型端末10Bの表示部158の表示から、装着状態の評価を出力することができる。また、携帯型端末10Bは、装着状態の評価の情報93またはアラーム40Cを、携帯型端末10Bの振動、または音声を含む他の出力態様で報知してもよい。
【0140】
上記の実施の形態1では、測定結果(
図14(A))を血圧計1のディスプレイ50に表示させたが、表示先は、携帯型端末10Bの表示部158であってもよく、ディスプレイ50と表示部158の両方であってもよい。また、
図13のテーブル394に示す測定結果の格納先は、血圧計1のメモリ51に限定されない。例えば、携帯型端末10Bの記憶部、またはサーバ30の記憶部32Aであってもよい。または、メモリ51、携帯型端末10Bの記憶部、およびサーバ30の記憶部32Aの2つ以上に格納されてもよい。
【0141】
[実施の形態3]
上述した実施の形態において、コンピュータを機能させて、上述のフローチャートで説明したような制御を実行させるプログラムを提供することもできる。このようなプログラムは、血圧計1のコンピュータに付属するCD(Compact Disk Read Only Memory)、二次記憶装置、主記憶装置およびメモリカードなどの一時的でないコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワーク900を介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0142】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0143】
1 血圧計、10B 携帯型端末、20 ベルト、20a,23a,24a 内周面、20b,21a 外周面、21 圧迫力フ、24 押圧カフ、30 サーバ、40-1 第1脈波センサ、40-2 第2脈波センサ、40 センサ部、40B 装着状態の評価、50 ディスプレイ、51 メモリ、52 操作部、54 画像データ、59 通信部、40C アラーム、90 手首、91 橈骨動脈、101 脈波判定部、102 ガイド情報決定部、103 表示制御部、158 表示部、900 ネットワーク、A1,A2 ピーク、CH 文字、D 間隔、DBP 拡張期血圧、EBP 血圧、G1 第1インジケータ情報、G2 第2インジケータ情報、PLS 脈拍数、PS1 第1脈波信号、PS2 第2脈波信号、SBP 収縮期血圧、TA,Th 閾値、i 定電流、r 相互相関係数、v1,v2 電圧信号。